児童ポルノ・児童買春・児童福祉法・監護者わいせつ・不同意わいせつ・強制わいせつ・青少年条例・不正アクセス禁止法・わいせつ電磁的記録弁護人 奥村徹弁護士の見解(弁護士直通050-5861-8888 sodanokumurabengoshi@gmail.com)

性犯罪・福祉犯(監護者わいせつ罪・強制わいせつ罪・児童ポルノ・児童買春・青少年条例・児童福祉法)の被疑者(犯人側)の弁護を担当しています。専門家向けの情報を発信しています。

「情報処理の高度化等に対処するための刑法等の一部を改正する法律」について 法曹時報64-04~05

 ファイル共有って、データが閲覧者に行ってしまってから見られるようになるので、頒布罪は正解だと思います。
 児童ポルノ提供罪の既遂時期と、わいせつ頒布罪の既遂時期の微妙なずれに注意しましょう。

「情報処理の高度化等に対処するための刑法等の一部を改正する法律」について 法曹時報64-04~05 H24
2 第1項
(1) 改正の趣旨
ア改正前の本条前段においては.「わいせつな文書,図画その他の物」と規定され,その対象が「物」とされていた。この点に関し,例えは電子メールで、わいせつな画像を不特定又は多数の者に送信して取得させるなど行為については,同条前段の適用の可否につき裁判例が分かれていたが,このような行為は,実質的に見れば,有体物としてのわいせつ物を頒布する行為と違法性の点で何ら変わるところがないといえる。
そこで,そのような行為が処罰対象に含まれることを明確にするため,本項後段において「電気通信の送信によりわいせつな電磁的記訟の他の記録を頒布」する行為を処罰対象として掲げることとされた。
イこのような改正が行われると,従来,わいせつ物公然陳列罪で処罰することが可能であった,わいせつな画像データを電磁的記録に係る記録媒体に記憶・蔵置させて不特定又は多数の者が閲覧し得る状態にする行為等が,引き続き同罪によって処罰可能であるか否かが問題となり得るが,今回の改正は,この点に関する従来の解釈を改めようとするものではない。
そこで,この点に関する解釈上の疑義が生じないようにするため,本項前段において,わいせつ物の例示として「(わいせつな)電磁的記録に係る記録媒体」を掲げることとし,例えば,わいせつな画像データを記憶・蔵置させたハードディスク等が含まれることを明示することとされた。
これは,改正前においても「電磁的記録に係る記録媒体」は「その他の物」に含まれると解されていたところ,この点を確認的に規定する趣旨である。
ウ改正前の本条前段においては.「販売し」との文言が用いられていたが,本項前段においては,この文言を削ることとされた。これは,後記3(1)アのとおり,改正後においては「頒布」の中に「販売」が含まれることとなるためである。すなわち.「販売し」との文言を削ることとされたのは,これまで「販売」に当たるとして処罰してきた行為を処罰しないこととする趣旨ではなく,改正前において「販売」に当たる行為は,改正後においては「頒布」に当たることとなる。
エ改正後においても,本項の罪の法定刑における懲役刑及び罰金刑の上限は従来と変わらないが,本項の罪は利得目的で行われるのが通常,であることに鑑み,この種の犯罪が経済的に見合わないものであることを感銘させ得るようにするため,懲役刑及び罰金刑の任意的併科ができることとされた。
(2) 本項後段の罪の構成要件
ア「電気通信」とは,有線,無線その他の電磁的方式により,符号,音響又は映像を送り,伝え,又は受けることをいい, 「送信」とは,このうち「送る」行為をいう。
イ「わいせつな」の意義は,改正前の本条前段と同様であり,改正によって変わるところはなし、。
ウ「電磁的記録」とは,電子的方式,磁気的方式その他人の知覚によつては認識することができない方式で、作られる記録であって,電子計算機による情報処理の用に供されるものをいうところ(刑法第7条の2 ),わいせつな画像等をファクシミリで送信した場合には,頒布先において電磁的記録以外の形態による記録として存在するに至ることもあり得ることから, 「その他の記録」も掲げることとされた。
エ電磁的記録その他の記録の「頒布」とは,不特定又は多数の者の記録媒体上に電磁的記録その他の記録を存在するに至らしめることを意味する。有償・無償のいかんを問わない。
ここにいう「不特定又は多数の者」の考え方については,改正前の本条前設における「頒布」と同様である。ずなわち,単に特定がつ少数の者に電子メールで‘わいせつな電磁的記録を送信し,これを受信させたとしても,「頒布」には当たらないが,不特定又は多数の者に送信する行為の一環として,あるいは,不特定又は多数の者に対して送信するという反復の意思をもって,電子メールでわいせつな電磁的記録を送信し,これを受信させれば, 「頒布」に当たり得ると考えられる。
「頒布」に当たるためには,単に送信しただけで、は足りず,相手方の記録媒体上に「電磁的記録その他の記録」として存在するに至らしめることが必要であるから,そのような状態に至っていない場合には, 「頒布」には当たらない。
オWebサーバのハードディスクにわいせつな画像データを記憶・蔵置させて,不特定・多数の者がその画像を認識で、きる状態を設定した場合,当該ノ、ードディスクはわいせつな電磁的記録に係る記録媒体に当たることから,わいせつ物公然陳列罪(本項前段)が成立し得るが,この場合において,不特定・多数の者が,その画像を閲覧するために,当該ハードディスクにアクセスしてそのわいせつな画像データを自己のコンピュータにダウンロードした場合には,これらの者の行為を介して,同人らのコンピュータにわいせつ画像データを記録させて頒布したことになるから,本項後段の罪も成立し得ることとなる。

(注1) 刑法第175条の改正は,サイバー犯罪条約を締結するためのものではない