弁護人が頒布だと主張しても公然陳列罪だとされていて、頒布罪にならないという判例がたくさんあるんですけど。
1 刑法175条1項後段における電磁的記録その他の記録の「頒布」の意義
(1)刑法175条l項後段は,「電気通信の送信によりわいせつな電磁的記録その他の記録を頒布した者」につき, 2年以下の懲役若しくは250万円以下の罰金若しくは科料に処し又は懲役及び罰金を併科する旨を規定しているところ,これは,前記のとおり,平成23年改正により新たに処罰対象とされたものである。
平成23年改正前の刑法175条前段においては,頒布・販売・公然
陳列の対象が「わいせつな文書,図面その他の物」とされていたた
め,わいせつな画像データという有体物でないものを電子メールで
不特定又は多数の者に送信して取得させるなどの行為に同条前段を
適用し得るかについて裁判例が分かれていた(注2)。
しかしこのような行為は,実質的に見れば,有体物としてのわいせつ物を頒布する行為と違法性の点で何ら変わるところがないといえることから,こうした行為も処罰対象となることを明確にするため,平成23年改正により,平成175条1項後段において「電気通信の送信によりわいせつな電磁的記録その他の記録を頒布」する行為が処罰対象として掲げられた(注3)(注2)これを積極に解するものとして,横浜地裁川崎支判平成12年7月6日(研修628号119頁,同635号3頁),消極に解するものとして,札幌高判平成21年6月16日(高等裁判所刑事裁判速報集(平成21年) 317頁)が挙げられる。
(注3)なお,この改正は,従来,わいせつ物公然陳列罪で処罰が可能であった,わいせつな画像データを電磁的記録に係る記録媒体に記憶・蔵置させて不特定又は多数の者が閲覧し得る状態にする行為(最決平成13年7月16日・判時1762号150頁)が.引き続き同罪によって処罰可能とされることについて,従来の解釈を改めるものではないとされ,この点に関する解釈上の疑義が生じないようにするため,刑法175条l項前段において.わいせつ物の例示として「(わいせつな)電磁的記録に係る記録媒体」を掲げることとしたとされている(杉山徳明・吉田雅之「情報処理の高度化等に対処
するための刑法等の一部を改正する法律』について(上)」(法曹時報第64巻第4号93頁)。