不同意わいせつ罪及び4項製造罪と性的姿態等撮影罪がいわゆる観念的競合として科刑上一罪の関係にある(東京高裁r7.6.18)

 控訴趣意書提出後に観念的競合説の部長が転勤して来て、観念的競合になりました。

 

  3罪の重なり合いはこれくらいです。

 

東京高等裁判所令和7年6月18日 

 強制わいせつ、児童買春、児童ポルノに係る行為等の規制及び処罰並びに児童の保護等に関する法律違反、不同意わいせつ、性的姿態等撮影被告事件(上告棄却)
4 強制わいせつ罪等と別に児童ポルノ製造罪の成立を認めたことに係る法令適用の誤りの主張について
(1) 論旨:原判示第1及び第2の各事実について、原判決は、強制わいせつ罪と児童買春、児童ポルノに係る行為等の規制及び処罰並びに児童の保護等に関する法律(以下「児童ポルノ法」という。)7条3項の児童ポルノ製造罪(以下「3項製造罪」という。)が成立するとした。しかし、3項製造罪となるのは撮影行為と記録保存行為であるところ、撮影行為は、強制わいせつ罪となるわいせつ行為であり、保護法益が重複し、3項製造罪の法定刑は軽いから、同罪は強制わいせつ罪に吸収されて成立しない。原判決が3項製造罪も成立するとしたことには、判決に影響を及ぼすことが明らかな法令適用の誤りがある。
(2) 判断:3項製造罪は、児童ポルノを製造し、提供する行為は、描写された児童の心身に有害な影響を与え続けるだけでなく、そのような行為が社会に広がるときには、児童を性欲の対象として捉える風潮を助長し、身体的及び精神的に未熟である児童一般の心身の成長に重大な影響を与えることから、提供目的での児童ポルノ製造行為を処罰することとしたものと解される。3項製造罪の保護法益が個人の性的自由を保護法益とする強制わいせつ罪のそれと重複し、同罪に吸収されるとはいえない。原判決が3項製造罪が成立するとしたことに法令適用の誤りはない。
5 不法な公訴受理の主張(原判示第1~第3関係)について
(1) 論旨:原判決は、原判示第1及び第2の各事実における強制わいせつ罪と3項製造罪、同第3の事実における不同意わいせつ罪と児童ポルノ法7条4項所定の児童ポルノ製造罪(以下「4項製造罪」という。)とは、いずれも観念的競合として科刑上一罪の関係にあると判断し、それぞれを一罪として起訴状に公訴事実が記載された各事実について、公訴を棄却しなかった。
  しかし、強制わいせつ罪と3項製造罪の実行行為は、撮影行為の点では重なるものの、BはAに衣服を脱がせる行為をしており、これは強制わいせつ罪の実行行為たるわいせつな行為であるが、3項製造罪の実行行為ではないから、両罪の実行行為は完全には重ならず、一個の行為とはいえない。また、不同意わいせつ罪と4項製造罪の実行行為は、撮影行為及び姿態をとらせる点で重なるものの、記録・保存の部分は重ならず、一個の行為とはいえない。
  強制わいせつ罪と3項製造罪、又は不同意わいせつ罪と4項製造罪とをそれぞれ一個の行為として記載した起訴状記載の公訴事実は、単一性を欠き、訴因が不特定であるから、その公訴は棄却されるべきであった。それをしなかった原審は不法に公訴を受理したものであり、刑訴法378条2号の破棄事由がある。
(2) 判断:原判示第1及び第2の各事実において、性的な意味合いが強い行為は、Aに性的な関心を抱く被告人に提供するために、胸部及び陰部を露出したAの姿態を撮影し、記録・保存した行為である。実母であるBがAの衣服を脱がせた行為は、各わいせつな行為の一部をなすとはいえ、それ自体の性的な意味合いは強くなく、上記性的な意味合いが強い行為をなすための準備的な行為である。このような事案において、Bのした行為を社会的見解上一個のものと評価し、強制わいせつ罪と3項製造罪とがいわゆる観念的競合として科刑上一罪の関係にあるとした原判決の判断が誤っているとはいえない。

  また、原判示第3の事実は、児童の性器等に触るなどの身体にじかに接するわいせつな行為をするとともに、当該行為に係る児童の姿態を撮影して記録・保存するという態様ではなく、Aに胸部及び陰部を露出した姿態をとらせて、これを撮影して記録・保存したというものである。このような事案において、被告人のした行為を社会的見解上一個のものと評価し、不同意わいせつ罪と4項製造罪とがいわゆる観念的競合として科刑上一罪の関係にあるとした原判決の判断が誤っているとはいえない。
  よって、訴因の不特定をいう論旨は、いずれもその前提を欠いており、不法な公訴受理には当たらない。
6 児童ポルノ製造罪の罪数判断に係る法令適用の誤りをいう主張について
(1) 論旨:原判決は、原判示第1から第3までにつきそれぞれ児童ポルノ製造罪が成立するとしたが、同一児童を対象とする数回の製造行為は包括して一罪となる。そうすると、原判示第1から第3までが、いわゆるかすがい現象により科刑上一罪となるから、これらを併合罪とした原判決の法令適用は誤っている。
(2) 判断:原判示第1、第2及び第3の各児童ポルノ製造行為は、1(1)①②のとおり、異なる日に、それぞれAに胸部及び陰部を露出させて、写真を撮影し、記録媒体に記録・保存したという別個の児童ポルノ製造行為である(原判示第1及び第2と第3では行為者や記録装置も異なる。)。同じAを対象とするとはいえ、これらを包括して一罪と評価すべきという根拠はなく、原判示第1、第2及び第3を併合罪とした原判決の判断が誤っているとはいえない。


7 不法な公訴受理の主張(原判示第4~第6関係)について
(1) 論旨:原判決は、原判示第4から第6までにおける各不同意わいせつ罪と性的姿態等撮影罪とは観念的競合として科刑上一罪の関係にあると判断し、それぞれを一罪として起訴状に公訴事実が記載された各事実について、公訴を棄却しなかった。
  しかし、両罪の実行行為は、撮影行為の点では重なるものの、性器を露出させ(原判示第4、第5)、乳房を手で触るなどの行為(同第6)は、不同意わいせつ罪の実行行為たるわいせつな行為であるが、性的姿態等撮影罪の実行行為ではなく、両者は完全には重ならない上、両罪の保護法益も異なることなどから、社会通念上一個の行為とはいえない。両罪を一個の行為として記載した起訴状記載の公訴事実は、単一性を欠き、訴因が不特定であるから、その公訴は棄却されるべきであった。それをしなかった原審は不法に公訴を受理したものであり、刑訴法378条2号の破棄事由がある。
(2) 判断:不同意わいせつ罪と性的姿態等撮影罪の保護法益が異なることは、両罪がそれぞれ成立する根拠となっても、いわゆる観念的競合となり得ない理由にはならない。そして、原判示第4及び第5の各事実について、「露出させたCの性器の周辺部を撮影し」たという行為の態様を踏まえ、その行為を社会的見解上一個のものと評価し、両罪がいわゆる観念的競合として科刑上一罪の関係にあるとした原判決の判断が誤っているとはいえない。よって、訴因の不特定をいう論旨は、その前提を欠いており、不法な公訴受理には当たらない。
  原判示第6については、重なり合うのが胸部を撮影する行為のみであり、上衣をまくり上げて乳房を露出させ、乳房を手で触るといったわいせつな行為をすることと胸部を撮影することとは、行為のもつ意味合いが相当異なることなどからすると、両罪が併合罪の関係にあるとの判断もあり得る。とはいえ、起訴状の公訴事実の記載は、「被告人は、(日時略)(場所略)において、同人(C)に対し、同人が前記状態(重度の知的障害を有していることにより同意しない意思を形成することが困難な状態)にあることに乗じ、同人の上衣をまくり上げてその乳房を露出させた上、その乳房を手で触り、さらに、被告人が使用する携帯電話機で、Cの胸部を撮影し、もってわいせつな行為をするとともに人の性的姿態等を撮影した」というものであるところ、これにより、検察官が不同意わいせつ罪及び性的姿態等撮影罪の各罪となるべき事実としてそれぞれいかなる事実を主張しているかは明らかであり、十分に特定されている。したがって、不法な公訴提起として公訴を棄却するには及ばないから、不法に公訴を受理したとはいえない。