geminiに聞いたら「映像送信要求罪は、その目的が達成された既遂罪である性的姿態撮影罪に吸収される。」「児童ポルノ製造罪は、法条競合の関係にある特別法たる性的姿態撮影罪によって排斥される。」ことになった
ちょっと前は併合罪だって言ってたけど
第3部 統合的考察と最終結論
分析結果の要約
加害者の一個の行為は、原理的には児童ポルノ製造罪、性的姿態撮影罪、映像送信要求罪、そして不同意わいせつ罪という4つの犯罪を成立させる。
罪数処理の最終的判断
第1段階(吸収関係): 映像送信要求罪は、その目的が達成された既遂罪である性的姿態撮影罪に吸収される。
第2段階(特別関係): 児童ポルノ製造罪は、法条競合の関係にある特別法たる性的姿態撮影罪によって排斥される。
第3段階(最終関係): 以上の処理の結果、不同意わいせつ罪と性的姿態撮影罪が残る。これらは一個の行為から生じ、かつ異なる保護法益を侵害するため、刑法第54条第1項に基づき観念的競合の関係に立つ。
結論
結論として、加害者は不同意わいせつ罪と性的姿態撮影罪の観念的競合として訴追されるべきである。科される刑罰は、法定刑の重い不同意わいせつ罪の範囲内(6月以上10年以下の拘禁刑)で決定されることになる。
法的明確性に関する結語
本報告書は、最後に、最高裁判所による最終的な判断が待たれる法的不確実性の領域を指摘して締め括りたい。それは、非接触型の性的搾取行為に対する不同意わいせつ罪の適用という問題である。2023年改正法の目的論的解釈は本罪の適用を強く支持するものの、この領域は依然として発展途上の法分野である。この点に関する司法の最終判断は、デジタル時代における児童保護のあり方に深遠な影響を与えるであろう。
9月23日 8:34
https://g.co/gemini/share/45a7d597fd5c
未成年者に対する自画撮り強要事犯における罪数処理:改正刑法と児童ポルノ禁止法の交錯に関する分析
序論
本報告書は、成人の加害者が10歳の児童に対し、自身の裸の画像を撮影させ、送信させたという事案を想定し、これによって生じうる刑事責任について多角的な法的検討を行う。まず、成立が問題となる4つの主要な犯罪について、その成立可能性を個別に精査する。その上で、本報告書の主眼である「罪数処理」、すなわち、これら複数の犯罪間の法的な関係性を解明し、最終的な法的評価を確定させる。
分析の中心となる法的課題は三点に集約される。第一に、被害者自身が実行行為を担う「製造」や「撮影」といった行為に対し、いかにして「間接正犯」の法理を適用するかという問題である。第二に、2023年に改正された刑法の下で、物理的接触を伴わないデジタル空間上の行為が、いかにして「わいせつな行為」と解釈されうるかという点である。そして第三に、児童ポルノ禁止法という既存の法律と、2023年の刑法改正によって創設された新たな法体系との間の、階層的かつ相互的な関係性の解明である。
本報告書の分析は、日本の性犯罪法制のパラダイムを根底から転換させた画期的な2023年刑法改正を前提とする。この改正は、処罰の根拠を従来の「暴行・脅迫」要件から「同意の不存在」へと移行させたものであり、単なる条文の変更に留まらず、法が保護すべき利益(保護法益)の再定義を意味する 。この立法趣旨こそが、本稿の分析全体を貫く指導原理となる。
第1部 各犯罪の成立可能性
本章では、10歳の児童に裸の画像を自撮りさせ送信させた行為が、4つの個別の犯罪の構成要件をそれぞれ満たすか否かを詳細に検討する。特に、加害者が物理的に行為に介在しない事案の性質上、間接正犯の法理が分析の鍵となる。
1.1 児童ポルノ製造罪
根拠法条
児童買春、児童ポルノに係る行為等の規制及び処罰並びに児童の保護等に関する法律(以下「児童ポルノ禁止法」)第7条第4項が適用される。
「児童ポルノ」該当性の分析
10歳の児童の裸の画像は、特に性的部位が露出または強調されている場合、児童ポルノ禁止法第2条第3項第3号に規定される「衣服の全部又は一部を着けない児童の姿態であって、殊更に児童の性的な部位…が露出され又は強調されているものであり、かつ、性欲を興奮させ又は刺激するもの」という定義に明確に該当する 。「性欲を興奮させ又は刺激するもの」という要件は、一般人の規範的な観点から判断される。
間接正犯による「製造」行為の分析
本罪の成否における核心的な論点は、加害者が物理的にカメラを操作していない点にある。ここで、他者を道具として利用し犯罪を実現する間接正犯の法理が不可欠となる。間接正犯は、刑事責任を問えない者(例えば、年齢、故意の欠如、または強要されている等の理由による)を一方的に利用して犯罪を実行した場合に成立する。
本件において、10歳の児童は成熟した判断能力を欠き、加害者の教唆や心理的支配の下で行為に及んでいるため、「意思なき道具」と評価される。加害者が児童の意思を完全に支配(意思支配)していることから、加害者が真の「製造者」と法的に評価される。判例においても、加害者が児童にポーズを取らせて撮影した場合、シャッターを押したのが誰であるかにかかわらず、加害者が製造罪の主体となることが認められており、この論理は自画撮りの強要事案にも直接的に妥当する 。
成立可能性の結論
以上の分析から、児童ポルノ製造罪の成立は極めて確実である。当該行為によって作成された画像は児童ポルノの定義を満たし、加害者は間接正犯の法理を通じて法的な製造者と見なされる。
1.2 性的姿態撮影罪
根拠法条
性的姿態を撮影する行為等の処罰及び押収物に記録された性的な姿態の影像に係る電磁的記録の消去等に関する法律(以下「性的姿態撮影等処罰法」)第2条第1項第4号が適用される。本罪は2023年の法改正により新設されたものである 。
構成要件の分析
本規定は、「正当な理由がないのに、十三歳未満の者を対象として、その性的姿態等を撮影する行為」を処罰の対象とする 。
「性的姿態等」: この用語は、性器、臀部、胸部といった性的部位、それらを覆う下着、またはわいせつな行為中の姿態などを広く含むと定義されており、児童の裸の画像は明確にこれに該当する 。
「撮影」: 「製造」と同様に、撮影行為は間接正犯の法理によって加害者に帰責される。児童は、加害者の犯罪的意思を実現するための道具として機能している。
年齢に関する特別規定: 決定的に重要なのは、被害者が13歳未満である場合、法律は「ひそかに」といった様態や、酩酊・脅迫といった特定の非同意状態を要求しない点である 。被害者の年齢自体が構成要件の中核をなし、立証が大幅に簡素化される。また、被害者が13歳未満の場合、加害者の年齢は問われない(13歳以上16歳未満を対象とする場合に設けられている5歳以上の年齢差要件とは異なる)。
成立可能性の結論
本罪の成立は疑いの余地がない。加害者が10歳の児童に自画撮りをさせた行為は、間接正犯の法理を通じて、性的姿態撮影等処罰法第2条第1項第4号の構成要件を完全に満たす。
1.3 16歳未満の者に対する映像送信要求罪
根拠法条
刑法第182条第3項が適用される。本罪もまた、2023年の法改正によって導入された、いわゆる「グルーミング行為」を処罰対象とする新たな犯罪である 。
構成要件の分析
本条は、「十六歳未満の者に対し、…性的な姿態をとってその映像を送信することを要求した者」を罰するものである 。
「要求」: 児童に画像の送信を働きかけ、指示し、または圧力をかける行為が「要求」に該当する。その手段(欺罔、脅迫、誘惑など)は問われない。
犯罪の性質: 本罪は、グルーミングという準備的行為そのものを処罰対象とする危険犯である 。したがって、児童が実際に要求に応じ画像を送信したか否かにかかわらず、
要求した時点で犯罪は既遂に達する 。
成立可能性の結論
加害者が児童に裸の画像を撮影し送信するよう求めた瞬間に、本罪は成立する。設例のように画像が実際に送信されている場合、要求行為は既に行われ、かつ、その目的が達成されているため、本罪の成立は明白である。
1.4 不同意わいせつ罪
根拠法条
刑法第176条第1項及び第3項が適用される。
中核的論点:「わいせつな行為」への該当性
伝統的に、「わいせつな行為」は物理的接触を伴うものと解されてきた。本件は非接触型の事案である。
しかし、2023年の刑法改正は、本罪の保護法益が個人の性的自己決定権であることを明確にした 。
刑法第176条第3項は、13歳未満の者に対してわいせつな行為をした場合、暴行・脅迫等の他の要素がなくとも本罪が成立すると定めている 。この規定は、この年齢の児童が性的な事柄に関して法的に有効な同意をする能力がないことを前提としている。
本罪の成立を肯定する論拠は、児童に対し、加害者の性的満足のために自身の裸の画像を制作・共有させるという性的な行為を強要すること自体が、その発達途上にある性的自己決定権に対する深刻な侵害であるという点にある。この行為は、児童を「わいせつな」事象に強制的に参加させるものであり、物理的接触がなくとも、児童に対して行われた「わいせつな行為」と評価できる。
成立可能性の結論
本罪の成否は、4つの犯罪の中で最も法的な議論の余地がある。しかし、改正法の目的論的解釈に立てば、その成立を肯定する強力な論拠が存在する。10歳の児童が対象であることから刑法第176条第3項が適用され、最終的な争点は、司法が「わいせつな行為」の定義を、このような非接触型の性的自己決定権侵害にまで拡張する準備があるか否かにかかっている。2023年改正の精神に鑑みれば、その成立は十分に可能であり、立法者の意図にも沿うものと考えられる。
第2部 罪数処理の法理とその適用
本章では、ユーザーの問いの中核である、加害者の一個の行為が複数の法条に触れる場合に、これを最終的にいかに法的に評価するかという罪数処理の問題を分析する。
罪数判断の前提となる各犯罪の比較分析
罪数処理の具体的な分析に先立ち、対象となる4つの犯罪の特性を以下の表に整理する。この比較表は、各犯罪の保護法益や法定刑といった、罪数判断において決定的に重要な要素を明確化し、後続の分析の基礎を提供する。
罪名 根拠法条 主要な構成要件 保護法益 法定刑
児童ポルノ製造罪 児童ポルノ禁止法7条4項 18歳未満の者の児童ポルノを製造する行為 社会の健全な性的風俗、児童の権利保護
3年以下の拘禁刑又は300万円以下の罰金
性的姿態撮影罪 性的姿態撮影処罰法2条1項4号 正当な理由なく13歳未満の者の性的姿態等を撮影する行為
個人の性的プライバシー・性的羞恥心
3年以下の拘禁刑又は300万円以下の罰金
映像送信要求罪 刑法182条3項 16歳未満の者に対し性的姿態等の映像送信を要求する行為 児童の性的自己決定権の保護(準備的段階)
1年以下の拘禁刑又は50万円以下の罰金
不同意わいせつ罪 刑法176条1項・3項 13歳未満の者に対しわいせつな行為をすること 個人の性的自己決定権・性的自由
6月以上10年以下の拘禁刑
2.1 日本刑法における罪数論の基本原則
罪数処理を理解するためには、以下の基本概念の把握が不可欠である。
法条競合: 一個の行為が外観上複数の構成要件に該当するが、実質的には一個の犯罪しか成立せず、最終的に一つの法条のみが適用される関係。一般法と特別法の関係(特別関係)などがこれに含まれ、特別法が優先して適用される。
観念的競合: 一個の行為が、複数の異なる法益を侵害し、数個の犯罪を成立させる関係。処罰は、成立する犯罪のうち最も重い刑によってなされる(刑法第54条第1項前段)。
併合罪: 複数の独立した行為によって複数の犯罪が成立する関係。刑は原則として合算されるが、法定の上限がある(刑法第45条)。
2.2 児童ポルノ製造罪と性的姿態撮影罪の関係
分析
児童に画像を生成させた一個の行為は、児童ポルノ製造罪と性的姿態撮影罪の両方の構成要件を満たす。これは法条競合、とりわけ一般法と特別法の関係(特別関係)の典型例である。
論拠
性的姿態撮影罪が特別法と解されるべきである。両罪は画像の生成を罰する点で共通するが、性的姿態撮影等処罰法は、個人の性的プライバシーや尊厳を撮影行為から保護するという、より特定の目的を持って近年制定された法律である 。対照的に、児童ポルノ禁止法は、社会風俗の維持や児童搾取の防止といった、より一般的・社会的な法益を保護する 。また、「撮影」という行為概念は、「製造」よりも具体的かつ限定的である。
結論
「特別法は一般法を破る」(lex specialis derogat legi generali)の原則に基づき、性的姿態撮影罪が適用され、児童ポルノ製造罪は別途訴追されない。
2.3 映像送信要求罪と性的姿態撮影罪の関係
分析
「要求」行為は「撮影」行為に先行する別個の行為であるが、要求は撮影という既遂罪に直結する準備的行為である。これは、法条競合の一種である吸収関係と評価される。
論拠
映像送信要求罪は、グルーミングの試み自体を罰する危険犯として設計されている 。その試みが成功し、より重い性的姿態撮影罪が既遂に達した場合、準備的行為である要求の違法性は、既遂罪の違法性の中に吸収・包摂されると解するのが合理的である。両方を処罰することは、法益侵害評価の二重評価となる。法律は、未遂(要求)と既遂(撮影)の双方に処罰規定を設けているが、既遂に至った場合に両方を適用することは意図していない。
結論
映像送信要求罪は性的姿態撮影罪に吸収され、独立しては処罰されない。
2.4 不同意わいせつ罪と性的姿態撮影罪の関係
分析
ここが最も複雑な関係性を示す部分である。加害者の一個の教唆行為は、同時に(1)児童の性的自己決定権を侵害し(わいせつな行為)、かつ(2)違法な画像を生成することでその性的プライバシーを侵害する(撮影)。
論拠
これら二つの犯罪は、保護する法益が根本的に異なる。
不同意わいせつ罪: 個人の性的自由・自己決定権という、極めて人格的な中核的権利を保護する。
性的姿態撮影罪: 性的画像の生成と拡散の可能性に伴う、性的プライバシーと羞恥心からの自由という権利を保護する。
結論
一個の行為が二つの異なる保護法益を侵害するため、両罪の関係は観念的競合となる。両罪ともに成立するが、科刑上一罪として扱われ、処罰は両罪のうち法定刑がより重い犯罪、すなわち不同意わいせつ罪(6月以上10年以下の拘禁刑)の範囲内で決定される。この結論は、物理的な性暴力と同時に児童ポルノを製造した事案において、両罪を観念的競合と判断した判例の傾向とも整合する 。一部に併合罪とした裁判例も存在するが 、一個の連続した行為については観念的競合と解するのが通説的見解である。
この分析は、現行法体系に内包された明確な価値序列を浮き彫りにする。最も人格的で深刻な侵害(不同意わいせつ罪における性的自己決定権の侵害)が最も重い法定刑を伴い、量刑の基準となる。プライバシーの侵害(性的姿態撮影罪)も犯罪として成立するが、同一の行為から生じたものとして観念的に結合される。より一般的な社会的法益を保護する犯罪(児童ポルノ製造罪)は、より具体的なプライバシー侵害の犯罪にその座を譲る。そして、準備的段階の犯罪(映像送信要求罪)は、既遂罪の中に完全に吸収される。この構造は、個人の性的自由に対する直接的な侵害を最も重大な犯罪と位置づけ、関連する他の法益侵害をそれに吸収させるか、二次的なものとして序列化するという、一貫した(ただし複雑な)立法的・司法的論理を反映している。
第3部 統合的考察と最終結論
分析結果の要約
加害者の一個の行為は、原理的には児童ポルノ製造罪、性的姿態撮影罪、映像送信要求罪、そして不同意わいせつ罪という4つの犯罪を成立させる。
罪数処理の最終的判断
第1段階(吸収関係): 映像送信要求罪は、その目的が達成された既遂罪である性的姿態撮影罪に吸収される。
第2段階(特別関係): 児童ポルノ製造罪は、法条競合の関係にある特別法たる性的姿態撮影罪によって排斥される。
第3段階(最終関係): 以上の処理の結果、不同意わいせつ罪と性的姿態撮影罪が残る。これらは一個の行為から生じ、かつ異なる保護法益を侵害するため、刑法第54条第1項に基づき観念的競合の関係に立つ。
結論
結論として、加害者は不同意わいせつ罪と性的姿態撮影罪の観念的競合として訴追されるべきである。科される刑罰は、法定刑の重い不同意わいせつ罪の範囲内(6月以上10年以下の拘禁刑)で決定されることになる。
法的明確性に関する結語
本報告書は、最後に、最高裁判所による最終的な判断が待たれる法的不確実性の領域を指摘して締め括りたい。それは、非接触型の性的搾取行為に対する不同意わいせつ罪の適用という問題である。2023年改正法の目的論的解釈は本罪の適用を強く支持するものの、この領域は依然として発展途上の法分野である。この点に関する司法の最終判断は、デジタル時代における児童保護のあり方に深遠な影響を与えるであろう。
9月23日 7:48の回答は併合罪だった
Gemini との会話
10歳児童に裸の画像を送らせた場合の、不同意わいせつ罪(176条3項)と性的姿態撮影罪と16歳未満の者に対する映像送信要求罪と、児童ポルノ製造罪の罪数処理
これは情報提供のみを目的としています。医学的なアドバイスや診断については、専門家にご相談ください。
こちらがこのトピックに取り組むための計画です。変更が必要な場合はお知らせください。
児童へのわいせつ画像送信罪数処理
ウェブサイトをリサーチ
(1) 不同意わいせつ罪(刑法176条3項)、性的姿態撮影罪、映像送信要求罪、児童ポルノ製造罪のそれぞれの構成要件(犯罪が成立するための条件)を定義する。
(2) 「10歳の児童に自己の裸の画像を撮影させ、送信させる」という行為が、(1)で定義した各犯罪の構成要件にそれぞれどのように該当するかを分析する。特に、児童ポルノ製造罪における「製造」の解釈について調査する。
(3) 罪数処理に関する法的な概念である「法条競合」「観念的競合」「牽連犯」「併合罪」について、それぞれの意味と、どのような場合に適用されるかを解説する。
(4) 挙げられた4つの犯罪が相互にどのような罪数関係にあるかについて、判例、学説、法務省などの公的機関による解説を調査する。
(5) 特に、児童ポルノ製造罪と不同意わいせつ罪、および児童ポルノ製造罪と性的姿態撮影罪の関係性(例:観念的競合となるか、法条競合となるか)に焦点を当てて詳しく分析する。
(6) 映像送信「要求」罪が、実際に映像が送信されて児童ポルノ製造罪などが成立した場合に、後者の罪に吸収される関係(法条競合の一種である吸収関係)にあるか否かを明らかにする。
(7) 以上の調査結果を総合し、設問のケースにおいて4つの犯罪が成立する場合、最終的にどのような罪数関係として扱われ、科刑上どのように処理されるか(例:「観念的競合として最も重い罪の刑で処断される」など)について結論をまとめる。
い。
児童へのわいせつ画像送信罪数処理
完了済み
9月23日 7:48
Deep Research
Gemini は不正確な情報を表示することがあるため、生成された回答を再確認するようにしてください。
児童へのわいせつ画像送信罪数処理
目次
10歳児童に対する自画撮り要求事案における複数性犯罪の罪数関係に関する法的考察
序論
問題の提起
現代社会における情報通信技術の飛躍的な発展は、我々の生活に多大な便益をもたらす一方で、新たな形態の犯罪、とりわけ児童を標的とした性的搾取の温床となっている。スマートフォンやソーシャル・ネットワーキング・サービスの普及は、加害者が物理的な接触なくして児童に接近し、深刻な精神的苦痛と人格的被害を与えることを可能にした。本稿は、このような現代的状況を背景として、加害者が10歳の児童に対し、自身の裸体の画像(いわゆる「自画撮り」画像)を撮影させ、これを送信させたという具体的な事案を想定する。
この一連の行為は、近年の法改正により整備された複数の刑罰法規に抵触する可能性を内包している。具体的には、①刑法第176条3項の不同意わいせつ罪、②「性的な姿態を撮影する行為等の処罰及び押収物に記録された性的な姿態の影像に係る電磁的記録の消去等に関する法律」(以下「性的姿態撮影等処罰法」)第2条1項4号の性的姿態撮影罪、③刑法第182条3項の16歳未満の者に対する映像送信要求罪、そして④「児童買春、児童ポルノに係る行為等の規制及び処罰並びに児童の保護等に関する法律」(以下「児童ポルノ法」)第7条5項の児童ポルノ製造罪という、四つの重大な犯罪の構成要件に該当する可能性が考えられる。
分析の核心
本稿の目的は、単に各犯罪の成立要件該当性を個別に検討することに留まらない。その核心的課題は、これら四罪がすべて成立するとした場合の「罪数処理」、すなわち、刑事訴訟手続及び量刑判断の基礎となる犯罪の個数をいかに判断すべきかを明らかにすることにある。具体的には、これらの犯罪相互の関係が、実質的に一罪として扱われる法条競合、科刑上一罪(観念的競合・牽連犯)に該当するのか、あるいはそれぞれが独立した犯罪として処断される併合罪の関係に立つのかを、各罪の保護法益、行為態様、そして関連する判例理論を基に、多角的かつ詳細に分析・考察する。
デジタル技術が介在する現代の児童性的搾取は、加害者の一連の行為が、歴史的経緯と思潮の変化を反映して継ぎ足されてきた複数の法規範に同時に抵触するという複雑な様相を呈する。かつて性犯罪が主として物理的接触を前提としていたのに対し、インターネットは遠隔でのグルーミングや搾取を可能にし、これに対応すべく映像送信要求罪のような新たな規制が生まれた 。さらに、撮影されること自体の苦痛と、その画像がデジタル情報として半永久的に拡散しうるという二次的被害の深刻さから、性的姿態撮影等処罰法が制定され、「触れられる害」とは異なる「撮られる害」が独立した処罰対象となった 。これらに加え、児童ポルノ法は、搾取の「成果物」である画像そのものが社会に与える害悪に着目する。 ?
このように、加害者の「裸の写真を送れ」という一つの要求から始まる行為は、それぞれ異なる保護法益を念頭に置いて制定された複数の法規制の網に同時にかかる。したがって、本稿における罪数処理の分析は、単なる法技術論に終始するものではなく、複合的な被害の実態を刑罰にいかに正当に反映させるかという、刑事司法における実質的課題に応えようとする試みである。
第1章 各犯罪の成立要件の検討
本章の目的
罪数関係を論じる前提として、まず本件想定事案において、問題となる四つの各犯罪が成立するか否かを、それぞれの構成要件に即して詳細に検討する。この検討を通じて、各犯罪の行為態様と保護法益の特質を明確化し、後続する罪数分析のための確固たる基礎を築く。
Table 1: 成立が問題となる犯罪の概要
犯罪名 根拠法条 主要構成要件 法定刑
16歳未満の者に対する映像送信要求罪 刑法第182条3項 16歳未満の者に対し、性交等の姿態等の映像を送信するよう要求すること。 1年以下の拘禁刑又は50万円以下の罰金
児童ポルノ製造罪 児童ポルノ法第7条5項 児童に同法所定の姿態をとらせ、これを描写することにより、児童ポルノを製造すること。 3年以下の懲役又は300万円以下の罰金
不同意わいせつ罪 刑法第176条3項 16歳未満の者に対し、わいせつな行為をすること。 6月以上10年以下の拘禁刑
性的姿態撮影罪 性的姿態撮影等処罰法第2条1項4号 正当な理由なく、13歳未満の者を対象として、その性的姿態等を撮影すること。 3年以下の拘禁刑又は300万円以下の罰金
Google スプレッドシートにエクスポート
1.1. 16歳未満の者に対する映像送信要求罪(刑法第182条3項)の成立
2023年の刑法改正により新設された本罪は、16歳未満の者に対し、性交等の姿態や性的な部位を露出した姿態などの映像を送信することを「要求」する行為そのものを処罰の対象とする 。本罪の立法趣旨は、児童に対する性的搾取の端緒となる、いわゆる「グルーミング」行為を早期段階で捕捉し、より深刻な被害への進展を阻止することにある。 ?
本件事案において、加害者は10歳の児童(16歳未満)に対し、裸の画像の送信を求めている。この行為は、条文上の「性的な部位を露出した姿態」の「映像を送信すること」を「要求」する行為に明確に該当する 。本罪は要求行為自体をもって犯罪が成立する挙動犯であり、児童が実際に画像を送信したか否かは既遂・未遂の区別に関わらない。本件では、児童が要求に応じて画像を送信しているため、犯罪は既遂に達している。 ?
この犯罪が処罰対象とする「要求」という行為は、その後の撮影やわいせつ行為とは時間的にも因果的にも先行する、独立したコミュニケーション行為である。法がこの準備的・教唆的な行為を独立した犯罪として規定したことは、児童を性的搾取の危険な状況に引き込む行為自体の可罰性を認めたことを意味する。この点は、後の罪数処理において、本罪が他の犯罪とは別個の行為として評価されるべきであるという議論の強力な根拠となる。
1.2. 児童ポルノ製造罪(児童ポルノ法第7条5項)の成立
児童ポルノ法第7条5項は、「児童に第二条第三項各号のいずれかに掲げる姿態をとらせ、これを写真…に描写することにより、当該児童に係る児童ポルノを製造した者」を処罰すると規定している 。ここで問題となるのは、加害者が直接撮影行為を行わず、児童自身に撮影させた(自画撮りさせた)場合に、「製造」の主体となりうるかである。 ?
この点、刑法理論における「間接正犯」の法理が適用される。間接正犯とは、他人を意思なき道具として利用し、自己の犯罪意思を実現する場合に、その利用者自身を正犯として処罰する理論である。判例・学説上、児童ポルノの「製造」に関してもこの法理の適用は広く認められており、例えば、加害者が児童を脅迫・欺罔するなどして心理的に支配し、その意思を抑圧した上で自画撮りをさせた場合、加害者は児童を「道具」として利用して児童ポルノを「製造」したと評価される 。 ?
本件事案において、加害者は10歳の児童に対し、裸の画像を撮影・送信させている。児童の年齢や加害者との関係性に鑑みれば、児童が自由な意思に基づいてこれに応じたとは到底考え難く、加害者による何らかの有形・無形の強制や心理的支配があったとみるのが自然である。したがって、加害者の行為は児童ポルノ製造罪の間接正犯の構成要件を充足すると解される。送信された画像が、衣服を全部又は一部着けない児童の姿態であって、性的な部位が強調され、かつ性欲を興奮・刺激するものであることは明らかであり、児童ポルノの定義にも合致する 。 ?
1.3. 不同意わいせつ罪(刑法第176条3項)の成立
2023年の刑法改正により、いわゆる性交同意年齢が13歳から16歳に引き上げられ、16歳未満の者に対するわいせつ行為は、原則として相手方の同意の有無を問わず処罰されることとなった 。刑法第176条3項は、「十六歳未満の者に対し、わいせつな行為をした者…も、第一項と同様とする」と規定する。本件事案の被害者は10歳であり、この年齢要件を充足するため、加害者の行為が「わいせつな行為」に該当すれば、本罪が成立する。 ?
ここで問題となるのは、直接的な身体接触を伴わない「自画撮りをさせる行為」が「わいせつな行為」にあたるかである。この点、「わいせつな行為」とは、行為者の性的意図の有無を問わず、客観的に見て被害者の性的羞恥心を害し、健全な性的道義観念に反する行為を広く指すと解されている。判例・通説上、必ずしも身体への接触を要件としておらず、「裸にして写真を撮る行為」もわいせつな行為に含まれうると解されている 。 ?
児童に自身の裸体を撮影させる行為は、児童自身の行為を介在させてはいるものの、その実質は加害者が児童の性的尊厳を侵害し、深刻な羞恥心や嫌悪感を抱かせる行為に他ならない。これは、児童の性的自己決定権を根本から踏みにじるものであり、客観的に見て「わいせつな行為」に該当することは疑いがない。したがって、加害者は、児童にわいせつな行為をさせたものとして、本罪の間接正犯としての罪責を負う。
1.4. 性的姿態撮影罪(性的姿態撮影等処罰法第2条1項4号)の成立
2023年7月13日に施行された性的姿態撮影等処罰法は、従来の迷惑防止条例等では十分に規制しきれなかった盗撮等の行為に厳正に対処するため、新たな処罰規定を設けたものである 。同法第2条1項4号は、「正当な理由がないのに、十三歳未満の者を対象として、その性的姿態等を撮影」する行為を、3年以下の拘禁刑又は300万円以下の罰金に処すると定めている 。 ?
本件事案の被害者は10歳であり、「十三歳未満の者」という要件を明確に満たす。また、児童ポルノ製造罪と同様、加害者が児童を道具として利用し「撮影」させた場合、間接正犯として本罪が成立することに争いはない。
この犯罪の新設は、立法府が、性的搾取における「撮影されること」自体の固有の被害性を認識したことを示している。不同意わいせつ罪が性的自由全般、特に身体の安全性を保護するのに対し、また児童ポルノ法が製造された「物」の社会的害悪を問題にするのに対し、本罪は「みだりに自己の性的な姿態を記録されない」という、より特化されたプライバシー権・人格権を保護するものである。この行為は、被害者の性的イメージを恒久的なデジタル記録として固定化し、無限に複製・拡散されうる危険性を創出する点で、一過性の身体的接触とは異なる質の永続的な精神的苦痛をもたらす。このように、本罪が独自の保護法益を有することは、後の罪数処理、特に不同意わいせつ罪との関係を考察する上で極めて重要な要素となる。
第2章 罪数処理の基本原則
本章の目的
第3章で展開する具体的な罪数分析に先立ち、その判断の拠り所となる罪数論の基本概念を整理し、その定義と適用場面を明確にする。罪数処理とは、一個の行為者が犯した犯罪の個数を確定し、それに応じた処断刑を導き出すための一連の法的判断過程である。この過程は、法条競合、科刑上一罪、そして併合罪という三つの主要な類型に大別される。
Table 2: 罪数処理の類型と判断基準
類型 定義 根拠法条 処断刑の決定方法
法条競合 一個の行為が外観上複数構成要件に該当するが、法規の性質上、実質的には一罪のみが成立する場合。 - 適用される一罪の法定刑による。
(特別関係) 一方の法条が他方の特別規定である場合。 - 特別規定の法定刑が適用される。
(補充関係) 一方の法条が他方を補充する関係にある場合。 - 基本となる法条の法定刑が適用される。
科刑上一罪 実質的には数罪が成立するが、科刑上、一罪として扱われる場合。 刑法第54条1項 成立する数罪のうち、最も重い刑により処断する。
(観念的競合) 一個の行為が二個以上の罪名に触れる場合。 刑法第54条1項前段 最も重い罪の法定刑による。
(牽連犯) 犯罪の手段または結果である行為が他の罪名に触れる場合。 刑法第54条1項後段 最も重い罪の法定刑による。
併合罪 確定裁判を経ていない二個以上の罪で、科刑上一罪の関係にないもの。 刑法第45条 原則として、最も重い罪の長期を1.5倍するなどの加重を行う(刑法第47条)。
Google スプレッドシートにエクスポート
2.1. 法条競合
法条競合は、一個の犯罪行為が、形式的には複数の刑罰法規の構成要件に該当するように見えるものの、それらの法規間の論理的な関係から、実質的には一個の法規のみが適用され、結果として一罪が成立すると判断される場合を指す 。これは罪数処理の最も初期段階で検討される問題であり、法条競合と判断されれば、他の罪数関係(科刑上一罪や併合罪)を検討するまでもなく、一罪として処理される。 ?
代表的な類型として「特別関係」と「補充関係」がある。「特別関係」とは、一方の構成要件が他方の構成要件をすべて包含し、さらに特別な要素を加えている関係をいう。例えば、殺人罪(刑法第199条)に対する同意殺人罪(刑法第202条)がこれにあたり、この場合は特別法である同意殺人罪のみが適用される。「補充関係」とは、一方の法条が第一次的に適用され、それが適用されない場合に限って他方の法条が補充的に適用される関係をいう。例えば、犯罪の既遂罪と未遂罪の関係がこれにあたり、既遂罪が成立する場合には未遂罪の成立は吸収される。
2.2. 科刑上一罪
科刑上一罪とは、実質的には複数の犯罪が成立していると認められるものの、行為の密接性や一体性から、処断(量刑)にあたっては一個の犯罪として扱うのが相当とされる場合である 。刑法第54条1項は、「一個の行為が二個以上の罪名に触れ、又は犯罪の手段若しくは結果である行為が他の罪名に触れるときは、その最も重い刑により処断する」と規定している 。 ?
このうち、前段の「一個の行為が二個以上の罪名に触れる」場合が「観念的競合」である 。ここでの「一個の行為」とは、自然的観察のもとで社会的見解上一個のものと評価される動態を指すとされる(最決昭和49年5月29日)。例えば、一個の投石行為によって窓ガラスを損壊し(器物損壊罪)、同時に室内にいた人に傷害を負わせた(傷害罪)場合が典型例である。 ?
後段の「犯罪の手段若しくは結果である行為が他の罪名に触れる」場合が「牽連犯」である 。これは、複数の行為が存在するものの、それらの間に目的と手段、原因と結果という密接な関係があるために、全体を一体として評価するものである。例えば、窃盗の目的で他人の住居に侵入する行為(住居侵入罪と窃盗罪)がこれにあたる。 ?
2.3. 併合罪
併合罪とは、同一の被告人による、まだ確定裁判を経ていない二個以上の犯罪であって、前述の法条競合や科刑上一罪の関係に立たないものを指す(刑法第45条)。これは、複数の独立した犯罪行為を犯した場合に適用される原則的な罪数関係である。 ?
併合罪の処断刑は、科刑上一罪とは異なり、犯した複数の罪を合算して処罰するという思想に基づいている。具体的には、有期の拘禁刑(懲役・禁錮)の場合、最も重い罪について定めた刑の長期にその二分の一を加えたものを長期の上限とし(ただし、各罪の長期の合計を超えることはできない)、罰金の場合は各罪の罰金額の合計以下とするなど、刑の加重が行われる(刑法第47条、第48条)。これにより、複数の法益侵害を行ったことに対する応報が、量刑上明確に反映されることになる。 ?
第3章 四罪間の罪数関係の具体的分析
本章の目的
第1章で成立を認めた四つの犯罪(映像送信要求罪、児童ポルノ製造罪、不同意わいせつ罪、性的姿態撮影罪)について、第2章で概説した罪数処理の基本原則を適用し、それらの相互関係を網羅的かつ具体的に分析する。分析は、①行為の単複、②保護法益の異同、③法条間の関係性、④関連判例の動向という四つの視点から進める。
3.1. 映像送信要求罪と他の三罪との関係
まず、映像送信要求罪と、その後の児童による自画撮り行為によって成立する他の三罪(不同意わいせつ罪、児童ポルノ製造罪、性的姿態撮影罪)との関係を検討する。
ここでの決定的な判断要素は「行為の個数」である。映像送信要求罪は、加害者が児童に対して裸の画像の送信を「要求」した時点で成立する 。この「要求」は、言語やメッセージ送信といったコミュニケーション行為である。一方、他の三罪を成立させる行為は、この要求を受けて児童自身が行う「撮影」行為(これを加害者の間接正犯行為と評価する)である。 ?
このように、「要求」行為と「撮影」行為は、時間的に先行・後続の関係にあり、行為の主体(直接の行為者)も異なり、行為態様も全く異なる。自然的・社会的な見地から見て、これらを「一個の行為」と評価することは困難である。また、両者の間に手段・結果の関係を認めて牽連犯とすることも、要求行為が常に撮影行為の不可欠な手段とまでは言えず、論理的必然性に乏しい。
さらに、保護法益の観点からも、映像送信要求罪がグルーミング行為からの児童の保護という、より早期の段階における安全を確保しようとするのに対し、他の三罪は性的自己決定権や性的プライバシーといった、より直接的な人格的法益の侵害を問題にする。この保護法益の差異も、両者を独立した犯罪と評価すべきことを裏付ける。
以上の分析から、映像送信要求罪と、後述する他の三罪の集合体とは、それぞれが独立した別個の犯罪行為として評価されるべきであり、両者の関係は**併合罪(刑法第45条)**となると解するのが最も論理的である。この法的構成は、児童を性的搾取へと誘い込むグルーミング行為の悪質性を独立して評価し、その後の性的虐待行為の罪責に加えて処罰することを可能にする。これは、オンラインにおける児童搾取の段階的かつ複合的な被害実態を量刑に適切に反映させる上で、極めて重要な意義を持つ。
3.2. 不同意わいせつ罪と児童ポルノ製造罪の関係
次に、加害者が児童に自画撮りをさせるという一個の間接正犯行為によって同時に成立する、不同意わいせつ罪と児童ポルノ製造罪の関係を検討する。
この二罪は、一個の行為が二つ以上の罪名に触れる典型的な場面であり、一見すると観念的競合(刑法第54条1項前段)の関係に立つように思われる。しかし、罪数処理の判断においては、行為の数だけでなく、保護法益の異同が重要な考慮要素となる。
不同意わいせつ罪(刑法第176条3項)の保護法益は、個人の性的自由・性的自己決定権という、専ら個人的法益であると解されている 。これに対し、児童ポルノ製造罪の保護法益は、被写体となった児童個人の人格的利益(個人的法益)を保護すると同時に、「児童を性欲の対象としてとらえる風潮の蔓延を防止し、もって児童の権利を擁護する」という ?
社会的法益をも保護の対象としている 。 ?
このように、両罪の保護法益は一部重なりつつも、児童ポルノ製造罪は社会全体の健全な風俗という、不同意わいせつ罪にはない独自の保護法益を含んでいる。一個の行為が、質的に全く異なる複数の法益を同時に侵害した場合、これを一個の犯罪として最も重い刑のみで処断する(観念的競合)のではなく、それぞれの法益侵害を独立した犯罪として評価し、併合罪として処断すべきであるという考え方がある。
この点に関して、参考となる下級審判例が存在する。前橋地方裁判所は、旧強制わいせつ罪と児童ポルノ製造罪の関係について、被告人側の観念的競合の主張を退け、両罪を併合罪の関係にあると判断した 。この判決は、両罪の保護法益が異なることを重視した判断であると解釈できる。 ?
判例の立場を尊重し、また、個人的法益の侵害と社会的法益の侵害という質的に異なる二つの重大な結果をそれぞれ独立して評価することの妥当性に鑑みれば、両罪の関係は観念的競合ではなく、**併合罪(刑法第45条)**と解するのが相当である。
3.3. 不同意わいせつ罪と性的姿態撮影罪の関係
児童に自画撮りをさせる一個の行為は、不同意わいせつ罪と性的姿態撮影罪の双方の構成要件を充足する。ここでも行為は一個であり、両罪の関係が問題となる。
両罪の保護法益は、共に個人の性的自由やプライバシー、性的自己決定権であり、極めて近接している 。性的姿態撮影罪は、その中でも特に「みだりに自己の性的な姿態を撮影されない利益」という、より特化された法益を保護するものと位置づけられる。もし通常の法解釈を適用すれば、より具体的な行為を規制する性的姿態撮影罪が、より一般的な不同意わいせつ罪の特別法にあたり、法条競合(特別関係)となって性的姿態撮影罪のみが成立すると解する余地もあった。 ?
しかし、この点については、立法府が明確な指針を示している。性的姿態撮影等処罰法第2条3項は、「前二項の規定は、刑法第百七十六条…の規定の適用を妨げない」と規定しているのである 。この「適用を妨げない」という規定は、両罪が法条競合の関係に立つことを明確に否定し、併存して適用されうることを立法的に確認したものである。これは、撮影という要素が加わったことで、より包括的な不同意わいせつ罪の適用が排除されるという不合理な結論を避けるための、意図的な立法措置である。 ?
したがって、法条競合の関係にはないことが明らかである。そして、一個の行為が、立法府によって併存が予定された二つの犯罪の構成要件を充足する場合、これはまさに観念的競合の定義に合致する。すなわち、児童に自画撮りをさせるという一個の行為は、わいせつ行為としての側面と撮影行為としての側面を併せ持ち、それぞれが独立して法的評価を受けるべきである。
結論として、不同意わいせつ罪と性的姿態撮影罪は、**観念的競合(刑法第54条1項前段)**の関係に立つと解するのが、条文の趣旨に最も合致した解釈である。
3.4. 児童ポルノ製造罪と性的姿態撮影罪の関係
最後に、児童ポルノ製造罪と性的姿態撮影罪の関係を検討する。これもまた、児童に自画撮りをさせる一個の行為によって成立する二つの犯罪である。
両罪の関係については、二つの解釈が可能である。
第一に、法条競合(特別関係)と解する見方である。児童ポルノ製造罪は「18歳未満の児童」の「ポルノグラフィ」の製造に特化した規定であるのに対し、性的姿態撮影罪は被写体の年齢を問わず(ただし16歳未満については特別の規定がある)一般的に「性的姿態」の「撮影」を罰する規定である。したがって、被写体が13歳未満の児童である本件事案に限れば、児童ポルノ製造罪が性的姿態撮影罪の特別法にあたり、児童ポルノ製造罪のみが成立すると考えることができる。
第二に、観念的競合と解する見方である。この見方は、両罪の保護法益の差異を重視する。前述のとおり、性的姿態撮影罪は主として個人の性的プライバシーという個人的法益を保護する 。一方、児童ポルノ製造罪は個人的法益に加えて ?
社会的法益をも保護する 。両法の立法趣旨も異なり、性的姿態撮影罪が撮影行為そのものによるプライバシー侵害を直接の処罰対象とするのに対し、児童ポルノ法は製造されたポルノが流通することによる二次的・永続的な被害や社会風俗への悪影響を防ぐという、より広範な目的を持つ。この保護法益の質的な差異を重視すれば、一個の行為が二つの異なる法益を侵害したとして、両罪の成立を認め、観念的競合の関係に立つと解するべきである。 ?
この点に関する確立した判例・学説は未だ存在しないが、本稿では第二の見解、すなわち観念的競合と解する立場を支持したい。もし特別関係と解した場合、より悪質性の高い社会的法益侵害を伴う児童ポルノ製造罪が成立することによって、個人的法益を保護する性的姿態撮影罪の成立が排除されてしまう。これは、被害者の受けたプライバシー侵害という側面が刑罰評価の上で希薄化する可能性を意味し、処罰の均衡を欠くおそれがある。したがって、保護法益の差異を重視し、両罪は**観念的競合(刑法第54条1項前段)**の関係に立つと解するのが、被害者の権利保護と社会防衛の両立という観点からより妥当であると考える。
第4章 結論と科刑への影響
4.1. 最終的な罪数処理の判断
以上の各章における分析を統合し、本件事案における四罪間の最終的な罪数関係を結論付ける。
行為の分離: まず、加害者の「要求」行為と、それによって引き起こされた児童の「撮影」行為は、時間的・態様的に明確に区別される別個の行為である。したがって、映像送信要求罪は、他の三罪とは独立した一個の犯罪を構成する。
一個の行為から生じる三罪の整理: 次に、児童に自画撮りをさせるという一個の行為から生じる不同意わいせつ罪、性的姿態撮影罪、児童ポルノ製造罪の三罪の関係を整理する。
不同意わいせつ罪と性的姿態撮影罪: この二罪は、性的姿態撮影等処罰法第2条3項の明文規定により法条競合が否定され、一個の行為が二つの罪名に触れることから観念的競合の関係に立つ。
児童ポルノ製造罪と他の二罪: 児童ポルノ製造罪は、個人的法益に加えて社会的法益をも保護するという点で、他の二罪とは保護法益を質的に異にする。判例が旧強制わいせつ罪との関係で併合罪を認めた趣旨を尊重し、児童ポルノ製造罪は、他の個人的法益を侵害する罪とは独立して評価されるべきである。したがって、児童ポルノ製造罪は、不同意わいせつ罪と性的姿態撮影罪の観念的競合体とは併合罪の関係に立つと解する。
総合的結論: 以上の考察から、本件事案における罪数関係は、以下の三つの処罰単位が、それぞれ**併合罪(刑法第45条)**の関係に立つと結論付けるのが最も論理的かつ妥当である。
第一の単位: 映像送信要求罪(刑法第182条3項)
第二の単位: 児童ポルノ製造罪(児童ポルノ法第7条5項)
第三の単位: 不同意わいせつ罪(刑法第176条3項)と性的姿態撮影罪(性的姿態撮影等処罰法第2条1項4号)の観念的競合
数式的に表現すれば、[映像送信要求罪] ? [児童ポルノ製造罪] ? [科刑上一罪としての不同意わいせつ罪・性的姿態撮影罪] の三者が併合罪となる。
4.2. 処断刑の算定
上記結論に基づき、本件事案における処断刑(裁判官が宣告しうる刑罰の範囲)の上限を算定する。
科刑上一罪の処理: まず、第三の単位である観念的競合について処理する。不同意わいせつ罪の法定刑は「6月以上10年以下の拘禁刑」、性的姿態撮影罪の法定刑は「3年以下の拘禁刑又は300万円以下の罰金」である。刑法第54条1項の規定により、これらのうち最も重い刑、すなわち**不同意わいせつ罪の法定刑(6月以上10年以下の拘禁刑)**が適用される。 ?
併合罪の処理: 次に、この科刑上一罪(法定刑:10年以下の拘禁刑)と、第一の単位である映像送信要求罪(法定刑:1年以下の拘禁刑)、第二の単位である児童ポルノ製造罪(法定刑:3年以下の懲役) が併合罪として処理される。 ?
刑の加重: 併合罪の関係にある複数の罪のうち、最も重い刑は不同意わいせつ罪の「10年以下の拘禁刑」である。刑法第47条本文の規定に基づき、併合罪加重として、その長期(10年)にその二分の一(5年)が加えられる。
10年×1.5=15年
したがって、本件事案における最終的な処断刑の上限は拘禁刑15年となる。
この結論は、加害者の一連の行為が、グルーミングによる児童の誘引、性的尊厳の侵害、性的プライバシーの侵害、そして児童ポルノという有害な成果物の創出という、多岐にわたる深刻な法益侵害を引き起こしたことを刑罰上正当に評価するものである。特に、一個の行為であっても、それが侵害する法益が個人的なものと社会的なものとで質的に異なる場合には、それぞれを独立した犯罪として評価し、刑罰に反映させるべきであるという刑事司法の要請に応えるものと言える。児童に対する複合的かつ深刻な性的搾取に対しては、このような厳格な罪数処理を適用することが、被害者の保護と社会秩序の維持の両面から不可欠であると考える。