児童ポルノ・児童買春・児童福祉法・監護者性交・強制わいせつ・青少年条例・不正アクセス禁止法・わいせつ電磁的記録記録被告事件弁護人 奥村徹弁護士の見解(弁護士直通050-5861-8888 hp3@okumura-tanaka-law.com)

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児童は実在すること・・法務省刑事局参事官玉本将之「児童買春、児童ポルノに係る行為等の処罰及び児童の保護等に関する法律(平成26年法律第79号による改正前のもの)における「児童ポルノ」(同法2条3項)の意義、児童ポルノ製造罪(同法7条5項)が成立するためには当該児童ポルノに描写されている人物が製造時に18歳未満であることを要するか(消極)(最高裁令和2年1月27日決定、裁判所ウェブサイト掲載)」警察学論集第73巻第7号

児童ポルノ」の意義
児童ポルノ法における「児童ポルノ」は、同法2条3項において、「写真、電磁的記録……に係る記録媒体その他の物であって、次の各号のいずれかに掲げる児童の姿態を視覚により認識することができる方法により描写したもの」と定義されている。
そして、ここでいう「児童の姿態」については、法文上直接明示されてはいないものの、平成11年の児童ポルノ法制定時から、実在する児童の姿態を意味し、したがって実在しない児童の姿態を描写したものは「児童ポルノ」に該当しないと解されてきた5)。
その実質的理由として、児童ポルノ法は、「児童ポルノ」について、
それが児童を性の対象とする風潮を助長するのみならず、描写の対象となった児童の人権を害するものであるという観点から、必要な規制を行うものであるところ、実在しない児童を描写したポルノについては、描写の対象となった児童の人権を害するということはできないという説明がなされているが6)、児童ポルノ法2条1項は、「この法律において「児童」とは、十八歳に満たない者をいう。」と規定して、「児童」の範囲を年齢によって画しており、年齢は、出生の日から起算し、所定の方法によって計算するものである(年齢計算二関スル法律1項、2項)ことからすると、「児童」が現に実在する人物に限られ、「児童ポルノ」も実在する児童の姿態を描写したものに限られると解すべきことは、文理上明らかであるといえる。
本決定は、児童ポルノ法2条,項の規定に言及した上で、同条3項
の「児童ポルノ」の意義について、従来の解釈と同様に、実在する児童の姿態を描写したものに限られると解すべきことを明示したものである。

殺人・児童ポルノ単純所持罪等被告事件において、児童ポルノの具体的摘示に欠けると思われる判決(新潟地裁R1.12.4)

「他人が児童の性器等を触る行為に係る児童の姿態であって性欲を興奮させ又は刺激するもの」というのは、2号ポルノの法文そのままですし、「衣服の全部又は一部を着けない児童の姿態であって,殊更に児童の性的な部位が露出され又は強調されているものであり,かつ,性欲を興奮させ又は刺激するものを視覚により認識することができる方法により描写した電磁的記録」というのは3号ポルノの法文そのままですし、事実としては具体的な事実を示したものとは言えないでしょう。
「他人が児童の性器等を触る行為に係る児童の姿態であって性欲を興奮させ又は刺激するもの」の具体例としては、男性が乳房を触るとか陰部触るとかいう記載です。
「衣服の全部又は一部を着けない児童の姿態であって,殊更に児童の性的な部位が露出され又は強調されているもの」の具体例としては、陰部を露出しているとか、乳房を露出しているとかです。
 控訴審で理由不備を主張してください。

刑事判決書起案の手引き
第2 事実摘示の方法・程度一般
153 1 罪となるべき事実は,それがいかなる構成要件に該当するかが,一読して分かるように,明確にこれを記載しなければならない。そのためには,当言葉犯罪の構成要件要素に当たる事実のすべてを漏れなく記載しなければならない。そのほか,事案に応じいわゆる犯情の軽重を示す事実をも記載する方がよい。
154 他方,他の犯罪をも認定したのではないかと疑わせるおそれのある表現は,できる限り避けなければならない(例えば,屋内での強盗被告事件において,住居侵入の点については有罪の認定をしない事案で.「A方に押し入り」などの言葉を用いることは,たとえ情状を明らかにするつもりであっても,むしろこれを避けるべきである。)。
155 2「( 罪となるべき事実)」の見出しの下に摘示される事実は,それが本来の罪となるべき事実に当たるときはもとより,そうでない事実であっても,証拠によって認定されたものでなければならない。「(犯行に至る経緯)」等の見出しの下に摘示される事実についても同様である。
156 3 罪となるべき事実は,できる限り具体的に,かっ,他の事実と区別できる程度に特定して,これを摘示しなければならない。そのためには,犯罪の日待・場所はもとより,犯罪の手段・方法・結果等についてもできる限り具体的にこれを記載しなければならない。このことは既判力の及ぶ範囲や訴因との同一性を明確にするためにも必要である。
157 4 包括ー罪においては,犯罪の日時・場所・手段等について包括的な判示が許される。
158 5 事実はできる限り明確に摘示しなりればならない。したがって,日時・場所・数量等が証拠によって明らかに認められるのに「ころ」「付近」「等」「くらい」などの言葉を用いることは慎むべきである。
6 被害者の年齢については,それが構成要件に関する事実(刑176後等)である場合を除き,必ずしも檎示の必要はないが,犯罪の成否(脅迫・恐喝・強盗罪等)及び犯情(殺人・傷害罪等)に影響を与えるような場合には,これを摘示するのが通例である。
その方法としては, 「A (当時00歳)」とするのが通例である。 「B(当00年)」, 「C (平成O年O月O日生)」とする例もないではないが, 「当」は,犯罪時の年齢か判決時のそれかが必ずしも明確ではない。
7 犯行に用いた凶器等を罪となるべき事実の中に判示する場合,それが主文で没収を言い渡した物であるときは,河一性を明示するため,裁判所の押収番号(96参照)を記載することが望ましい(168参照)。没収を言い渡さなかった物であるときでも,証拠の標目中に掲げた証拠物との同一性を明示するため,その押収番号を記載する例が多い。
8 事実の摘示は,冗漫にならないように留意しなければならない。
9 事実摘示の末尾に,認定した事実に対する裁判所の法律的評価を明らかにする趣旨で,例えば, 「もって,自己の職務に関し賄賂を収受し」「もって横領し」等の言葉を記載する事例が多いが,この場合, 「自己の職務に関し賄賂を収受し」,「横領し」等の言葉は法律的評価を示すものにすぎないのであって,それ自体犯罪行為の事実的表現ではないことに留意すべきである。
10 併合罪の場合には,各個の犯罪事実ごとに,第1,第2というように番号を付け,かつ,行を改め,科刑上のー罪の場合には,そのようにせずに各事実を続けて摘示するのが通例である(なお, 214, 319参照)。
11 事実を摘示するに当たっては,起訴状等に記載された事実を引用することが許される(規218)。しかし,起訴状等の記載は裁判所の最終的な判断に必ずしも完全に一致するとは限らないから,漫然とこれを引用することがないように留意しなければならない。

名古屋高裁H23.7.5
 論旨は,要するに,上記各児童ポルノ製造の事実に関し,(1)各起訴状の公訴事実には,被告人が各児童にとらせた姿態につき「被告人と性交を行う姿態等」(平成22年5月26日付け起訴状公訴事実)又は「性交に係る姿態等」(同年6月1日付け起訴状公訴事実第2,第4,同月29日付け起訴状公訴事実第2)とのみ記載されており,「児童を相手方とする性交に係る児童の姿態」(児童ポルノ処罰法2条3項1号)のほかにいかなる姿態をとらせて撮影したとして起訴しているのか不明瞭であり,各起訴状の罪名及び罰条においても,「児童ポルノ処罰法7条3項,2条3項」とのみ記載されて2条3項各号の記載がないことからすると,訴因が不特定であるというほかなく,これを看過して実体判決をした原審の訴訟手続には法令違反がある,(2)原判決の各犯罪事実には,各児童に「被告人と性交を行う姿態等」をとらせ,これを撮影して児童ポルノを作成したことは示されているが,法令の適用の項で摘示している児童ポルノ処罰法2条3項3号に該当する具体的事実が示されていないから,原判決には理由不備の違法がある,というのである。
 まず,(1)の点について検討すると,各起訴状の公訴事実における犯罪の相手方,日時・場所等の記載は,他の犯罪と識別するに十分なものであり,これによって被告人側の防御の範囲も画されているといえるし,また,各公訴事実の「被告人と性交を行う姿態」あるいは「性交に係る姿態」の記載の直後にいずれも「等」と記載され,罪名及び罰条において,児童ポルノ処罰法7条3項,2条3項と記載され同項の何号であるかが明示されていない,という各起訴状の記載内容をみれば,各児童に同法2条3項1号のみならず2号あるいは3号に該当する姿態をとらせて児童ポルノを製造した事実をも本件各訴因に含まれ得る趣旨を読み取ることができることを併せ考えれば,同項の何号かの明示を欠くことによって,被告人側に対する不意打ちの危険が生じその防御に支障を来すなどともいえない。そうすると,本件各訴因が特定されていないともいえないから,公訴棄却せずに実体判決をした原審の訴訟手続に法令違反はない。
 次に,(2)の点について検討すると,原判決は,犯罪事実第1の2,第2の2,第3の2につき,法令の適用の項において,いずれも児童ポルノ処罰法7条3項,l項,2条3項1号,3号に該当すると判示しているのであるから,各犯罪事実において,同法2条3項1号のみならず3号に該当する姿態をとらせて児童ポルノを製造した旨の具体的事実をも摘示する必要があるというべきである。しかるに,原判決は,上記各犯罪事実において,各児童に「被告人と性交を行う姿態等」をとらせた上,これを写真撮影し,その静止画を記録媒体に記録させて描写し,もって「児童を相手方とする性交に係る児童の姿態等」を視覚により認識することができる方法により描写した児童ポルノを製造した旨を摘示するにとどまり,児童ポルノ処罰法2条3項3号に該当する姿態をとらせて児童ポルノを製造した旨の具体的事実を摘示していないのであるから,原判決には,上記各事実に関し,罪となるべき事実の記載に理由の不備があるといわざるを得ない。
 論旨はこの点において理由がある。そして,原判決は,原判示第1の2,第2の2,第3の2の各児童ポルノ製造罪とその余の各罪とが刑法45条前段の併合罪の関係にあるものとして1個の刑を科しているから,結局,その余の控訴趣意について判断するまでもなく,原判決は全部につき破棄を免れない。
2 破棄自判
 よって,刑訴法397条1項,378条4号により原判決を破棄し,同法400条ただし書により,当裁判所において更に判決する。
(罪となるべき事実)

仙台高裁R2.6.25
第3 理由不備の論旨について
1論旨は,「原判決は,罪となるべき事実の第2において,児童ポルノ法2条3項3号に該当する事実を記載していないから,原判決は判決に理由を附さない違法がある」と主張する。
2上記の公訴事実について有罪の言渡しをする場合,罪となるべき事実としては具体的な事実を示さなければならない。原判決は,「被害者に,被告人と性交する姿態等をとらせ,これを被告人のスマートフォンの撮影機能を用いて撮影し,その撮影データ16点を,同スマートフォン本体に内蔵された記録装置に記録させて保存し」と示すにとどまり,児童ポルノ法2条3項3号に該当する事実を示していない。上記記載の「被告人と性交する姿態等」の「等」の中に,同法2条3項3号に該当する事実が含まれていると解するのは困難である。原判決は,有罪の言渡しに必要な罪となるべき事実の記載を欠き,判決に理由を附さない違法があるといわざるを得ない。 ~
論旨は理由がある。原判決は,原判示第2の児童ポルノ製造罪と第1の青少年健全育成条例違反罪とが刑法45条前段の併合罪の関係にあるものとして1個の刑を科しているから,結局,その余の控訴趣意について判断するまでもなく,原判決は全部につき破棄を免れない。
第4破棄自判
よって,刑訴法397条1項,378条4号により原判決を破棄し,同法400条ただし書により,当裁判所において更に判決する。
(罪となるべき事実)

裁判年月日 令和元年12月 4日 裁判所名 新潟地裁 裁判区分 判決
事件番号 平30(わ)185号
事件名 児童買春、児童ポルノに係る行為等の規制及び処罰並びに児童の保護等に関する法律違反、わいせつ略取、強制わいせつ致死、殺人、死体遺棄、死体損壊、電汽車往来危険被告事件
裁判年月日 令和元年12月 4日 裁判所名 新潟地裁 裁判区分 判決
事件番号 平30(わ)185号
事件名 児童買春、児童ポルノに係る行為等の規制及び処罰並びに児童の保護等に関する法律違反、わいせつ略取、強制わいせつ致死、殺人、死体遺棄、死体損壊、電汽車往来危険被告事件
文献番号 2019WLJPCA12046009
 上記の者に対する児童買春,児童ポルノに係る行為等の規制及び処罰並びに児童の保護等に関する法律違反,わいせつ略取,強制わいせつ致死,殺人,死体遺棄,死体損壊,電汽車往来危険被告事件について,当裁判所は,検察官中野康典,同藤井慎一郎及び同松居徹並びに国選弁護人小淵真史(主任)及び同二宮淳悟各出席の上審理し,次のとおり判決する。 
理由
(罪となるべき事実)
 第1 被告人は,自分の性的好奇心を満たす目的で,平成29年11月27日,新潟県上越市〈以下省略〉所在のa警察署において,以下の各動画データを記録した児童ポルノである記録媒体を内蔵した携帯電話機1台を所持した。
  1 他人が児童の性器等を触る行為に係る児童の姿態であって性欲を興奮させ又は刺激するものを視覚により認識することができる方法により描写した電磁的記録である動画データ1点
  2 衣服の全部又は一部を着けない児童の姿態であって,殊更に児童の性的な部位が露出され又は強調されているものであり,かつ,性欲を興奮させ又は刺激するものを視覚により認識することができる方法により描写した電磁的記録である動画データ1点
法令の適用)
 罰条
 判示第1の行為 包括して児童買春,児童ポルノに係る行為等の規制及び処罰並びに児童の保護等に関する法律7条1項前段(2条3項2号,3号)

児童の性交場面が流布された場合の慰謝料(訴額150万円、認容額合計55000円等)

 流通過程で中継した少年とその保護者に対する慰謝料請求のようです。
 示談した関与者については「訴外A,訴外C,訴外E及び訴外G並びにこれらの者の各保護者との間で示談契約を締結し,計320万円を受領している」と認定されています。

損害賠償請求事件
名古屋地方裁判所令和2年3月25日民事第10部判決
口頭弁論終結日 令和2年2月12日
       主   文

1 被告B1は,原告甲に対し,5万円及びこれに対する平成30年2月8日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。
2 被告B1は,原告に対し,5000円及びこれに対する平成30年2月8日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。
3 被告D1は,原告甲に対し,15万円及びこれに対する平成30年2月4日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。
4 被告D1は,原告乙に対し,1万5000円及びこれに対する平成30年2月4日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。
5 被告F1,F2及びF3は,原告甲に対し,連帯して5万円及びこれに対する平成30年2月5日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。
6 被告F1,F2及びF3は,原告乙に対し,連帯して5000円及びこれに対する平成30年2月5日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。
7 原告らの被告B1,被告D1,被告F1,被告F2及び被告F3に対するその余の請求並びに被告B2,被告D2及び被告D3に対する請求をいずれも棄却する。
8 訴訟費用は,〔1〕原告らに生じた費用の100分の1と被告B1に生じた費用の100分の3を被告B1の負担とし,〔2〕原告らに生じた費用の100分の3と被告D1に生じた費用の100分の5を被告D1の負担とし,〔3〕原告らに生じた費用の100分の1と被告F1,被告F2及び被告F3に生じた費用の100分の4を被告F1,被告F2及び被告F3の負担とし,その余の費用は原告らの負担とする。
9 この判決は,第1項から第6項までに限り,仮に執行することができる。


       事実及び理由

第1 請求
1 被告B1及び被告B2は,原告甲に対し,連帯して150万円及びこれに対する平成30年2月8日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。
2 被告B1及び被告B2は,原告乙に対し,連帯して15万円及びこれに対する平成30年2月8日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。
3 被告D1,被告D2及び被告D3は,原告甲に対し,連帯して300万円及びこれに対する平成30年2月4日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。
4 被告D1,被告D2及び被告D3は,原告乙に対し,連帯して30万円及びこれに対する平成30年2月4日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。
5 被告F1,被告F2及び被告F3は,原告甲に対し,連帯して120万円及びこれに対する平成30年2月5日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。
6 被告F1,被告F2及び被告F3は,原告乙に対し,連帯して12万円及びこれに対する平成30年2月5日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。
第2 事案の概要
 本件は,平成28年3月ないし5月に当時15歳であった原告甲の性交場面等を撮影した動画データがLINE等を使用して拡散されるという事件(以下「本件拡散事件」という。)が発生したところ,原告甲及びその親権者である原告乙が,本件拡散事件に関与した者及びその親権者に対し,以下のとおり共同不法行為に基づく損害賠償を求めた事案である。
 原告らは,本件拡散事件の過程において,〔1〕上記動画データを当時の交際相手に送信した被告B1に対し,原告甲の人格権侵害を,被告B1の親権者である被告B2に対し,被告B1の送信行為に関する監督義務の懈怠を主張して,共同不法行為に基づき,原告甲に対する慰謝料150万円及び原告乙に対する弁護士費用15万円並びにこれらに対する訴状送達の日の翌日である平成30年2月8日から支払済みまで年5分の割合による遅延損害金の各連帯支払を(上記第1の1及び2),〔2〕上記動画データを友人3名に送信した被告D1並びにその親権者である被告D2及び被告D3に対し,同様の主張をして,原告甲に対する慰謝料300万円及び原告乙に対する弁護士費用30万円並びにこれらに対する訴状送達の日の翌日である同月4日から支払済みまで年5分の割合による遅延損害金の連帯支払を(上記第1の3及び4),〔3〕上記動画データを当時の交際相手に送信した被告F1並びにその親権者である被告F2及び被告F3に対し同様の主張をして,原告甲に対する慰謝料120万円及び原告乙に対する弁護士費用12万円並びにこれらに対する訴状送達の日の翌日である同月5日から支払済みまで年5分の割合による遅延損害金の連帯支払(上記第1の5及び6)を,それぞれ求めた。
1 前提事実(争いのない事実並びに掲記証拠(枝番のあるものは枝番を含む。弁論併合前に提出された甲号証を「第5615号甲1」などといい,弁論併合後に提出された甲号証を「併合後甲12」などという。以下同じ。)及び弁論の全趣旨により容易に認められる事実)
(1)当事者
ア 原告甲は,平成12年生まれの女性である。原告乙は,原告甲の母親であり,親権者である。(第5615号甲1,第5616号甲1,第5617号甲1)
イ 被告B1は,平成12年生まれの女性である。被告B2は,被告B1の母親であり,親権者である。(第5615号甲2,同甲3)
ウ 被告D1は,平成12年生まれの女性である。被告D2は,被告D1の父親,被告D3は,被告D1の母親であり,いずれも被告D1の親権者である。(第5616号甲2)
エ 被告F1は,平成12年生まれの女性である。被告F2は,被告F1の父親,被告F3は,被告F1の母親であり,いずれも被告F1の親権者である。(第5617号甲2)
(2)被告らの本件拡散事件への関与状況等
ア 被告B1は,平成28年3月中旬頃,友人である訴外Aから,訴外Aとその元交際相手である原告甲との性交場面等を撮影した動画データ(以下「本件動画データ」という。)の提供を受けた。そして,同月下旬頃,当時交際していた訴外Cからの依頼に応じ,訴外Cに対し,LINEを用いて本件動画データを送信した。(第5615号甲8,乙1から乙3まで,乙5)
イ 被告D1は,同年4月28日,当時交際していた訴外Cから,本件動画データの提供を受けた。そして,同日,訴外E,被告F1及び訴外Hに対し,同人らのアカウントで構成されるLINEグループを用いて本件動画データを送信した。(第5616号甲6,同甲7)
ウ 上記イにより本件動画データの提供を受けた被告F1は,同年5月2日,当時交際していた訴外Iからの依頼に応じ,訴外Iに対し,LINEを用いて本件動画データを送信した。(第5617号甲6,同甲7)
エ 本件動画データは,同年4月末頃より当時原告甲が通学していた高校に在籍する生徒らの間で拡散された。
(3)本件拡散事件後の状況
ア 原告甲は,平成28年7月頃,転校した。(併合後甲17)
イ 訴外A,被告B1,訴外C,被告D1,訴外E,被告F1及び訴外Eから本件動画データの提供を受け7名の知人に対して送信した訴外Gは,いずれも,児童買春,児童ポルノに係る行為等の規制及び処罰並びに児童の保護等に関する法律違反の非行事実により名古屋家庭裁判所に送致されたが,同裁判所はいずれも不処分の決定をした。(第5615号甲5,第5616号甲4,第5617号甲4)
(4)本訴訟における経過
ア 被告B1,被告B2,被告D1,被告D2及び被告D3は,原告らを相手方とし,原告らが,本件拡散事件に関し,訴外A,訴外C,訴外E,訴外G,訴外H及び訴外I並びにこれらの者の保護者らとの間で締結した示談契約の成立及び内容を証する文書の一切につき,文書提出命令を申し立てた。当裁判所は,平成30年12月13日,原告らに対し,訴外A,訴外C,訴外E及び訴外G並びにこれらの者の各保護者との間で締結した示談契約の成立及び内容を証する文書の一切の限度で,その提出を命じる決定をし(平成30年(モ)第195号,同第198号),その後同決定は確定した。
イ しかしながら,原告らは,本訴訟の口頭弁論終結時まで,上記文書を一切提出しなかった。
2 争点及びこれに対する当事者の主張
(1)被告B2,被告D2,被告D3,被告F2及び被告F3の不法行為の成否(争点1)
(原告らの主張)
 親権者である被告B2,被告D2,被告D3,被告F2及び被告F3には,それぞれの子に対し,他人の名誉棄損・プライバシー侵害等の行為をしないという基本的な人間関係のルールを守るよう指導監督する義務があったのであり,近時「ネットいじめ」等の問題が顕在化していることを踏まえれば,携帯電話を利用させるに当たっては,これにより他人の権利を侵害することのないよう監督する義務があった。
 特に,被告F2及び被告F3は,被告F1が本件動画データを受け取ったことを被告F2に話しているのであるから,動画を削除させる等の対応をすべきであった。
 それにもかかわらず,被告B2,被告D2,被告D3,被告F2及び被告F3は,いずれもその義務を怠ったから,不法行為責任を負う。
(被告B2の主張)
 被告B1は,素行の悪くないごく普通の15歳の学生であった。したがって,被告B2に具体的な監督義務が発生していたとはいえないから,被告B2に監督義務違反があったとはいえず,不法行為は成立しない。
(被告D2及び被告D3の主張)
 被告D1は,生活態度に何ら問題のない15歳の学生であった。したがって,被告D2及び被告D3には,被告D1の他害行為を予見することは不可能であったから,被告D2及び被告D3に監督義務違反があったとはいえず,不法行為は成立しない。
(被告F2及び被告F3の主張)
 争う。
(2)原告甲及び原告乙の損害額(争点2)
(原告らの主張)
ア 被告B1及び被告B2の不法行為により原告甲が受けた精神的苦痛を慰謝するに足りる金額は,150万円を下らない。また,原告乙が負担した弁護士費用のうち,少なくとも15万円は上記不法行為と相当因果関係のある損害である。
イ 被告D1,被告D2及び被告D3の不法行為により原告甲が受けた精神的苦痛を慰謝するに足りる金額は,300万円を下らない。また,原告乙が負担した弁護士費用のうち,少なくとも30万円は上記不法行為と相当因果関係のある損害である。
ウ 被告F1,被告F2及び被告F3の不法行為により原告甲が受けた精神的苦痛を慰謝するに足りる金額は,120万円を下らない。また,原告乙が負担した弁護士費用のうち,少なくとも12万円は上記不法行為と相当因果関係のある損害である。
(被告らの主張)
 争う。
第3 当裁判所の判断
1 被告B1,被告D1及び被告F1の責任
 被告B1,被告D1及び被告F1による本件動画データの送信行為は,それぞれ原告甲のプライバシー権を侵害するものであって,被告B1,被告D1及び被告F1は,それぞれ不法行為責任を負う。
2 争点1(親権者らの不法行為の成否)について
(1)親権者らの不法行為責任
 未成年者が責任能力を有する場合であっても,監督義務者の義務違反と未成年者の不法行為によって生じた結果との間に相当因果関係が認められるときは,監督義務者につき民法709条に基づく不法行為が成立するものと解される(最高裁昭和49年3月22日第二小法廷判決・民集28巻2号347頁参照)。
(2)被告B2,被告D2及び被告D3の責任
 原告らは,被告B2,被告D2及び被告D3には,子に携帯電話を利用させるに当たり,他人の権利を侵害することのないよう監督する義務があったのにこれを怠った旨を主張する。
 しかしながら,原告らは,監督義務の具体的内容やその義務の発生根拠となる具体的事実を主張していない。そして,本件以前に被告B1及び被告D1が一般的な非行等に及んだ事実だけでなく,携帯電話やSNS等を使用した友人との問題行動や本件類似のプライバシー侵害行為に及んだ事実を認めるに足りる証拠はない。また,被告B1が本件動画データの送信を受けたことを被告B2が被告B1の送信行為前に,被告D1が本件動画データの送信を受けたことを被告D2及び被告D3が被告D1の送信行為前に,それぞれ知ったと認めるに足りる証拠もない。そうすると,本件動画データの送信行為当時,保護者に求められる一般的な指導を超えて,被告B2は被告B1に対し,被告D2及び被告D3は被告D1に対し,それぞれ本件動画データ等の性的な動画を送信しないように具体的に注意するなどの監督をすべき法的義務が発生していたとはいえない。
 上記諸点を踏まえると,被告B2,被告D2及び被告D3に原告らの主張するような不法行為が成立するなどとはいえない。
(3)被告F2及び被告F3の責任
ア 前提事実に加え,証拠(丁3,被告F3本人(第1回))及び弁論の全趣旨によれば,被告F2及び被告F3の本件拡散事件への関与状況等について,次の事実が認められる。
(ア)被告F1は,本件動画データを入手した平成28年4月28日頃,被告F2に対し,被告D1から本件動画データが送られてきたことを相談し,被告F2は,その翌日頃,被告F3に対し,その事実を伝えた。被告F3が,被告F1に確認したところ,被告F1は,そのような動画データが出回っているという噂があり,友人が本件動画データを実際に入手した旨を述べた。
(イ)被告F2及び被告F3は,当時原告甲及び被告F1が通学していた高校に対して報告することを検討したが,本件動画データの存在が発覚すれば原告甲が退学になるのではないかなどと考え,報告をしないこととする一方,被告F1に本件動画データを消去させることもなかった。
(ウ)被告F1は,その後の同年5月2日,訴外Iに対し,LINEを用いて本件動画データを送信した。
イ 被告F3の陳述書(丁4)及び本人尋問の結果(第2回)には,上記認定に反する部分がある。しかしながら,上記陳述書の作成前に実施された被告F3本人尋問の結果(第1回)には,被告F1の訴外Iに対する本件動画データ送信前に被告F2及び被告F3が被告F1の本件動画データ入手を知っていたことを明確に認める部分がある。そして,本訴訟において極めて重要というべき上記部分につき,被告F3は,本人尋問(第2回)に際して思い違いであったなどと,にわかに受入れ難い説明をするのみである。また,被告F3の陳述書(丁4)及び本人尋問の結果(第2回)のうち上記認定に反する部分を裏付ける適格な証拠もない。そうすると,これらの部分は採用できない。
ウ 上記認定事実によれば,被告F2及び被告F3は,被告F1が訴外Iに対して本件動画データを送信する約3日前には,本件動画データの内容及びそうした動画データが出回っているという噂があることや被告F1が友人から本件動画データを実際に入手したことを知っていたというのである。そうすると,被告F2及び被告F3は,その時点で,原告甲のプライバシーを著しく侵害するおそれのある動画を被告F1が入手し,かつ,実際に被告F1の友人らが他者に対して送信していることを具体的に認識した以上,被告F1が同様の行為に及ぶことを予見し得たといえる。したがって,被告F2及び被告F3には,判断能力のなお未熟な高校1年生である被告F1の親権者として,被告F1が原告甲の被害を更に拡大させることのないよう,被告F1に対し本件動画データを直ちに消去させるなどの措置を講じて被告F1を監督する義務があったというべきである。
 それにもかかわらず,被告F2及び被告F3は,被告F1に対し,被告F1が訴外Iに対して本件動画データを送信する前には本件動画データを消去させなかったのであるから,上記義務に違反したといえる。そして,被告F2及び被告F3のこのような監督義務違反と未成年者である被告F1の不法行為によって生じた原告甲のプライバシー侵害との間には相当因果関係が認められるから,被告F2及び被告F3には不法行為が成立する。
エ 被告F2及び被告F3の監督義務違反と被告F1の送信行為は,客観的に関連し,共同し合って原告甲のプライバシー侵害を生じさせたものといえるから,被告F2及び被告F3は,被告F1との関係で共同不法行為責任を負う。
3 争点2(原告甲及び原告乙の損害額)について
(1)原告甲の損害額
ア 文書提出命令違反の効果について
 前提事実(4)のとおり,当裁判所が,原告らに対し,訴外A,訴外C,訴外E及び訴外G並びにこれらの者の各保護者との間で締結した示談契約の成立及び内容を証する文書の一切につき,その提出を命じる決定が確定したにもかかわらず,原告らはこれに従わない。
 この点に関し,被告B1,被告B2,被告D1,被告D2及び被告D3は,文書提出命令の申立てをするに当たり,上記示談書には少年1名につき60万円の示談金を受領した旨の記載があると主張している。また,被告D1,被告D2及び被告D3は,原告らが文書を提出しなかったことから,上記示談書には少年1名につき100万円の示談金を受領した旨の記載があると主張を変更している。他方,原告らは,示談契約をしたことは認める(訴状補正上申書)一方,示談金の金額を争っている。そして,証拠(丁3)によれば,被告F3は原告ら代理人から本訴訟提起前に30万円の示談の申入れをされるとともに,訴訟では120万円の請求をする旨告げられたことが認められる。上記諸点に加え,訴外Gは拡散した相手が多数であること(前提事実(3)),訴外Aは本件拡散行為の発端であること(前提事実(2))などを併せ考慮すると,訴外A及び訴外Gに関する示談書には各100万円の示談金を受領した旨の記載があるが,訴外C及び訴外Eに関する示談書には各60万円の記載があると認めるにとどめるのが相当である(民訴法224条1項)。
 そして,このような記載のある示談書からすれば,原告らは,本件拡散事件に関し,訴外A,訴外C,訴外E及び訴外G並びにこれらの者の各保護者との間で示談契約を締結し,訴外A及び訴外Gとの間では100万円ずつの合計200万円を,訴外C及び訴外Eとの間では60万円ずつの合計120万円を,それぞれ受領したものと認められる。
イ 慰謝料額
 本件動画データは,性交場面等という通常他人に特に見られたくない場面を撮影したものであり,これが更に送信されたことによる原告甲のプライバシー侵害の程度は極めて大きいといえる。そして,前提事実に加え,証拠(併合後甲16,原告乙本人)及び弁論の全趣旨によれば,原告甲は平成28年3月ないし5月の本件拡散事件当時15歳にすぎなかった上,本件拡散事件の結果入学したばかりの高校に通学することに困難を来し,その後間もない同年7月頃に転校を余儀なくされたことが認められる。また,本件拡散事件には原告の元交際相手や日頃行動を共にしていた友人が関与していた。これらの事情からすると、原告甲の受けた精神的苦痛が極めて大きかったことは想像に難くない。他方で,上記アのとおり,原告らは,本件拡散事件に関し,訴外A,訴外C,訴外E及び訴外G並びにこれらの者の各保護者との間で示談契約を締結し,計320万円を受領している(なお,本件拡散事件に関して多額の示談金を受領した事実は,本件拡散事件を構成する各送信行為に関する慰謝料の額を検討するに当たって考慮すべきものであるのは当然である。)。これらに加え,本件全証拠及び弁論の全趣旨によって認められる本件拡散事件に関する一切の事情を考慮すれば,被告B1,D1,F1,F2及びF3から原告甲に対して支払われるべき慰謝料額は,1名に対する送信行為につき5万円として算定するのが相当である。
 なお,被告らは,原告甲が訴外Aによる本件動画データの撮影行為を黙認したことなどに本件拡散事件の原因の一端があったことは否定できないから,損害賠償額を定めるに当たり過失相殺をすべきと主張する。しかしながら,撮影経緯等がどのようなものであれ,被告B1,被告D1及び被告F1はその時点の自己の判断に基づき本件動画データを更に送信して原告甲のプライバシーを侵害したものであって,このような不法行為の実質を踏まえると,被告らの主張する事実に基づき過失相殺を考慮するのは相当ではないというべきである。 
ウ 小括
 以上によれば,原告甲に支払うべき慰謝料の額は,被告B1が5万円,被告D1が15万円,被告F1,被告F2及び被告F3が連帯して5万円となる。
(2)原告乙の損害額
 本件全証拠及び弁論の全趣旨によって認められる本訴訟の類型,難易度,請求額及び認容額その他本訴訟に関する一切の事情を考慮して,被告B1の不法行為と相当因果関係のある原告乙の弁護士費用は5000円,被告D1の不法行為と相当因果関係のある原告乙の弁護士費用は1万5000円,被告F1,被告F2及び被告F3の不法行為と相当因果関係のある原告乙の弁護士費用は5000円と認めるのが相当である。
4 結論
 以上によれば,原告らの請求は,主文第1項から第6項までに掲記の限度で理由があるからこの限度で認容し,その余は理由がないから棄却することとし,主文のとおり判決する。
名古屋地方裁判所民事第10部
裁判長裁判官 鈴木尚久 裁判官 杉田時基 裁判官 崎川静香

(別紙)当事者目録
全事件原告 ■■■■(以下「原告甲」という。)
法定代理人親権者兼全事件原告 ■■■■(以下「原告乙」という。)
上記両名訴訟代理人弁護士 多田元
第5615号被告 B1(以下「被告B1」という。)
法定代理人親権者兼第5615号被告 B2(以下「被告B2」という。)
上記両名訴訟代理人弁護士 片岡憲明
第5616号被告 D1(以下「被告D1」という。)
法定代理人親権者兼第5616号被告 D2(以下「被告D2」という。)
同 D3(以下「被告D3」という。)
上記3名訴訟代理人弁護士 岡厚希
第5617号被告 ■■■■(以下「被告F1」という。)
法定代理人親権者兼第5617号被告 ■■■■(以下「被告F2」という。)
同 ■■■■(以下「被告F3」という。)

エアドロップ痴漢の公訴事実記載例

 わいせつ画像を不特定又は多数の者に送信して頒布してるのだから、刑法175条1項でしょうね。

被告人は、令和2年7月2日 1413~1450ころ、兵庫県○○駅間走行中の列車内において A(21)に対して 携帯電話機を利用して男性器を露骨に撮影したわいせつ画像データ1点をAの携帯電話機に送信し、もって公共の乗物において 不安を覚えさせるような卑わいな言動をした。
 兵庫県公衆に著しく迷惑をかける暴力的不良行為等の防止に関する条例違反 15条1項 3条の2 第1項1号

罰条
第3条の2 
1何人も、公共の場所又は公共の乗物において、次に掲げる行為をしてはならない。
(1) 人に対する、不安を覚えさせるような卑わいな言動
第15条
1 第3条の2第1項から第3項まで、第5条第1項若しくは第2項又は第10条の2第1項の規定に違反した者は、6月以下の懲役又は50万円以下の罰金に処する。

兵庫県公衆に著しく迷惑をかける暴力的不良行為等の防止に関する条例の解説・ほか(2016年9月)
(趣旨)
本条は、公共の場所等における盗撮等の人に対する不安を覚えさせるような卑わいな言動を始め、公共の場所等以外の場所又は乗物(一定のプライベート空間。以下「公共の場所等以外の場所等」という。)における下着等の盗撮行為、及び盗撮行為の前段階であるカメラ等の差し向けや設置行為(以下「盗撮行為等」という。)を禁止した規定である。
改正前の本条は、「公衆に対する迷惑行為(卑わいな言動)」を取り締まるためのものであったが、近年の社会情勢の大きな変化に伴い、多機能携帯電話端末等の機能の進歩がもたらす巧妙な盗撮行為が、公共の場所等以外の場所等(公衆便所や一般住宅等)で行われている実態に鑑み、これら公共の場所等以外の場所等における盗撮行為を規制することとしたものである。
1第1項は、第1号において、旧条例で規制していた公共の場所又は公共の乗物における卑わいな言動を規制しているほか、これまで当該行為自体をもって卑わいな言動ととらえることができなかった「設置」行為につき、盗撮目的での同行為を第2号において明確に規制したものである。

「不安を覚えさせるような卑わいな言動」とは、相手方に「不安を覚えさせるような」「野卑で、みだらな言動」をいう。
「不安を覚えさせるような」とは、いやらしいことをされるのではないかという心配を起こさせるようなという意味であるが、不安を覚えさせる言動かどうかは、個別具体的に認定しなければならない。
また、現に被害者が不安を覚えなくてもよく、被害者が当該行為に気付かない場合でも、もし、気付いたならば不安を覚えることが明らかな場合は本項が成立する。
(1) 痴漢行為
刑法の強制わいせつに至らない行為であり、具体的には、「電車等において、同意を得ていない人の身体に、衣服その他の身に着ける物の上から直接触れる」といった行為である。
(2) のぞき見行為
通常衣服等で隠されている人の下着又は身体をのぞき見するものである。要件として、のぞき見が、一般人をして不安を覚えさせるような卑わいな程度でなされることを必要とする。
具体的には、人のスカート内の下着等を下から積極的にのぞき見たり、手鏡をスカートの下に差し出して下着等を見る行為等をいう。
なお、1段落目の「のぞき見が、一般人をして不安を覚えさせるような卑わいな程度でなされることを必要とする」とは、積極的にのぞき見を行う(故意がある)ことが必要であるとの意味であって、例えば、スカートが風で捲れ上がった際に偶然に下着が見えたというような場合(故意がない)は、当然にして含まれない。
(3) 盗撮行為
通常衣服等で隠されている人の下着又は身体を、その人の承諾なく隠し撮りする行為である。
具体的には、写真機等を使って赤の他人のスカート内を隠し撮る行為、隠し撮る目的で写真機等をスカートに差し入れる行為をいう。
(4) その他卑わいな言動
「痴漢行為」、「のぞき見行為」、「盗撮行為又は盗撮目的で写真機等を向ける行為」以外のいやらしく・みだらで性的道義観念に反し、人に不安を覚えさせるような卑わいな言語・動作をいう。
具体的には、スカートを捲る、傘の柄等を他人の胸部や譽部に押しつける、耳元等に息を吹きかける、耳元で卑わいな言葉をささやく、女性に声をかけ「おっぱい大きいね。」「おつばい触らせて。」「おじちやんとエッチしよう。」などと言う言動がこれに当たる。

児童ポルノ単純所持罪の無罪判決(佐賀地裁R02.2.12)

 国選弁護人がタナー法に切り込みましたね。

■28281007
佐賀地方裁判所
令和02年02月12日
被告人
弁護人(国選) 東島沙弥子
検察官 高岡春美 山下忠佑
主文
本件公訴事実中、児童買春、児童ポルノに係る行為等の規制及び処罰並びに児童の保護等に関する法律違反(令和元年8月19日付け起訴状の公訴事実第3)の点について、被告人は無罪。

(一部無罪の理由)
 1 公訴事実
 被告人は、自己の性的好奇心を満たす目的で、令和元年6月26日、F警察署の駐車場にとめた自動車内で、他人が児童の性器等を触る行為に係る児童の姿態であって性欲を興奮させ又は刺激するもの及び衣服の全部又は一部を着けない児童の姿態であって、殊更に児童の性的な部位が露出され又は強調されているものであり、かつ、性欲を興奮させ又は刺激するものを視覚により認識することができる方法により描写した動画データを記録した児童ポルノである記録媒体が内臓されたノート型パソコン1台を所持した。
 2 争点
 公訴事実の動画データに記録された本件女性が児童(18歳に満たない者)であると立証できているか。

 3 裁判所の判断
 (1) 本件女性の児童性について、合理的な疑いのない程度に立証できているとはいえない。したがって、犯罪の証明がないから、刑訴法336条により被告人に無罪の言渡しをする。
 (2) その理由は、以下のとおりである。
 ア 再生した動画データ(甲17)を見る限り、本件女性は、あどけない顔立ちや動作などからいって、小学生のようであり、上にみてもせいぜい中学生にしかみえない。この点は検察官の指摘に異論はない。しかし、弁護人が指摘するように、18歳以上の女性の中にも、ときには小学校高学年くらいにみえる女性がいることは否定できない(弁4)。動作なども児童に見せかけて演出することも可能である。したがって、その付近の年齢までは、顔立ちや動作などの印象だけから児童性の立証ができているとみるのは難しく、また、危険でもある。
 イ 検察官は、G医師の所見(甲16、18)をあわせると、児童性が立証できていると主張する。そこで、その所見の信用性について検討する。まず同医師の知識や経験に問題は見あたらない。タナー法自体についても、弁護人がいうような問題点が指摘されているものの、統計学的な数字による年齢判定の手法として十分に信用できる。特にタナー2期と判定できる場合には、検察官が指摘するように、18歳未満と推認することも可能と考えられる。
 しかし、タナー法は、もともと胸部及び陰毛のみに限定して判定する手法であるから、それらを正確に直接計測するのを前提としている。もちろん画像等からの判定も可能であるが、判定資料の品質によっては、判定自体の信用性に疑いが生じることは避けられない。本件の動画データは、画質がかなり荒く、重要な胸部及び陰毛について、鮮明とはいえない。G医師も、「乳房は画像処理が行われており判定が困難」とし、「画像上陰毛発生が見られるが、未だ明瞭には写っていない」としている(甲16)。陰毛については、画像からはほとんどないようにみえるが、あるとしてもその程度や、あるものを人為的に剃っているか否かの判定も難しい。そうすると、G医師は本件女性をタナー2期と判定しているが、その判定は上記のような不鮮明な画像をもとにしており、判定資料としての品質がよくない。このような画像をもとにタナーの度数判定が正確にできるかについて、常識的にみて疑いが残るといわざるを得ない。
 したがって、本件では、G医師の所見をあわせても、児童性が立証されているとはいえない。
(法令の適用)
(量刑理由)
刑事部
 (裁判官 杉原崇夫)

姿態をとらせて製造罪の罪となるべき事実が理由不備とされた事例(仙台高裁R02.6.25)

 こういう判決はあかんのですよ。3号に該当する事実(全裸でとか半裸でとか陰部露出させとか)の記載がない。
 検察官の答弁書にはこれまではこれで問題なかったということで、あかん記載例が列挙されています。全滅だと思います。

某地裁某支部h01
罪となるべき事実
A(14)が18歳に満たない児童であることを知りながら,令和2年6月27日午後4時34分頃から同日午後5時31分頃までの間,天満ホテル201号室において,同児童に,被告人と性交する姿態等をとらせ,これを被告人のスマートフォンの撮影機能を用いて撮影し,その撮影データ19点を,同スマートフォン本体に内蔵された記録装置に記録させて保存し,もって児童を相手方とする性交又は性交類似行為に係る児童の姿態及び衣服の一部を着けない児童の姿態であって,殊更に児童の性的な部位が露出され又は強調されているものであり,かつ,性欲を興奮させ又は刺激するものを視覚により認識することができる方法により電磁的記録に係る記録媒体に描写した児童ポルノを製造した
ものである。
(法令の適用)
罰条
 児童買春,児童ポルノに係る行為等の規制及び処罰並びに児童の保護等に関する法律(以下「児童ポルノ法」という。)7条4項,2項,2条3項1号,3号

控訴理由
 法文が
衣服の全部又は一部を着けない児童の姿態であって、殊更に児童の性的な部位(性器等若しくはその周辺部、臀部又は胸部をいう。)が露出され又は強調されているものであり、かつ、性欲を興奮させ又は刺激するもの
であるから、これに該当する具体的事実を記載しなければならない。

 この点で、原判決には理由不備があるから、原判決は破棄を免れない。
   刑事判決書起案の手引き
でもできるだけ具体的に記載することが求められる。

>>
刑事判決書起案の手引き
第2 事実摘示の方法・程度一般
153 1 罪となるべき事実は,それがいかなる構成要件に該当するかが,一読して分かるように,明確にこれを記載しなければならない。そのためには,当言葉犯罪の構成要件要素に当たる事実のすべてを漏れなく記載しなければならない。そのほか,事案に応じいわゆる犯情の軽重を示す事実をも記載する方がよい。
154 他方,他の犯罪をも認定したのではないかと疑わせるおそれのある表現は,できる限り避けなければならない(例えば,屋内での強盗被告事件において,住居侵入の点については有罪の認定をしない事案で.「A方に押し入り」などの言葉を用いることは,たとえ情状を明らかにするつもりであっても,むしろこれを避けるべきである。)。
155 2「( 罪となるべき事実)」の見出しの下に摘示される事実は,それが本来の罪となるべき事実に当たるときはもとより,そうでない事実であっても,証拠によって認定されたものでなければならない。「(犯行に至る経緯)」等の見出しの下に摘示される事実についても同様である。
156 3 罪となるべき事実は,できる限り具体的に,かっ,他の事実と区別できる程度に特定して,これを摘示しなければならない。そのためには,犯罪の日待・場所はもとより,犯罪の手段・方法・結果等についてもできる限り具体的にこれを記載しなければならない。このことは既判力の及ぶ範囲や訴因との同一性を明確にするためにも必要である。
157 4 包括ー罪においては,犯罪の日時・場所・手段等について包括的な判示が許される。
158 5 事実はできる限り明確に摘示しなりればならない。したがって,日時・場所・数量等が証拠によって明らかに認められるのに「ころ」「付近」「等」「くらい」などの言葉を用いることは慎むべきである。
6 被害者の年齢については,それが構成要件に関する事実(刑176後等)である場合を除き,必ずしも檎示の必要はないが,犯罪の成否(脅迫・恐喝・強盗罪等)及び犯情(殺人・傷害罪等)に影響を与えるような場合には,これを摘示するのが通例である。
その方法としては, 「A (当時00歳)」とするのが通例である。 「B(当00年)」, 「C (平成O年O月O日生)」とする例もないではないが, 「当」は,犯罪時の年齢か判決時のそれかが必ずしも明確ではない。
7 犯行に用いた凶器等を罪となるべき事実の中に判示する場合,それが主文で没収を言い渡した物であるときは,河一性を明示するため,裁判所の押収番号(96参照)を記載することが望ましい(168参照)。没収を言い渡さなかった物であるときでも,証拠の標目中に掲げた証拠物との同一性を明示するため,その押収番号を記載する例が多い。
8 事実の摘示は,冗漫にならないように留意しなければならない。
9 事実摘示の末尾に,認定した事実に対する裁判所の法律的評価を明らかにする趣旨で,例えば, 「もって,自己の職務に関し賄賂を収受し」「もって横領し」等の言葉を記載する事例が多いが,この場合, 「自己の職務に関し賄賂を収受し」,「横領し」等の言葉は法律的評価を示すものにすぎないのであって,それ自体犯罪行為の事実的表現ではないことに留意すべきである。
10 併合罪の場合には,各個の犯罪事実ごとに,第1,第2というように番号を付け,かつ,行を改め,科刑上のー罪の場合には,そのようにせずに各事実を続けて摘示するのが通例である(なお, 214, 319参照)。
11 事実を摘示するに当たっては,起訴状等に記載された事実を引用することが許される(規218)。しかし,起訴状等の記載は裁判所の最終的な判断に必ずしも完全に一致するとは限らないから,漫然とこれを引用することがないように留意しなければならない。

アダルト動画の販売サイト「AV Market(エーブイ マーケット)」の管理者逮捕について

 まず、児童ポルノ購入者は、画像を削除した方がいいでしょう。できれば物理的破壊。
 さらに、児童ポルノと確認された画像については、購入者にも家宅捜索が入る可能性があります。このサイトには「18歳以上年齢確認済」との表示があるみたいですが、DL購入したが児童っぽかったということで既に警察相談した人もいます。購入者の対応については、愛知県警に問い合わせ中です。
 一般論としては、これまでの捜査実務として
  提供犯を検挙した場合には、購入者も捜査するのが最近のルーティン
  単純所持罪だけでは逮捕されることはない。
  児童ポルノ画像を破棄しておけば刑事処分になることはない。自分で破壊すれば証拠隠滅罪にはならない。
  復元されて児童ポルノ画像について説明を求められると取調が長引くことがあるので、物理的破壊が望ましい。
  削除していても、不意に捜索差押を受けることがある。
ということです。
 「単純所持・逮捕」などと不安を煽るような弁護士サイトは信用しないでください。
 削除・破壊したが、捜索差押を回避したいという場合には、面倒なのでそもそも回避する必要があるのかも含めて、弁護士に直接相談してください。  

 管理者の責任については難しい理屈なので、弁護人に説明しても理解できないと思います。
 画像の委託販売というのは、中立的なサービスということもあるから、winny最判を参考にします。
 刑事責任がある場合の管理者の責任としては幇助説(名古屋高裁)、単独正犯説(東京高裁)があって、はっきりしません。
 詳しい弁護士も来ないので、管理状況を説明するか黙秘するかでしょうね。
 以前、似たようなサイトについて、管理者の弁護人に選任されましたが、管理状況を説明して、起訴猶予になったことがあります。

https://news.yahoo.co.jp/articles/5cf6150599dd6c5ecaca01b5e8182a4ef7b006c6
3人とも容疑を否認している。海外サーバーを使った児童ポルノサイトの運営者の検挙は全国で初めてという。
 サイトはアダルト動画などを売買できる仕組みで、1年で約10億円を超える売り上げがあったという。
 県警少年課によると、3人は2018年1月~昨年6月、アダルト動画の販売サイトを運営し、18歳未満の女児の裸の画像を有料で2人に提供するなどした疑いがある。
 容疑者は「児童ポルノはできるだけ削除するようにしていたが、チェックしきれていなかった。積極的に売っていたわけではない」と供述しているという。
 同サイトにはアダルト動画が並び、中には18歳未満とみられる少女の裸の動画も投稿され、一部に知られた存在だったという。サイトでは会員になると、アダルト動画を売ることができ、客が有料でダウンロードして買う仕組みで、売り上げの半分を運営者らが受け取っていたとみられる。

 同サイトは米国など海外のサーバーを使い、サイトの立ち上げや運営に関わっていた3人は海外に拠点を置き、北海道と行き来していたという。(村上友里)
 《児童ポルノ問題に詳しい奥村徹弁護士の話》 現状、児童ポルノはネットで売買されることが主流で、サイト運営者を摘発しなければ、このようなサイトはなくならない。問題なのは、サイト運営者がどんな責任を持つのか、はっきりしていないことだ。また、プロバイダーの責任もあいまいで、これらの責任を明確化するための法整備が必要だ。

追記
 「もう破棄している。捜索を回避できないのか」という相談を受けまして、警察とも連絡を取っています。
 破棄して相談のために出頭した場合は、警察庁と協議して、アリスクラブのdvd通販事件と同様に、「任意廃棄を含む注意警告に留めるべき事案」として処理してくださいというお願いをしています。
  児ポ対ニュース34号
  任意廃棄を含む注意警告に留めるべき事案
   どのような事案について警告等の措置に留めるべきかは
   事案ごとに警察庁少年課との協議において判断する

追記 7/11
購入者リストも押収された模様。

https://digital.asahi.com/articles/ASN7B6X6FN7BOIPE01Q.html
家宅捜索で押収した資料を分析し、明らかになった児童ポルノ販売サイトの会員情報(県警が氏名などを黒塗りにして公表)=2020年7月10日、愛知県警中村署、藤田大道撮影
県警は関係先約30カ所の捜索でパソコンなど約80点を押収。約2万人分の会員情報もあり、出品者や購入者についても調べている。

盗撮なのにひそかに製造罪にならないことに注意してください。強制わいせつ行為の際の盗撮行為について、ひそかに製造罪(7条5項)で有罪とした事例(名古屋地裁)

 盗撮なのにひそかに製造罪にならないことに注意してください。
 児童ポルノ製造関係の各罪は縄張りが厳しくて、「4前項に規定するもののほか」「5前二項に規定するもののほか」という限定があるので、目的製造罪が成立する場合には姿態をとらせて製造罪は成立しない、姿態をとらせて製造罪が成立する場合にはひそかに製造罪は成立しないことになっています。

第七条(児童ポルノ所持、提供等)
2児童ポルノを提供した者は、三年以下の懲役又は三百万円以下の罰金に処する。電気通信回線を通じて第二条第三項各号のいずれかに掲げる児童の姿態を視覚により認識することができる方法により描写した情報を記録した電磁的記録その他の記録を提供した者も、同様とする。
3前項に掲げる行為の目的で、児童ポルノを製造し、所持し、運搬し、本邦に輸入し、又は本邦から輸出した者も、同項と同様とする。同項に掲げる行為の目的で、同項の電磁的記録を保管した者も、同様とする。
4前項に規定するもののほか、児童に第二条第三項各号のいずれかに掲げる姿態をとらせ、これを写真、電磁的記録に係る記録媒体その他の物に描写することにより、当該児童に係る児童ポルノを製造した者も、第二項と同様とする。
5前二項に規定するもののほか、ひそかに第二条第三項各号のいずれかに掲げる児童の姿態を写真、電磁的記録に係る記録媒体その他の物に描写することにより、当該児童に係る児童ポルノを製造した者も、第二項と同様とする


 とすると、こんな感じで、性犯罪・福祉犯の機会に行われた製造行為は姿態をとらせて製造罪であってひそかに製造罪ではありません。「被告人が同児童の性器等を露出させた上,それを触る」という姿態をとらせているので、姿態をとらせて製造罪であってひそかに製造罪ではない。

第1  A(当時11歳)に強いてわいせつな行為をしようと企て,  6月16日午後9時18分頃から同日午後9時52分頃までの間,前記被告人方1階の和室内において,前記Aに対し,同人の衣服を脱がせるなどした上,同人の陰部等を手指で触るなどして弄び,同人の陰部等を舐め,同人の胸を直接揉むなどし,もって強いてわいせつな行為をし
第2 前記日時場所において,前記Aが18歳に満たない児童であることを知りながら,ひそかに,被告人が同児童の性器等を露出させた上,それを触る行為をビデオカメラで動画撮影し,その電磁的記録を同カメラ内蔵のハードディスクに記録して保存し,もってひそかに他人が児童の性器等を触る行為に係る児童の姿態であって性欲を興奮させ又は刺激するもの及び衣服の一部を着けない児童の姿態であって,殊更に児童の性的な部位が露出され又は強調されているものであり,かつ,性欲を興奮させ又は刺激するものを視覚により認識することができる方法により電磁的記録に係る記録媒体に描写することにより,児童ポルノを製造し
たものである。

 これもひそかに製造罪不成立。「前記児童が被告人と性交する姿態及び被告人の陰茎を口淫する姿態」をとらせているので、姿態をとらせて製造罪。

被告人は
A(当時13歳)が18歳に満たない児童であることを知りながら
第1 平成32年6月16日午後3時28分頃から同日午後5時34分頃までの間大阪市北区ホテル403号室において,同児童に対し,現金4万円の対償を供与する約束をして,同児童に自己の陰茎を口淫させるなどの性交類似行為をし,もって児童買春をし
第2 前記日時,場所において,ひそかに,前記児童が被告人と性交する姿態及び被告人の陰茎を口淫する姿態等を小型カメラ,ビデオカメラ及びスマートフォンで撮影し,その動画データを同小型カメラ及び同ビデオカメラに装着したマイクロSDカード並びに同スマートフォン内の電磁的記録媒体に記録して保存し,もって児童を相手方とする性交又は性交類似行為に係る児童の姿態を視覚により認識することができる方法により電磁的記録に係る記録媒体に描写した児童ポルノを製造し

女性による男性に対する青少年条例違反事件

 量刑的にはちょい軽くなっています。
 青少年が主体という場合は、青少年条例違反は立たないんでしょうかね。

https://news.tbs.co.jp/newseye/tbs_newseye4005271.htm
男子中学生を自宅に招き入れ、みだらな行為をしたとして40歳の女が逮捕されました。女の自宅は、以前から近所の少年たちのたまり場になっていたということです。

 逮捕されたのは、横浜市の会社員容疑者で、14日朝、自宅で、中学3年の男子生徒にみだらな行為をした疑いが持たれています。
 警察によりますと、容疑者の自宅は数人の少年が出入りするたまり場となっていて、近所の人から相談を受けた警察が、以前、容疑者を注意していました。

神奈川県青少年保護育成条例の解説 平成25年3月
(みだらな性行為、わいせつな行為の禁止)
第31条
1 何人も、青少年に対し、みだらな性行為又はわいせつな行為をしてはならない。
2 何人も、青少年に対し、前項の行為を教え、又は見せてはならない。
3 第1項に規定する「みだらな性行為」とは、健全な常識を有する一般社会人からみて、結婚を前提としない単に欲望を満たすためにのみ行う性交をいい、同項に規定する「わいせつな行為」とは、いたずらに性欲を刺激し、又は興奮させ、かつ、健全な上記を有する一般社会人に対し、性的しゅう恥けん悪の情をおこさせる行為をいう。
[趣旨〕
本条は、青少年に対してみだらな性行為又はわいせつな行為をすることを禁止したものである。また、ごれらの行為を教えたり、見せたりすることを禁止したものである。
※罰則
第1項違反2年以下の懲役又は100万円以下の罰金(第53条第1項)
第2項違反1年以下の懲役又は50万円以下の罰金(第53条第2項第2号)
[解説]
本条は、青少年を対象としだ性行為等のうち、健全な育成を阻害するおそれがあるものとして社会通念上非難を受けるべきものを対象としているが、その行為の認定にあたっては動機、手段及び態様のほか、当該行為が青少年に与えた影響等、諸般の事情を十分に考慮して、客観的、総合的に判断されるべきものである。
I 第1項関係
1 「みだらな性行為」の意義については、第3項で規定されている。その解釈は、象徴的には「人格的交流のない性交」を言うものであり、具体的には、次のものが例として挙げられる。
① 青少年を誘惑し、威迫し、欺岡し又は困惑させる等その心身の未成熟に乗じた不当な手段により行うもの
② 青少年を単に自己の性的欲望を満足させるための対象として扱っているとしか認められないようなもの
③ 行きずりの青少年を相手方とするもの、あるいは多数人を相手方とし、又はこれらを互いに相手方とするもの等
2 「わいせつな行為」についても第3項で規定されているが、その解釈は前記①、②、③と同様な態様による性交類似行為等であり、具体的には、いわゆる素股や尺八等はもちろん、陰部を手などで触れる(又は触れさせる)行為、また、単なる性欲の目的を達するためにのみ行う接吻、乳房を撫でること等が該当する。
なお、本条は青少年に対する行為そのものを禁止する規定であり、刑法第174条に規定する公然わいせつ罪とは異なり、行為の公然性は不要である。
3本項の例としては、成人が、結婚の意思もないのに、青少年を言葉巧みに誘って、単に自己の情欲を満たすために性交した場合や青少年の性器等を手でもてあそぶなどした場合などがこれに当たるが、結婚を前提とした真に双方の合意ある男女聞の性行為は、該当しないものである。

糞便送付による威力業務妨害事件(広島高裁R02.2.18)

裁判年月日 令和 2年 2月18日 裁判所名 広島高裁 裁判区分 判決
事件名 威力業務妨害、わいせつ文書頒布被告事件
裁判結果 棄却 文献番号 2020WLJPCA02189002
理由
第1 控訴趣意
 本件控訴の趣意は,弁護人岩西廣典作成の控訴趣意書に記載されているとおりであるから,これを引用する。
 論旨は,封筒に人糞等を入れて大使館等に送付した被告人の行為は,公館の関係職員を不快な気持ちや侮辱された気持ちにさせることはあっても,畏怖させるに足りる状態にまでは至らせてはいないのに,人糞を危険物との意を込めて「人糞ようの不審物」と証拠に基づかない認定をし,このような物が在中しているとの不安を抱かせたなどとして威力業務妨害罪の成立を認めた原判決には,判決に影響を及ぼすことが明らかな事実誤認があり,刑法234条の「威力を用いて」の解釈適用を誤った法令適用の誤りがあるというのである。
 そこで,記録を調査して検討する。
第2 検討
 1 原判決が認定した罪となるべき事実の要旨
 原判決が認定した本件威力業務妨害罪の要旨は,被告人が,文書(後記①ないし③は「日本人が拉致されているのに北朝鮮に援助は拒否する。韓国とは国交断絶へ。日本の金はとるな。泥棒。出て行け。韓国にはうんこをプレゼントします。」と記載したもの,後記④は「日本人拉致者を巻き込んて金正恩朝鮮労働党委員長を支援することははっきりと断ります。」と記載したもの,後記⑤は「日本人拉致者を巻き込んで文在寅韓国大統領が金正恩朝鮮労働党委員長を支援することは断じてゆるせん。韓国とは国交断絶へ。出て行け。SK Materials Japan!」と記載したもの)及びビニール袋入りの人糞を封入した封筒を,①平成31年1月20日ころ駐新潟大韓民国総領事館(原判示第1の1)及び②駐広島大韓民国総領事館(同第1の2)に,③同月22日ころ駐日本国大韓民国大使館(同第1の3)に,④同年2月17日(同第1の4)及び⑤同年3月22日に駐広島大韓民国総領事館(同第1の5)にそれぞれ宛てて投函し,いずれも到達させて(以下,被告人が文書と糞便の入った封筒を各総領事館等に郵送し,配達人を介して各総領事館等まで到達させた行為を,まとめて「本件郵送行為」といい,郵送先となった各総領事館等を「本件各公館」という。),本件各公館の関係職員らに人糞ようの不審物が在中している旨の不安を抱かせるなどし,これにより,警察への通報等の対応を余儀なくさせて,その正常な業務の遂行を困難にさせたというものである。
 2 原判決の(争点に対する判断)の項の説示の要旨
  ⑴ 本件各犯行の経緯と本件各公館の対応については,原判決が(争点に対する判断)の項の2で説示するとおりである。このうち,同2⑷の本件各公館の対応は,要するに,前記①,③では開封して内容物を確認した上で警察への通報等を行ったが,前記②,④,⑤では封筒の外観等から不審物と判断し,警察への通報等を行った後,警察官立会の下で開封して内容物を確認したというものである。
  ⑵ 原判決は,この事実関係を前提にして,被告人の本件郵送行為が「威力を用いて」に該当することについて,(争点に対する判断)の項の3⑵において,次のとおり説示している。
 「本件封筒は,宛先だけで差出人の記入がなく,その外からは内容物が分からない体裁のものであった。開封前から異臭がするものもあったが,開封して初めて人糞ようの汚物が入っていることが確認できた。人糞はそれ自体が直ちに有害なものではないとしても,一般に,他人の糞便には,汚物として嫌悪感を抱き,糞便が入った封筒が一般の郵便物として郵送されてくることなどは誰も思いもよらない異常な出来事であって,そのような汚物が入った封筒を目にしたりするだけでも不快で,予期せずに手に取ったりすれば強い嫌悪感を感じるものである。そして,そのような異常な行動に出る送り主の強い悪意を窺わせる点でも不安を高じさせる。また,公館はその外国を代表する施設であり,公館に糞便を送りつけることは,その国への侮辱を意味するから,公館の職員としては,公館の安寧や尊厳を守るためにも,このような行為の目的,政治的,組織的な背景の有無を考察し,前述したようなさらなる加害行為にエスカレートするおそれも警戒して,警察への通報や,本国の上級機関等の関係各機関への報告等を行うか否かの検討を差し迫って求められることになる。さらに,一見人糞のように見えても,人体に有害な物質が仮装されていないかどうかは,科学的な分析を経ないと確定できないから,公館の職員は,『アメリ炭疽菌事件』のように,公館を攻撃するために危険物が送られてきたのではないかとの不安や危険を感じることもあろう。このように,公館に糞便を送り付ける行為は,これを受け取った公館の職員が強い嫌悪感を抱いたり,危険物が送られてきたのではないかと不安を覚えたり,あるいは,公館の関係職員は,他の業務を差し置いても,このような不審物に対する警察や関係機関へのしかるべき対応を余儀なくされることになる。このような意味で,公館に糞便を送付した本件行為は,公館の関係職員らの自由な意思を著しく制約するに足りるものであり,威力に該当する。」
 この原判決の説示に,論理則,経験則等に照らし不合理な点はない。
  ⑶ この説示に関し補足すると,本件郵送行為は,開封後,その内容物を確認した本件各公館の関係職員に対し,著しい不快・嫌悪の情を抱かせて心理的動揺を生じさせ得るとともに,人糞を封入するという異様さと同封の文書の内容等とが相まって,氏名不詳の送り主が当該国に対する強い敵意を有する人物であり,今後公館の関係者らに対する加害行為へと行動を発展させるのではないかという不安を抱かせる性質のものであったといえる。また,その外見・臭気等から人糞である蓋然性が高いと当時考えられたとしても,病原菌等の人体に有害なものが混入している可能性も否定できず,危険物であるという不安を抱かせるものであったともいえる。被告人の行為は,客観的に見て本件各公館の関係職員に対し上記のような心理的威圧感を与えて事実上業務遂行に支障を生じさせる性質のものであり,人の自由意思を制圧するに足る作用を有するものとして「威力を用いて」に該当するというべきである。なお,本件郵送行為後,因果の流れとして開封に至る蓋然性は高いとはいえるものの,犯罪が成立するのは現実に本件各公館の関係職員が開封して内容物を確認した時点と解するのが相当である。この点について,原判決の(罪となるべき事実)では,本件各公館の関係職員に開封させたことを明示してはいないが,実体としては,前記のとおり,いずれの犯行でも,警察への通報の前後において,本件各公館の関係職員により開封されており,原判決の(罪となるべき事実)中の「到達させて」の文言には,「到達させ,公館の関係職員に開封させて」との趣旨を含むものと解するのが相当である。
 3 所論の検討
 所論は,原判決が,本件各公訴事実中の「人糞ようの汚物その他の危険物が在中している旨の不安を抱かせるなどし」との記載部分について,(罪となるべき事実)で「人糞ようの不審物が在中している旨の不安を抱かせるなどし」との表現に変えて認定したのは,(争点に対する判断)の項の3⑵の前記説示内容と合わせて見れば,「不審物」に危険物との意を込めた趣旨であると指摘した上で,実際には危険物は入っておらず,関係職員らがそのような不安を抱いていたという証拠もない(控訴趣意書によると,原審において,弁護人は,人糞以外に危険な物が入っている可能性があるという危機意識があった旨の記載部分は全て不同意としたと主張している。)から,前記認定は事実誤認であるという。
 しかし,弁護人が不同意にしたという部分を除いた関係証拠によっても,本件各公館の関係職員が不審物であるとの不安を抱いたと推認することは,論理則,経験則等に照らし不合理とはいえず,原判決に所論がいうような事実の誤認はない。本件郵送行為により到達した封筒を本件各公館の関係職員に開封させて内容物を認識させることが「威力を用いて」に該当するかどうかは,行為の態様,当時の客観的状況,妨害の対象となる業務の性質・内容等からして当該業務を妨害するに足りるような性質・程度のものであるかという観点から客観的に判断すべきものである(弁護人が控訴趣意書7頁で,威力の認定は社会通念に基づいて行うものであると主張しているのも,同趣旨と解される。)。原判決の(争点に対する判断)の項の3⑵の前記説示は,本件郵送行為の「威力を用いて」の該当性の客観的判断として経験則等に基づく評価を示したものであって,実際に本件各公館の関係職員が説示にあるような不安を抱いたことを認定した趣旨のものでないことは明らかである。
 これに対し,原判決の(罪となるべき事実)は,被告人の行為により実際に生じた前記職員の自由意思の制圧と正常な業務の遂行の阻害という具体的事実を認定することにより,本件について危険犯である威力業務妨害罪の該当性を示すとともに,その危険が現実化したことを情状事実として摘示したものと解するのが相当である。
 なお,この点に関し,所論は,原判決の(罪となるべき事実)中の「人糞ようの不審物が在中している旨の不安を抱かせ」との認定部分と,(争点に対する判断)中の「一見人糞のように見えても,人体に有害な物質が仮装されていないかどうかは,科学的な分析を経ないと確定できないから,公館の職員は『アメリ炭疽菌事件』のように公館を攻撃するために危険物が送られてきたのではないかとの不安や危険を感じることもあろう」との記載部分を対比すると,そこにいう不安の内実は別物といえるから,威力該当性の判断について,刑訴法378条4号後段の「理由にくいちがいがある」場合に当たるとも主張する。しかし,実質的に両者の「不安」の内実が異なっているとはいい難い上,(罪となるべき事実)の項における認定の意義と,(争点に対する判断)の項における「威力を用いて」該当性判断の説示の趣旨は既に指摘したとおりであって,その間に論理的な矛盾・くいちがいはないというべきであるから,この点の所論も失当である(もっとも,所論が指摘するとおり,原審で取調べた証拠に現れておらず,検察官も主張していない「アメリ炭疽菌事件」を引用して本件の危険性を論ずる原判決の説示部分は,やや適切さを欠くことは否めない。)。
 論旨は理由がない。
第3 結論
 よって,刑訴法396条により本件控訴を棄却することとして,主文のとおり判決する。
 令和2年2月18日
 広島高等裁判所第1部
 (裁判長裁判官 多和田隆史 裁判官 水落桃子 裁判官 廣瀬裕亮)

木村光江「強制わいせつ罪における『性的意図』」判例時報 736号18頁

 わいせつの定義は非常に流動的なんだそうで、木村説の定義はありません。

拙稿1頁って17年前の論稿
強姦罪の理解の変化--性的自由に対する罪とすることの問題性
雑誌記事 木村 光江
掲載誌 法曹時報 55(9) 2003.9 p.2343~2360

木村光江・判評 736号18頁
6 わいせつな行為の意義
(1)大法廷判決の意図
 性的意図の位置づけは、平成29年判例により、犯罪の成立要件からわいせつ行為の判断基準の一要素へと移った(ただし、なお一定の独立の主観的要件は必要であるとする見解として、成瀬幸典・法学82巻6号113頁以下。客観的事実を超えた「人をその意思に反して自己又は第三者の性的衝動・性的欲求の対象として扱う意図」を強制わいせつ罪の主観的要件として認めるべきであるとする)。問題は、現代社会においてどのような行為が「わいせつな行為」、大法廷の文言でいえば「性的な意味のある行為」に当たるかである。「わいせつ」の定義としては、わいせつ物頒布等罪175条)に関する最判昭26・5・10(刑集5巻6号1026頁)の「性欲を刺激、興奮または満足させ、かつ、普通人の性的羞恥心を害し、善良な性的道義観念に反する行為」が、強制わいせつ罪においてもそのまま用いられてきたが、大法廷はこの定義に言及していない。
 学説上も、175条の定義を強制わいせつ罪に用いることへの批判は強く、性的自由に対する侵害行為がわいせつ行為であると理解する見解が多数である(山口厚『刑法各論〔第2版〕』(有斐閣、2010年)107頁、佐久間修『刑法各論〔第2版〕』(成文堂、2012年)115頁)。しかし、大法廷は、「性的自由を侵害する行為」という定義も用いていない。現在では、性的自己決定権の侵害といった保護法益の捉え方では、重大な被害を十分に捉えることができないとして、例えば、「性的不可侵性」(山中敬一・研修817号10頁)、被害者の性的尊厳・人格権の侵害(辰井聡子『町野古稀(上)』(信山社、2014年)425頁)といった理解も有力であり、わいせつ行為の定義自体は非常に流動的な状況にある(拙稿・前掲1頁以下参照)。大法廷が敢えて定義を示さなかったのは、現時点での一義的な定義が困難だという面もあるが、強制わいせつ罪の保護法益がかつてのように「性的自由に対する罪」だけでは説明できない状況にあるからである(本件のように児童に対するわいせつ行為も、自由に対する罪というよりは児童保護の観点が重要である)。
 一般的な定義を示す代わりに、大法廷は前述の通り、「わいせつな行為」を①性的な意味が明確な行為と②それが不明確な行為に分けて論じている。ただ、規範的構成要件要素の解釈に困難が伴うことは「わいせつ性」の判断に限らない。それにもかかわらず、敢えて大法廷がこのような区別を示して説明した理由に着目すべきであろう。おそらく「性的な意図」を独立の成立要件から外すに当たり、およそ行為者の主観を考慮しないとする趣旨ではないことを強調したかったものと思われる。「わいせつ」のような規範的判断において主観的事情を考盧しないことは非現実的だからである。そこで、「性的意図をおよそ要しない行為類型(①)」を取り出して、この部分については「性的意図」を成立要件としないことを明確にし、その上で、なお行為者の主観を考慮して判断すべき「限界事例」があることも見据えていると考えられる。本判決が「性的意図を独立の成立要件としない」ことを宣言した意義は大きいが、上述5(2)で述べたように、実質的な判断基準において昭和45年判例と決定的な違いがあるわけではない
(2)わいせつな行為の判断基準
 平成29年判例によれば、「わいせつな行為」の具体的な判断は、「行為そのものが持つ性的性質の有無及び程度を十分に踏まえた上で、事案によっては、当該行為が行われた際の具体的状況等の諸般の事情をも総合考慮し、社会通念に照らし、その行為に性的な意味があるといえるか否かや、その性的な意味合いの強さを個別事案に応じた具体的事実関係に基づいて」なされ、「そのような個別具体的な事情の一つとして、行為者の目的等の主観的事情を判断要素として考慮すべき場合があり得る」とされている。
 社会通念により判断する以上、当該被害者の個別具体的な被害感情そのものは基準となり得ず(それも判断材料の一つとはなり得ようが)、その時代の一般的な社会常識によらざるを得ない。より具体的には、当該行為の性質、被害者との関係、被害者の同意の有無、四囲の状況等(馬渡・前掲87頁)のほか、事案によっては医療上の必要性といった事情も考慮して判断されることになろう(たとえ衣服を脱がせる行為が診察上必要であっても、それを撮影することの必要性がなければわいせつ行為に当たる。広島高判平23・5・26、後掲表15参照)。
 身体的接触があれば「性的に意味のある行為」に当たることが多いであろうが、昭和45年判例で問題となった「裸にして写真を撮る行為」は、既に昭和62年の時点で(性的意図の有無にかかわらず)客観的には「わいせつな行為」に該当するとされていた。
(3)主観的事情の考慮
 では、行為者の性的意図を考慮しなければ判断し得ない場合とはどのような行為か。昭和45年以降の裁判例で、公刊物等で確認できるもののうち、行為自体のわいせつ性や性的意図が争点となった主なものについて、客観的なわいせつ性の程度と、性的意図の有無の観点から整理したのが本稿末尾の表である。
 客観的にわいせつ行為であることが明確な行為(表(ⅰ))については、昭和45年判例を除き全て有罪(●)となっているが、敢えて「性的意図は不要である」と明示したのが19、26(本件大法廷判決)である。これらを含む「I’」の分類は、被告人が性的意図以外の目的を主張した事案につき、性的意図との併存を認定したものである。
 それに対し、客観的にわいせつ行為性が認められないとされた例が(ⅲ)の6及び10であり、性的意図があることを認定しつつ強制わいせつ罪に当たらないとした。10は、嘔吐させることに性的満足を覚える者が、性的意図を持って女子高校生の口内に指を差し入れ嘔吐させる行為につき、客観的に「わいせつ行為」に当たらず暴行罪にとどまるとした。また、6は性的意図をもって女性の定期券を奪った行為について、窃取であってわいせつ行為ではないとした(東京高判昭62・7・9、豊田健・法学研究61巻2号267頁参照。不法領得の意思は認められる)。
 問題となりうるのが(ⅱ)の客観的に見てわいせつ性が必ずしも明確ではない類型であり、直接的な身体的接触がない場合や、近年は被害者自身に自画撮りさせて送信させる行為等が含まれる(非接触型のわいせつ行為につき、橋爪隆・研修860号3頁以下参照)。もっとも、成人女性・男性に対し意思に反して裸体を撮影する行為は、現在では性的意図を考慮することなく社会通念上わいせつ行為に当たるとされよう。それに対し、27判例(最決平30・9・10により維持された)は、ベビーシッターが乳幼児(男児)の陰茎を露出させて撮影した等の行為について、「日常でも目にするような全裸又は半裸の乳幼児の姿態を写真撮影するという態様」の行為のわいせつ性判断に当たり、被告人の性的意図の有無を考慮することは妥当であるとしている。
 さらに、最高裁が考慮すべきとする「行為者の主観的事情」は、「行為者自身の性欲を満たす性的意図に限られない」と指摘されている。性的屈辱感を感じさせる復讐目的や、第三者らの性欲を満たすための性産業に提供する目的も含むと考えられるからである(馬渡・前掲88頁)。ただ、このような目的は「一般人からみて性的意図があると考えられる事情」とほぼ同義であり、そのような意味での主観的事情であれば、わいせつ性の認識(故意)とほぼ重なることになろう。実質的にみれば、29年判例のいう「主観的事情」は「故意」とほぼ同義といえるのである。したがって、故意以外に主観的事情を考慮する必要がある事例は限定的となろう。
 7 まとめにかえて
 29年大法廷判決以降、強制わいせつ罪の議論の中心は、「性的意図の要否」から「わいせつ行為とは何か」に移った。わいせつ行為を、「性的性質を有する一定の重大な侵襲」とし、より具体的に検討する試みもなされている(佐藤・前掲法時60頁以下)。
 ただ、翻ってみると、昭和45年判例と平成29年大法廷判例との実質的な相違は、「性的意図の要否」の問題ではなかったように思われる。昭和40年刊行の注釈刑法では、単なる抱擁や、男が女の上に馬乗りになる行為、着衣の上から臀部を撫でる行為等はわいせつ行為ではないといった記述が見られる(同(4)293-294頁(所一彦執筆分))。もちろん状況にもよるが、現在ではこれらの行為については、わいせつ行為に当たるとされる場合も多いといえよう(なお、迷惑防止条例との関係については、嘉門優・季刊刑事弁護93号147頁以下参照)。昭和45年、平成29年の両判例の相違は、処罰範囲の違いであると考えるべきである。
 その処罰範囲の違いは、大法廷のいうように「社会の一般的な受け止め方」の変化によるものに他ならない。さらに、昭和45年判例が「通説にしたがって」性的意図を必要であるとしたのに対し、平成29年大法廷判例は「社会の一般的な受け止め方」にしたがって性的意図を成立要件とすることを否定した。両判例の違いには、学説と判例の関係の変化も現れているのである。

ダークウエブの単純所持容疑で書類送検の報道

 タナー法の児童性立証を争うしか無いなあ。

https://news.yahoo.co.jp/articles/959085981f5bb702daf2acf81923d434c9391768
ネットからダウンロードし「保存」…児童ポルノを所持した疑いで男4人を書類送検
6/8(月) 19:24配信
警察の調べに4人は容疑を認めている「違法だと知りながら捨てることが出来なかった」
インターネット上で幼い少女の裸の動画などをダウンロードし、所持した疑いで、京都や三重に住む男4人が書類送検されました。
児童ポルノ禁止法違反の疑いで書類送検された京都府三重県に住む男4人は、去年、ネット上で4歳から13歳の少女が裸でダンスを踊る動画などをダウンロードし、パソコンなどに保存した疑いが持たれています。
警察の調べに対し、4人は容疑を認めていて「違法だと知りながら捨てることが出来なかった」などと話しているということです。
全国33都道府県の警察の合同捜査で、同じサイトから少女の裸の動画や写真などが約4400回ダウンロードされたことがわかっていて、これまでに4人を含む合わせて60人が書類送検されています。
警察は、違法に18歳未満の少女の裸の動画や写真などを投稿していた人物の特定を急いでいます。

強制わいせつ罪と姿態をとらせて製造罪を観念的競合とした判例・裁判例 最新版

 脱がして、撮影するだけのは観念的競合になってます。
 触ったり、ダビングしたりすると、併合罪


名古屋地裁一宮H17.10.13
東京 地裁H18.3.24
東京 地裁H19.2.1
東京 地裁H19.6.21
横浜 地裁H19.8.3
長野 地裁H19.10.30
札幌 地裁H19.11.7
東京 地裁H19.12.3
高松 地裁H19.12.10
山口 地裁H20.1.22
福島 地裁白河H20.10.15
那覇 地裁H20.10.27
金沢 地裁H20.12.12
金沢 地裁H21.1.20
那覇 地裁H21.1.28
山口 地裁H21.2.4
佐賀 地裁唐津H21.2.12
仙台高裁H21.3.3
那覇 地裁沖縄H21.5.20
千葉 地裁H21.9.9
札幌 地裁H21.9.18
名古屋高裁H22.3.4
松山 地裁H22.3.30
那覇 地裁沖縄H22.5.13
さいたま地裁川越H22.5.31
横浜 地裁H22.7.30
福岡 地裁飯塚H22.8.5
高松 高裁H22.9.7
高知 地裁H22.9.14
水戸 地裁H22.10.6
さいたま地裁越谷H22.11.24
松山 地裁大洲H22.11.26
名古屋地裁H23.1.7
広島 地裁H23.1.19
広島 高裁H23.5.26
高松 地裁H23.7.11
広島 高裁H23.12.21
秋田 地裁H23.12.26
横浜 地裁川崎H24.1.19
福岡 地裁H24.3.2
横浜 地裁H24.7.23
福岡 地裁H24.11.9
松山 地裁H25.3.6
横浜 地裁H25.4.30
阪高裁H25.6.21
横浜 地裁H25.6.27
福島 地裁いわきH26.1.15
松山 地裁H26.1.22
福岡 地裁H26.5.12
神戸 地裁尼崎H26.7.29
神戸 地裁尼崎H26.7.30
横浜 地裁H26.9.1
津地裁H26.10.14
名古屋地裁H27.2.3
岡山 地裁H27.2.16
長野 地裁飯田H27.6.19
横浜 地裁H27.7.15
広島 地裁福山H27.10.14
千葉 地裁松戸H28.1.13
高松 地裁H28.6.2
横浜 地裁H28.7.20
名古屋地裁岡崎H28.12.20
東京 地裁H29.7.14
名古屋地裁一宮H29.12.5
東京 高裁H30.1.30
高松高裁H30.6.7
広島 地裁H30.7.19
広島 地裁H30.8.10

「A(当時15歳)が18歳未満の者であることを知りながら、単に自己の性的欲望を満足させるため、同人と性交し、もって、青少年に対しみだらな性行為をした」という青少年健全育成条例違反罪の罪となるべき事実(仙台地裁R01.12.19)

青少年= 六歳以上十八歳未満の者(婚姻により成年に達したものとみなされる者を除く。)という条例の定義なわけだから、「六歳以上十八歳未満の者(婚姻により成年に達したものとみなされる者を除く。)であることを知りながら」を認定しないと、理由不備になるんじゃないかなあ。。


https://www.pref.miyagi.jp/uploaded/attachment/729011.pdf
(定義)
第十四条 この章から第六章までにおいて、次の各号に掲げる用語の意義は、当該各号に定めるところによる。
一 青少年 六歳以上十八歳未満の者(婚姻により成年に達したものとみなされる者を除く。)をいう。

仙台地方裁判所
令和01年12月19日
主文
被告人を懲役2年に処する。
この裁判確定の日から4年間その刑の執行を猶予する。

理由
(罪となるべき事実)
 被告人は、
第1 インターネットのアプリを通じて知り合ったA(当時15歳)が未成年であることを知りながら、同人に家出願望があることを利用して同人を誘拐しようと考え、令和元年8月23日頃、C市(以下略)の当時の被告人方において、宮城県内で両親と居住していた前記Aに対し、携帯電話機を利用して、自己の車に寝泊まりすることを了承する旨のメッセージを送信し、家出をして自己の下に来るように誘惑し、前記Aにその旨決意させ、同月24日午後1時30分頃、同市(以下略)付近路上において、同人と合流し、同人を同所付近に駐車中の自動車に乗車させて同車を発進させ、親権者に無断で前記Aを連れ去り、以後、同年9月3日午後9時50分頃までの間、同人を同車内で寝泊まりさせるなどして自己の支配下に置き、もって、未成年者を誘拐し、
第2 同年8月26日午前8時過ぎ頃、当時の前記被告人方において、前記A(当時15歳)が18歳未満の者であることを知りながら、単に自己の性的欲望を満足させるため、同人と性交し、もって、青少年に対しみだらな性行為をした。
(証拠の標目)
(法令の適用)
罰条
  判示第1の行為 刑法224条
  判示第2の行為 青少年健全育成条例(昭和35年宮城県条例第13号)41条1項、31条1項
刑種の選択 判示第2の罪につき懲役刑を選択
併合罪の加重 刑法45条前段、47条本文、10条(重い判示第1の罪の刑に刑法47条ただし書の制限内で法定の加重)
刑の全部執行猶予 刑法25条1項
訴訟費用の不負担 刑訴法181条1項ただし書
(量刑の理由)
 本件において、被告人は、被害者が中学生であることを知りながら、その家出願望を利用して家出するようにそそのかすなどして被害者を誘拐し、さらに、被害者をその性的欲望を満足させる対象としており、被害者の年齢を考慮すると、被告人の行為が今後被害者の健全な育成に悪影響を与える可能性も否定できず、その態様は巧妙かつ悪質で、その結果も軽視できない。
 また、突如、中学生の娘を誘拐された被害者の両親らの動揺や不安は察するに余りあり、被害者の母親が被告人の厳重な処罰を望むのも当然である。
 以上によれば、被告人の刑責は重大である。
 しかしながら、被告人は、本件各犯行時21歳であり、これまで前科、前歴がなく、また、本件各犯行を認め、今後犯罪行為は一切しない旨誓約し、捜査や裁判の手続を経て、現段階においては、内省が深まりつつあることに加え、被告人の母親が今後同居しながら、父親とともに、被告人を指導監督する旨誓約していることなどを考慮し、被告人に対しては、その刑の執行を猶予するのが相当であると判断した。
(検察官上田勇樹、弁護人伊藤佑紀各出席)
(求刑 懲役2年)
第2刑事部
 (裁判官 江口和伸)