児童ポルノ・児童買春・児童福祉法・監護者性交・強制わいせつ・青少年条例・不正アクセス禁止法・わいせつ電磁的記録記録被告事件弁護人 奥村徹弁護士の見解(弁護士直通050-5861-8888 hp3@okumura-tanaka-law.com)

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「性交等する姿態」という事実で、2号3号ポルノを認定した事案(理由不備) 金沢地裁R3.3.30

「性交等する姿態」という事実で、1号2号3号ポルノを認定した事案(理由不備) 金沢地裁R3.3.30
 こんなのは理由不備だとして破棄された判決があります。(名古屋高裁、仙台高裁)。性交してても、性器接触があるとか、裸だとか言えないからです。
 重い強制性交に集中してしまい、軽い児童ポルノ罪の訴因を検討してないことがよくあります。

金沢地方裁判所令和03年03月30日
 上記の者に対する強制性交等、児童買春、児童ポルノに係る行為等の規制及び処罰並びに児童の保護等に関する法律(以下「児童買春法」という。)違反被告事件について、当裁判所は、検察官伊藤純基及び同江藤涼並びに私選弁護人太田圭一各出席の上審理し、次のとおり判決する。
理由
(罪となるべき事実)
第1 令和2年11月4日付け起訴状記載の公訴事実のとおりであるから、これを引用する。
第2 令和2年12月10日付け起訴状記載の公訴事実のとおりであるから、これを引用する。
第3 令和3年1月13日付け起訴状記載の公訴事実第1(冒頭の事実を含む。)のとおりであるから、これを引用する。
第4 令和3年1月13日付け起訴状記載の公訴事実第2(冒頭の事実を含む。なお、同事実別表2番号5に「同日午後3時頃までの間」とあるのを「同日午後1時頃までの間」と改める。)のとおりであるから、これを引用する。
 なお、被告人は、令和2年10月14日、石川県A警察署に出頭し、同署司法警察員Bに判示第1及び第3の犯罪事実について自首した。
・・・
判示第4
r3.1.13起訴
 被告人は、●●●が13歳未満の者であることを知りながら
第1 同人と性交等をしようと考え、別表1記載のとおり、令和2年9月20日から同年10月4日までの間に、5回にわたり、石川県●●●ほか4か所において、同人と性交及び口腔性交をし
第2 別表2記載のとおり、同年9月20日から同年10月4日までの間に、5回にわたり、●●●ほか4か所において、同児童に、被告人と性交等をする姿態をとらせ、これを被告人が使用するカメラ機能付きスマートフォンで動画撮影し、その動画データ合計22点を同スマートフォンに内蔵された記録装置に記録して保存し、もって児童を相手方とする性交又は性交類似行為に係る児童の姿態、他人が児童の性器等を触る行為又は児童が他人の性器等を触る行為に係る姿態であって性欲を興奮させ又は刺激するもの及び衣服の全部又は一部を着けない児童の姿態であって、殊更に児童の性的な部位が露出され又は強調されているものであり、かつ、性欲を興奮させ又は刺激するものを視覚により認識することができる方法により電磁的記録に係る記録媒体に描写した児童ポルノを製造し
たものである。
  罪名及び罰条
 第1 強制性交等 刑法第177条後段
 第2 児童買春、児童ポルノに係る行為等の規制及び
  処罰並びに児童の保護等に関する法律違反
  同法律第7条第4項、第2条第3項第1号
  第2号、第3号

「中学生に対する性行為は、多くの都道府県条例で同意があっても処罰対象としているが、地域によっては結婚を前提とした交際関係などがある場合、対象から外している。」という産経新聞の記事が間違っている

 産経は「中学生に対する性行為は、多くの都道府県条例で同意があっても処罰対象としているが、地域によっては結婚を前提とした交際関係などがある場合、対象から外している。」というのです。

https://news.yahoo.co.jp/articles/54f219d2443d6243e4358bb7cabe81bd14f8a644
立憲民主党の性犯罪刑法改正に関するワーキングチーム(WT)で、中学生を性被害から守るための法改正を議論した際、出席議員が「50歳近くの自分が14歳の子と性交したら、たとえ同意があっても捕まることになる。それはおかしい」などとして、成人と中学生の性行為を一律に取り締まることに反対したことがわかった。
複数の党関係者によると、発言したのは50代の衆院議員。「年の離れた成人と中学生の子供に真剣な恋愛関係が存在する場合がある」とも語り、厳罰化に慎重な姿勢を示したという。
現在の刑法では、本人の同意があっても性行為自体を罪に問うのは13歳未満に限られている。中学生に対する性行為は、多くの都道府県条例で同意があっても処罰対象としているが、地域によっては結婚を前提とした交際関係などがある場合、対象から外している。

 確かに、神奈川県条例では、結婚を前提にしている場合を除外しているように見えますが、明文で「結婚(法律婚に限らない)」を挙げるのは神奈川だけのようです。公訴事実に「結婚等正当な理由が無いのに」というのは他の青少年条例違反事件でも見かけます。
 しかし、福岡県青少年保護育成条例違反被告事件最高裁判所大法廷判決昭和60年10月23日によって、13歳以上との性行為については、刑法が放任していて条例による規制が許されるとされて、さらに淫行処罰規定に限定解釈されることになって、「「淫行」とは、広く青少年に対する性行為一般をいうものと解すべきでなく、①青少年を誘惑し、威迫し、欺罔し又は困惑させる等その心身の未成熟に乗じた不当な手段により行う性交又は性交類似行為のほか、②青少年を単に自己の性的欲望を満足させるための対象として扱つているとしか認められないような性交又は性交類似行為をいうものと解するのが相当である。(最大判S60.10.23)」というのが全国一律の解釈になっています。
 「中学生に対する性行為は、多くの都道府県条例で同意があっても処罰対象としているが、地域によっては結婚を前提とした交際関係などがある場合、対象から外している。」でななく、「青少年に対する性行為一般をいうものと解すべきでなく、①青少年を誘惑し、威迫し、欺罔し又は困惑させる等その心身の未成熟に乗じた不当な手段により行う性交又は性交類似行為のほか、②青少年を単に自己の性的欲望を満足させるための対象として扱つているとしか認められないような性交又は性交類似行為だけが処罰されている」というのが正解です。
 とすれば、「「年の離れた成人と中学生の子供に真剣な恋愛関係が存在する場合がある」とも語り、厳罰化に慎重な姿勢を示したという。」という発言は、現行の法律条例の体制の理解説明としては正解であって、記者の方が勉強不足ということになります。

神奈川県青少年保護育成条例
https://www.pref.kanagawa.jp/docs/t7e/cnt/f4151/p385175.html
みだらな性行為、わいせつな行為の禁止)
定義)
第7条 この条例において、次の各号に掲げる用語の意義は、当該各号に定めるところによる。
(1) 青少年 満18歳に達するまでの者(婚姻により成年に達したものとみなされる者を除く。)をいう。
第31条 
1何人も、青少年に対し、みだらな性行為又はわいせつな行為をしてはならない。
2 何人も、青少年に対し、前項の行為を教え、又は見せてはならない。
3 第1項に規定する「みだらな性行為」とは、健全な常識を有する一般社会人からみて、結婚を前提としない単に欲望を満たすためにのみ行う性交をいい、同項に規定する「わいせつな行為」とは、いたずらに性欲を刺激し、又は興奮させ、かつ、健全な常識を有する一般社会人に対し、性的しゆう恥けん悪の情をおこさせる行為をいう。

s32
第九条
1何人も、青少年に対し淫行、わいせつ行為をしてはならない
2何人も、青少年に対し前項の行為を教え、またはとれを見せてはならない

S53改正
第9条
1何人も.青少年に対l. みだらな性行為又はわいせつな行為をしてはとE
らない。
2 何人も青少年に対し 前項の行為を教え.又はこれを見せてはならない。
3 第1項に規定する「みだらな性行為」とは,健全な常識を有する一般社会人からみて.結婚を前提としない単に欲望を満たすためにのみ行う性交をいい、同項に規定する「わいせつな行為」とは,いたずらに性欲を刺激し.又は興奮させ,かっ,健全な常識を有する一般社会人に対し. 性的しゅう恥けん悪の情をおこさせる行為をいう。
〔要旨]
本条は.青少年に対してみだらな性行為若しくは,わいせつな行為をすること又はこれらの行為を教えたり.見せたりすることを禁止したものである。
〔解説〕
2 本条の違反行為は,青少年の健全な肉体的.心理的.精神的ないしは,社会的な成長のすべて若しくはその一部の成長が阻害されると認められる場合をその対象とするものであり,その認定にあたっては.行為の動機,手段及び態様並びに当該行為が青少年に与えた影響等諸般の事情を十分に考慮して.客観的,総合的に判断されるべきものである。従って,青世年に対する行為でも,例えば結婚を前提とした真に双方の合意ある男女間の性行為等は本条に該当しない。
改正経緯
カ社会情勢は著しく変化し,近年,少女売春等青少年の性に関する非行が氾濫し,大きな社会問題となってきた。このような問題は一部の好ましくない大人の身勝手な行為により,青少年の健全育成を阻害するものであり,青少年の福祉を守るうえから十分配慮しなければならない。
そこで「青少年に対するみだらな性行為・わいせつな行為」 は,刑法売春防止法児童福祉法などいずれの法令によっても取締ることができず,条例でも訓示規定となっていることから.処罰することができ辛かったため.昭和53年10月に条例の一部改正を行い、「」みだらな性行為・わいせつな行為の禁止」(第9条)については罰則規定を設け,
同条において「みだら在住行為・わいせつな行為」の構成要件を明確にした。あわせて「場所の提供等の禁止」(9条の2)0.無過失免責の規定(第14条の5)及ぴ,条例の適正な運用を図るため条例の解釈適用条項(第1条の2) を追加した。

神奈川県青少年保護育成条例の解説 平成25年3月
(みだらな性行為、わいせつな行為の禁止)
第31条
1 何人も、青少年に対し、みだらな性行為又はわいせつな行為をしてはならない。
2 何人も、青少年に対し、前項の行為を教え、又は見せてはならない。
3 第1項に規定する「みだらな性行為」とは、健全な常識を有する一般社会人からみて、結婚を前提としない単に欲望を満たすためにのみ行う性交をいい、同項に規定する「わいせつな行為」とは、いたずらに性欲を刺激し、又は興奮させ、かつ、健全な上記を有する一般社会人に対し、性的しゅう恥けん悪の情をおこさせる行為をいう。
[趣旨〕
本条は、青少年に対してみだらな性行為又はわいせつな行為をすることを禁止したものである。また、ごれらの行為を教えたり、見せたりすることを禁止したものである。
※罰則
第1項違反2年以下の懲役又は100万円以下の罰金(第53条第1項)
第2項違反1年以下の懲役又は50万円以下の罰金(第53条第2項第2号)
[解説]
本条は、青少年を対象としだ性行為等のうち、健全な育成を阻害するおそれがあるものとして社会通念上非難を受けるべきものを対象としているが、その行為の認定にあたっては動機、手段及び態様のほか、当該行為が青少年に与えた影響等、諸般の事情を十分に考慮して、客観的、総合的に判断されるべきものである。
I 第1項関係
1 「みだらな性行為」の意義については、第3項で規定されている。その解釈は、象徴的には「人格的交流のない性交」を言うものであり、具体的には、次のものが例として挙げられる。
① 青少年を誘惑し、威迫し、欺岡し又は困惑させる等その心身の未成熟に乗じた不当な手段により行うもの
② 青少年を単に自己の性的欲望を満足させるための対象として扱っているとしか認められないようなもの
③ 行きずりの青少年を相手方とするもの、あるいは多数人を相手方とし、又はこれらを互いに相手方とするもの等
2 「わいせつな行為」についても第3項で規定されているが、その解釈は前記①、②、③と同様な態様による性交類似行為等であり、具体的には、いわゆる素股や尺八等はもちろん、陰部を手などで触れる(又は触れさせる)行為、また、単なる性欲の目的を達するためにのみ行う接吻、乳房を撫でること等が該当する。
なお、本条は青少年に対する行為そのものを禁止する規定であり、刑法第174条に規定する公然わいせつ罪とは異なり、行為の公然性は不要である。
3本項の例としては、成人が、結婚の意思もないのに、青少年を言葉巧みに誘って、単に自己の情欲を満たすために性交した場合や青少年の性器等を手でもてあそぶなどした場合などがこれに当たるが、結婚を前提とした真に双方の合意ある男女聞の性行為は、該当しないものである。

福岡県青少年保護育成条例違反被告事件
最高裁判所大法廷判決昭和60年10月23日
       理   由
 そこで検討するのに、本条例は、青少年の健全な育成を図るため青少年を保護することを目的として定められ(一条一項)、他の法令により成年者と同一の能力を有する者を除き、小学校就学の始期から満一八歳に達するまでの者を青少年と定義した(三条一項)上で、「何人も、青少年に対し、淫行又はわいせつの行為をしてはならない。」(一〇条一項)と規定し、その違反者に対しては二年以下の懲役又は一〇万円以下の罰金を科し(一六条一項)、違反者が青少年であるときは、これに対して罰則を適用しない(一七条)こととしている。これらの条項の規定するところを総合すると、本条例一〇条一項、一六条一項の規定(以下、両者を併せて「本件各規定」という。)の趣旨は、一般に青少年が、その心身の未成熟や発育程度の不均衡から、精神的に未だ十分に安定していないため、性行為等によつて精神的な痛手を受け易く、また、その痛手からの回復が困難となりがちである等の事情にかんがみ、青少年の健全な育成を図るため、青少年を対象としてなされる性行為等のうち、その育成を阻害するおそれのあるものとして社会通念上非難を受けるべき性質のものを禁止することとしたものであることが明らかであつて、右のような本件各規定の趣旨及びその文理等に徴すると、本条例一〇条一項の規定にいう「淫行」とは、広く青少年に対する性行為一般をいうものと解すべきではなく、
青少年を誘惑し、威迫し、欺罔し又は困惑させる等その心身の未成熟に乗じた不当な手段により行う性交又は性交類似行為のほか、
青少年を単に自己の性的欲望を満足させるための対象として扱つているとしか認められないような性交又は性交類似制為をいうものと解するのが相当である。
けだし、右の「淫行」を広く青少年に対する性行為一般を指すものと解するときは、「淫らな」性行為を指す「淫行」の用語自体の意義に添わないばかりでなく、例えば婚約中の青少年又はこれに準ずる真摯な交際関係にある青少年との間で行われる性行為等、社会通念上およそ処罰の対象として考え難いものをも含むこととなつて、その解釈は広きに失することが明らかであり、また、前記「淫行」を目して単に反倫理的あるいは不純な性行為と解するのでは、犯罪の構成要件として不明確であるとの批判を免れないのであつて、前記の規定の文理から合理的に導き出され得る解釈の範囲内で、前叙のように限定して解するのを相当とする。このような解訳は通常の判断能力を有する一般人の理解にも適うものであり、「淫行」の意義を右のように解釈するときは、同規定につき処罰の範囲が不当に広過ぎるとも不明確であるともいえないから、本件各規定が憲法三一条の規定に違反するものとはいえず、憲法一一条、一三条、一九条、二一条違反をいう所論も前提を欠くに帰し、すべて採用することができない。
 なお、本件につき原判決認定の事実関係に基づいて検討するのに、被告人と少女との間には本件行為までに相当期間にわたつて一応付合いと見られるような関係があつたようであるが、当時における両者のそれぞれの年齢、性交渉に至る経緯、その他両者間の付合いの態様等の諸事情に照らすと、本件は、被告人において当該少女を単に自己の性的欲望を満足させるための対象として扱つているとしか認められないような性行為をした場合に該当するものというほかないから、本件行為が本条例一〇条一項にいう「淫行」に当たるとした原判断は正当である。
 二 被告人本人の上告趣意第二部の五(一)は、青少年に対する淫行につき地域により規制上差異があることを理由に本件各規定が憲法一四条の規定に違反すると主張するが、地方公共団体が青少年に対する淫行につき規制上各別に条例を制定する結果その取扱いに差異を生ずることがあつても憲法一四条の規定に違反するものでないことは、当裁判所大法廷判例(昭和二九年(あ)第二六七号同三三年一〇月一五日判決・刑集一二巻一四号三三〇五頁)の趣旨に徴し明らかであるから、所論は理由がない
 三 被告人本人の上告趣意第二部の五(二)は、本件各規定は一八歳未満の者のみに対する性行為を禁止処罰の対象とし、一八歳未満の者と一八歳以上の者との間で異なる取扱いをしているところ、右年齢による差別に合理的な理由はないから、憲法一四条の規定に違反すると主張するが、この点は、青少年の範囲をどのように定めるかという立法政策に属する問題であるにとどまり、憲法適否の問題ではないから、所論は前提を欠く。
 四 被告人本人の上告趣意第二部の六は、児童福祉法三四条一項六号は「児童に淫行をさせる行為」のみを規制し、その適用範囲を児童の自由意思に属しない淫行に限つているにもかかわらず、本件各規定は青少年に対し淫行をする行為のすべてを規制の対象としていて明らかに法律の範囲を逸脱しているから、本件各規定は憲法九四条の規定に違反すると主張するが、児童福祉法三四条一項六号の規定は、必ずしも児童の自由意思に基づかない淫行に限つて適用されるものでない(最高裁昭和二九年(あ)第三九九号同三〇年一二月二六日第三小法廷判決・刑集九巻一四号三〇一八頁参照)のみならず、同規定は、一八歳未満の青少年との合意に基づく淫行をも条例で規制することを容認しない趣旨ではないと解するのが相当であるから、所論は前提を欠く。
 五 被告人本人の上告趣意第二部の七は、本条例は憲法九五条にいう特別法であるところ、同条所定の制定手続を経ていないから、本件各規定は憲法九五条の規定に違反すると主張するが、本条例が憲法九五条にいう特別法に当たらないことは明らかであるから、所論は前提を欠く。
 六 弁護人立田廣成及び被告人本人のその余の上告趣意は、単なる法令違反、事実誤認、量刑不当の主張であつて、いずれも適法な上告理由に当たらない。
 よつて、刑訴法四一四条、三九六条、一八一条一項但書により、主文のとおり判決する。
 この判決は、裁判官牧圭次、同長島敦の各補足意見、裁判官伊藤正己、同谷口正孝、同島谷六郎の各反対意見があるほか、裁判官全員一致の意見によるものである。
 裁判官牧圭次の補足意見は、次のとおりである。
 本条例一〇条一項の規定にいう「淫行」の意義に関する多数意見の解釈の結論に私も賛成であるが、右解釈を相当とする理由として私の考えているところを一言付け加えておきたい。
 一 青少年との淫行の禁止及び処罰に関して、各都道府県条例が現状においては全体として著しく不均衡 不統一であり、これが憲法一四条に違反するといえないまでも、合理的な実質的理由に乏しく、一国の法制度として甚だ望ましくないものといわざるを得ないこと、それ故に、各条例の青少年との淫行処罰規定の解釈及び運用においては、処罰に対し抑制的態度をとることが相当であることについては、いずれも、伊藤裁判官が反対意見の中で詳しく説かれているとおりであり、私も本条例の淫行処罰規定の構成要件の解釈にあたり、右のような観点から、当該規定における用語の意味からかけ離れない限度内で、できるだけ処罰対象をその行為の当罰性につき他の都道府県住民を含む国民多数の合意が得られるようなものに絞つて厳格に解釈するのが妥当であると考える。
 二 ところで、「淫行」の意義について、従来は、「淫行とは、みだらな性行為のことであり、健全な常識を有する一般社会人からみて、結婚を前提としない、専ら情欲を満たすためにのみ行う不純とされる性交又は性交類似行為をいう。」との解釈又はこれと同趣旨に帰する解釈が、いくつかの高裁判決等で示されており、本条例の立案当局の説明(福岡県民生部発行・福岡県青少年保護育成条例の手引二七頁参照)も、同じ見解を示している。しかし、右の解釈にいう「専ら情欲を満たすためにのみ行う」との点は、性行為の範囲を限定する作用をほとんど営まず、従つて、右の解訳では、結婚を前提としない性行為のうちどの範囲のものが不純とされる性行為に当たるのかは必ずしも明確でなく、もし、青少年を相手とする結婚を前提としない性行為のすべてがこれに当たるとするのでは、やはり現在の社会通念からみて、余りにも処罰の範囲が広きに過ぎるといわなければならないと思われる。
 三 性に関する社会通念は、時代とともに変つていくものではあるが、現在のわが国において、国民の多数から強い社会的な非難を受け、処罰に値すると考えられている青少年に対する性行為の類型は、第一に、青少年の無知、未熟、情緒不安定等につけ込んでなされる形態の性行為であり、すなわち、誘惑し、威迫し、欺罔し又は困惑させる等の不当な手段を用いて行う性行為がこれに当たり、第二に、(その多くは右第一の形態にも当たることになると思われるが)相手方である青少年を単に自己の性的欲望を満足させるための対象として扱つているとしか認められない形態の性行為であるといつてよい。伊藤裁判官は、右の第一の形態のものに限つて国民の多数から当罰性が肯認されるとみられるのであるが、不当な手段を用いたといえないまでも、行きずりの青少年を単に自己の性欲を満足させるための対象としてのみ考えてその場限りで行う性交にその典型例を見るように、青少年を全く自己の性欲満足のための道具として弄ぶものと目し得る性行為は、青少年の育成・保護の精神に著しく背馳し、現在における一般社会通念からして、到底許容できないものとして当罰性も肯認されるものと考えられる。そして、右第二の形態に当たる性行為であるかどうかは、青少年及び相手方の年齢、性行為に至る経緯及び行為の状況等を基にして、健全な常識を有する一般社会人の立場で判断するときは、その判定が特に困難であるともいえないものと思われるから、これを「淫行」の概念の中に含ませることが刑罰法規の中に曖昧、不明確なものを持ち込むことになるという批判も当たらないと考える。
 四 青少年に対する性行為のうち、現在の一般の社会通念上特に強い非難に値することが明らかであると考えられる右の二つの形態の性行為に絞つて、これが「淫行」に当たると解することは、「淫行」ないしは「みだらな性行為」の語義からもかけ離れたものではなく、また、青少年の健全育成という本条例の目的にも合致するものと考える。
 五 以上の理由により、私は、本条例一〇条一項の「淫行」の意義についての解釈に関する多数意見の説示に同調するものである。
 裁判官長島敦の補足意見は、次のとおりである。
 私も、多数意見と同じく、本条例一〇条一項の規定にいう「淫行」とは、性行為一般を指すのではなくて、青少年を相手とする性交又は性交類似行為のうち、当該青少年を誘惑し、威迫し、欺罔し又は困惑させる等その心身の未成熟に乗じた不当な手段によつて行うもの、その他青少年を単に自己の性的欲望を満足させるための対象として扱つているとしか認められないようなものをいうと解するのを相当と考えるのであるが、その論拠について、補足的に若干の意見を述べておくこととしたい。
 一 「淫行」という用語は、既に古くから、「営利ノ目的ヲ以テ淫行ノ常習ナキ婦女ヲ勧誘シテ姦淫セシメタル者」を処罰する刑法一八二条の規定に用いられているほか、児童福祉法三四条一項六号の規定は「児童に淫行をさせる行為」を禁じ、同法六〇条一項は、右規定に違反した者は一〇年以下の懲役又は五〇万円以下の罰金に処するものとしている。このように、本条例で用いる「淫行」という用語は、目新しいものとはいえず、それが広く性行為一般をいうのではなくて「淫らな」性行為を意味することはその用語自体及びそれが用いられているこれらの条項の文脈からみて明らかであるといえる(もつとも、刑法ではその性行為を性交に限つているのに対し、児童福祉法ではそこに性交及び性交類似行為を含めて理解するのが一般であるが、それは、刑法が、「姦淫セシメ」ること、つまり、「性交させること」をその犯罪の実行行為としているところから、その行為の客体である「淫行ノ常習ナキ婦女」を「淫らな性交の常習性のない婦女」と解するのであつて、児童福祉法及び本条例においては、性交そのものと同視できるような性交類似行為を除外する理由はない。)。そうとすれば、「淫行」には、正常な性行為、例えば婚姻中の夫婦(実質上の夫婦と認められる内縁関係を含む。)間の性行為が含まれないことはいうまでもない。しかし、このことから逆に、右の正常な性行為以外のそれがすべて淫行に当たるものということはできない。例えば、刑法にいう「淫行ノ常習」は、その罪の客体たる婦女が淫行の常習者であるかどうかが問題となるのであるから、その淫行にはいわば貞操観念ないし性的倫理観に反するようなものを広く含むものと解することができるが、児童福祉法や本条例においては、淫行がそこに定める犯罪の実行行為の中に包含され又は実行行為そのものとされているのであるから、右にいう正常でない性行為であつても、それが行為当時の社会通念によつて許容されると認められるか、少なくとも、刑罰制裁を加えるに当たらないと評価されるものであるかぎり、犯罪の構成要件行為としての「淫行」ということはできないこととなる。つまり、この意味での「淫行」概念は、当該刑罰法規の趣旨、目的、その保護しようとする法益等を考慮に容れつつ、当該行為がなされた当時における社会通念を基準として価値的な評価・判断を加えることによつて決せられるのである。もとより、社会一般の価値観は多様化し、また、社会通念は、長期的にみれば、時代とともに変遷することは否み得ないが、問題とされる当該行為がなされた当時における最大公約数としての社会通念それ自体は、通常の判断能力を有する一般社会人にとつて把握することは困難ではない。同様のことは、「猥褻」概念についても問題となるが、このような価値的評価・判断を必要とするいわゆる規範的構成要件要素を含む犯罪構成要件であつても、これによつて処罰される行為が何であるかを通常の判断能力をもつ一般人において社会通念に照らして識別し理解することが可能であるかぎり、当該構成要件は明確性に欠けるところはないというべきである。
 二 そこで、刑法及び児童福祉法中の関連諸規定に論及しながら、本条例の本件各規定の趣旨、目的、保護法益について検討を進めることとする。
 まず、刑法一七七条、一七八条は、一三歳以上の婦女に対し暴行又は脅迫を用い、或いはその心神を喪失させ、若しくはその抵抗を不能にさせ、又はその心神喪失若しくは抵抗不能の状態にあるのに乗じてこれを姦淫した者を二年以上の有期懲役に処することとし、他方、一三歳に満たない婦女については、右のような手段を用いず、またその同意を得ていたとしても、これを姦淫した者は、同様に処罰されることとしている。刑法のこれらの規定は、つまるところ、一三歳に満たない婦女は、いまだ性的行為の意義を理解できず、したがつて、これに対する同意能力を欠いているし、一三歳以上の婦女であつても、その自由意思を抑圧し又はそれが欠けている前記のような特殊な事態のもとでこれを姦淫することは、いずれにしても、性的な行為についての自由な自己決定権を侵害するものであつて、被害者個人の性的な自由をその保護法益とするものと解される。しかしながら、一三歳以上の女子であつても、年齢的に、心身の未成熟又は身体と心の発達の不均衡の故に、性的行為の意義について正しい十分な理解をもたず、したがつて、これに対する同意ないし積極的な欲求そのものが完全な自由意思に基づく自由な自己判断によるものとは認めることのできない年齢層の女子が存在することは顕著な事実である。刑法は、このような性的な無知に乗じて前記のような手段によらないでこれらの少女を性的行為の対象とするような行為を直接処罰する規定を設けていないが、そのことによつて、刑法が、そのような行為は社会一般の倫理観に反するとはいえず、およそ刑事罰の対象とすべきではない、とする価値判断を示したものと即断することはできない。いわんや、児童の保護と健全育成という社会的見地から、このような性的被害にかかりやすい年齢層にある青少年を保護するための立法が、刑法と抵触しないことは明白である。
 児童福祉法は、「すべて国民は、児童が心身ともに健やかに生まれ、且つ、育成されるよう努めなければならない。」(一条一項)、「国及び地方公共団体は、児童の保護者とともに、児童を心身ともに健やかに育成する責任を負う。」(二条)、「前二条に規定するところは、児童の福祉を保障するための原理であり、この原理は、すべて児童に関する法令の施行にあたつて、常に尊重されなければならない。」(三条)と高らかに宣言している。もとより、右の第一条が定める国民の努力義務は、法の規定を待つてはじめて生ずるものではなくて、およそ国民が児童の心身ともに健やかな成長を待ち望むことは人間自然の情であつて、その健全な育成を阻害することが社会一般の人道的な倫理・道徳観念に反することはいうまでもない。国及び地方公共団体が児童の保護者と相並んで児童を心身ともに健全に育成する責任を負うものとされているのは、このような児童の健全育成に対するすべての国民の願望からしても当然のことであり、その健全育成を阻害する行為、特に性的行為について正しい十分な理解をもたず、その故に、性的経験による衝撃が将来にわたつての心身の健全な育成に継統的かつ重大な障害となるおそれの強いと認められる一定の年齢層の少女を対象とする特定の性的な侵害行為に対し、国が児童福祉法において厳罰で臨んでいるのは、まさにその責務の一端を果しているものといえる。
 ところで、児童福祉法は、児童とは一八歳に満たない者をいうとし(そのうち小学校就学の始期から満一八歳に達するまでの者を「少年」と名づけている。)(四条)、「児童に淫行をさせる行為」を一般的禁止事項の一として掲げ(三四条一項六号)、しかも、その違反に対する刑は、同法の罰則の中でずば抜けて重く定められている(六〇条一項)。そこには、その行為が児童の福祉を害すること特に著しく、児童の心身ともに健全な育成を望む社会的な公共の法益を甚だしく侵害するものであるとする立法者の評価が示されている。
 本条例における本件各規定は、「何人も、青少年に対し、淫行又はわいせつの行為をしてはならない。」とし、その違反者に対し、二年以下の懲役又は一〇万円以下の罰金を科することとしている(一〇条一項、一六条一項)。それは、児童福祉法の精神、特に同法二条に定める地方公共団体の責任に照らし、前述の国家の法である児童福祉法の一般的禁止行為の中から漏れている青少年(児童福祉法上の「少年」に該当する。以下、適宜「少女」と呼ぶ。)を相手として自分自身で行う性交及び性交類似行為のうち、青少年の健全な育成を阻害するおそれがあると認められるものを対象として補充的に県条例で処罰することとしたものと認められる。この種の行為は、もともと、青少年の性的行為についての判断・同意能力が劣つていることを知り、又はこれに乗じて行われるかぎり、それ自体として、社会一般の倫理観に反するものと認められるが、それは、児童福祉法の規定が児童に対し事実上の影響力を及ぼし、児童をして第三者と性交又は性交類似行為を行わせ又は児童が第三者とこのような性行為をするのを助長し促進する行為を対象とするのに対し、自ら青少年を相手方として行うこの種性行為を対象とする点で、犯罪の態様、したがつてその社会的意義を著しく異にする。すなわち、前者にあつては、そのような性的に未熟な少女を第三者の性的行為の対象にするという行為自体はたとえ行為者が営利の目的に出でず、また、当該少女がもともとそれに同意していたとしても、明らかに当該少女の福祉を害し、その健全な育成を著しく阻害するものであつて、社会通念上その当罰性を肯定するに十分の根拠があり、また、その少女の性行為そのものも、客観的にみて、淫らな性行為として淫行の概念に当たると評価することができる。これに反し、後者にあつては、自ら青少年を相手に性行為に出る場合であるから、その性行為に至る経偉とその背景事情、性行為に出た動機・意図、両者の間の心理的精神的緊密性、将来の結婚へ向つての意図とその実現の可能性など、個々の事件ごとに異なる各般の要素が含まれており、前者のようにその典型的な事例につき犯罪社会学的な一つの犯罪定型を想定することさえ困難である。しかも、他面、性行為の相手方である少女の心身の発達状況に照らして、その性行為に関する自己の判断をどの程度まで尊重すべきかという問題も含まれている。
 本条例は、「青少年の健全な育成を図るため青少年を保護することを目的とする。」(一条)と定め、本件各規定が既に述べたように児童福祉法の趣旨に則り、これを補充して青少年の健全育成を全うしようとするにあることを明らかにしている。そうとすれば、本件各規定の「淫行」概念は、一方では、このような条例の趣旨、目的、被害法益という観点、すなわち、一八歳未満の青少年は性的行為についての自己判断能力が一般的になお未熟であり、そのような状態に乗ずるような性的な侵害行為からこれを保護する必要があるとともに、その自己判断能力の未熟さとも関連して、性的行為の体験が心身両面の健全な成育に継続的かつ深刻な悪影響を及ぼすおそれが一般的に認められ、その健全な育成に対する重大な阻害要因となること、つまり、この種の性的侵害が社会的、倫理的非難に値することを考慮しつつ、他方では、具体的場合におけるその性行為につき、その各般の事情に照らし、青少年の健全な育成という目的からみても、これを本件各規定による刑事制裁の対象とすることが相当でないか、少なくとも刑罰制裁を加えるまでもないと認められる事由があるかどうかを検討することによつて決めなければならない。
 三 以上のような考慮のもとに、多数意見は、本件各規定で禁止、処罰する「淫行」の概念につき、「青少年の健全な育成を図るため、青少年を対象としてなされる性行為等のうち、その育成を阻害するおそれのあるものとして社会通念上非難を受けるべき性質のもの」をいうとして、その解釈の一般的基準を示したものと考える。そして、淫行の概念を定める解釈・評価の基準としてこのような社会通念を用いる以上、それは既述のとおり、当該行為のなされた当時の社会における最大公約数たる共通の倫理的、道徳的、人道的価値観によるべきものと解される。多数意見が、右の一般的基準を敷衍して、「淫行」の概念を説明し、まず、「青少年を誘惑し、威迫し、欺罔し又は困惑させる等その心身の未成熟に乗じた不当な手段により行う性交又は性交類似行為」を掲げ、一般的にいつて性的行為に対する判断・同意能力の劣るとされる青少年に対し、このような手段を用いて性的な侵害行為に出るという点で、性的自由の侵害という観点からも、青少年の健全な育成の阻害という点からも、社会通念上非難に値することが極めて明白である性行為等をとりあげ、次いで、「青少年を単に自己の性的欲望を満足させるための対象として扱つているとしか認められないよつな性交又は性交類似行為」を掲げて、前記のような手段によらない場合であつても、青少年を自己の性的欲望を満足させるためだけの対象物として扱うという点で、およそ青少年の心身の健全な育成への配慮の見られない、これまた社会通念上倫理的な非難に値することに異論の考えられないような性行為等をとりあげていることは、本件性行為のなされた当時の社会通念の理解の仕方として適切であり、「このような解釈は通常の判断能力を有する一般人の理解にも適うもの」ということができる。
 四 なお、本条例一六条一項は、法定刑の長期として、条例で定めることが許されている最高刑の懲役二年を定めており(地方自治法一四条五項)、他の同種の大多数の県条例の法定刑に比し著しく重い刑罰制裁を科しうることとしているが、右に述べたような「淫行」概念を前提とするかぎり、児童福祉法の法定刑と対比しても、その刑が不当に重いとはいえないのみならず、本条例は選択刑として一〇万円以下の罰金を定めており、裁判官の刑の量定における適切な裁量を期待していることがうかがえるから、この点からも右規定は不当とはいえない。
 また、児童福祉法は「児童」の年齢を一八歳に満たない者と定め、本条例が同じく青少年を一八歳に満たない者と定めているところ、その年齢層の中には、婚姻能力の認められている満一六歳以上の女子が含まれており(民法七三一条)、これらの一六歳以上の女子については性行為についての完全な判断・同意能力が法的に是認されているというべきであるから、本条例の罰則で保護すべき法益が欠けている、とする考え方があるが、満二〇歳に達しない未成年の子が婚姻するには父母の同意が必要とされている(民法七三七条)ことからみても、婚姻能力の規定が性的行為についての完全な判断・同意能力を推定させるものと解することは当を得ない。青少年の年齢を何歳までとするかは、合理的立法裁量に委ねられているところであり、現在の状況において、性的行為から保護される年齢の上限を満一八歳に達しないものとすることは、明らかに不合理であるとはいえない。その反面として、これらの年齢層の少女は、「淫行」に該当する性行為等の対象者となることを制約され、その意味でその性的行動の自由に対する事実上の制限を受けることとなるが、一八歳に満たない少女に対しては、その性的行動の自由を保障することよりも、一般的に性的な判断・同意能力の劣ると考えられるこれらの少女を性的経験から受ける悪影響から保護することを重視することも、立法政策として許容される範囲内に属するものと考えるのが相当である。
 最後に、本条例は、青少年の中から、「他の法令により成年者と同一の能力を有する者」を除外し(三条一項)、また「違反者が青少年であるときは、これに対して罰則を適用しない。」(一七条)こととしている。既に婚姻している女子等を保護の対象から除外する一方、一八歳に満たない少年が同じく一八歳に達しない少女を淫行の対象としたときは、互いに性的行為についての判断・同意能力に欠陥があると法的にみなされている者同士の間における性的行為等として当罰性を欠き、また、相互に健全育成についての努力義務を負うとは考えられない者に刑罰制裁を科することは適切でない、としているものと考えられる。いずれも、本条例罰則の適用範囲を適切に限定するものとして行き届いた立法上の配慮というべきである。もつとも、本条例の右罰則にふれない性的行為等であつても、「自己又は他人の徳性を害する行為をする性癖のあること」(少年法三条一項三号)に当たる状況にあるときは、少年非行としてその健全な育成を期し、性格の矯正に関する保護処分を行うため(同法一条)に、家裁の審判に付することができることはいうまでもない。
 裁判官伊藤正己の反対意見は、次のとおりである。
 本条例一〇条一項の規定につき、多数意見は、処罰の範囲が不当に広がり、その適用が恣意にわたることを防ぐため、同規定にいう「淫行」の意義を明確にする限定解釈を行つているが、このような多数意見の考え方には共感するところが少なくない。しかし、そこで示された解釈が右規定から導き出されうるものとし、これによつて同規定による処罰の範囲が不当に広すぎるとか同規定が不明確であるとはいえないから、それが憲法三一条の規定に違反しないとする多数意見の結論には、私は左袒することができず、本条例一〇条一項の規定は、刑罰法規に対して要求される明確性を欠くものであつて、違憲といわざるをえないと考える。以下に、その理由を述べることとする。
 一 本条例のように青少年の健全育成、保護を目的とする条例は、現在、長野県を除く各部道府県において制定されている(なお全国十余の市町にも同種の条例があるが、以下都道府県条例についてのみ言及する。)。しかし、右の都道府県条例における青少年との淫行及びわいせつ行為に対する規制は、余りにも区々であるといわざるをえない。まず、青少年との淫行及びわいせつ行為の禁止並びに処罰に関する規定(以下、「淫行処罰規定」という。)の有無についてみると、東京都、千葉県にはこれがなく、他の道府県はこれを設けており、淫行処罰規定をおくものについてその構成要件の定め方をみると、多くの条例は、青少年に対する淫行(みだらな性行為又は不純な性行為とするものを含む。)又はわいせつ行為を構成要件とするのに対し、京都府大阪府山口県では、性行為及びわいせつ行為を手段又は目的等によつて厳格に限定しているのが目立つている。また、法定刑についてみても、各道府県とも罰金刑を定めているが、その上限は一〇万円(二四例)、五万円(一四例)、三万円(六例)と分かれており、これに選択刑として懲役と科料を定めるもの二例、同じく懲役刑のみを定めるもの二五例、同じく科料のみを定めるもの二例、他の選択刑を定めないもの一五例となつており、懲役刑を定めている二七府県におけるその上限は、六月(六例)、一年(一六例)、二年(五例)と分かれていて、法定刑の差は著しく顕著である。さらに、本罪を親告罪とするもの(四例)とそうでないものがあり、また、行為者が青少年であるときには罰則を適用しないと規定するのが通常であるが、そのような例外規定をおかないもの(五例)もあり、なお、行為の対象となつた青少年の年齢についての認識に関し、故意の推定規定をおくもの(二六例)とそうでないものとがある(ちなみに、本条例一〇条一項及びその罰則を定める一六条一項は、昭和五二年の改正にかかるもので、青少年に対する淫行又はわいせつ行為に対して二年以下の懲役又は一〇万円以下の罰金という、地方自治法の許容する最高限度の刑罰を定めている。)。
 以上に示したように、青少年に対する淫行の処罰に関する各部道府県の条例における規定は、処罰規定の有無、処罰規定における構成要件の精粗、法定刑の種類と軽重、告訴の要否、処罰対象者限定の有無及び故意推定規定の有無について顕著な異同がみられ、全体として、著しく不均衡かつ不統一なものとなつているのが実情である。
 所論は、このような地域差のあることを理由に本条例一〇条一項の規定が憲法一四条に違反すると主張するが、憲法九四条が地方公共団体条例制定権を賦与した以上、一定の行為について処罰するかどうかにつき、また処罰の態様につき、各地方公共団体の条例における取扱いに差異を生ずることがあつても、このような地域差のあることをもつて直ちに憲法一四条に違反するとはいえないことは、多数意見の引用する当裁判所の判例の示すところである。結論としてこの点の論旨を採用することができないことは、多数意見のいうとおりであろう。
 しかし、わが国のように、性及び青少年の育成保護に関する社会通念についてほとんど地域差の認められない社会において、青少年に対する性行為という、それ自体地域的特色を有しない、いわば国全体に共通する事項に関して、地域によつてそれが処罰されたりされなかつたりし、また処罰される場合でも地域によつて科せられる刑罰が著しく異なるなどということは、きわめて奇異な事態であり、地方公共団体の自主立法権が尊重されるべきものであるにせよ、一国の法制度としてはなはだ望ましくないことであるといわなければならない。もとより、このような地域による不均衡があつても、これを正当化しうるだけの実質的な理由があれば別であるが、すでに述べたよつな顕著な差異にういて、国民を納得せしめるに足りる合理的理由をみいだすことはできないと思われる。例えば、日本の人口の一割を超える住民をもつ東京都において、青少年の育成保護の必要度は決して他に比して低いと考えられないにもかかわらず、淫行処罰規定が設けられていないこと、また東京都や千葉県において処罰の対象にならない青少年に対する淫行が隣接する神奈川県や埼玉県では処罰の対象になることについて、これを合理的ならしめる実質的な理由をあげることは不可能であろう。刑法の強姦罪、強制わいせつ罪などが被害者の名誉を顧慮して親告罪とされているのに対し、たとえ保護法益を異にする面があるにせよ、多くの条例が淫行罪について被害者の告訴を要件としていないことも、問題として指摘されてよいと思われる。このようにると、青少年との淫行の処罰に関し各都道府県の条例の間に存する前述のような著しい不均衡は、きわめて不合理なものであることが明らかであるといわなければならない。
 すでにみたように、このような不均衡が憲法一四条に違反するといえないとしても、かかる著しく不合理な地域差を解消する方向を考える必要がある。そうでないと、淫行処罰に関する条例の規定の文面上における著しい不均衡がそのまま右規定による検挙、公訴の提起及び処罰という実際の運用面にあらわれ、延いては国民に右規定の合理性に対する強い疑問や不公正感を抱かせるに至ることがおそれられる。したがつて、右規定の解釈及び運用において、処罰に対して抑制的な態度をとることが相当であると考えられ、とくに本条例一〇条一項にみるような、淫行処罰規定の構成要件の明確性を欠く場合には、処罰対象を国民多数の合意が得られるようなものに絞つて、厳格に解釈することが憲法の趣旨からも要請されるといつてよい。
 二 次に問題となるのは国法との抵触である。いうまでもなく、条例は「法律の範囲内で」制定することが許されるのであるから(憲法九四条。地方自治法一四条一項は、「法令に違反しない限りにおいて」制定できるとする。)、国の法令と矛盾抵触する条例は無効である、もとより、いかなる場合にこの矛盾抵触があるとすべきかは、微妙な判断となることが少なくない。ある事項について国の法令中にこれを規律する明文の規定がないからといつて、当然に条例がこれについて規律することが許されることにはならないし、また特定事項について国の法令と条例が併存するときにも、矛盾抵触があると考えられない場合もある。条例が国の法令に違反するかどうかは、両者の規律対象や文言を対比するのみでなく、それぞれの目的、内容及び効果を比較して決定されることになる(最高裁昭和四八年(あ)第九一〇号同五〇年九月一〇日大法廷判決・刑集二九巻八号四八九頁参照)。
 ところで、淫行処罰規定に関連のある国の法令として、児童に淫行をさせる行為に重罰を科する児童福祉法の規定及び売春の相手方を不可罰としている売春防止法もあるが、ここでは刑法の強姦罪の規定を検討することとしたい(なお、条例の淫行処罰規定にいう青少年とは男女を問わないものであるが、実質上年少の婦女を主眼とするものであることは疑いをいれないところであるから、それを前提として考えてみる。)。
 刑法一七七条及び一七八条の規定によれば、一三歳未満の婦女については、いかなる手段方法によるかを問わず、また完全な合意がある場合であつても、これを姦淫することを強姦罪とするとともに、一三二歳以上の婦女については、暴行、脅迫をもつて又は抗拒不能心神喪失に乗ずるなどの所定の手段方法によつてこれを姦淫した場合に限定して、強姦罪に当たるとされている。これは一三歳に満たない婦女は性行為の意義を理解することができず、その同意の能力を欠くものとされるからであるが、無限定に姦淫を処罰することを相当とする年齢の上限を何歳とすべきかは、国法のレベルにおける裁量によるもので、その変更は法律をもつてしなければならないことは明らかであろう。
 本条例一〇条一項の規定は、小学校就学の始期より前にある者を除き一八歳未満の者である青少年に対して淫行をした行為を処罰するものである。かりにこの淫行の意義をゆるやかに解し、例えば「淫行」すなわち姦淫と解釈するとすれば、何らの限定なく処罰する姦淫(性交)行為の対象となる年少婦女の年齢の上限を一八歳にひきあげるに等しいこととなる。この点は、条例の淫行処罰規定と刑法一七七条及び一七八条の規定とがその保護法益を異にする面があることを考慮に入れても、なお看過し難いところであつて、右にいう「淫行」を性行為一般と解するときは、結局「法律の範囲」外に逸脱する疑いを免れず、この点においても、憲法の趣旨からいつて、そこに何らかの要件を付加することにより限定をすることが求められるのである。そして、このような限定を付するにあたつては、刑法の規定との調和が当然に考慮されるべきこととなろう。
 三 以上に述べたところからみて、「淫行」の意義について、どのような解釈をとれば、著しい条例間の不均衡を生ずることを免れ、また、国法とくに刑法との整合性を保ち、かつ、憲法の要求する明確性を充たすことになるのであろうか。
 本条例一〇条一項にいう「淫行」を広く青少年に対する性行為一般を指すと解したり、また単に反倫理的ないしは不純な性行為と解したりするのでは、あるいは広きに失し、あるいは不明確となるのは多数意見の説示するとおりであるし、私のすでに述べたところからもきわめて不適当といわざるをえない。これまで高裁判決などで多く示された解釈によれば、「淫行とはみだらな性行為のことであり、健全な常識を有する社会人からみて、結婚を前提としない、専ら情欲を満たすためにのみ行う不純とされる性交又は性交類似行為をいう」とされる。この解釈は、一見して限定を付しているようにみえるが、性行為そのものは、自己の性欲を満足させるために行われるのが通常であるから、それはほとんど限定の作用をいとなまず、結婚を前提としない青少年を相手方とする性行為のすべてを包含することに近いと考えられ、適当と考えられる限定とはいえないであろう。
 私の見解によれば、現在のわが国において、青少年に対する性行為であつて社会的な非難を受け、国民の多数が処罰に値するものと考えるのは、青少年の無知、未熟、情緒不安定などにつけ込んで不当と思われる手段を用いてする性交又は性交類似行為であると考える。すなわち、刑法のような、暴行、脅迫をもつて、あるいは心神喪失、抗拒不能に乗じて行うという程度には達しないが不当と考えられる手段を用いて行う性行為がそれに当たるというべきであり、具体的にいえば、まさに多数意見のいう「青少年を誘惑し、威迫し、欺罔し又は困惑させる等………不当な手段により行う性交又は性交類似行為」ということになる。多くの淫行処罰規定は、本条例を含めて、「淫行」とか「みだらな性行為」とか「不純な性行為」というように、むしろ安易に構成要件を定めていたといえるのに対し、近年制定された京都府の条例二一条一項、大阪府の条例一八条、山口県の条例一二条一項が、多少表現及び範囲を異にするが、ほぼ私見のような限定をおいて禁止処罰の対象を定めていることが注目されよう。淫行処罰規定についてこのように処罰の範囲を限定することによつて、はじめて顕著な地域差の解消、国法との調和の保持という憲法の趣旨に沿つた運用がなされることになるのである。
 なお、多数意見は、右にあげたところに付加して、「青少年を単に自己の性的欲望を満足させるための対象として扱つているとしか認められないような性交又は性交類似行為」をも「淫行」に当たるとするが、これは、後述の明確性の点で問題があるのみでなく、以上に述べた国法との関係からいつても、処罰範囲の限定として適切なものとはいえないであろう。
 四 問題となるのは、前叙のように「青少年を誘惑し、威迫し、欺罔し又は困惑させる等その心身の未成熟に乗じた不当な手段により」という限定を加えることは、単に「淫行」とのみ規定する本条例一〇条一項の解釈として可能であるか、ということである。
 当裁判所は、すでに、前記の大法廷判決において、ある刑罰法規があいまいで不明確である理由でもつて憲法三一条に違反すると認めるべきかどうかは、通常の判断力を有する一般人の理解において、具体的場合に当該行為がその適用を受けるものかどうかの判断を可能ならしめるような基準が読みとれるかどうかによつて決定すべきであるとし、また最近では、いわゆる税関検査に関して、右の大法廷判決を参照しつつ、「表現の自由を規制する法律の規定について限定解釈をすることが許されるのは、その解釈により、規制の対象となるものとそうでないものとが明確に区別され、かつ、合憲的に規制し得るもののみが規制の対象となることが明らかにされる場合でなければならず、また、一般国民の理解において、具体的場合に当該表現物が規制の対象となるかどうかの判断を可能ならしめるような基準をその規定から読みとることができるものでなければならない」と判示している(最高裁昭和五七年(行ツ)第一五六号同五九年一二月一二日大法廷判決・民集三八巻一二号一三〇八頁)。
 以上の判例は、いずれも表現の自由にかかわるものであり、表現の自由の特質からその規制の立法はとくに明確性が憲法上要求されることはたしかであるが、刑罰という最もきびしい法的制裁を科する刑事法規については、罪刑法定主義にもとづく構成要件の明確性の要請がつよく働くのであるから、判例の説示するところは、憲法三一条のもとにあつて、刑罰法規についてもほぼ同様に考えてよいと思われる。
 この判断基準にたつて本条例一〇条一項の規定が憲法三一条の要求する明確性をそなえているかどうかを考えてみるに、多数意見の示すような限定解釈は一般人の理解として「淫行」という文言から読みとれるかどうかきわめて疑問であつて、もはや解釈の限界を超えたものと思われるのであるが、私の見解では、淫行処罰規定による処罰の範囲は、憲法の趣旨をうけて更に限定されざるをえず、「誘惑し、威迫し、欺罔し又は困惑させる等」の不当な手段により青少年との性交又は性交類似行為がなされた場合に限られると解するのである。しかし、このような解釈は、「淫行」という文言の語義からいつても無理を伴うもので、通常の判断能力を有する一般人の理解の及びえないものであり、「淫行」の意義の解釈の域を逸脱したものといわざるをえない。このように考えると、「淫行」という文言は、正当に処罰の範囲とされるべきものを示すことができず、本条例一〇条一項の規定は、犯罪の構成要件の明確性の要請を充たすことができないものであつて、憲法三一条に違反し無効というほかはない。原判決及びその支持する第一審判決は破棄を免れず、被告人は無罪であると考える。
 裁判官谷口正孝の反対意見は、次のとおりである。
 一 憲法三一条の規範内容としての罪刑法定主義は、犯罪構成要件の明確性を要請する。この明確性の要請は、一方、裁判規範としての面において、刑罰権の恣意的な発動を避止することを趣旨とするとともに、他方、行為規範としての面において、可罰的行為と不可罰的行為との限界を明示することによつて国民に行動の自由を保障することを目的とするものである(最高裁昭和五〇年九月一〇日大法廷判決・刑集二九巻八号五一五頁、徳島市条例違反等事件における団藤裁判官の補足意見参照)。そして、裁判規範の面における明確性と行為規範の面におけるそれとは表裏一体の関係にあるものであつて、前者の面において犯罪構成要件の意味内容において明確性を欠くときは、公権力の恣意的発動を招来するものであつて、国民に対し拠るべき行為基準を示しえないばかりでなく、その法的地位の安定性を損なうことになる。この趣旨は、前記大法廷判決も明示するところであり、同判決は、刑罰法規が明確性を欠くか否かの判断基準として、「通常の判断能力を有する一般人の理解において、具体的場合に当該行為がその適用を受けるものかどうかの判断を可能ならしめるような基準が読みとれるかどうかによつてこれを決定すべきである」と、判示している。行為規範の面に即しての提言であるが、裁判規範の面についても同じというべきである。さて然らば、本条例一〇条一項(罰則は一六条一項。以下、罰則を含めての趣旨で単に「一〇条一項」という)は、「何人も、青少年に対し淫行又はわいせつの行為をしてはならない」と規定しているが、右規定は前記大法廷判決に示す明確性の基準を充たしているといえるであろうか。
 二 ところで、刑罰法規の構成要件が、記述的要素だけではなく、規範的要素をも用いて定められている場合、その解釈について、規定の文言だけではなく、その規定と法規全体との関係、当該法規の立法目的、規定の対象の性質等を総合的に考察して当該規定の内容を明確にする作業が許されることは、解釈の方法としては当然である。右一〇条一項にいう「淫行又はわいせつの行為」が評価をともなう規範的構成要件要素であることは明らかである。
 そこで、多数意見は、前記のような解釈の作業を重ねたうえ、同条項にいう「淫行」概念についていわゆる限定解釈の手法を用いることにより同意見に示すような解釈を施し、明確性の要請が充たされるものとしているのである。
 そして、限定解釈を必要とする理由について説明を加えているのであるが、そこで説かれている理由は、右の「淫行」の意義を広く青少年に対する性行為一般を指すものと解するときは、「淫らな」性行為を指す「淫行」の用語自体の意義に添わないということと、これを無限定に解釈するときは社会通念上およそ処罰の対象として考え難いものを含むこととなつて広きに失するということである。
 思うに、「淫行」とは、「淫らな行い」のことであつて、行為それ自体の性質を示す用語であり、行為の態様について意味づけを与えるだけの概念であるが、問題は、本条例一〇条一項が、「淫行……をしてはならない」という禁止文言を掲げ、その禁止に違反する行為それ自体を犯罪の構成要件要素としている点である。私は、「淫行」とは性行為、すなわち性交及び性交類似行為を意味する概念であると考える(多数意見のいうように、「淫らな性行為」を意味するものではない)が、犯罪の構成要件要素としての機能を果すためには、右「淫行」の用語が違法行為の類型を示すについて必要にして十分なものといえるかどうかである。「淫行」概念の内包としての性交及び性交類似行為は、人間の営む行為として、もともと違法・適法の価値判断に親しまない価値中立的行為である。かかる行為をして違法行為の類型を示す犯罪構成要件要素とするためには、他に何らかの要素が加わることが必要である。さればこそ、児童福祉法三四条一項六号の規定の如きも、「児童に」という限定と「淫行をさせる」という使役形を用いることとにより、「淫行」についての違法性を与えているのである。「淫行」の概念のうち「淫らな」という用語を取り出して、行為の違法性を示す要素とすることは無理である(性行為それ自体を取り出して「淫らな」それと、「淫らでない」それとを類別することが果して可能であるかを考えよ)。「淫行」概念について、行為の違法性を示すためには、行為の相手方、動機、目的、行為について用いられた手段・方法、行為の行われた当時の附随事情等を示すことによりはじめて可能となるものと考える。そして、私は、後記三に示すとおり、本条例にいう青少年のうち相手方の年齢のいかんによつては、「淫行をする」という用語自体により行為の違法性を示す構成要件要素として必要にして十分なものであると考えうる余地があると思うのであるが、その点は暫く措くとして、ここでは、右条例一〇条一項の規定文言から、多数意見の示すような規範内容を「通常の判断能力を有する一般人の理解」において読みとることができるかどうかについて検討することにする。
 多数意見は、同規定にいう「淫行」とは、広く青少年に対する性行為一般をいうものと解すべきではないとし、その一つの場合として、まず誘惑、威迫等の手段・方法に違法性のある場合を挙げるのであるが、一般人の理解として、行為自体の性質を示す「淫行」という概念から右のような手段の違法性までを導くことは、むしろぞの理解を超えるものというべきである。法令、特に刑罰法規の定め方として、手段・方法の違法性を加えて行為の違法性を示すためには、特にそのことを明示するのが一般である。
 次に、多数意見は“右の手段・方法の違法性のある場合のほか、ないしはこれを含めて、青少年を単に自己の性的欲望を満足させるための対象として扱つているとしか認められないような場合をいうとしているのであるが、この定義も実にあいまいであり、融通無碍の概念規定である。性行為一般がもともと性的欲望の充足を目的とする人の営為であることを思えば、右のように、「単に」といい(愛情その他人格的結合の欠如を要件とする趣旨であろう)、また、性的欲望を満足させるための「対象として扱つているとしか認められないような場合」といつてみても、これを綬やかに解すれば、前記のような性格をもつ性行為一般を限定するものとしての機能を果すことを期待することはできず、また、反対に、これを厳しく解するとすれば、その点の立証は現実に著しく困難なものとなろう。(愛情その他人格的結合を欠く場合といつてみても、その運用は極めて微妙である。例えば、本条例にいう青少年を当初単に性的欲望を充たすための対象として扱つているとしか認められないような性的交渉を重ねた後、結婚意思を生じたというような場合、多数意見によれば果して処罰の対象となるのであろうか。)
 私は、そもそも右のように愛情その他人格的結合の欠如を要件とし、あるいはまた、特定の動機、目的の存在を「淫行」の違法性を示すための必要な要件とするならば、条例の規定それ自体にそのことを明示すべきであり、そのことなくしてこれらの要件を右の「淫行」概念の中に取り込んで理解するということは、やはり一般人の理解を超えるものと思う。
 もつとも、多数意見が「淫行」概念について限定解釈を施し、処罰範囲が不当に拡大することを防止しようとしていることは、私としても理解するに吝かではない。しかし、多数意見の示す誘惑、威迫等性行為にいたる手段の違法性の如きは、これを加えることにより「淫行」の違法性を限定するというのであれば、私はすでに解釈の作業を超え新たな立法作業の範ちゆうに属するものと考える。そしてまた、多数意見の示す右の手段の違法性を除いた場合の概念規定も、通常人の理解をもつてしては、とうていその意味内容を把握するに困難なものだと思う。
 以上の次第で、私は、本条例一〇条一項にいう「淫行」概念は、犯罪の構成要件、すなわち違法行為の類型を示すものとしては明確性の基準に欠けるものとの非難を免れないものと考える。これまで下級審裁判例の実際において、同種の淫行処罰の規定を設けている各道県の条例の解釈につき、各裁判所の見解が必ずしも一義的でなく帰一するところのない現状は、私の批判が当たつていることを裏書しているものと思うのである。
 三 次に、私は、憲法三一条はその規範内容として実体的適正処罰の原則をも含んでいるものと考えている。刑罰法規が人の行為を犯罪として処罰するためには、その行為は法益侵害を伴うものであつて、まさに一般人の見解を基準にして可罰相当性の評価を受けるものでなければならない。社会倫理上もしくは道徳上の価値規準からみて好ましくない行為であるというだけの理由で法律(ここでは条例)を構えて人を処罰するが如きことは許されるはずがない(刑法の脱道徳化、道徳に対する罪の非犯罪化という最近の刑事法の動向を考えよ)。
 ところで、私も青少年を性的に汚染された環境から保護しその健全な育成を図るという本条例制定の趣旨は十分に理解することができる。そして、本条例にいう青少年のうち年少者(例えば、一六歳未満の者。便宜これを「年少少年」という)に対する性交又は性交類似行為の如きは、そこにいたる手段・方法のいかんを問わず青少年の健全な育成を阻害する行為であつて、条例を以てかかる行為を一律に処罰することには相応の合理性があるものと考える(もつとも、これら年少少年に対する場合、通常誘惑の手段が用いられるであろう)。刑法一七六条、一七七条各後段の規定は、性的自由に対する侵害の観点から一三歳未満の者に対するわいせつ、姦淫行為をすべて強制わいぜつ罪又は強姦罪として処罰しているが、そのことと青少年の健全な育成という社会的法益の侵害とは自ら別異の規制に服するものと考えてよい。両者は保護法益を異にしているものといえるからである。
 然し、本条例にいう青少年のうち年長者(例えば、一六歳以上の者。便宜これを「年長青少年」という)に対する性交又は性交類似行為については年少少年に対する場合と同一に扱うわけにはいかない。身体の発育が向上し、性的知見においてもかなりの程度に達しているこれら現代の年長青少年に対する両者の自由意思に基づく性的行為の一切を罰則を以て一律に禁止するが如きは、まさに公権力を以てこれらの者の性的自由に対し不当な干渉を加えるものであり、とうてい適正な処罰規定というわけにはいかないであろう。なお、ここで、民法が一六歳以上の女子に対する婚姻能力を認めていることも考えておいてよい。
 私は、これら年長青少年に対する淫行(性交又は性交類似行為)を禁止処罰するためには、これらの行為を違法たらしめる特別の要素が備わることが必要であると考える。これら青少年の性的知識・経験の未熟なことに乗じて誘惑、威迫等の手段を用いて性交又は性交類似行為に及んだ場合の如きがそうである。多数意見も又そのような考慮を働かせたからこそ、「淫行」概念について限定解釈の道を選択したものと理解する。然し、私としては、そのような限定解釈が解釈の限界を超えると考えることは、先に述べたとおりである。そして、私の考えるところによれば、限定解釈の必要性は専ら右の年長青少年につて生ずるわけであるが、限定解釈の道を認めない私の考えによれば、本条例一〇条一項の規定は右の年長青少年に対する関係において適正処罰の原則に反するものということになる。そして、年少少年に対する性交又は性交類似行為を一律に可罰相当と考える私の見解をもつてすれば、本条例は、右年少少年と年長青少年とを区別せず(同条例三条一項)、これらをすべて青少年の概念でひつくるめ、これらの者に対する「淫行」の一切を一律に可罰行為としている点において適正処罰の要請からとうてい是認できないものと思う。(なお、本件において被告人と性的関係を持つた女性は満一六歳の者であつたことを記しておこう。)
 四 以上のほか、本条例一〇条一項の憲法適合性についてはなお検討を要する問題点を残すが、私は上記二及び三に述べた理由により、右規定は少なくとも年長青少年との淫行を処罰する限りにおいて、刑罰法規の明確性、適正処罰の観点から考えて憲法三一条に違反し無効と考える。従つて、この理由により原判決及び第一審判は破棄を免れず、被告人は無罪と考える。
 裁判官島谷六郎の反対意見は、次のとおりである。
 一般に、刑罰法規は、その規定が明確であることを要求される。その法規により、何が犯罪として処罰され、したがつて、また何が処罰されないのか、明確でなければならない。犯罪構成要件の明確性は、近代刑法の基調をなす罪刑法定主義の要請するところである。そうでなければ、国民一般は、自己がどのように行動しなければならないのか、又はどのように行動してはならないのか、行動の基準を明確に知ることができない。罪刑法定主義の下においては、刑罰法規は国民に対する告知機能を有するのである。
 ところで、福岡県青少年保護育成条例一〇条一項にいう「淫行」とは、何を意味するのか、はなはだ不明確である。もとより、「淫行」の意義について、これを広く性行為一般を指すものとする解釈の採り得ないことは、多数意見の説示するとおりである。条例制定者の意図は、おそらく、同条例の目的とする青少年の保護育成上有害と考えられる、青少年に対する性的行為を禁止し、これを処罰の対象としょうとするものであろう。しかし、いかなる場合のそれを処罰の対象とするのか、具体的明示が全くなされていない。単に「淫行」というのみである。このように、はなはだ漠然として不明確な表現をもつて犯罪を定め、処罰の対象とすることは、刑罰法規として、犯罪構成要件の明確性を欠くものであり、罪刑法定主義の要請に反するものであるといわざるを得ない(青少年に対する何らかの性的行為が青少年の保護育成上有害であるとして、これを禁止すること自体は、条例制定者の政策決定の問題であるが、刑罰をもつて臨む以上は、禁止しようとする行為、そして処罰の対象となる行為を、条例上明確に規定すべきである。)。
 そして、このように犯罪構成要件が不明確であることは、取締りにあたる捜査機関にとつても、取締りの対象領域がはなはだしく曖昧となり、場合によつては、取締りの行過ぎを招来する危険性があることを指摘しておかなければならない。そうなつては、国民の人権保障の観点からも、看過し得ない事態が生ずるおそれがある。捜査機関の恣意防止のためにも、犯罪構成要件の明確性が要求されるのである。罪刑法定主義の下においては、刑罰法規が、前述のように国民に対する告知機能をもつとともに、刑罰権の恣意的発動の抑止機能をもつといわれる所以である。
 多数意見は、「淫行」という概念を限定解釈することにより、右条項を合憲ならしめようとするのであるが、そこに示された解釈は、「淫行」という言葉から通常の判断能力を有する一般人が想到し得る範囲をはるかに超えているのであつて、私はこの解釈に与することができない。
 よつて、福岡県青少年保護育成条例一〇条一項の規定は、犯罪構成要件の不明確性の故に、憲法三一条に違反して無効であり、同条項違反をもつて起訴された本件被告人には無罪を言い渡すべきである。
 検察官鈴木義男、同亀山継夫 公判出席
  昭和六〇年一〇月二三日
     最高裁判所大法廷
         裁判長裁判官  寺田治郎
            裁判官  木下忠良
            裁判官  伊藤正己
            裁判官  谷口正孝
            裁判官  大橋 進
            裁判官  木戸口久治
            裁判官  牧 圭次
            裁判官  和田誠
            裁判官  安岡滿彦
            裁判官  角田禮次郎
            裁判官  矢口洪一
            裁判官  島谷六郎
            裁判官  長島 敦
            裁判官  高島益郎
            裁判官  藤島 昭

中尾佳久調査官「ひそかに児童買春,児童ポルノに係る行為等の規制及び処罰 並びに児童の保護等に関する法律2条3項各号のいずれかに掲げる児童の姿態を 電磁的記録に係る記録媒体に記録した者が当該電磁的記録を別の記録媒体に記 録させて児童ポルノを製造する行為と同法7条5項の児童ポルノ製造罪の成否 【令和元・12・ 10,1小決】

 薄い最高裁判所判例解説。
 ダビングについて考えていなかったのは立法ミスだが、それは4項製造罪と同様に救済されると思っていた。
 問題は、被害児童に知られない製造行為が「ひそかに製造」になるなら、写真集の複製とかも「ひそかに製造罪」になるのではないかという点だったが、それは「描写行為」でないから問題にならないと言い出して、解決したようだ。

第4 説明
1 問題の所在
児童ポルノ法7条5項の製造罪(以下「5項製造罪」という。)は,平成26年7月15日施行の改正法によって新設されたもので,盗撮により児竜ポルノを製造する行為を処罰するというものである。
児童ポルノ」とは,写真,電磁的記録に係る記録媒体その他の物であって,児童ポルノ法2条3項各号のいずれかに掲げる児童の姿態を視覚により認識することができる方法により描写したものをいう(同法2条3項)。また,児童ポルノの「製造」とは,児童ポルノを作成することをし、い,児童ポルノの複製フィルムの現像, ネガ・フィルムのプリントも「製造」に当た(注3)るとされている。
しかし, 5項製造罪については, 「ひそかに……児童の姿態を写真電磁的記録に係る記録媒体その他の物に描写することにより」というように,製造手段が限定されているため,盗撮により製造した児童ポルノを基にして,その電磁的記録を他の記録媒体へ記録保存する二次的製造行為については,「ひそかに……製造した」ものとはいえず, 5項製造罪は成立しないのではないか, という問題が生じる。

・・・・・
5 本決定の意義
5項製造罪は,平成18年判例後の法改正で新設されたものであるが、4項製造罪と同様の論点が残る形の立法がされていた。このことを踏まえると,本決定は, 5項製造罪に関する法令解釈を示したものとして実務上重要なものと考えられる。

ひととき金融事案~貸金業法違反・出資法違反・児童ポルノ・児童買春法違反(大阪地裁R01.11.19)

 誰が「ひととき金融」と名付けたのか。
 結構、量刑重いですよ。

貸金業法
第五章 罰則
第四十七条 次の各号のいずれかに該当する者は、十年以下の懲役若しくは三千万円以下の罰金に処し、又はこれを併科する。
一 不正の手段によつて第三条第一項の登録を受けた者
二 第十一条第一項の規定に違反した者
第十一条 
1第三条第一項の登録を受けない者は、貸金業を営んではならない。

・・・
出資の受入れ、預り金及び金利等の取締りに関する法律
(高金利の処罰)
第五条 金銭の貸付けを行う者が、年百九・五パーセント(二月二十九日を含む一年については年百九・八パーセントとし、一日当たりについては〇・三パーセントとする。)を超える割合による利息(債務の不履行について予定される賠償額を含む。以下同じ。)の契約をしたときは、五年以下の懲役若しくは千万円以下の罰金に処し、又はこれを併科する。当該割合を超える割合による利息を受領し、又はその支払を要求した者も、同様とする。
2 前項の規定にかかわらず、金銭の貸付けを行う者が業として金銭の貸付けを行う場合において、年二十パーセントを超える割合による利息の契約をしたときは、五年以下の懲役若しくは千万円以下の罰金に処し、又はこれを併科する。その貸付けに関し、当該割合を超える割合による利息を受領し、又はその支払を要求した者も、同様とする。
3 前二項の規定にかかわらず、金銭の貸付けを行う者が業として金銭の貸付けを行う場合において、年百九・五パーセント(二月二十九日を含む一年については年百九・八パーセントとし、一日当たりについては〇・三パーセントとする。)を超える割合による利息の契約をしたときは、十年以下の懲役若しくは三千万円以下の罰金に処し、又はこれを併科する。その貸付けに関し、当該割合を超える割合による利息を受領し、又はその支払を要求した者も、同様とする。

https://news.yahoo.co.jp/articles/277ac903710fca133acb1944cb8e2e35c8b46075
同課によると、男は会員制交流サイト(SNS)などで知り合った女性を顧客とし、普通口座に振り込ませる方法で1日当たり0・7%の利息を受領した。現金を貸し付ける際には、顔写真付きの身分証明書に加え、裸の画像を送らせていた。取り調べに「担保として要求した」と供述しているという。
 県警は5月12日、無登録で貸金業を営んだとして、貸金業法違反(無登録営業)で男を逮捕。口座の精査などから超高金利で貸し付けていたことが分かった。
 全国の10~50代の女性約30人に、計約600万円を貸し付けていたとみて、詳しく調べる。

大阪地裁令和元年11月19日 
主文
 被告人を懲役2年6月及び罰金300万円に処する。
 その罰金を完納することができないときは,金1万円を1日に換算した期間被告人を労役場に留置する。
 この裁判が確定した日から5年間その懲役刑の執行を猶予する。
理由
 [関係者の呼称は別紙のとおり。]
 (罪となるべき事実)
 被告人は,
 第1 大阪府知事の登録を受けないで,業として,別表1記載のとおり,平成29年6月11日から平成30年9月20日までの間,4回にわたり,大阪府藤井寺市〈以下省略〉のホテル「a」客室内ほか1か所において,Aほか2名に対し,現金を手渡す方法により,合計33万円を貸し付け,もって登録を受けないで貸金業を営んだ,
 第2 業として金銭の貸付けを行うに当たり,別表2記載のとおり,平成28年8月23日から平成31年2月28日までの間,大阪市〈以下省略〉の株式会社三井住友銀行大阪本店営業部に開設された被告人名義の普通預金口座(口座番号〈省略〉)に振込入金を受ける方法及び堺市〈以下省略〉のホテル「b」客室内ほか1か所において現金を手渡しで受領する方法により,Bから,1日当たり約0.55%の割合による利息合計55万700円を受領し,もって法定の1日当たり0.3%を超える割合による利息を受領した,
 第3 業として金銭の貸付けを行うに当たり,別表3記載のとおり,平成29年9月1日から平成30年12月5日までの間,被告人名義の前記普通預金口座に振込入金を受ける方法により,Aから,1日当たり約2.32%の割合による利息合計25万8700円を受領し,もって法定の1日当たり0.3%を超える割合による利息を受領した,
 第4 C(当時16歳)が18歳に満たない児童であることを知りながら,同児童に対し,性交の対償として現金2万円を供与して,平成31年2月3日午後3時15分頃から同日午後5時15分頃までの間,堺市〈以下省略〉のホテルc客室内において,同児童と性交し,もって児童買春をした,
 ものである。
 (法令の適用)
 被告人の判示第1の所為は貸金業法47条2号,11条1項,3条1項に,判示第2,第3の各所為はいずれも出資法5条3項後段,前段に,判示第4の所為は児童買春,児童ポルノに係る行為等の規制及び処罰並びに児童の保護等に関する法律4条,2条2項1号にそれぞれ該当するところ,各所定刑中判示第1から第3までの各罪についてはいずれも懲役刑と罰金刑とを併科し,判示第4の罪については懲役刑を選択し,以上は刑法45条前段の併合罪であるから,懲役刑については同法47条本文,10条により刑及び犯情の最も重い判示第1の罪の刑に法定の加重をし,罰金刑については同法48条2項により各罪所定の罰金の多額を合計した刑期及び金額の範囲内で被告人を懲役2年6月及び罰金300万円に処し,その罰金を完納することができないときは,同法18条により金1万円を1日に換算した期間被告人を労役場に留置し,情状により同法25条1項を適用してこの裁判が確定した日から5年間その懲役刑の執行を猶予することとする。
 (量刑の理由)
 本件は,被告人が,インターネットを利用して性交を貸付けの条件とする手法の貸金業を無登録で営み,その中で著しい高金利の利息を受領し,その勧誘に応じた女性児童に対償を供与して性交する児童買春をした事案である。
 本件貸金業の前記手法は,経済的に苦しい状況にある女性の切迫した資金需要に乗じ,貸付けの実質的な対価として性交を条件とするというその人格を無視した犯行である点で悪質さの高いものであって,このような意味で貸金業の適正を逸脱する程度,資金需要者を傷つける程度とも大きい犯行と評価すべきである。被告人が積極的に金利等の経済的利益そのものを取得するというよりは,性交をすることを犯行の動機としていた点は,自分の欲求を満たすために貸金業の枠組みを悪用しているということであって,貸金業の適正を図る法の趣旨を踏まえてもその刑事責任を軽くする方向で考慮することのできるような事情ではない。その過程で及んだ児童買春の犯行もまた被害女児の人格を無視する点で犯罪の性質が共通し,その成育上有害な影響を与えるそれ自体悪質な行為である。類似の犯行を抑止する必要性のある手口の犯行でもあることも考慮されるほか,著しい高金利利息受領によって軽視のできない程度の経済的利益も手にしていることも併せて考慮した相応の処罰が必要であって,懲役刑とともに経済的な観点からも一定の感銘力のある罰金刑を科すのが相当である。もっとも,貸付人数,貸付総額等を基礎に考えると,本件が特に規模の大きい犯行であるとまではいえない。著しい高金利利息受領の被害者となった女性2名(うち1名は無登録の貸金業による貸付けの相手方でもある。)に対してはそれぞれ受領した利息全部に相当する額を支払ったほか,無登録の貸金業による貸付けを受けた女性のうちさらに1名に対しては一定の解決金を支払って,これらの女性との間では処罰を望まない旨の意思表示を含む示談が成立している。被告人の犯罪行為を軽く考えることはできないものの,前科のない被告人の犯罪行為でもあることを踏まえての刑事責任とする必要はある。
 その上で,被告人が罪を認めて反省の言葉を述べていること,父が情状証人として被告人の監督を約束していることも考慮し,今回に限り懲役刑についてはその執行を猶予して社会内での更生の機会を与えることとした。
 (求刑 懲役2年6月及び罰金400万円)
 令和元年11月21日
 大阪地方裁判所第12刑事部
 (裁判官 三輪篤志

整体師よる強制わいせつ・準強制わいせつにつき、「正当な施術」の判断方法(大阪高裁R03.2.10 大阪高裁判決速報令和3年10号)

整体師よる強制わいせつ・準強制わいせつにつき、「正当な施術」の判断方法(大阪高裁R03.2.10 大阪高裁判決速報令和3年10号)
 検察庁のコメントです。

参考事項
1判断構造
本件各事件では,各被害者が,被告人の正当な施術をわいせつ行為と誤認したかが争点の一つとされている。
裁判所は,整体師が顧客に対しわいせつ行為と誤解されるおそれのある性的部位(乳房,陰部等)に近い部位に施術する場合の正当な施術の前提として
① 整体師と顧客の関係性:整体師は,顧客に対し,当該施術内容について説明し,その上で顧客が施術を受けることに同意するか否か確認すべきであること
② 施術に至る経緯 整体師が顧客に施術への同意を求め,顧客が明示の同意をしたことを確認した上で,施術を行うべきことを示した上,本件では,(被告人の供述を前提としても)いずれも否定されることから,被告人の施術の正当性を否定し,被害者の供述の信用性を認めている。
整体師の「正当な施術」方法については,整体師ないしマヅサージ師が公的な資格ではなく,公認された団体が適正な施術方法を公開、しているわけではないため,個々の整体師が独自の主張をすることが可能ではあり,本件被告人も独自の主張を展開している。しかし,本件で裁判所が示したような,常識的な施術の在り方に反する施術が一般的に正当な施術と認められることはないと思われ、こような判断手法により被告人の弁解を適切に排斥することが可能である。
2 被害者証言の信用性に関する判断手法整体師がその地位を利用する犯行は少なくないが,施術の一環であるとごまかせるような態様の強制わいせつ事案が多く,性器損傷等の医学的証拠も残らず,防犯カメラ画像等も存在しないため,被害者の供述(直接証拠)以外に証拠がないことがほとんどであり,その信用性が重要となる。

本件では,各被害者の供述の信用性判断に当たり
① 被害に関する供述内容自体の具体性,詳細さ,自然性
② 正当な施術をわいせつ行為と誤解している可能性がないこと
③ 被害申告経緯の自然性
④ 虚偽供述動機がないこと(被告人は,施術の技量は優れていたようであり,各被害者とも被告人の施術の効果を認めており;何らトラブルはなかった)
⑤ 被告人を殊更悪く言わないこと(被害者Bについては,自己に不利に解されるような点も正直に供述していること)
などの基本的な事項を丁寧に認定している。

弁当切り~合算して懲役5年(実刑)となるところが、懲役2年(実刑)になった事例

 どんな情状弁護をしても3年も軽くならないので、執行猶予を経過させることが第一目標になります。
 この事案だと合算して懲役5年(実刑)となるところが、懲役2年(実刑)になっています。
 執行猶予が翌年の5/2まであるところ、前任弁護人と協力して慎重に審理を進めてもらい、引き継いで受任して、法律上の争点をフルに主張して、準備手続を経て、1審判決前に執行猶予期間が経過したもの。

(日付は修正)
A事件
 某地裁2016.5.2 懲役3年 執行猶予4年確定

B事件
 某地裁2019.2.3起訴
弁護人交替
  期日間整理手続申立
  準備手続
      執行猶予期間経過
 2020.6.1 論告弁論
 2020.7.1 判決 懲役2年実刑   

タナー2度以下だと、現行犯逮捕されることがあります。「児童ポルノ事犯予備年齢鑑定員運用要綱」

タナー2度以下だと、現行犯逮捕されることがあります。「児童ポルノ事犯予備年齢鑑定員運用要綱」
 予備年齢鑑定員というのは時々聞こえてきましたが、警視庁に要綱があるようです。
 タナー2度以下だと、現行犯逮捕されることがあります。
 CG事件の1審・控訴審判決で、タナー2度は児童としていいという判示があるので、その影響だと思われます。

裁判年月日  平成28年 3月15日  裁判所名  東京地裁  裁判区分  判決
事件名  児童買春,児童ポルノに係る行為等の処罰及び児童の保護等に関する法律違反被告事件
 そうすると,D医師がタナー法で乳房を3度と判定した(なお,D医師が,本件CG集に関連する写真で,乳房につき,4度あるいは3度ないし4度であると判定したものはない。),甲第25号証画像番号2ないし5(児童1ないし4),8(児童6),9(児童7),11ないし17(児童8ないし14),22(児童15),23(児童16),27(左側)(児童17。画像番号22と共通。),28(児童18)及び甲第26号証画像番号3(児童2),5(児童4),6(児童5),8(児童6),10(児童7),13(児童8),17(児童11),21(児童12),23(児童13),25(児童14),26(児童15)の各写真については,各被写体が18歳未満である旨のD医師の認定は採用することができず,18歳以上である可能性に合理的な疑いが残る(別紙1で黄緑色で塗りつぶしたもの。ただし,既に検察官レイヤーと児童認定写真とが一致しないあるいは実在性がないとして黄色等で塗られていたものがあり,その場合には画像番号のみを黄緑色で塗りつぶしている。)。
 これに対し,別紙1の画像番号が黄緑色で塗られていないもの,すなわち,D医師がその被写体の乳房についてタナー1度又は2度と評価した各写真については,前記のとおり,D医師が,乳房についてタナー2度が18歳未満か否かという判断のポイントとなる旨述べているとおり,乳房についてタナー2度以下と判定されて18歳以上である女性が一定数存在することは否定できないとしても,それ自体がまれであるといえる上,これらの写真の被写体は,いずれも一見して顔立ちが幼く,乳房や肩幅,腰付近の骨格等の身体全体の発達も未成熟であること等からすれば,これらの被写体は撮影当時18歳未満であったことが強く推認される。
 3  児童認定写真と同一の写真が収録された写真集に被写体の年齢に関する記載があること
 なお,検察官は,児童認定写真と同一の写真が収録された写真集自体に「『F』13歳」,「K 1972年生まれ。」などと,被写体の年齢に関する記載が存在することからも,被写体が撮影当時18歳未満であったことが推認される旨主張するが,そもそも写真集に記載された年齢や生年月日が正確なものであるとする根拠がない上,児童認定写真に係る写真が収録された写真集には,その表紙や本文に「少女」などの記載があり,幼い女児の写真であることを強調する内容となっていることからすれば,そのような写真集に記載された被写体の年齢や生年月日が正確なものであるかは疑問であり,検察官の主張は採用できない。
 4  小括
 以上によれば,別紙1の黄緑色に塗られていない○○及び○○2の各画像に係る児童認定写真の被写体については,18歳未満であると認めるのが相当であるが,その余については,18歳未満であることについて合理的疑いが残り,18歳未満とは認められない。

東京高等裁判所
平成29年01月24日
イ 児童性の認定について
  (ア) 所論は、原判決が児童性に関する唯一の証拠としたA医師の鑑定及びその原審証言は、同医師が依拠する理論自体、刑事事件で児童性の認定に利用できるほど理論的、合理的なものとはいえず、タナー法については、提唱者であるC氏自身が、同法で年齢を推定することはできないとして、これを年齢の推定に利用することを批判していることなどに照らすと、A医師の原審証言は信用できず、また、判断対象は本件CGの児童ポルノ性であるのに、本件CGを見て判断しておらず、その基となった素材画像の写真のみを見て判断している点でも信用できないと主張する。また、原判決が、タナー法で乳房2度以下であれば18歳であるといえると判断した点についても、18歳以上の女性の中に、実際に乳房についてタナー2度の女性がどの程度存在するかに関するデータはない上、実際、A医師は、原審公判において、明らかに18歳以上であるAV女優の乳房の写真を弁護人から示されて、タナー2度であると誤った証言をしていることなどに照らすと、同医師の証言は信用できない、結局、原判決の判断は、裁判所が写真を見て幼く感じたから18歳未満であるというにすぎず、このような原判決の判断には事実の誤認がある、などと主張する。
  (イ) そこで検討すると、胸部及び陰毛のみを判断資料とするタナー法に基づいて年齢を判定することには限界ないし危うさがあること、タナー法に依拠して、本件において素材画像の写真の児童性を判定したA医師の原審証言を全面的に信用して年齢を判断することが相当でないことは、原判決が適切に説示するとおりである。もっとも、原判決が乳房についてタナー法で2度以下と判定された事例について、児童性を認定した点については、確かに、18歳以上の女性の中に乳房がタナー2度以下の者がどの程度の確率で存在するかを実際に調査したデータはないものの、A医師は、原審において、タナー2度以下で18歳以上である可能性として、体質性思春期遅発症による可能性と、性腺機能低下症による可能性が考えられるところ、前者については、性発達の年齢の分布が正規分布となることが分かっていることから、乳房についてタナー2度に達する日本人女性の平均年齢と標準偏差を元に計算すると、100万人に3人(1万人に0.03人)未満の確率となり、後者の可能性についても、1万人に1人未満であるから、前者と後者の可能性を併せても、18歳以上の者の中で乳房タナー2度以下が存在する可能性は、理論上、1万人に1人未満という極めて低い確率である、18歳未満か否かの判断については、乳房タナー2度を基準とすればまず間違いがない旨証言している。
  加えて、A医師が引用するD氏らの研究(A原審証言調書別紙6。当審弁3。)によれば、1983年ないし1986年生まれの日本人女児226人について、乳房タナー度数別の累積頻度を実態調査したところ、12歳になるまでに、全ての者がタナー2度に達し、95%の者がタナー3度に達したことが認められ、更に18歳になるまでにはタナー3度に達する者の割合が高くなることが推認される。
  A医師の上記の原審証言は、小児科学、小児内分泌学等を専門とする同医師の専門的知見に基づき、上記の実態調査等のこれまでの医学的、科学的な研究等の成果に基づくものであって、その内容には合理性があり、十分信用することができるというべきである。そうすると、少なくとも、A医師が述べるように、18歳以上の者の中に乳房についてタナー2度以下の者が存在する可能性が極めて低いことについては、十分科学的な裏付けがあるといえるから、原判決が採ったように、少なくとも、乳房がタナー2度以下と判断された者については、18歳未満であると推認することができ、さらに、顔立ち、乳房や肩幅、腰付近の骨格等の身体全体の発達の程度をも加味して検討すれば、18歳以上の女性で乳房がタナー2度以下と判定される例外的な事例は、排除できるというべきである。したがって、A医師が乳房についてタナー2度と判定した被写体について、上記の諸点も考慮した上、児童性を認めた原判決の判断に、事実の誤認はなく、単に裁判所が写真を見て幼く感じたから児童性を認定したとする所論の論難は当たらない。その他、所論が指摘する点を踏まえても、上記の判断は揺るがない。

top MPD 2020年1月号付録2020巡査部長昇任試験直前対策p43
所属長は、予備年齢鑑定員の派遣を受け、捜索・差押えを実施する場合は、次の事項に留意する。
①予備年齢鑑定は、指定された予備年齢鑑定員が行うこと。
児童ポルノと思料される画像について予備年齢鑑定を実施した結果、児童ポルノと認定し現行犯逮捕を行う場合は、当該現行犯逮捕に係る画像はタナー法により2度以下と判断される画像であること。この場合において、現行犯逮捕に係る画像に不鮮明な処理が行われている等児童ポルノであるかどうかの判断に疑義があるときは、現行犯逮捕は行わないこと。
③予備年齢鑑定に係る画像が不鮮明な画像処理が行われた女性の画像である場合は、乳房又は陰毛が描写されているときに限り予備年齢鑑定を行うこと。
④予備年齢鑑定は、捜索差押えの現場において、当該捜索差押えの目的たる児童ポルノを発見できなかった場合にのみ行うこと。
児童ポルノ事犯の捜索差押えを実施する場合には、事前に小児科医等の専門家に鑑定を打診しておく等予備年齢鑑定を行った画像について迅速な鑑定が行われるように配意すること(児童ポルノ事犯予備年齢鑑定員運用要綱第5.2参照)。

教育職員等による児童生徒性暴力等の防止等に関する法律案

教育職員等による児童生徒性暴力等の防止等に関する法律案
立憲民主党のサイトにありました。
https://cdp-japan.jp/news/20210521_1407

「わいせつ」の定義をしてもらわないと。

https://cdp-japan.jp/files/download/NaPJ/25om/dX2Z/AVN8/NaPJ25omdX2ZAVN85lflQZnN.pdf
教育職員等による児童生徒性暴力等の防止等に関する法律案
目次
第一章総則(第一条 ―第十一条)
第二章基本指針(第十二条)
第三章教育職員等による児童生徒性暴力等の防止に関する措置(第十三条 ―第十六条)
第四章教育職員等による児童生徒性暴力等の早期発見及び児童生徒性暴力等への対処に関する措置等(第十七条 ―第二十一条)
第五章特定免許状失効者等に対する教育職員免許法の特例等(第二十二条・第二十三条
第六章雑則(第二十四条)
附則

第一章
総則
(目的)
第一条この法律は、教育職員等による児童生徒性暴力等が児童生徒等の権利を著しく侵害し、児童生徒等に対し生涯にわたって回復し難い心理的外傷その他の心身に対する重大な影響を与えるものであることに鑑み、児童生徒等の尊厳を保持するため、児童生徒性暴力等の禁止について定めるとともに、教育職員等による児童生徒性暴力等の防止等に関し、基本理念を定め、国等の責務を明らかにし、基本指針の策定、教育職員等による児童生徒性暴力等の防止に関する措置並びに教育職員等による児童生徒性暴力等の早期発見及び児童生徒性暴力等への対処に関する措置等について定め、あわせて、特定免許状失効者等に対する教育職員免許法(昭和二十四年法律第百四十七号)の特例等について定めることにより、教育職員等による児童生徒性暴力等の防止等に関する施策を推進し、もって児童生徒等の権利利益の擁護に資することを目的とする。

(定義)
第二条
この法律において「学校」とは、学校教育法(昭和二十二年法律第二十六号)第一条に規定する幼稚園、小学校、中学校、義務教育学校、高等学校、中等教育学校及び特別支援学校並びに就学前の子どもに関する教育、保育等の総合的な提供の推進に関する法律(平成十八年法律第七十七号)第二条第七項に規定する幼保連携型認定こども園をいう。
2この法律において「児童生徒等」とは、次に掲げる者をいう。
一学校に在籍する幼児、児童又は生徒二十八歳未満の者(前号に該当する者を除く。)
3この法律において「児童生徒性暴力等」とは、次に掲げる行為をいう。
一児童生徒等に性交等(刑法(明治四十年法律第四十五号)第百七十七条に規定する性交等をいう。以下この号において同じ。)をすること又は児童生徒等をして性交等をさせること(児童生徒等から暴行又は脅迫を受けて当該児童生徒等に性交等をした場合及び児童生徒等の心身に有害な影響を与えるおそれがないと認められる特別の事情がある場合を除く。)。
二児童生徒等にわいせつな行為をすること又は児童生徒等をしてわいせつな行為をさせること(前号に掲げるものを除く。)。
児童買春、児童ポルノに係る行為等の規制及び処罰並びに児童の保護等に関する法律(平成十一年法律第五十二号。次号において「児童ポルノ法」という。)第五条から第八条までの罪に当たる行為をすること(前二号に掲げるものを除く。)。
四児童生徒等に次に掲げる行為(児童生徒等の心身に有害な影響を与えるものに限る。)であって児童生徒等を著しく羞恥させ、若しくは児童生徒等に不安を覚えさせるようなものをすること又は児童生徒等をしてそのような行為をさせること(前三号に掲げるものを除く。)。
イ衣服その他の身に着ける物の上から又は直接に人の性的な部位(児童ポルノ法第二条第三項第三号に規定する性的な部位をいう。)その他の身体の一部に触れること。
ロ通常衣服で隠されている人の下着又は身体を撮影し、又は撮影する目的で写真機その他の機器を差し向け、若しくは設置すること。
五児童生徒等に対し、性的羞恥心を害する言動であって、児童生徒等の心身に有害な影響を与えるものをすること(前各号に掲げるものを除く。)。
4この法律において「児童生徒性暴力等の防止等」とは、児童生徒性暴力等の防止及び早期発見並びに児童生徒性暴力等への対処をいう。
5この法律において「教育職員等」とは、教育職員(教育職員免許法第二条第一項に規定する教育職員をいう。以下同じ。)並びに学校の校長(園長を含む。)、副校長(副園長を含む。)、教頭、実習助手及び寄宿舎指導員をいう。
6この法律において「特定免許状失効者等」とは、児童生徒性暴力等を行ったことにより教育職員免許法第十条第一項(第一号又は第二号に係る部分に限る。)の規定により免許状が失効した者及び児童生徒性暴力等を行ったことにより同法第十一条第一項又は第三項の規定により免許状取上げの処分を受けた者をいう。

(児童生徒性暴力等の禁止)
第三条教育職員等は、児童生徒性暴力等をしてはならない。
(基本理念)
第四条教育職員等による児童生徒性暴力等の防止等に関する施策は、教育職員等による児童生徒性暴力等が全ての児童生徒等の心身の健全な発達に関係する重大な問題であるという基本的認識の下に行われなければならない。
2教育職員等による児童生徒性暴力等の防止等に関する施策は、児童生徒等が安心して学習その他の活動に取り組むことができるよう、学校の内外を問わず教育職員等による児童生徒性暴力等を根絶することを五六旨として行われなければならない。
3教育職員等による児童生徒性暴力等の防止等に関する施策は、被害を受けた児童生徒等を適切かつ迅速に保護することを旨として行われなければならない。
4教育職員等による児童生徒性暴力等の防止等に関する施策は、教育職員等による児童生徒性暴力等が懲戒免職の事由(解雇の事由として懲戒免職の事由に相当するものを含む。)となり得る行為であるのみならず、児童生徒等及びその保護者からの教育職員等に対する信頼を著しく低下させ、学校教育の信用を傷つけるものであることに鑑み、児童生徒性暴力等をした教育職員等に対する懲戒処分等について、適正かつ厳格な実施の徹底を図るための措置がとられることを旨として行われなければならない。
5教育職員等による児童生徒性暴力等の防止等に関する施策は、国、地方公共団体、学校、医療関係者その他の関係者の連携の下に行われなければならない。
(国の責務)
第五条国は、前条の基本理念(以下単に「基本理念」という。)にのっとり、教育職員等による児童生徒性暴力等の防止等に関する施策を総合的に策定し、及び実施する責務を有する。
地方公共団体の責務)
第六条地方公共団体は、基本理念にのっとり、教育職員等による児童生徒性暴力等の防止等に関する施策について、国と協力しつつ、その地域の状況に応じた施策を策定し、及び実施する責務を有する。
(任命権者等の責務)
第七条
教育職員等を任命し、又は雇用する者は、基本理念にのっとり、教育職員等を任命し、又は雇用しようとするときは、第十五条第一項のデータベースを活用するものとする。
2公立学校(地方公共団体が設置する学校をいう。次項において同じ。)の教育職員等の任命権者は、基本理念にのっとり、児童生徒性暴力等をした教育職員等に対する適正かつ厳格な懲戒処分の実施の徹底を図るものとする。
3公立学校以外の学校の教育職員等を雇用する者は、基本理念にのっとり、児童生徒性暴力等をした教育職員等に対し、懲戒の実施その他の児童生徒性暴力等の再発の防止のために必要な措置を講ずるものとする。

(学校の設置者の責務)
第八条学校の設置者は、基本理念にのっとり、その設置する学校における教育職員等による児童生徒性暴力等の防止等のために必要な措置を講ずる責務を有する。
(学校の責務)第九条学校は、基本理念にのっとり、関係者との連携を図りつつ、学校全体で教育職員等による児童生徒性暴力等の防止及び早期発見に取り組むとともに、当該学校に在籍する児童生徒等が教育職員等による児童生徒性暴力等を受けたと思われるときは、適切かつ迅速にこれに対処する責務を有する。
(教育職員等の責務)
第十条教育職員等は、基本理念にのっとり、児童生徒性暴力等を行うことがないよう教育職員等としての倫理の保持を図るとともに、その勤務する学校に在籍する児童生徒等が教育職員等による児童生徒性暴力等を受けたと思われるときは、適切かつ迅速にこれに対処する責務を有する。
(法制上の措置等)
第十一条国は、教育職員等による児童生徒性暴力等の防止等に関する施策を実施するために必要な法制上又は財政上の措置その他の必要な措置を講ずるものとする。
地方公共団体は、教育職員等による児童生徒性暴力等の防止等に関する施策を実施するために必要な財政上の措置その他の必要な措置を講ずるよう努めるものとする。
第二章基本指針
第十二条
文部科学大臣は、教育職員等による児童生徒性暴力等の防止等に関する施策を総合的かつ効果的に推進するための基本的な指針(次項において「基本指針」という。)を定めるものとする。
2基本指針においては、次に掲げる事項を定めるものとする。
一教育職員等による児童生徒性暴力等の防止等に関する基本的な方針
二教育職員等による児童生徒性暴力等の防止等に関する施策の内容に関する事項
三その他学校において児童生徒等と接する業務に従事する者による児童生徒性暴力等の防止等に関する重要事項

第三章教育職員等による児童生徒性暴力等の防止に関する措置
(教育職員等に対する啓発等)
十三条
国及び地方公共団体は、教育職員等に対し、児童生徒等の人権、特性等に関する理解及び児童生九一〇徒性暴力等の防止等に関する理解を深めるための研修及び啓発を行うものとする。
2国及び地方公共団体は、教育職員の養成課程における児童生徒性暴力等の防止等に関する教育の充実その他必要な措置を講ずるものとする。
3教育職員の養成課程を有する大学は、当該教育職員の養成課程を履修する学生が児童生徒性暴力等の防止等に関する理解を深めるための措置その他必要な措置を講ずるものとする。
(児童生徒等に対する啓発)
第十四条
国、地方公共団体、学校の設置者及びその設置する学校は、児童生徒等の尊厳を保持するため、児童生徒等に対して、何人からも児童生徒性暴力等により自己の身体を侵害されることはあってはならないことについて周知徹底を図るとともに、特に教育職員等による児童生徒性暴力等が児童生徒等の権利を著しく侵害し、児童生徒等に対し生涯にわたって回復し難い心理的外傷その他の心身に対する重大な影響を与えるものであることに鑑み、児童生徒等に対して、教育職員等による児童生徒性暴力等により自己の身体を侵害されることはあってはならないこと及び被害を受けた児童生徒等に対して第二十条第一項(第二十一条において準用する場合を含む。)の保護及び支援が行われること等について周知徹底を図らなければならない。
(データベースの整備等)
第十五条
国は、特定免許状失効者等の氏名及び特定免許状失効者等に係る免許状の失効又は取上げの事由、その免許状の失効又は取上げの原因となった事実等に関する情報に係るデータベースの整備その他の特定免許状失効者等に関する正確な情報を把握するために必要な措置を講ずるものとする。
都道府県の教育委員会は、当該都道府県において教育職員の免許状を有する者が特定免許状失効者等となったときは、前項の情報を同項のデータベースに迅速に記録することその他必要な措置を講ずるものとする。
(児童生徒性暴力等対策連絡協議会)
第十六条
地方公共団体は、教育職員等による児童生徒性暴力等の防止等に関係する機関及び団体の連携を図るため、学校、教育委員会都道府県警察その他の関係者により構成される児童生徒性暴力等対策連絡協議会を置くことができる。
第四章教育職員等による児童生徒性暴力等の早期発見及び児童生徒性暴力等への対処に関する措置等
(教育職員等による児童生徒性暴力等の早期発見のための措置)
第十七条
学校の設置者及びその設置する学校は、当該学校における教育職員等による児童生徒性暴力等を早期に発見するため、当該学校に在籍する児童生徒等及び教育職員等に対する定期的な調査その他の必要な措置を講ずるものとする。
2国及び地方公共団体は、教育職員等による児童生徒性暴力等に関する通報及び相談を受け付けるための体制の整備等に必要な措置を講ずるものとする。
(教育職員等による児童生徒性暴力等に対する措置)
第十八条
教育職員等、地方公共団体の職員その他の児童生徒等からの相談に応じる者及び児童生徒等の保護者は、児童生徒等から教育職員等による児童生徒性暴力等に係る相談を受けた場合等において、教育職員等による児童生徒性暴力等の事実があると思われるときは、教育職員等による児童生徒性暴力等を受けたと思われる児童生徒等が在籍する学校又は当該学校の設置者への通報その他の適切な措置をとるものとする。
2教育職員等、地方公共団体の職員その他の児童生徒等からの相談に応じる者は、前項に規定する場合において犯罪の疑いがあると思われるときは、速やかに、所轄警察署に通報するものとする。
3教育職員等、地方公共団体の職員その他の児童生徒等からの相談に応じる者(公務員に限る。)は、第一項に規定する場合において犯罪があると思われるときは、刑事訴訟法(昭和二十三年法律第百三十一号)の定めるところにより告発をしなければならない。
4学校は、第一項の規定による通報を受けたときその他当該学校に在籍する児童生徒等が教育職員等による児童生徒性暴力等を受けたと思われるときは、直ちに、当該学校の設置者にその旨を通報するとともに、当該教育職員等による児童生徒性暴力等の事実の有無の確認を行うための措置を講じ、その結果を当該学校の設置者に報告するものとする。
5学校は、前項の措置を講ずるに当たり、児童生徒等の人権及び特性に配慮するとともに、その名誉及び尊厳を害しないよう注意しなければならない。
6学校は、第四項の規定による報告をするまでの間、教育職員等による児童生徒性暴力等を受けたと思われる児童生徒等と当該教育職員等との接触を避ける等当該児童生徒等の保護に必要な措置を講ずるものと一三一四する。
7学校は、第四項の場合において犯罪があると認めるときは、直ちに、所轄警察署に通報し、当該警察署と連携してこれに対処しなければならない。
(専門家の協力を得て行う調査)
第十九条
学校の設置者は、前条第四項の規定による報告を受けたときは、医療、心理、福祉及び法律に関する専門的な知識を有する者の協力を得つつ、当該報告に係る事案について自ら必要な調査を行うものとする。
2学校の設置者は、前項の調査を行うに当たり、児童生徒等の人権及び特性に配慮するとともに、その名誉及び尊厳を害しないよう注意しなければならない。
都道府県は、第一項の調査が適切に行われるよう、学校の設置者に対し、同項の専門的な知識を有する者に関する情報の提供その他の必要な助言をすることができる。
(学校に在籍する児童生徒等の保護及び支援等)
第二十条
学校の設置者及びその設置する学校は、医療、心理、福祉及び法律に関する専門的な知識を有する者の協力を得つつ、教育職員等による児童生徒性暴力等を受けた当該学校に在籍する児童生徒等の保護及び支援並びにその保護者に対する支援を継続的に行うものとする。
2学校の設置者及びその設置する学校は、前項に規定する児童生徒等と同じ学校に在籍する児童生徒等に対する心理に関する支援その他当該児童生徒等及びその保護者に対する必要な支援を行うものとする。
(教育職員等以外の学校において児童生徒等と接する業務に従事する者による児童生徒性暴力等への準用)
第二十一条
第十七条から前条までの規定は、教育職員等以外の学校において児童生徒等と接する業務(当該学校の管理下におけるものに限る。)に従事する者による児童生徒性暴力等(当該学校の児童生徒等に対するものに限る。)について準用する。

第五章特定免許状失効者等に対する教育職員免許法の特例等
(特定免許状失効者等に対する教育職員免許法の特例)
第二十二条
特定免許状失効者等(教育職員免許法第五条第一項各号のいずれかに該当する者を除く。)については、その免許状の失効又は取上げの原因となった児童生徒性暴力等の内容等を踏まえ、当該特定免許状失効者等の改善更生の状況その他その後の事情により再び免許状を授与するのが適当であると認めら一五一六れる場合に限り、再び免許状を授与することができる。
都道府県の教育委員会は、前項の規定により再び免許状を授与するに当たっては、あらかじめ、都道府県教育職員免許状再授与審査会の意見を聴かなければならない。
都道府県の教育委員会は、教育職員免許法第十条第二項(同法第十一条第五項において準用する場合を含む。)の規定により特定免許状失効者等から失効した免許状の返納を受けることとなった都道府県の教育委員会その他の関係機関に対し、当該特定免許状失効者等に係る免許状の失効又は取上げの原因となった児童生徒性暴力等の内容等を調査するために必要な情報の提供を求めることができる。
都道府県教育職員免許状再授与審査会)
第二十三条
前条第二項に規定する意見を述べる事務をつかさどらせるため、都道府県の教育委員会に、都道府県教育職員免許状再授与審査会を置く。
都道府県教育職員免許状再授与審査会の組織及び運営に関し必要な事項は、文部科学省令で定める。
第六章雑則
政令への委任)
第二十四条
この法律に定めるもののほか、この法律の実施のための手続その他この法律の施行に関し必要な事項は、政令で定める。
附則
(施行期日)
第一条
この法律は、公布の日から起算して一年を超えない範囲内において政令で定める日から施行する。
ただし、第七条第一項及び第十五条並びに附則第五条の規定は、公布の日から起算して二年を超えない範囲内において政令で定める日から施行する。
(経過措置)
第二条
第二十二条の規定は、この法律の施行の日(以下この項において「施行日」という。)以後に児童生徒性暴力等を行ったことにより、特定免許状失効者等となった者に係る免許状の再授与について適用し、施行日前に児童生徒性暴力等を行ったことにより、特定免許状失効者等となった者に係る免許状の再授与については、なお従前の例による。
2前項に定めるもののほか、この法律の施行に関し必要な経過措置は、政令で定める。

以下 文字飛びとか文字化けがあるかも


教育職員免許法の一部改正)
第三条
教育職員免許法の一部を次のように改正する。
第十六条の二の次に次の一条を加える。
(特定免許状失効者等に係る免許状の再授与)第十六条の二の二教育職員等による児童生徒性暴力等の防止等に関する法律(令和三年法律第号)第二条第六項に規定する特定免許状失効者等(第五条第一項各号のいずれかに該当する者を除く。)の免許状の再授与については、この法律に定めるもののほか、教育職員等による児童生徒性暴力等の防止等に関する法律の定めるところによる。
第十六条の三第三項中「前条第二項」を「第十六条の二第二項」に、「次条第二項」を「第十六条の三第二項」に改める。
構造改革特別区域法の一部改正)
第四条
構造改革特別区域法(平成十四年法律第百八十九号)の一部を次のように改正する。
第十九条の見出しを「教育職員免許法等の特例」に改め、同条第一項中「とする。
」を「と、教育職員等による児童生徒性暴力等の防止等に関する法律(令和三年法律第号)第二十二条第二項中「教育委員会」とあるのは「教育委員会構造改革特別区域法(平成十四年法律第百八十九号)第十九条第一項の規定による認定を受けた市町村(以下この項において「認定市町村」という。)の教育委員会を含む。次項及び次条第一項において同じ。)」と、「都道府県教育職員免許状再授与審査会」とあるのは「都道府県教育職員免許状再授与審査会(認定市町村においては市町村教育職員免許状再授与審査会。同条において同じ。)」とする。」に改める。
第五条
構造改革特別区域法の一部を次のように改正する。
第十九条第一項中「第二十二条第二項」を「第十五条第二項」に改め、「この項」の下に「及び第二十二条第二項」を加え、「次項及び次条第一項において同じ。)」と、」を「以下同じ。)」と、「当該都道府県」とあるのは「当該都道府県(認定市町村においては当該認定市町村)」と、第二十二条第二項中」に、「同条に」を「次条に」に改める。
国家戦略特別区域法の一部改正)
第六条
国家戦略特別区域法(平成二十五年法律第百七号)の一部を次のように改正する。
「市町村の教育委員会。国家戦略特別区第十条第三項の表第十九条第一項各号列記以外の部分の項中ある市町村の教「市町村の教育委員会。国家戦略特別区域会議に係る関係地方ある市町村の教育委員会。域会議に係る関係地方公共団体で市町村(以下国家戦略特別区域会議(国家戦略特別を育委員会。」成二十五年法律第百七号)第七条第一る国家戦略特別区域会議をいう。)に方公共団体である市町村(以下公共団体で区域法(平に改める。
項に規定す係る関係地」第十二条の三第十一項の表に次のように加える。
教育職員等による第七条第二項をいうをいい、国家戦略特別区域法(平成二十五児童生徒性暴力等年法律第百七号)第十二条の三第三項第三の防止等に関する号に規定する特定公立国際教育学校等を除法律(令和三年法く律第号)(検討)第七条政府は、この法律の施行後速やかに、教育職員等以外の学校において児童生徒等と接する業務に従事する者による児童生徒性暴力等の防止に関する措置の在り方等について検討を加え、その結果に基づいて必要な措置を講ずるものとする。
2政府は、この法律の施行後速やかに、児童生徒等の性的な被害を防止する観点から、児童生徒等と接する業務に従事する者の資格及び児童生徒等に性的な被害を与えた者に係る照会制度の在り方等について検二一二二討を加え、必要があると認めるときは、その結果に基づいて所要の措置を講ずるものとする。
3政府は、前二項に定めるもののほか、この法律の施行後三年を目途として、この法律の施行の状況について検討を加え、必要があると認めるときは、その結果に基づいて所要の措置を講ずるものとする。
理由教育職員等による児童生徒性暴力等が児童生徒等の権利を著しく侵害し、児童生徒等に対し生涯にわたって回復し難い心理的外傷その他の心身に対する重大な影響を与えるものであることに鑑み、教育職員等による児童生徒性暴力等の防止等に関する施策を推進し、もって児童生徒等の権利利益の擁護に資するとともに、児童生徒等の尊厳を保持するため、児童生徒性暴力等の禁止について定めるとともに、教育職員等による児童生徒性暴力等の防止等に関し、基本理念を定め、国等の責務を明らかにし、基本指針の策定、教育職員等による児童生徒性暴力等の防止に関する措置並びに教育職員等による児童生徒性暴力等の早期発見及び児童生徒性暴力等への対処に関する措置等について定め、あわせて、特定免許状失効者等に対する教育職員免許法の特例等について定める必要がある。
これが、この法律案を提出する理由である。

東京都内と神奈川県内における青少年淫行につき、「青少年と知らなかった」という弁解について

 東京と神奈川では条例が違います。
 両罪は包括一罪になります(福岡高裁等)


https://www3.nhk.or.jp/shutoken-news/20210519/1000064594.html
警察によりますと去年12月とことし1月、川崎市内と都内のホテルで、18歳未満と知りながら、当時高校2年生だった17歳の女子高校生にわいせつな行為をしたとして県などの青少年育成条例違反の疑いが持たれています。
2人はマッチングアプリを通じて知り合ったということで、調べに対し「女性は18歳だと思っていた」と容疑を一部否認しているということです。

 東京都条例は過失による淫行を処罰しない。性交類似行為に至らないわいせつ行為は処罰されない。

東京都青少年の健全な育成に関する条例
(青少年に対する反倫理的な性交等の禁止)
第十八条の六 何人も、青少年とみだらな性交又は性交類似行為を行つてはならない。
(平一七条例二五・追加)
(罰則)
第二十四条の三 第十八条の六の規定に違反した者は、二年以下の懲役又は百万円以下の罰金に処する。
(平九条例七五・追加、平一六条例四三・平一七条例二五・一部改正)
第二十八条 
第九条第一項、第十条第一項、第十一条、第十三条第一項、第十三条の二第一項、第十五条第一項若しくは第二項、第十五条の二第一項若しくは第二項、第十五条の三、第十五条の四第二項又は第十六条第一項の規定に違反した者は、当該青少年の年齢を知らないことを理由として、第二十四条の四、第二十五条又は第二十六条第一号、第二号若しくは第四号から第六号までの規定による処罰を免れることができない。ただし、過失のないときは、この限りでない。
(平一六条例四三・一部改正)

【解説】
本条は、第9条第1項の指定図書類の販売等の制限、第10条第1項の指定映画の観覧の制限、第11条の指定演劇等の観覧の制限、第13条第1項の指定がん具類の販売等の制限、第13条の2第1項の指定刃物の販売等の制限、第15条第1項又は第2項の質受け又は古物買受けの制限、第15条の2第1項又は第2項の着用済み下着等の買受け等の禁止、第15条の3の青少年への勧誘行為の禁止、第15条の4第2項の深夜の青少年の連れ出し等の禁止、第16条第1項の深夜における興行場等への立入りの制限等の規定に違反した場合に、違反者は、その相手方の年齢が18歳に満たない者であることを知らなかったとしても、それを理由として処罰を免れることができないことを規定したものである。
本条でいう「過失」とは、注意すれば相手が青少年であるという事実を認識することができたのに不注意で認識しなかったことをいい、「この限りでない。」とは、過失がないと認められる場合は、消極的に本条の罰則適用を打ち消すとの意味である。
すなわち、年齢確認をした際、当該青少年が他人の身分証明書や年齢を詐称した定期券を提示した場合等で、誰が見ても見誤る可能性が十分あり、見誤ったことに過失がないと認められるような状況にあった場合は、あえて責任を負わせないとしたものである。


神奈川県条例では過失による淫行は処罰される。
当時の判例がいう「わいせつ」の定義を法文に盛り込んだのはいいが、いまの判例はそこにはない。

神奈川県青少年保護育成条例
みだらな性行為、わいせつな行為の禁止)
第31条 
1何人も、青少年に対し、みだらな性行為又はわいせつな行為をしてはならな
い。
2 何人も、青少年に対し、前項の行為を教え、又は見せてはならない。
3 第1項に規定する「みだらな性行為」とは、健全な常識を有する一般社会人からみて、結婚を前提としない単に欲望を満たすためにのみ行う性交をいい、同項に規定する「わいせつな行為」とは、いたずらに性欲を刺激し、又は興奮させ、かつ、健全な常識を有する一般社会人に対し、性的しゆう恥けん悪の情をおこさせる行為をいう。

(罰則)
第53条 
1第31条第1項の規定に違反した者は、2年以下の懲役又は100万円以下の罰金に処する。
7 第9条第4項、第10条第4項、第15条第4項、第22条第1項、第26条第1項、第27条第4項、第27条の2第1項若しくは第2項第1号若しくは第2号、第27条の3第1項若しくは第2項、第28条第1項、第29条、第30条、第31条第1項若しくは第2項、第33条又は第34条に規定する行為をした者は、当該青少年の年齢を知らないことを理由として、前各項の規定による処罰を免れることができない。ただし、当該青少年の年齢を知らないことに過失がないときは、この限りでない。
解説
4 「ただし、当該青少年の年齢を知らないことに過失がないときは、この限りでない。」とは、当該青少年の年齢について行為者が相当の注意を払い、青少年であることを知らなかったことについて、行為者に過失がなかったことが立証されれば、処罰の対象とされないということである。具体的には、履歴書を提出させるだけでは本人を確認したとは言えず、運転免許証等の顔写真つきの身分証明書で確認するか、必要によっては保護者等に確認するなどの手段を講じた場合は、過失がないと言える。

「歩行中の原告に対し,正面から両肩を両手でつかんで住宅敷地内に連れ込み,頭部を両手で押さえつけ,無理やりせっぷんして口腔内に舌を入れた上,着衣の上から右胸及び陰部を左手で触った」という強制わいせつ事件(札幌地裁R023.24)につき、220万円を認容した刑事損害賠償命令(札幌地裁r02.3.30)を認可した(東京地裁r02.12.8) 訴額は330万円

「歩行中の原告に対し,正面から両肩を両手でつかんで住宅敷地内に連れ込み,頭部を両手で押さえつけ,無理やりせっぷんして口腔内に舌を入れた上,着衣の上から右胸及び陰部を左手で触った」という強制わいせつ事件(札幌地裁R02.3.24)につき、220万円を認容した刑事損害賠償命令(札幌地裁r02.3.30)を認可した(東京地裁r02.12.8) 訴額は330万円
 札幌地裁令和2年(損)第3号事件を探します

東京地裁令和 2年12月 8日
原告 X 
同訴訟代理人弁護士 後藤美海子 

主文

 1 本件につき札幌地方裁判所令和2年(損)第4号事件の仮執行宣言を付した損害賠償命令(主文第1項及びこれに係る第4項)を認可する。
 2 原告のその余の請求を棄却する。
 3 訴訟費用は,これを3分し,その1を原告の負担とし,その余を被告の負担とする。
 
 
事実及び理由

第1 請求
 1 主文第1項と同旨
 2 被告は,原告に対し,前項の認可に係る金額のほか,110万円及びこれに対する平成24年8月5日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。
 3 第2項につき,仮執行宣言
第2 事案の概要
 1 本件は,原告が,被告から強制わいせつ行為をされたと主張して,被告に対し,不法行為に基づき,損害賠償(慰謝料,弁護士費用)及びこれに対する不法行為の日から支払済みまで平成29年法律第44号による改正前の民法所定の年5分の割合による遅延損害金の支払を求める事案である。
 2 前提事実
  (1) 被告は,平成24年8月5日未明,札幌市内の路上において,歩行中の原告に対し,正面から両肩を両手でつかんで住宅敷地内に連れ込み,頭部を両手で押さえつけ,無理やりせっぷんして口腔内に舌を入れた上,着衣の上から右胸及び陰部を左手で触った(以下「本件不法行為」という。)。(甲1,2,弁論の全趣旨)
  (2) 札幌地裁は,令和2年3月24日,本訴被告を被告人とする強制わいせつ被告事件(平成31年(わ)第149号,令和元年(わ)第392号)につき,罪となるべき事実として,本件不法行為ほか1件(深夜,歩道上において,いきなり本件原告とは別の女性である被害女性の背後から左肩越しに左手を伸ばして,左胸をわしづかみにして揉んだというもの。以下「別件不法行為」という。)の強制わいせつ行為を認定した上,懲役2年の判決を言い渡した。(甲1)
  (3) 原告は,札幌地裁に対し,前記「第1 請求」同旨の支払を求める旨の損害賠償命令を申し立て(同庁令和2年(損)第4号),札幌地裁は,令和2年3月30日,220万円及びこれに対する平成24年8月5日から支払済みまで年5分の割合による金員の限度で申立てを認め,仮執行宣言を付する旨の決定(以下「本件損害賠償命令」という。)をし,これに対し,被告が適法な異議を申し立てた。(当裁判所に顕著な事実)
 3 主たる争点及び当事者の主張
 損害額
(原告の主張)
 本件不法行為の態様,原告に何ら帰責性がないこと,原告が被害後,男性や夜間外出に恐怖を抱くようになったこと,刑事事件への対応の負担を余儀なくされたこと,被告が刑事事件において本件不法行為を否認し,何らの慰謝の措置も講じていないこと,反省謝罪もなかったことなど,本件に顕れた一切の事情を考慮すれば,慰謝料額は300万円が相当である。
 そして,上記慰謝料額等の諸事情に照らせば,本件不法行為と相当因果関係のある弁護士費用の額は30万円とするのが相当である。
(被告の主張)
 原告の主張は,否認ないし争う。
 本件損害賠償命令が認めた慰謝料200万円及び弁護士費用20万円も,高額に過ぎる。
第3 当裁判所の判断
 1 被告の行った本件不法行為は,未明に,犯行現場である住宅敷地に連れ込み,頭部を両手で押さえつけた上でわいせつ行為に及んだというものであるところ,原告に対し相応の強さの有形力が行使されており,さらに,わいせつ行為についても,無理矢理せっぷんして口腔内に舌を入れた上,着衣の上から右胸及び陰部を左手で触るという性的自由に対する侵害の程度が相応に高いものであったといえる。そして,本件不法行為が必然的に刑事裁判への対応等の負担を生じさせたこと等をも考慮すれば,原告の受けた精神的苦痛は,甲第2号証,第3号証にも表れているように,大きかったといえる。
 以上に鑑みれば,原告の精神的苦痛を慰謝するに足りる金額としては200万円が相当である。そして,上記慰謝料額や,原告において執ることを余儀なくされた裁判手続の内容等の諸事情に鑑みれば,本件不法行為と相当因果関係のある弁護士費用の額は20万円とするのが相当である。
 被告は,札幌地裁令和2年(損)第3号刑事損害賠償命令事件を引き合いに出し,同事件で問題となった不法行為と本件不法行為とでは態様が異なるのに慰謝料額が同額であるのは不当であるなどと主張する。しかしながら,同種事犯であっても,事情は様々であるから,単純な比較は困難である。そもそも,上記札幌地裁令和2年(損)第3号事件における不法行為の内容自体,記録上明確ではないから,比較はなおさら困難である。仮に,これが別件不法行為をいうものと解した場合,むしろ,本件不法行為の方が別件不法行為よりも有形力行使の態様やわいせつ行為の態様において違法性が高いといい得るから,少なくとも,行為態様の比較において,本件不法行為の違法性が別件不法行為のそれよりも低いなどとは到底いえない。以上によれば,いずれにしても,被告の上記主張は理由がない。
 2 結論
 よって,本訴請求は,220万円及びこれに対する遅延損害金の限度で理由があるからその限度で認容するのが相当なところ,この判断は本件損害賠償命令(主文第1項及びこれに係る第4項)と符合するのでこれを認可し,原告のその余の請求を棄却し,訴訟費用の負担につき民事訴訟法64条本文,61条を適用して,主文のとおり判決する。
 東京地方裁判所民事第30部
 (裁判官 佐藤康平)

児童ポルノ・児童買春等22件でも執行猶予(広島地裁r030305)

 医師だからでしょうね。一般人だとどうなるか。

「第2 Bが18歳に満たない児童であることを知りながら、令和2年1月26日午後1時頃から同日午後3時30分頃までの間に、(住所略)被告人方(以下「被告人方」という。)において、みだらに同児童(当時12歳)と性交し、もって青少年に対し、淫行をし、」の「児童」は「青少年」じゃないとおかしいよね。

 上記の者に対する児童買春、児童ポルノに係る行為等の規制及び処罰並びに児童の保護等に関する法律違反、広島県青少年健全育成条例違反被告事件について、当裁判所は、検察官多田浩輔並びに弁護人髙橋浩嗣(主任)及び同胡木健志各出席の上審理し、次のとおり判決する。

主文
被告人を懲役3年に処する。
この裁判が確定した日から5年間その刑の執行を猶予する。

理由
(各被害児童の氏名及び判決中の呼称は、別紙「氏名呼称一覧表」のとおりである。)
(罪となるべき事実)
 被告人は、
第1 (令和2年6月26日付け起訴・同年(わ)第258号の公訴事実)
  令和2年3月1日午後5時41分頃から同日午後6時33分頃までの間に、広島県(以下略)L立体駐車場に駐車中の自動車内において、Aが18歳に満たない児童であることを知りながら、同児童(当時17歳)に対し、現金2万円を対償として供与し、同児童に自己の陰茎を口淫させるなどの性交類似行為をし、もって児童買春をし、
第2 (令和2年7月10日付け起訴・同年(わ)第278号の公訴事実第1)
  Bが18歳に満たない児童であることを知りながら、令和2年1月26日午後1時頃から同日午後3時30分頃までの間に、(住所略)被告人方(以下「被告人方」という。)において、みだらに同児童(当時12歳)と性交し、もって青少年に対し、淫行をし、
第3 (令和2年7月10日付け起訴・同年(わ)第278号の公訴事実第2)
  Bが18歳に満たない児童であることを知りながら、前記第2の犯行に際して、同児童(当時12歳)に被告人を相手として性交する姿態をとらせ、これをiPadで撮影した動画データを、令和2年1月26日頃、被告人方において、ノートパソコン内蔵の電磁的記録媒体に記録させて保存し、もって児童を相手方とする性交に係る児童の姿態を視覚により認識することができる方法により電磁的記録に係る記録媒体に描写した児童ポルノを製造し、
第4 (令和2年7月10日付け起訴・同年(わ)第278号の公訴事実第3)
  Bが18歳に満たない児童であることを知りながら、令和2年1月26日午後2時12分頃、被告人方において、同児童(当時12歳)に対し、その乳房を露出させる姿態をとらせ、これを動画撮影機能付き携帯電話機で動画撮影し、その動画データを同携帯電話機内蔵の電磁的記録媒体に記録させて保存し、もって衣服の全部又は一部を着けない児童の姿態であって、殊更に児童の性的な部位が露出され又は強調されているものであり、かつ、性欲を興奮させ又は刺激するものを視覚により認識することができる方法により電磁的記録に係る記録媒体に描写した児童ポルノを製造し、
第5 (令和2年7月22日付け起訴・同年(わ)第296号の公訴事実第1)
  Cが18歳に満たない児童であることを知りながら、令和2年3月28日午前10時27分頃から同日午後2時9分頃までの間に、被告人方において、同児童(当時14歳)に対し、現金2万円を対償として供与し、同児童と性交し、もって児童買春をし、
第6 (令和2年7月22日付け起訴・同年(わ)第296号の公訴事実第2)
  Cが18歳に満たない児童であることを知りながら、前記第5の日時場所において、同児童(当時14歳)に被告人を相手として性交する姿態をとらせ、これを被告人が使用するiPadで撮影し、その動画データを、同iPad内蔵の電磁的記録媒体に記録させて保存し、もって児童を相手方とする性交に係る児童の姿態を視覚により認識することができる方法により電磁的記録に係る記録媒体に描写した児童ポルノを製造し、
第7 (令和2年8月7日付け起訴・同年(わ)第323号の公訴事実第1)
  Dが18歳に満たない児童であることを知りながら、令和元年8月12日午前11時頃から同日午前11時59分頃までの間に、被告人方において、同児童(当時15歳)に対し、現金4万1000円を対償として供与し、同児童に自己の陰茎を口淫させるなどの性交類似行為をし、もって児童買春をし、
第8 (令和2年8月7日付け起訴・同年(わ)第323号の公訴事実第2)
  Dが18歳に満たない児童であることを知りながら、前記第7の犯行に際して、同児童(当時15歳)に被告人の陰茎を口淫させる姿態をとらせ、これをiPadで撮影した動画データを編集し、編集後の動画データを、令和元年8月12日頃、被告人方において、同iPad内蔵の電磁的記録媒体に記録させて保存し、もって性交類似行為に係る児童の姿態を視覚により認識することができる方法により電磁的記録に係る記録媒体に描写した児童ポルノを製造し、
第9 (令和2年9月30日付け起訴・同年(わ)第407号の公訴事実第1の1)
  Eが18歳に満たない児童であることを知りながら、令和元年5月4日午後2時14分頃から同日午後3時3分頃までの間に、広島県(以下略)ホテルM(省略)号室において、同児童(当時17歳)に対し、現金2万円を対償として供与する約束をして、同児童と性交し、もって児童買春をし、
第10 (令和2年9月30日付け起訴・同年(わ)第407号の公訴事実第1の2)
  Eが18歳に満たない児童であることを知りながら、前記第9の日時場所において、同児童(当時17歳)に、被告人を相手として性交する姿態及び乳房等を露出させる姿態をとらせ、これを被告人が使用する携帯電話機で撮影し、その動画データを同携帯電話機内蔵の電磁的記録媒体に記録させて保存し、もって児童を相手方とする性交に係る児童の姿態及び衣服の全部又は一部を着けない児童の姿態であって、殊更に児童の性的な部位が露出され又は強調されているものであり、かつ、性欲を興奮させ又は刺激するものを視覚により認識することができる方法により電磁的記録に係る記録媒体に描写した児童ポルノを製造し、
第11 (令和2年9月30日付け起訴・同年(わ)第407号の公訴事実第2の1)
  Fが18歳に満たない児童であることを知りながら、令和2年6月4日午後7時30分頃から同日午後8時30分頃までの間に、被告人方において、同児童(当時17歳)に対し、現金3万3000円を対償として供与する約束をして、同児童と性交し、もって児童買春をし、
第12 (令和2年9月30日付け起訴・同年(わ)第407号の公訴事実第2の2)
  Fが18歳に満たない児童であることを知りながら、前記第11の犯行に際して、同児童(当時17歳)に被告人を相手として性交する姿態をとらせ、これをiPadで撮影した動画データを編集した動画データを、令和2年6月4日頃、被告人方において、同iPad内蔵の電磁的記録媒体に記録させて保存し、もって児童を相手方とする性交に係る児童の姿態を視覚により認識することができる方法により電磁的記録に係る記録媒体に描写した児童ポルノを製造し、
第13 (令和2年11月6日付け起訴・同年(わ)第467号の公訴事実第1の1)
  Gが18歳に満たない児童であることを知りながら、令和元年9月7日午後0時頃から同日午後3時頃までの間に、被告人方において、同児童(当時14歳)に対し、現金3万円を対償として供与する約束をして、同児童に自己の陰茎を口淫させるなどの性交類似行為をし、もって児童買春をし、
第14 (令和2年11月6日付け起訴・同年(わ)第467号の公訴事実第1の2)
  Gが18歳に満たない児童であることを知りながら、前記第13の犯行に際して、同児童(当時14歳)に被告人の陰茎を口淫する姿態及び乳房等を露出する姿態等をとらせ、これをiPadで撮影した動画データを編集した動画データを、令和元年9月7日頃、被告人方において、同iPad内蔵の電磁的記録媒体に記録させて保存し、もって児童を相手方とする性交類似行為に係る児童の姿態及び衣服の全部又は一部を着けない児童の姿態であって、殊更に児童の性的な部位が露出され又は強調されているものであり、かつ、性欲を興奮させ又は刺激するものを視覚により認識することができる方法により電磁的記録に係る記録媒体に描写した児童ポルノを製造し、
第15 (令和2年11月6日付け起訴・同年(わ)第467号の公訴事実第2の1)
  Hが18歳に満たない児童であることを知りながら、令和2年3月5日午前10時30分頃から同日午後0時30分頃までの間に、被告人方において、同児童(当時17歳)に対し、現金2万円を対償として供与し、同児童の陰部に自己の陰茎を押し当てるなどの性交類似行為をし、もって児童買春をし、
第16 (令和2年11月6日付け起訴・同年(わ)第467号の公訴事実第2の2)
  Hが18歳に満たない児童であることを知りながら、前記第15の犯行に際して、同児童(当時17歳)にその陰部に被告人の陰茎を押し当てる姿態及び乳房等を露出する姿態をとらせ、これをiPadで撮影した動画データを編集した動画データを、令和2年3月5日頃、被告人方において、同iPad内蔵の電磁的記録媒体に記録させて保存し、もって児童を相手方とする性交類似行為に係る児童の姿態及び衣服の全部又は一部を着けない児童の姿態であって、殊更に児童の性的な部位が露出され又は強調されているものであり、かつ、性欲を興奮させ又は刺激するものを視覚により認識することができる方法により電磁的記録に係る記録媒体に描写した児童ポルノを製造し、
第17 (令和2年11月19日付け起訴・同年(わ)第493号の公訴事実第1の1)
  Iが18歳に満たない児童であることを知りながら、平成30年10月28日午後9時50分頃から同日午後11時頃までの間に、被告人方において、同児童(当時16歳)に対し、現金3万円を対償として供与する約束をして、同児童と性交し、もって児童買春をし、
第18 (令和2年11月19日付け起訴・同年(わ)第493号の公訴事実第1の2)
  Iが18歳に満たない児童であることを知りながら、前記第17の犯行に際して、同児童(当時16歳)に被告人を相手として性交する姿態及び乳房等を露出する姿態をとらせ、これをiPadで撮影した動画データを編集した動画データを、平成30年10月28日頃、被告人方において、同iPad内蔵の電磁的記録媒体に記録させて保存し、もって児童を相手方とする性交に係る児童の姿態及び衣服の全部又は一部を着けない児童の姿態であって、殊更に児童の性的な部位が露出され又は強調されているものであり、かつ、性欲を興奮させ又は刺激するものを視覚により認識することができる方法により電磁的記録に係る記録媒体に描写した児童ポルノを製造し、
第19 (令和2年11月19日付け起訴・同年(わ)第493号の公訴事実第2の1)
  Jが18歳に満たない児童であることを知りながら、令和元年11月6日午後6時5分頃から同日午後9時30分頃までの間に、被告人方において、同児童(当時16歳)に対し、現金2万円を対償として供与する約束をして、同児童と性交し、もって児童買春をし、
第20 (令和2年11月19日付け起訴・同年(わ)第493号の公訴事実第2の2)
  Jが18歳に満たない児童であることを知りながら、前記第19の犯行に際して、同児童(当時16歳)に被告人を相手として性交する姿態及び乳房等を露出する姿態をとらせ、これをiPadで撮影した動画データを編集した動画データを、令和元年11月6日頃、被告人方において、同iPad内蔵の電磁的記録媒体に記録させて保存し、もって児童を相手方とする性交に係る児童の姿態及び衣服の全部又は一部を着けない児童の姿態であって、殊更に児童の性的な部位が露出され又は強調されているものであり、かつ、性欲を興奮させ又は刺激するものを視覚により認識することができる方法により電磁的記録に係る記録媒体に描写した児童ポルノを製造し、
第21 (令和2年11月19日付け起訴・同年(わ)第493号の公訴事実第3の1)
  Kが18歳に満たない児童であることを知りながら、令和2年2月9日午後3時頃から同日午後5時30分頃までの間に、被告人方において、同児童(当時16歳)に対し、現金2万円を対償として供与する約束をして、同児童と性交し、もって児童買春をし、
第22 (令和2年11月19日付け起訴・同年(わ)第493号の公訴事実第3の2)
  Kが18歳に満たない児童であることを知りながら、前記第21の犯行に際して、同児童(当時16歳)に被告人を相手として性交する姿態及び乳房等を露出する姿態をとらせ、これをiPadで撮影した動画データを編集した動画データを、令和2年2月9日頃、被告人方において、同iPad内蔵の電磁的記録媒体に記録させて保存し、もって児童を相手方とする性交に係る児童の姿態及び衣服の全部又は一部を着けない児童の姿態であって、殊更に児童の性的な部位が露出され又は強調されているものであり、かつ、性欲を興奮させ又は刺激するものを視覚により認識することができる方法により電磁的記録に係る記録媒体に描写した児童ポルノを製造した。
(証拠の標目)(括弧内の番号は、証拠等関係カード記載の請求証拠の番号を示す。)

(法令の適用)
 罰条
  判示第1、第5、第7、第9、第11、第13、第15、第17、第19及び第21の各所為 児童買春、児童ポルノに係る行為等の規制及び処罰並びに児童の保護等に関する法律(以下「児童ポルノ法」という。)4条、2条2項1号
  判示第2の所為 広島県青少年健全育成条例48条1項2号、39条1項
  判示第3、第6、第8及び第12の各所為 児童ポルノ法7条4項、2項、2条3項1号
  判示第4の所為 児童ポルノ法7条4項、2項、2条3項3号
  判示第10、第14、第16、第18、第20及び第22の各所為 児童ポルノ法7条4項、2項、2条3項1号、3号
 刑種の選択 いずれも懲役刑を選択
 併合罪の処理 刑法45条前段、47条本文、10条(刑及び犯情の最も重い判示第5の罪の刑に法定の加重)
 刑の執行猶予 刑法25条1項
(量刑の理由)
 本件は、児童買春10件、児童ポルノ製造11件、条例違反1件からなる事案である。
 被告人は、約2年間にわたって、当時12歳から17歳までの児童11名を相手として児童買春等を行うとともに、その際の様子を撮影して児童ポルノを製造したものである。各犯行の内容自体が被害児童の健全な成長に害悪を与えるおそれのあるものであることはいうまでもない。被告人にこの種事犯の常習性があることは明らかであるし、被害児童らの思慮の浅さを顧みずに自己の性欲を満たそうとしたもので、被害児童らの人格を尊重しない態度は顕著である。児童買春の内容、件数、製造された児童ポルノの内容、量を踏まえると、本件は、同種事案の中でも最も悪質な部類に属するものといえる。上記の本件の犯情によれば、被告人の刑事責任は重い。
 他方で、被告人が各犯行を全て認めて反省の言葉を述べていること、保釈中に専門の医療機関で再犯防止プログラムを受け、今後もこれを受け続ける旨を述べて更生の意欲を示していること、被害児童8名に被害弁償を行い、贖罪寄付もしていること、被告人と同門の医師及び被告人の姉が証人として出廷して被告人の監督等を約束していること、医師である被告人は病院の内視鏡外科の主任部長として勤務していたが、本件が報道され、上記病院を懲戒解雇されるなどの社会的制裁を受けていること、被告人にはこれまでに前科前歴がないことなどの被告人のために酌むことのできる事情も認められる。
 そこで、以上の事情を考慮して、被告人の刑事責任の重さに応じて主文の刑を量定するとともに、今回は、その刑の執行を猶予し、社会内で更生する機会を与えるのが相当であると判断した。
 よって、主文のとおり判決する。
(求刑・懲役3年)
刑事第1部
 (裁判官 松本英男)

「治療」と称する「わいせつ行為」「児童ポルノ製造」の認定方法

「治療」と称する「わいせつ行為」「児童ポルノ製造」の認定方法
 公訴事実だけではわいせつと評価できない場合もあります。
 控訴してるであればそういう点をチェックしてもらう。
 児童ポルノ製造罪については、ひそかに製造罪なのか姿態をとらせて製造罪なのかについて混乱があるので、そこも指摘しておく。

https://news.yahoo.co.jp/articles/8b749e8ac64ed249899287afa345ec9c96fc1143
19年11月におこした準強制わいせつ容疑で逮捕され、最終的に未成年を含む8名に対する強制わいせつ、児童ポルノ法違反などで起訴された。2020年12月に東京地裁で開かれた公判では、わいせつ行為の際に動画や写真を撮影していたことも明らかになった。被告は当初、「治療行為の一環としてやっただけ」と容疑を否認していたが、公判では起訴事実を認めている。

向井香津子「強制わいせつ罪の成立と行為者の性的意図の要否 最高裁判所判例解説_刑事篇_平成29年度_-_(著)法曹会」
〔6〕強制わいせつ罪の成立と行為者の性的意図の要否

     (平成28年(あ)第731号 同29年11月29日大法廷判決 棄却
       第1審神戸地裁 第2審大阪高裁 刑集71巻9号467頁)

(オ)行為者の目的等の主観的事情
 「わいせつな行為」該当性の判断において,具体的状況等の事情を総合考慮する場合に考えられる判断要索については,様々なものが考えられ,多くの場合には,当該行為そのものが持つ性的性質の強さに加えて,○a行為者と被害者の関係性,○b行為者及び被害者の各属性等,○c行為に及ぶ経緯,周囲の状況等の諸要素の中から,当該事案における「わいせつな行為」該当性の評価に必要と考えられる判断要素を抽出して,これらを総合考慮し,性的な意味の有無やその性的な意味合いの強さを判断すれば,当該行為の「わいせつな行為」該当性を決することができると思われるが(注16),中には,行為者がどのような目的でその行為をしたのかという主観的事情を総合判断の一要素として考慮せざるを得ない場面も,少ないとはいえ,あり得ると考えられる(前掲刑事比較法研究グループ154頁,前掲佐藤64頁,前掲和田621頁等)。
 すなわち,①当該行為そのものが持ち得る性的性質がさほど強くない行為(例えば,身体的接触のない裸体写真撮影行為や単に抱きしめる行為),あるいは,②行為者の主観以外の具体的状況を考慮してみても,性的な意味ではない別の社会的意味が想定され得るような行為(例えば,監護者が児童と入浴し身体を洗う行為)(注17)では,最終的には,行為者の目的等の主観的事情を考慮に入れて判断せざるを得ない場合があると考えられる。(注18)例えば,性的な意味を持ち得るような行為であったとしても,医療行為や養育行為として行われていることが認められれば,社会通念上,通常は,性的な意味のない行為というべきであるから,「わいせつな行為」に該当しないと考えられるところ,医療行為と評価できるかどうかや,養育行為と評価できるかどうかの判断要素として,行為者の目的(医療目的・養育目的ではなく,専ら自らの性欲を満たす目的であったか否か等。)を検討しなければならない場面もあり得るであろう(医師による女性患者に対する陰部に対する検査行為について,検査に名を借りたわいせつ行為であるとして準強制わいせつ罪として起訴され,弁護人から医師の正当行為であると主張された事案について,「わいせつの目的」がないから「わいせつ行為」とは認定できないとした京都地判平成18年12月18日LLI判例秘書(L06150442)参照)。
 もっとも,主観的事情として考慮すべき内容は,行為者自身の性欲を満たす性的意図に限られないであろう。被害者に対して性的屈辱感を感じさせることによって復讐等を果たす目的や,第三者らの性欲を満たすための画像等を他人に提供する目的等であっても,社会通念に照らせば,そのような目的によって,当該行為に強い性的な意味が付与されると考えられるので,それらの目的の有無も含めた主観的事情も考慮要素になり得ると考えられる。
 本判決は,「そのような個別具体的な事情の一つとして,行為者の目的等の主観的事情を判断要素として考慮すべき場合があることは否定し難い」と判示し,「わいせつな行為」該当性の判断方法を示し,その判断をする際に必要な場合には,性的意図だけでなく,目的等も含めた行為者の主観的事情を考慮してもよい旨を明確に示すことにより,昭和45年判例を変更する射程を明らかにしたものと思われる。
・・・・・・・・・・・・・
(注16)当該行為が行われた際の具体的状況等を総合考慮する場合の具体的判断要素
 当該行為が行われた具体的状況等の諸事情を総合考慮して「わいせつな行為」該当性を判断する場合においては,以下のような判断要素を総合考慮(性的意味合いを強める方向の事情と,性的意味合いを弱める方向の双方の事情の総合考慮)していくことが考えられる。
 もっとも,下記のとおり,種々の判断要素が考えられるものの,全ての事件において,これらの要素の有無を逐一判断する必要はないし,そのようなやり方は不相当であって,個別の事案ごとに,その事案にふさわしい判断要素となる事情を抽出して拾い上げ,それらの意味合いを総合考慮すべきと考えられる。
 ○a行為者と被害者の関係性
 見ず知らずの者による行為は,挨拶等のコミュニケーションのため,といった他の意味の可能性を排除できるため,多くの場合,性的な意味が肯定され得るであろう。行為者と被害者との間に,一定の関係性(親子,保育者と被保育者,医師と患者等)がある場合には,その関係がどのようなものであるかに加えて,○b以下の判断要素が重要になるものと思われる。
 ○b行為者及び被害者の各属性等(それぞれの性別・年齢・性的指向・文化的背景〔コミュニケーション手段に関する習慣等〕・宗教的背景等)
 被害者が幼ければ,性的な意味がないというべき事案が多くなるであろうが,行為者自身に小児を対象とする性的傾向があるといった場合には,性的な意味が肯定される方向の大きな事情となる。また,被害者及び行為者が同性の友人関係にあっても,どちらか一方または双方が同性愛者である場合には,性的な意味が肯定される余地が増える。行為者及び被害者の双方あるいは片方に,コミュニケーションとしてキス,ハグする習慣があるのであれば,性的な意味はないと判断すべき場合が増えると考えられる。
・・・・・・・・・・・・
(イ)治療行為等との関係
 学説の中には,医師による治療行為としての13歳未満の者の性器への接触等が不可罰である理由として,主観的要件を要するとするものもある(前掲日髙72頁等)。しかし,客観的に医療行為と明らかにいえるのであれば,そもそも「わいせつな行為」に当たらないとみることも可能な事案も多いと思われるし(「わいせつな行為」該当性の判断については後述のとおり。),「わいせつな行為」の意味の認識を含めた故意がないということも可能であるほか,少なくとも正当業務行為として違法性が阻却されると考えられることからすれば(前掲内田165頁等),ことさら性的意図といった主観的要件を独立に求める必要性はないと考えられる。

薄井真由子「強制わいせつ罪における「性的意図」」~植村立郎「刑事事実認定重要判決50選_上_《第3版》」2020立花書房
(2)行為そのものが持つ性的性質の判断について 8)
 上記(1)イ①行為そのものが持つ性的性質が明確で,直ちにわいせつな行為と評価できる場合とはどのような行為であろうか。
 本判決で問題となった「被害者に対し,被告人の陰茎を触らせ,口にくわえさせ,被害者の陰部を触るなど」の行為が,①の場合に当たることは異論のないところである(なお,平成29年改正により刑法177条の強姦罪は強制性交等罪となり,同罪の処罰対象となる性交等に膣性交のほか口腔性交・肛門性交が含まれるようになったため,現在ではそもそも陰茎を口にくわえさせる行為は176条ではなく177条による処罰対象となっている。)が,①の場合に当たる行為について,部位と態様の2つの側面から検討することとしたい 9)。
 なお,治療行為としての性器等への接触については,「行為」にどこまでを取り込むかという観点から異論もあるだろうが,治療行為であることで性的性質が否定されるものと解されるから,後記(3)で取り上げる。
・・・
(ア)治療行為
 前記(2)のとおり,治療行為としての性器等への接触行為については,性的性質が否定されると解される。正当な治療行為である限り,行為者たる医師等が主観的には性的意図を有していたとしても,そのことだけで当罰性を肯定するのは不当であるから,主観的事情により治療行為が性的意味を帯びるものではない 16)。確かに医師等が性的意図を有していたと治療対象者が知れば,その性的羞恥心は害され性的被害を受けたと感じることはあるだろうが,対象者が行為者の性的意図を知る場合には,客観的にも行為者の性的意図の発露を伴うのが通常であろう(当該行為の際にひわいな言動をするとか,当該行為の様子を秘密裡に撮影するといった客観的行為を伴うからこそ,対象者が行為者の性的意図を認識し,また,犯罪として認知されるのが通常と思われる。)。こうした行為者の性的意図の発露を伴う行為については,客観的にみて正当な治療行為の枠から外れていると評価でき,それゆえに性的意味が認められると解される 17) から,上記解釈であっても不都合は生じないと思われる。
 なお,治療行為としての必要性の程度と関連させ,検査等として多少は有効ではあるものの必ずしも必要とはいえない行為をした場合で行為者に性的意図があった場合には,わいせつ行為性を肯定する余地を認めるのが妥当とする見解もある 18) が,外形的には行為者の性的意図が一切表れておらず,医学的に治療行為としての必要性が完全に否定できなければ,当該行為に性的意味を肯定することは困難ではないかと思われる 19)。

「当審における事実取調べの結果によれば,原判決後,被告人は,示談条項に従い,前記残額の200万円を支払い,これによって示談金全額が支払われるに至ったことが認められる。」などとして、懲役1年6月(実刑)とした原判決を判決を破棄して(2項破棄)、保護観察つき執行猶予を付した事案(東京高裁R02.3.12 原判決甲府地裁R01.9.26)

 師弟関係の強制わいせつ1件で、「示談金を400万円と定め,そのうち200万円を既に支払い,残額については50万円ずつ分割払いする旨約して,示談が成立していること,被告人が事実を認めて反省の態度を示していること,被告人の妻が今後の監督を約束していること,前科がないこと,被告人がクリニックに通院して,再犯防止に取り組んでいることなど,所論が指摘し,記録上認められる事情を考慮しても,懲役2年の求刑に対し,被告人を懲役1年6月の実刑に処した原判決の量刑がその宣告の時点では重過ぎて不当であるとはいえない。」ですけど、
「原判決後,被告人は,示談条項に従い,前記残額の200万円を支払い,これによって示談金全額が支払われるに至ったことが認められる。また,当審に提出された示談書等によれば,被告人は,示談条項に従って,フィギュアスケート協会から脱退するなどし,インストラクターの職を失ったことも認められる。さらに,被告人は,当審に提出した陳述書(当審弁31)において,内省を深め,今後,クリニックでの治療を続け,厳しく自分を律して,再犯を絶対行わない旨誓約している。当審に提出された被害児童の両親の心情意見陳述書によれば,その処罰感情がなお厳しいことが認められ,それも理解できるところである。しかし,前記の原判決後の事情及び当審において新しく立証された事情に照らせば,原判決の前記量刑は,執行猶予を付さなかった点において,重過ぎる結果となったというべきである。」
ということです。

強制わいせつ被告事件
東京高等裁判所判決
令和2年3月12日
       主   文
 原判決を破棄する。
 被告人を懲役1年6月に処する。
 この裁判確定の日から4年間その刑の執行を猶予する。
 被告人をその猶予の期間中保護観察に付する。

       理   由

 本件控訴の趣意は,弁護人A作成の控訴趣意書に記載されたとおりである。論旨は,量刑不当の主張であり,被告人を懲役1年6月に処した原判決の量刑は重過ぎて不当であり,保護観察付き執行猶予にするのが相当であると主張する。
 そこで記録を調査し,当審における事実取調べの結果を併せて検討する。
 本件は,被告人が,被害児童(当時10歳)が13歳未満であることを知りながら,同人にわいせつな行為をしようと考え,令和元年5月14日午前0時10分頃から同日午前0時20分頃までの間,甲府市内の駐車場に駐車中の自動車内において,同車後部座席で横臥していた同人に対し,同人が履いていたズボン及びパンツを引き下げ,その陰部を手指で直接触るなどし,もって13歳未満の者に対し,わいせつ行為をしたという事案である。
 原判決は,上記のような事案であることを前提に,量刑の理由として,フィギュアスケートインストラクターをしていた被告人が,被害児童の練習を指導して帰宅する自動車内において,わいせつな行為に及んだ事案であるとし,その行為は,被害児童のパンツを下げて陰部を指で触るなどのわいせつ性が高いものであり,被害児童の人格を無視してなされた卑劣で悪質な犯行であると説示する。被害児童は,当時10歳であり,本件により多大な恐怖を感じ,本件後は男性に恐怖を感じるようになったり,練習中にパニック症状がでるなどしており,精神的被害は甚大である上,成長過程への影響も懸念されると指摘している。
 原判決の以上の説示に不合理な点はなく,被告人の刑事責任を軽視することは許されない。
 所論は,本件犯行が計画性および常習性が認められない突発的犯行であることや被告人が任意に犯行を終了していることは,被告人の責任非難の程度を大きく減じる事情であるにもかかわらず,原判決は全く考慮していない,また,原判決は,いかなる意味で「被害児童の人格を無視したもの」と評価したのか全く示していない,被害児童の年齢や被告人と被害児童との関係性等を不当に重く評価しているなどと主張する。
 しかし,原判決が,本件について,わいせつ性が高く,被害児童の人格を無視した犯行であり悪質であるなどと評価したのは,本件わいせつ行為の態様,被害児童の年齢,被告人と被害児童との関係性,被告人が本件犯行に及んだ機会などに基づく評価であることは,その判文上明らかであり,計画性や常習性は認められないとしても,原判決の上記評価に不合理な点もない(なお,所論は,「刑法43条ただし書参照」とするが,同規定は,未遂罪に関する規定であり,既遂罪である本件を規律するものではない。)。
 所論は,原判決は,被害児童の精神的被害について,被害児童の母親の誇大な供述を鵜呑みにしているなどと主張する。
 しかし,被害児童の母親の供述は,被害児童の言動やその言動がなされた場面等を具体的に供述するものである(原審甲10・126丁,原審甲11・134~138丁)。また,被害児童も,検察官に対し,被害の際には怖くて寝たふりをしていたこと(原審甲8・77,98,99丁),怖くて練習に行けなくなったこと(同76丁)などを供述し,今後の不安を口にするなどしている(同104,105丁)。以上のような供述に照らせば,本件が被害児童に与えた悪影響について,精神的被害が甚大である上,成長過程への影響も懸念されるなどと評価した原判決が不合理であるとはいえない。
 そうすると,被害児童側との間で,示談金を400万円と定め,そのうち200万円を既に支払い,残額については50万円ずつ分割払いする旨約して,示談が成立していること,被告人が事実を認めて反省の態度を示していること,被告人の妻が今後の監督を約束していること,前科がないこと,被告人がクリニックに通院して,再犯防止に取り組んでいることなど,所論が指摘し,記録上認められる事情を考慮しても,懲役2年の求刑に対し,被告人を懲役1年6月の実刑に処した原判決の量刑がその宣告の時点では重過ぎて不当であるとはいえない。
 しかしながら,当審における事実取調べの結果によれば,原判決後,被告人は,示談条項に従い,前記残額の200万円を支払い,これによって示談金全額が支払われるに至ったことが認められる。また,当審に提出された示談書等によれば,被告人は,示談条項に従って,フィギュアスケート協会から脱退するなどし,インストラクターの職を失ったことも認められる。さらに,被告人は,当審に提出した陳述書(当審弁31)において,内省を深め,今後,クリニックでの治療を続け,厳しく自分を律して,再犯を絶対行わない旨誓約している。
 当審に提出された被害児童の両親の心情意見陳述書によれば,その処罰感情がなお厳しいことが認められ,それも理解できるところである。しかし,前記の原判決後の事情及び当審において新しく立証された事情に照らせば,原判決の前記量刑は,執行猶予を付さなかった点において,重過ぎる結果となったというべきである。
 よって,刑訴法397条2項により原判決を破棄し,同法400条ただし書を適用して,被告事件につき更に判決することとする。
 原判決が認定した事実に原判決が挙示する法令を適用し,その所定刑期の範囲内で,被告人を主文掲記の刑に処し,刑法25条1項を適用してこの裁判確定の日から4年間その刑の全部の執行を猶予し,なお同法25条の2第1項前段を適用して被告人をその猶予の期間中保護観察に付し,原審における訴訟費用の処理(不負担)につき刑訴法181条1項ただし書を適用して,主文のとおり判決する。
  令和2年3月12日
    東京高等裁判所第2刑事部
        裁判長裁判官  青柳 勤
           裁判官  高木順子
           裁判官  溝田泰之

向井香津子「強制わいせつ罪の成立と行為者の性的意図の要否」 最高裁判所判例解説_刑事篇_平成29年度_-_(著)法曹会

向井香津子「強制わいせつ罪の成立と行為者の性的意図の要否」 最高裁判所判例解説_刑事篇_平成29年度_-_(著)法曹会
 わいせつの定義はないといいながら、「性的意味合いがある行為」に、要件を付け足して、これまでの定義と同じところを規制しようとしています。

〔6〕強制わいせつ罪の成立と行為者の性的意図の要否
     (平成28年(あ)第731号 同29年11月29日大法廷判決 棄却
       第1審神戸地裁 第2審大阪高裁 刑集71巻9号467頁)
(エ)具体的判断方法
 そこで,「わいせつな行為」該当性の具体的判断方法を更に考えてみると,まずは,行為そのものが持つ性的性質の有無,程度に着目して,
 ①性的な意味があるかどうか
 ②性的な意味合いの強さがどの程度か
を検討すべきであって,それだけでは「わいせつな行為」該当性の判断がつかない場合には,次の段階として,行為そのものが持つ性的性質の程度を踏まえつつ,当該行為が行われた際の具体的状況等の諸般の事情をも加えて判断していくことになろう。
 本判決が「わいせつな行為に当たるか否かの判断を行うためには,行為そのものが持つ性的性質の有無及び程度を十分に踏まえた上で,事案によっては・・・・・・」と判示しているのは,この点を明らかにしたものと思われる。
 更に敷衍すると,本判決が「行為そのものが持つ性的性質の有無及び程度を十分踏まえる」ことを求めている趣旨としては,
(a)行為そのものに,性的性質が有り,かつ,その性的性質の程度が強いために,直ちに「わいせつな行為」に該当すると判断できる行為かどうかという点と,
(b)行為そのものに備わる性的性質が無いか,あっても極めて希薄であるために,およそ刑法176条による非難に値する程度に逹しえないものとして,直ちに「わいせつな行為」に該当しないと判断できる行為かどうかという点の両面から検討することを求めているものと思われる。すなわち,(b)行為そのものに備わる性的性質が無いか,あっても極めて希薄と評価すべき行為については,その他の周辺事情(行為者の主観的意図を含め,当該行為が行われた際の具体的状況等諸般の事情)がどのようなものであろうと,およそ「わいせつな行為」に該当し得ないと考えられているものと思われる。
 次に,行為そのものが持つ性的性質が不明確であるために,行為の外形だけでは「わいせつな行為」該当性の判断がつかない類型においては,行為そのものが持つ性的性質の程度を踏まえた上で,当該行為が行われた際の具体的状況等の諸般の事情をも総合考慮することになる。この場合には,事案ごとに様々な考慮要素が考えられるところ,個別事案に応じた具体的事実関係に基づいて,当該事案における判断要素とすべきと考えられる各事情を抽出し,それらの各事情を総合考慮することによって,社会通年に照らし,①性的な意味があるか,②当該行為の性的な意味合いの強さが刑法176条等の非難に値する程度であるか,を判断していくほかないものと思われる。(注15)
 本判決が「事案によっては,当該行為が行われた際の具体的状況等の諸般の事情をも総合考慮し,社会通念に照らし,その行為に性的な意味があるといえるか否かや,その性的な意味合いの強さを個別事案に応じた具休的事実関係に基づいて判断せざるを得ない」と判示しているのは,以上のような点を明らかにしたものと思われる。

(注15)行為そのものが持つ性的性質の有無・程度は,その行為態様(身体的接触の有無,接触した身体の部位,接触の直接性,接触時間,接触態様,衣服の有無等)によって異なると考えられ(前掲佐藤63頁以下参照),その行為態様における性的性質の程度に応じて,以下のような3類型が観念できるものと思われる。
 ただし,このように類型化して観念できるとはいえ,第Ⅰ類型に当たると考えられる行為について,そのほかの具体的状況も併せた上で「わいせつな行為」に該当すると判断することが許容され得ないとは考え難いことからすると,実務上は,第Ⅰ類型と第Ⅱ類型とを厳密に区別することにさほど意味があるとは考え難い。また,仮に,ある行為を第Ⅰ類型に分類して観念したとしても,例えば医療として行われた行為については,正当行為として違法性が阻却されると整理することによっても妥当な解決が導けるであろう(医療行為と評価されるべき行為〔例えば,性器への接触行為〕について,第Ⅰ類型に分類して正当行為として違法性が阻却されるとするか,第Ⅱ頬型に分類して「わいせつな行為」に該当しないとするかは,結論において差異はなく,実務上は,どのような客観的状況の下でどのような主観に基づいて行われた場合に「医療行為」と評価されるべきなのかという点がより重要であると考えられる。)。
 むしろ,注目すべきなのは,第一点目として,本判決が,性的な意味の有無及びその意味合いの強さの判断方法に関し,行為そのものが持つ性的性質にまず着目すべきという判断順序と判断要素としての重要性の序列を明らかにしているという点であり,第二点目として,本判決が,行為そのものに備わる性的性質が無い,あるいは,希薄とされる第Ⅲ類型と第Ⅱ類型との区別を求めているとみられる点であろう。すなわち,第Ⅲ類型は,行為者の性的意図がいかに強いとしても,「わいせつな行為」にはおよそ該当しないと評価すべき行為であり,強制わいせつ罪の処罰範囲を画する上では,第Ⅱ類型と第Ⅲ類型をどのように区別して捉えるかが,今後重要な課題となるのではなかろうか(前掲刑事比較法研究グループ154頁も参照)。
【第Ⅰ類型】行為そのものが持つ性的性質が明確であるため,具体的状況如何にかかわらず,直ちに「わいせつな行為」に該当すると認められる行為類型
 医療行為等の正当業務行為として違法性が阻却されるような例外的な場合を除けば,刑法176条等の定める態様(暴行脅迫による,13歳未満の者を相手とする,心神喪失もしくは抗拒不能に乗じる,監護者の地位に乗じる等)によって行われることが,社会通念上およそ許容され得ないと考えられる程度に,行為そのものが持つ性的性質が明確で,性的な意味が強くあると直ちにいえる行為が,この類型に当たると考えられる。
 例えば,平成29年改正により新設された強制性交等罪にいう口腔性交,肛門性交が,同改正法施行前に行われていたとすれば,当然この類型に当たると考えられるし,そのほかにも濃密な性器接触行為や性器への異物挿入行為等も考えられるところではあるが,具体的にどのような行為であれば,性的性質が明確であるとして直ちに「わいせつな行為」に該当するといえるのかについても,その時代の社会通念によるというほかないと思われる。
【第Ⅱ類型】当該行為の行われた際の具体的状況如何によって,当該行為が「わいせつな行為」に該当するか否かの判断が分かれ得る行為類型
 この類型に当たる行為としては,例えば,キスする行為,裸で一緒に入浴し相手の身体を洗う等の行為,全裸写真を撮影する行為等が考えられる。これらの行為は,状況次第では強い性的な意味を持ち得る性質の行為ではあるが,場合によっては,性的な意味のない単なる親愛表現としてのコミュニケーション行為や,性的な意味のない監護・養育行為等として行われることも考えられるなど,行為そのものが持つ性的性質の有無・程度自体が必ずしも明確とはいえない行為である。
 そのため,第I,第Ⅲ類型とは異なり,「わいせつな行為」該当性は,行為そのものが持つ性的性質の程度に加えて,それ以外の事情,すなわち当該行為が行われた際の具体的状況等をも加えて総合考慮して,性的な意味があるかどうかや,その性的意味合いの強さを判断しなければならない。
 もっとも,成人相手の行為であれば,まずは,相手の承諾の有無が問題となり,承諾さえあれば不可罰であるから,承諾ある行為について,「わいせつな行為」該当性を判断する必要はない。また,承諾なしに暴行,脅迫を加えるなどして,強い性的性質を持ち得る行為(キスなど)をした場合には,そのような経緯自体からして,性的意味のないコミュニケーション行為とみる余地がなくなるため,性的な意味合いを推認でき,「わいせつな行為」に該当すると容易に判断できるであろうから,実際の判断に迷う事例は少ないと思われる。また,行為者と相手との間に何らの関係性もない全くの他人が唐突に強い性的性質を持ち得る行為を行った場合にも,同様にして,性的な意味合いを容易に肯定できるものと思われる。
 これに対し,13歳未満の者を相手にする場合などで,暴行・脅迫がない場合などでは,必ずしも,その判断は容易とはいえない。殊に,年少者を相手として,保育者や監護者等の密接な関係性を有する者が行った場合には,その関係性からして,当該行為が,「わいせつな行為」として行われたのか,単なる養育行為や性的な意味のない親愛表現として行われたのかを,適切に判断しなければならないであろう。
【第Ⅲ類型】行為そのものに備わる性的性質がおよそ無い,あるいは希薄であるため,具体的状況如何にかかわらず「わいせつな行為」該当性を否定すべきと考えられる行為類型
 行為そのものが持つ性的性質が無いか,あっても非常に弱いため,刑法176条等の保護法益(性的自由を中核とする性にかかわる個人的法益)に対する侵害となることがおよそ考えられないか,同条等による非難に値する程度の侵害にはおよそ達し得ないような行為がこの類型に入るものと考えられる。そのような行為は,具体的状況がどうであろうと「わいせつな行為」に該当すると認められるほどの強さに達する性的な意味合いをおよそ持ち得ないと考えられる。すなわち,一般的にみて性的性質が希薄な行為については,行為者がいかに,強い性的意図をもっていたとしても,法定刑の重い強制わいせつ罪等を成立させる程度の強さの性的意味合いを持つとは認め難いと思われる(前掲佐藤64頁)。
 この類型の行為は,仮に暴行,脅迫によって強制されたとしても強要罪が成立するにとどまるとすれば足りるし,13歳未満の者に対して暴行脅迫を加えることなく行ったとしても不可罰というほかなく,監護者の地位に乗じて行われたとしても不可罰と考えられる(ただし,そのような行為であっても,各都道府県の定める迷惑防止条例に該当する場合はあり得るであろう。本判決後のものではあるが,嘉門優「強制わいせつと痴漢行為との区別について」季刊刑事弁護93号147頁も参照)。
 この類型に当たるのではないかと考えられる行為としては,例えば,手に触れる行為,衣服を着た状態の者を写真撮影する行為等が考えられるが,どのような行為について,一般的にみて性的性質が希薄というべきかについても,その時代の社会通念を反映させて決せられるほかなく,時代によって移り変わっていくと考えられる(例えば,纏足文化があり,纏足に強い性的意味合いがあると一般的に評価されている社会では,纏足にまつわる行為に強い性的意味があるとみる余地が出てくるであろう。前掲佐藤65頁注50も参照。)。したがって,多様な性的行為が想定される現代社会では,例えばフェティシズムに基づく行為をどのように考えるかも,社会通念に根差して考えていくべき今後の課題となろう(前掲樋口89頁,前掲佐藤65頁,園田寿「強制わいせつ罪における<性的意図>について」山中敬一先生古稀祝賀論文集下巻124頁〔2017年〕等)。

(オ)行為者の目的等の主観的事情
 「わいせつな行為」該当性の判断において,具体的状況等の事情を総合考慮する場合に考えられる判断要索については,様々なものが考えられ,多くの場合には,当該行為そのものが持つ性的性質の強さに加えて,○a行為者と被害者の関係性,○b行為者及び被害者の各属性等,○c行為に及ぶ経緯,周囲の状況等の諸要素の中から,当該事案における「わいせつな行為」該当性の評価に必要と考えられる判断要素を抽出して,これらを総合考慮し,性的な意味の有無やその性的な意味合いの強さを判断すれば,当該行為の「わいせつな行為」該当性を決することができると思われるが(注16),中には,行為者がどのような目的でその行為をしたのかという主観的事情を総合判断の一要素として考慮せざるを得ない場面も,少ないとはいえ,あり得ると考えられる(前掲刑事比較法研究グループ154頁,前掲佐藤64頁,前掲和田621頁等)。
 すなわち,①当該行為そのものが持ち得る性的性質がさほど強くない行為(例えば,身体的接触のない裸体写真撮影行為や単に抱きしめる行為),あるいは,②行為者の主観以外の具体的状況を考慮してみても,性的な意味ではない別の社会的意味が想定され得るような行為(例えば,監護者が児童と入浴し身体を洗う行為)(注17)では,最終的には,行為者の目的等の主観的事情を考慮に入れて判断せざるを得ない場合があると考えられる。(注18)例えば,性的な意味を持ち得るような行為であったとしても,医療行為や養育行為として行われていることが認められれば,社会通念上,通常は,性的な意味のない行為というべきであるから,「わいせつな行為」に該当しないと考えられるところ,医療行為と評価できるかどうかや,養育行為と評価できるかどうかの判断要素として,行為者の目的(医療目的・養育目的ではなく,専ら自らの性欲を満たす目的であったか否か等。)を検討しなければならない場面もあり得るであろう(医師による女性患者に対する陰部に対する検査行為について,検査に名を借りたわいせつ行為であるとして準強制わいせつ罪として起訴され,弁護人から医師の正当行為であると主張された事案について,「わいせつの目的」がないから「わいせつ行為」とは認定できないとした京都地判平成18年12月18日LLI判例秘書(L06150442)参照)。
 もっとも,主観的事情として考慮すべき内容は,行為者自身の性欲を満たす性的意図に限られないであろう。被害者に対して性的屈辱感を感じさせることによって復讐等を果たす目的や,第三者らの性欲を満たすための画像等を他人に提供する目的等であっても,社会通念に照らせば,そのような目的によって,当該行為に強い性的な意味が付与されると考えられるので,それらの目的の有無も含めた主観的事情も考慮要素になり得ると考えられる。
 本判決は,「そのような個別具体的な事情の一つとして,行為者の目的等の主観的事情を判断要素として考慮すべき場合があることは否定し難い」と判示し,「わいせつな行為」該当性の判断方法を示し,その判断をする際に必要な場合には,性的意図だけでなく,目的等も含めた行為者の主観的事情を考慮してもよい旨を明確に示すことにより,昭和45年判例を変更する射程を明らかにしたものと思われる。
 なお,このような主観的事情は,純粋に内心を探り当てて認定されるべきものでないことは当然であって,行為者の主観的事情が外部的徴表として表れていなければ,行為者の目的等を認定することは困難であり,その認定は慎重に行う必要がある(安易に自白に頼るような姿勢は厳に慎むべきであろう。)。

(注16)当該行為が行われた際の具体的状況等を総合考慮する場合の具体的判断要素
 当該行為が行われた具体的状況等の諸事情を総合考慮して「わいせつな行為」該当性を判断する場合においては,以下のような判断要素を総合考慮(性的意味合いを強める方向の事情と,性的意味合いを弱める方向の双方の事情の総合考慮)していくことが考えられる。
 もっとも,下記のとおり,種々の判断要素が考えられるものの,全ての事件において,これらの要素の有無を逐一判断する必要はないし,そのようなやり方は不相当であって,個別の事案ごとに,その事案にふさわしい判断要素となる事情を抽出して拾い上げ,それらの意味合いを総合考慮すべきと考えられる。
 ○a行為者と被害者の関係性
 見ず知らずの者による行為は,挨拶等のコミュニケーションのため,といった他の意味の可能性を排除できるため,多くの場合,性的な意味が肯定され得るであろう。行為者と被害者との間に,一定の関係性(親子,保育者と被保育者,医師と患者等)がある場合には,その関係がどのようなものであるかに加えて,○b以下の判断要素が重要になるものと思われる。
 ○b行為者及び被害者の各属性等(それぞれの性別・年齢・性的指向・文化的背景〔コミュニケーション手段に関する習慣等〕・宗教的背景等)
 被害者が幼ければ,性的な意味がないというべき事案が多くなるであろうが,行為者自身に小児を対象とする性的傾向があるといった場合には,性的な意味が肯定される方向の大きな事情となる。また,被害者及び行為者が同性の友人関係にあっても,どちらか一方または双方が同性愛者である場合には,性的な意味が肯定される余地が増える。行為者及び被害者の双方あるいは片方に,コミュニケーションとしてキス,ハグする習慣があるのであれば,性的な意味はないと判断すべき場合が増えると考えられる。
 ○c行為に及ぶまでの経緯,行為者及び被害者の各言動,行為が行われた時間,場所,周囲の状況等
 行為に及ぶまでの経緯,言動,周囲の状況等に,性的な意味を示すものがあれば,性的な意味が肯定されやすくなり,性的な意味のない純粋な挨拶等のコミュニケーション行為としてであったり,あるいは医療・養育行為として行われていることを示すもの等があれば,性的な意味が否定されやすくなる。また,大勢の前で,明るい場所で,いきなり衣服をはぎ取って全裸にする行為は,性的な屈辱感を与えるという意味において性的に重要な意味をもつ場合が多いと考えられるが,風呂場の更衣室で,入浴前に同性の生徒同士が衣服を脱がせて全裸にする行為であれば,通常は,性的な意味があるとは考えられない(もっとも,そのような状況でも,いじめなどで,相手に性的屈辱感を与える目的があったとすれば,性的な意味が肯定され得るであろう。)。
 ○d行為に及んだ目的を含む行為者の主観的事情
 通常は,当該行為そのものが持つ性的性質の程度に加えて,○aないし○cの諸要素を総合考慮することにより,当該行為が,①性的な意味があるか否か,②性的な意味合いの強さが刑法176条等による非難に相応する程度に逹しているか否か,を判断できるものと思われる。
 しかし,中には,行為者がどのような目的でその行為をしたのかという主観的事情を総合考慮の一要素として考慮に入れざるを得ない場合もあり得ると考えられる。
 ただし,行為者の目的等の主観的事情を立証したり認定したりするためには,その間接事実として,行為者と被害者の関係,行為者及び被害者の各属性等(年齢・性別・性的指向・文化的背景等),行為に至るまでの経緯・周囲の状況を考慮することになることから,実際上の判断要素は,かなりの程度重複することになろう。例えば,監護者が子どもと一緒に入浴してその性器に触れたり子どもの裸体を撮影する事例などでいえば,行為者の客観的な言動として,当該行為の前後に現に当該被害児童の写真を「児童ポルノ」として提供していたとか,当該行為の前後において,性的欲望を満たす意図で入浴していたことを示す日記を残しているとか,行為者の主観的事情が,外部的徴表として表れていなければ,結局のところ,行為者の目的等を認定することは困難であると思われる。
(注17)監護者あるいは保育者が,子どもを入浴させる行為は,通常であれば,監護・養育・保育行為であって,性的な意味がないといえる。しかし,例えば,監護者等の立場にある行為者において,行為当時の目的について,注16に挙げたような証拠等によって,当初から入浴時の様子を撮影して児童ボルノとして提供する目的があったと認定できる場合や,子どもと一緒に入浴して性器に触れることについて性的欲望を満たす目的があったと認定できる場合など,性的虐待行為と評価できるような行為の場合には,社会通念上「わいせつな行為」に該当し得ると考えられるであろう。
(注18)諸外国においても,「性的」と評価するにあたり,客観面を重視しつつも性的意図も考慮要素としたり,客観的には多義的な場合には性的意図という主観面を重視するといった議論がなされているようである(前掲刑事比較法研究グループ11頁)。
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 ウ 「わいせつな行為」の判断要素と「公訴事実」「罪となるべき事実」
 「わいせつな行為」について,上記のような解釈をとった場合において,「公訴事実」あるいは「罪となるべき事実」としてどこまで記載すべきかという点が問題となる(前掲樋口87頁参照)。
 「わいせつな行為」のような規範的事実について,その規範的評価の根拠となる事実をもれなく全て起訴状に書き切ることは困難である(わいせつな行為該当性評価の根拠となる事実をもれなく全て記載しようとすれば,わいせつ性を否定する方向の事情とこれを高める方向の事情とを全て書き切らなければならなくなるが,被告人の弁解が明らかとはいえない起訴の段階では,その作業を予め行うことには無理がある)。そもそも,訴因の特定という意味においては,「わいせつな行為」に該当すると評価されるべき行為自体(例えば,「キスをした」行為)が特定されていれば足りると思われる。その行為の「わいせつな行為」該当性の評価根拠となる事実は,作為として行われる「わいせつな行為」を特定するために必要な事実ではなく,これを認定するための間接事実であるように思われる。そうすると,起訴の段階で,評価の根拠となるべき事実関係の全てを公訴事実に記載することは,現実的ではないし,その必要もないと考えられる。したがって,起訴状には,日時,場所,被害者のほか,「わいせつな行為」と評価される行為(例えば,「キスをした」。)を記載し,「もって,わいせつな行為をした。」と記載するだけで,犯罪事実の特定としては足りており,その評価の根拠となる事実の記載が不十分であるからといって,違法とはいえないであろう。もっとも,その評価の根拠となる事実は,攻撃防御の対象として重要であることは当然であり,事案に応じて,重要な部分(例えば,「通りすがりの通行人の被害者に対し突如キスをした」等)を可能な限り予め公訴事実に記載する方がより望ましいことは当然である。さらに,最終的には,「わいせつな行為」と評価するに足りるだけの事実関係が全て主張,立証されていなければ,「わいせつな行為」をしたとは認定できないから,少なくとも冒頭陳述等において,その評価の根拠となるべき事実が主張されている必要があるし,「わいせつな行為」該当性に争いのある事件であれば,その後の被告人の弁解を踏まえて,論告,弁論において,「わいせつな行為」該当性の評価に必要と考えられる判断要素とその総合考慮に関するそれぞれの見方が示されているべきと考えられる(以上につき,家令和典「訴因の特定と訴因変更の要否」松尾浩也ほか編・実例刑事訴訟法Ⅱ19頁〔2012年〕,池田修・最高裁判所判例解説刑事篇平成13年度73頁等参照)。
 次に,判決書の「罪となるべき事実」においても,同様に,当該行為を記載するだけで「わいせつな行為」と認められるような事案(本件のような強度の性的接触行為等)の場合には,行為の記載だけで十分といえるが,「わいせつな行為」該当性の判断が微妙な事案では,「わいせつな行為」と評価した根拠となる重要な事実関係を「罪となるべき事実」にも記載しておくのが望ましいと考えられる。ただし,仮にそれらの記載が欠けているからといって,それだけでは,直ちに理由不備とまではいえないであろう。
 4 本判決の意義
 本判決は,強制わいせつ罪の成立要件として性的意図を要求していた昭和45年判例を約半世紀ぶりに変更し,強制わいせつ罪の解釈を明確化したものとして重要な意義を有するといえよう。
 今後は,本判決を踏まえ,現代社会における社会通念に照らし,どのような行為がどのような場合に「わいせつな行為」に当たると評価するのが相当であるのかについて,具体的事例の集積を通じて明らかにされることが期待される。

(後注)本判決の評釈等として知り得た主なものとして,以下のものがある。 前田雅英「行為者の性的意図の満足と強制わいせつ罪の成否」捜査研究66巻12号2頁,研修804号2頁,成瀬幸典「強制わいせつ罪の主観的要件としての性的意図の要否」法学教室449号129頁,豊田兼彦「強制わいせつ罪における性的意図の要否」法学セミナー757号123頁,村井敏邦「強制わいせつ罪の成立に,わいせつ目的を必要とするか」時の法令2043号50頁,曲田統「強制わいせつ罪における『性的意図』の要否」法学教室450号51頁,松木敏明=奥村徹園田寿「強制わいせつ罪の成立と行為者の性的意図の要否」法学セミナー758号48頁,木村光江「行為者の性的意図と強制わいせつ罪の成立要件」平成29年度重要判例解説156頁,松宮孝明「平成29年11月29日大法廷判決の意味するもの」季刊刑事弁護94号74頁,髙橋則夫「強制わいせつ罪における性的意図」論究ジュリスト25号113頁,塩見淳「強制わいせつ罪における『性的意図』」刑事法ジャーナル56号33頁,奥村徹最高裁大法廷平成29年11月29日判決の背景」判例時報2366号131頁,小林憲太郎「最高裁平成29年11月29日大法廷判決について」判例時報2366号138頁,佐藤拓磨「最大判平成29年11月29日の意義と今後の課題」判例時報2366号143頁,園田寿「強制わいせつ罪における『性的意図』の要否」新・判例解説Watch23・167頁,木村光江「強制わいせつ罪における『性的意図』」日髙義博先生古稀祝賀論文集下巻107頁,石飛勝幸「実務刑事判例評釈」警察公論73巻8号88頁,小棚木公貴「強制わいせつ罪の成立と性的意図の要否」北大法学論集69巻3号187頁,日和田哲史「強制わいせつ罪の成立要件と『性的意図』」上智法学論集62巻1=2号177頁,仲道祐樹「強制わいせつ罪の成立と行為者の性的意図の要否」論究ジュリスト28号188頁,成瀬幸典「強制わいせつ罪に関する一考察」(下・完)東北大学法学会法学82巻6号160頁。(向井 香津子)