児童ポルノ・児童買春・児童福祉法・監護者わいせつ・強制わいせつ・青少年条例・不正アクセス禁止法・わいせつ電磁的記録弁護人 奥村徹弁護士の見解(弁護士直通050-5861-8888 hp3@okumura-tanaka-law.com)

性犯罪・福祉犯(監護者わいせつ罪・強制わいせつ罪・児童ポルノ・児童買春・青少年条例・児童福祉法)の被疑者(犯人側)の弁護を担当しています。専門家向けの情報を発信しています。

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検察は複数の客に販売していたとして購入した客やサイトも摘発しています。という報道(釧路地検)

検察は複数の客に販売していたとして購入した客やサイトも摘発しています。という報道(釧路地検
 購入者が遠方の警察に捜索されたという相談はコンスタントに来ますが、捜索時に現認された場合は、罰金30万円程度になり、起訴猶予率は低いようです。

https://news.yahoo.co.jp/articles/3389eee7b1cec8a0d36656d73046f3ba201f244a

男は2018年12月、女子児童のわいせつ動画1点をほかのアダルト動画販売サイトを利用し、東京都の男に販売した罪に問われています。

被害にあった女子児童は特定されておらず、男は動画を闇サイトで入手したと話しているということです。

検察は複数の客に販売していたとして購入した客やサイトも摘発しています。

強制口腔性交(177条後段)と児童ポルノ製造罪、強制わいせつ罪(176条後段)と児童ポルノ製造罪が、併合罪であるという主張が弁護人独自の見解とされた事例(東京高裁r5.3.30)

強制口腔性交(177条後段)と児童ポルノ製造罪、強制わいせつ罪(176条後段)と児童ポルノ製造罪が、併合罪であるという主張が弁護人独自の見解とされた事例(東京高裁r5.3.30)
 強制わいせつ罪(176条後段)だけでなく、強制口腔性交(177条後段)についても、ダビングしてないと観念的競合、ダビングしてると併合罪だというのですよ。高裁レベルは普通は併合罪だよ。

東京高裁r5.3.30
第4 訴訟手続の法令違反の主張について
 1 論旨は、①原判示第16の1、第18に関して、訴因の単一性に欠けるから公訴を棄却すべきであるのにしなかった点で、訴訟手続の法令違反がある、②原判示第18の児童ポルノ製造罪に関して、判決に影響を及ぼす釈明義務違反があり、訴訟手続の法令違反がある、というのである【①1/12趣意書162頁以下、1/13補充書1頁以下、②1/25補充書5頁以下】。
 2 その根拠として、所論は、①については、原判示第16の1、第18の公訴事実には、接触によるわいせつ行為と撮影によるわいせつ行為が記載されており、二罪を一個の訴因とした点で訴因の単一性に欠け、刑訴法256条3項に違反するから公訴を棄却すべきであるのに、原判決は実体判断をしている、②については、就寝中の被害者に対する行為のうち、原判示第18は姿態をとらせて製造した児童ポルノ法7条4項の罪で起訴され、それ以外はひそかに撮影した同条5項の罪で起訴されており、原審裁判所は検察官に対し、区別を徹底させるなどの釈明を求める義務があった、などと主張する。
 3 しかしながら、②については、控訴趣意書提出期限を経過して提出された控訴趣意補充書に基づく新たな主張であって不適法である。また、①及び②のいずれの主張も独自の見解に基づくものであり、原審手続には、刑訴法256条3項の違反も、釈明義務の違反も認められないのであって、所論は採用できない。

第6 強制わいせつ、強制性交等罪と児童ポルノ製造罪の罪数に関する法令適用の誤りの主張について
 1 論旨は、原判示第4ないし第11、第13ないし第17に関し、各強制わいせつ、強制性交等罪と、これを撮影した各児童ポルノ製造罪とを併合罪とした原判決には、法令適用の誤りがある、というのである【1/12趣意書162頁以下】。
 2 その根拠として、所論は、わいせつ行為等を撮影する行為は、強制わいせつ罪におけるわいせつ行為であり、これを児童ポルノ製造罪としても評価するのであれば、一個の行為であるから、各強制わいせつ罪、強制性交等罪と、各児童ポルノ製造罪とは観念的競合の関係にある、などと主張する。
 3 1の各事件において、原判決は、動画データを電磁的記録に係る記録媒体その他の物に記録して保存する行為が、わいせつ行為とは日時や場所を異にするものを併合罪と評価していると解される。
刑法176条後段等に触れる行為と児童ポルノ法7条4項、5項に触れる行為は、基本的にはそれぞれが性質を異にする行為であり、社会的評価において、直接的なわいせつ行為とこれを撮影した動画を保存して児童ポルノを製造する行為は別個の意思に基づく相当性質の異なる行為であり、一罪として扱うことを妥当とするだけの社会的一体性がなければ、それぞれにおける行為者の動態は社会的見解上別個のものといえるところ、原判決も同様の観点から前記のように評価したものと解されるのであって、この判断が誤っているとはいい難い。

原判決
【文献番号】25593703
東京地方裁判所令和4年8月30日刑事第1部判決
第16 Pが13歳未満の者であることを知りながら、
4 同年11月7日午後10時25分頃から同日午後10時40分頃までの間、前記P方において、同人(当時6歳)に対し、その陰茎を被告人の口腔内に入れるなどし、ひそかにPの陰茎を露出させる姿態、被告人がPの陰茎を手で弄ぶなどの姿態及び被告人がPの陰茎を口腔内に入れるなどの姿態を前記スマートフォンで動画撮影し、その動画データ5点を同スマートフォンに装着された前記マイクロSDカードに記録して保存し、もって13歳未満の者に対し、口腔性交をするとともに、児童を相手方とする性交類似行為に係る児童の姿態、他人が児童の性器等を触る行為に係る児童の姿態であって性欲を興奮させ又は刺激するもの、又は衣服の全部又は一部を着けない児童の姿態であって、殊更に児童の性的な部位が露出され又は強調されているものであり、かつ、性欲を興奮させ又は刺激するものを視覚により認識することができる方法により描写した電磁的記録に係る記録媒体である児童ポルノを製造し、
第18 Rが13歳未満の者であることを知りながら、同月8日午後11時38分頃から同月9日午前0時3分頃までの間、東京都内の同人知人方において、R(当時7歳)に対し、そのズボンを下げさせて陰茎を露出させた上、就寝中の同人の顔面に射精するなどし、陰茎を露出する姿態をとらせ、これをデジタル機器で動画撮影し、その動画データ1点を同デジタル機器に装着された前記マイクロSDカードに記録して保存し、もって13歳未満の者に対し、わいせつな行為をするとともに、衣服の全部又は一部を着けない児童の姿態であって、殊更に児童の性的な部位が露出され又は強調されているものであり、かつ、性欲を興奮させ又は刺激するものを視覚により認識することができる方法により描写した児童ポルノを製造し、
(法令の適用)
罰条
判示第16の4の行為
強制性交等の点 刑法177条後段
児童ポルノ製造の点 児童買春、児童ポルノに係る行為等の規制及び処罰並びに児童の保護等に関する法律7条5項、2条3項1号、2号、3号
判示第17の2の行為
児童買春、児童ポルノに係る行為等の規制及び処罰並びに児童の保護等に関する法律7条5項、2条3項1号
判示第18の行為
強制わいせつの点 刑法176条後段
児童ポルノ製造の点 児童買春、児童ポルノに係る行為等の規制及び処罰並びに児童の保護等に関する法律7条4項、2条3項3号
科刑上一罪の処理
判示第16の4の罪
刑法54条1項前段(1個の行為が2個の罪名に触れる。)、10条(1罪として重い強制性交等の罪の刑で処断)
判示第18の罪
刑法54条1項前段(1個の行為が2個の罪名に触れる。)、10条(1罪として重い強制わいせつの罪の刑で処断)

リモート強制わいせつの裁判例(令和5年5月20日時点)

ネット上で遠隔の被害者に、陰部等を撮影させ、送信させ、受信するという行為態様になります。
「わいせつ」と評価されるのは、「撮影させ」という判例があります。
児童ポルノ製造罪が加わると、観念的競合になりがちです。
高裁判例3件の弁護人は奥村です。

東京 地裁 H18.3.24
大分 地裁 H23.5.11
東京 地裁 H27.12.15
高松 地裁 H28.6.2
横浜 地裁 H28.11.10
松山 地裁 西条 H29.1.16
高松 地裁 丸亀 H29.5.2
岡山 地裁 H29.7.25
札幌 地裁 H29.8.15
札幌 地裁 H30.3.8
東京 地裁 H31.1.31
長崎 地裁 R1.9.17
高松 地裁 丸亀 R2.9.18
熊本 地裁 R3.1.13
京都 地裁 R3.1.21
京都 地裁 R3.2.3
大阪 高裁 R3.7.14
京都 地裁 R3.7.28
大阪 高裁 R4.1.20
札幌 地裁 小樽 R4.3.2
東京 地裁 R4.3.10
京都 地裁 R4.6.10
東京 地裁 R4.8.19
京都 地裁 R4.9.13
札幌 地裁 R4.9.14
釧路 地裁 R5.1.6
札幌 高裁 R5.1.19

男児への手淫は、みだらな行為かわいせつ行為か?(長崎地裁R05.1.17)

男児への手淫は、みだらな行為かわいせつ行為か?(長崎地裁R05.1.17)
 長崎県の解説では「性交に類する行為とは、実質的にみて、性交と同視し得る態様における性的な行為をいい、例えば、異性間の性交とその態様を同じくする状況下における性交を模して行われる手淫、口淫(尺八)、肛淫、触淫(素股)等である。」となっているので、 「異性間の性交とその態様を同じくする状況下における性交を模して行われる手淫」はみだらな行為になって、そういう状況でない手淫は、わいせつ行為ですよね。長崎地裁R05.1.17の罪となるべき事実では「異性間の性交とその態様を同じくする状況下における性交を模して行われる」の記載がないから、わいせつ行為ですね。


長崎県少年保護育成条例の解説h31
(みだらな性行為及びわいせつな行為の禁止)
第16条
1何人も、少年に対し、みだらな性行為又はわいせつな行為をしてはならない。
2何人も、少年に前項の行為を教え、又は見せてはならない。
[要旨]
本条は、心身ともに未成熟な少年の健全な育成を図るため、少年に対するみだらな性行為、わいせつな行為等を禁止し、刑法その他関係法令では規制することができない反社会的な性行為等から少年を保護しようとする規定である。
[解説]
1 「みだらな性行為」とは、広く少年に対する性行為一般をいうものと解すべきものではなく、青少年を誘惑し、威迫し、欺岡し又は困惑させる等その心身の未成熟に乗じた不当な手段により行う性交又は性交類似行為のほか、少年を単に自己の性的欲望を満足させるための対象として扱っているとしか認められないような性交又は性交類似行為(最高裁判決昭和60年10月23日)をいう。
なお、性交に類する行為とは、実質的にみて、性交と同視し得る態様における性的な行為をいい、例えば、異性間の性交とその態様を同じくする状況下における性交を模して行われる手淫、口淫(尺八)、肛淫、触淫(素股)等である。
2 「わいせつな行為」とは、いたずらに性欲を刺激興奮せしめたり、その露骨な表現によって健全な常識のある一般社会人に対し、性的に差恥嫌悪の情をおこさせる行為をいう。(東京高裁判決昭和39年4月22日)
具体的には、「陰部に対する弄び、押し当て」、「乳房に対する弄び」、「接吻」、「裸にしての写真撮影」などがあげられるが、「みだらな性行為」と同様に、当該行為が少年の心身の未成熟に乗じた不当な手段により行うものであること、又は、少年を単に自己の性的欲望を満足させるための対象として扱っているとしか認められないようなものであることを要する。(大阪高裁判決平成23年6月28日参照)
3第1項の「してはならない」とは、少年を相手方とするみだらな性行為、わいせつな行為を禁止しているので、相手方となった少年の承諾の有無を問わない。また、少年から勧誘された場合も同じである。

d1-law
28310881
長崎地方裁判所
令和05年01月17日
 上記の者に対する児童買春、児童ポルノに係る行為等の規制及び処罰並びに児童の保護等に関する法律違反、長崎県少年保護育成条例違反被告事件について、当裁判所は、検察官田﨑博文並びに弁護人佐藤敬弘(主任)及び同山下俊夫各出席の上審理し、次のとおり判決する。

理由
(罪となるべき事実)
 令和4年9月22日付け、同年10月11日付け、同月21日付け及び同年11月2日付け各起訴状記載の公訴事実と同一であるから、これらを引用する。
(証拠の標目)
(量刑の理由)
刑事部
 (裁判官 芹澤俊明)
  起訴状
  令和4年11月2日
長崎地方裁判所 殿
  長崎地方検察庁
  検察官事務取扱副検事 田﨑博文
下記被告事件につき公訴を提起する。
   記
  公訴事実
 被告人は、●●●が18歳に満たない児童であることを知りながら
第1 令和4年6月20日午後6時17分頃、長崎県内の同児童方において、同児童(当時13歳)にその陰茎を露出させる姿態をとらせ、これを同児童が使用する動画撮影機能付き携帯電話機で撮影させた上、その動画データ1点を同携帯電話機からアプリケーションソフト「G」のメッセージ機能を使用して被告人が使用する携帯電話機に送信させ、その頃、長崎県内又はその周辺において、同動画データ1点を同携帯電話機本体の内蔵記録装置に記録して保存し、もって衣服の全部又は一部を着けない児童の姿態であって、殊更に児童の性的な部位が露出され又は強調されているものであり、かつ、性欲を興奮させ又は刺激するものを視覚により認識することができる方法により描写した電磁的記録に係る記録媒体である児童ポルノを製造し
第2 同年8月5日午前11時35分頃から同日午前11時45分頃までの間、●●●に駐車中の普通乗用自動車内において、専ら自己の性的欲望を満足させる目的で、前記●●●(当時13歳)に対し、その陰茎を手淫し、もって少年に対し、みだらな性行為をし
たものである。
  罪名及び罰条
第1 児童買春、児童ポルノに係る行為等の規制及び処罰並びに児童の保護等に関する法律違反
  同法第7条第4項、第2条第3項第3号
第2 長崎県少年保護育成条例違反
  同条例第22条第1項第1号、第16条第1項

経営者とタレントの児童淫行罪 懲役2年執行猶予5年(東京地裁h28.1.8)

判例番号】 L07130019
       児童福祉法違反被告事件
東京地方裁判所判決平成28年1月8日
【判示事項】 被告人がその経営する会社にタレントとして所属していた被害児童に,その指導者としての立場を利用して性行為をさせた事案につき,裁判所は,卑劣な,かつ悪質な犯行であるとしたうえで,被告人に有利に酌むべき事情も考慮し、被告人を懲役2年(執行猶予5年)に処した事例
【掲載誌】  LLI/DB 判例秘書登載

       主   文

 被告人を懲役2年に処する。
 未決勾留日数中30日をその刑に算入する。
 この裁判が確定した日から5年間その刑の執行を猶予する。
 訴訟費用は被告人の負担とする。

       理   由

(罪となるべき事実)
 被告人は,タレントのマネージメント等を行う会社の代表取締役であった者であり,タレントを目指していたAに対し,前記会社の所属タレントとしてグラビアDVDに出演することを持ちかけた上,芸能界での活動について助言や指導をしていたものであるが,同児童が18歳に満たない児童であることを知りながら,前記立場を利用し,平成26年9月下旬頃から同年10月上旬ころまでの間に,東京都目黒区(以下略)において,同児童をして自己を相手に性交させ,もって児童に淫行させる行為をしたものである。
(証拠の標目)
(法令の適用)
罰条        児童福祉法60条1項,34条1項6号
刑種の選択     所定刑中懲役刑を選択
未決勾留日数の算入 刑法21条
刑の執行猶予    刑法25条1項
訴訟費用(負担)  刑事訴訟法181条1項本文
(量刑の理由)
 本件は,被告人がその経営する会社にタレントとして所属していた被害児童に,その指導者としての立場を利用して性行為をさせた事案であり,被告人の指示に事実上従うほかなかった被害児童の弱い立場につけこんだ卑劣な犯行というほかなく,同児童の健全な育成を阻害しかねない非常に悪質なものである。被告人は,やや古い前科とはいえ,平成12年8月に,アダルトビデオ出演を拒否した未成年の女性から金員を喝取したとの内容の恐喝罪により,懲役2年6月・5年間執行猶予に処せられたほか,平成18年7月には18歳未満の女子に対しみだらな性行為をしたとの条例違反罪により罰金30万円に処せられた前科を有しながら本件犯行に及んでおり,被告人はその遵法精神があまりに不十分といわざるを得ず,未成年の女性を相手とする犯罪への性向も窺われることも考慮すると,本件類似の再犯に及ぶ可能性も一定程度危惧せざるを得ない。そうすると,被告人の負うべき責任は到底軽視できるものではない。
 他方,被告人は当公判廷において本件犯行を認め,被害児童に対する被害弁償等は尽くされていないものの,被害弁償金を準備するなどして反省の弁を述べていること,被告人には前記の前科があるものの,本件犯行は,前記執行猶予前科の猶予期間満了後9年が経過した後の犯行であることのほか,被告人の内妻が今後の被告人の指導監督を誓約していること等,被告人に有利に酌むべき事情も認められる。
 そこで,これらの事情も考慮した上で,被告人に対しては主文掲記の刑に処した上,今回に限ってその刑を5年間猶予することとする。
(求刑 懲役2年)
  平成28年1月8日
    東京地方裁判所刑事第10部
           裁判官  高森宣裕

 侵入して、窃盗・強制わいせつ(176条後段)・姿態をとらせて製造した事 案について、侵入罪と各罪が牽連犯になるとして、かすがい現象により科刑上 一罪とした事例(福山支部r4.10.25)

 侵入して、窃盗・強制わいせつ(176条後段)・姿態をとらせて製造した事
案について、侵入罪と各罪が牽連犯になるとして、かすがい現象により科刑上
一罪とした事例(福山支部r4.10.25)
 検察官は、強制わいせつ罪(176条後段)と製造罪が観念的競合になると主
張したようです。
 侵入罪と強制わいせつ罪(176条後段)が牽連犯になるという最高裁判例
ありません。侵入罪と製造罪が牽連犯になるという最高裁判例もありません。

広島地方裁判所福山支部令和04年10月25日
 上記の者に対する住居侵入、窃盗、強制わいせつ、児童買春、児童ポルノ
係る行為等の規制及び処罰並びに児童の保護等に関する法律違反被告事件につ
いて、当裁判所は、検察官清水壮一及び弁護人上野彰大各出席の上審理し、次
のとおり判決する。

理由
(罪となるべき事実)
 被告人は、
第1(令和4年8月31日付け起訴状記載の公訴事実)
  令和4年5月31日午前9時ころから同日午後4時20分ころまでの間
に、広島県(以下略)C方敷地内において、同所に干されていたC外1名が所
有するブラジャー1枚等6点(時価合計約4000円相当)を窃取し、
第2(令和4年7月29日付け起訴状記載の公訴事実)
 1 正当な理由がないのに、令和4年6月16日午前1時43分ころ、別紙
記載の犯行場所に無施錠の玄関から侵入し、
 2 そのころから同日午前2時03分ころまでの間に、同所において、
  (1) 別紙記載のBが所有するブラジャー1枚(時価約500円相当)
を窃取し、
  (2) 別紙記載のAが13歳未満の者であることを知りながら、同人に
対し、その上衣をまくり上げて胸部を露出して自己が使用する撮影機能付き携
帯電話機で撮影し、もって、13歳未満の者に対してわいせつな行為をし、
  (3) 別紙記載のAが18歳に満たない児童であることを知りながら、
同人の上衣をまくり上げて胸部を露出する姿態をとらせ、これを自己が使用す
る撮影機能付き携帯電話機で撮影し、その静止画データ1点を携帯電話機本体
の内蔵記録装置に記録させて保存し、もって、衣服の全部又は一部を着けない
児童の姿態であって、殊更に児童の性的な部位が露出され又は強調されている
ものであり、かつ、性欲を興奮させ又は刺激するものを視覚により認識するこ
とができる方法により電磁的記録に係る記録媒体に描写した児童ポルノを製造
したものである。
 (法令の適用)
 被告人の判示第1の所為は刑法235条に該当し、判示第2の1の所為は同
法130条前段に該当し、判示第2の2(1)の所為は同法235条に該当
し、判示第2の2(2)の所為は同法176条後段に該当し、判示第2の2
(3)の所為は児童買春、児童ポルノに係る行為等の規制及び処罰並びに児童
の保護等に関する法律7条4項、2項、2条3項3号に該当する。
 判示第2の1と判示第2の2(1)、(2)及び(3)との間にはそれぞれ
手段結果の関係があるので、刑法54条1項後段、10条により結局以上を1
罪として最も重い判示第2の2(2)の罪の刑で処断する(判示第2の2
(2)及び(3)の罪数評価について、検察官は、観念的競合(刑法54条1
項前段)と主張するが、判示第2の2(2)の本質的な部分は上衣をまくりあ
げて胸部を露出することにあるのに対し、判示第2の2(3)の本質的な部分
は撮影行為にあり、社会的見解上一個のものと評価することはできないから、
別罪と認定した。)。
 判示第1の罪について懲役刑を選択する。
 以上は刑法45条前段の併合罪であるから、同法47条本文、10条により
犯情の重い判示第2の2(2)の罪の刑に法定の加重をした刑期の範囲内で被
告人を懲役2年に処する。
 情状により刑法25条1項を適用してこの裁判が確定した日から4年間その
刑の執行を猶予する。
 訴訟費用は刑事訴訟法181条1項ただし書を適用して被告人に負担させな
い。
 (裁判官 松田克之)

駅や電車内において、女子児童のスカート内を盗撮する行為は、児童買舂等処罰法に規定する「盗撮による児童ポルノ製造罪」違反として立件できるかについて述べなさい。

駅や電車内において、女子児童のスカート内を盗撮する行為は、児童買舂等処罰法に規定する「盗撮による児童ポルノ製造罪」違反として立件できるかについて述べなさい。
 警察の資料は判然としないが、
 「衣服の全部又は一部を着けない」の要件の問題になって、社会通念で判断されるとされていているから、普通に下着を履いてスカートをはいている児童の姿態は、「衣服の全部を着けている児童の姿態」になるので、児童ポルノに該当しない。
 普通の着方ではない場合(パンツ履いてない・スカート捲った)は、児童ポルノに該当する可能性が出てくる。

森山野田「よくわかる改正児童買春ポルノ法」
「衣服の全部又は一部を着けない児童の姿態」 とは、社会通念上衣服と認められる物を全く着用していないか、又は衣服の一部を着用していない状態の児輩の姿態をいいます。これに当たる具体的な例としては、全裸の状態や半裸の状態が考えられます。反対に、通常の水着を着用している場合には一般的にはこれに当たらないと考えられます。

児童買春、児童ポルノに係る行為等の規制及び処罰並びに児童の保護等に関する法律(H26改正後)第2条
3この法律において「児童ポルノ」とは、写真、電磁的記録(電子的方式、磁気的方式その他人の知覚によっては認識することができない方式で作られる記録であって、電子計算機による情報処理の用に供されるものをいう。以下同じ。)に係る記録媒体その他の物であって、次の各号のいずれかに掲げる児童の姿態を視覚により認識することができる方法により描写したものをいう。
三 衣服の全部又は一部を着けない児童の姿態であって、殊更に児童の性的な部位(性器等若しくはその周辺部、臀でん部又は胸部をいう。)が露出され又は強調されているものであり、かつ、性欲を興奮させ又は刺激するもの

top2015年03月号
p145

駅や電車内において、女子児童のスカート内を盗撮する行為は、児童買舂等処罰法に規定する「盗撮による児童ポルノ製造罪」違反として立件できるかについて述べなさい。
ポイント
公共の場所又は公共の乗り物における盗撮については、原則として「盗撮による児菫ポルノ製造罪」の適用が困難と考えられ、人が通常衣服を着けない場所で、かつ、専ら児菫のみが利用する場所における盗撮であれば、適用を検討すべきであると考えられる。
「盗撮による児菫ポルノ製造罪」の可否
(1) 「盗撮による児童ポルノ製造罪」の可否
「盗撮による児童ポルノ製造罪」の立件は慎重に判断されるべきである。
(2) 理由
設問のような場合、スカートの構造上、下からスカート内を盗撮すれば下着が直接撮影されるため、下着が見えるという意味で「衣服の一部を着けない」状態となり、3号ポルノに該当し得る場合があるとされている。
しかしながら、実際はスカートを着用しているため、盗撮による児童ポルノ製造罪の立件は慎重に判断されるべきである。

警察公論2014/12 p62
所長
しかし. 盗撮の現行犯を取り扱った場合は注意する必要があるぞ。迷惑防止条例違反で現行犯逮捕した者が盗撮に用いたスマホ等の中身を確認した際,その中に.明らかに児童の裸の写真があった場合は, 撮影の対象者の特定と撮影の日時・場所を追及していくことによって, 上記③の児童ポルノ所持・電磁的記録の保管罪や④の盗撮による児童ポルノ製造罪が成立する可能性があるぞ。
立花巡査
でも所長、例えば公共の場所・乗物でスカート内を撮影した場合は盗撮による児童ポルノ製造罪は成立するのですか?
所長
いいところに気付いたな!
スカート内を盗撮すれば下着が直接撮影されるため, 下着が直接見えるという意味で「衣服の一部を着けない状態となり,児童ポルノ(法2条3項3号)に該当し得る場合があるとされているが, 実際は.スカー卜を着用している状態であることから,盗撮による児童ポルノの製造罪の適用は慎重に判断しなければならない。
つまり,盗撮による児童ポルノの製造罪を適用するには,
  児童であることの年齢知情
  児童ポルノの該当性
  児童ポルノ製造の故意
の立証が不可欠であるところ特に私人による逮捕の場合,これらを直ちに判断するのは困難であるので,盗撮事犯を取り扱ったときは,まず,迷惑防止条例の適用を検討し,あとは,専務員の判断に委ねるのがいいだろう。

最近の刑法各論の教科書における「わいせつな行為」

また「わいせつとは、いたずらに性欲を興奮または刺激させ、かつ普通人の正常な性的羞恥心を害し、善良な性的道義観念に反するものをいう。」に戻ってきたのかなあ

 

佐久間ら刑法基本講義総論各論第3版補訂版 「わいせつ」概念の違い
強制わいせつ罪の「わいせつな行為」とは, 行為者の性欲を満足させる意図の下に, 客観的にみて性欲を刺激・興奮させ, かつ,普通人の正常な性的差恥心を害して,善良な性的道徳観念に反する行為である(名古屋高金沢支判昭和36 . 5 .2下刑集3巻5=6号399頁)。具体的には,無理矢理に被害者を抱きしめたり,相手方の乳房をつかんだり,被害者の陰部に触れる行為などが挙げられる(大判大正7 . 8 . 20刑録24輯]203頁)
大塚ら基本刑法Ⅱ各論第3版 「わいせつな行為」とは、徒に性欲を興奮または刺激せしめ、かつ普通人の正常な性的差恥心を害し、善良な性的道義観念に反する行為をいう(下線、)。例えば、無理やりキスしたり、陰部に手を触れたり、裸にして写真を撮ったりすることである。
山中敬一山中純子刑法概説Ⅱ各論第二版 わいせつ行為とは、いたずらに性欲を興奮・刺激させ、かつ、普通人の正常な性的蓋恥心を害し、善良な性的道徳観念に反する行為をいう。性的に未熟な児童に対して客観的にわいせつと感じられるような行為をすれば、これにあたる。
松宮孝明ハイブリッド刑法各論3版 そもそも本罪は,個人の性的自由ないしは性的自己決定を保護するものですから「わいせつな行為」についても,社会的な意味での性的道徳ではなく,個人の性的自由の侵害という面から構成すべきとする考え方が, 有力となっています。
本庄ら ベイシス刑法各論  平成29年判例では、依然として強制わいせつにおける「わいせつ」概念の
定義は示されなかったものの、「わいせつな行為」の判断方法が提示された。
①行為そのものが持つ性的性質が明確な類型の具体例としては、性交類似行為(手淫や異物の挿入など)や、医療に随伴しない性的部位(乳房や陰部など)への接触行為といった、行為それ自体でわいせつ性を認定できる行為が挙げられる。
これに対して、②行為そのものが持つ性的性質が不明確な類型の具体例としては、幼児の裸の写真を撮影する行為やキスする行為、医療に随伴する性的部位への接触行為が挙げられる。これらは、例えば、家族が記念撮影として行ったり、挨拶としてキスしたり、正当な触診として行われたりする場合もあれば、児童ポルノを製造する目的や、わいせつ目的で行われることもある。したがって、わいせつ性を認定するためには行為に付随する状況や、行為者の主観的事情をも考慮することが必要となる。その意味で、従来は傾向犯における傾向と解されてきた行為者の性的意図は、②類型のわいせつ性を認定するための考慮要素の一つにすぎない。

20歳未満の者に酒類を提供したとされる事案において、被告人Y2及びAは いずれも酒類を提供した当時、前記Bら及びCらが20歳未満であることを認 識していたと認めるに足りる証拠はないとして被告会社及び被告人Y2に無罪 が言い渡された事例(岐阜簡裁r4.3.23)

20歳未満の者に酒類を提供したとされる事案において、被告人Y2及びAは
いずれも酒類を提供した当時、前記Bら及びCらが20歳未満であることを認
識していたと認めるに足りる証拠はないとして被告会社及び被告人Y2に無罪
が言い渡された事例(岐阜簡裁r4.3.23)

 風営法50条1項4号の罪は故意犯です。
 裸にもならないので、「当時の髪型や服装、背格好において、同人らが明ら
かに20歳未満であることをうかがわせる点は見当たらない(甲14、17、
20)。また、Bらを代表して被告人Y2と応対したのはEであると考えられ
るところ、新型コロナウイルス感染拡大防止のために、同人がマスクをしてい
た可能性もあり(B・12頁)、同人の顔立ちから得られる情報量は少なかっ
たと考えられる。」などで評価されるようです。

風俗営業等の規制及び業務の適正化等に関する法律
第二二条(禁止行為等)
1 風俗営業を営む者は、次に掲げる行為をしてはならない。
六 営業所で二十歳未満の者に酒類又はたばこを提供すること。

第五〇条
1 次の各号のいずれかに該当する者は、一年以下の拘禁刑若しくは百万円以
下の罰金に処し、又はこれを併科する。
四 第二十二条第一項第三号の規定又は同項第四号から第六号まで(これらの
規定を第三十一条の二十三及び第三十二条第三項において準用する場合を含
む。)の規定に違反した者
2第二十二条第一項第三号若しくは第四号(第三十一条の二十三及び第三十二
条第三項において準用する場合を含む。)、第二十八条第十二項第三号、第三
十一条の三第三項第一号、第三十一条の十三第二項第三号若しくは第四号又は
第三十一条の十八第二項第一号に掲げる行為をした者は、当該十八歳未満の者
の年齢を知らないことを理由として、前項の規定による処罰を免れることがで
きない。ただし、過失のないときは、この限りでない。〔本条改正の施行は、
令四法六八施行日〕

判例番号】 L07760001

       風俗営業等の規制及び業務の適正化等に関する法律違反被告
事件

【事件番号】 岐阜簡易裁判所判決/令和3年(ろ)第1号、令和3年
(ろ)第2号
【判決日付】 令和4年3月23日
       主   文

 被告人Y1株式会社及び同Y2は、いずれも無罪。
       理   由

第1 本件公訴事実の要旨等
 1 本件公訴事実の要旨は、「被告人Y1株式会社(以下「被告会社」とい
う。)は、滋賀県湖南市(以下略)に本店を置き、岐阜市保健所長から飲食店
営業の許可を受け、岐阜市(以下略)において、飲食店「△△」を営むもの、
被告人Y2は同店の店長、Aは同店の従業員であるが、①被告人Y2は、被告
会社の営業に関し、令和2年10月10日午後7時頃から同日午後9時3分頃
までの間、同店において、客であるB(当時17歳)ほか2名がいずれも20
歳未満の者であることを知りながら、同人らに酒類であるサワーを提供し、②
前記Aは、被告会社の営業に関し、同日午後7時14分頃から同日午後8時1
4分頃までの間、同店において、客であるC(当時18歳)ほか1名がいずれ
も20歳未満の者であることを知りながら、同人らに酒類であるサワーを提供
し、もって営業所で20歳未満の者に酒類を提供した」というものである。
 2 証拠によれば、被告人Y2及びAが、公訴事実記載の日時に、被告会社
の営業として、その営業所で、被告人Y2においては、B(当時17歳0か
月)、D(当時19歳1か月)、E(当時18歳8か月)、F及びGを座席に
案内した際、B、D及びEから、Aにおいては、C(当時18歳9か月)及び
H(当時18歳4か月)を座席に案内した際、両名から、いずれもレモンサワ
ー飲み放題の注文を受け、各テーブルに備付けのサーバーからレモンサワーを
ジョッキに注げる状態にして、酒類を提供した事実が認められる。
   被告人Y2及びAはいずれも、酒類を提供した当時、前記Bら又はCら
が20歳未満であることを知らず、また20歳未満であるかもしれないことも
認識していなかった旨供述する。弁護人は、風俗営業等の規制及び業務の適正
化等に関する法律(以下「風営法」という。)50条1項4号及び56条の規
定(同法32条3項により準用される場合に限る。)は、憲法31条に違反す
るなどとして、公訴棄却の判決又は決定を求めるとともに、被告人らの供述に
従い、実行行為者にいずれも故意が欠けるから、被告会社及び被告人Y2につ
き、いずれも無罪である旨主張している。
第2 公訴棄却の主張について
  弁護人は、風営法50条1項4号及び56条のうち、飲食店営業を営む者
に対して罰則を定める部分は、未成年者飲酒禁止法3条1項、1条2項との刑
罰の均衡を欠くもので、適正手続を定めた憲法31条に違反するなどと主張す
る。しかし、少年の健全育成等という重要な法益保護のため、未成年者飲酒禁
止法で捕捉できない行為も含め処罰対象とする必要から、風営法50条1項4
号、56条、32条3項、22条1項6号の各規定が定められたと考えられる
ところ、その刑罰の重さ等に照らしても、同条項が憲法31条に抵触するもの
でないことは明らかである。その余の弁護人の主張を検討しても、本件公訴を
棄却すべき事情は何ら認められない。
第3 被告人Y2の酒類提供について(公訴事実①)
 1 検察官は、(ア)酒類を提供した客であるB、D及びEは、当時17歳
から19歳の未成年であり(甲12、15、18)、年齢相応の容貌をしてい
ること(甲14、17、20)、(イ)被告人Y2は、令和2年10月10
日、同月23日及び同年11月5日の各取調べ時に、Bらが未成年かもしれな
いと思いながら酒類を提供した旨警察官である証人I又は同Jに供述したこと
(証人I、同J、乙5、6、10。他方、被告人Y2は、そのような発言をし
ていない旨供述する(被告人Y2・8頁等)。)に照らせば、被告人Y2は、
Bらから酒類の注文を受け、提供した際、同人らが未成年であるかもしれない
と認識していたと考えられる旨主張する。
 2 しかし、B、D及びEらの当時の髪型や服装、背格好において、同人ら
が明らかに20歳未満であることをうかがわせる点は見当たらない(甲14、
17、20)。また、Bらを代表して被告人Y2と応対したのはEであると考
えられるところ、新型コロナウイルス感染拡大防止のために、同人がマスクを
していた可能性もあり(B・12頁)、同人の顔立ちから得られる情報量は少
なかったと考えられる。
   その上で、被告人Y2は、Eらが未成年である可能性も考えて、Eに、
その来店時、未成年の方にはお酒を提供できない旨告げ、さらにタブレット
末が配備されていない座席に案内した後、タブレット端末の未成年や運転手で
ないことの確認ボタンの代わりとして、未成年や運転手の方にはお酒を提供で
きない旨を告げたところ、Eは、いずれも「大丈夫です」と答えた。マスクを
するなどしているEらにつき、なおも20歳未満であることを疑うべき契機は
証拠上うかがえず、被告人Y2が、この返答をもってEらが20歳以上である
と考えたとしても何ら不思議でない。このことは、Bがマスクをしていなかっ
た場合も同様である(B・12頁)。Bの顔立ちに、同人が20歳未満である
ことを疑うべき契機は見当たらない。
   検察官は、「大丈夫」という返答が多義的であり、これをもって見た目
から抱くべき未成年者が含まれているかもしれないという疑念を払拭するに足
りない旨主張する。しかし、Eらは、「大丈夫」と返答した上で酒類を注文し
ているのであって、同返答は未成年や運転手ではないことを意味すると解する
ほかない。20歳未満であることが明白とはいえないBらにつき、さらに同人
らが嘘をついている可能性を想起してしかるべきとまでは認められない。検察
官の前記主張は採用できない。
   また、検察官は、被告人Y2は公判で、当初、Eの「大丈夫」という返
答を「未成年ではないから大丈夫」という意味と捉えた旨供述しておきなが
ら、その後に「未成年だがお酒を飲まないから大丈夫」という意味も含まれて
いたと捉えた旨供述を変えた点を指摘する。しかし、被告人Y2の供述が曖昧
であることを前記客観証拠の推認力を高める事情とすることはできない。確か
に被告人Y2の前記供述はその趣旨が判然としないが、Bら5名のうちお酒を
注文していない者もおり、その者が未成年である可能性を認識していたことを
意味するとすれば、酒類の提供を受けたBらが20歳以上であると認識してい
たことと必ずしも矛盾するものではない。
 3 そして、前記乙第5、6及び10号証(以下「本件自白調書」とい
う。)ならびに被告人が本件自白調書の内容のとおり供述した旨の証人I及び
同Jの証言は、その内容やその後の捜査経過等に照らして信用しがたい。
   すなわち、本件自白調書は、被告人Y2がBらを案内してから酒類を提
供するに至るまでの経過や時間帯等について記載されたものであるが、Bらが
未成年であることの認識に係る自白部分は、「見た目が若そうだから未成年で
はないかと思った」と記載されているのみで、5人いる中の誰のどのような見
た目かについては一切触れられていない。本件で、Bらが未成年であること、
酒類を提供したこと自体は客観的裏付けも容易で、さらに補充して捜査すべき
主たる部分は、被告人Y2が、Bらが20歳未満であると認識していたか否か
のみであるのは明白である。そのような中で、前記のような抽象的で曖昧な自
白を得たのであれば、その真意を確認するため、そのような認識を抱いた具体
的根拠等につき必要な聴取や補充・裏付捜査が行われてしかるべきと思われ
る。しかし、そのような言及があったことを前提にした補充・裏付捜査がされ
た形跡はない。これらを踏まえると、本件自白調書の内容が前記のような抽象
的で曖昧な表現のみにとどまることは、被告人Y2がそのような供述をしたこ
とに疑念を抱かせるに足るものといえる。
   もっとも、本件自白調書には、新型コロナウイルス感染拡大の影響によ
り△△の売上が下がっており、Bらが未成年ではないかと思ったが、身分証の
提示を求めて気分を害されることを憂慮し、少しでも売上を上げるために身分
証の提示を求めずに酒類を提供したというもっともらしい記載もあるほか、被
告人Y2がそれぞれ何ら訂正を求めることなく署名押印しているなど、信用性
を補強しうる事情も存在する。しかし、前者については、当時の社会情勢に照
らせば容易に思い付くことができる動機といえ、この記載をもって、被告人Y
2が取調時そのとおり供述したと認めることはできない。また、後者について
も、被告人Y2が、取調時、犯罪の成立には故意が必要であるとの知識がな
く、悪いことをしてしまった負い目から十分内容を確認せずに署名押印してし
まった可能性も否定できない。いずれも、Bらが未成年かもしれないと思った
とは話していない旨の被告人Y2供述の信用性を排斥するに足りない。
   むしろ、被告人Y2は、本件発覚の契機となった、CとBの店内での喧
嘩につき、自ら警察に通報している(被告人Y2・5頁)。自身が20歳未満
の者への酒類提供という犯罪をしたことを認識していたとすれば、その発覚を
恐れ、通報をためらうのが通常といえるが、通報に躊躇した様子はみられな
い。このことは、被告人Y2が、Bらが20歳未満であるかもしれないと認識
していなかったことに沿う事実といえる。
   これらを踏まえると、Bらが未成年かもしれないと思ったとは話してい
ない旨の被告人Y2の供述の信用性を排斥しきれないから、証人I及び同Jの
証言並びに本件自白調書は信用できないといわざるを得ない。
 4 以上を踏まえると、結局客観証拠によっても、被告人Y2が故意を有し
ていたと認めることはできず、これは本件自白調書の存在を考慮しても同様と
いうべきである。
第4 従業員Aの酒類提供について(公訴事実②)
 1 検察官は、(ア)酒類を提供した客であるC及びHは、いずれも当時1
8歳の未成年であり(甲21、24)、年齢相応の容貌をしていること(甲2
3、26)、(イ)Cはこれまでも飲食店でお酒を注文したが、未成年である
ことを理由に断られたことも複数回あり、未成年に見られることが多かったこ
と(C・3、4頁)に照らせば、Aは、Cらから酒類の注文を受け、提供した
際、同人らが未成年であるかもしれないと認識していたと考えられる旨主張す
る。
 2 しかし、C及びHの当時の髪型や服装、背格好において、両名が明らか
に20歳未満であることをうかがわせる点は見当たらない(甲23、26)。
また、Cの顔立ちには若干幼さがみられるが、当時両名が、新型コロナウイル
ス感染拡大防止のためにマスクをしていた(C・21、22頁)ことを踏まえ
ると、その判断の基礎となるのは目や輪郭等のみとなる。このようなわずかな
情報のみから、両名が20歳未満であることを疑うことが可能であったとはい
い切れない。さらに、両名は、お酒を注文するに当たり、タブレット端末で未
成年や運転手でないことの確認ボタンを押している(弁3)。その際等の両名
の態度や言動等次第では、Aが、Cらを20歳以上であると判断した可能性を
排除しきれないというべきである。だからこそ、Cは、他店で20歳未満と見
られることもあれば、20歳以上であるなどと判断されて飲酒できたこともあ
ると考えられる。検察官の主張を総合しても、Aが、当時、Cらが20歳未満
であるかもしれないと認識していたことを推認するに足りない。
第4 結論
   以上によれば、被告人Y2及びAにつき、いずれも故意を認めることが
できず、本件公訴事実につき犯罪の証明がないことになるので、刑事訴訟法
36条により被告会社及び被告人Y2に対し、いずれも無罪の言渡しをする。
(求刑 被告会社につき罰金50万円、被告人Y2につき罰金30万円)
(検察官曽我部誉広、弁護人中島晃(被告会社の関係で主任弁護人)及び同喜
久山大貴(被告人Y2の関係で主任弁護人)(いずれも被告人両名)各出席)
  令和4年3月23日岐阜簡易裁判所
           裁判官  守屋尚志

幼児を触って撮るという行為について、強制わいせつ罪(176条後段)と製造罪の観念的競合にしたり(判示第1)、併合罪にしたりしている(判示第2第3)事例(沼津支部r05.2.3)

幼児を触って撮るという行為について、強制わいせつ罪(176条後段)と製造罪の観念的競合にしたり(判示第1)、併合罪にしたりしている(判示第2第3)事例(沼津支部r05.2.3)
 分析すると、脱がせて触って撮るのは併合罪、脱がせて撮るのは観念的競合になっています。
 脱がせて触らないで撮るのは2個の行為だという高裁判例はいくつかあるから、
  福岡高裁 H26.10.15
  東京高裁 H22.12.7
併合罪に揃えてもらえば、判示第1、第4、第17、第21ないし第23及び第26は単一性を欠くから公訴棄却になるはずですよね

 

判示第 起訴日 公訴事実 被害者 犯行日 罪となるべき事実 罪名
2 R4.7.21 1 a R4.6.7 第2 別紙記載の被害者A(当時4歳)が13歳未満の者であることを知りながら、同人にわいせつな行為をしようと考え、同日午後4時58分頃、前記保育園3階トイレ個室内において、前記Aに対し、その着衣をずらして同人の陰部、臀部等を露出させ、その臀部を直接手で触るとともに、これらを前記スマートフォンで動画撮影し、もって13歳未満の者に対し、わいせつな行為をし(令和4年7月21日付け起訴状第1)、 強制わいせつ罪
3 R4.7.21 2 a R4.6.7 第3 前記Aが18歳に満たない児童であることを知りながら、前記第2記載の日時場所において、前記第2記載のとおり、同児童にその陰部、臀部等が露出した姿態をとらせ、これらを前記スマートフォンで動画撮影し、その動画データ1点を同スマートフォンに装着したSDカードに記録させて保存し、もって衣服の全部又は一部を着けない児童の姿態であって、殊更に児童の性的な部位が露出され又は強調されているものであり、かつ、性欲を興奮させ又は刺激するものを視覚により認識することができる方法により描写した電磁的記録に係る記録媒体である児童ポルノを製造し(令和4年7月21日付け起訴状第2)、 製造罪
22 R4.7.21 3 b R4.6.27 第22 別紙記載の被害者B(当時4歳)が13歳未満の者であることを知りながら、同人にわいせつな行為をしようと考え、同日午後4時54分頃、前記保育園1階トイレ内において、前記Bに対し、その着衣をずらして同人の陰部、臀部等を露出させ、これらを前記スマートフォンで動画撮影し、その動画データ1点を同スマートフォンに装着したSDカードに記録させて保存し、もって13歳未満の者に対し、わいせつな行為をするとともに、衣服の全部又は一部を着けない児童の姿態であって、殊更に児童の性的な部位が露出され又は強調されているものであり、かつ、性欲を興奮させ又は刺激するものを視覚により認識することができる方法により描写した電磁的記録に係る記録媒体である児童ポルノを製造し(令和4年7月21日付け起訴状第3)、 強制わいせつ罪(176条後段)+製造罪
5 R4.8.4 1 R4.6.10 第5 別紙記載の被害者C(当時3歳)が13歳未満の者であることを知りながら、同人にわいせつな行為をしようと考え、同日午後2時13分頃、前記保育園3階保育室内において、前記Cに対し、その着衣をずらして同人の陰部を露出させ、その陰部を直接手で触るとともに、これを前記スマートフォンで動画撮影し、もって13歳未満の者に対し、わいせつな行為をし(令和4年8月4日付け起訴状第1)、 強制わいせつ罪
6 R4.8.4 2 R4.6.10 第6 前記Cが18歳に満たない児童であることを知りながら、前記第5記載の日時場所において、前記第5記載のとおり、同児童にその陰部が露出した姿態をとらせ、これを前記スマートフォンで動画撮影し、その動画データ1点を同スマートフォンに装着したSDカードに記録させて保存し、もって衣服の全部又は一部を着けない児童の姿態であって、殊更に児童の性的な部位が露出され又は強調されているものであり、かつ、性欲を興奮させ又は刺激するものを視覚により認識することができる方法により描写した電磁的記録に係る記録媒体である児童ポルノを製造し(令和4年8月4日付け起訴状第2)、 製造罪
13 R4.8.4 3 d R4.6.13 第13 別紙記載の被害者D(当時5歳)が13歳未満の者であることを知りながら、同人にわいせつな行為をしようと考え、同日午後4時18分頃、前記保育園1階トイレ内において、前記Dに対し、その着衣をずらして同人の陰部、臀部等を露出させ、その陰部及び臀部を直接手で触るとともに、これらを前記スマートフォンで動画撮影し、もって13歳未満の者に対し、わいせつな行為をし(令和4年8月4日付け起訴状第3)、 強制わいせつ罪
14 R4.8.4 4 d R4.6.13 第14 前記Dが18歳に満たない児童であることを知りながら、前記第13記載の日時場所において、前記第13記載のとおり、同児童にその陰部、臀部等が露出した姿態をとらせ、これらを前記スマートフォンで動画撮影し、その動画データ1点を同スマートフォンに装着したSDカードに記録させて保存し、もって衣服の全部又は一部を着けない児童の姿態であって、殊更に児童の性的な部位が露出され又は強調されているものであり、かつ、性欲を興奮させ又は刺激するものを視覚により認識することができる方法により描写した電磁的記録に係る記録媒体である児童ポルノを製造し(令和4年8月4日付け起訴状第4)、 製造罪
7 R4.9.29 1 R4.6.10 第7 別紙記載の被害者E(当時3歳)が13歳未満の者であることを知りながら、同人にわいせつな行為をしようと考え、同日午後2時24分頃、前記保育園3階保育室内において、前記Eに対し、その着衣をずらして同人の陰部を露出させ、その陰部を直接手で触るとともに、これを前記スマートフォンで動画撮影し、もって13歳未満の者に対し、わいせつな行為をし(令和4年9月29日付け起訴状第1)、 強制わいせつ罪
8 R4.9.29 2 e R4.6.10 第8 前記Eが18歳に満たない児童であることを知りながら、前記第7記載の日時場所において、前記第7記載のとおり、同児童にその陰部が露出した姿態をとらせ、これを前記スマートフォンで動画撮影し、その動画データ1点を同スマートフォンに装着したSDカードに記録させて保存し、もって衣服の全部又は一部を着けない児童の姿態であって、殊更に児童の性的な部位が露出され又は強調されているものであり、かつ、性欲を興奮させ又は刺激するものを視覚により認識することができる方法により描写した電磁的記録に係る記録媒体である児童ポルノを製造し(令和4年9月29日付け起訴状第2)、 製造罪
9 R4.9.29 3 f R4.6.10 第9 別紙記載の被害者F(当時3歳)が13歳未満の者であることを知りながら、同人にわいせつな行為をしようと考え、同日午後2時37分頃、前記保育園3階保育室内において、前記Fに対し、その着衣をずらして同人の臀部を露出させ、その臀部を直接手で触るとともに、これを前記スマートフォンで動画撮影し、もって13歳未満の者に対し、わいせつな行為をし(令和4年9月29日付け起訴状第3)、 強制わいせつ罪
10 R4.9.29 4 f R4.6.10 第10 前記Fが18歳に満たない児童であることを知りながら、前記第9記載の日時場所において、前記第9記載のとおり、同児童にその臀部が露出した姿態をとらせ、これを前記スマートフォンで動画撮影し、その動画データ1点を同スマートフォンに装着したSDカードに記録させて保存し、もって衣服の全部又は一部を着けない児童の姿態であって、殊更に児童の性的な部位が露出され又は強調されているものであり、かつ、性欲を興奮させ又は刺激するものを視覚により認識することができる方法により描写した電磁的記録に係る記録媒体である児童ポルノを製造し(令和4年9月29日付け起訴状第4)、 製造罪
15 R4.9.29 5 R4.6.17 第15 別紙記載の被害者G(当時4歳)が13歳未満の者であることを知りながら、同人にわいせつな行為をしようと考え、同月17日午後2時40分頃、前記保育園3階トイレ内において、前記Gに対し、その着衣をずらして同人の陰部、臀部等を露出させ、その臀部を直接手で触るとともに、これらを前記スマートフォンで動画撮影し、もって13歳未満の者に対し、わいせつな行為をし(令和4年9月29日付け起訴状第5)、 強制わいせつ罪
16 R4.9.29 6 g R4.6.17 第16 前記Gが18歳に満たない児童であることを知りながら、前記第15記載の日時場所において、前記第15記載のとおり、同児童にその陰部、臀部等が露出した姿態をとらせ、これらを前記スマートフォンで動画撮影し、その動画データ1点を同スマートフォンに装着したSDカードに記録させて保存し、もって衣服の全部又は一部を着けない児童の姿態であって、殊更に児童の性的な部位が露出され又は強調されているものであり、かつ、性欲を興奮させ又は刺激するものを視覚により認識することができる方法により描写した電磁的記録に係る記録媒体である児童ポルノを製造し(令和4年9月29日付け起訴状第6)、 製造罪
24 R4.9.29 7 h R4.6.29 第24 別紙記載の被害者H(当時4歳)が13歳未満の者であることを知りながら、同人にわいせつな行為をしようと考え、同日午後5時36分頃、前記保育園3階トイレ内において、前記Hに対し、その着衣をずらして同人の陰部、臀部を露出させ、その陰部を直接手で触るとともに、これらを前記スマートフォンで動画撮影し、もって13歳未満の者に対し、わいせつな行為をし(令和4年9月29日付け起訴状第7)、 強制わいせつ罪
25 R4.9.29 8 h R4.6.29 第25 前記Hが18歳に満たない児童であることを知りながら、前記第24記載の日時場所において、前記第24記載のとおり、同児童にその陰部、臀部が露出した姿態をとらせ、これらを前記スマートフォンで動画撮影し、その動画データ1点を同スマートフォンに装着したSDカードに記録させて保存し、もって衣服の全部又は一部を着けない児童の姿態であって、殊更に児童の性的な部位が露出され又は強調されているものであり、かつ、性欲を興奮させ又は刺激するものを視覚により認識することができる方法により描写した電磁的記録に係る記録媒体である児童ポルノを製造し(令和4年9月29日付け起訴状第8)、 製造罪
26 R4.9.29 9 i R4.6.29 第26 別紙記載の被害者I(当時3歳)が13歳未満の者であることを知りながら、同人にわいせつな行為をしようと考え、前記第24記載の日時場所において、前記Iに対し、その着衣をずらして同人の陰部、臀部を露出させ、これらを前記スマートフォンで動画撮影し、その動画データ1点を同スマートフォンに装着したSDカードに記録させて保存し、もって13歳未満の者に対し、わいせつな行為をするとともに、衣服の全部又は一部を着けない児童の姿態であって、殊更に児童の性的な部位が露出され又は強調されているものであり、かつ、性欲を興奮させ又は刺激するものを視覚により認識することができる方法により描写した電磁的記録に係る記録媒体である児童ポルノを製造し(令和4年9月29日付け起訴状第9) 強制わいせつ罪(176条後段)+製造罪
1 R4.10.27 1 R4.6.7 第1 別紙記載の被害者J(当時4歳)が13歳未満の者であることを知りながら、同人にわいせつな行為をしようと考え、令和4年6月7日午後4時39分頃、別紙犯行場所記載の保育園1階トイレ内において、前記Jに対し、その着衣をずらして同人の陰部を露出させ、これを撮影機能付きスマートフォンで動画撮影し、その動画データ1点を同スマートフォンに装着したSDカードに記録させて保存し、もって13歳未満の者に対し、わいせつな行為をするとともに、衣服の全部又は一部を着けない児童の姿態であって、殊更に児童の性的な部位が露出され又は強調されているものであり、かつ、性欲を興奮させ又は刺激するものを視覚により認識することができる方法により描写した電磁的記録に係る記録媒体である児童ポルノを製造し(令和4年10月27日付け起訴状第1)、 強制わいせつ罪(176条後段)+製造罪
4 R4.10.27 2 R4.6.10 第4 別紙記載の被害者K(当時5歳)が13歳未満の者であることを知りながら、同人にわいせつな行為をしようと考え、同月10日午後0時44分頃、前記保育園1階男性職員休憩室内において、前記Kに対し、その着衣をずらして同人の陰部及び胸部を露出させ、これらを前記スマートフォンで動画撮影し、その動画データ1点を同スマートフォンに装着したSDカードに記録させて保存し、もって13歳未満の者に対し、わいせつな行為をするとともに、衣服の全部又は一部を着けない児童の姿態であって、殊更に児童の性的な部位が露出され又は強調されているものであり、かつ、性欲を興奮させ又は刺激するものを視覚により認識することができる方法により描写した電磁的記録に係る記録媒体である児童ポルノを製造し(令和4年10月27日付け起訴状第2)、 強制わいせつ罪(176条後段)+製造罪
11 R4.10.27 3 l R4.6.13 第11 別紙記載の被害者L(当時5歳)が13歳未満の者であることを知りながら、同人にわいせつな行為をしようと考え、同月13日午後2時43分頃、前記保育園3階トイレ内において、前記Lに対し、その着衣をずらして同人の陰部及び臀部を露出させ、その臀部を直接手で触るとともに、これらを前記スマートフォンで動画撮影し、もって13歳未満の者に対し、わいせつな行為をし(令和4年10月27日付け起訴状第3)、 強制わいせつ罪
12 R4.10.27 4 l R4.6.13 第12 前記Lが18歳に満たない児童であることを知りながら、前記第11記載の日時場所において、前記第11記載のとおり、同児童にその陰部及び臀部が露出した姿態をとらせ、これらを前記スマートフォンで動画撮影し、その動画データ1点を同スマートフォンに装着したSDカードに記録させて保存し、もって衣服の全部又は一部を着けない児童の姿態であって、殊更に児童の性的な部位が露出され又は強調されているものであり、かつ、性欲を興奮させ又は刺激するものを視覚により認識することができる方法により描写した電磁的記録に係る記録媒体である児童ポルノを製造し(令和4年10月27日付け起訴状第4)、 製造罪
21 R4.10.27 5 m R4.6.27 第21 別紙記載の被害者M(当時4歳)が13歳未満の者であることを知りながら、同人にわいせつな行為をしようと考え、同月27日午前8時32分頃、前記保育園1階トイレ内において、前記Mに対し、その着衣をずらして同人の陰部、臀部等を露出させ、これらを前記スマートフォンで動画撮影し、その動画データ1点を同スマートフォンに装着したSDカードに記録させて保存し、もって13歳未満の者に対し、わいせつな行為をするとともに、衣服の全部又は一部を着けない児童の姿態であって、殊更に児童の性的な部位が露出され又は強調されているものであり、かつ、性欲を興奮させ又は刺激するものを視覚により認識することができる方法により描写した電磁的記録に係る記録媒体である児童ポルノを製造し(令和4年10月27日付け起訴状第5)、 強制わいせつ罪(176条後段)+製造罪
23 R4.10.27 6 n R4.6.29 第23 別紙記載の被害者N(当時2歳)が13歳未満の者であることを知りながら、同人にわいせつな行為をしようと考え、同月29日午後3時12分頃、前記保育園2階保育室内において、前記Nに対し、その着衣をずらして同人の陰部を露出させ、これを前記スマートフォンで動画撮影し、その動画データ1点を同スマートフォンに装着したSDカードに記録させて保存し、もって13歳未満の者に対し、わいせつな行為をするとともに、衣服の全部又は一部を着けない児童の姿態であって、殊更に児童の性的な部位が露出され又は強調されているものであり、かつ、性欲を興奮させ又は刺激するものを視覚により認識することができる方法により描写した電磁的記録に係る記録媒体である児童ポルノを製造し(令和4年10月27日付け起訴状第6)、 強制わいせつ罪(176条後段)+製造罪
17 R4.11.16 1 R4.6.20 第17 別紙記載の被害者O(当時3歳)が13歳未満の者であることを知りながら、同人にわいせつな行為をしようと考え、同月20日午前10時5分頃、前記保育園3階廊下において、前記Oに対し、その着衣をずらして同人の陰部及び臀部を露出させ、これらを前記スマートフォンで動画撮影し、その動画データ1点を同スマートフォンに装着したSDカードに記録させて保存し、もって13歳未満の者に対し、わいせつな行為をするとともに、衣服の全部又は一部を着けない児童の姿態であって、殊更に児童の性的な部位が露出され又は強調されているものであり、かつ、性欲を興奮させ又は刺激するものを視覚により認識することができる方法により描写した電磁的記録に係る記録媒体である児童ポルノを製造し(令和4年11月16日付け起訴状第1)、 強制わいせつ罪(176条後段)+製造罪
18 R4.11.16 2 p R4.6.20 第18 別紙記載の被害者P(当時2歳)が18歳に満たない児童であることを知りながら、同月24日午後0時42分頃、前記保育園2階トイレ内において、同児童にその陰部が露出した姿態をとらせ、これを前記スマートフォンで動画撮影し、その動画データ1点を同スマートフォンに装着したSDカードに記録させて保存し、もって衣服の全部又は一部を着けない児童の姿態であって、殊更に児童の性的な部位が露出され又は強調されているものであり、かつ、性欲を興奮させ又は刺激するものを視覚により認識することができる方法により描写した電磁的記録に係る記録媒体である児童ポルノを製造し(令和4年11月16日付け起訴状第2)、 製造罪
19 R4.11.16 3 q R4.6.20 第19 別紙記載の被害者Q(当時2歳)が18歳に満たない児童であることを知りながら、同日午後0時45分頃、前記保育園2階トイレ内において、同児童にその陰部が露出した姿態をとらせ、これを前記スマートフォンで動画撮影し、その動画データ1点を同スマートフォンに装着したSDカードに記録させて保存し、もって衣服の全部又は一部を着けない児童の姿態であって、殊更に児童の性的な部位が露出され又は強調されているものであり、かつ、性欲を興奮させ又は刺激するものを視覚により認識することができる方法により描写した電磁的記録に係る記録媒体である児童ポルノを製造し(令和4年11月16日付け起訴状第3)、 製造罪
20 R4.11.16 4 r R4.6.20 第20 別紙記載の被害者R(当時3歳)が18歳に満たない児童であることを知りながら、同日午後0時46分頃、前記保育園2階トイレ内において、同児童にその陰部及び臀部が露出した姿態をとらせ、これらを前記スマートフォンで動画撮影し、その動画データ1点を同スマートフォンに装着したSDカードに記録させて保存し、もって衣服の全部又は一部を着けない児童の姿態であって、殊更に児童の性的な部位が露出され又は強調されているものであり、かつ、性欲を興奮させ又は刺激するものを視覚により認識することができる方法により描写した電磁的記録に係る記録媒体である児童ポルノを製造し(令和4年11月16日付け起訴状第4)、 製造罪

静岡地方裁判所沼津支部令和05年02月03日
 上記の者に対する強制わいせつ、児童買春、児童ポルノに係る行為等の規制及び処罰並びに児童の保護等に関する法律違反被告事件について、当裁判所は、検察官長谷川麻理、主任弁護人太田佳佑及び弁護人米田幸司(いずれも私選)各出席の上審理し、次のとおり判決する。

主文
被告人を懲役5年6月に処する。
未決勾留日数中70日をその刑に算入する。

理由
(罪となるべき事実)
 被告人は、
第1 別紙記載の被害者J(当時4歳)が13歳未満の者であることを知りながら、同人にわいせつな行為をしようと考え、令和4年6月7日午後4時39分頃、別紙犯行場所記載の保育園1階トイレ内において、前記Jに対し、その着衣をずらして同人の陰部を露出させ、これを撮影機能付きスマートフォンで動画撮影し、その動画データ1点を同スマートフォンに装着したSDカードに記録させて保存し、もって13歳未満の者に対し、わいせつな行為をするとともに、衣服の全部又は一部を着けない児童の姿態であって、殊更に児童の性的な部位が露出され又は強調されているものであり、かつ、性欲を興奮させ又は刺激するものを視覚により認識することができる方法により描写した電磁的記録に係る記録媒体である児童ポルノを製造し(令和4年10月27日付け起訴状第1)、
第2 別紙記載の被害者A(当時4歳)が13歳未満の者であることを知りながら、同人にわいせつな行為をしようと考え、同日午後4時58分頃、前記保育園3階トイレ個室内において、前記Aに対し、その着衣をずらして同人の陰部、臀部等を露出させ、その臀部を直接手で触るとともに、これらを前記スマートフォンで動画撮影し、もって13歳未満の者に対し、わいせつな行為をし(令和4年7月21日付け起訴状第1)、
第3 前記Aが18歳に満たない児童であることを知りながら、前記第2記載の日時場所において、前記第2記載のとおり、同児童にその陰部、臀部等が露出した姿態をとらせ、これらを前記スマートフォンで動画撮影し、その動画データ1点を同スマートフォンに装着したSDカードに記録させて保存し、もって衣服の全部又は一部を着けない児童の姿態であって、殊更に児童の性的な部位が露出され又は強調されているものであり、かつ、性欲を興奮させ又は刺激するものを視覚により認識することができる方法により描写した電磁的記録に係る記録媒体である児童ポルノを製造し(令和4年7月21日付け起訴状第2)、

第4 別紙記載の被害者K(当時5歳)が13歳未満の者であることを知りながら、同人にわいせつな行為をしようと考え、同月10日午後0時44分頃、前記保育園1階男性職員休憩室内において、前記Kに対し、その着衣をずらして同人の陰部及び胸部を露出させ、これらを前記スマートフォンで動画撮影し、その動画データ1点を同スマートフォンに装着したSDカードに記録させて保存し、もって13歳未満の者に対し、わいせつな行為をするとともに、衣服の全部又は一部を着けない児童の姿態であって、殊更に児童の性的な部位が露出され又は強調されているものであり、かつ、性欲を興奮させ又は刺激するものを視覚により認識することができる方法により描写した電磁的記録に係る記録媒体である児童ポルノを製造し(令和4年10月27日付け起訴状第2)、
第5 別紙記載の被害者C(当時3歳)が13歳未満の者であることを知りながら、同人にわいせつな行為をしようと考え、同日午後2時13分頃、前記保育園3階保育室内において、前記Cに対し、その着衣をずらして同人の陰部を露出させ、その陰部を直接手で触るとともに、これを前記スマートフォンで動画撮影し、もって13歳未満の者に対し、わいせつな行為をし(令和4年8月4日付け起訴状第1)、
第6 前記Cが18歳に満たない児童であることを知りながら、前記第5記載の日時場所において、前記第5記載のとおり、同児童にその陰部が露出した姿態をとらせ、これを前記スマートフォンで動画撮影し、その動画データ1点を同スマートフォンに装着したSDカードに記録させて保存し、もって衣服の全部又は一部を着けない児童の姿態であって、殊更に児童の性的な部位が露出され又は強調されているものであり、かつ、性欲を興奮させ又は刺激するものを視覚により認識することができる方法により描写した電磁的記録に係る記録媒体である児童ポルノを製造し(令和4年8月4日付け起訴状第2)、
第7 別紙記載の被害者E(当時3歳)が13歳未満の者であることを知りながら、同人にわいせつな行為をしようと考え、同日午後2時24分頃、前記保育園3階保育室内において、前記Eに対し、その着衣をずらして同人の陰部を露出させ、その陰部を直接手で触るとともに、これを前記スマートフォンで動画撮影し、もって13歳未満の者に対し、わいせつな行為をし(令和4年9月29日付け起訴状第1)、
第8 前記Eが18歳に満たない児童であることを知りながら、前記第7記載の日時場所において、前記第7記載のとおり、同児童にその陰部が露出した姿態をとらせ、これを前記スマートフォンで動画撮影し、その動画データ1点を同スマートフォンに装着したSDカードに記録させて保存し、もって衣服の全部又は一部を着けない児童の姿態であって、殊更に児童の性的な部位が露出され又は強調されているものであり、かつ、性欲を興奮させ又は刺激するものを視覚により認識することができる方法により描写した電磁的記録に係る記録媒体である児童ポルノを製造し(令和4年9月29日付け起訴状第2)、
第9 別紙記載の被害者F(当時3歳)が13歳未満の者であることを知りながら、同人にわいせつな行為をしようと考え、同日午後2時37分頃、前記保育園3階保育室内において、前記Fに対し、その着衣をずらして同人の臀部を露出させ、その臀部を直接手で触るとともに、これを前記スマートフォンで動画撮影し、もって13歳未満の者に対し、わいせつな行為をし(令和4年9月29日付け起訴状第3)、
第10 前記Fが18歳に満たない児童であることを知りながら、前記第9記載の日時場所において、前記第9記載のとおり、同児童にその臀部が露出した姿態をとらせ、これを前記スマートフォンで動画撮影し、その動画データ1点を同スマートフォンに装着したSDカードに記録させて保存し、もって衣服の全部又は一部を着けない児童の姿態であって、殊更に児童の性的な部位が露出され又は強調されているものであり、かつ、性欲を興奮させ又は刺激するものを視覚により認識することができる方法により描写した電磁的記録に係る記録媒体である児童ポルノを製造し(令和4年9月29日付け起訴状第4)、
第11 別紙記載の被害者L(当時5歳)が13歳未満の者であることを知りながら、同人にわいせつな行為をしようと考え、同月13日午後2時43分頃、前記保育園3階トイレ内において、前記Lに対し、その着衣をずらして同人の陰部及び臀部を露出させ、その臀部を直接手で触るとともに、これらを前記スマートフォンで動画撮影し、もって13歳未満の者に対し、わいせつな行為をし(令和4年10月27日付け起訴状第3)、
第12 前記Lが18歳に満たない児童であることを知りながら、前記第11記載の日時場所において、前記第11記載のとおり、同児童にその陰部及び臀部が露出した姿態をとらせ、これらを前記スマートフォンで動画撮影し、その動画データ1点を同スマートフォンに装着したSDカードに記録させて保存し、もって衣服の全部又は一部を着けない児童の姿態であって、殊更に児童の性的な部位が露出され又は強調されているものであり、かつ、性欲を興奮させ又は刺激するものを視覚により認識することができる方法により描写した電磁的記録に係る記録媒体である児童ポルノを製造し(令和4年10月27日付け起訴状第4)、
第13 別紙記載の被害者D(当時5歳)が13歳未満の者であることを知りながら、同人にわいせつな行為をしようと考え、同日午後4時18分頃、前記保育園1階トイレ内において、前記Dに対し、その着衣をずらして同人の陰部、臀部等を露出させ、その陰部及び臀部を直接手で触るとともに、これらを前記スマートフォンで動画撮影し、もって13歳未満の者に対し、わいせつな行為をし(令和4年8月4日付け起訴状第3)、
第14 前記Dが18歳に満たない児童であることを知りながら、前記第13記載の日時場所において、前記第13記載のとおり、同児童にその陰部、臀部等が露出した姿態をとらせ、これらを前記スマートフォンで動画撮影し、その動画データ1点を同スマートフォンに装着したSDカードに記録させて保存し、もって衣服の全部又は一部を着けない児童の姿態であって、殊更に児童の性的な部位が露出され又は強調されているものであり、かつ、性欲を興奮させ又は刺激するものを視覚により認識することができる方法により描写した電磁的記録に係る記録媒体である児童ポルノを製造し(令和4年8月4日付け起訴状第4)、
第15 別紙記載の被害者G(当時4歳)が13歳未満の者であることを知りながら、同人にわいせつな行為をしようと考え、同月17日午後2時40分頃、前記保育園3階トイレ内において、前記Gに対し、その着衣をずらして同人の陰部、臀部等を露出させ、その臀部を直接手で触るとともに、これらを前記スマートフォンで動画撮影し、もって13歳未満の者に対し、わいせつな行為をし(令和4年9月29日付け起訴状第5)、
第16 前記Gが18歳に満たない児童であることを知りながら、前記第15記載の日時場所において、前記第15記載のとおり、同児童にその陰部、臀部等が露出した姿態をとらせ、これらを前記スマートフォンで動画撮影し、その動画データ1点を同スマートフォンに装着したSDカードに記録させて保存し、もって衣服の全部又は一部を着けない児童の姿態であって、殊更に児童の性的な部位が露出され又は強調されているものであり、かつ、性欲を興奮させ又は刺激するものを視覚により認識することができる方法により描写した電磁的記録に係る記録媒体である児童ポルノを製造し(令和4年9月29日付け起訴状第6)、
第17 別紙記載の被害者O(当時3歳)が13歳未満の者であることを知りながら、同人にわいせつな行為をしようと考え、同月20日午前10時5分頃、前記保育園3階廊下において、前記Oに対し、その着衣をずらして同人の陰部及び臀部を露出させ、これらを前記スマートフォンで動画撮影し、その動画データ1点を同スマートフォンに装着したSDカードに記録させて保存し、もって13歳未満の者に対し、わいせつな行為をするとともに、衣服の全部又は一部を着けない児童の姿態であって、殊更に児童の性的な部位が露出され又は強調されているものであり、かつ、性欲を興奮させ又は刺激するものを視覚により認識することができる方法により描写した電磁的記録に係る記録媒体である児童ポルノを製造し(令和4年11月16日付け起訴状第1)、
第18 別紙記載の被害者P(当時2歳)が18歳に満たない児童であることを知りながら、同月24日午後0時42分頃、前記保育園2階トイレ内において、同児童にその陰部が露出した姿態をとらせ、これを前記スマートフォンで動画撮影し、その動画データ1点を同スマートフォンに装着したSDカードに記録させて保存し、もって衣服の全部又は一部を着けない児童の姿態であって、殊更に児童の性的な部位が露出され又は強調されているものであり、かつ、性欲を興奮させ又は刺激するものを視覚により認識することができる方法により描写した電磁的記録に係る記録媒体である児童ポルノを製造し(令和4年11月16日付け起訴状第2)、
第19 別紙記載の被害者Q(当時2歳)が18歳に満たない児童であることを知りながら、同日午後0時45分頃、前記保育園2階トイレ内において、同児童にその陰部が露出した姿態をとらせ、これを前記スマートフォンで動画撮影し、その動画データ1点を同スマートフォンに装着したSDカードに記録させて保存し、もって衣服の全部又は一部を着けない児童の姿態であって、殊更に児童の性的な部位が露出され又は強調されているものであり、かつ、性欲を興奮させ又は刺激するものを視覚により認識することができる方法により描写した電磁的記録に係る記録媒体である児童ポルノを製造し(令和4年11月16日付け起訴状第3)、
第20 別紙記載の被害者R(当時3歳)が18歳に満たない児童であることを知りながら、同日午後0時46分頃、前記保育園2階トイレ内において、同児童にその陰部及び臀部が露出した姿態をとらせ、これらを前記スマートフォンで動画撮影し、その動画データ1点を同スマートフォンに装着したSDカードに記録させて保存し、もって衣服の全部又は一部を着けない児童の姿態であって、殊更に児童の性的な部位が露出され又は強調されているものであり、かつ、性欲を興奮させ又は刺激するものを視覚により認識することができる方法により描写した電磁的記録に係る記録媒体である児童ポルノを製造し(令和4年11月16日付け起訴状第4)、
第21 別紙記載の被害者M(当時4歳)が13歳未満の者であることを知りながら、同人にわいせつな行為をしようと考え、同月27日午前8時32分頃、前記保育園1階トイレ内において、前記Mに対し、その着衣をずらして同人の陰部、臀部等を露出させ、これらを前記スマートフォンで動画撮影し、その動画データ1点を同スマートフォンに装着したSDカードに記録させて保存し、もって13歳未満の者に対し、わいせつな行為をするとともに、衣服の全部又は一部を着けない児童の姿態であって、殊更に児童の性的な部位が露出され又は強調されているものであり、かつ、性欲を興奮させ又は刺激するものを視覚により認識することができる方法により描写した電磁的記録に係る記録媒体である児童ポルノを製造し(令和4年10月27日付け起訴状第5)、
第22 別紙記載の被害者B(当時4歳)が13歳未満の者であることを知りながら、同人にわいせつな行為をしようと考え、同日午後4時54分頃、前記保育園1階トイレ内において、前記Bに対し、その着衣をずらして同人の陰部、臀部等を露出させ、これらを前記スマートフォンで動画撮影し、その動画データ1点を同スマートフォンに装着したSDカードに記録させて保存し、もって13歳未満の者に対し、わいせつな行為をするとともに、衣服の全部又は一部を着けない児童の姿態であって、殊更に児童の性的な部位が露出され又は強調されているものであり、かつ、性欲を興奮させ又は刺激するものを視覚により認識することができる方法により描写した電磁的記録に係る記録媒体である児童ポルノを製造し(令和4年7月21日付け起訴状第3)、
第23 別紙記載の被害者N(当時2歳)が13歳未満の者であることを知りながら、同人にわいせつな行為をしようと考え、同月29日午後3時12分頃、前記保育園2階保育室内において、前記Nに対し、その着衣をずらして同人の陰部を露出させ、これを前記スマートフォンで動画撮影し、その動画データ1点を同スマートフォンに装着したSDカードに記録させて保存し、もって13歳未満の者に対し、わいせつな行為をするとともに、衣服の全部又は一部を着けない児童の姿態であって、殊更に児童の性的な部位が露出され又は強調されているものであり、かつ、性欲を興奮させ又は刺激するものを視覚により認識することができる方法により描写した電磁的記録に係る記録媒体である児童ポルノを製造し(令和4年10月27日付け起訴状第6)、
第24 別紙記載の被害者H(当時4歳)が13歳未満の者であることを知りながら、同人にわいせつな行為をしようと考え、同日午後5時36分頃、前記保育園3階トイレ内において、前記Hに対し、その着衣をずらして同人の陰部、臀部を露出させ、その陰部を直接手で触るとともに、これらを前記スマートフォンで動画撮影し、もって13歳未満の者に対し、わいせつな行為をし(令和4年9月29日付け起訴状第7)、
第25 前記Hが18歳に満たない児童であることを知りながら、前記第24記載の日時場所において、前記第24記載のとおり、同児童にその陰部、臀部が露出した姿態をとらせ、これらを前記スマートフォンで動画撮影し、その動画データ1点を同スマートフォンに装着したSDカードに記録させて保存し、もって衣服の全部又は一部を着けない児童の姿態であって、殊更に児童の性的な部位が露出され又は強調されているものであり、かつ、性欲を興奮させ又は刺激するものを視覚により認識することができる方法により描写した電磁的記録に係る記録媒体である児童ポルノを製造し(令和4年9月29日付け起訴状第8)、
第26 別紙記載の被害者I(当時3歳)が13歳未満の者であることを知りながら、同人にわいせつな行為をしようと考え、前記第24記載の日時場所において、前記Iに対し、その着衣をずらして同人の陰部、臀部を露出させ、これらを前記スマートフォンで動画撮影し、その動画データ1点を同スマートフォンに装着したSDカードに記録させて保存し、もって13歳未満の者に対し、わいせつな行為をするとともに、衣服の全部又は一部を着けない児童の姿態であって、殊更に児童の性的な部位が露出され又は強調されているものであり、かつ、性欲を興奮させ又は刺激するものを視覚により認識することができる方法により描写した電磁的記録に係る記録媒体である児童ポルノを製造し(令和4年9月29日付け起訴状第9)
たものである。
(証拠の標目)
(法令の適用)
 被告人の判示第1、第4、第17、第21ないし第23及び第26の各所為のうち強制わいせつの点は刑法176条後段に、児童ポルノ製造の点は児童買春、児童ポルノに係る行為等の規制及び処罰並びに児童の保護等に関する法律7条4項、2項、2条3項3号に、判示第2、第5、第7、第9、第11、第13、第15、第24の各所為は刑法176条後段に、判示第3、第6、第8、第10、第12、第14、第16、第18ないし第20及び第25の各所為は児童買春、児童ポルノに係る行為等の規制及び処罰並びに児童の保護等に関する法律7条4項、2項、2条3項3号にそれぞれ該当するところ、判示第1、第4、第17、第21ないし第23及び第26はいずれも1個の行為が2個の罪名に触れる場合であるから、刑法54条1項前段、10条により1罪としてそれぞれ重い強制わいせつ罪の刑で処断し、判示第3、第6、第8、第10、第12、第14、第16、第18ないし第20及び第25につき、各所定刑中いずれも懲役刑を選択し、以上は同法45条前段の併合罪であるから、同法47条本文、10条により刑及び犯情の最も重い判示第26の罪の刑に法定の加重をした刑期の範囲内で被告人を懲役5年6月に処し、同法21条を適用して未決勾留日数中70日をその刑に算入することとする。
(量刑の理由)

強制わいせつ罪と児童ポルノ製造罪を併合罪とする高裁判例の理由付け

理由を分類すると
 行為の重なり合い
 通常随伴性
 行為の性質
 一事不再理
で、2個の行為になるそうです。

    重なり合い 通常随伴 行為の性質 一事不再理
広島高裁 H22.1.26 被告人は,被害児童にその陰部を露出させる姿態をとらせるなどしてその姿態をデジタルビデオカメラで撮影しながら,被害児童の陰部を手指で弄び,舐め回すなどし,画像データをデジタルビデオカメラ内に設置されたDVD-RWに記憶させた上,その後,その画像データをパーソナルコンピュータ内蔵のハードディスクに記憶・蔵置させ,児童ポルノであるハードディスク1台を製造しているのであり,原判示第1のわいせつ行為と原判示第2の3項製造行為とは,一部重なる点はあるものの,両行為が通常伴う関係にあるとはいえない ,被害児童に陰部を露出させる姿態をとらせてこれをデジタルビデオカメラで撮影する行為は,刑法176条後段に触れる行為であるとともに,児童ポルノ法7条3項に触れる行為でもあるが,社会的見解上,わいせつ行為に伴い,これを撮影するのが通常であるとはいえない ,両行為の性質等にかんがみると,それぞれにおける行為者の動態は社会的見解上別個のものといえる  
東京高裁 H22.12.7   強制わいせつ罪は、わいせつ行為をしたことを構成要件要素とするのに対し、3項製造罪は、児童に児童ポルノに該当するような姿態をとらせ、これを写真、電磁的記録に係る記録媒体その他の物に描写することにより児童ポルノを製造したことを構成要件要素とするものである。わいせつ行為に伴ってこれを撮影するのが通常であるとはいえないし、撮影に当たってわいせつ行為が必ず必要というわけでもないのであって(児童ポルノには、その定義上、刑法のわいせつには該当しないものも含みうるから、児童ポルノに該当するような姿態をとらせることが常にわいせつ行為に該当するわけではない。)、両行為は通常伴う関係にあるとはいえない。 両行為の性質を見ても、わいせつ行為は、その場の行為で終了するのに対し、児童ポルノ製造は、その後の編集、現像等のいわば第二次、第三次製造も製造罪を構成し、行為者に犯意の継続性があれば包括一罪と解されるのであって(最3小決平成18年2月20日・刑集60巻2号216頁参照)、時間的、行為的な広がりを有する性質の行為である。これらの点にかんがみると、強制わいせつ罪と3項製造罪は、たまたま行為が重なるように見えても、それぞれにおける行為者の動態は社会見解上別個  
東京高裁 H24.11.1 確かに,所論のいうとおり,一般に上記撮影行為自体も刑法176条後段の強制わいせつ罪を構成すると解されている上,直接的なわいせつ行為の姿態をとらせる行為が児童ポルノ法7条3項の構成要件的行為であることからすると,本件において,刑法176条後段に触れる行為と児童ポルノ法7条3項に触れる行為とは重なり合いがあるといえる。しかし,本件では,被告人は,撮影行為自体を手段としてわいせつ行為を遂げようとしたものではないから,撮影行為の重なり合いを重視するのは適当でない。   そして,直接的なわいせつ行為と,これを撮影,記録する行為は,共に被告人の性的欲求又はその関心を満足させるという点では共通するものの,社会的評価においては,前者はわいせつ行為そのものであるのに対し,後者が本来意味するところは撮影行為により児童ポルノを製造することにあるから,各行為の意味合いは全く異なるし,それぞれ別個の意思の発現としての行為であるというべきである。そうすると,両行為が被告人によって同時に行われていても,それぞれが性質を異にする行為であって,社会的に一体の行為とみるのは相当でない。 また,児童ポルノ製造罪は,複製行為も犯罪を構成し得る(最高裁平成18年2月20日第三小法廷決定・刑集60巻2号216頁)ため,時間的に広がりを持って行われることが想定されるのに対し,強制わいせつ罪は,通常,一時点において行われるものであるから,刑法176条後段に触れる行為と児童ポルノ法7条3項に触れる行為が同時性を甚だしく欠く場合が想定される。したがって,両罪が観念的競合の関係にあるとすると,例えば,複製行為による児童ポルノ製造罪の有罪判決が確定したときに,撮影の際に犯した強制わいせつ罪に一事不再理効が及ぶ事態など,妥当性を欠く事態が十分生じ得る。一方で,こうした事態を避けるため,両罪について,複製行為がない場合は観念的競合の関係にあるが,複製行為が行われれば併合罪の関係にあるとすることは,複製行為の性質上,必ずしもその有無が明らかになるとは限らない上,同じ撮影行為であるにもかかわらず,後日なされた複製行為の有無により撮影行為自体の評価が変わることになり,相当な解釈とは言い難い。
高松高裁 H26.6.3 原判示第8の1のわいせつ行為には,被害者の胸部を露出させた上で撮影する行為だけでなく,着衣の上から胸や陰部を触るという行為も含まれるのであり,強制わいせつ致傷罪と児童ポルノ製造罪とは,その行為の一部に重なる点があるに過ぎない。また,胸部を露出させてその状況を撮影し,さらに着衣の上から胸や陰部を触るなどのわいせつ行為をし,逃げるために暴行を加えて傷害を負わせたという一連の行為について,原判決が強制わいせつ致傷一罪を構成すると評価したのは正当であり,構成要件的観点からは一体として強制わいせつ致傷一罪を構成するが,その観点を捨象した自然的観察の下においては,そのうちの一部の行為が児童ポルノ製造罪に触れる関係にあるというに過ぎず,それぞれにおける被告人の動態は社会的見解上別個のものといえるのであり,      
福岡高裁 H26.10.15 本件の各強制わいせつ罪におけるわいせつ行為の概要は,被告人「が,単独で,又は共犯者と共謀の上,被害児童が13歳未満であることを知りながら,被害児童に対し,その衣服を脱がせて陰部等を露出する姿態をとらせ,これをカメラ機能付き携帯電話機で撮影した,というものであるのに対し,各3項製造罪における製造行為の概要は,被告人が,単独で,又は共犯者と共謀の上,被害児童が13歳未満であることを知りながら,被害児童に対し,その衣服を脱がせて陰部等を露出する姿態をとらせ,これをカメラ機能付き携帯電話機で撮影し,その画像データを同携帯電話機に内蔵された記録装置に記録させた,というものであり,両行為には同時性ないし重なり合いが認められ   しかしながらわいせつ行為と児童ポルノの製造行為とは,共に性的欲求ないし関心を満足させるという点では共通する面があるものの,それぞれの行為の性質が相当に異なっているから,本件において各構成要件該当行為として摘示された事実に限ってみたときに,たまたま,上記のような同時性ないし重なり合いが認められるとしても,その聞に社会的事実としての強い一体性があるとはいえず,そうすると,本件における被告人の動態を社会的見解上1個のものと評価することはできないから  
阪高 H28.10.26 確かに,原判示第7,第8,第10,第12及び第13の各1と,それらのそれぞれの2の行為のうち,直接接触して姿態を取らせる行為や撮影 する行為は,強制わいせつ罪の実行行為でありつつ児童ポルノ製造罪の実行行為でもあって,構成要件的に重なり合いがあるといえる。   しかしながら,本件において,社会的な評価における中核となるものは,前者がわいせつ行為そのものであるのに対し,後者は児童ポルノを製造することにある。
中核となるべき行為が異なり,重なる部分がそれぞれの罪において持つ意味合いも異なるし,また,別個の意思が発現されたものとみることができる。
そうすると,両行為が被告人によって同時に行われても,両罪の中核的行為が異なる以上,法的評価を離れ構成要件的観点を捨象した自然的観察の下で社会的一体性は認められず,その動態が社会的見解上一個のものとの評価を受けるとみるのは相当ではない。
なお,この両罪を一罪として扱うと,一事不再理効の範囲が拡大し過ぎるという不都合も生じ得る。
阪高 H28.10.27 原判示第1の1の強制わいせつ罪及び原判示第1の2の提供目的児童ポルノ製造罪をそれぞれ構成する行為の内容は,既に説示したとおりであるから,両行為には同時性が認められる。また,本件提供目的児童ポルノ製造罪における撮影行為は,本件強制わいせつ罪の訴因に含まれていないとはいえ,強制わいせつ罪のわいせつな行為と評価され得るものであるから,その意味では両行為には一部重なり合いもみられる。 さらに,強制わいせつ罪と児童ポルノ製造罪とでは,それぞれを構成する行為が必然的あるいは通常伴う関係にあるとはいえず,それぞれ別個の意思の発現によって犯される罪であるとみることができる。以上によれば,行為の同時性や一部重なり合いの存在を考慮しても,強制わいせつ罪及び児童ポルノ製造罪における行為者の動態は社会的見解上,別個のものと評価すべきであって,これを一個のものとみることはできない。 しかしながら,強制わいせつ罪における行為者の動態(第三者の目に見えるような身体の動静)は,被害者に対して本件において行われたようなわいせつな行為を行うことであるのに対し,児童ポルノ製造罪における行為者の動態は,児童ポルノ法2条3項各号に該当する児童の姿態を撮影,記録して児童ポルノを製造することであるから,両行為は,その性質が相当異なっており,社会的事実として強い一体性があるとはいえない。また,児童ポルノの複製行為も児童ポルノ製造罪を構成し得ることからすると,児童ポルノ製造罪が時間的な広がりをもって行われて,強制わいせつ罪と児童ポルノ製造罪のそれぞれを構成する行為の同時性が甚だしく欠ける場合も想定される。  
東京高裁 H30.1.30 わいせつな姿態をとらせて撮影することによる強制わいせつ行為と当該撮影及びその画像データの撮影機器に内蔵又は付属された記録媒体への保存行為を内容とする児童ポルノ製造行為は,ほぼ同時に行われ,行為も重なり合うから,自然的観察の下で社会的見解上一個のものと評価し得るが撮影画像データを撮影機器とは異なる記録媒体であるパソコンに複製して保存する二次保存が日時を異にして行われた場合には,両行為が同時に行われたとはいえず,重なり合わない部分も含まれること,   そもそも強制わいせつ行為と児童ポルノ製造行為とは,前者が被害者の性的自由を害することを内容とするのに対し,後者が被害者のわいせつな姿態を記録することによりその心身の成長を害することを主たる内容とするものであって,基本的に併合罪の関係にあることに照らすと,画像の複製行為を含む児童ポルノ製造行為を強制わいせつとは別罪になるとすることは合理性を有する。  
仙台高裁 H30.2.8 同一の被害児童に対する強制わいせつ行為と児童ポルノ製造行為とは,一部重なる点はあるものの 両行為が通常伴う関係にあるとはいえないこと 両行為の性質等に鑑みると,それぞれにおける行為者の動態は社会的見解上別個のもの  
東京高裁 H30.7.25 ,本件のように幼児の陰部を触るなどのわいせつな行為をするとともに,その行為等を撮影して児童ポルノを製造した場合,わいせつな行為と児童ポルノを製造した行為とは,かなりの部分で重なり合っていることもある ,同一の被害児童に対する強制わいせつ行為と児童ポルノ製造行為とは,一部重なる点はあるものの,両行為が通常伴う関係にあるとはいえない 強制わいせつ罪では幼児の陰部を触るなどのわいせつな行為を行ったという側面から犯罪とされているのに対し,児童ポルノ製造罪ではそのような幼児の姿態を撮影して記録・保存する行為を行ったという側面から犯罪とされているのであって,それぞれの行為は社会的評価としても別個のものといえる  
仙台高裁 R1.8.20   被害児の陰部等を手指で弄び,その陰部に自己の陰茎を押し当てるなどのわいせつ行為とそれらの行為等に係る被害児の姿態をスマホ等で撮影して保存する行為について,両者が同一の機会に行われ,時間と場所が重なり合うことがあったとしても,両者は通常伴う関係にあるとはいえないし, それぞれの行為の意味合いは相当異なり,社会通念上別個のものというべきであるから,両者は観念的競合の関係にはなく,併合罪の関係にあると解するのが相当である。  
東京高裁 R5.4.30 原判決は、動画データを電磁的記録に係る記録媒体その他の物に記録して保存する行為が、わいせつ行為とは日時や場所を異にするものを併合罪と評価していると解される。   刑法176条後段等に触れる行為と児童ポルノ法7条4項、5項に触れる行為は、基本的にはそれぞれが性質を異にする行為であり、社会的評価において、直接的なわいせつ行為とこれを撮影した動画を保存して児童ポルノを製造する行為は別個の意思に基づく相当性質の異なる行為であり、一罪として扱うことを妥当とするだけの社会的一体性がなければ、それぞれにおける行為者の動態は社会的見解上別個のものといえるところ、原判決も同様の観点から前記のように評価したものと解される  



リモート強制わいせつ罪の論点

 刑法学者に聞きました。「わいせつな行為をする」という構成要件を、「わいせつな行為をさせる」ということで実現するのだから、間接正犯じゃないかというのです。
 そう主張すると、大阪高裁は「刑法176条前段の強制わいせつ罪は,13歳以上の男女に対し,その反抗を著しく困難にする程度の暴行,脅迫を加えて,被害者に一定の行動や姿態をとることを強いて,被害者がその意思に反してそれらの行動や姿態をとらされ,その身体を性的な対象として利用できる状態に置かされた場合などにも成立するのであり,その際,それ以外の要件として被害者の道具性を検討する必要はない。」と判示していますが、対面で殺すとか言われている場合とは違って、ネット切っちゃえば手出しされない状況なので、「強いて,被害者がその意思に反してそれらの行動や姿態をとらされ,その身体を性的な対象として利用できる状態に置かされた場合」と言えるのかは慎重に判断する必要があるでしょう。
 捜査段階でもこういう指摘ができれば強要罪に落ちることもあります。量刑は変わりませんが。
「リモート強制わいせつで逮捕」という報道を追いかけると、強要罪で起訴された事例もあります。

https://news.yahoo.co.jp/articles/da95a2fdf341c88760ea7f0cff0a5b18193cbfbb
西条署によりますと、男は去年10月5日午後11時20分から45分頃にかけて、当時10代の少女を脅した上、テレビ電話を通じて「リモート」でわいせつな行為をさせた疑いです。

阪高裁r4.1.20
令和4年1月20日
3 法令適用の誤りの論旨について
 所論は,次のとおり,原判示第1の強制わいせつ罪の成立を認めた原判決には,判決に影響を及ぼすことが明らかな法令適用の誤りがある,というものである。
 (1) 所論は,本件は,被害者を利用した間接正犯になっていなければ,強制わいせつ罪の正犯となり得ないところ,被害者は道具化していないから,間接正犯は成立せず,強要罪か準強制わいせつ罪に当たると主張する。
 しかし,刑法176条前段の強制わいせつ罪は,13歳以上の男女に対し,その反抗を著しく困難にする程度の暴行,脅迫を加えて,被害者に一定の行動や姿態をとることを強いて,被害者がその意思に反してそれらの行動や姿態をとらされ,その身体を性的な対象として利用できる状態に置かされた場合などにも成立するのであり,その際,それ以外の要件として被害者の道具性を検討する必要はない。これと同旨の原判決は正当である。原判決の説示が「わいせつな行為」について意味不明で独自の定義を作出するものであり,理由不備があるとする主張も含めて,所論は独自の見解であって,採用できない。
 関連して所論は,原判決は,画像要求行為と被害者自身の撮影行為の全体をわいせつな行為と解している点で誤っており,全国の都道府県で画像要求行為を独立に処罰化する動きがあることは,同行為をわいせつな行為と評価することが困難であることを示していると主張する。
 しかし,原判決は,被害者をして乳房等を露出した姿態をとらせ,これを撮影させたことを含めて,わいせつな行為とみているのであり,画像要求行為そのものがわいせつな行為に当たると判断しているわけではないから,所論は前提を誤った主張であり,採用できない。
 (2) 所論は,原判示第1の強制わいせつ罪につき,刑法176条の「わいせつな行為」は明確な定義がないし,原判決もその定義を示せていないのであって,漠然不明確であるから,同条項は罪刑法定主義に反して文面上無効であるのに,原判決は,同条項を適用して強制わいせつ罪の成立を認めたと主張する。
 しかし,「わいせつな行為」という言葉は,一般的な社会通念に照らせば,ある程度のイメージを具体的に持つことができる言葉であるし,これまでの実務上,多くの事例判断が積み重ねられており,それらの集積からある程度の外延がうかがわれるものである。そして,「わいせつな行為」を別の言葉で分かりやすく表現することには困難を伴う上,定義付けた場合に,かえって誤解を生じさせるなどして解釈上の混乱を招きかねないおそれもある。また,定義付けしても,いわゆる規範的構成要件である「わいせつな行為」に該当するのか否かを直ちに判断できるものでもない。「わいせつな行為」該当性を安定的に解釈していくためには,どのような考慮要素をどのような判断基準で判断していくべきなのかという判断方法こそが重要であり,定義付けが必須とはいえない。所論は,種々指摘して,刑法176条は罪刑法定主義に反しており無効であるというが,独自の見解であって採用できない。
 (3) 所論は,原判示第1の強制わいせつ罪につき,被害者に撮影させ,記録させ,送信させて,被告人が受信するまでしていれば,わいせつな行為と評価される余地はあるが,撮影させた行為だけではわいせつな行為に当たらないし,被告人の性的意図を考慮すると強制わいせつ未遂罪にとどまると主張する。
 しかし,被告人が被害者を脅迫して,要求どおり裸の写真を撮影させた行為が強制わいせつの既遂に当たることは,上記のとおり明らかである。被害者の意思に反して乳房等を露出する姿態をとらせ,これを撮影させるだけで十分な法益侵害性が認められるから,現実に画像データを送信させる行為は,強制わいせつ罪の成立を認める上で不可欠の要素とはいえない。異なる評価をいう所論は採用できない。
 (4) 所論は,接触を伴う強制わいせつにおいては,犯人が被害者の面前にいることが前提とされていることから,非接触の強制わいせつにおいても,犯人が規範的にみて,被害者の目の前にいるといえなければ,わいせつな行為に当たらないと解されるところ,本件では,脅迫行為に遅れて撮影行為がされているから,規範的にみて被害者の目の前にいるといえず,わいせつな行為に当たらないと主張する。
 しかし,有形力の行使を伴わない非接触型の強制わいせつの成否を,有形力を伴う接触型という類型を異にする強制わいせつの成否と同様に考える必然性はなく,所論は前提において失当である。規範的にみて被害者の面前にいるとはいえなくても,本件のように,被害者を畏怖させて,強いてその身体を性的な対象として利用できる状況に置き,これを撮影させることで,接触を伴う強制わいせつと同程度の性的侵害をもたらし得ることは明らかである。所論は採用できない。
 (5) 所論は,原判示第1の強制わいせつ罪と同第2の児童ポルノ製造罪は,それぞれに該当する行為が,自然的観察の下で社会的見解上1個のものとして評価できる場合であるから,両罪は観念的競合であるのに,原判決は併合罪として処理した違法があると主張する。
 そこで検討するに,本件のように,被害者を脅迫して,被害者にその乳房等を露出する姿態をとらせて,これを撮影させ,その画像データを送信させ,被告人が使用する携帯電話機でこれを受信,記録して児童ポルノを製造した場合,姿態をとらせるための具体的な手段である脅迫が,児童ポルノ法7条4項の児童ポルノ製造罪において必須の行為ではないことを考慮しても,強制わいせつ罪に当たる行為は,上記児童ポルノ製造罪に当たる行為にほぼ包摂され,大幅に重なり合っているといえる。そして,乳房等を露出する姿態をとらせて,これを撮影させること以外にわいせつな行為が存在せず,かつ,当初から被告人が撮影後,画像データを送信するよう要求していた事案であって,ほぼ同時に送信,受信,記録が行われたことを考慮すると,脅迫が必須の手段ではないという上記の点を踏まえても,両行為は通常伴うものということができる。これらのことからすると,両行為は,自然的観察の下で社会的見解上1個のものとして評価できる場合であるから,本件において,両罪は観念的競合であるというべきであり,これを併合罪であると判断した原判決には,所論が指摘するとおり,法令適用の誤りがある。もっとも,併合罪という前提に立った場合の処断刑は,14年以下の懲役であるのに対し,観念的競合という前提に立った場合の処断刑は,11年以下の懲役であって,その差がさほど大きくないことや,原判決の量刑がその依拠する処断刑よりもはるかに低い刑にとどまっていることを考慮すると,この法令適用の誤りは,判決に影響を及ぼすことが明らかであるとはいえない。

元生徒との淫行について真剣交際の主張をした事例(懲戒免職処分取消請求事件熊本地方裁判所令和4年10月19日)

元生徒との淫行について真剣交際の主張をした事例(懲戒免職処分取消請求事件熊本地方裁判所令和4年10月19日)
 青少年は、警察で淫行の事実を供述したり嘆願書を書いたりしていますが、警察の取調に応じなければ捜査はそれで終わったと思います。「私からも真剣交際だって説明するから」といって取調に応じると、淫行の事実関係を聞かれて、交際状況を聞かれないことがよくあります。

熊本地方裁判所
令和3年(行ウ)第2号 懲戒免職処分取消請求事件(以下「第1事件」という。)
令和3年(行ウ)第13号 退職手当支給制限処分取消請求事件(以下「第2事件」という。)
令和4年10月19日民事第2部判決
       主   文
1 原告の請求をいずれも棄却する。
2 訴訟費用は原告の負担とする。
       事実及び理由

第1 請求の趣旨
1 第1事件
 熊本県教育委員会が、原告に対し、令和元年9月3日付けで行った懲戒免職処分を取り消す。
2 第2事件
 熊本県教育委員会が、原告に対し、令和元年9月3日付けで行った退職手当支給制限処分を取り消す。
第2 事案の概要
 本件は、原告が、教員として熊本県立八代高等学校(以下「本件高校」という。)に勤務していたところ、本件高校に在籍していた女子生徒(以下「本件生徒」という。)と性行為等を行ったことなどを理由として、熊本県教育委員会から、懲戒免職処分(以下「本件処分1」という。)及び退職手当支給制限処分(以下「本件処分2」といい、本件処分1と併せて「本件各処分」という。)を受けたことについて、本件各処分にはいずれも裁量権の逸脱濫用があるなどと主張して、本件処分1の取消し(第1事件)及び本件処分2の取消し(第2事件)をそれぞれ求める取消訴訟である。
1 関係法令、熊本県職員等退職手当支給条例(以下「本件条例」という。)、熊本県教育委員会における懲戒処分の指針(以下「本件指針」という。)及び退職手当の支給制限等の運用(以下「本件運用」という。)について
 別紙2関係法令等の定めのとおり
2 前提事実(当事者間に争いがないか後掲各証拠及び弁論の全趣旨により容易に認定することができる事実)
(1)原告及び本件生徒について
ア 原告は、平成11年4月1日に熊本県の公立学校職員として採用され(争いなし)、平成21年4月から平成31年3月までは本件高校において、平成31年4月から令和元年9月3日までは熊本県立東稜高等学校(以下「東稜高校」という。)において、いずれも教員として勤務しており(弁論の全趣旨)、本件各処分がなされた令和元年9月3日当時の年齢は43歳である(弁論の全趣旨)。原告は、本件高校に勤務して本件生徒との関わり合いが生じた平成30年ないし平成31年当時、妻子を有していたが(争いなし)、令和元年7月4日に離婚した(乙10の2・8頁)。
 なお、現在、原告は、姓を変更し、関東の会社で勤務している(原告本人・20頁)。
イ 本件生徒は、原告が平成30年及び平成31年に本件高校で勤務していた際に、本件高校に在籍していた当時16歳(高校1年生)の女子生徒であり(弁論の全趣旨)、原告の担当していた生物の授業を受講していた(争いなし)。
 なお、本件口頭弁論の終結時において、本件生徒と原告は交際関係を解消しており、別々に暮らしている(原告本人・12、13、19、20頁)。
(2)本件各処分に至るまでの経緯
ア 教職員による申合せ事項及び原告による署名押印
 熊本県教育長は、各県立学校の校長等に対し、教職員による児童生徒に対するわいせつ行為等を防止するため、平成31年3月14日付け教人第1702号通知(以下「1702号通知」という。)を発出した。熊本県教育長は、1702号通知において、児童生徒に対するわいせつ行為等に対する処分の事案のほとんどは、教職員が児童生徒とSNS等でつながり、私的なやり取りを始めたことが発端になっているため、教職員に対し、「児童(生徒)との連絡における教職員の適切な対応に関する申し合わせ事項」と題する別紙様式に従い、〔1〕児童(生徒)との私的なメール等のやり取りを行わないこと、〔2〕業務上、児童(生徒)とメール等を通じて直接的な連絡等が必要な場合は、校長に申請し、保護者の承認を得ることを内容とした申合せ(以下「本件申合せ」という。)を同様式に教職員が署名及び押印をして書面で行うとともに、本件申合せに反する事実等が明らかになった場合には、懲戒処分等による厳正な対処もあり得ることを確認することを求めた。(乙1)
 原告は、本件高校(平成30年度)及び東稜高校(平成31年度)において、本件申合せ所定の様式の書面にそれぞれ署名及び押印をした(乙2、3)。
イ 原告と本件生徒との関わり合いの契機
 原告は、平成30年4月、熊本県八代市内で行われていたイベントの会場に部活動の引率者として部員の生徒に赴いた際、同会場を訪れていた本件生徒と会話をしたことをきっかけとして、本件高校内でも会話をするようになった。本件生徒は、同年の1学期頃、日頃から原告に対して「好き。」、「結婚して。」等の言葉を発しており、肩を叩く、腕を組むといったスキンシップを自ら行っていた。原告は、同年11月頃から、本件生徒に対し、異性としての魅力を感じるようになっていった。(争いなし)
ウ 原告と本件生徒との私的な付き合いの開始
 原告は、緊急連絡先として、担任をしているクラスや部活動の生徒に自身の電話番号を教えていたところ、同年12月頃から、原告の携帯電話に本件生徒からのメールが届くようになり、メールでのやり取りをするようになった。同メールには、キスなどの性的な内容も含まれていた。(争いなし)
 原告は、本件生徒からメールでデートに連れて行くように求められていたところ、同月29日、自家用車で本件生徒と二人で八代宮に出かけ、30分程度話しながら散歩した。その後、原告は、本件生徒を自宅まで送迎したが、本件生徒から「もう終わり?」と言われたため、30分から1時間程度の間、インターネットカフェ・漫画喫茶に二人で滞在した。帰り際、原告は本件生徒に対してキスをしようとしたが、拒否された。(争いなし)
 また、本件生徒は、平成31年1月10日以前から不登校気味であったが、同日、スクールソーシャルワーカーと面談するために登校し、面談後、原告に対して登校したことを報告するために生物準備室を訪れた。その際、原告は、本件生徒に対してキスをしようとしたが、拒否された。(争いなし)
エ 本件高校による原告への厳重注意等
 本件生徒の担任が同月16日に本件生徒宅に家庭訪問をしたところ、本件生徒から「原告と付き合っている。」という趣旨の発言があったため(乙14・4頁)、本件高校の副校長は、原告に対し、同月28日、事実確認を行った。原告は、本件生徒とメール等でやり取りしていたこと、八代宮等に本件生徒と二人で行ったこと、本件生徒にキスをしようとしたが拒否されたことなどを認め、同月30日付けで、本件高校の校長宛てに、顛末書(以下「本件顛末書〔1〕」という。)を提出した(本件顛末書〔1〕については乙12、その余は争いなし)。
 本件高校側は、同年2月7日、事実確認を受けて本件生徒の保護者に対して説明及び謝罪をしたが、その際、本件生徒の保護者が原告の同席を望まなかったため、原告は同席しなかった(争いなし)。
 本件高校の校長は、原告に対し、同月8日、本件生徒の保護者に本件高校側から説明及び謝罪したことを伝え、原告に厳重注意をするとともに、本件生徒とは連絡を取らないように指導した(争いなし)。以後、原告は、同年3月末まで本件生徒からのメール等に返信をしなかったが(争いなし)、本件生徒は今までと変わらず、原告が在室していた生物準備室等に訪れていた(弁論の全趣旨)。
オ 原告と本件生徒とが性的関係をもった経緯
 原告は、定期異動で東稜高校への転勤が決まったところ、同年3月末、上記転勤の事実を知った本件生徒から、原告に対して電話があったため、原告はその電話に応じた。また、原告と本件生徒は、同年4月頃、メール等でのやり取りを再開し、そのやり取りの中で、互いに好きだという気持ちを確認し、将来のことも話すようになった。さらに、原告は、本件生徒と二人で、令和元年5月6日、午後3時頃から2時間程度、インターネットカフェ・漫画喫茶に出かけ、本件生徒に化学を教えるなどした。(争いなし)
 原告は、同月13日、本件生徒と二人で会い、人目を気にしないでいい場所はないかという話になった際に、本件生徒が「ホテルは?」と言ったため、当初は躊躇したものの、本件生徒と二人でホテルへ行き、2時間程度滞在する中で、本件生徒と抱き合ったり、キスをしたりした。また、原告と本件生徒は、翌14日も、午後7時頃からホテルへ二人で向かい、1時間程度滞在し、抱き合ったりキスをしたりした。(争いなし)
 また、原告と本件生徒は、同月19日、二人で会ったところ、本件生徒が原告に対して性行為をしたいと述べたため、原告は、性行為をする目的で本件生徒とホテルに行き、ホテルに入室後、性行為に及んだ。原告と本件生徒は、同ホテルに3時間程度滞在した後、同ホテルの近くにあるゲームセンターに二人で入店し、午後4時頃まで約1時間ゲームをした。(争いなし)
 さらに、原告と本件生徒は、同年6月8日又は9日の午後、性交為をする目的でホテルに行き、同ホテルに3時間滞在し、性行為に及んだ(争いなし)。
カ 所属校による原告への聞き取り〔1〕
 本件生徒の担当教員(担任)は、本件生徒の母親からの相談を受けたため、同月18日、本件生徒との面談を実施したところ、原告と本件生徒が交際していることが発覚し、翌19日には、本件生徒が、本件生徒の担任に対し、原告と性的関係があったことを話した(乙15・1、2頁)。
 本件高校の校長は、本件生徒の担任からの報告を受け、原告の当時の所属校である東稜高校に対して、原告への事実確認の依頼を行ったため、東稜高校の校長、副校長及び教頭は、同月20日、原告に対する聞き取りを実施したところ、原告は、今年度になってから本件生徒とメール等のやり取りはしていないし、会ってもいない旨の申告を行った(原告に対する聞き取りがあったこと及びその際原告が述べた申告内容については争いがなく、その余は乙9・1頁)。
キ 原告が熊本県八代警察署へ出頭した経緯等
 本件生徒の母親は、同月21日、本件生徒の担任らと熊本県八代警察署を訪れて今後の対応について相談、協議をした(乙15・4頁)。原告は、同月25日、本件生徒宅を訪ね、本件生徒の母親に対し、今回の件で大変迷惑をかけていること、財産分与が片付けば妻とは別れる予定であること、本件生徒とは真剣な交際であり、本件生徒が望めば結婚を考えていること、本件生徒が本件高校を卒業するまでは会わないこと、今年度末には教職を辞するつもりであること、本件生徒とは性的な関係はないことを述べた。その後、原告は、自ら、熊本県八代警察署へ赴き、本件の事情を説明したが、本件生徒との性行為は否定した。(争いなし)
ク 所属校による原告への聞き取り〔2〕
 東稜高校の校長及び副校長が、同月26日に原告からの聞き取りを実施したところ、原告は、同月20日の聞き取りで虚偽の報告をしていたことを謝罪し、令和元年度に入ってから本件生徒と連絡を取っていたこと及び本件生徒と会っていたことは認めたが、本件生徒と性行為をしたことは認めなかった(争いなし)。
ケ 所属校による原告への聞き取り〔3〕
 原告は、同年7月12日、東稜高校の校長、副校長及び教頭からの聞き取りを受けた際、本件生徒とそれまでに2回の性行為があったことを認め、同月16日、東稜高校の校長宛てに、顛末書(以下「本件顛末書〔2〕」という。)を提出した(本件顛末書〔2〕については乙13、その余は争いなし)。
コ 処分行政庁の担当者による聞き取り
 原告は、同月30日及び同年8月1日、熊本県庁において、処分行政庁の担当者であるA(以下「証人A」という。)らによる聞き取りを受け、本件における原告の行為について再度確認を受けた(争いなし)。
(3)原告への刑事処分等について
 原告は、同年○月○日、熊本県青少年保護育成条例違反の容疑で逮捕され、かかる事実が、原告の氏名及び所属高校名と共に、B新聞、C新聞及びD新聞で報道されたものの、同月7日付けで本件生徒からの嘆願書が提出されるなどし、同月12日、原告は処分保留で釈放され、同月19日、熊本地方検察庁の検察官は、原告を不起訴処分とした(新聞報道については乙4、嘆願書については甲5、その余は争いなし)。

(4)本件各処分について
ア 本件処分1
 熊本県教育委員会は、原告に対し、令和元年9月3日、地方公務員法29条1項各号の規定により懲戒処分として免職する処分を行った(本件処分1。甲1)。本件処分1に関する処分事由説明書(以下「本件処分1事由説明書」という。)には、要旨、〔1〕原告が、平成30年12月及び平成31年1月、本件生徒に対しキスをしようとし、また、令和元年5月から同年6月にかけて、本件生徒と二人でホテルに4回行き、うち2回は本件生徒と抱き合ったりキスをしたりし、うち2回は性行為をしたものであり(以下「本件行為〔1〕」という。)、このことは地方公務員法33条に違反する極めて重大な信用失墜行為であったこと、〔2〕また、原告は、本件行為〔1〕を行っていたにもかかわらず、東稜高校管理職に対して本件生徒との関係を否定するなどの虚偽の報告をしたこと(以下「本件行為〔2〕」という。)、〔3〕さらに、本件高校において、同高校の管理職から禁止されていた本件生徒との連絡を継続していたこと(以下「本件行為〔3〕」という。)は、1702号通知における申合せ事項に違反した行為であって、職務命令に背く行為であり、これらのことは、教員に要求される高度の倫理に反し、熊本県教育に対する社会の期待と信頼を著しく裏切ったものであり、全体の奉仕者としてふさわしくない非行であった、との理由が記載されていた。これらのほかに、審査請求及び取消訴訟の教示が記載されている。(甲2)
 令和△年△月△日、本件処分1が行われたことが、B新聞、C新聞、E新聞、D新聞及びF新聞で報道され、これに加えて、C新聞においては原告の氏名及びその所属校名が、D新聞においては原告の氏名がそれぞれ報道された(乙5)。

児童福祉法60条4項の「児童を使用する者」「過失がないとき」

児童福祉法60条4項の「児童を使用する者」「過失がないとき」
 戸籍謄本を確認しろと言ってみたり、戸籍謄本を軽信してはいけないと言ってみたり

児童福祉法第六〇条[禁止行為違反罪]
① 第三十四条第一項第六号の規定に違反した者は、十年以下の拘禁刑若しくは三百万円以下の罰金に処し、又はこれを併科する。
②第三十四条第一項第一号から第五号まで又は第七号から第九号までの規定に違反した者は、三年以下の拘禁刑若しくは百万円以下の罰金に処し、又はこれを併科する。
③第三十四条第二項の規定に違反した者は、一年以下の拘禁刑又は五十万円以下の罰金に処する。
④児童を使用する者は、児童の年齢を知らないことを理由として、前三項の規定による処罰を免れることができない。ただし、過失のないときは、この限りでない。

①東京高裁h7.5.31*1
裁判年月日 平成 7年 5月31日 裁判所名 東京高裁 裁判区分 判決
事件番号 平7(う)219号
事件名 児童福祉法違反被告事件
上訴等 上告〈上告棄却〉 文献番号 1995WLJPCA05310009
 ところで、児童福祉法六〇条三項の「児童を使用する者」とは、当該児童との間に継続的な雇用関係ないし身分関係にある者に限られず、広く当該児童との間に、社会通念上その年齢確認を義務づけることが相当として是認されるだけの継続的な支配従属関係があると認められる者、いいかえると、その者が当該児童に心理的ないし経済的な影響を及ぼすことにより当該児童の意思決定を左右しうる立場にあると認められるような関係を有する者も含まれると解すべきである。

②東京高裁s40.1.19*2
そして、法が使用者にこのような義務と責任を課したのは、その者が児童と密接な社会的関係にあつて当該児童の健全なる育成を担うに相応しい地位を有するからにほかならない。従つて前記条項にいわゆる「児童を使用する者」とは、これを必らずしも児童と継続的雇傭関係にある者のみに限定すべきではないけれども、少なくとも、児童に前記法禁行為をさせぬよう特にその年令の確認を義務づけることが社会通念上相当と認められる程度の密接な結びつきを当該児童との間に有する者に限定すべきであつて、所論のように、これを広く「児童の行為を利用し得る地位にある者」一般、殊に児童との社会的関係が比較的薄い者にまで拡張することは相当でない。

③大阪高裁S31.2.21*3
裁判年月日 昭和31年 2月21日 裁判所名 大阪高裁 裁判区分 判決
事件番号 昭30(う)1339号
事件名 児童福祉法違反被告事件
文献番号 1956WLJPCA02210009
 児童福祉法第六十条第三項は、児童と特別の身分関係ある者に児童の年齢を知るべき義務を負わせる趣旨であるから、同項にいわゆる「児童を使用する者」というのは、児童と雇傭契約関係にある者に限らず、児童との身分的若しくは組織的関連において児童の行為を利用し得る地位にある者を指称すると解するべきである。しかして、被告人と本件児童との関係は、前記の証拠により、被告人が児童との間の身分的組織的関係において児童の行為を利用し得る地位にあつたと認めるべきであるから、被告人は同項にいわゆる児童を使用する者に当るのである。そして、所論のように、被告人において同女が十八才未満の児童であることを知らなかつたとしても、児童を使用する者は、自ら戸籍謄抄本、住民登録又は米穀配給通帳等の公信力ある書面の参照その他通常可能な調査方法によつて児童の年齢を確認するべき注意義務を負うているにかかわらず、前記の証拠により、被告人が仲介者の言明を軽信して何らの調査をしなかつたことが明らかであるから、被告人は右児童の年齢を知らなかつたことについて過失があると言わなければならない。原判決が被告人に対し児童福祉法第三十四条第一項第六号、第六十条第一項、第三項を適用処断したのは正当であつて、記録を精査しても原判決には所論のような違法はないから、論旨は理由がない。
 よつて、刑事訴訟法第三百九十六条により主文のとおり判決する。
 (裁判長判事 松本圭三 判事 山崎薫 判事 辻彦一)

児童福祉法
判年月日 昭和34年 5月11日 裁判所名 最高裁第二小法廷 裁判区分 判決
事件番号 昭33(あ)3523号
文献番号 1959WLJPCA05110011
出典
裁判集刑 129号753頁
理  由
 しかし、所論引用の各判例は、児童福祉法六〇条三項但書にいわゆる児童の年齢を知らないことにつき過失がないというためには、単に児童本人の陳述または身体の発育状況等の外観的事情のみによつて年齢が満十八歳以上であると判断しただけでは不十分であつて、その外に客観的資料として、例えば戸籍抄本、食糧通帳もしくは父兄等について正確な調査を講じ以つて児童の年齢を確認する措置を採るべきである旨判示したもので、すなわち、児童雇入れに際し、右のような客観的資料が全然提供されていない場合における雇主の調査義務について判示したものである。
しかるに、本件原判決によれば、被告人は、原判示児童を接客婦として雇入れるに当り、その実家を訪問し、直接、本人およびその両親について調査したのではあるけれども、その際同人等の差し出した実は他人の戸籍抄本を、同人等の陳述のみによつてたやすく児童本人のものであると軽信したというのであつて、そして原判決は、かかる場合においては、児童又はその保護者において、その雇入を希望するの余り、他人の氏名を詐称して年齢を偽ること、殊に近頃のように年齢確認の資料として戸籍抄本が利用されるようになると他人の戸籍抄本を恰も児童本人のものであるかのように使用することも当然ありうることとして容易に想像できるから、このことをも考慮に入れて、先ずその差し出された戸籍抄本が児童本人のものであるか否かを確むべきであり、それが為には、単に児童およびその両親の一方的な陳述だけでたやすく軽信することなく、他の信頼すべき客観的資料に基づいて調査をなすべきであるのに、被告人はこれが調査を怠つているのであるから、いまだ児童福祉法六〇条三項但書にいわゆる年齢を知らないことにつき過失がない場合に該当しないと解するを相当とする趣旨を判示したものであつて、すなわち、原判決は、児童およびその両親が、児童本人の氏名を偽り他人の戸籍抄本を恰も本人のものの如く装つて提示した場合に関して、これを雇い入れんとする雇主の調査義務について判示したものである。従つて、所論引用の各判例と原判決とは、両者その事案を異にし、原判決は引用各判例になんら相反する判断を示していないこと明白であるから、所論判例違反の主張はその前提において失当である。のみならず、所論の実質は、被告人が本件児童の年齢を知らなかつたことにつき過失がないと解すべきに拘らず、過失があると解した原判決は、児童福祉法六〇条三項但書の解釈適用を誤つた違法があるとする単なる法令違反の主張(この点に関する原判決の判断は正当と認める。)に帰し、上告適法の理由に当らない。
 また記録を調べても刑訴四一一条を適用すべきものとは認められない。
 よつて同四一四条、三八六条一項三号により裁判官全員一致の意見で主文のとおり決定する。
 (裁判長裁判官 小谷勝重 裁判官 藤田八郎 裁判官 河村大助 裁判官 奥野健一)


大阪高等裁判所判決昭和46年11月16日
風俗営業等取締法七条三項但書に規定する年齢不知に関する過失の程度
刑事裁判資料229号413頁
       理   由
 年令に制限のある接客婦などを雇入れる場合において、その言葉や、前歴、容姿、態度あるいは紹介者の言葉だけでは人の正確な年令を知り得ないことはいうをまたないところであるうえ、接客婦として、雇傭されることを希望する者はその希望を遂げようとしてその紹介者は固より本人自身も恰も満一八歳以上であるかのように装い、その年令を偽り、雇主を欺くことの事例の多いことは証人Aの証言からも十分うかがわれるところであり、したがって、単に紹介者および本人の言葉や、容姿、態度、前歴等の外観的事情によってその者が満一八歳以上であると信じただけでは足らず、さらに客観的な資料として本人の戸籍謄・抄本あるいは住民票等について正確な調査をして、その者の年令を確認すべき注意義務があるのであって、右の確認措置を採らないかぎり、その者の年令を知らなかったことについて過失がなかったとはいえないものと解すべきが相当である。

https://news.yahoo.co.jp/articles/e74558963089a3383c999c45eaeed8571736f6da
「Aさんは採用面接の際、20歳の友人から借りた健康保険証を提示したそうです。顔写真はついていませんでした。容疑者は『年齢確認を怠った責任は自分にある』と話す一方で、『(Aさんが)17歳の子どもだとは把握していなかった』と犯行を一部否認しています」(同前)