児童ポルノ・児童買春・児童福祉法・監護者性交・不同意性交・不同意わいせつ・青少年条例・不正アクセス禁止法・わいせつ電磁的記録・性的姿態撮影罪弁護人 奥村徹弁護士の見解(弁護士直通050-5861-8888 sodanokumurabengoshi@gmail.com)

性犯罪・福祉犯(監護者わいせつ罪・強制わいせつ罪・児童ポルノ・児童買春・青少年条例・児童福祉法)の被疑者(犯人側)の弁護を担当しています。専門家向けの情報を発信しています。

弁護士奥村徹(大阪弁護士会) 事務所での面談相談・電話・メール・skype・zoom等で対応しています。

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児童ポルノ単純所持罪の対応~女子高生TikToker(tiktok TikTok チックトック チックトッカー)の動画をダウンロードとか販売した人の対応 AiiPeep(アイイピープ)とか動画シェアとか、パンコレとか、アルバムコレクション等も

五月雨式に相談がくるので、まとめておきます

1 ダウンロード者

児童ポルノ単純所持罪が検討される。

7条1項
自己の性的好奇心を満たす目的で、児童ポルノを所持した者(自己の意思に基づいて所持するに至った者であり、かつ、当該者であることが明らかに認められる者に限る。)は、一年以下の懲役又は百万円以下の罰金に処する

 完全削除(できれば物理的破壊)で、刑事責任は回避できる。この罪だけでは逮捕はない。

 捜索を受けた時に備えて、
  ①間違ってダウンロードした場合は、「自己の性的好奇心を満たす目的」に欠けるという弁解
  ②ダウンロード元の情報として、児童(「15歳」とか「17歳」とか)と表示されていない場合には、「児童と知らなかった」という弁解
を用意しておく。弁護士に相談して、最寄り警察に相談しておけば捜索の危険はかなり下がる。

 被害者対応は、警察相談と併行して。
 あちらからの流出経緯・こちらの入手状況・児童性の認識の程度によっては、不法行為責任は小さくなる可能性。
 撮影した者は製造罪になる。出演児童も共犯になりうるという裁判例もある。

リベンジポルノ罪については、普通、画像上はわからないので、そう弁解する。

私事性的画像記録の提供等による被害の防止に関する法律
(定義)
第二条 この法律において「私事性的画像記録」とは、次の各号のいずれかに掲げる人の姿態が撮影された画像(撮影の対象とされた者(以下「撮影対象者」という。)において、撮影をした者、撮影対象者及び撮影対象者から提供を受けた者以外の者(次条第一項において「第三者」という。)が閲覧することを認識した上で、任意に撮影を承諾し又は撮影をしたものを除く。次項において同じ。)に係る電磁的記録(電子的方式、磁気的方式その他人の知覚によっては認識することができない方式で作られる記録であって、電子計算機による情報処理の用に供されるものをいう。同項において同じ。)その他の記録をいう。
一 性交又は性交類似行為に係る人の姿態
二 他人が人の性器等(性器、肛こう門又は乳首をいう。以下この号及び次号において同じ。)を触る行為又は人が他人の性器等を触る行為に係る人の姿態であって性欲を興奮させ又は刺激するもの
三 衣服の全部又は一部を着けない人の姿態であって、殊更に人の性的な部位(性器等若しくはその周辺部、臀でん部又は胸部をいう。)が露出され又は強調されているものであり、かつ、性欲を興奮させ又は刺激するもの
2 この法律において「私事性的画像記録物」とは、写真、電磁的記録に係る記録媒体その他の物であって、前項各号のいずれかに掲げる人の姿態が撮影された画像を記録したものをいう。
(私事性的画像記録提供等)
第三条 第三者が撮影対象者を特定することができる方法で、電気通信回線を通じて私事性的画像記録を不特定又は多数の者に提供した者は、三年以下の懲役又は五十万円以下の罰金に処する。
2 前項の方法で、私事性的画像記録物を不特定若しくは多数の者に提供し、又は公然と陳列した者も、同項と同様とする。
3 前二項の行為をさせる目的で、電気通信回線を通じて私事性的画像記録を提供し、又は私事性的画像記録物を提供した者は、一年以下の懲役又は三十万円以下の罰金に処する。
4 前三項の罪は、告訴がなければ公訴を提起することができない。
5 第一項から第三項までの罪は、刑法(明治四十年法律第四十五号)第三条の例に従う。

 捜索はあるかないかわからないし、破棄してあれば捜索は空振りに終わるので、捜索を甘受するという選択肢もあるという説明をします。
 どうしても、捜索を回避したい(士業・医師・歯科医・教授・教員・就職活動中の学生等)の場合には、弁護士が対応します。
 弁護士費用としては
  相談料は22000円(確実に支払って頂けるのであれば長期分割可能)
  対応する場合の費用は、220000円程度(士業・教員・公務員は330000円 他に出張日当55000円+交通費 被害者対応をしない場合、報酬金はなし。確実に支払って頂けるのであれば長期分割可能)
と回答しています。
 県警によっては、「捜索差押しない・刑事処分ない」という回答をもらえることがある。


2 販売者・アップロード者
 わいせつ電磁的記録頒布罪・公然陳列罪
 児童ポルノ提供罪・公然陳列罪・提供目的製造罪
 リベンジポルノ公表罪
などが検討されるので、弁護士に相談して、逮捕を回避したい。

7条
6児童ポルノを不特定若しくは多数の者に提供し、又は公然と陳列した者は、五年以下の懲役若しくは五百万円以下の罰金に処し、又はこれを併科する。電気通信回線を通じて第二条第三項各号のいずれかに掲げる児童の姿態を視覚により認識することができる方法により描写した情報を記録した電磁的記録その他の記録を不特定又は多数の者に提供した者も、同様とする。
7前項に掲げる行為の目的で、児童ポルノを製造し、所持し、運搬し、本邦に輸入し、又は本邦から輸出した者も、同項と同様とする。同項に掲げる行為の目的で、同項の電磁的記録を保管した者も、同様とする。

 弁護士費用は、逮捕危険があるので、応相談としています。分割払は可能。
 中心的な弁護士費用としては
  相談料は22000円
  対応する場合の費用は、
   着手金330000円程度(他に出張日当55000円+交通費 被害者対応をしない場合。確実に支払って頂けるのであれば長期分割可能)
   報酬金220000円程度(逮捕されなかった場合。確実に支払って頂けるのであれば長期分割可能)
と回答しています。


追記2021/08/27
 ダウンロード・購入者の捜索回避の警察相談は各地に数件かかりました。
 いずれはどこかの警察(被害者の住所など)に集中するんじゃないでしょうか。

追記2021/09/17
 児童ポルノ製造罪・提供罪・単純所持罪について捜査している警察(A都道府県警察のB警察署)は判明し、連絡が取れました。
 購入者は地元警察・B警察署へ相談。
 販売者は、B警察署へ。(B警察署名は教えられません。例えば大阪市西天満に済む花子さん(17歳)が、「はなちゃん」という芸名で活動していて、その裸体画像が流出した場合に、「はなちゃんさんが天満警察署に相談した」と公表してしまうと、はなちゃんの児童ポルノであること・天満警察管内に住所があることがバレてしまい、被害者が特定されてしまうからです。)


 所持罪の捜索があったという知恵袋の書き込みがありましたが削除されました。 
https://detail.chiebukuro.yahoo.co.jp/qa/question_detail/q12249473407
推知報道禁止と思われます。

 第一三条(記事等の掲載等の禁止)
 第四条から第八条までの罪に係る事件に係る児童については、その氏名、年齢、職業、就学する学校の名称、住居、容貌ぼう等により当該児童が当該事件に係る者であることを推知することができるような記事若しくは写真又は放送番組を、新聞紙その他の出版物に掲載し、又は放送してはならない。

追記 2022/01/01
AiiPeepの購入者については、
埼玉県警以外の警察による捜索が複数観測されましたので、
埼玉県警からの情報提供を受けて各地の警察が捜査しているものと思います(全国協働方式)

追記 2022/03/31
AiiPeepの購入者については、
埼玉県警以外の警察による捜索が複数観測されましたが、
破棄して警察相談した人は捜索は受けず
捜索を受けて現認された人は、ほぼ罰金という処理になっています。

被告人が自己の陰茎をCの陰部に押し当て性交しようとする姿態は、 「児童を相手方とする性交に係る児童の姿態」(児童ポルノ法2条3項1号)か(名古屋地裁r5.9.27)

被告人が自己の陰茎をCの陰部に押し当て性交しようとする姿態は、 「児童を相手方とする性交に係る児童の姿態」(児童ポルノ法2条3項1号)か(名古屋地裁r5.9.27)
 児童ポルノ法の「性交」は膣性交で、膣内に陰茎を挿入した状態をいうので、挿入してない場合は「性交」とは言えないでしょう。性交類似行為か性器接触でしょう。

第二条(定義)
3この法律において「児童ポルノ」とは、写真、電磁的記録(電子的方式、磁気的方式その他人の知覚によっては認識することができない方式で作られる記録であって、電子計算機による情報処理の用に供されるものをいう。以下同じ。)に係る記録媒体その他の物であって、次の各号のいずれかに掲げる児童の姿態を視覚により認識することができる方法により描写したものをいう。
一 児童を相手方とする又は児童による性交又は性交類似行為に係る児童の姿態
二 他人が児童の性器等を触る行為又は児童が他人の性器等を触る行為に係る児童の姿態であって性欲を興奮させ又は刺激するもの
三 衣服の全部又は一部を着けない児童の姿態であって、殊更に児童の性的な部位(性器等若しくはその周辺部、臀でん部又は胸部をいう。)が露出され又は強調されているものであり、かつ、性欲を興奮させ又は刺激するもの

文献番号】25621142
強制性交等(変更後の訴因 強制性交等致傷)、強制わいせつ、わいせつ誘拐、逮捕監禁、強制性交等未遂、児童買春、児童ポルノに係る行為等の規制及び処罰並びに児童の保護等に関する法律違反、準強制わいせつ被告事件
名古屋地方裁判所
令和6年9月27日刑事第3部判決

罪となるべき事実
第2 被告人は、別紙2記載の被害者C(当時11歳)及び被害者D(当時9歳)が13歳未満の者であることを知りながら、
1 C及びDと性交又はわいせつな行為をしようと考え、令和3年7月10日午後3時42分頃から同日午後3時44分頃までの間、別紙2記載の名古屋市β区内の公園個室トイレ内において、同個室トイレ出入口付近にいたC及びDに対し、「俺、病気でお腹ちょっと悪くて、おしっこがちょっと出にくいんだよね。」「膿みたいなのを出さないといけなくて、それちょっと5分位手伝ってもらってもいいかな。」等と嘘を言って、C及びDを同個室トイレ内に誘い込み、同個室トイレの出入口ドアを内側から施錠してC及びDを自己の支配下に置き、もってわいせつの目的でC及びDを誘拐した上、その頃から同日午後3時59分頃までの間、同所において、C及びDを同所から脱出することを困難にさせて不法に監禁し、Cについては同人の手首をビニールテープ様のもので縛るなどして不法に逮捕し、その間、同所において、Cに対し、自己の陰茎を手淫させ、Cのズボンとパンツを脱がせ、その陰部に自己の陰茎を押し当ててCと性交しようとしたが、Cの膣内に自己の陰茎を挿入することができなかったため、その目的を遂げず、さらに、その頃、同所において、Dに対し、Cに自己の陰茎を手淫させたりCと性交しようとしたりする姿を見せつけて、13歳未満の者に対し、わいせつな行為をし、

2 その頃、同所において、ひそかに、Cが被告人の陰茎を手淫する姿態、被告人がCの陰部を触る姿態及び被告人が自己の陰茎をCの陰部に押し当て性交しようとする姿態を、同所に設置した動画撮影機能付き携帯電話機で動画撮影し、その動画データ1点を同携帯電話機の内蔵記録装置に記録して保存し、もってひそかに児童を相手方とする性交に係る児童の姿態並びに他人が児童の性器等を触る行為及び児童が他人の性器等を触る行為に係る児童の姿態であって性欲を興奮させ又は刺激するものを視覚により認識することができる方法により電磁的記録に係る記録媒体に描写した児童ポルノを製造した。

映像送信要求罪・性的姿態撮影罪における「性器」「性器の周辺部」の定義がない

映像送信要求罪・性的姿態撮影罪における「性器」「性器の周辺部」
 令和5年の改正で、刑法や性的姿態撮影罪に「性器」「性器の周辺部」という用語が初登場して、定義がありません。

刑法
(十六歳未満の者に対する面会要求等)
第百八十二条
3十六歳未満の者に対し、次の各号に掲げるいずれかの行為(第二号に掲げる行為については、当該行為をさせることがわいせつなものであるものに限る。)を要求した者(当該十六歳未満の者が十三歳以上である場合については、その者が生まれた日より五年以上前の日に生まれた者に限る。)は、一年以下の拘禁刑又は五十万円以下の罰金に処する。
一性交、肛門性交又は口腔性交をする姿態をとってその映像を送信すること。
二前号に掲げるもののほか、膣又は肛門に身体の一部(陰茎を除く。)又は物を挿入し又は挿入される姿態、性的な部位(性器若しくは肛門若しくはこれらの周辺部、臀でん部又は胸部をいう。以下この号において同じ。)を触り又は触られる姿態、性的な部位を露出した姿態その他の姿態をとってその映像を送信すること。

(性的姿態等撮影)
第二条
1次の各号のいずれかに掲げる行為をした者は、三年以下の拘禁刑又は三百万円以下の罰金に処する。
一正当な理由がないのに、ひそかに、次に掲げる姿態等(以下「性的姿態等」という。)のうち、人が通常衣服を着けている場所において不特定又は多数の者の目に触れることを認識しながら自ら露出し又はとっているものを除いたもの(以下「対象性的姿態等」という。)を撮影する行為
イ人の性的な部位(性器若しくは肛こう門若しくはこれらの周辺部、臀でん部又は胸部をいう。以下このイにおいて同じ。)又は人が身に着けている下着(通常衣服で覆われており、かつ、性的な部位を覆うのに用いられるものに限る。)のうち現に性的な部位を直接若しくは間接に覆っている部分

「性器」は国語辞典に従い、陰茎・陰嚢・小陰唇・大陰唇・膣口を指し、尿道口は含まないことになりそう。

https://dictionary.goo.ne.jp/word/%E6%80%A7%E5%99%A8/#jn-121234
せい‐き【性器】 の解説
生殖器官。生殖器

広辞苑
せい‐き 【性器】 生殖器に同じ。普通には外生殖器をいう。

明鏡国語辞典
せい‐き【性器】
[名]生殖器。特に、人の生殖器(の、体外に現れている陰茎・陰囊(いんのう)・陰唇など)。
明鏡国語辞典 第三版 (C) Kitahara Yasuo and Taishukan, 2023

新明解国語辞典
せい き[1] 【性器】
動物、特に人間の生殖器
性器

大辞泉
せい‐き【性器】
生殖器官。生殖器

 性器の周辺部はどの辺までかな。
 トイレの天井からの盗撮とか、保育園の園外からの盗撮で「性器の周辺部」が撮影されているみたいで、かなり広く解されているようだ。

判例

性的姿態等撮影、児童買春、児童ポルノに係る行為等の規制及び処罰並びに児童の保護等に関する法律違反、公衆に著しく迷惑をかける暴力的不良行為等の防止に関する条例違反(三重県)、性的姿態等撮影未遂被告事件
名古屋地判令和5年12月14日D1-Law.com判例体系〔28320322〕
身体を撮影した。
第2(令和5年9月12日付け起訴状記載の公訴事実)
  被告人は、正当な理由がないのに、令和5年7月27日午後8時頃から同日午後9時30分頃までの間に、前記女子トイレ内において、別紙記載のA(当時13歳)が18歳に満たない者であることを知りながら、ひそかに、あらかじめ同トイレ天井に設置していた前記カメラで、用便中のAの性器の周辺部を動画撮影し、同月28日午前8時44分頃、F市(以下略)被告人方において、前記のとおり撮影した電磁的記録である動画データ1点を被告人が使用していたパーソナルコンピュータの内蔵記憶装置に記録して保存し、もって、ひそかに、人の性的な部位を撮影するとともに、衣服の全部又は一部を着けない児童の姿態であって、殊更に児童の性的な部位が露出され又は強調されているものであり、かつ、性欲を興奮させ又は刺激するものを視覚により認識することができる方法により、電磁的記録に係る記録媒体に描写することにより、児童ポルノを製造した。
第3(令和5年10月24日付け起訴状記載の公訴事実第2)
  被告人は、正当な理由がないのに、令和5年7月31日午後4時40分頃から同日午後6時10分頃までの間に、前記女子トイレ内において、ひそかに、あらかじめ同トイレ天井に設置していた前記カメラで、用便中の別紙記載のC(当時14歳)の性器の周辺部を動画撮影した。

判決文
■28321419
熊本地方裁判所
令和5年(わ)第516号/令和5年(わ)第606号
令和06年02月07日
(罪となるべき事実)
第3 正当な理由がないのに、別紙記載の被害者C(当時4歳)及びD(当時5歳)が13歳未満の児童であることを知りながら、同日午前11時20分頃、別紙記載の犯行場所2において、ひそかに、C及びDの性器の周辺部及び胸部を写真撮影機能付きスマートフォンで撮影し、その画像データ2点を同スマートフォン本体の内蔵記録装置に記録して保存した。

「娘は男子生徒から好意を寄せられており、勝手に娘の顔写真ときわどいグラビアアイドルの体の写真を組み合わせた画像を作り、周囲に見せた」「同級生の男子たちが勝手に私の写真を使ってコラ画像を作っています。」という場合は、児童ポルノには該当しない。


 繰り返されますが
https://okumuraosaka.hatenadiary.jp/entry/20141218/1418894110

 基本的な条文解釈でして
  児童=実在する18歳未満の自然人で
  児童ポルノは、2条3項各号に該当する「児童」の姿態
だから、児童ポルノは実在する18歳未満の自然人の姿態に限られます。

児童買春、児童ポルノに係る行為等の規制及び処罰並びに児童の保護等に関する法律(H26改正後)
第二条(定義)
1 この法律において「児童」とは、十八歳に満たない者をいう。
2この法律において「児童買春」とは、次の各号に掲げる者に対し、対償を供与し、又はその供与の約束をして、当該児童に対し、性交等(性交若しくは性交類似行為をし、又は自己の性的好奇心を満たす目的で、児童の性器等(性器、肛門又は乳首をいう。以下同じ。)を触り、若しくは児童に自己の性器等を触らせることをいう。以下同じ。)をすることをいう。
一 児童
二 児童に対する性交等の周旋をした者
三 児童の保護者(親権を行う者、未成年後見人その他の者で、児童を現に監護するものをいう。以下同じ。)又は児童をその支配下に置いている者
3この法律において「児童ポルノ」とは、写真、電磁的記録(電子的方式、磁気的方式その他人の知覚によっては認識することができない方式で作られる記録であって、電子計算機による情報処理の用に供されるものをいう。以下同じ。)に係る記録媒体その他の物であって、次の各号のいずれかに掲げる児童の姿態を視覚により認識することができる方法により描写したものをいう。
一 児童を相手方とする又は児童による性交又は性交類似行為に係る児童の姿態
二 他人が児童の性器等を触る行為又は児童が他人の性器等を触る行為に係る児童の姿態であって性欲を興奮させ又は刺激するもの
三 衣服の全部又は一部を着けない児童の姿態であって、殊更に児童の性的な部位(性器等若しくはその周辺部、臀でん部又は胸部をいう。)が露出され又は強調されているものであり、かつ、性欲を興奮させ又は刺激するもの

https://news.yahoo.co.jp/articles/c1deea4420f2d4939133609e80b84708f977447f
子どもがきわどい画像や、悪意のある画像を本人の許可なく加工してしまうことに、法的な問題はないのでしょうか。日向 一仁弁護士に聞きました。

●14歳以上は刑事責任問われる可能性も
――本人に無断でその画像を使用して、きわどいコラ画像や、悪意のあるコラ画像を作る行為に法的問題はないのでしょうか。


コラ画像であっても児童ポルノに該当する18歳未満の児童の裸姿・下着姿等の写真等を所持したり製造したりすると、いわゆる児童ポルノ法に違反する場合はありえます。この場合、所持等をしていたのが14歳以上であれば刑事責任を問われることがあります。

わいせつ目的誘拐+逮捕監禁罪と強制わいせつ罪(176条後段)・強制性交未遂は科刑上一罪だが、その際の児童ポルノ製造は併合罪(名古屋地裁R6.9.27)

 わいせつ目的には売春させるとかも含み、わいせつ誘拐と児童ポルノ製造は牽連犯になるという裁判例(山口地裁h210204)があるから、結局、判示第2は科刑上一罪になるという主張ができる。

【文献番号】25621142
強制性交等(変更後の訴因 強制性交等致傷)、強制わいせつ、わいせつ誘拐、逮捕監禁、強制性交等未遂、児童買春、児童ポルノに係る行為等の規制及び処罰並びに児童の保護等に関する法律違反、準強制わいせつ被告事件
名古屋地方裁判所令和6年9月27日刑事第3部判決
(罪となるべき事実)
第2 被告人は、別紙2記載の被害者C(当時11歳)及び被害者D(当時9歳)が13歳未満の者であることを知りながら、
1 C及びDと性交又はわいせつな行為をしようと考え、令和3年7月10日午後3時42分頃から同日午後3時44分頃までの間、別紙2記載の名古屋市β区内の公園個室トイレ内において、同個室トイレ出入口付近にいたC及びDに対し、「俺、病気でお腹ちょっと悪くて、おしっこがちょっと出にくいんだよね。」「膿みたいなのを出さないといけなくて、それちょっと5分位手伝ってもらってもいいかな。」等と嘘を言って、C及びDを同個室トイレ内に誘い込み、同個室トイレの出入口ドアを内側から施錠してC及びDを自己の支配下に置き、もってわいせつの目的でC及びDを誘拐した上、その頃から同日午後3時59分頃までの間、同所において、C及びDを同所から脱出することを困難にさせて不法に監禁し、Cについては同人の手首をビニールテープ様のもので縛るなどして不法に逮捕し、その間、同所において、Cに対し、自己の陰茎を手淫させ、Cのズボンとパンツを脱がせ、その陰部に自己の陰茎を押し当ててCと性交しようとしたが、Cの膣内に自己の陰茎を挿入することができなかったため、その目的を遂げず、さらに、その頃、同所において、Dに対し、Cに自己の陰茎を手淫させたりCと性交しようとしたりする姿を見せつけて、13歳未満の者に対し、わいせつな行為をし、
2 その頃、同所において、ひそかに、Cが被告人の陰茎を手淫する姿態、被告人がCの陰部を触る姿態及び被告人が自己の陰茎をCの陰部に押し当て性交しようとする姿態を、同所に設置した動画撮影機能付き携帯電話機で動画撮影し、その動画データ1点を同携帯電話機の内蔵記録装置に記録して保存し、もってひそかに児童を相手方とする性交に係る児童の姿態並びに他人が児童の性器等を触る行為及び児童が他人の性器等を触る行為に係る児童の姿態であって性欲を興奮させ又は刺激するものを視覚により認識することができる方法により電磁的記録に係る記録媒体に描写した児童ポルノを製造した。
(法令の適用)
1 罰条
判示第1の所為 令和5年法律第66号附則2条1項により同法による改正前の刑法176条後段
判示第2の1の所為のうち
各わいせつ誘拐の点 被害者ごとに刑法225条
Cに対する逮捕監禁の点 刑法220条
Dに対する監禁の点 刑法220条
強制性交等未遂の点 令和5年法律第66号附則2条1項により同法による改正前の刑法180条、177条後段
強制わいせつの点 令和5年法律第66号附則2条1項により同法による改正前の刑法176条後段
判示第2の2の所為 児童買春、児童ポルノに係る行為等の規制及び処罰並びに児童の保護等に関する法律7条5項、2項、2条3項1号、2号
判示第3の各所為 被害者ごとに令和5年法律第66号附則2条1項により同法による改正前の刑法178条1項、176条前段
判示第4の所為 令和5年法律第66号附則2条1項により同法による改正前の刑法181条2項(177条前段)
2 科刑上一罪の処理
判示第2の1 刑法54条1項前段、後段、10条(Cに対するわいせつ誘拐と逮捕監禁、Dに対するわいせつ誘拐と監禁、Cに対する強制性交等未遂とDに対する強制わいせつは、それぞれ1個の行為が2個の罪名に触れる場合であり、Cに対するわいせつ誘拐と強制性交等未遂、Dに対するわいせつ誘拐と強制わいせつとの間にはそれぞれ手段結果の関係があるので、結局以上を1罪として最も重い強制性交等未遂罪の刑で処断)
判示第3 刑法54条1項前段、10条(各被害者に対する準強制わいせつは、1個の行為が2個の罪名に触れる場合であるが、被害者ごとに犯情が異ならないから、いずれかを特定することなく、1罪として準強制わいせつ罪の刑で処断)
3 刑種の選択 判示第2の2の罪について懲役刑を選択
判示第4の罪について有期懲役刑を選択
4 併合罪の処理 刑法45条前段、47条本文、10条(最も重い判示第4の罪の刑に法定の加重)
5 未決勾留日数の算入 刑法21条
6 訴訟費用の不負担 刑事訴訟法181条1項ただし書
令和6年9月27日
名古屋地方裁判所刑事第3部
裁判長裁判官 吉田智宏 裁判官 須田健嗣 裁判官 河合美月

sexting(映像送信要求罪+不同意わいせつ罪+性的姿態撮影罪+児童ポルノ製造罪)の罪数処理

 だいたいこういう公訴事実で4罪を科刑上一罪で起訴されることが多いようです。

公訴事実例
被告人は、A(13歳)が16歳未満の者であり、かつ、自らが前記Aの生まれた日より5年以上前の日に生まれた者であることを知りながら
正当な理由がないのに、
令和6年12月26日午前10時02分ころ大阪府大阪市北区の被告人方において、前記Aに対し、自己が使用する携帯電話機のアプリケーションゾフ卜「LINE」のメッセージ機能を利用し、「陰茎見せてよ」などと記載しメッセージを送信し、その頃、同人にこれらを閲覧させ、もって性的な部位を露出した姿態をとってその映像を送信することを要求し、
同日午前11時20分頃、同人に、その陰茎を露出した姿態をとらせ、
これを同人が使用する撮影機能付き携帯電話機で撮影させ、
同日午前11時27分頃、その画像データ12点を同携帯電話機から前記「LINE」を利用して被告人が使用する携帯電話機に送信させ、その頃、同画像データ123点を株式会社が管理する日本国内に設置されたサーバコンピュータ内に記録、保存させ、
もって16歳未満の者に対じ、わいせつな行為をし、13歳以上16歳未満の者を対象として、その性的姿態等を撮影する行為をするとともに、衣服の全部又は一部を着けない児童の姿態であって、殊更に児童の性的な部位が露出され又は強調されているものであり、かつ、性欲を興奮させ又は刺激するものを視覚により認識することができる方法により描写した電磁的記録に係る記録媒体である児童ポルノを製造した。

一罪になるか検討するするにあたっては、各罪に該当する事実に分類する必要があります。

 

 要求罪・性的姿態撮影罪は実行行為がピンポイントなので、他罪との重なり合いが小さく、観念的競合にはなりにくいと思います。
 
 最決h21.10.21の罪数判断の手法(児童淫行罪と姿態をとらせて製造罪とは併合罪)が効いてくると思うんだよ

      最決h21.10.21
      所論は,上記両罪は併合罪の関係にあるから,児童ポルノ法違反の事実については,平成20年法律第71号による改正前の少年法37条によれば,上記家庭裁判所支部は管轄を有しない旨主張する。
      そこで,検討するに,児童福祉法34条1項6号違反の罪は,児童に淫行をさせる行為をしたことを構成要件とするものであり,他方,児童ポルノ法7条3項の罪は,児童に同法2条3項各号のいずれかに掲げる姿態をとらせ,これを写真,電磁的記録に係る記録媒体その他の物に描写することにより,当該児童に係る児童ポルノを製造したことを構成要件とするものである。本件のように被害児童に性交又は性交類似行為をさせて撮影することをもって児童ポルノを製造した場合においては,被告人の児童福祉法34条1項6号に触れる行為と児童ポルノ法7条3項に触れる行為とは,
      一部重なる点はあるものの,
      両行為が通常伴う関係にあるとはいえないことや,
      両行為の性質等にかんがみると,
      それぞれにおける行為者の動態は社会的見解上別個のものといえるから(最高裁昭和47年(あ)第1896号同49年5月29日大法廷判決・刑集28巻4号114頁参照),両罪は,刑法54条1項前段の観念的競合の関係にはなく,同法45条前段の併合罪の関係にあるというべきである。

 

      判例タイムズ1326号134頁 最高裁判所第1小法廷 平成19年(あ)第619号 児童福祉法違反,児童買春,児童ポルノに係る行為等の処罰及び児童の保護等に関する法律違反被告事件 平成21年10月21日
      匿名解説
             4 刑法54条1項前段の観念的競合の要件である「一個の行為」に関しては,最大判昭49.5.29刑集28巻4号114頁,判タ309号234頁が,「一個の行為とは,法的評価をはなれ構成要件的観点を捨象した自然的観察のもとで,行為者の動態が社会的見解上一個のものとの評価をうける場合をいう」としているが,具体的な当てはめについては,必ずしも容易でなかった面もあったように思われる。数個の罪名に触れる行為が完全に重なっていれば,これを「一個の行為」と解すベきことについては異論はないであろうし,行為の重なり合いが「一個の行為」性の判断において重要な要素であることも間違いないと思われる。しかし,上記大法廷判決に関しても,行為の重なり合いは「一個の行為」であるための必須の要件とは解されていなかったと指摘されていたのであり(本吉邦夫・昭49最判解説(刑)113頁,金築誠志・昭58最判解説(刑)322頁等参照),同判例における酒酔い運転と業務上過失致死のように,継続犯とその一時点で成立する他の罪については,行為に重なり合いがあるともいえるものの,「一個の行為」ではないとされるのが通常である。また,最一小判昭58.9.29刑集37巻7号1110頁,判タ509号88頁においては,覚せい剤取締法上の輸入罪と関税法上の無許可輸入罪について,それぞれの実行行為は重ならないと考えられるのに,「一個の行為」であることを認めている(同様の関係は,戸別訪問の罪とその機会に行われた各種違法選挙運動の罪が観念的競合とされていることについても存在するとの指摘もある。)。
        本件で問題となった3項製造罪については,「姿態をとらせ」の要件の意義をどう理解するかによって,同罪と児童淫行罪等との行為の重なり合いの判断も異なってくる可能性もあるが,本決定は,「被告人の児童福祉法34条1項6号に触れる行為と児童ポルノ法7条3項に触れる行為とは,一部重なる点はあるものの」としており,行為の重なり合いがあること自体は認めている(本決定が「姿態をとらせ」を構成要件として規定された行為ととらえていることは明らかである。)。その上で,
      「両行為が通常伴う関係にあるといえないこと」や,
      「両行為の性質等」
      を挙げて,結論として両罪は併合罪であるとの判断をしており,「一個の行為」であるかの判断における考慮要素として,興味深い判示であるように思われる。実際に生じ得る事例を考えてみても,前記最三小決平成18年によれば複製行為についても3項製造罪を構成し得ることになるから,児童淫行罪等と児童ポルノ製造罪のそれぞれを構成する行為の同時性が甚だしく欠けることがあり,一事不再理効の及ぶ範囲等を考えても,併合罪説の方が妥当な結論を導くことができるように思われる。

 

文献

最高裁判例解説刑事篇平成21年度496頁 平成19年(あ)第619号

最高裁判所判例解説刑事篇平成21年度
三浦透ルノ等処罰法7条3項の児童ポルノ製造罪とが併合罪の関係にあるとされ
た事例〔22〕
2    本決定の罪数に関する判例違反及び法令違反の主張に対する判示につ
いて
(1)    判例違反の主張に対する判示
本決定は,「上告趣意のうち,判例違反をいう点は,事案を異にする判例を引用
するものであって,本件に適切でないか,実質は単なる法令違反の主張であ」る
としている。
上告趣意は,【判例①】ないし【判例⑦】を判例違反として引用しているが,そ
れぞれ上記の理由から判例違反の主張としては不適法とされたものである。
(2)    罪数に関する法令違反の主張に対する判示
本決定は,前記のとおり,「本件のように被害児童に性交又は性交類似行為をさ
せて撮影することをもって児童ポルノを製造した場合においては,被告人の児
童福祉法34条1項6号に触れる行為と児童ポルノ法7条3項に触れる行為とは,一
部重なる点はあるものの,両行為が通常伴う関係にあるとはいえないことや,両
行為の性質等にかんがみると,それぞれにおける行為者の動態は社会的見解上
別個のものといえるから(最高裁昭和47年(あ)第1896号同49年5月29日大法廷判
決?刑集28巻4号114頁参照),両罪は,刑法54条1項前段の観念的競合の関係には
なく,同法45条前段の併合罪の関係にあるというべきである。」と判示してお
り,【判例①】の判断枠組みを前提とし,行為が一部重なり合うこと自体は認め
ながら(本決定が「姿態をとらせ」ることを構成要件として規定された行為と
とらえていることは明らかである。),両行為が通常伴う関係にあるとはいえな
いことや,両行為の性質等を理由として挙げて,一個の行為であることを否定し
ている。
その背景には,以上のような考察があるのではないかと推察される。
本決定が,「一個の行為」に関する判断に際して,両行為の重なり合いだけでな
く,両行為が通常伴う関係にあるといえるか,あるいは,両行為の性質等にも言
及していることは,本件における児童淫行罪と3項製造罪との関係についてだけ
でなく,他の犯罪の組み(注 50)合わせにおいても参考となるところであり,ひ
いては観念的競合の判断一般との関係においても興味深い判示であると思われ
る。
(注50)東京高裁平成19年判決が判示するところのほか,菅原・後掲84頁参照。

 

 

菅原暁 最新・判例解説(第3回)児童福祉法第34条第1項第6号違反の児童に淫行をさせる罪と,児童買春,児童ポルノに係る行為等の処罰及び児童の保護等に関する法律第7条第3項の児童ポルノ製造罪とが併合罪の関係にあるとされた事例[最高裁判所第一小法廷平成21.10.21決定] 捜査研究720号78頁

2 観念的競合の判断基準
ところで, 刑法第54条第1項前段は, 「1個の行為が2個以上の罪名に触れ
(中略)るとき」を観念的競合として「その最も重い刑により処断する。」と規
定しているところ.児童をして淫行させながらその様子をデジタルピデオカメ
ラで撮影する行為は 一見すると1個の行為のようにも思われる。
そうすると.本決定がこれを「1個の行為」とは考えなかった理由は何なのか
複数の罪が観念的競合の関係にあるかどうかの判断基準が問題である。
この点について判示しているのは,本決定が引用する最高裁昭和49年判決であ
る。
同判決は,酒酔い運転の事実と,運転中における酒酔いに基づくいわゆる運転中
止義務違反を過失とする業務上過失致死の事実について,「刑法54条1項前段
の規定は, 1個の行為が同時に数個の犯罪構成要件に該当して数個の犯罪が競
合する場合において,これを処断上の一罪として刑を科する趣旨のものである
ところ,右規定にいう 1個の行為とは,法的評価を離れ構成要件的観点を捨象
した自然的観察の下で,行為者の動態が社会的見解上1個のものとの評価をう
ける場合をいうと解すべきである。」と判示した上,酒酔い運転の罪とその運
転中に行われた業務上過失致死の罪との罪数関係について,「もともと自動車
を運転する行為は,その形態が,通常時間的継続と場所的移動を伴うものである
のに対し,その過程において人身事故を発生させる行為は,運転継続中における
一時点ー場所における事象であって,前記の自然的観察からするならば,両者
は,酒に酔った状態で運転したことが事故を惹起した過失の内容をなすものか
どうかにかかわりなく,社会的見解上別個のものと評価すべきであって,これを
1個のものとみることはできない。」として,両罪は併合罪の関係にあると結
論づけたものである。
したがって,上記昭和49年判決によれば,「法的評価を離れ構成要件的観点を
捨象した自然的観察の下で,行為者の動態が社会的見解上1個のものとの評価
をうける場合」に当たるかどうかにより,複数の罪が観念的競合の関係にある
かどうかが判断できるはずであるが,本件では,同じ基準によって,第二審が,
「児童に淫行させる行為とその姿態を撮影する行為は,法的評価を離れ構成要
件的観点を捨象した自然的観察の下で,行為者の動態が社会的見解上一個のも
のと評価されるものである」として,児童に淫行させる罪と児童ポルノ製造罪
とは観念的競合の関係にあると判断する一方,本決定は,これらの行為が「一部
重なる点はあるものの,両行為が通常伴う関係にあるとはいえないことや,両行
為の性質等にかんがみると,それぞれにおける行為者の動態は社会的見解上別
個のものといえる」として,両罪は併合罪の関係にあると判断している。
このような結論の違いが生じたのは,本件の第二審が,児童に淫行させる行為
と,これをデジタルビデオカメラで撮影する行為につき本件犯行の際に,実際に
行われた行為を前提として,時間的・場所的に重なり合っていることを重視し
たと思われるのに対し,本決定では,犯行の際の時間的・場所的な重なり合いだ
けでなく.両行為が通常伴う関係にあるかという点や両行為の性質等をも考屈
したために生じたものではないかと考えられる。
本決定のように行為が通常伴う関係にあるかという点や行為の性質等を考應し
て親念的競合の関係にあるかどうかを判断するとの考え方は.先に挙げた平成
21年東京高裁判決における 「淫行行為と撮影行為という二つの行為が同時的
にたまたま併存しているにすぎない」との判示や.「児窟ポルノ製造罪は.児箪
ポルノと評価されるものを撮彩するなどして写具屯磁的記録に係る記録媒体そ
の他の物として記録化すれば成立するのであって撮影の対象として児磁の淫行
が必要というものではなく.したがって製造行為に児童の淫行が常に随伴する
というものではない 」とする他の裁判例(注い において既に現れていた考え
方と.その趣旨を同じくするものではないかと思われる。
この意味で,本決定は昭和49年判決の判断基準をあてはめる際の考慮要素を示
した事例としての意義を有すると考えられる。
3 関連する判例
なお.昭和49年判決の判断基準をあてはめた重要な判例としては.本決定以前にも最高裁判所昭和58年9月29日第一小法廷判決(刑巣第37巻第7号頁)が存在する。
同判決は,保税地域税関空港等外国貨物に対する税関の実力的管理支配が及んでいる地域に.外国から船舶又は航空機により覚醒剤を持ち込み.これを携帯していわゆる通関線を突破し又は突破しようとした場合に成立する此せい剤取締法第13条第4条の輸入罪と,関税法第lll条の無許可輸人罪の罪数について両罪の既遂時期が異なる(無許可輸入罪の実行の着手時期が,党せい剤輸入罪の既遂後であると解した揚合には両罪の実行行為は時間的な重なり合いがない)にもかかわらずこれらが観念的競合の関係にあるとしたものである。
本決定を踏まえて上記昭和58年判決の事案を考えてみても 「1個の行為」かどうかは時間的・ 場所的な重なり合いだけでなく.行為が通常伴う関係にあるかという点や行為の性質等をも考慮して判断されていると評価することができ,本決定も,従来の判例を踏まえ.時間的・場所的な重なり合いがあっても,児童に淫行させる罪と児童ポルノ製造罪とが併合罪の関係にあると判断したものと考えられる。

第5 おわりに
以上のほか,児童に淫行させる罪と児童ポルノ製造罪にそれぞれ該当する各行為について,両行為が通常伴う関係にあるかや,両行為の性質等を考慮して, これらが刑法第54条第1項前段の「1個の行為」に当たらないとした本決定の判断は,他の犯罪の罪数関係の判断にも影響を及ぼすものと思われる。
例えば,児童買春,児童ポルノに係る行為等の処罰及び児童の保護等に関する法律第4条の児童買春罪や,児童に対する強姦や強制わいせつ罪は,自己を相手方として児童に淫行させる罪と同様その行為態様に児童との性交等を含むものであり,そうした性交等を行いながら,その行為をカメラで撮影するなどして,児童ポルノ製造罪に当たる行為をも行った場合,時間的・場所的に重なり合っているとしても,二つの行為が「通常伴う関係にある」とはいえず,両行為の性質等も異なるものと考えられるから,本決定の考え方によれば,観念的競合ではなく,併合罪と評価されるのではないかと思われる(注 7)。
また,本決定は,前記のとおり,昭和49年判決において示された観念的競合に関する判断基準をあてはめる際の考慮要素を示したものとして,意義を有すると考えられるが,本決定を踏まえても,その判断基準は個別の事案における罪数関係を一義的に明らかにできるというものとは言い難い。
したがって,実務上は,裁判例の集積のない罪数関係の判断は,行為の時間的・場所的な重なり合いのみにとらわれず,行為が通常伴う関係にあるかという点や行為の性質等をも考慮に入れた慎重な検討が必要となるであろう。
(すがわら あきら)

(注 7) 束京高等裁判所平成19年11月6日判決(研修716号111頁参照)は,
児童買春.児童ボルノに係る行為等の処罰及び児童の保護等に関する法律第4条の児童買春罪と,その機会に犯した同法第7条第2項の児童ポルノ製造罪とは併合罪の関係にあると判断しているが,その理由においては「児童買春罪のみを犯し. 2項製造罪には及ばないことも,逆に. 2項製造罪のみを犯し,児童買春罪には及ばないことも共に十分可能なのである。
(中略)『買春』と『製造』はむしろ異質な行為であって,行為者の動態としての一個性は認めがたいというべきであろう。」と判示しており.本決定と同様の判断手法を採っていると考えられる。
なお.同判決は.児童買春罪と2項製造罪は.その実行行為が部分的にも重なり合う関係にないとした上で.「このことは.児童に対する強姦や強制わいせつの状況を撮影した場合に.強姦行為や強制わいせつ行為が2項製造罪の実行行為の一部とはいえないのと同様である。」とも.併せて判示している。

男湯の男児裸体は、性欲を興奮・刺激するものであることは明らかである(某地裁R06)

 男湯の男児裸体は、性欲を興奮・刺激するものであることは明らかである(某地裁R06)
 
 5項製造罪の「ひそかに」は客観的な撮影態様で決まるので、被告人とか被害者の主観は関係無いはずです。

某地裁r06
(争点に対する判断)
1 弁護人は、~(4)判示第4の事実について、被告人は、携帯電話機を堂々と児童に向けて撮影をしており、ひそかに撮影していないし、公衆浴場の男湯における男児の存在は、社会的に許容されているから、被告人が撮影した画像や動画は、性欲を興奮又は刺激するものではなく、児童ポルノに該当しない旨主張する(以下、各主張を指して「弁護人の主張(1)」などという。)。
・・・・
5 弁護人の主張(4)について
  携帯電話機を人に向けるという行為の外観から、一見して携帯電話機の撮影機能を利用して撮影していることを看破することは必ずしも容易とはいえず、被告人が、児童を撮影する際、携帯電話機を、児童から認識できるように向けていたとしても、そのことから直ちに「ひそかに」撮影したとの構成要件該当性が否定されるものとは解されないし、被告人が、犯行時の状況について、「~~」旨供述していることからすれば(なお、これらの供述は、性欲を満たす目的で、見ず知らずの児童の裸体を撮影する状況を説明するものとして自然なものであり、信用できる。)、被告人が、犯行時に児童らに撮影していることを知られないような態様で携帯電話機を向けたことは優に推認できる。また、被告人が撮影した画像等は、いずれも殊更に性器が露出された男児の姿態であり、それ自体として、見る者にそのような男児の姿態を盗撮したものであることを想起させるものであることからすれば、性欲を興奮・刺激するものであることは明らかである。弁護人の主張(4)は採用できない。

鎮目征樹「児童ポルノ禁止法2条3項3号の意義—児童ポルノ販売事件—京都地判平成12・7・17」メディア判例百選2版
5  上記判断基準については,第1 に,「一般人」を標準に据えたこと,第2 に,性欲の興奮・刺激要件該当性の判断資料である「裸体等の描写叙述方法」として,性器等を強調していないか,ポーズや動作に扇情的な要素がないか等の要素に加え,「裸体等を撮影または録画する必然性ないし合理性」に言及したことが注目される。
まず,第1 の点は,一般人の「性欲を興奮させ又は刺激する」とはいいがたい乳幼児の裸体等について,裁判例(前掲富山地判平成24・10・11,横浜地判平成28・7・20LEX/DB 25543577)が本罪の成立を肯定していることに鑑みると,本罪の成立範囲を限定する効果に乏しく,第2の点,特に,必然性・合理性の要素が,幼児の自然な姿の記録や学術・芸術的な作品と,当罰的な3 号児童ポルノとを切り分ける上で重要な機能を有する。
しかし,描写内容のみから撮影の必然性や合理性を判断するのは,困難な場合がある。
たとえば,全裸でスポーツをする姿の描写は,内容自体が異常なものであり,必然性・合理性の欠如を容易に肯定できようが,幼児が水遊びをする場面のように,描写内容自体から裸体等を撮影する必然性・合理性(それが自然な姿の描写か否か)を判断できない場合もある。
このような場合には,性器等の強調や扇情的なポーズ・動作の有無を検討して,客観的に,3 号児童ポルノ該当性を判断することが考えられるが,必然性・合理性は,性器等の強調や扇情的描写が無くても認められない場合がある。
問題は,必然性・合理性なき裸体等の描写がいかなる範囲で児童ポルノに該当しうるかであり,①性器等の強調や扇情性と必然性・合理性の欠如とを重畳的に要求するか,あるいは,②前者に代替する限定要素を持ち込むかしないかぎり,必然性・合理性なき撮影は直ちに3 号児童ポルノに該当することになる。
 6  現在に至る裁判例を概観すると,性器等の強調や扇情性と必然性・合理性の欠如を重畳的に要求する考え方(①)は,実質的に放棄されるに至ったように思われる。
2004(平成16)年改正により,他人に提供する目的を伴わなくても,児童に2 条3 項各号に掲げる「姿態をとらせ」,これを撮影等する方法による児童ポルノの製造行為が犯罪化され(同法7 条4 項),さらに,2014(平成26)年改正により,「ひそかに」2 条第3 項各号に掲げる児童の姿態を撮影等する方法による製造行為が犯罪化された(同法7 条5 項)。
4 項製造罪にかかる典型的事案は,児童に対する性犯罪(強制わいせつ・性交等,児童福祉法違反〔児童に淫行をさせる行為〕,児童買春,淫行条例違反)に随伴して,児童の裸体等の撮影・録画がなされる場合であるが,医師が通常の診察行為の一環として,女子児童(13 歳未満)の着衣をずらして乳房を露出させた様子(広島高判平成23・5・26 LEX/DB 25471443),保育士が身体測定の機会に児童(6歳)に指示して上衣を脱がせた様子(前掲富山地判平成24・10・11)等,性器等の強調や扇情性といった要素が希薄な姿態を撮影する行為も,同罪により処罰されている。
また,5 項製造罪についても,入浴施設の脱衣所において,男子児童(推定年齢12歳)が全裸になっている様子(横浜地判平成29・7・19 LEX/DB 25546811),自然学校に参加した男子児童ら(当時10歳および11歳)の浴室脱衣場における裸体(神戸地判平成30・1・12 D1―Law28260879),保健室で内科検診を受診している女子児童計35 名の上半身裸の姿態(函館地判平成30・4・17 D1―Law28262463)等,性器等の強調や扇情性の存在に疑問がある姿態の盗撮事案について同罪の成立が肯定されている。
かねてより,裁判例の中には,性欲の興奮・刺激要件につき,「同要件は相当程度緩やかに認められる」と述べるもの(前掲富山地判平成24・10・11)が見られ,また,客体該当性判断において,撮影目的(「自己の性的し好を満足させる目的」)などの主観的要素を考慮することができると明言するもの(前掲仙台高判平成21・3・3)も見られる。
しかし,性器等の強調や描写内容の扇情性という要素が極端に希薄化したときに,撮影目的という主観的要素を,これに代替して当罰性を基礎づける客体の要素(②)とすることが理論的に可能か,あるいは,製造行為がもたらす法益侵害性(この点につき,仲道・後掲63 頁以下参照)を考慮することによって,客体たる児童ポルノがもつべき法益侵害性の要求を緩和すること(すなわち,行為類型による児童ポルノ概念の相対化)を認めてよいか等が,問題として残るであろう。
●参考文献 園田寿= 曽我部真裕編著『改正児童ポルノ禁止法を考える』[2014],坪井麻友美「児童買春,児童ポルノに係る行為等の処罰及び児童の保護等に関する法律の一部を改正する法律について」曹時66 巻11 号3017 頁,松井茂記ほか編『インターネット法』[2015]90 頁以下〔曽我部真裕〕,渡邊卓也『ネットワーク犯罪と刑法理論』[2018],仲道祐樹「児童ポルノ製造罪の理論構造」刑事法ジャーナル43号63

10歳と11歳の内縁の妻の娘に性行為」に監護者性交罪を適用した事例(上田支部r06.12.19)

 

こういう法文の並びなので、177条3項のみが適用されると解釈されています。

第一七七条(不同意性交等)
3十六歳未満の者に対し、性交等をした者(当該十六歳未満の者が十三歳以上である場合については、その者が生まれた日より五年以上前の日に生まれた者に限る。)も、第一項と同様とする。
第一七九条(監護者わいせつ及び監護者性交等)
 十八歳未満の者に対し、その者を現に監護する者であることによる影響力があることに乗じてわいせつな行為をした者は、第百七十六条第一項の例による。
2十八歳未満の者に対し、その者を現に監護する者であることによる影響力があることに乗じて性交等をした者は、第百七十七条第一項の例による。

刑法の一部を改正する法律について 法曹時報69巻11号
(5) 他罪との関係
ア強制わいせつ罪,強制性交竿罪群との関係
(5) 他罪との関係
ア 強制わいせつ罪、 強制性交等罪等との関係
監護者わいせつ罪及び監護者性交等罪は, 強制わいせつ罪や準強制わいせつ罪,あるいは, 強姦罪 (強制性交等罪)や準強姦罪 (準強制性交等罪) が存在することを前提に、それらの罰則では処罰できないものの,それらの罪と同等の悪質性当性が認められる事案に対応するために新設されたものである。
したがって, 強制わいせつ罪準強制わいせつ罪又は強制性交等罪準強制性交等罪が成立する場合に、 重ねて監護者わいせつ罪又は監護者性交等罪が成立するものではない。
(注14) 改正前の刑法においては、わいせつな行為又は性行為によって個人の性的自由を侵害する罪として,まず, 第176条 (強制わいせつ) 及び第177条(強姦)の罪が置かれ、その補充規定として、 第178条 (準強制わいせつ及び準強姦) の罪が置かれており、例えば、反抗を著しく困難ならしめる程度の暴行・脅迫によって女子を抗揮不能心神喪失の状態に陥らせた場合には,一般に、第178条の罪ではなく,第176条又は第177条の罪が成立するものと解されている(最判昭24・79集3 巻8号 1174頁参照)。
また、13歳未満の者の心神喪失又は抗拒不能に乗じた場合も、第176条又は177条の罪が成立するものと解されている。
(注15) これと同様に、13歳未満の者に対するわいせつな行為又は性交等が,外形上は、監護者わいせつ罪又は監護者性交等罪に該当するように見える場合であっても、13歳未満の者に対するわいせつな行為又は性交等のみを要件として成立する刑法第176条後段の罪又は刑法第177条後段の罪のみが成立し、別に監護者わいせつ罪又は監護者性交等罪は成立しないものと考えられる。
(16) もとより、ある行為が、強制わいせつ罪・準強制わいせつ罪又は強制性交等罪準強制性交等罪と監護者わいせつ罪又は監護者性交等罪との両方に該当するように見える場合においても、訴訟法的観点から,検察官が監護者わいせつ罪又は監護者性交等罪に係る事実により公訴提起し,これを主張立証した結果,同罪により被告人を処罰することは可能であると考えられる。同罪で公訴提起された場合に,被告人が強制わいせつ罪準強制わいせつ罪又は強制性交等罪準強制性交等罪が成立することを証明することによって監護者わいせつ罪又は監護者性交等罪の成立を免れるという関係にあるものではない。
この点について、法制審議会刑事法 (性犯罪関係)部会第5回会議における議論は以下のとおりである。

法制審議会刑事法 (性犯罪関係)部会第5回会議
平成28年 3月25日(金)
○ 中村功一幹事
  また,罪数の点でございますけれども,こちらも御説明してきておりますとおり,要綱(骨子)第三の罪というのは要綱(骨子)第一の罪や,強制わいせつ罪を補充する趣旨で設けようとするものでございます。したがいまして,仮にある行為が外形的には強制わいせつ罪ないし要綱(骨子)第一の罪と要綱(骨子)第三の罪との双方に該当するように見られる場合には,強制わいせつ罪又は要綱(骨子)第一の罪のみが成立するものと考えております。

○佐伯委員 
  それから最後は,要綱(骨子)第三の規定が補充規定であるということの意味についてですが,先ほど事務当局から刑法第177条,第178条に当たる場合には,それのみが成立するという御説明があったのですけれども,私は第177条ないし第178条に当たり得る場合であったとしても,要綱(骨子)第三の罪で処罰することは可能であると考えます。
○加藤幹事 ただいまの佐伯委員の御指摘の中にもございましたが,要綱(骨子)第三の書き方については,これまで御説明してきたような具体的な内容を表現するものとして,「利用して」という文言を要綱に用いていたものでございます。しかし,ただいま,別の表現を検討するべきではないかという御指摘がございましたので,この点につきましては更に事務当局においても,十分に検討させていただきたいと存じます。
○委員 1点,事務当局の方から補足させていただきます。
  ただいま,佐伯委員の方から,要綱(骨子)第一の罪と要綱(骨子)第三の罪の関係について御指摘がございましたが,第一の罪のみが成立すると申し上げた趣旨は,意味としては佐伯委員のおっしゃるものと同様の意味であると考えておりまして,実体法の関係の罪数の整理としては第一の罪のみが成立するという場合があろうかと思いますが,訴訟法的な観点を加味して,この要綱(骨子)第三の罪だけで処罰できるかといいますと,それは可能であると事務当局としても考えているというところでございます。

今井猛嘉「監護者わいせつ罪及び監護者性交等の罪」法律時報

3 本罪と他罪との関係等
最後に、本罪と他罪との関係を通じて、本罪の特徴を(再)確認しておきたい。
第一に、本罪の被害者は、18歳未満の者であって行為者(たる監護者)の監護に係る者(被監護者)である。被監護者に相当する者が13歳未満であれば、当該者に対する性的行為は、「現に監護する者であることによる影響力があることに乗じて」性的行為がなされたか否かを問わず、強制わいせつ罪(176条後段)や強制性交等の罪(177条後段)が成立する。そのため、本罪の被害者となりうるのは、13歳以上18歳未満の被監護者に相当するものだということになる。
強制わいせつ罪や準強制わいせつ罪、又は強制性交等の罪や準強制性交等の罪が成立する場合には、これらに加えて本罪を成立するわけではない。本罪は、それらの罪の成立が困難な事案に着目し、事案の適正な処理のために、それらの罪と同等の罪質を有するものとして新設された類型だからである。もっとも、個々の事案の証拠関係に応じて、それらの罪又は本罪のいずれで処理するかは、検察官の訴追裁量に委ねられていると解される。

10歳と11歳の内縁の妻の娘に性行為 29歳男に懲役9年の実刑判決 裁判長「被害者2人の肉体的・精神的苦痛は極めて大きく結果も重大」 求刑は懲役12年
2024年12月19日(木) 18時35分

長野地裁上田支部

内縁の妻の娘2人に性行為をしたとして男に懲役9年の実刑判決です。

監護者性交等の罪に問われていた長野県東御市の29歳の男は、同居していた内縁の妻の長女(当時11)と次女(当時10)に対し、監護者としての影響力を利用して、性行為をしたとされています。

初公判で男は、起訴内容を認めていました。

19日の判決公判で、地裁上田支部の古賀秀雄裁判長は、「被害者2人の肉体的・精神的苦痛は極めて大きく結果も重大」などと指摘し、懲役12年の求刑に対し、懲役9年の実刑判決を言い渡しました。

弁護側は、「控訴するかは、被告と話し合って決める」としています。

法務省刑事局付丸山真理子検事「児童に児童買春、児童ポルノに係る行為等の規制及び処罰並びに児童の保護等に関する法律2条3項各号のいずれかに掲げる姿態をとらせ、これをひそかに撮影するなどして児童ポルノを製造したという事実について、当該行為が同法7条4項の児童ポルノ製造罪にも該当するとしても、なお同条5項の児童ポルノ製造罪が成立するとして、同罪で公訴が提起された場合、裁判所は同項を適用することができるとした事例」警察公論80巻1号p83

法務省刑事局付丸山真理子検事「児童に児童買春、児童ポルノに係る行為等の規制及び処罰並びに児童の保護等に関する法律2条3項各号のいずれかに掲げる姿態をとらせ、これをひそかに撮影するなどして児童ポルノを製造したという事実について、当該行為が同法7条4項の児童ポルノ製造罪にも該当するとしても、なお同条5項の児童ポルノ製造罪が成立するとして、同罪で公訴が提起された場合、裁判所は同項を適用することができるとした事例」警察公論80巻1号p83
 重い性犯罪に並行して製造行為をやっていて姿態を取らせたことが明らかな事案で、「前二項に規定するもののほか、」っていうんだから、4項でも5項でもいいという解釈なんてあり得ないよね。4項に決まっていて、5項を適用した事件は法文見てないだけだよ。

児童ポルノ・児童買春法7条
4前項に規定するもののほか、児童に第二条第三項各号のいずれかに掲げる姿態をとらせ、これを写真、電磁的記録に係る記録媒体その他の物に描写することにより、当該児童に係る児童ポルノを製造した者も、第二項と同様とする。
5前二項に規定するもののほか、ひそかに第二条第三項各号のいずれかに掲げる児童の姿態を写真、電磁的記録に係る記録媒体その他の物に描写することにより、当該児童に係る児童ポルノを製造した者も、第二項と同様とする。

丸山検事によれば
島戸純検事「「児童買春、児童ポルノに係る行為等の処罰及び児童の保護等に関する法律の一部を改正する法律」について」警論57巻8号97頁
坪井麻友美検事「児童買春、児童ポルノに係る行為等の処罰及び児童の保護等に関する一部を改正する法律について」法時66巻11号55頁
は間違ってるとされるのに注意

本判決の意義等
本判決の原審は、5項製造罪が新設された趣旨について、盗撮によって行われる児童ポルノ製造行為の悪質性等を踏まえ、従前の規制対象に加え、処罰範囲を拡大するものであると解した上で、大阪高裁判決の結論を前提とした場合に、5項製造罪の該当性を判断するに当たって他の製造罪に該当しないことについて厳密な証拠判断を要することとなるという実質論も考慮しつつ、本法7条5項の「前二項に規定するもののほか」の意味するところについては、大阪高裁判決とは異なり、「3項製造罪又は4項製造罪として処罰されるものを除く」という解釈をとった。
その上で、東京高裁判決と同様に、4項製造罪と5項製造罪の適用関係については、検察官の訴追裁量の問題と捉えている。
本判決は、5項製造罪の立法趣旨について、従前の規制対象に加え、処罰範囲を拡大したものと解釈した上で、3項製造罪及び4項製造罪も含めた各児童ポルノ製造罪の保護法益、法定刑に照らし、児童に姿態をとらせ、これをひそかに撮影するなどして児童ポルノを製造したという事実について、当該行為が同条4項の児童ポルノ製造罪にも該当するとしても、なお同条5項の児童ポルノ製造罪が成立し、同罪で公訴が提起された場合、裁判所は、同項を適用できる旨判示した。
さらに、最高裁は、このように解さなければ、事案によっては、5項製造罪該当性を判断する前提として、検察官は他の製造罪の不成立を、被告人側が成立の反証をするといった「不自然な訴訟活動」を行わせることになりかねないという実質論に踏み込んで結論を導いていることにも注目される。
その上で、最高裁は、本法7条5項の「前二項に規定するもののほか」の文言について、その解釈を明示せず、この「文言は、以上の解釈を妨げるものではない」と判示した。

単純所持罪(7条1項)は、長年経過しても、捜索差押令状が出ていると思われる事例

 報道を総合すると、起訴されていない被害者の所持の起点はh24~25(2012~13)らしいので、すぐ破棄されると公訴時効(3年)は2016になるが、起訴されていない被害者の事件で2022.11に捜査が始まり、2023.9には捜索差押えを受けて現認され、2023.9.11に単純所持罪で逮捕された。ということで、単純所持罪の捜索差押というのは、3年以上経過しても出るのだということがわかります。
 裁判所の意識としては、所持犯は所持し続けるものと考えられること、破棄されたことがわからないことからだろうと思います。
 単純所持罪は押収物の解析から未発覚の性犯罪の突破口となることがあるので、空振り覚悟で捜索されることが多くなっています。



中学元校長 懲役9年 生徒に性的暴行 「上下関係が背景」 東京地裁判決
2024.12.10  読売新聞
判決によると、被告は中学校で学年主任などを務めていた2010年6月、女子生徒(当時14歳)に校舎内で性的暴行を加えてけがを負わせた。校長だった23年9月には、女子生徒らへのわいせつ行為を記録した映像を校長室で所持した。

児童ポルノ容疑 中学校長を逮捕
2023.09.11 読売新聞
 発表によると、容疑者は10日、同校の校長室で、女子中学生の裸の画像を記録したデジタルカメラ1台を所持した疑い。被害者は容疑者が過去に勤務した学校の生徒で、調べに容疑を認めている。都教育委員会の窓口に昨年11月、「過去にわいせつ行為を受けた」と匿名の通報があり、警視庁が捜査していた。

中学生に性加害 あす判決 校長の非道…時効の壁 教え子2人、告発の行方
2024.12.08 産経
 準強姦罪の公訴時効(発生から起訴ができるまでの期間)は10年、けがを伴う準強姦致傷罪の公訴時効は15年となる。

 検察側は、被害申告した女性が24~25年に受けた性被害については時効の可能性などを考慮し起訴しなかったが、22年の性的行為に対する準強姦致傷と、当時少女だった2人の女性の映像を所持した児童買春・ポルノ禁止法違反の罪で、被告を起訴した。

 今年11月20日の初公判。検察側は冒頭陳述で、被告が22年6月、マッサージ名目で当時中学3年だった被害女性を呼び出して性的行為をし、その際に体の一部にけがをさせたと主張。進路指導の主任や部活動の顧問だった被告との関係悪化を恐れ、女性が「抵抗できなかった」とした。

 被告は、2人の女性の映像を所持した罪については認めた上で、準強姦致傷罪については無罪を主張した。弁護側は、性的行為をしたことは認めつつ、女性は別の機会に誘いを断るなどしており、今回も拒むことができたとして「準強姦には当たらない」と反論。さらに、けがには診断書がなく、準強姦致傷罪は成立しないとも訴えた。

 準強姦致傷罪で被告が追起訴されたのは、事案発生から13年8カ月後の令和6年2月。準強姦致傷罪であれば時効前だが、準強姦罪なら時効で、起訴が無効とされる「免訴」となる。

 被害申告した女性への性的行為が起訴されていない以上、もう一人の女性への行為が免訴となれば、被告が認定されるのは児童ポルノ所持罪のみ。無期懲役の可能性もある準強姦致傷罪に対し、児童ポルノ所持罪の上限は懲役1年、罰金100万円に過ぎない。

女性と偽って、陰部画像を送らせた行為を、人違いの不同意わいせつ罪(176条2項)で逮捕した事例

 女性と偽って、陰部画像を送らせた行為を、人違いの不同意わいせつ罪で逮捕した事例

 176条2項人違い類型での逮捕事例です。

(不同意わいせつ)
第百七十六条
2行為がわいせつなものではないとの誤信をさせ、若しくは行為をする者について人違いをさせ、又はそれらの誤信若しくは人違いをしていることに乗じて、わいせつな行為をした者も、前項と同様とする。

「メッセージや電話でやりとりをしていました。その間、男は女性を装って対応していて、男性はそれに気づきませんでした。このやり取りの中で、男性は求めに応じて、自身のわいせつ画像を男に送ってしまったということです。」だと「行為者の同一性は正しく認識した上で、その属性に関する誤信をしているにすぎない場合」じゃないかなあ。

逐条説明
3 各条の第2項
性的行為が行われるに当たって、その相手方に何らかの錯誤が生じている類型については、同意の前提となる事実の認識を欠くものの、当該行為を行うこと自体について外形的には同意が存在するという特殊性があり、被害者が「同意しない意思を形成し、表明し又は全うすることが困難な状態」にあったかどうかで犯罪の成否を区別することとした場合には、犯罪の成否をめぐる評価・判断のばらつきを生じさせることとなりかねないことから、第1項に含めるのではなく、別途規定することとするものである。
その上で、相手方に錯誤が生じている類型の中には、その錯誤があることによっておよそ自由意思決定が妨げられる性質のものと、そうでないものが混在するため、それらを区別せずに包括的な形で規定した場合には、強制わいせつ罪・強制性交等罪として処罰すべきとはいえないものが処罰対象に含まれることとなり、相当でない。
そこで、強制わいせつ罪及び強制性交等罪の保護法益である性的自由・性的自己決定権が侵害されたといえる場合、すなわち、自由意思決定が妨げられたと一般に評価できる錯誤のみが処罰対象となることを明確にする観点から、第2項においては、
○その誤信があれば、自由意思決定が妨げられたといえる類型、すなわち、
・行為がわいせつなものではないとの誤信がある場合(注6)
・行為をする者について人違いがある場合(注7)
を限定的に列挙し、
○「その他これらに類する行為により同意しない意思を形成し、表明し若しくは全うすることが困難な状態にさせ」又は「その他これらに類する事由によりその状態にあることに乗じて」との包括的要件を設けないこととしている。
なお第176条第2項及び第177条第2項の行為はいずれも行為者が行い又は行おうとしているわいせつな行為又は性交等、すなわち、実行行為を指すものである。
(注6)行為がわいせつなものでないとの誤信があった場合には、被害者は「行為」には、同意しているものの、それが「性的」なものであるとすれば、そのような「性的行為」には同意していないのであるから、その意味で「性的行為をするかどうか」についての自由意思決定があったとはいえず、その誤信を利用して性的行為を行った場合、一般に性的自由・性的自己決定権の侵害が存するといえる。
(注7)行為をする者について人違いがある場合には、被害者は、その相手方との性的行為には同意していないのであるから、その意味で「誰と性的行為をするか」についての自由意思決定があったとはいえず、その誤信を利用して性的行為を行った場合、一般に性的自由・性的自己決定権の侵害が存するといえる。

刑法及び刑事訴訟法の一部を改正する法律について法曹時報 第76巻01号
2)各要件の意義
「行為がわいせつなものではないとの誤信」とは、現に行われようとしている行為(実行行為)が、わいせつなものではないとの錯誤があることを意味するものであり、例えば、
○真実はわいせつな行為であるのに、医療行為であると誤信している場合
などがこれに該当する。
「行為をする者について人違い」とは、行為者の同一性について錯誤があることを意味するものであり、例えば、
○真実は夫とは別の人物であるのに、暗闇の中で、行為者を夫と勘違いした場合
などがこれに該当する。
これに対し、行為者の同一性は正しく認識した上で、その属性に関する誤信をしているにすぎない場合には、本項の「人違い」には該当し(注24)ない。


(注24) 例えば、
○真実は無職であるのに金持ちの社長であると偽られ、そのように誤信した場合
○真実は既婚者であるのに、未婚者であると偽られ、そのように誤信した場合
については、相手方の職業、資力や婚姻関係の有無という属性に関する誤信があるにすぎないことから、いずれも、「行為をする者について人違い」をしている場合には該当しない。
このように、本項において、行為の相手方の社会的地位等といった属性について誤信があるにすぎない場合を処罰の対象としていないのは、このような誤信は、言わば、性的行為をする動機に関する誤信であり、現時点において、そのような誤信があることのみをもって処罰対象とすべきであるとまでは必ずしもいえないと考えられることによるものである。

https://news.yahoo.co.jp/articles/835d20394e6772dae5f3fc12b820419a6d067706
オンラインゲームで知り合った女性に求められ男性が自分の“わいせつ画像”送信→「拡散するぞ」脅迫され数万円要求も→警察に相談→なんと相手は女性を装う神奈川県の25歳男→警察がアプリ解析で逮捕へ 北海道
男は6月11日から12日にかけて、アプリのメッセージ機能で男性のわいせつな画像を本人に送信して「画像を拡散するぞ」と脅迫し、数万円を支払うように要求した疑いがもたれています。
警察によりますと、2人は2024年に入ってからオンラインゲームで知り合い、メッセージや電話でやりとりをしていました。その間、男は女性を装って対応していて、男性はそれに気づきませんでした。
このやり取りの中で、男性は求めに応じて、自身のわいせつ画像を男に送ってしまったということです。
男からの脅迫後、男性はすぐに警察に相談。警察が2人が使っていたアプリを解析し、約5か月後に男を逮捕しました。
調べに男は「間違いないです」と容疑を認めています。

児童ポルノ製造罪(7条4項)の罪数は、撮影回数で決まる(名古屋高裁)のか、媒体の数で決まる(東京高裁)のか

 児童ポルノ製造罪(7条4項)の罪数は、撮影回数で決まる(名古屋高裁)のか、媒体の数で決まる(東京高裁)のか
 撮影自体が性的虐待だし、データの段階で流布の危険が現実化するから、媒体数によるのはおかしいと思いますね。

名古屋高裁H22.3.4
論旨は,原判示第2の2,第3の2, 第6の2' 第7の2及び第8の2の各事実について,児童ポルノ製造罪の罪数は生成された物の個数で決まるところ,これらの所為による画像は1個のSDカードに記録されているから,包括一罪であるのに,上記各児童ポルノ製造罪を併合罪(5罪)とした原判決には判決に影響を及ぼすことの明らかな法令適用の誤りがある,というのである。
しかしながら,児童に児童買春,児童ポルノに係る行為等の処罰及び児童の保護等に関する法律2条3項各号のいずれかに掲げる姿態をとらせ,これを写真,電磁的記録に係る記録媒体その他の物に描写をした時点で既遂に達するものであり,たとえ同一の記録媒体に児童の姿態が写った複数の画像が記録されたとしても,機会を異にして上記の描写をすれば,各別に児童ポルノ製造罪が成立すると解すべきである。原判決が認定した事実関係によれば,原判示第2の2,第3の2, 第6の2,第7の2及び第8の2はそれぞれ別機会の児童ポルノの製造と認められるから,上記各所為は包括一罪ではなく,併合罪の関係にあるというべき
である。これと同旨の原判決の法令適用に誤りはなく,論旨は理由がない。

東京高裁R06.11.19
3 原判決の罪数判断の当否等(法令適用の誤りの論旨について)
(1)前記のとおり、原判決は、原判示第2の1について、前記別表1の番号ごとに15個の児童ポルノ製造罪が成立し、これらが併合罪となるとの判断をしたものと解される。
しかし、児童ポルノ製造罪が成立するためには、児童ポルノの製造行為として、写真、電磁的記録に係る記録媒体その他の物に描写する行為が必要であるところ、記録媒体等に描写する行為が一つなのであれば、そこに成立する児童ポルノ製造罪の罪数は、一罪と考えるのが相当である。原判示第2の1における記録媒体等に描写する行為は、-前記のとおり、最終的にハードディスクに保存するまでの一連の行為一つであるから、この場合に成立する児童ポルノ製造罪は一罪である。
したがって、原判示第2の1に係る原判決の罪数判断及び法令の適用には誤りがあるといわざるを得ない
別表1
番号
1 R6.4.3 7:29
2 R6.4.3 9:26
3 R6.4.3 9:32
4 R6.4.4 11:25
5 R6.4.5 0:07
6 R6.4.5 0:13
7 R6.4.5 4:01
8 R6.4.5 4:04
9 R6.4.5 10:12
10 R6.4.5 10:21
11 R6.4.6 1:22
12 R6.4.6 1:32
13 R6.4.6 1:35
14 R6.4.6 4:33
15 R6.4.6 10:58

児童に裸画像を送らせる行為について、16歳未満の者に対する映像送信要求+不同意わいせつ+性的姿態等撮影+児童ポルノ製造罪が科刑上一罪になるとした事例(東京地裁r6.11.29)

児童に裸画像を送らせる行為について、16歳未満の者に対する映像送信要求+不同意わいせつ+性的姿態等撮影+児童ポルノ製造罪が科刑上一罪になるとした事例(東京地裁r6.11.29)
不同意わいせつ+性的姿態等撮影+児童ポルノ製造罪が科刑上一罪となって
それらと16歳未満の者に対する映像送信要求が牽連犯になるという判断でした。

  送信要求罪は不同意わいせつ罪に吸収されない
  「送信させ」もわいせつ行為
などの判示もあります。

被告人は、A(当時13歳)が16歳未満の者であり、かつ、自らがA の生まれた日より5年以上前の日に生まれた者であることを知りながら、正当な理由がないのに、令和6年11月30日午前10時18分頃、被告人方において、アプリケーションソフト「LINE」のメッセージ機能を利用して、A に対し、「陰部を見せて」と記載したメッセージを送信して、その頃、同人にこれを閲読させ、もって性的な部位を露出した姿態をとってその映像を送信するよう要求し、同日午前10時18分頃から同日午前10時22分頃までの間に、大阪府内の同人方居室において、同人に陰茎を露出した姿態をとらせ、これを同人が使用する携帯電話機で撮影させた上、その静止画データ11点を同携帯電話機から前記「LINE」を利用して被告人が使用する携帯電話機に宛てて送信させ、その頃、当時のLINE株式会社が日本国内に設置して管理している電磁的記録媒体であるサーバコンピュータ内に記録させて保存し、もってわいせつな行為をするとともに、性的姿態等を撮影し、衣服の一部を着けない児童の姿態であって、殊更に児童の性的な部位が露出され又は強調されているものであり、かつ、性欲を興奮させ又は刺激するものを視覚により認識することができる方法により描写した電磁的記録に係る記録媒体である児童ポルノを製造したものである。
罪名及び罰条
16歳未満の者に対する映像送信要求、
不同意わいせつ、
性的姿態等撮影、
児童買春、児童ポルノに係る行為等の規制及び処罰並びに児童の保護等に関する法律違反
刑法182条3項2号、176条3項、性的な姿態を撮影する行為等の処罰及び押収物に記録された性的な姿態の影像に係る電磁的記録の消去等に関する法律2条1項4号、1号イ、児童買春、児童ポルノに係る行為等の規制及び処罰並びに児童の保護等に関する法律7条4項、2条3項3号

科刑上一罪の処理
刑法54条1項前段、後段、10条(不同意わいせつ、性的姿態等撮影及び児童ポルノ製造は、1個の行為が2個以上の罪名に触れる場合であり、16歳未満の者に対する映像送信要求と、不同意わいせつ、性的姿態等撮影及び児童ポルノ製造は、手段結果の関係があるので、結局以上を一罪として最も重い不同意わいせつ罪の刑で処断)
なお、弁護人は、被害者に、性的姿態を撮影した画像データを被告人の使用する携帯電話機に送信させる行為が、わいせつ行為には当たらないことを前提に、判示第2の各罪は併合罪の関係に立つ旨主張するが、同行為もわいせつ行為に当たることは、(争点に対する判断)4において説示したとおりである。そうすると、本件の不同意わいせつ、性的姿態等撮影及び児童ポルノの製造には重なり合いが認められ、これれらは、社会的見解上1個の行為といえるから、観念的競合の関係に立ち、これらの手段として行われた16歳未満の者に対する映像送信要求とは、牽連犯の関係に立つというべきである。

画像要求罪・不同意わいせつ罪(3項)・性的姿態撮影罪・児童ポルノ製造罪(4項)は観念的競合になるのか?

 画像要求罪・不同意わいせつ罪(3項)・性的姿態撮影罪・児童ポルノ製造罪(4項)が、観念的競合で処理された起訴状・判決書を見掛けますが、観念的競合でしょうか?

公訴事実例
被告人は、A(13歳)が16歳未満の者であり、かつ、自らが前記Aの生まれた日より5年以上前の日に生まれた者であることを知りながら
正当な理由がないのに、
令和6年11月26日午前10時02分ころ大阪府大阪市北区の被告人方において、前記Aに対し、自己が使用する携帯電話機のアプリケーションゾフ卜「LINE」のメッセージ機能を利用し、「陰茎見せてよ」などと記載しメッセージを送信し、その頃、同人にこれらを閲覧させ、もって性的な部位を露出した姿態をとってその映像を送信することを要求し、
同日午前11時20分頃、同人に、その陰茎を露出した姿態をとらせ、
これを同人が使用する撮影機能付き携帯電話機で撮影させ、
同日午前11時27分頃、その画像データ12点を同携帯電話機から前記「LINE」を利用して被告人が使用する携帯電話機に送信させ、その頃、同画像データ12点を株式会社が管理する日本国内に設置されたサーバコンピュータ内に記録、保存させ、
もって16歳未満の者に対じ、わいせつな行為をし、13歳以上16歳未満の者を対象として、その性的姿態等を撮影する行為をするとともに、衣服の全部又は一部を着けない児童の姿態であって、殊更に児童の性的な部位が露出され又は強調されているものであり、かつ、性欲を興奮させ又は刺激するものを視覚により認識することができる方法により描写した電磁的記録に係る記録媒体である児童ポルノを製造した。

 

公訴事実例 画像要求罪 不同意わいせつ罪 性的姿態撮影罪 児童ポルノ製造
被告人は、A(13歳)が16歳未満の者であり、かつ、自らが前記Aの生まれた日より5年以上前の日に生まれた者であることを知りながら        
正当な理由がないのに、        
令和6年11月26日午前10時02分ころ大阪府大阪市北区の被告人方において、前記Aに対し、自己が使用する携帯電話機のアプリケーションゾフ卜「LINE」のメッセージ機能を利用し、「陰茎見せてよ」などと記載しメッセージを送信し、その頃、同人にこれらを閲覧させ、もって性的な部位を露出した姿態をとってその映像を送信することを要求し、 要求罪の着手と既遂     4項製造罪の構成要件要素「姿態をとらせ」
同日午前11時20分頃、同人に、その陰茎を露出した姿態をとらせ、   不同意わいせつ罪の着手   4項製造罪の構成要件要素「姿態をとらせ」
これを同人が使用する撮影機能付き携帯電話機で撮影させ、   不同意わいせつ罪既遂 性的姿態撮影罪の着手と既遂 製造行為
同日午前11時27分頃、その画像データ12点を同携帯電話機から前記「LINE」を利用して被告人が使用する携帯電話機に送信させ、その頃、同画像データ12点を株式会社が管理する日本国内に設置されたサーバコンピュータ内に記録、保存させ、   送信させ・記録はわいせつ行為ではない   記録行為(以後の複製行為も製造行為と評価される)
もって16歳未満の者に対じ、わいせつな行為をし、13歳以上16歳未満の者を対象として、その性的姿態等を撮影する行為をするとともに、衣服の全部又は一部を着けない児童の姿態であって、殊更に児童の性的な部位が露出され又は強調されているものであり、かつ、性欲を興奮させ又は刺激するものを視覚により認識することができる方法により描写した電磁的記録に係る記録媒体である児童ポルノを製造した。        

 

 まず、「送信させ・記録保存し」はわいせつ行為ではないとされています。

          東京高裁平成28年2月19日宣告
          判    決
           そして,③については,画像データを送信させる行為をもって,わいせつな行為とすることはできない。
           以上のとおり,原判決が認定した事実は,強制わいせつ罪の成立要件を欠くものである上,わいせつな行為に当たらず強要行為に該当するとみるほかない行為をも含む事実で構成されており,強制わいせつ罪に包摂されて別途強要罪が成立しないというような関係にはないから,法条競合により強要罪は成立しないとの弁護人の主張は失当である。
          (2)公訴棄却にすべきとの主張について
           以上のとおり,本件は,強要罪に該当するとみるほかない事実につき公訴提起され,そのとおり認定されたもので,強制わいせつ罪に包摂される事実が強要罪として公訴提起され,認定されたものではない。
           また,原判決の認定に係る事実は,前記(1)のとおり,強制わいせつ罪の構成要件を充足しないものである上,被害者撮影に係る画像データを被告人使用の携帯電話機で受信・記録するというわいせつな行為に当たらない行為を含んだものとして構成され,これにより3項製造罪の犯罪構成要件を充足しているもので,強制わいせつ罪に包摂されるとはいえないし,実質的に同罪に当たるともいえない。
          
          広島高裁岡山支部H22.12.15
           そして,強制わいせつ罪が個人の性的自由を保護法益とするのに対し,児童ポルノ法7条3項,1項,2条3項3号に該当する罪(以下「3項製造罪」という。)は,当該児童の人格権を第一次的な保護法益としつつ,抽象的な児童の人格権をも保護法益としており,両者が一致するものではない。しかも,原判示各事実は,前記のとおり,原判示第1及び第2の各事実については,各被害者に児童ポルノ法2条3項3号所定の姿態をとらせるに際し,脅迫又は暴行によった旨認定していないし,上記各事実と同旨の各公訴事実も同様に脅迫又は暴行によった旨訴因として掲げていない上,原判示各事実及びこれらと同旨の各公訴事実についても,それぞれ,各被害者をして撮影させた画像データを被告人の使用するパーソナルコンピューターに送信させてこれらを受信し,さらに,上記コンピューターに内蔵されたハードディスクに記録して蔵置した各行為を含んでいるところ,上記各行為はいずれも3項製造罪の実行行為(原の事実については強要罪の実行行為の一部でもある。)であって,強制わいせつ罪の構成要件該当事実には含まれない事実である。
          

また、送らせる行為(要求行為)と、児童ポルノ製造罪は、別個の行為なので、併合罪の関係になります。

      東京高裁平成28年2月19日
       なお,原判決は,本件において,強要罪と3項製造罪を観念的競合であるとしたが,本件のように被害者を脅迫してその乳房,性器等を撮影させ,その画像データを送信させ,被告人使用の携帯電話機でこれを受信・記録して児童ポルノを製造した場合においては,強要罪に触れる行為と3項製造罪に触れる行為とは,一部重なる点はあるものの,両行為が通常伴う関係にあるとはいえず,両行為の性質等にも鑑みると,両行為は社会的見解上別個のものと評価すべきであるから,これらは併合罪の関係にあるというべきである。したがって,本件においては,3項製造罪につき懲役刑を選択し,強要罪と3項製造罪を刑法45条前段の併合罪として,同法47条本文,10条により犯情の重い強要罪の刑に法定の加重をした刑期の範囲内で処断すべきであったところ,原判決には上記のとおり法令の適用に誤りがあるが,この誤りによる処断刑の相違の程度,原判決の量刑が懲役2年,執行猶予付きにとどまることを踏まえれば,上記誤りが判決に影響を及ぼすことが明らかであるとはいえない。
          
      広島高裁岡山支部H22.12.15
       原判決が,原判示第3の事実を認定判示した上,児童ポルノ製造の点が3項製造罪に該当し,強要の点が強要罪に該当するが観念的競合であるとして科刑上一罪の処理をするに当たり,犯情の重い3項製造罪の刑で処断する適条をしたことは所論が指摘するとおりである。
       そこで検討するに,強要罪は,脅迫し又は暴行を用いて,人に義務のないことを行わせる行為をしたことを構成要件とし,3項製造罪は,児童に児童ポルノ法2条3項3号に掲げる姿態をとらせ,これを写真,電磁的記録にかかる記録媒体その他の物に描写することにより,当該児童にかかる児童ポルノを製造したことを構成要件とするものであって,被害児童に衣服の全部又は一部を着けない姿態をとらせて撮影し,その画像データを送信させてハードディスクに記録して蔵置することをもって児童ポルノを製造した場合に,強要罪に該当する行為と3項製造罪に該当する行為とは,一部重なる点があるものの,3項製造罪において,上記のとおり姿態をとらせる際,脅迫又は暴行によることが要件となるものとは解されず,また,両行為が通常伴う関係にあるとはいえないことや,両行為の性質等にかんがみると,それぞれにおける行為者の動態は社会的見解上別個のものといえるので,両罪は,観念的競合の関係にはなく,また,上記説示に照らせば,両罪は,通常手段結果の関係にあるともいえないから,牽連犯の関係にもないというべきである。
       また,強要罪は個人の行動の自由を保護法益とし,3項製造罪は,当該児童の人格権とともに抽象的な児童の人格権をも保護法益としており,保護法益の一個性ないし同一性も認められないことをも考慮すれば,両罪は,混合的包括一罪ともいえず,最高裁判所平成19年(あ)第619号同21年10月21日第1小法廷決定・刑集63巻8号1070頁の趣旨に徴し,刑法45条前段の併合罪の関係にあるというべきである。
       そうすると,控訴理由第2の点について判断するまでもなく,両罪を観念的競合として処断刑を導いた原判決には法令適用の誤りがあるといわざるを得ない。