弁護士奥村徹(大阪弁護士会) 事務所での面談相談・電話・メール・skype・zoom等で対応しています。

実績についてはこちらを参照してください。
www.courts.go.jp


通常態勢
平日は通常態勢
事務所は平日09:30〜17:30です。
それ以外は弁護士が下記の電話で対応します。
必要があれば、事務所で対応します。

弁護士への連絡は、
通常
   TEL 050-5861-8888(弁護士直通)
   FAX 06-6363-2161(外出先でも読んでいます)

   メール hp3@okumura-tanaka-law.com(携帯でチェックしています。パソコンからのメールを受信できるようにしてください。)
   Skype okumura_law

緊急相談用
   050-5861-8888
   hp3@okumura-tanaka-law.com(携帯でチェックしています。パソコンからのメールを受信できるようにしてください。)
となっています。

地図
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児童ポルノ単純所持罪・単純保管罪の対応~女子高生TikToker(tiktok TikTok チックトック チックトッカー)の動画をダウンロードとか販売した人の対応 AiiPeep(アイイピープ)とか動画シェアとか、パンコレとか、アルバムコレクション等も

五月雨式に相談がくるので、まとめておきます

1 ダウンロード者

児童ポルノ単純所持罪が検討される。

7条1項
自己の性的好奇心を満たす目的で、児童ポルノを所持した者(自己の意思に基づいて所持するに至った者であり、かつ、当該者であることが明らかに認められる者に限る。)は、一年以下の懲役又は百万円以下の罰金に処する

 完全削除(できれば物理的破壊)で、刑事責任は回避できる。この罪だけでは逮捕はない。

 捜索を受けた時に備えて、
  ①間違ってダウンロードした場合は、「自己の性的好奇心を満たす目的」に欠けるという弁解
  ②ダウンロード元の情報として、児童(「15歳」とか「17歳」とか)と表示されていない場合には、「児童と知らなかった」という弁解
を用意しておく。弁護士に相談して、最寄り警察に相談しておけば捜索の危険はかなり下がる。

 被害者対応は、警察相談と併行して。
 あちらからの流出経緯・こちらの入手状況・児童性の認識の程度によっては、不法行為責任は小さくなる可能性。
 撮影した者は製造罪になる。出演児童も共犯になりうるという裁判例もある。

リベンジポルノ罪については、普通、画像上はわからないので、そう弁解する。

私事性的画像記録の提供等による被害の防止に関する法律
(定義)
第二条 この法律において「私事性的画像記録」とは、次の各号のいずれかに掲げる人の姿態が撮影された画像(撮影の対象とされた者(以下「撮影対象者」という。)において、撮影をした者、撮影対象者及び撮影対象者から提供を受けた者以外の者(次条第一項において「第三者」という。)が閲覧することを認識した上で、任意に撮影を承諾し又は撮影をしたものを除く。次項において同じ。)に係る電磁的記録(電子的方式、磁気的方式その他人の知覚によっては認識することができない方式で作られる記録であって、電子計算機による情報処理の用に供されるものをいう。同項において同じ。)その他の記録をいう。
一 性交又は性交類似行為に係る人の姿態
二 他人が人の性器等(性器、肛こう門又は乳首をいう。以下この号及び次号において同じ。)を触る行為又は人が他人の性器等を触る行為に係る人の姿態であって性欲を興奮させ又は刺激するもの
三 衣服の全部又は一部を着けない人の姿態であって、殊更に人の性的な部位(性器等若しくはその周辺部、臀でん部又は胸部をいう。)が露出され又は強調されているものであり、かつ、性欲を興奮させ又は刺激するもの
2 この法律において「私事性的画像記録物」とは、写真、電磁的記録に係る記録媒体その他の物であって、前項各号のいずれかに掲げる人の姿態が撮影された画像を記録したものをいう。
(私事性的画像記録提供等)
第三条 第三者が撮影対象者を特定することができる方法で、電気通信回線を通じて私事性的画像記録を不特定又は多数の者に提供した者は、三年以下の懲役又は五十万円以下の罰金に処する。
2 前項の方法で、私事性的画像記録物を不特定若しくは多数の者に提供し、又は公然と陳列した者も、同項と同様とする。
3 前二項の行為をさせる目的で、電気通信回線を通じて私事性的画像記録を提供し、又は私事性的画像記録物を提供した者は、一年以下の懲役又は三十万円以下の罰金に処する。
4 前三項の罪は、告訴がなければ公訴を提起することができない。
5 第一項から第三項までの罪は、刑法(明治四十年法律第四十五号)第三条の例に従う。

 捜索はあるかないかわからないし、破棄してあれば捜索は空振りに終わるので、捜索を甘受するという選択肢もあるという説明をします。
 どうしても、捜索を回避したい(士業・医師・歯科医・教授・教員・就職活動中の学生等)の場合には、弁護士が対応します。
 弁護士費用としては
  相談料は22000円(確実に支払って頂けるのであれば長期分割可能)
  対応する場合の費用は、220000円程度(士業・教員・公務員は330000円 他に出張日当55000円+交通費 被害者対応をしない場合、報酬金はなし。確実に支払って頂けるのであれば長期分割可能)
と回答しています。
 県警によっては、「捜索差押しない・刑事処分ない」という回答をもらえることがある。


2 販売者・アップロード者
 わいせつ電磁的記録頒布罪・公然陳列罪
 児童ポルノ提供罪・公然陳列罪・提供目的製造罪
 リベンジポルノ公表罪
などが検討されるので、弁護士に相談して、逮捕を回避したい。

7条
6児童ポルノを不特定若しくは多数の者に提供し、又は公然と陳列した者は、五年以下の懲役若しくは五百万円以下の罰金に処し、又はこれを併科する。電気通信回線を通じて第二条第三項各号のいずれかに掲げる児童の姿態を視覚により認識することができる方法により描写した情報を記録した電磁的記録その他の記録を不特定又は多数の者に提供した者も、同様とする。
7前項に掲げる行為の目的で、児童ポルノを製造し、所持し、運搬し、本邦に輸入し、又は本邦から輸出した者も、同項と同様とする。同項に掲げる行為の目的で、同項の電磁的記録を保管した者も、同様とする。

 弁護士費用は、逮捕危険があるので、応相談としています。分割払は可能。
 中心的な弁護士費用としては
  相談料は22000円
  対応する場合の費用は、
   着手金330000円程度(他に出張日当55000円+交通費 被害者対応をしない場合。確実に支払って頂けるのであれば長期分割可能)
   報酬金220000円程度(逮捕されなかった場合。確実に支払って頂けるのであれば長期分割可能)
と回答しています。


追記2021/08/27
 ダウンロード・購入者の捜索回避の警察相談は各地に数件かかりました。
 いずれはどこかの警察(被害者の住所など)に集中するんじゃないでしょうか。

追記2021/09/17
 児童ポルノ製造罪・提供罪・単純所持罪について捜査している警察(A都道府県警察のB警察署)は判明し、連絡が取れました。
 購入者は地元警察・B警察署へ相談。
 販売者は、B警察署へ。(B警察署名は教えられません。例えば大阪市西天満に済む花子さん(17歳)が、「はなちゃん」という芸名で活動していて、その裸体画像が流出した場合に、「はなちゃんさんが天満警察署に相談した」と公表してしまうと、はなちゃんの児童ポルノであること・天満警察管内に住所があることがバレてしまい、被害者が特定されてしまうからです。)


 所持罪の捜索があったという知恵袋の書き込みがありましたが削除されました。 
https://detail.chiebukuro.yahoo.co.jp/qa/question_detail/q12249473407
推知報道禁止と思われます。

 第一三条(記事等の掲載等の禁止)
 第四条から第八条までの罪に係る事件に係る児童については、その氏名、年齢、職業、就学する学校の名称、住居、容貌ぼう等により当該児童が当該事件に係る者であることを推知することができるような記事若しくは写真又は放送番組を、新聞紙その他の出版物に掲載し、又は放送してはならない。

追記 2022/01/01
AiiPeepの購入者については、
埼玉県警以外の警察による捜索が複数観測されましたので、
埼玉県警からの情報提供を受けて各地の警察が捜査しているものと思います(全国協働方式)

追記 2022/03/31
AiiPeepの購入者については、
埼玉県警以外の警察による捜索が複数観測されましたが、
破棄して警察相談した人は捜索は受けず
捜索を受けて現認された人は、ほぼ罰金という処理になっています。

AI児童ポルノ・ディープフェイク児童ポルノについて

 問題になっているのは、着衣の児童の画像を加工して胸部・陰部等を露出したようにした画像と思われます。
 児童ポルノ法2条3項3号の「衣服の全部又は一部を着けない児童の姿態であって、殊更に児童の性的な部位(性器等若しくはその周辺部、臀でん部又は胸部をいう。)が露出され又は強調されているもの」にあたるのかが問題になります。
 法文上は、同号の「児童」は、同条1項に定義される「18歳未満の実在人」を意味しますので、「衣服の全部又は一部を着けない児童の姿態」というのも、「実在する児童」の「実在する(裸の)姿態」を意味することになります。他の条項を見ても、姿態をとらせて製造罪(7条4項)、ひそかに製造罪(同条5項)も児童ポルノは「実在する姿態」を記録したものであることを前提にしています。この観点からは、着衣の児童の画像にAIで加工した場合は、加工した部分は、「実在する児童」の姿態でもなく、「実在する姿態」ではなもないので、児童ポルノではないことになります。

 もっとも、児童ポルノ法制定時の国会審議では、合成写真が児童ポルノとなりうる場合があるとされています。そこでも「実在する児童についてその身体の大部分が描写されている写真」の存在が前提とされています。児童の水着姿の写真に性器等を合成したような場合でしょうが、合成した部分はその児童の「実在する姿態」ではないので、法文に合いません。

第145国会 衆議院法務委員会会議録12号 平成11年05月14日
○大森参議院議員 
写真等が実在する児童の姿態を描写したものであると認められない限り児童ポルノには該当いたしません。ただ、合成写真等を利用した疑似ポルノの中には、実在する児童の姿態を描写したものであると認定できるものもあると考えられ、このようなものについては、今回の法案の児童ポルノに当たり得ると考えます。
 具体的な事案における証拠に基づく事実認定の問題でありますが、例えば、実在する児童についてその身体の大部分が描写されている写真を想定すると、そこに描写された児童の姿態は実在する児童の姿態に該当いたします。そこで、その写真に描写されていない部分に他人の姿態をつけて合成したとしても、ある児童の身体の大部分を描写した部分が実在する児童の姿態でなくなるわけではありません。
 以上により、合成写真についても、児童ポルノに当たり得る場合があるということになります。

 この点については、「CG児童ポルノ事件」と知られる最高裁判例(最決令和2年1月27日
https://www.courts.go.jp/assets/hanrei/hanrei-pdf-89197.pdf
)があって、CGで創造した場合も児童ポルノになると誤解されることもあるようです。
 しかし、同最決の事案は往年の児童ポルノ写真集を基にして、構図や人物配置などを修正した上で極めて写実的に筆で描いたもので、「実在する児童」の「実在する(裸の)姿態」がある事案です。
 控訴審(東京高裁平成29年1月24日)でも写真とCGとの同一性(姿態の実在性)が争われて「被写体となった児童と全く同一の姿態,ポーズをとらなくても,当該児童を描写したといえる程度に,被写体とそれを基に描いた画像等が同一であると認められる場合には,その児童の権利侵害が生じ得るのであるから,処罰の対象とすることは,何ら法の趣旨に反するものではないというべきである」とされています。
 今回の事案のように、裸の部分がAIによる合成であり(顔写真を使用された)児童の裸の姿態が全く実在しない場合に関するものではありません。
 むしろ同最決がわざわざ「写真集に掲載された写真3点の画像データを素材とし,画像編集ソフトを用いて,コンピュータグラフィックスである画像データ3点を作成した」との事実認定を示して、もとの児童ポルノ写真の存在とCG画像との同一性を前提にしたことは、「実在する児童」の「実在する(裸の)姿態」が児童ポルノの要件であることを示したとも理解できます。
 従って、この判例に従えば、着衣の画像を加工して裸にした場合は、児童ポルノにはならないことになります。



参考文献




調査官解説は、写真撮影が1次的表現物、写真を基にしてCGで描くことを2次的表現物として、CGも児童ポルノになりうると説明する。

村田一広・法曹時報74巻9号212頁
(1)児童買春,児童ポルノに係る行為等の処罰及び児童の保護等に関する法律(平成26年法律第79号による改正前のもの)2条3項にいう「児童ポルノ」の意義,(2)児童買春,児童ポルノに係る行為等の処罰及び児童の保護等に関する法律(平成26年法律第79号による改正前のもの)7条5項の児童ポルノ製造罪の成立と児童ポルノに描写されている人物がその製造時点において18歳未満であることの要否〈最高裁判所判例解説/刑事関係2〉

村田一広・最高裁判所判例解説刑事篇令和2年度23頁
児童買春、児童ポルノに係る行為等の処罰及び児童の保護等に関する法律(平成26年法律第79号による改正前のもの)2条3項にいう「児童ポルノ」の意義 2 児童買春、児童ポルノに係る行為等の処罰及び児童の保護等に関する法律(平成26年法律第79号による改正前のもの)7条5項の児童ポルノ製造罪の成立と児童ポルノに描写されている人物がその製造時点において18歳未満であることの要否



(2)被告人は,本件各写真を素材として本件各CGを作成しており,実在 する児童の姿態(本件各写真の被写体児童の姿態)を直接見て描写したわけで はない。しかしながら,児童ポルノ法7条5項は,同条3項(現行法7条4 項。児童に姿態をとらせて描写する方法による児童ポルノ製造罪)や現行法7条 5項(ひそかに児童の姿態を描写する方法による児童ポルノ製造罪)と異なり, 児童の姿態を描写する方法を規定しているわけではなく,児童ポルノ法7条 5項にいう製造の方法が実在する児童の姿態を直接見て描写すること等に限 定されていないことは,同項の文言等に照らしても明らかである。本件各 CGが(本件各写真に表現された)実在する児童の姿態を描写したものと認め (注18)られる以上,本件各CGが本件各写真を素材として作成されたことは,児童 ポルノ製造罪の成立を否定すべき事情には当たらないというべきである。


(注18)弁護人の主張は,本件各CGが実在する児童の姿態を描写したものでは なく,飽くまでも本件各写真を素材とする創作物であるという趣旨を含むもの と解されるが,原判決が是認した第1審判決は,本件各CGが実在する児童の 姿態を描写したものといえるか否かにつき,素材写真(本件各写真)に記録さ れた実在する児童の姿態と素材写真を基に作成されたCGの画像(本件各写真)が同一性を有するかどうかという観点から検討した上,これを肯定した。
なお,2次的表現物が児童ポルノに該当するか否かは,2次的表現物が(1次的表現物に記録されている)実在する児童の性的姿態を描写したものであるか 否かの問題であり,1次的表現物と2次的表現物の表現内容が全体として同一でなくとも,2次的表現物が児童ポルノに該当する場合は当然あり得るものと 考えられる

5本決定について
(1) 本決定は,児童ポルノ法2条3項にいう児童ポルノの意義について, 「写真,電磁的記録に係る記録媒体その他の物であって,同項各号のいずれ かに掲げる実在する児童の姿態を視覚により認識することができる方法により描写したものをいい,実在しない児童の姿態を描写したものは含まない。」 と判示した。児童ポルノの意義につき,当事者間に争いがあったわけではなく,第1審判決及び原判決も,本決定と同様の解釈を前提としているが,最 高裁第一小法廷は,CGの児童ポルノ該当性が問題になったという本件事案 の性質及び上告趣意に鑑みて,同項の解釈として「児童ポルノ」の意義を確(注 21)認したものと解される
(注21)被告人は本件各写真を素材として本件各CGを作成しているところ,最 高裁第一小法廷は,本件行為が児童ポルノ製造罪に当たるとした第1審判決及 び原判決を是認する前提として,児童ポルノが実在する児童の姿態を描写した ものであるとの解釈を確認するとともに,本件各CGが本件各写真を素材とし たことをもって「実在しない児童の姿態を描写したもの」であるということは できない点を明らかにしようとしたものと推測される。


 前田先生のコメントも、CGで写実的に描写する場合も写真撮影同様実在する児童の実在する姿態の描写方法であるから、児童ポルノになるとされる。

《WLJ 判例コラム 臨時号》第194号
CG描画画像の「児童ポルノ」該当性
~最決令和2年1月27日 児童買春、児童ポルノに係る行為等の処罰及び児童の保護等に関する法律違反被告事件1~
文献番号 2020WLJCC006
日本大学大学院法務研究科 客員教授
前田 雅英
罪刑法定主義の観点からは、CGは、対象物をフィルムにそのまま写し取った写真とは本質的に異なり、デジタル技術を用いて「描画」したもので、「絵」であるという主張が重要であった。
しかし、本件の第1審以来の議論、その評釈を通じて、CGも本法の規制の対象となり得ることはほぼ確定したといえよう。
しかし、従来のカメラでも、撮影時の絞り、シャッタースピード、各種フィルター、現像の仕方などで、画像は「創作」されるという面がかなりある。まして、デジタルカメラの時代に入り、その画像を保存する際、そしてそれを記憶媒体に保存する際に、画像をぼかしたり、輪郭を強調したりすることは自由に行い得る。その意味では、CGに類する作業が、一般の写真にも存在し得るのである。
その意味で、第1審、控訴審が指摘した「一般人であれば、写真に見紛う程に精緻に描かれたもの」は児童ポルノたり得る。「一般人という基準は曖昧で、罪刑法定主義に反する」という主張は、「法解釈が、最終的には一般人(国民)の規範意識に則ったものでなければならない」ということを否定するものなのである。

lex/dbの判決には「法令の適用」が省略されている

 不特定又は多数の者に提供罪の罪数が問題になるので、法令適用も載せてください。載せないのは自信がないからかと思います。

TKC
【文献番号】25624022
児童買春、児童ポルノに係る行為等の規制及び処罰並びに児童の保護等に関する法律違反被告事件
大阪地方裁判所令和7年(わ)第1803号、令和7年(わ)第2089号、令和7年(わ)第2815号
令和7年9月30日第2刑事部判決

       判決要旨

被告人 W1(昭和62年○月○○日生)


       主   文

被告人を懲役3年及び罰金70万円に処する。
未決勾留日数中70日をその懲役刑に算入する。
その罰金を完納することができないときは、5000円を1日に換算した期間被告人を労役場に留置する。
この裁判確定の日から5年間その懲役刑の執行を猶予する。

       理由の要旨

(罪となるべき事実)
 次の各起訴状に記載された各公訴事実と同一であるから、これらを引用する。
第1 令和7年5月23日付け起訴状記載の公訴事実第1
第2 同日付け起訴状記載の公訴事実第2
第3 同日付け起訴状記載の公訴事実第3
第4 同年6月13日付け起訴状記載の公訴事実(別表番号1ないし4)(ただし、公訴事実の本文中「代金合計2万8600円相当」とあるのを「代金合計1万9600円相当」と、別表番号2の代金欄に「1万3500円相当の電子マネー」とあるのを「4500円相当の電子マネー」と、別表の合計欄に「2万8600円相当の電子マネー」とあるのを「1万9600円相当の電子マネー」とそれぞれ訂正する。)
第5 同年8月4日付け起訴状記載の公訴事実
(量刑の理由)
 本件は、不特定多数に提供する目的で温浴施設で児童の裸体を撮影して動画データを記録・保存した児童ポルノ製造3件、不特定者への児童ポルノの提供4件、児童ポルノの公然陳列1件からなる事案である。
 被告人は、あらかじめ温浴施設を利用する児童のグループ名等を調べた上、誰もが利用できる温浴施設に盗撮のための道具を設置して盗撮しており、計画的で強い犯意に基づく悪質な態様の犯行である。また、被告人は、盗撮して得た動画データを商品として不特定の者に販売したり、閲覧させたりして拡散しており、悪質である。その結果、被害児童の裸体が多くの者に閲覧され、また、更に拡散の危険にさらされたのであって、被害結果は重いものがある。児童の親権者が被告人の厳罰を望むのは当然である。
 被告人は、児童ポルノの動画データを販売して利益を得るなどの目的で各犯行に及んでおり、動機は酌むことができない。また、被告人によれば、相応の期間、多数の児童ポルノの動画データを製造し、販売し、多額の利益を得ていたというのであって、本件は常習的な犯行であるといえる。
 これらによれば、犯情は悪い。
 もっとも、被告人に前科はない。被告人は、捜査段階から事実を認めて反省の態度を示している。そのほか、父親が被告人を監督すると述べていること、父親の勤務先会社が被告人を雇用すると述べていること、当然のこととはいえ、被告人が市立幼稚園職員を懲戒解雇されたこと、被害弁償の実現には至っていないものの、被告人が被害弁償のための金銭を弁護人に預け、被害弁償の意向を示していることなどの被告人のために酌むべき事情が認められる。
 本件の被害結果は重大であるものの、本件で起訴された事件の件数や内容、被告人の前科関係、被告人の認否や反省の態度等からすると、被告人を実刑に処するのは相当でない。
 被告人に対しては、主文の懲役刑に処し、その刑事責任を明確にした上、懲役刑の執行を猶予するのが相当であるが、本件の重大性に鑑み、その猶予期間は最長期のものとするのが相当である。さらに、この種犯行が経済的に割に合わないことを理解させるため、主文の罰金刑を併科するのが相当であると判断した。
(求刑 懲役3年及び罰金70万円)
大阪地方裁判所第2刑事部
裁判官 近道暁郎

令和7年検第8058号
起訴状
令和7年5月23日
大阪地方裁判所 殿
大阪地方検察庁
検察官検事 冨士崎真治
下記被告事件につき公訴を提起する。

       記

職業 無職 勾留中 W1 昭和62年○月○○日生
公訴事実
 被告人は、不特定又は多数の者に提供する目的で
第1 別紙記載の被害者Aが18歳に満たない児童であることを知りながら、令和6年2月11日午後6時頃から同日午後8時頃までの間、別紙記載の宿泊施設男湯脱衣室において、前記被害者Aの全裸の姿態を、被告人が使用する動画撮影機能付きタブレット端末で撮影し、その動画データを同端末の内蔵記録装置に記録して保存した上、同年8月20日午前10時24分頃、徳島県美馬市α大字β字γ××番地×被告人方において、同端末を利用して、同動画データを編集して作成された前記被害者Aの全裸の姿態が記録された動画データ1点を電磁的記録媒体であるマイクロSDカードに記録して保存し
第2 別紙記載の被害者Bが18歳に満たない児童であることを知りながら、同年10月26日午後5時45分頃から同日午後7時頃までの間、前記脱衣室において、前記被害者Bの全裸の姿態を、被告人が使用する同端末で撮影し、その動画データを同端末の内蔵記録装置に記録して保存した上、同年11月18日午後10時4分頃、前記被告人方において、同端末を利用して、同動画データを編集して作成された前記被害者Bの全裸の姿態が記録された動画データ1点を電磁的記録媒体であるマイクロSDカードに記録して保存し
第3 別紙記載の被害者Cが18歳に満たない児童であることを知りながら、同月3日午後7時頃、前記脱衣室において、前記被害者Cの全裸の姿態を、被告人が使用する同端末で撮影し、その動画データを同端末の内蔵記録装置に記録して保存した上、同月18日午後9時58分頃、前記被告人方において、同端末を利用して、同動画データを編集して作成された前記被害者Cの全裸の姿態が記録された動画データ1点を電磁的記録媒体であるマイクロSDカードに記録して保存し
もって衣服の全部又は一部を着けない児童の姿態であって、殊更に児童の性的な部位が露出され又は強調されているものであり、かつ、性欲を興奮させ又は刺激するものを視覚により認識することができる方法により描写した電磁的記録に係る記録媒体である児童ポルノを製造したものである。
罪名及び罰条
児童買春、児童ポルノに係る行為等の規制及び処罰並びに児童の保護等に関する法律違反 同法7条7項前段、6項前段、2条3項3号
別紙
被害者A■(当時14歳)
被害者B■(当時9歳)
被害者C■(当時12歳)
宿泊施設 香川県高松市δ×番×号ε2階

強制性交の逆転無罪判決(大阪高裁r6.12.18)

強制性交の逆転無罪判決(大阪高裁r6.12.18)


 事実誤認の控訴理由は「原判決の判断は論理則、経験則等に照らして不合理であって、強制性交等罪にいう暴行・脅迫があり、Xの同意がなかったと認めた原判決の判決に影響を及ぼすことが明らかな事実の誤認がある。」で締めくくる

■28331579
大阪高等裁判所令和06年12月18日
 上記両名に対する各強制性交等被告事件について、令和6年1月25日大津地方裁判所が言い渡した判決に対し、被告人両名からそれぞれ控訴の申立てがあったので、当裁判所は、検察官池邊光彦出席の上審理し、次のとおり判決する。

主文
原判決を破棄する。
被告人両名はいずれも無罪。

理由
理由
 被告人Y1の控訴の趣意は、主任弁護人秋田真志、弁護人高橋映次及び同西愛礼連名作成の控訴趣意書及び控訴趣意書補充書に、被告人Y2の控訴の趣意は、主任弁護人奥津周、弁護人川﨑拓也、同板﨑遼及び同佐々木崇人連名作成の控訴趣意書に、それぞれ記載のとおりであり、被告人Y1の論旨は事実誤認及び法令適用の誤り、被告人Y2の論旨は事実誤認である。
 そこで、記録を調査し、当審における事実取調べの結果をも併せて検討する。以下、呼称等は原判決の例による。
第1 事実誤認の論旨について
 1 原判決の判断の概要と被告人両名の各論旨
 (1)原判決の認定した事実
 原判決が認定した罪となるべき事実の要旨は、以下のとおりである。
 被告人Y2及びB(以下「B」という。)は、(1)共謀の上、令和4年3月15日(以下、特に断らない限り、月日の記載は令和4年である。)午後11時51分頃、B方において、X(当時21歳の女性)に対し、被告人Y2がその様子を携帯電話機で動画撮影をする中、Bが暴行を、B及び被告人Y2が脅迫を加えて[脅迫等〈2〉]、その反抗を著しく困難にした上で、Bが口腔性交[口腔性交〈1〉]をし、(2)引き続き、被告人Y1と共謀の上、同日午後11時51分頃から同月16日午前1時13分頃までの間に、同所において、Xに対し、Bがその様子を携帯電話機で動画撮影をしながら、脅迫を加えて[脅迫〈3〉]、B及び被告人Y1がかわるがわる口腔性交[口腔性交〈2〉]をし、同日午前1時14分頃から同日午前1時24分頃までの間に、同所において、Xに対し、B及び被告人Y1が暴行を加えて[暴行〈2〉]、Xに同所から立ち去ることを断念させた上、同日午前1時24分頃から同日午前2時31分頃までの間に、B及び被告人Y1がかわるがわる口腔性交をし、Bが性交をし、Bがその様子を携帯電話機で動画撮影をする中、被告人Y1が性交をした[本件性交等]、というものである。
 (2)被告人両名の各論旨
 これに対し、被告人Y1の論旨は、要するに、本件の各口腔性交及び性交はいずれもXの同意の下に行われており、暴行・脅迫により行われたものではなく、被告人Y1には故意も共謀もないから、強制性交等罪は成立せず、無罪であるというものである。被告人Y2の論旨も、要するに、口腔性交〈1〉はXの同意の下でなされたもので、少なくとも被告人Y2はXが同意していると認識しており、被告人Y2が関与した脅迫等〈2〉は、強制性交等罪における暴行・脅迫には該当しないから、口腔性交〈1〉について強制性交等罪は成立せず、また、口腔性交〈2〉や本件性交等についても強制性交等罪は成立しないが、仮にこれらがBや被告人Y1によって強制的になされたと評価できるものとしても、被告人Y2には、口腔性交〈1〉の時点で、Bとの間に共謀が成立する余地はなく、口腔性交〈1〉以降の経過において、Bや被告人Y1と共謀をしたといえる事情もないから、被告人Y2に口腔性交〈2〉や本件性交等による強制性交等罪は成立せず、無罪であるというものであり、いずれの論旨も、強制性交等罪が成立するとした原判決には、判決に影響を及ぼすことが明らかな事実の誤認がある、というのである。
 (3)原判決の判断の概要

当裁判所の判断
 2 当裁判所の判断
 (1)X証言の信用性を肯定するなどして、被告人両名を有罪とした原判決の認定、判断は、論理則、経験則等に照らして不合理であって、是認することができない。以下、その理由を説明する。
 (2)関係証拠によれば、本件の事実経過については、原判決が「第2 証拠上明らかに認定できる事実」として認定したところ自体に誤りはなく、被告人両名も特に争っていない。この後の検討の中で、適宜必要な範囲で示すこととする。
 (3)X証言の信用性について
 ア 虚偽供述の動機について
 まず、本件被害申告の経緯及びXの当初供述の内容等に照らせば、Xには虚偽供述の動機(誇張や矮小化)があることが疑われるため検討を要するところ、所論も指摘するとおり、原判決が事実経過(原判示・争点に対する判断第2の11)及びX証言の概要(同第3の1(10)(11))として認定した部分は、虚偽供述の動機があることを疑わせる重要な事実が漏れており、内容が不十分であるため、関係証拠により認められる事実を以下に示す。
 (ア)Xが、3月17日午後7時頃、Cで友人Aに対し、性交時に動画を撮影した相手等について相談していた際、Aは、「その先輩(相手)の素性って絶対ほんと?」「(相手の)バイト先は個人情報くれないかもやなー」「最終手段やけど」「先に警察に言うねんレイプされましたって(〈1〉)」「警察に言われたら」「バイト先も出さざるを得ないから」「個人情報でも何でも」と送信し、Xは「確かにね~」と返信し、Aが「何とかして相手の身元だけは押さえた方がいい」と送信したのに対して、Xは「そうよね まじで警察行こうかな」「動画一回出回ったらもう消せないもんね」と返信した(原審甲40)。
 Xは、同日午後8時40分頃、性犯罪被害相談電話に電話を架け、「男性三人から、えっと、強引めに性行為をされて」「性行為自体は、もうなんか、なんか警察呼ぶとか、自分で断れなかったのでもう、なんか、いいんですけど、その動画が(〈2〉)」と話した(原審甲41)。
 管轄の警察署の刑事が話を聞く日程調整をするということで一旦電話を切ったXは、Aにその旨Cで伝えると、Aは、「あと相手二人やったら」「確実に事件性みたいなのも」「あるみたいなふうにできると思うから」「ほんとに私も悪い所あったんですけどみたいなことは一切言わずに(〈3〉)」「警察に介入してもらおう」と助言した(原審甲40)。
 Xは、3月18日午後8時28分頃、Yに対し、Cで、「心配するかなと思っていえなかったんだけど、この前最後までやって結構その時の動画録られちゃったんだよね、それで動画だけはどうにかして欲しいって事になって性被害相談所みたいなのに相談したら、警察の人が性犯罪の中でも悪質なものだからこのことを事件化したいって言って、結局被害届を出すことになっちゃった。大ごとになっちゃってほんとにごめんね」と伝えた(原審甲8)。
 (イ)このような被害申告の経緯によれば、Xが被害申告した当初の主たる目的は、性被害として処罰を求めることよりも、動画の拡散防止にあったことは明らかであり、このことはX自身も証言中で認めている。Xは、性犯罪被害相談に電話を架けた当初、性行為自体については、前記〈2〉の「自分で断れなかったのでもう、なんか、いいんですけど」という程度にとどまる気持ちであったのが、警察官から事件化したいと言われて被害届を出すことになったもので、Xは大ごとになってしまったという気持ちは全くなかったと証言するものの(X証人尋問調書100頁(以下、供述者と速記録の頁数で表す。))、動画のことを相談したら話が急展開したと感じていた様子は、被害相談の電話をした直後のAとのCからもうかがわれる(甲40写真20、21時55分、「今からとりあえず病院に行くことになった!警察の人が迎えにきてくれるって」「結構甘く考えてたわ」)。このような本件の立件経緯も踏まえると、Xには、動画の拡散を防止するという目的のために警察に捜査してもらう必要があり、Aからの助言〈1〉に従い、実際よりも誇張して供述したり、警察が捜査をやめてしまわないように、Aからの助言〈3〉に従い、自身に不利益な事実について供述を差し控えたりする動機があるといえる。実際、Xは、警察の事情聴取において、付き合ってはいないが性的関係にある人がいることや口腔性交〈1〉の事実を話さなかったものであり、その理由について、口腔性交〈1〉の事実を警察の人に言ったら、警察の人にどう思われるかわからない、無理やりの性行為だということを信じてもらえないのではないか、捜査をやめられて、動画の拡散を止めることもできなくなるのではないかと思ったためであることを認める証言をしている(X50、93、111頁)。
 以上によれば、Xは動画の拡散防止という目的から性犯罪被害相談に電話を架けたが、その電話の流れで事件化したいという警察の意向に応じて被害届を出すことになったもので、前記目的を達成するため、状況等を誇張し、自身の不利な行動を隠して矮小化して供述する明白な動機があり、実際に、口腔性交〈1〉の事実等を隠す内容の虚偽供述をした事実(性犯罪被害相談に電話を掛けた時点では、警察から尋ねられてもいないのに、結構脱がされそうになった、(Y2と口腔性交をした事実はないのに)舐めさせられたのは3人だったとも供述していた。)もあるから、その証言の信用性を判断するに際しては、虚偽供述の動機の観点から相当慎重に検討しなければならない事案といえる。
 (ウ)しかるに、原判決は、Xには誇張して供述をする動機があるなどと指摘する原審弁護人の同旨の主張への応答という形で一応の検討を加えてはいるものの、所論も指摘するとおり、やや的外れなものになっているといわざるを得ない。すなわち、原判決は、〈1〉「犯人の検挙や処罰よりもまずは当該動画の拡散を防止してもらいたいとの気持ちを有するのは自然な心情であるから、たとえ本件被害申告の主たる目的が性的動画の拡散防止にあったとしても、何ら不自然なことではない」、〈2〉「(警察に対して当初口腔性交〈1〉を話さなかったことについて)Xの当時の心情は、刑事手続に初めて携わる若年者の心情としても、自責の念を抱きやすい性被害に遭った者の心情としても十分理解し得る」、〈3〉「(なめさせられたのは3名であった等事実に反する内容を申告していることについて)被害直後の段階では混乱や動揺から抜け出せず、被害を思い出すことにも苦痛が伴うであろうことは想像に難くない」などという理由で、虚偽供述の動機があるという原審弁護人の指摘を排斥しているが、原判決の説示は、それぞれ当時のXの心情を、自然で、理解し得、想像に難くないという、Xの証言が真実であるとして説明が付けられるかという方向から検討したものにとどまり、原審弁護人の指摘に対して直接応答するものとはなっておらず、この点を十分に検討した形跡がない。また、原判決は、「口腔性交〈1〉の少なくとも大まかな外形的事実については、Bや被告人Y2が供述すれば、捜査機関に判明することは想定できるので、Xが口腔性交〈1〉について殊更隠すつもりで供述していたとは認められない」と説示するが、X自身、前述の理由から警察に話していなかった口腔性交〈1〉については、話さないといけないとは思いながらも、最初に言ってなかったから言えないという気持ちであったと証言しており(X51頁)、Bと被告人Y1が逮捕された後、検察官の事情聴取の際に、口腔性交〈1〉についても自分から話をしたとはいえ(X51頁)、それまでは殊更隠すつもりであえて供述しなかったことに疑いはなく、そのようには認められないとの原判決の判断は、明らかに証拠に反している。
 そうすると、Xには、誇張、誇大な供述をし、あるいは、実際にはあった事実を伏せて矮小化した供述をするなど、虚偽供述をする動機があり、実際に虚偽供述に及んでいたことから、X証言の信用性判断に際しては、虚偽供述の可能性について、相当慎重に見極める必要があるにもかかわらず、原判決はかかる重要な視点から十分に検討をせず、Xの証言が真実であるとして説明が付けられるかという方向からの検討の仕方に偏ったものとなっているといわざるを得ない。
 イ 性行為のきっかけについての記憶の欠落
 次に、Xは、本件当日の記憶が一部ない旨述べているところ、原判決は、「特に、口腔性交〈1〉及び口腔性交〈2〉が始まったきっかけについては、それぞれ印象に残る場面であるはずなのに記憶しておらず」としながらも、「もっとも、Xが相当量の飲酒をしていたことや時間の経過を踏まえると、記憶の欠落があることは不自然ではない。」と説示する。
 しかし、Xは一次会と二次会で相当量の飲酒をしているとはいえ、その証言によれば、一次会での出来事や飲酒状況、二次会に行くことになった時の気持ち、場所決めの経緯、店を出てからB方に行くまでの間の出来事、口腔性交〈1〉をした場所やそのときの被告人Y2の位置、被告人Y1とYが来た後の二次会での出来事や飲酒状況、その後、本件性交等に至るまでの状況については、口腔性交〈2〉と口腔性交〈3〉を混同する様子は見受けられるが、相応に記憶している一方で、B方のあるマンションに到着してから、最初の記憶であるBの陰茎を口にくわえさせられている場面までの間のことは一切覚えていないというのである。一連の性行為のきっかけとなる部分については、それが最初に性的な接触を持った場面で、その場に二人きりであった相手のBが陰茎を露出しているという非常にインパクトの大きいものであって、しかも口腔性交は相手の陰茎をくわえるという一定の能動的な行為を必要とする濃厚な接触を伴う性行為であるから、そのようなことになった展開を含めて通常は記憶に残るはずであるといえ、また、その後の二次会で更に飲酒しているのに、その後のことの方を覚えている一方、口腔性交〈1〉のきっかけについて記憶がないというのは不自然であるとも評価できる。そして、性行為のきっかけとなるその始まりの場面こそ、一連の性行為について同意していたか否かという点に関わる重要な場面であるところ、前述のとおり、Xが当初の被害相談から警察の事情聴取の段階において、無理やりの性行為であると信じてもらうため、記憶にあった口腔性交〈1〉の事実をあえて話さない形で供述していたことからすると、口腔性交〈1〉のきっかけについても、同様の動機から、記憶があるにもかかわらず、覚えていないといった虚偽の供述をして事実を隠している可能性が否定できない。
 以上によれば、X証言について、性行為のきっかけについて記憶が欠落しているという点は、不自然なものとみるべき余地があるにもかかわらず、原判決が、前記諸点について十分な検討を加えることなく、飲酒量や時間の経過という点のみから不自然ではないと判断したのは、論理則、経験則等に照らして不合理であるといわざるを得ない。
 ウ Y証言との整合性について
 X及びYが腕を組んで立ち去る意思を示していたのを、BがXの身体に両腕を回して抱き付いて引っ張り、被告人Y1がYの身体をつかんで引っ張って、XとYとを引き離したとされる暴行〈2〉(以下「引き離し行為」ともいう。)について、原判決は、Xの証言内容はY証言とおおむね合致していると説示する。しかし、Y証言は反対尋問で後退し、結局、ほぼ記憶していないというに等しい曖昧なものとなっており、しかも、主尋問で述べた引き離し行為の態様も、X及びYの位置、BがXを引っ張った方向や方法について、X証言と食い違うなどしており、少なくともX証言と合致しているとして、その信用性を高めるものとはいい難い(詳細は後記(4)ウ)。
 エ まとめ
 以上検討したとおり、Xには虚偽供述の明白な動機があり、X証言の信用性については相当慎重に判断する必要がある。そして、一連の性行為のきっかけとなる口腔性交〈1〉に至る経緯について記憶がないという点は不利益になることを危惧して虚偽の供述をしている可能性が否定できない。引き離し行為についても、Y証言がX証言と合致しているとはいい難い。しかるに、原判決は、Xに虚偽供述の動機があるという観点からの検討が十分でない結果、X証言が全体として信用できるとの判断をし、一連の性行為のきっかけとなる重要な事実に関する記憶の欠落についての検討も不十分な結果、X証言が不自然ではないと判断しているのであり、論理則、経験則等に照らして不合理であるといわざるを得ない。
 そこで、以上を前提に、原判示の暴行・脅迫が認められ、強制性交等罪における暴行・脅迫に当たるかについて、検討する。
 (4)強制性交等罪における暴行・脅迫に当たるか等について
 ア 脅迫等〈2〉(口腔性交〈1〉)について
 (ア)原判決の認定
 原判決は、脅迫等〈2〉(Bが「Xの頭部を左手でつかんでその口腔内に自己の陰茎を含ませて腰を前後させ」という暴行、Bが「苦しいのがいいんちゃう」と言い、被告人Y2が「苦しいって言われた方が男興奮するからな」と言った脅迫)について、要旨、XがB方に入った直後に、リビングでBと二人きりになって口腔性交をした後、さらに、被告人Y2がリビングに入ってきたところで行われたもので(口腔性交〈1〉)、その具体的態様は、Bが、自らの強い支配領域下で、Xの頭をつかんで、それ自体が性的な意味合いの強い有形力の行使に及び、さらに、年齢や体格で勝るB及び被告人Y2が、苦しがっているXに対し、その苦痛に取り合うことなく口腔性交を強いたものである、口腔性交〈1〉は、Xが、エレベーター内において繰り返し性交等を拒絶する発言をしていた僅か4分後の出来事であることも踏まえると、脅迫等〈2〉は、Xの反抗を著しく困難にさせる有形力の行使ないし害悪の告知といえ、性交等に向けられたものと認められる、とした。
 また、原判決は、Xが同意していなかったと推認できる理由として、要旨、XとB及び被告人Y2との関係性は希薄であった上、一次会において、被告人ら及びBは、X及びYに対し、一方的に性的な事項を話題にし、性的な経験等を聞き出すなどしていたが、X及びYからは、B方に行くまでの間も含めて、積極的に性的な話題を持ち出したり、被告人ら及びBとの身体接触を図ったりしたことはなかったことが認められ、そのような経緯や関係性を踏まえると、Xは、Yとともに二次会に参加するつもりでB方に入ったのであり、被告人ら及びBのいずれとも性交等をする意図は有していなかったといえ、それにもかかわらず、B方に入ってから、容易に逃げられない状況でBに口腔性交を求められ、冗談と思っていたことが現実化しそうな状況になり、驚愕や動揺により、あるいは、抵抗すればより強度の性被害に遭うかもしれないなどといった心情に陥り、さらに脅迫等〈2〉により、苦しいと言っても取り合ってもらえず、反抗が著しく困難な状態になって、他の男性に見られる中で、口腔性交〈1〉をさせられたものであるから、口腔性交〈1〉についてXは同意していなかったものと推認できる、とした。
 (イ)当裁判所の判断
 口腔性交〈1〉における脅迫等〈2〉が強制性交等罪にいう暴行・脅迫に当たるかを検討するに当たっては、脅迫等〈2〉の内容のみならず、それがどのような経緯で行われるに至ったのかという点も重要であるところ、被告人Y2が撮影していた、エレベーター内からB方入室直後までの間の動画1(3月15日午後11時44分に撮影が開始された57秒間の動画、原審甲11)、動画2(3月15日午後11時47分に撮影が開始された9秒間の動画、原審甲11及び12)及び動画3(3月15日午後11時51分に撮影が開始された32秒間の動画、原審甲11及び12)によれば、午後11時45分頃にB方に3人が入室した後、午後11時47分頃には既にリビングにおいて口腔性交が始まっており、トイレに行っていた被告人Y2の入室により中断後、引き続き午後11時51分頃に口腔性交〈1〉が行われている。このように、B方に入室後、極めて短時間で口腔性交に至るには、かなり強度の暴行・脅迫が加えられたか、Bの求めにXが任意に応じたか以外には考えにくい(B方入室時に既に拒絶できない状態になっていたことも考えられるが、原判決は、原審検察官が主張した脅迫〈1〉(エレベーター内でのB及び被告人Y2の言動)は脅迫に当たらないと判断している。)。この点、動画2によれば、被告人Y2がリビングに入ろうとしてドアを開けた際に、Xが自分でドアを閉めたことが認められる(Bが指示等した様子は見られない。)。かなり強度の暴行・脅迫が加えられて口腔性交に至ったというのであれば、Xがそのことを記憶していると思われるし、誰かが部屋に入ってこようとしているのに、あえて自らドアを閉めて相手と二人きりになることを選択するというのは通常考え難い行動といえ、Xが口腔性交〈1〉の後、合流したYや被告人Y1とともにそしらぬ様子で二次会のゲーム等に興じていたことも併せみると、Xが、Bから口腔性交を求められ、任意に応じたものであった可能性が高い。
 一方、エレベーター内からB方入室までの間の動画1を見ると、B、被告人Y2及びXの間で以下の会話が認められる(括弧内は発言者)。「二人じゃないとしたことないの?(B)」「え、でも。それやったらもういいじゃん。(被告人Y2)」「やだー。(X)」「みんなといいんじゃない。(B)」「ヤバい。(X)」「なんで?(B)」「うん。ダメダメ。(X)」「3人。で、別、3人でしたことないんでしょ?だって。(B)」「はい。今度今度今度今度。(X)」「今度する?じゃ。(B)」「今度。いや。(X)」「じゃあオレ見とかんわ。オレ見ないわ。じゃあ1回これで閉めてもらって。(被告人Y2)」。そう言って被告人Y2が先にエレベーターを降りると、「え、ぜん、ダメダメダメ。(X)」「1回1回1回。(被告人Y2)」「やだやだやだ。(X)」などと言ってXもエレベーターを降り、「いや、じゃ、まぁ、…そっちでするわ。じゃあ。(B)」と言ってBも降り、被告人Y2とBの間で「え、なに。え。エッチするつもりでおんの。」「ま、まって、ヤバ…。」「それだけが、ヤバ…。」「…すごいでお前。」などという会話が交わされる中、Xが「どっち行くんですか?」と言い、Bか被告人Y2が「1回1回1回。行こ。」と言うのに対し、「今日はダメ。ほんとに。(X)」「なんでなん?(B及び被告人Y2)」「今日はちょっと。(X)」「体調が。(X)」などと言ううちにB方に到着し、Xは、「ヤバい、鍵してない。」と言って、ためらう様子もなく玄関内に入り、電気のついていないリビングにも自ら入っている。原判決は、口腔性交〈1〉の成否の判断において、エレベーター内において繰り返し性交等を拒絶する発言をしていた僅か4分後の出来事であることから、脅迫等〈2〉がXの反抗を著しく困難にさせる有形力の行使ないし害悪の告知といえるとするが、他方で、原審検察官が主張した脅迫〈1〉が脅迫に当たらないと判断するに当たっては、XがB方に向かう道中での身体接触や性交等の誘いは冗談と思っていたことからすれば、エレベーター内での前記要求も同様に思っていたことがうかがわれるとも説示しており、Xが真剣に拒絶していたと認定したのか、いささか分かりにくい説示となっている。この点、10階でエレベーターを降りた後、B方のリビングに入るまでのXの様子は前記のとおりであり、B方に行けば意に反して性交等させられることになるのではないかと危惧するなどした様子はうかがわれない。動画1におけるXの発言は、性交等に応じることはおよそないという強い拒絶を示すものとは必ずしもいえず、直後の口腔性交につきXが任意に応じたことと矛盾するものとはいえない。そして、脅迫等〈2〉の具体的な内容を見ても、既に口腔性交が始まって撮影開始後、有意な言動はほぼない中でされた動作や発言であって、そもそもXの口腔内に自己の陰茎を含ませて腰を前後させるという行為は、口腔性交〈1〉が開始されたときから継続的に行われている、口腔性交に通常随伴する行為であるし、頭部を左手でつかむという行為も、動画を見る限り、左手を頭部に添える程度であって、頭部を左手でつかんで強制的に前後させるというような力の加え方をしたものではない。また、Bの「苦しいのがいいんちゃう」、被告人Y2の「苦しいって言われた方が男興奮するからな」という発言も、性行為の際に見られることもある卑わいな発言であると評価可能である。原判決は、Bや被告人Y2とXとの関係性を理由にその評価を否定するが、そのような関係であれば、そのようなコミュニケーションが成立するはずがないとは必ずしもいえず、実際、エレベーター内でB及び被告人Y2が卑わいな発言をしたにもかかわらず、Xはその発言に返事をしつつ、ためらう様子もなくB方に入っているのであり、前記関係性がその評価を否定できるだけの根拠とはならない。このように、脅迫等〈2〉とされる行為や発言は、強制性交等罪にいう暴行・脅迫には当たるとは認められないし、この際の動画撮影行為が口腔性交に向けられた脅迫に当たるとみるべき事情もない。
 原判決は、口腔性交〈1〉が、暴行・脅迫がなく始まった口腔性交に引き続き行われたものであること、その結果、脅迫等〈2〉が口腔性交に通常伴う有形力の行使や卑わいな言動と評価できる余地が多分にあるのに、その可能性に目を向けず、これを強制性交等罪にいう暴行・脅迫に当たるとしたもので、その判断は不合理である。この点、脅迫等〈2〉の直後、Bが「なんでフェラしてくれてんの?逆に。…けど。」(動画3番号14)という発言をしており、口腔性交の求めに応じてくれていることに対し、驚きや意外に思う気持ちを表した発言とも解せられるところ、暴行・脅迫によって口腔性交が行われたことと相いれず、原判決の結論をとるのであれば、当然検討してしかるべき発言であるが、原判決は、この発言について検討した様子も見られない。また、同意の有無の検討において原判決が摘示する、「驚愕や動揺により、あるいは、抵抗すればより強度の性被害に遭うかもしれないなどといった心情に陥り」との心情は、Xが証言するところでもなく、根拠に乏しいものであるし、Bの「強い支配領域下」などと説示するのも、B自身の家における行為であるという以上のものはないのであって、脅迫等〈2〉から程なくして、XがBから指示等されたわけではないのに、つまり自らの判断で陰茎から口を離して口腔性交〈1〉が終わっていること、後からやって来たYに対してこのような出来事に関して伝えようとしたさまが全くないことに照らしても、Xが口腔性交〈1〉に同意していなかったと推認することは疑問であるといわざるを得ない。原判決は、口腔性交を求めたら応じてくれた旨いうBの証言を排斥するが、既に見たところに照らせば、排斥し難いものであるというほかない。
 以上のとおり、口腔性交〈1〉(脅迫等〈2〉)についての原判決の判断は不合理であり、Xが同意の上で口腔性交〈1〉をした疑いを払拭できない。
 イ 脅迫〈3〉(口腔性交〈2〉)について
 (ア)原判決の認定
 原判決は、脅迫〈3〉(Bがその様子を携帯電話機で動画撮影する中、Bが「苦しい」と言うXに、「が、いいってなるまでしろよ。お前。」と言った脅迫)について、要旨、その具体的態様は、BがXに制止された動画撮影を継続しながら、Bと被告人Y1が交互に口腔性交〈2〉をした上、Xが「苦しい」と言うのを意に介さず、命令口調で、Xの苦痛よりも自身らの性的欲求の満足を優先するよう求めるものであるとして、このような言動は、Xに更にその意に反する性交等を強要するものであり、Xの反抗を著しく困難にさせる害悪の告知といえ、性交等に向けられたものと認められる、とした。
 また、原判決は、既に口腔性交〈1〉の被害を受けている上、その後も被告人Y1に抱き付かれるなどしていたし、さらに脅迫〈3〉により、反抗が著しく困難な状態になっていたと認められ、その上、口腔性交〈2〉の態様は、年齢や体格で勝る男性2名が、動画撮影をしようとしたりする中で、それぞれ強い口調で一方的に指示し、Xは言われるがままに口腔性交や手淫をさせられ、Xが「嫌だ。」「やめてください。」「痛い。」などの発言を繰り返しても、相応の時間、口腔性交を続けさせられた上、その間、B及び被告人Y1から「調教されてないなお前。なぁ。ちょっと、されないとダメやな。」等の侮蔑的な発言も繰り返されていたというものである、XとB及び被告人Y1との関係性からしても、Xが、このような態様で両名に同時又は順次口腔性交をすることに真に同意していたとはおよそ考え難い、とした。
 (イ)当裁判所の判断
 ゲーム等をした後に始まった口腔性交〈2〉のきっかけについて、Xは明確な供述をしていない一方、B及び被告人Y1は、Yがリビングからいなくなったタイミングで、Bから、被告人Y1にも口腔性交をしてあげてほしいと求めたら、Xが応じたと供述するところ(B27頁、被告人Y1・18頁)、その後間もなくBが撮影を開始した動画5(3月16日午前1時4分に撮影が開始された13分間の動画、原審甲11)の内容を見聞きすると、B及び被告人Y1が供述するようなきっかけであったとして特に疑わしいところはない。
 そして、脅迫〈3〉の内容を見ると、既に被告人Y1及びBとXとの間で、かわるがわる口腔性交が行われていた中で、「苦しい」というXに対し、Bが「が、いいってなるまでしろよ。お前」との発言があったものであるが、内容的には口腔性交〈1〉における「苦しいのがいいんちゃう」などという発言と大差なく、いわゆる性行為の際に見られることもある卑わいな発言という範疇のものと評価可能である。この発言の前後で、Xは「嫌だ」「やめてください」「だめ」などと述べてはいる(動画5番号74、82、85、87)が、脅迫〈3〉の発言の2分数十秒前から口腔性交をしているところ、脅迫〈3〉の発言に至るまで、Xは、動画の撮影をやめてほしいとか部屋の電気を消してほしいと述べてBに従わせているほか、途中、被告人Y1に対して「痛くないですか。」(動画5番号51)と述べてもいること、脅迫〈3〉の発言の後、Bから「フェラすればいいと思っているところがちょっとかわいそうなんやけど。」と言われて、「あんまりしないですよ、フェラ。」と至って普通に会話を交わしている(同番号99、100)ことに照らすと、Xが「嫌だ」などと述べたのは口腔性交に対するものではなく、それ以外の性行為等に対するものであることが十分に考えられる(原判決が指摘するXの発言のうち「痛い」についても、Xが「痛い」と言うと、Bが「い、痛い?」、被告人Y1が「痛い?痛いんや。」と言って、Xが「うん」と答えると、Bが「でもフェラはしてくれるん?はい、フェラ。お願いします」と言っている(動画5番号91ないし95)。このような会話内容に照らせば、Xが痛がった原因は口腔性交ではないとともに、Bや被告人Y1は、Xが痛がる行為はやめていることがうかがわれる。)。また、脅迫〈3〉の発言があった後、Yの話が出たときに「え、私がやるので大丈夫です。」(同番号123)と言った後、「じゃあ私がやって。はい。早く早く早く。」(同番号124)と被告人Y1から求められると、「座りますか?」(同番号126)と気遣いを見せてもいる。このようなやりとりの中に緊迫感やこれに類するものがないことも踏まえると、脅迫〈3〉の発言も、口腔性交〈1〉と同様、既に行われている性行為の中でその一環としてなされた言動であって、Xの反抗を抑圧して性交等を行うための手段になっているものではないから、強制性交等罪にいう脅迫とは認められない。
 原判決は、Xが口腔性交〈1〉に同意していなかったという前提に立ち、脅迫〈3〉について脅迫〈2〉と同様の判断を示した上で、口腔性交をBが求めたら応じてくれた旨いうBの証言及び被告人Y1の供述を排斥するが、既に見たところに照らせば、これらは排斥し難いものであるというほかない。
 以上のとおり、口腔性交〈2〉(脅迫〈3〉)についての原判決の判断は不合理であり、Xが同意の上で口腔性交〈2〉をした疑いを払拭できない。
 ウ 暴行〈2〉(引き離し行為)(本件性交等)について
 (ア)原判決の認定
 原判決は、暴行〈2〉(Yと腕を組んで同所から立ち去ろうとしていたXに対し、Bがその後方からXの身体に両腕を回して抱き付いて引っ張り、被告人Y1がYの腕をつかんで引っ張って、YをXから引き離すなどした暴行)について、要旨、X及びYの各証言に信用性を認め、X及びYが腕を組んで立ち去る意思を明らかに示していたにもかかわらず、BがXの身体に両腕を回して抱き付いて引っ張り、被告人Y1がYの身体をつかんで引っ張って、XとYを引き離した事実が認められ(Yが引っ張られた部位については、直接体験したY自身の明確な供述がないことから、両名の供述が一致する身体のいずれかという限度で認定)、Xとしては、これ以上性的な行為をされないために、Yと一緒にB方から立ち去りたいと考え、実際、かばんを肩に掛けるなど帰宅の準備をした上で、Yと腕を組むなどして、Yと一緒に立ち去る意思を明確に示していたにもかかわらず、結局、帰宅を断念せざるを得なくなったことにより、反抗することが著しく困難な状態になったものと推認されるとした。
 また、原判決は、Xは、Bや被告人Y1から強制的に口腔性交〈1〉や口腔性交〈2〉をされ、しかも、帰宅したい旨述べたにもかかわらず、結局、暴行〈2〉により、帰宅を断念させられた上で、本件性交等をさせられており、前記のとおり、Yと一緒に立ち去る意思を明確に示していたにもかかわらず、結局、XだけがB方に残ることになったことで、より一層、反抗することが著しく困難な状態になったものと推認され、そのような状態で行われた本件性交等にXが同意していなかったのは明らかであるとした。
 (イ)当裁判所の判断
 まず、Xの信用性判断において要旨を示した(前記(3)ウ)引き離し行為の有無について改めて検討する。原判決は、Xの証言内容はY証言とおおむね合致していると説示するところ、Y証言の概要として、「Xと一緒に帰ろうという話をして、かばんを持ち、Xと腕を組んだ。その後、Bと被告人Y1がリビングに入ってきたので帰りたいと伝えたところ、BがXを、Xの脇の下に両腕を入れて肘を曲げる形でつかんで引っ張り、Xと組んでいた腕が外れた。詳しく覚えていないが、そのとき自分は、被告人Y1から腕を引っ張られたと思う。被告人Y1のいた位置は覚えていない。」と要約している。しかし、Yは主尋問ではこのような内容を述べていたが、反対尋問では、「確実に(被告人Y1に)引っ張られたって言われたら、そうでもないです。」「(供述調書では腕とは特定せず、どこかをということだから、つかまれた場所は、そのときには説明ができなかったということではないか)はい。」「(引っ張られたりしたイメージという表現を使っているから、引っ張られたかどうかについても記憶にはっきりしないということで、こういう表現になったのではないか)はい。」と後退し、結局、再主尋問でも、「(今のYの記憶の中では、Y自身が被告人Y1に腕を引っ張られたという記憶は、はっきりしないということになるのか)はい。」と答えている。一連の性行為の中で、最も顕著に有形力が行使された場面であるにもかかわらず、Y証言はこのように証言中に後退し、結局、ほぼ記憶していないというに等しい曖昧なものとなっており、しかも、主尋問で述べた引き離し行為の態様は、そのときのX及びYの位置、BがXを引っ張った方向や方法について、X証言とY証言とは明らかに食い違っている。Yは、自分がXを飲み会に誘い、現場にもいたのにXが性被害を受けたと述べていることで、自責の念を抱いているものと推察され、Xの利益のために、意識的、無意識的に誇張したりXに同調したりして虚偽の供述をする動機や危険性があるところ、真にYが被告人Y1から公訴事実どおりの直接的な有形力の行使を受けたのであれば、飲酒の影響があることを踏まえても、Yにとって相当衝撃的・印象的な出来事であって、記憶に残る可能性が高いといえ、証言が曖昧であることは、このような出来事があったことに疑いを抱かせるものであり、このようなことを十分考慮せずに、Y証言が信用できるとした原判決は不合理であるといわざるを得ない。そうすると、X証言及びY証言の信用性は十分なものとはいえず、被告人Y1がYを引っ張ったという事実は認定できない。
 一方、BがXに抱き付いて引き止めた行為については、B自身、口腔性交をしてもらっていたこともあり、それ以上にもっと口腔性交してもらいたいとか、あわよくば、性交できたらなという思いがあり、Xに抱き付いてCを交換しようとしたとして、前記行為に及んだことを認めており(B42頁)、本件性交等に向けられた暴行となり得ないではない。
 しかし、Bの抱き付いて引き止める暴行によって、Xに同所から立ち去ることを断念させたといえるには、Xが証言するような、何度も帰りたいと言ったのに帰らせてもらえなかったといった状況が必要であり、これが認定できて初めて、有形力の行使もあったことで、YのためにXは残らざるを得ないと諦めたということになるが、動画5の中では、X及びYが帰りたいと言ったのに対し(動画5番号270、273)、Bが、「そうなん?Yとしゃべれてないよ、オレ。」(同番号293)、「Yとしゃべりたい、オレ。えー、あかんか。もう帰っちゃう?」(同番号295)といった程度であり、残念そうにしつつも、「そっか」(同番号302)と諦めており、被告人Y1が「(Bから、Yが帰って彼氏とエッチすると言ったと聞いて)許さん。」と言ってはいるが(同番号324)、その語調からして冗談めかして言ったものと認められ、それ以外に、帰ってはいけないという言葉や態度を示したところは見当たらない。それどころか、動画5の最後は、Xと会話していたBがXに対し「C交換しよ」と言った後、被告人Y1が「(Yを)送って帰るわ。」と言い、Bが「あー、頼む。」と応じたところで終了している(動画5番号350、351)。動画5は、口腔性交〈2〉が始まった際にBが携帯電話で動画撮影していたのをXに撮るのは絶対だめで、携帯電話を置くように言われて置いたというのが始まりの方にあり(同番号6ないし8、29、30)、この動画が終了したタイミングについて、Bは、ずっと撮っている認識ではなくて、消し忘れて置いてあったものなので、帰るときに、XとCの交換をするということになって、自分が携帯を拾い上げたことで動画が終わったのだと思う(B39、40頁)、そのとき(動画が終わる直前)、Xは、リビング内の廊下への出口付近のベッド横におり(B41、42頁)、Cを交換するために携帯を取った後、動画5が終了した直後に、Xの腰か腕に腕を回す感じで抱き付いてそのままベッドに座ったんだと思う、そのときにはYと被告人Y1はもう既に廊下の方にいた(B43ないし47頁)と証言するところ、動画やそれをキャプチャーした写真という客観証拠を基に説明するもので、動画の終わり際の会話の内容にも整合し、被告人Y1の供述(被告人Y1・37頁以降)ともおおむね合致しており、その信用性を否定できない。Xが証言するような、動画5の後に、何度言っても帰らせてもらえないから諦めざるを得ない、Yだけでも帰らせてあげてほしいと考えるしかないような展開になったというのは、このような動画5からうかがわれる状況に照らすと、必ずしも信用し難いのであり、むしろC交換を名目とするBの引き止めを受けて、残ることにした可能性を払拭できない。
 そして、Bの抱き付き行為の後、被告人Y1がYを送りに外へ出て、戻ってきたときには、またBとXの間で口腔性交〈3〉が始まっていたのであり、前同様任意に応じたものとしても、不合理ではなく、Bの抱き付き行為は、強制性交等罪にいう暴行・脅迫に当たるとは認められないし、その後に行われた膣内性交までに、新たに暴行・脅迫が加えられたことも認められない。動画撮影行為が膣内性交に向けられた脅迫に当たるとみるべき事情もない。
 以上のとおり、本件性交等(暴行〈2〉)について、前記認定に至った原判決は、X及びYの虚偽供述の動機等についての判断の不合理さに加え、X証言がY証言とおおむね合致するとした点等でも不合理であり、Xが同意の上で本件性交等に及んだ疑いを払拭できない。
 (5)補論
 念のため、Xが動画の撮影を止められず、事後に動画拡散防止のための行動に出たことが、口腔性交〈1〉、同〈2〉及び本件性交等がXの同意によらずに行われたものであることを推認させるものではないかについて検討を加えておく。この点、Xは、本件性交等時、Bが動画を撮影していることに気付き、撮らないでほしいと思ったが、それまでも言っていたのに撮られたので諦めていた旨証言する(X43頁)。しかし、前記のように、口腔性交〈2〉に関する動画5は、口腔性交〈2〉が始まった際にBが携帯電話で撮影していたが、Xに撮るのは絶対だめで、携帯電話を置くように言われて置いたことを示すものであり、X証言はこのような客観証拠にそぐわない。Xが本件性交等時に動画の撮影をやめるよう言わなかったのは、言えなかったからではなく、言いそびれたといったようなものである可能性があり、後刻不安になったことから拡散防止のための行動に出たというもので、本件性交等がXの同意によらずに行われたものであることを推認させるものとはいえない。
 (6)結論
 以上の次第であり、その余の点について判断するまでもなく、X証言の信用性等についての原判決の判断は論理則、経験則等に照らして不合理であって、強制性交等罪にいう暴行・脅迫があり、Xの同意がなかったと認めた原判決には被告人両名の関係で判決に影響を及ぼすことが明らかな事実の誤認がある。
 被告人両名の事実誤認の各論旨はいずれも理由があり、被告人Y1に関するその余の論旨について判断するまでもなく、原判決は破棄を免れない。
第2 破棄自判
 そこで、刑訴法397条1項、382条により原判決を破棄し、同法400条ただし書により更に判決することとし、本件公訴事実については、これまで説示したとおり、被告人両名の関係で犯罪の証明がないことになるから、同法404条、336条により、被告人両名に対し無罪の言渡しをすることとする。
 よって、主文のとおり判決する。

第6刑事部

 住居侵入罪と強要未遂罪は牽連犯(松本支部r7.7.28) 同じ機会の不同意性交致傷罪とは科刑上一罪(かすがい現象)

 住居侵入罪と強要未遂罪は牽連犯(松本支部r7.7.28) 同じ機会の不同意性交致傷罪とは科刑上一罪(かすがい現象)

提供 TKC
【文献番号】 25623605
【文献種別】 判決/長野地方裁判所松本支部(第一審)
【裁判年月日】 令和 7年 7月28日
【事件番号】 令和6年(わ)第29号
令和6年(わ)第66号
令和6年(わ)第72号
令和6年(わ)第75号
【事件名】 住居侵入、不同意性交等(変更後の訴因:住居侵入、不同意性交等致傷)、性的姿態等撮影、強要未遂、建造物侵入被告事件
【裁判結果】 有罪
【裁判官】 廣瀬裕亮 山部佑輝 岡春奈



【罪となるべき事実】
第1 被告人は、正当な理由がないのに、令和5年12月19日午前2時30分頃、Aの自宅居室に無施錠の玄関ドアから侵入し、
1 その頃、同所において、A(当時24歳)に対し、「静かにしろ。服を脱げ。抵抗したらレイプする。前の人も言うこと聞かなかったからレイプしてボコボコにしてやった。」などと言い、同人に着衣を脱がせて全裸にさせ、同人の乳首を指でつまむようにして触るなどした上、同人の後頭部を手で押して同人の顔面を自己の陰茎に押しつけるなどの暴行脅迫を加えたことにより、同意しない意思を全うすることが困難な状態にさせ、同人に口腔性交をし、その際、前記一連の行為により、同人に全治不明の心的外傷後ストレス障害(以下「PTSD」という。)の傷害を負わせた(令和6年4月4日付け起訴状記載の公訴事実(同年7月26日付け訴因変更等請求書による変更後のもの))。
2 Aを同意しない意思を全うすることが困難な状態にさせて口腔性交等をした事実について同人が警察に通報するのを阻止しようと考え、令和5年12月19日午前3時30分頃、同所において、同人に対し、あらかじめ同人にスマートフォンを向けるなどした上で、1週間以内に警察に行ったら動画をさらすなどと告げて、同人が前記口腔性交等の事実について警察に通報すれば、撮影した動画を流布させるなどして同人の名誉に危害を加える旨告知して脅迫し、もって同人の権利の行使を妨害しようとしたが、同人が知人を介して警察に通報するなどしてこれに応じなかったため、その目的を遂げなかった(令和6年7月26日付け起訴状記載の公訴事実)。
【法令の適用】
罰条
判示第1冒頭の所為
令和4年法律第68号(以下「整理法」という。)441条1項により同年法律第67号2条による改正前の刑法(以下「旧刑法」という。)130条前段
判示第1の1の所為
整理法441条1項により旧刑法181条2項(刑法177条1項、176条1項1号)
判示第1の2の所為
刑法223条3項、整理法441条1項により旧刑法223条1項
~~
科刑上一罪の処理
判示第1
刑法54条1項後段、10条(ただし、同条1項は旧刑法)(住居侵入と不同意性交等致傷、強要未遂との間には、それぞれ手段結果の関係があるので、結局以上を1罪として最も重い不同意性交等致傷罪の刑で処断)

「Aの裸体画像等を所持していたことを利用して同人を脅迫し、同人に義務のないことを行わせようと考え、同月11日午前11時37分頃から同日午後11時11分頃までの間、秋田県内又はその周辺において、自己が使用する携帯電話機から、アプリケーションソフト「E」を利用して、Aが使用する携帯電話機に、「ビデ通しかなくねー?」「体しかなくね?」「見せてよ、バラす?」「それで広められるのと下も見せるのどっちがいい?」「何?やらないつもりなの?」「ひろめる?」などと記載したメッセージを送信し、いずれもその頃、岩手県内において

「Aの裸体画像等を所持していたことを利用して同人を脅迫し、同人に義務のないことを行わせようと考え、同月11日午前11時37分頃から同日午後11時11分頃までの間、秋田県内又はその周辺において、自己が使用する携帯電話機から、アプリケーションソフト「E」を利用して、Aが使用する携帯電話機に、「ビデ通しかなくねー?」「体しかなくね?」「見せてよ、バラす?」「それで広められるのと下も見せるのどっちがいい?」「何?やらないつもりなの?」「ひろめる?」などと記載したメッセージを送信し、いずれもその頃、岩手県内において、同人にこれらを閲覧させ、被告人とのビデオ通話に応じ、その通話中に被告人に裸体を見せることを要求し、もしこの要求に応じなければ、Aの裸体画像等を拡散させるなどして同人の名誉等にいかなる危害を加えかねない旨を告知して脅迫し、同人を怖がらせ、よって、同日午後11時15分頃から同月12日午前1時50分頃までの間、同人に被告人とのビデオ通話に応じさせた上、その裸体を同ビデオ通話中のスマートフォンのカメラに映させ、もって同人に義務のないことを行わせた」という強要罪盛岡地裁r7.3.25)
 不同意わいせつ罪行けますよね


判例ID】 28332501
【裁判年月日等】 令和7年3月25日/盛岡地方裁判所刑事部/判決/令和6年(わ)190号/令和6年(わ)197号
【事件名】 強要、不同意性交等、性的姿態等撮影、児童買春、児童ポルノに係る行為等の規制及び処罰並びに児童の保護等に関する法律違反、強要未遂被告事件
【裁判結果】 有罪
【裁判官】 中島真一郎 佐々木耕 上野友輔
【出典】 D1-Law.com判例体系
【重要度】 1
 上記の者に対する強要、不同意性交等、性的姿態等撮影、児童買春、児童ポルノに係る行為等の規制及び処罰並びに児童の保護等に関する法律違反、強要未遂被告事件について、当裁判所は、検察官細矢明司及び主任弁護人F(私選)各出席の上審理し、次のとおり判決する。

第2 別表記載のAの裸体画像等を所持していたことを利用して同人を脅迫し、同人に義務のないことを行わせようと考え、
 1 同月11日午前11時37分頃から同日午後11時11分頃までの間、秋田県内又はその周辺において、自己が使用する携帯電話機から、アプリケーションソフト「E」を利用して、Aが使用する携帯電話機に、「ビデ通しかなくねー?」「体しかなくね?」「見せてよ、バラす?」「それで広められるのと下も見せるのどっちがいい?」「何?やらないつもりなの?」「ひろめる?」などと記載したメッセージを送信し、いずれもその頃、岩手県内において、同人にこれらを閲覧させ、被告人とのビデオ通話に応じ、その通話中に被告人に裸体を見せることを要求し、もしこの要求に応じなければ、Aの裸体画像等を拡散させるなどして同人の名誉等にいかなる危害を加えかねない旨を告知して脅迫し、同人を怖がらせ、よって、同日午後11時15分頃から同月12日午前1時50分頃までの間、同人に被告人とのビデオ通話に応じさせた上、その裸体を同ビデオ通話中のスマートフォンのカメラに映させ、もって同人に義務のないことを行わせた(令和6年11月29日付け起訴状記載の公訴事実第1の1)、
 2 同月13日午後10時22分頃から同月16日午後11時37分頃までの間、秋田県内、岩手県内、宮城県内、福島県内、茨城県内、栃木県内又はその周辺において、前記1と同様の方法で、Aが使用する携帯電話機に、「おっぱいみせて、くれなかったら広めるわ」「あ、んでみせろよ!」「拡散よりマシやろ。見せなよ」などと記載したメッセージを送信し、いずれもその頃、岩手県内において、同人にこれらを閲覧させ、被告人にAの裸の胸部の画像を送信することを要求し、もしこの要求に応じなければ、同人の裸体画像等を拡散させるなどして同人の名誉等にいかなる危害を加えかねない旨を告知して脅迫し、同人を怖がらせ、よって、同日午後11時38分頃、同人にその裸の胸部の画像を前記「E」を使用して被告人のスマートフォンに送信させ、もって同人に義務のないことを行わせた(令和6年11月29日付け起訴状記載の公訴事実第1の2)、
 3 同年10月10日午後10時38分頃から同月14日午前9時46分頃までの間、秋田県内、岩手県内又はその周辺において、前記1と同様の方法で、Aが使用する携帯電話機に、「明後日から三連休やけど会える?」「バラされたいなら別に会わんでもええけど」「内容によっては会ってくれないなら晒すわ」「晒す?」「晒していい?」などと記載したメッセージを送信し、いずれもその頃、岩手県内において、同人にこれらを閲覧させ、被告人との面会等を要求し、もしこの要求に応じなければ、Aの裸体画像等を拡散させるなどして同人の名誉等にいかなる危害を加えかねない旨を告知して脅迫し、もって同人に義務のないことを行わせようとしたが、同人がその要求に応ぜず警察に届け出たため、その目的を遂げなかった(令和6年11月6日付け起訴状記載の公訴事実)
ものである。

2条1項1号イ[人の性的な部位(性器若しくは肛こう門若しくはこれらの周辺部、臀でん部又は胸部をいう。以下このイにおいて同じ。)]は、露出されていることを要する

 こういう公訴事実があると、まず、3号ポルノに該当する事実が記載されていないことに気付く。「衣服の全部又は一部を着けない児童の姿態」は社会通念で判断されるとされるから、下着の中をのぞき込んで犯人だけが見ている状況は含まないと解釈されるところ、「陰茎を手で直接触る姿態」では、陰茎が露出されているのか、全裸・半裸なのかがわからない。
 同時に、性的姿態撮影罪の関係でも、解釈上露出した性的部位の撮影か下着の撮影が要件となっているから(こちらは撮影さえできれば犯人にも見えていない場合も含むであろう)、「陰茎を手で直接触る姿態」では要件を満たさない。

公訴事実
第2
正当な理由がないのに、前記第1の日時場所において、前記Aに、被告人が前記Aの陰茎を手で直接触る姿態をとらせ、これを被告人が使用するスマートフォンで動画撮影し、その動画データ111点を同スマートフォンの内蔵記録装置に記録して保存し、もって13歳以上16歳未満の者を対象としてその性的姿態等を撮影するとともに、他人が児童の性器等を触る行為に係る児童の姿態であって性欲を興奮させ又は刺激するもの及び衣服の全部又は一部を着けない児童の姿態であって、殊更に児童の性的な部位が露出され又は強調されているものであり、かつ、性欲を興奮させ又は刺激するものを視覚により認識することができる方法により描写した電磁的記録に係る記録媒体である児童ポルノを製造し
たものである。
罪名及び罰条
性的姿態撮影
性的な姿態を撮影する行為等の処罰及び押収物に記録された性的な姿態の影像に係る電磁的記録の消去等に関する法律2条1項4号、1号イ、ロ
 児童買春、児童ポルノに係る行為等の規制及び処罰並びに児童の保護等に関する法律違反
 同法7条4項、2条3項2号、3号

2条1項1号イ「で人が身に着けている下着(通常衣服で覆われており、かつ、性的な部位を覆うのに用いられるものに限る。)のうち現に性的な部位を直接若しくは間接に覆っている部分」が対象となっていることから、[人の性的な部位(性器若しくは肛こう門若しくはこれらの周辺部、臀でん部又は胸部をいう。以下このイにおいて同じ。)]は下着で覆われていないという解釈になる。

性的な姿態を撮影する行為等の処罰及び押収物に記録された性的な姿態の影像に係る電磁的記録の消去等に関する法律
第一条 この法律は、性的な姿態を撮影する行為、これにより生成された記録を提供する行為等を処罰するとともに、性的な姿態を撮影する行為により生じた物を複写した物等の没収を可能とし、あわせて、押収物に記録された性的な姿態の影像に係る電磁的記録の消去等の措置をすることによって、性的な姿態を撮影する行為等による被害の発生及び拡大を防止することを目的とする。
第二章 性的な姿態を撮影する行為等の処罰
(性的姿態等撮影)
第二条 次の各号のいずれかに掲げる行為をした者は、三年以下の拘禁刑又は三百万円以下の罰金に処する。
一 正当な理由がないのに、ひそかに、次に掲げる姿態等(以下「性的姿態等」という。)のうち、人が通常衣服を着けている場所において不特定又は多数の者の目に触れることを認識しながら自ら露出し又はとっているものを除いたもの(以下「対象性的姿態等」という。)を撮影する行為
イ 人の性的な部位(性器若しくは肛こう門若しくはこれらの周辺部、臀でん部又は胸部をいう。以下このイにおいて同じ。)又は人が身に着けている下着(通常衣服で覆われており、かつ、性的な部位を覆うのに用いられるものに限る。)のうち現に性的な部位を直接若しくは間接に覆っている部分
ロ イに掲げるもののほか、わいせつな行為又は性交等(刑法(明治四十年法律第四十五号)第百七十七条第一項に規定する性交等をいう。)がされている間における人の姿態
二 刑法第百七十六条第一項各号に掲げる行為又は事由その他これらに類する行為又は事由により、同意しない意思を形成し、表明し若しくは全うすることが困難な状態にさせ又はその状態にあることに乗じて、人の対象性的姿態等を撮影する行為
三 行為の性質が性的なものではないとの誤信をさせ、若しくは特定の者以外の者が閲覧しないとの誤信をさせ、又はそれらの誤信をしていることに乗じて、人の対象性的姿態等を撮影する行為
四 正当な理由がないのに、十三歳未満の者を対象として、その性的姿態等を撮影し、又は十三歳以上十六歳未満の者を対象として、当該者が生まれた日より五年以上前の日に生まれた者が、その性的姿態等を撮影する行為

「A所有のリップクリームを化粧ポーチから取り出して舐め回し、更に自己の陰茎に擦り付けて精液等を付着させた上、同リップクリームを再び同化粧ポーチ内に収納するなどし、同日午前10時頃、同社●●●において、Aに同リップクリームに被告人の精液等が付着しておらず、同リップクリームを自己の口唇に塗布することがわいせつな行為ではないとの誤信をさせ、同リップクリームを自己の口唇に塗布させるわいせつな行為をした。」という不同意わいせつ罪(176条2項)(松山地裁R7.5.14

「A所有のリップクリームを化粧ポーチから取り出して舐め回し、更に自己の陰茎に擦り付けて精液等を付着させた上、同リップクリームを再び同化粧ポーチ内に収納するなどし、同日午前10時頃、同社●●●において、Aに同リップクリームに被告人の精液等が付着しておらず、同リップクリームを自己の口唇に塗布することがわいせつな行為ではないとの誤信をさせ、同リップクリームを自己の口唇に塗布させるわいせつな行為をした。」という不同意わいせつ罪(176条2項)(松山地裁R7.5.14)

「被害者が、著しい精神的苦痛を感じるであろうことは容易に想定される。このような点からすると、~~する行為は、当該行為が行われた際の具体的状況等如何にかかわらず当然に性的な意味がある行為と認められ、その性的意味合いの強さは、刑法176条による非難に相当する程度に達していると認められる」といえば何でもわいせつ行為になります。

以前、関係文献は紹介しました。
okumuraosaka.hatenadiary.jp

不同意わいせつ、窃盗被告事件
松山地判令和7年5月14日D1-Law.com判例体系〔28333079〕
 上記の者に対する不同意わいせつ、窃盗被告事件について、当裁判所は、検察官藤田琴花、私選弁護人兵頭俊輔各出席の上審理し、次のとおり判決する。

理由
(罪となるべき事実)
 被告人は、
第6(令和6年10月24日付け起訴状記載の公訴事実)
  令和6年8月22日午前2時15分頃から同日午前3時34分頃までの間に、同社●●●において、A所有のリップクリームを化粧ポーチから取り出して舐め回し、更に自己の陰茎に擦り付けて精液等を付着させた上、同リップクリームを再び同化粧ポーチ内に収納するなどし、同日午前10時頃、同社●●●において、Aに同リップクリームに被告人の精液等が付着しておらず、同リップクリームを自己の口唇に塗布することがわいせつな行為ではないとの誤信をさせ、同リップクリームを自己の口唇に塗布させるわいせつな行為をした。
(証拠の標目)
(争点に対する判断)
 弁護人は、判示第6の行為は、被害者の身体に直接接触した行為ではなく、当該行為時の具体的状況等も踏まえると刑法176条の「わいせつな行為」に該当するほどの重大な法益侵害性は認められないから、被告人に不同意わいせつ罪は成立しないと主張する。
 しかし、性的関係を自らの意思で結んだ相手以外の精液等に、口唇で触れることは、日常生活において通常あり得ないから、口唇に物を介して精液等を塗布する行為に、性的意味以外の社会的意味を想起することはできない。また、間接的とはいえ、精液等を口唇等に塗布されると、被害者が、著しい精神的苦痛を感じるであろうことは容易に想定される。このような点からすると、口唇に物を介して精液等を塗布する行為は、当該行為が行われた際の具体的状況等如何にかかわらず当然に性的な意味がある行為と認められ、その性的意味合いの強さは、刑法176条による非難に相当する程度に達していると認められる(最高裁平成29年11月29日大法廷判決刑集71巻9号467頁参照)。したがって、判示第6の行為は、刑法176条の「わいせつな行為」に当たり、被告人には不同意わいせつ罪が成立する。
(法令の適用)
罰条 判示第1ないし第5の各所為はいずれも刑法235条に、判示第6の所為は刑法176条2項、1項(令和5年法律第66号附則3条前段により「拘禁刑」を「懲役」とする)に該当
刑種の選択 判示第1ないし第5の各罪についていずれも懲役刑
併合罪の処理 刑法45条前段、47条本文、10条(最も重い判示第6の罪に法定の加重)
執行猶予 刑法25条1項
保護観察 刑法25条の2第1項前段
(量刑の理由)
1 本件は、前科前歴のない被告人が、自慰行為の際の性的興奮材料として使用する目的で2名の同僚の私物を持ち出した窃盗5件(判示第1ないし第5)と、そのうち1名のリップクリームを持ち出し陰茎に擦り付けるなどして精液等を塗布後返却し、何も知らない被害者に使用させた不同意わいせつ1件(判示第6)の事案である。
2 量刑の中心となる本件不同意わいせつは、上記のとおり性的意味合いの強い行為であり、不同意わいせつ事案の中でも性的自由を侵害する程度は高い。また、本件不同意わいせつは、職場が同じであることを利用し、被害者が被害に気付きにくい状況下で、約4年間もの長期間に渡って執拗に繰り返された常習的犯行の一端であり、卑劣かつ悪質な犯行である。被害者は、多大な精神的苦痛を感じ続けており、厳罰を求めるのも当然である。窃盗5件についてみても、同僚であった被害者らの信頼を裏切る悪質な犯行である上、常習性も認められる。自慰行為の際の性的興奮を高めるという動機に、酌量の余地などもとよりない。
  しかし、他方で、起訴された不同意わいせつは1件にとどまり、窃盗5件を併せてみても、常習性を量刑上考慮するには限度がある。同種事案(前科前歴がない被告人の不同意わいせつ1件の事案)との均衡も考慮すると、本件について、刑の執行を猶予することがおよそ許されない事案とまではいえない。
3 その上で、被告人には、判示第2ないし第6の被害者に200万円の被害弁償を行ったこと、罪を認め、今後は医療の力も借りて自身の性的認知の歪みを正すべく努力すると誓ったこと、出廷し、被告人の更生を見守ると誓った同居の母がいることなどの酌むべき事情がある。そこで、これらの事情も踏まえ、被告人に対しては、その刑事責任を明らかにするべく主文のとおりの懲役刑を定めた上、今回は、社会内で更生する機会を付与するのを相当と判断した。もっとも、本件の悪質さや常習性等に鑑みると、被告人の性的認知の歪みは大きく根深いものといわざるを得ず、再犯防止につき、被告人の自覚と高齢の親の監督による通院確保だけでは不十分であって、公的機関の指導・監督の下で、被害者らへの接触などを禁じた上、性犯罪再犯防止プログラムも受講させ、更生を促す必要があるから、保護観察に付すこととした。
(求刑 懲役3年6月)

刑事部

 (裁判官 髙場理恵)

風俗嬢が12歳だった場合の遊客の刑事責任

風俗嬢が12歳だった場合の遊客の刑事責任

①「13歳未満の者と知りながら」又は「16歳未満の者であり、かつ自らが生まれた日より5年以上前の日に生まれた者であることを知りながら」の場合
 行為内容に応じて、不同意わいせつ罪(176条3項)か不同意性交罪(177条3項)+児童買春罪(観念的競合)
 これらは故意犯なので、各罪の要件である年齢であることを知っていた場合だけが処罰される

第一七六条(不同意わいせつ)
1 次に掲げる行為又は事由その他これらに類する行為又は事由により、同意しない意思を形成し、表明し若しくは全うすることが困難な状態にさせ又はその状態にあることに乗じて、わいせつな行為をした者は、婚姻関係の有無にかかわらず、六月以上十年以下の拘禁刑に処する。
3十六歳未満の者に対し、わいせつな行為をした者(当該十六歳未満の者が十三歳以上である場合については、その者が生まれた日より五年以上前の日に生まれた者に限る。)も、第一項と同様とする。
・・・
第一七七条(不同意性交等)
1 前条第一項各号に掲げる行為又は事由その他これらに類する行為又は事由により、同意しない意思を形成し、表明し若しくは全うすることが困難な状態にさせ又はその状態にあることに乗じて、性交、肛こう門性交、口腔くう性交又は膣ちつ若しくは肛門に身体の一部(陰茎を除く。)若しくは物を挿入する行為であってわいせつなもの(以下この条及び第百七十九条第二項において「性交等」という。)をした者は、婚姻関係の有無にかかわらず、五年以上の有期拘禁刑に処する。
3十六歳未満の者に対し、性交等をした者(当該十六歳未満の者が十三歳以上である場合については、その者が生まれた日より五年以上前の日に生まれた者に限る。)も、第一項と同様とする。
・・・
児童買春、児童ポルノに係る行為等の規制及び処罰並びに児童の保護等に関する法律(H26改正後)
第四条(児童買春)
 児童買春をした者は、五年以下の拘禁刑又は三百万円以下の罰金に処する
第二条(定義)
 この法律において「児童」とは、十八歳に満たない者をいう。
2この法律において「児童買春」とは、次の各号に掲げる者に対し、対償を供与し、又はその供与の約束をして、当該児童に対し、性交等(性交若しくは性交類似行為をし、又は自己の性的好奇心を満たす目的で、児童の性器等(性器、肛門又は乳首をいう。以下同じ。)を触り、若しくは児童に自己の性器等を触らせることをいう。以下同じ。)をすることをいう。
二 児童に対する性交等の周旋をした者

② 16歳以上18歳未満であるとの認識があった場合。
 児童買春罪が検討される。

児童買春、児童ポルノに係る行為等の規制及び処罰並びに児童の保護等に関する法律(H26改正後)
第四条(児童買春)
 児童買春をした者は、五年以下の拘禁刑又は三百万円以下の罰金に処する
第二条(定義)
 この法律において「児童」とは、十八歳に満たない者をいう。
2この法律において「児童買春」とは、次の各号に掲げる者に対し、対償を供与し、又はその供与の約束をして、当該児童に対し、性交等(性交若しくは性交類似行為をし、又は自己の性的好奇心を満たす目的で、児童の性器等(性器、肛門又は乳首をいう。以下同じ。)を触り、若しくは児童に自己の性器等を触らせることをいう。以下同じ。)をすることをいう。
二 児童に対する性交等の周旋をした者

③ 18歳未満だという認識がなかった場合
 青少年条例違反 年齢確認を尽くさなかった場合も処罰される
 風俗店の客」につき年齢確認義務を免除・軽減する規定はない。

例 神奈川県青少年保護育成条例
(みだらな性行為、わいせつな行為の禁止)
第31条
1 何人も、青少年に対し、みだらな性行為又はわいせつな行為をしてはならない。
2 何人も、青少年に対し、前項の行為を教え、又は見せてはならない。
3 第1項に規定する「みだらな性行為」とは、健全な常識を有する一般社会人からみて、結婚を前提としない単に欲望を満たすためにのみ行う性交をいい、同項に規定する「わいせつな行為」とは、いたずらに性欲を刺激し、又は興奮させ、かつ、健全な常識を有する一般社会人に対し、性的しゆう恥けん悪の情をおこさせる行為をいう。
(罰則)
第53条
1第31条第1項の規定に違反した者は、2年以下の拘禁刑又は100万円以下の罰金に処する。
7 第9条第4項、第10条第4項、第15条第4項、第22条第1項、第26条第1項、第27条第4項、第27条の2第1項若しくは第2項第1号若しくは第2号、第27条の3第1項若しくは第2項、第28条第1項、第29条、第30条、第31条第1項若しくは第2項、第33条又は第34条に規定する行為をした者は、当該青少年の年齢を知らないことを理由として、前各項の規定による処罰を免れることができない。ただし、当該青少年の年齢を知らないことに過失がないときは、この限りでない。

神奈川県の解説
「ただし、当該青少年の年齢を知らないことに過失がないときは、この限りでない。」とは、当該青少年の年齢について行為者が相当の注意を払い、青少年であることを知らなかったことについて、行為者に過失がなかったことが立証されれば、処罰の対象とされないということである。
具体的には、履歴書や保険証を提出させるだけでは本人を確認したとはいえず、運転免許証等の顔写真つきの身分証明書で確認するか、必要によっては保護者等に確認するなどの手段を講じた場合は、過失がないといえる。

但し東京都には淫行につき年齢知情条項(過失処罰条項)はない。

13歳未満の児童を脅迫して陰部画像を送らせた場合の法令適用(某地裁)

13歳未満の児童を脅迫して陰部画像を送らせた場合の法令適用(某地裁)

 不同意わいせつ罪と製造罪は併合罪だという高裁判例があるのでアクロバティックな罪数処理になっています。
「刑法54条1項前段、後段、10条(ただし、同条1項は旧刑法)(映像送信要求と不同意わいせつ及び性的姿態等撮影との間にはそれぞれ手段結果の関係があり、性的姿態等撮影と児童ポルノ製造は1個の行為が2個の罪名に触れる場合であるので、結局一罪として最も重い不同意わいせつ罪の刑で処断)」

 しかし、脅迫して画像を撮影送信させる行為と児童ポルノ製造罪とは、併合罪だという高裁判例も幾つかあるので、その点では判例違反となっています。

広島高裁岡山支部h22.12.15(牽連犯否定)
そこで検討するに,強要罪は,脅迫し又は暴行を用いて,人に義務のないことを行わせる行為をしたことを構成要件とし,3項製造罪は,児童に児童ポルノ法2条3項3号に掲げる姿態をとらせ,これを写真,電磁的記録にかかる記録媒体その他の物に描写することにより,当該児童にかかる児童ポルノを製造したことを構成要件とするものであって,被害児童に衣服の全部又は一部を着けない姿態をとらせて撮影し,その画像データを送信させてハードディスクに記録して蔵置することをもって児童ポルノを製造した場合に,強要罪に該当する行為と3項製造罪に該当する行為とは,一部重なる点があるものの,3項製造罪において,上記のとおり姿態をとらせる際,脅迫又は暴行によることが要件となるものとは解されず,また,両行為が通常伴う関係にあるとはいえないことや,両行為の性質等にかんがみると,それぞれにおける行為者の動態は社会的見解上別個のものといえるので,両罪は,観念的競合の関係にはなく,また,上記説示に照らせば,両罪は,通常手段結果の関係にあるともいえないから,牽連犯の関係にもないというべきである。
 また,強要罪は個人の行動の自由を保護法益とし,3項製造罪は,当該児童の人格権とともに抽象的な児童の人格権をも保護法益としており,保護法益の一個性ないし同一性も認められないことをも考慮すれば,両罪は,混合的包括一罪ともいえず,最高裁判所平成19年(あ)第619号同21年10月21日第1小法廷決定・刑集63巻8号1070頁の趣旨に徴し,刑法45条前段の併合罪の関係にあるというべきである。

東京高裁h28.2.19(新潟地裁高田支部H27.8.25)
2 法令適用の誤りの主張について
論旨は,原判決は,強要罪と3項製造罪を観念的競合であるとした上で,強要罪の犯情が重いとして同罪の刑で処断することとしたが,本件の脅迫は一時的で,害悪もすぐに止んでいるのに対し,3項製造罪は画像の流通の危険やそれに対する不安が長期に継続する悪質なもので,原判決の量刑理由でも,専ら児童ポルノ画像が重視されており,犯情は3項製造罪の方が重いから,原判決には判決に影響を及ぼすことが明らかな法令適用の誤りがある, というのである。
しかしながら,本件の強要罪に係る脅迫行為の執拗性やその手口の卑劣性などを考慮すれば,3項製造罪に比して強要罪の犯情が重いとした原審の判断に誤りはない。
法令適用の誤りをいう論旨は,理由がない。
なお,原判決は,本件において,強要罪と3項製造罪を観念的競合であるとしたが,本件のように被害者を脅迫してその乳房,性器等を撮影させ,その画像データを送信させ,被告人使用の携帯電話機でこれを受信・記録して児童ポルノを製造した場合においては,強要罪に触れる行為と3項製造罪に触れる行為とは,一部重なる点はあるものの,両行為が通常伴う関係にあるとはいえず,両行為の性質等にも鑑みると,両行為は社会的見解上別個のものと評価すべきであるから,これらは併合罪の関係にあるというべきである。したがって,本件においては,3項製造罪につき懲役刑を選択し,強要罪と3項製造罪を刑法45条前段の併合罪として,同法47条本文,10条により犯情の重い強要罪の刑に法定の加重をした刑期の範囲内で処断すべきであったところ,原判決には上記のとおり法令の適用に誤りがある

名古屋高裁金沢支部h27.7.23(高岡支部事件)
2 原判示第3の強要罪と3項製造罪の罪数関係についての主張
 論旨は,原判示第3の強要罪と3項製造罪は,牽連犯の関係にあるのに,両罪が観念的競合の関係にあるものと判断した原判決には,判決に影響を及ぼすことが明らかな法令適用の誤りがある,というのである。
 しかし,強要罪と3項製造罪は,犯罪の通常の形態として手段結果の関係にあるものとは認められず,牽連犯の関係にはないと解するのが相当であるから,論旨は理由がない。
 なお,職権により検討すると,以下に述べるとおり,原判示第3の強要罪と3項製造罪は,観念的競合の関係にはなく,併合罪の関係にあるものと解するのが相当である。
 すなわち,両罪を構成する行為の重なり合いの程度についてみると,被害者をして,その性器等に性玩具を入れさせ,その姿態を被害者使用の携帯電話機で撮影させた上,撮影に係る画像データを被告人使用の携帯電話機に送信させたという点では,両罪の実行行為は重なっているものの,被害者を脅迫した点は強要罪にのみ係る実行行為であり,被告人において上記画像データを被告人使用の携帯電話機で受信して,同機内蔵の記憶装置に記録保存した点は,3項製造罪に係る実行行為であって,この点で,両罪の実行行為は重なり合っていない部分がある。とりわけ上記画像データ等の受信,保存行為は,被害者に撮影させた画像を更に被告人が使用する携帯電話機の記憶装置に保存して複製する行為であり,この複製行為により初めて児童ポルノである写真画像データが被告人により恣意的に社会に拡散される状況が生じるのであって,上記受信,保存行為は,被害者をしてその姿態を撮影,送信させる行為と並んで,3項製造罪にいう「製造」行為の中核的な部分を構成するというべきところ,この点については,強要罪の実行行為との間で重なり合いはない。
そうすると,両罪の各実行行為は,その主要部分において重なり合っているといい難い。また,強要罪は,当初の一時点の製造行為の際の強要行為につき成立するのが通常であるのに対し,3項製造罪では,複製行為も犯罪を構成し,当初の製造行為及びその後の継続的な各複製行為につき,時間的にも場所的にも相当広範囲にわたって包括一罪として犯罪が成立する場合が予定されていることからすると,両罪は,行為の同時性が甚だしく欠けることになり,社会的に見て一体同質の行為であるとはいい難い。さらに,強要罪と3項製造罪とは,それぞれ片方のみを犯すことが当然にできるのであり,強要罪に触れる行為と3項製造罪に触れる行為は通常伴う関係にあるとはいえない。
 以上からすれば,強要罪と3項製造罪の各行為における行為者の動態は,社会的見解上別個の行為と評価するのが相当であり,両罪は刑法54条1項前段の観念的競合の関係にはなく,同法45条前段の併合罪に当たるというべきである。
 したがって,両罪が観念的競合の関係にあるとした原判決には法令適用の誤りがあるが,この誤りの結果,最終的な処断刑の範囲に差異は来さないから,判決に影響を及ぼすものとはいえない。

名古屋高裁金沢支部h27.7.23(福井地裁事件)
2原判示第2の1の強要罪と同第2の2の3項製造罪の罪数関係についての主張
論旨は,要するに,原判示第2の1の強要罪に係る行為と同第2の2の3項製造罪に係る行為は,社会的見解上一個の行為であるから,両罪は観念的競合の関係にあり,あるいは,両罪は牽連犯の関係にあるとも考えられるから,科刑上一罪とすべきであるのに,両罪が併合罪の関係にあると判断した原判決には,判決に影響を及ぼすことが明らかな法令適用の誤りがある,というのである。
そこで検討するに,両罪を構成する行為の重なり合いの程度についてみると,原判示第2の1の強要罪と原判示第2の2の3項製造罪においては,被害児童Bをして,その乳房や陰部等を露出した姿態をとらせ,それらを同児童に撮影させるなどした上,同写真画像データ等を被告人使用の携帯電話機に送信させたという点では,両罪の実行行為は重なっているものの,被害児童Bを脅迫した点は強要罪にのみ係る実行行為であり,被告人において写真画像データ等を受信して,電磁的記録媒体である携帯電話機本体の記録装置に記録して保存した点は,3項製造罪に係る実行行為で、あって,この点で,両罪の実行行為は重なり合って,いない部分がある。
とりわけ上記写真画像データ等の受信,保存行為は,被害児童Bに撮影させた画像を更に被告人が使用する携帯電話機本体の記録装置に保存して複製する行為であり,この複製行為により初めて児童ポルノである写真画像データが被告人により窓意的に社会に拡散される状況が生じるので、あって,上記受信,保存行為は,被害児童Bをしてその姿態を撮影,送信させる行為と並んで,3項製造罪にいう「製造」行為の中核的な部分を構成するというべきところ,この点については,強要罪の実行行為との間で重なり合いはない。
そうすると,原判示第2の1の強要罪と原判示第2の2の3項製造罪は,その各実行行為の主要部分6において重なり合っているといい難い。
また,強要罪は,当初の一時点の製造行為の際の強要行為につき成立するのが通常であるのに対し,3項製造罪では,複製行為も犯罪を構成し,当初の製造行為及びその後の継続的な各複製行為につき,時間的にも場所的にも相当広範囲にわたって包括ー罪として犯罪が成立する場合が予定されていることからすると,両罪は,行為の同時性が甚だしく欠けることになり,社会的に見て一体同質の行為であるとはいい難い。
さらに,強要罪と3項製造罪とは,それぞれ片方のみを犯すことが当然にできるのであり,強要罪に触れる行為と3項製造罪に触れる行為は通常伴う関係にあるとはいえない。
以上からすれば,強要罪と3項製造罪の各行為における行為者の動態は,社会的見解上別個の行為と評価するのが相当であり,両罪は刑法54条1項前段の観念的競合の関係にはないというべきである。
また,両罪は通常手段結果の関係にあるともいえないから,同条項後段の牽連犯の関係にもなく,同法併合罪の関係にあるというべきである。
したがって,これと同旨の原判決の判断に法令適用の誤りはなく,論旨は理由がない。

某地裁r07
罪となるべき事実
被告人は、A(当時10歳)がI3歳未満の者であることを知りながら、同人にわいせつな行為をしようと企て令和7年11月6日ころ、大阪府内又はその周辺において、被告人が使用するスマートフォンのアプリケーションソフト「」のメッセージ機能を利用し、前記A が使用するスマートフォンに、
脅迫文言
性器画像を送れ、さもなければ。。。
などと記載したメッセージを送信し、その頃、同人にこれを閲読させ、性的な部位を露出した姿態をとってその映像を送信することを要求した上、被告人の要求に応じなければ、前記A らの身体、名誉等に危害を加える旨脅迫して、同人を同意しない意思を全うすることが困難な状態にさせ、同日、同人にその陰部を露出した姿態をとらせ、これを同人が使用するスマートフォンの撮影機能を利用して撮影させた上、その頃、それらの動画データ5点を同スマートフォンから被告人が使用するスマートフォンに前記「」を利用して送信させて.同スマートフォン内の内蔵記録装置に記録させて保存し、もって前記A に性的な部位を露出した姿態をとってその映像を送信することを要求し、同人を同意しない意思を全うすることが困難な状態にさせてわいせつな行為をするとともにその性的姿態等を撮影させ、さらに、衣服の全部又は一部を着けない児童の姿態であって、殊更に児童の性的な部位が露出され又は強調されているものであり、かつ、性欲を興奮させ又は刺激するものを視覚により認識することができる方法により描写した電磁的記録に係る記録媒体である児童ポルノを製造した

(法令の適用)
1 罰条
16歳未満の者に対する映像送信要求の点
 包括して刑法182条3項2号、令和5年法律第66号附則3条

不同意わいせつの点 
 包括して刑法176条3項、1項1号、令和5年法律第66号附則3条

性的姿態等撮影の点 
 包括して性的な姿態を撮影する行為等の処罰及び押収物に記録された性的な姿態の影像に係る電磁的記録の消去等に関する法律2条1項4号、2号、1号ロ、令和5年法律第67号附則2条

児童ポルノ製造の点 
 包括して整理法441条1項による改正前の児童買春、児童ポルノに係る行為等の規制及び処罰並びに児童の保護等に関する法律7条4項、2項、児童買春、児童ポルノに係る行為等の規制及び処罰並びに児童の保護等に関する法律2条3項3号

2 科刑上一罪の処理
  刑法54条1項前段、後段、10条(ただし、同条1項は旧刑法)(映像送信要求と不同意わいせつ及び性的姿態等撮影との間にはそれぞれ手段結果の関係があり、性的姿態等撮影と児童ポルノ製造は1個の行為が2個の罪名に触れる場合であるので、結局一罪として最も重い不同意わいせつ罪の刑で処断)

15歳の少女との性交につき、不同意性交罪(177条3項)ではなく、青少年条例違反で逮捕された事例

15歳の少女との性交につき、不同意性交罪(177条3項)ではなく、青少年条例違反で逮捕された事例

 16歳未満と知っていたら、刑法177条3項だけが検討されるので、青少年条例違反ということは、18歳未満とは知っていたが16歳未満と知らなかったか、18歳未満とも16歳未満とも知らなかったということなんでしょうね
 この点、齢確認義務の発生根拠がないとして無罪事例が出ています(八戸支部r4.2.2)

兵庫県解説
「過失のないとき」とは、単に青少年に年齢、生年月日等を確認しただけ、又は身体の外観的発育状況等から判断しただけでは足りず、学生証運転免許証等の公信力のある書面、又は当該青少年の父兄に直接問い合わせるなど、その状況に応じて通常可能とされるあらゆる方法を用いて青少年の年齢を確認している場合をいう。

八戸支部r04.2.2
 3 過失の有無について
   検察官は,Aが18歳以上だと被告人が信じる根拠はなく,被告人が勤務先で18歳未満の青少年と淫行すれば処罰対象であるとの教育を受けていたことからすれば,被告人において,Aの年齢確認に必要な方法を尽くすべき注意義務があったと主張する。
   しかし,Aが18歳以上だと被告人が信じる根拠がないこと自体は,必要な注意義務を尽くしたかどうかの問題であって,注意義務発生の根拠とはならないし,18歳未満の青少年との淫行が多くの都道府県の条例で処罰対象とされていることは公知の事実であり,被告人が受けていた教育内容によって,被告人に特別の注意義務を課すことは相当でない。
   そして,Aの容姿は,一見して18歳未満であると疑うべきということはできず,被告人においてAが18歳未満であると疑うべきといえるようなAの言動があったことを認める証拠もない。
   以上により,被告人において,Aの年齢を確認すべき注意義務があったということはできないから,Aの年齢を確認するのに必要な方法を尽くさなかったということはできない。
 4 結論
   したがって,被告人には,Aが18歳未満であることを知っていたとも,Aの年齢を確認するのに必要な方法を尽くさなかったとも認めることはできず,主位的訴因及び予備的訴因のいずれについても犯罪の証明がないから,刑事訴訟法336条により,主文のとおり判決する。
(求刑・罰金40万円)
  令和4年2月2日
    青森地方裁判所八戸支部

第一七七条(不同意性交等)
1 前条第一項各号に掲げる行為又は事由その他これらに類する行為又は事由により、同意しない意思を形成し、表明し若しくは全うすることが困難な状態にさせ又はその状態にあることに乗じて、性交、肛こう門性交、口腔くう性交又は膣ちつ若しくは肛門に身体の一部(陰茎を除く。)若しくは物を挿入する行為であってわいせつなもの(以下この条及び第百七十九条第二項において「性交等」という。)をした者は、婚姻関係の有無にかかわらず、五年以上の有期拘禁刑に処する。
3十六歳未満の者に対し、性交等をした者(当該十六歳未満の者が十三歳以上である場合については、その者が生まれた日より五年以上前の日に生まれた者に限る。)も、第一項と同様とする。

少年愛護条例(昭和38年3月31日兵庫県条例第17号)
(みだらな性行為等の禁止)
第21条
1 何人も、青少年に対し、みだらな性行為又はわいせつな行為をしてはならない。
(罰則)
第30条
1 次の各号のいずれかに該当する者は、2年以下の拘禁刑又は100万円以下の罰金に処する。

(2) 第21条第1項の規定に違反した者
6 第17条第1項(同項第4号又は第9号に係る部分を除く。)、第20条第1項若しくは第2項、第21条 第1項若しくは第2項、第21条の2、第21条の3又は第24条第2項の規定に違反した者は、当該青少年 の年齢を知らないことを理由として、第1項又は前3項の規定による処罰を免れることができない。た だし、過失のないときは、この限りでない。

https://news.yahoo.co.jp/articles/7e2a7540d856e7dd8cac7d17f880b9b597556b64

神戸市内の宿泊施設で29日、相手が18歳未満と知りながら、当時15歳の女子学生と性交したとして、42歳の看護師の男が逮捕されました。
29日、青少年愛護条例違反の疑いで逮捕されたのは、兵庫県稲美町に住む看護師の男(42)です。

脅迫して胸部画像を生中継させた行為を強要罪とするもの(盛岡地裁r07.3.25)

脅迫して胸部画像を生中継させた行為を強要罪とするもの(盛岡地裁r07.3.25)
 不同意わいせつ罪(176条3項)とした裁判例があります。

札幌高等裁判所令和6年3月5
原判示第2に係る被告人の行為は、同様に、わいせつの意図をもって、身分及び目的を偽り、アプリケーションソフトのビデオ通話機能により被告人が視聴できる状態で、被害者の陰部や乳房等という性器や性的意味合いを有する部位を、衣類を脱がせて露出させたものであり、被告人において、撮影の現場にいるのと同様に被害者の姿態を即時に認識することが可能であるから、原判示第1の行為よりも直接的に被害者の身体を性的に利用するものといえ、自慰行為等をさせていないとしても、「わいせつな行為」に該当することは明らかである。

強要、不同意性交等、性的姿態等撮影、児童買春、児童ポルノに係る行為等の規制及び処罰並びに児童の保護等に関する法律違反、強要未遂被告事件
盛岡地判令和7年3月25日
D1-Law.com判例体系〔28332501〕
第2 別表記載のAの裸体画像等を所持していたことを利用して同人を脅迫し、同人に義務のないことを行わせようと考え、
 1 同月11日午前11時37分頃から同日午後11時11分頃までの間、秋田県内又はその周辺において、自己が使用する携帯電話機から、アプリケーションソフト「E」を利用して、Aが使用する携帯電話機に、「ビデ通しかなくねー?」「体しかなくね?」「見せてよ、バラす?」「それで広められるのと下も見せるのどっちがいい?」「何?やらないつもりなの?」「ひろめる?」などと記載したメッセージを送信し、いずれもその頃、岩手県内において、同人にこれらを閲覧させ、被告人とのビデオ通話に応じ、その通話中に被告人に裸体を見せることを要求し、もしこの要求に応じなければ、Aの裸体画像等を拡散させるなどして同人の名誉等にいかなる危害を加えかねない旨を告知して脅迫し、同人を怖がらせ、よって、同日午後11時15分頃から同月12日午前1時50分頃までの間、同人に被告人とのビデオ通話に応じさせた上、その裸体を同ビデオ通話中のスマートフォンのカメラに映させ、もって同人に義務のないことを行わせた(令和6年11月29日付け起訴状記載の公訴事実第1の1)、
 2 同月13日午後10時22分頃から同月16日午後11時37分頃までの間、秋田県内、岩手県内、宮城県内、福島県内、茨城県内、栃木県内又はその周辺において、前記1と同様の方法で、Aが使用する携帯電話機に、「おっぱいみせて、くれなかったら広めるわ」「あ、んでみせろよ!」「拡散よりマシやろ。見せなよ」などと記載したメッセージを送信し、いずれもその頃、岩手県内において、同人にこれらを閲覧させ、被告人にAの裸の胸部の画像を送信することを要求し、もしこの要求に応じなければ、同人の裸体画像等を拡散させるなどして同人の名誉等にいかなる危害を加えかねない旨を告知して脅迫し、同人を怖がらせ、よって、同日午後11時38分頃、同人にその裸の胸部の画像を前記「E」を使用して被告人のスマートフォンに送信させ、もって同人に義務のないことを行わせた(令和6年11月29日付け起訴状記載の公訴事実第1の2)、
 3 同年10月10日午後10時38分頃から同月14日午前9時46分頃までの間、秋田県内、岩手県内又はその周辺において、前記1と同様の方法で、Aが使用する携帯電話機に、「明後日から三連休やけど会える?」「バラされたいなら別に会わんでもええけど」「内容によっては会ってくれないなら晒すわ」「晒す?」「晒していい?」などと記載したメッセージを送信し、いずれもその頃、岩手県内において、同人にこれらを閲覧させ、被告人との面会等を要求し、もしこの要求に応じなければ、Aの裸体画像等を拡散させるなどして同人の名誉等にいかなる危害を加えかねない旨を告知して脅迫し、もって同人に義務のないことを行わせようとしたが、同人がその要求に応ぜず警察に届け出たため、その目的を遂げなかった(令和6年11月6日付け起訴状記載の公訴事実)
ものである。

強制性交罪(177条後段)・不同意性交罪(177条3項)の量刑傾向を説明した高裁判例(大阪高裁r4.10.20)

強制性交罪(177条後段)・不同意性交罪(177条3項)の量刑傾向を説明した高裁判例(大阪高裁r4.10.20)

阪高裁r4.10.20(原審は京都地裁
職権判断
 被害者から中1と聞いたことからただちに被害者が12~13歳と認識していたとするには、合理的な疑いがある、
 証拠の標目の証拠のみでは有罪にできない。証拠に基づかないで事実を認定した違法がある 378条4号にいう判決に理由を付さないものとして破棄を免れない

破棄自判
 証拠に 甲10 捜査報告書と 被告人の公判供述を付加する
酌量減軽 66条71条68条3号

未必的認識があったに留まる
計画性はない
被告人に好意をもった被害者の同意の上で為されたもの
態様も執拗悪質ではない
177後段で犯罪になるという認識が無かった
このような場合 同種事案で実刑となっているのは、
同種前科がある、
児童ポルノ製造の余罪があるもの
犯行に至るまでの猥褻行為が執拗なもの
甘言を弄して性交に至ったものなど 
犯行態様が悪質なものが多くを占めているという量刑傾向を踏まえると、被害者とうの処罰感情が厳しいことを考慮しても執行猶予を選択しうる事案である
前科前歴なし 
若年である 
ハンディキャップがある
客観的事実は認めている
情状証人
2年2月拘束されていて相応の事実上の制裁を受けていること
を考慮すると実刑は躊躇される
保護観察が必要な事案である

 原判決の量刑理由の説示は、前科前歴がない被告人を長期間の実刑に処すには簡略過ぎるものであって、犯情を適切に検討評価しているとは言いがたい上、同種事案の量刑傾向を検討した形跡もうかがえないのであって量刑のあり方として多いに疑問がある
5刑 西田部長

映像送信要求罪の逮捕事例

映像送信要求罪の逮捕事例
 不同意わいせつ罪(176条3項)に至らない行為を捉えるものなので、要求だけで終わればせいぜい罰金だと思われます。

刑法 第一八二条(十六歳未満の者に対する面会要求等)
3十六歳未満の者に対し、次の各号に掲げるいずれかの行為(第二号に掲げる行為については、当該行為をさせることがわいせつなものであるものに限る。)を要求した者(当該十六歳未満の者が十三歳以上である場合については、その者が生まれた日より五年以上前の日に生まれた者に限る。)は、一年以下の拘禁刑又は五十万円以下の罰金に処する。
一 性交、肛門性交又は口腔性交をする姿態をとってその映像を送信すること。
二 前号に掲げるもののほか、膣又は肛門に身体の一部(陰茎を除く。)又は物を挿入し又は挿入される姿態、性的な部位(性器若しくは肛門若しくはこれらの周辺部、臀でん部又は胸部をいう。以下この号において同じ。)を触り又は触られる姿態、性的な部位を露出した姿態その他の姿態をとってその映像を送信すること。

法務省逐条説明
第3項(遠隔型の処罰規定)について
対象者は、性的行為に関する判断能力を十分に備えていない者であるから、対象者に対して性的行為の要求をする行為は、そのことだけで、性的保護状態の危険を生じさせ得る行為といえる。
その上で、本条が対象者の性的自由・性的自己決定権の保護を図ろうとするものであることに鑑みれば、要求行為の対象となる行為については、当該行為が実現した場合に対象者の性的自由・性的自己決定権が侵害される行為とした上で、早期の処罰が特に要請される重大な性的自由・性的自己決定権の侵害を生じるものに限定することが相当であると考えられる。
そこで、本条第3項においては、現在の実務において強制わいせつ罪の成立を認めた裁判例を踏まえ(注2)要求した行為が実現した場合に強制わいせつ罪の成立が認められると考えられる行為を要求行為の対象とする観点から、
〇性交、肛門性交又は口腔性交をする姿態をとってその映像を送信する行為
〇膣又は肛門に身体の一部又は物を挿入し又は挿入される姿態、性的な部位を触り又は触られる姿態、性的な部位を露出した姿態その他の姿態をとってその映像を送信する行為
の要求行為を処罰対象行為としている(注3)。
(注3)遠隔型の処罰規定については、対面型の処罰規定とは異なり、加重処罰規定を設けることとしていないところ、これは、次の理由による。
すなわち、本条第3項の要求行為の対象は、前記4のとおり、現在の実務において強制わいせつ罪の成立を認めた裁判例を踏まえて規定しており、要求行為の対象となる行為が実現した場合には、強制わいせつ罪が成立すると考えられる。
その上で、要求行為からその対象となる行為が実現するまで、すなわち、強制わいせつ罪が成立するに至るまでの過程において、一般的・類型的に同罪に至る危険性が高まり、加重処罰の対象とするに足りる新たな当罰性を有する行為があり得るかについては、
〇行為者からの要求を直ちに承諾して、そのまま要求された行為に及ぶ場合も、相当程度あり得ることを踏まえると、要求行為後の行為について、加重処罰の対象とするに足りるものを明確に捕捉することは困難であると考えられる。
そのため、遠隔型の処罰規定については、加重処罰規定を設けることとはしていない。

法曹時報76巻1号
7 第3項
本項の罪の実行行為は、16歳未満の者に対し、本項第1号又は第2号に掲げるいずれかの性的な姿態をとってその映像を送信することを要求することである。
本項は、16歳未満の者が性被害に遭わない環境にあるという性的保護状態を保護法益とし、離隔した状態で行われる性犯罪を未然に防止するためのものであることに鑑みると、本項において要求行為の対象とすべき行為は、当該行為が実現した場合に重大な性的自由・性的自LL決定権の侵害が(注12)生じるものとすることが相当であると考えられる。
そこで、本項においては、実務において、離隔した状態で行われた行為に強制わいせつ罪(改正後の不同意わいせつ罪)の成立が認められている(注13)「わいせつな行為」を参考にして、
○ 性交、肛門性交又は口腔性交をする姿態をとってその映像を送信する行為
○ 膣又は肛門に身体の一部又は物を挿入し又は挿入される姿態、性的な部位を触り又は触られる姿態、性的な部位を螺出した姿態その他の姿態をとってその映像を送信する行為(注14)
を要求する行為が処罰対象とされた。
なお、本項は、その要求の対象となる行為について、「姿態をとって」と規定しており、16歳未満の者に性的な姿態をとらせることを要件としているため、16歳未満の者に性的姿態をとらせることなく、16歳未満の者があらかじめ持っていた性的画像を送信するように要求する行為は、本項の処罰対象とならない。
本項における各文言の意義等については、以下のとおりである。
(1)「要求」
本項の「要求」は、本項各号に掲げる行為を求める意思表示を意味する。

https://news.yahoo.co.jp/articles/a777282f44566b7fe60902be111694e0a0ccce26
逮捕容疑は、7月5日午後3時55分ごろ、16歳未満と知りながら、生徒に対して性的な動画を送るよう要求した疑い。