児童ポルノ・児童買春・児童福祉法・監護者性交・強制わいせつ・青少年条例・不正アクセス禁止法・わいせつ電磁的記録記録被告事件弁護人 奥村徹弁護士の見解(弁護士直通050-5861-8888 hp3@okumura-tanaka-law.com)

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強制わいせつ罪(176条後段)と同じ機会の児童ポルノ製造罪とで逮捕され、児童ポルノ製造罪で略式命令が確定した後に、強制わいせつ罪について不起訴不当の議決がされた事例

 東京高裁h30.1.30に従えば、強制わいせつ罪(176条後段)とその際の製造罪とは観念的競合ですから、略式命令の一事不再理効で、強制わいせつ罪(176条後段)では起訴できない可能性があります。
 児童ポルノ製造罪とされた行為のうち、所定の姿態を取らせる行為・撮影する行為について、わいせつ行為と評価される行為で、この部分について強制わいせつ罪(176条後段)で起訴されると、一事不再理効が生じ、免訴になります(刑訴法337条1号)
 児童淫行罪と製造罪について公訴事実の同一性を広く解釈する高裁判例福岡高裁h23.1.13)もあります。
一事不再理効は前訴と公訴事実を同一にする本件訴因に及ぶが、公訴事実の同一性がなくても、前訴が有罪判決であった場合余罪として認定されて実質上これも処罰する趣旨で量刑資料として考慮され重く処罰される可能性があった場合には、その事実にも一事不再理効が及ぶ(しかし、前訴である同一被害児童との性交と、本件訴因である、その一一月前にした性交による児童ポルノ製造について審理の経過に照らしかかる関係がない)。(福岡高判平23・1・13高検速報一四八五)」

裁判年月日 平成30年 1月30日 裁判所名 東京高裁 裁判区分 判決
事件名 保護責任者遺棄致傷、強制わいせつ、児童買春、児童ポルノに係る行為等の処罰及び児童の保護等に関する法律違反、強制わいせつ(変更後の訴因わいせつ誘拐、強制わいせつ)、殺人、強制わいせつ致傷被告事件
 3 強制わいせつ罪と児童ポルノ製造罪の罪数関係について
  (1) 論旨は,原判決は,同一機会の犯行に係る強制わいせつ罪と児童ポルノ製造罪を併合罪としたり観念的競合としたりしており,罪数処理に関する理由齟齬がある,また,上記の両罪は,撮影による強制わいせつと児童ポルノ製造の行為に係るものであり,もともと1個の行為に2個の罪名を付けているだけであるから,いずれも観念的競合とすべきであるのに,併合罪とした原判決には,判決に影響を及ぼすことが明らかな法令適用の誤りがある,というのである。
  (2) 原判決は,同一機会の犯行に係る強制わいせつ(致傷)罪と児童ポルノ製造罪の罪数関係について,以下のように判断している。
   ア 観念的競合としたもの
 ・原判示第7の強制わいせつ致傷の行為と児童ポルノ製造(撮影,保存)の行為
 ・原判示第9から第11までの各強制わいせつの行為と各児童ポルノ製造(撮影,保存)の行為
   イ 併合罪としたもの
 ・原判示第2の1の強制わいせつの行為と同第1(別表1番号2)の児童ポルノ製造(撮影,保存)の行為
 ・原判示第2の2,4の各強制わいせつの行為と同第2の3,5の各児童ポルノ製造(撮影,保存)の行為
 ・原判示第3の強制わいせつの行為と同第1(別表1番号3)の児童ポルノ製造(撮影,保存)の行為
 ・原判示第4の強制わいせつの行為と同第1(別表1番号4)の児童ポルノ製造(撮影,保存)の行為
 ・原判示第5の1,3,5の各強制わいせつの行為と同第5の2,4,6の各児童ポルノ製造(撮影,保存)の行為
 ・原判示第6の強制わいせつの行為と同第1(別表1番号7)の児童ポルノ製造(撮影,保存)の行為
  (3) 原判決は,上記罪数判断の理由を明示していないものの,基本的には,被害児童に姿態をとらせてデジタルカメラ又はスマートフォン(付属のカメラを含む。)等で撮影した行為が強制わいせつ(致傷)罪に該当する場合に,撮影すると同時に又は撮影した頃に当該撮影機器内蔵の又は同機器に装着した電磁的記録媒体に保存した行為(この保存行為を「一次保存」という。)を児童ポルノ製造罪とする場合には,これらを観念的競合とし(原判示第7,第9から第11まで),一次保存をした画像を更に電磁的記録媒体であるノートパソコンのハードディスク内に保存した行為(この保存行為を「二次保存」という。)を児童ポルノ製造罪とする場合には,併合罪としているものと解される(なお,原判決が併合罪としたもののうち,原判示第2の1,第5の3,5,第6の各強制わいせつ行為では,被害児童に対し緊縛する暴行を加えており,これらについては,このことも根拠として併合罪とし,観念的競合としたもののうち,原判示第7の強制わいせつ行為では,被害児童に対し暴行を加えているが,その暴行態様は,緊縛を含まず,おむつを引き下げて陰茎を露出させた上,その包皮をむくなどしたというものであって,姿態をとらせる行為と重なり合う程度が高いとみたとも考えられ,原判決は,罪数判断に当たり,強制わいせつの態様(暴行の有無,内容)をも併せ考慮していると考えられる。)。いずれにせよ,わいせつな姿態をとらせて撮影することによる強制わいせつ行為と当該撮影及びその画像データの撮影機器に内蔵又は付属された記録媒体への保存行為を内容とする児童ポルノ製造行為は,ほぼ同時に行われ,行為も重なり合うから,自然的観察の下で社会的見解上一個のものと評価し得るが,撮影画像データを撮影機器とは異なる記録媒体であるパソコンに複製して保存する二次保存が日時を異にして行われた場合には,両行為が同時に行われたとはいえず,重なり合わない部分も含まれること,そもそも強制わいせつ行為と児童ポルノ製造行為とは,前者が被害者の性的自由を害することを内容とするのに対し,後者が被害者のわいせつな姿態を記録することによりその心身の成長を害することを主たる内容とするものであって,基本的に併合罪の関係にあることに照らすと,画像の複製行為を含む児童ポルノ製造行為を強制わいせつとは別罪になるとすることは合理性を有する。原判決の罪数判断は,合理性のある基準を適用した一貫したものとみることができ,理由齟齬はなく,具体的な行為に応じて観念的競合又は併合罪とした判断自体も不合理なものとはいえない。

1審判決
裁判年月日 平成28年 7月20日 裁判所名 横浜地裁 裁判区分 判決
第7 被告人は,F(以下「F」という。)が13歳未満の男子であることを知りながら,平成25年3月10日頃,東京都中野区●●●において,F(当時生後8か月)に対し,おむつを引き下げて陰茎を露出させた上,その包皮をむくなどの暴行を加え,亀頭部を殊更露出させるなどの姿態をとらせ,その姿態をスマートフォン付属のカメラで撮影し,その静止画データ12点を電磁的記録媒体であるスマートフォン(平成28年押第40号符号1)内蔵の記録装置に記録して保存し,もって13歳未満の男子に強いてわいせつな行為をするとともに,衣服の一部を着けない児童の姿態であって性欲を興奮させ又は刺激するものを視覚により認識することができる方法により電磁的記録に係る記録媒体に描写した児童ポルノを製造し,その際,Fに全治約5日間を要する外傷による亀頭包皮炎の傷害を負わせた。【平成27年2月26日付け追起訴の関係】
 第8 被告人は,別表2の番号1ないし3各記載のとおり,平成25年4月6日頃から同年8月9日頃までの間,埼玉県内,神奈川県内又はその周辺において,番号1ないし3の氏名不詳の各男児がいずれも18歳に満たない児童であることを知りながら,同児童らに対し,全裸又は下半身裸の状態で陰茎を露出させるなどの姿態をとらせ,その姿態をデジタルカメラ等の機器で撮影し,同年4月11日頃から同年8月9日頃までの間,埼玉県内,神奈川県内又はその周辺において,その静止画データ合計26点を電磁的記録媒体である前記ノートパソコンのハードディスク内等にそれぞれ記録して保存し,もって衣服の全部又は一部を着けない児童の姿態であって性欲を興奮させ又は刺激するものを視覚により認識することができる方法により電磁的記録に係る記録媒体に描写した児童ポルノをそれぞれ製造した。【平成27年3月31日付け追起訴別表番号10ないし12の関係】
 第9 被告人は,G(以下「G」という。)が13歳未満の女子であることを知りながら,平成25年8月25日頃,東京都内又はその周辺において,G(当時1歳)に対し,全裸の状態で両脚を開かせて陰部を露出させるなどの姿態をとらせ,その姿態をデジタルカメラで撮影し,その静止画データ10点を同デジタルカメラに装着した電磁的記録媒体であるSDカード(平成28年押第40号符号4)に記録して保存し,もって13歳未満の女子にわいせつな行為をするとともに,衣服の全部を着けない児童の姿態であって性欲を興奮させ又は刺激するものを視覚により認識することができる方法により電磁的記録に係る記録媒体に描写し
法令の適用
科刑上一罪の処理 判示第1,第7及び第9ないし第11について,いずれも同法54条1項前段,10条(判示第1について1罪として犯情の最も重い別表1の番号2の児童ポルノ製造罪の刑で,判示第7について1罪として重い強制わいせつ致傷罪の刑で,判示第9ないし第11についていずれも1罪として重い強制わいせつ罪の刑でそれぞれ処断する。)

強制わいせつ:強制わいせつの不起訴に「不当」 神戸第2検察審査会 /兵庫
2020.10.23 毎日新聞社
 交際相手の娘への強制わいせつ容疑で神戸地検尼崎支部が捜査し、不起訴処分とした尼崎市の飲食業の男性(70)に対し、神戸第2検察審査会が不起訴不当の議決を出した。14日付。
 議決文や県警によると、男性は2020年1~2月に自宅で交際相手の娘の少女にわいせつな行為をし、裸をスマートフォンで撮影したなどとし、強制わいせつと児童ポルノ禁止法違反(製造)容疑で県警に逮捕された。男性は逮捕時、強制わいせつ容疑について「そういうことをした記憶はある」と供述していたという。
 尼崎区検は男性を児童ポルノ禁止法違反罪で略式起訴。強制わいせつ罪については地検尼崎支部が不起訴処分としたため、少女の母親が検審に申し立てていた。
 議決では「わいせつ行為は母親の交際相手で、被害者が逆らえず声を上げにくいことを利用した悪質な犯罪」と指摘。「被害者は精神的ダメージを負い、成長過程に重大な影響を及ぼすことは必至で、被害は重大」とし、不起訴不当とした。
 神戸地検は再捜査し、改めて起訴か不起訴かを検討する。
 性暴力の司法手続きを巡っては、ジャーナリストの伊藤詩織さんが元TBS記者に乱暴されたと訴えた事件で、検察は不起訴処分にしたが、民事訴訟では1審判決が被害事実を認定した。【山本真也、春増翔太】
・・・

交際相手の娘被害 わいせつ疑い男性 不起訴不当の議決 神戸検察審査会
2020.10.22 神戸新聞 
 交際相手の娘に対する強制わいせつ容疑で神戸地検尼崎支部が捜査し、不起訴処分にした尼崎市の自営業の男性(70)について、神戸第2検察審査会が不起訴不当とする議決を出した。14日付。
 議決や同支部などによると、男性は1、2月に自宅で交際相手の娘=当時(15)=にわいせつな行為をしたなどとして、兵庫県警に強制わいせつ容疑や児童買春・ポルノ禁止法違反(製造)容疑で逮捕された。4月8日、尼崎区検は同法違反罪で男性を略式起訴したが、地検尼崎支部は強制わいせつ罪について不起訴処分とした。同支部は理由を明かしていない。
 議決では「母親の交際相手であり、経済的に優位な立場を利用した極めて悪質な犯罪」と指摘。「被害者の成長過程に重大な影響を及ぼすことは必至」とした。神戸地検は再捜査し、改めて起訴か不起訴かの処分を検討する。


製造罪と強制わいせつ罪を観念的競合にした裁判例は68個ある。高裁判例も8個。尼崎支部も観念的競合にしてる。
名古屋 地裁 一宮 H17.10.13
東京 地裁 H18.3.24
東京 地裁 H19.2.1
東京 地裁 H19.6.21
横浜 地裁 H19.8.3
長野 地裁 H19.10.30
札幌 地裁 H19.11.7
東京 地裁 H19.12.3
高松 地裁 H19.12.10
山口 地裁 H20.1.22
福島 地裁 白河 H20.10.15
那覇 地裁 H20.10.27
金沢 地裁 H20.12.12
金沢 地裁 H21.1.20
那覇 地裁 H21.1.28
山口 地裁 H21.2.4
佐賀 地裁 唐津 H21.2.12
仙台 高裁 H21.3.3
那覇 地裁 沖縄 H21.5.20
千葉 地裁 H21.9.9
札幌 地裁 H21.9.18
名古屋 高裁 H22.3.4
松山 地裁 H22.3.30
那覇 地裁 沖縄 H22.5.13
さいたま 地裁 川越 H22.5.31
横浜 地裁 H22.7.30
福岡 地裁 飯塚 H22.8.5
高松 高裁 H22.9.7
高知 地裁 H22.9.14
水戸 地裁 H22.10.6
さいたま 地裁 越谷 H22.11.24
松山 地裁 大洲 H22.11.26
名古屋 地裁 H23.1.7
広島 地裁 H23.1.19
広島 高裁 H23.5.26
高松 地裁 H23.7.11
広島 高裁 H23.12.21
秋田 地裁 H23.12.26
横浜 地裁 川崎 H24.1.19
福岡 地裁 H24.3.2
横浜 地裁 H24.7.23
福岡 地裁 H24.11.9
松山 地裁 H25.3.6
横浜 地裁 H25.4.30
大阪 高裁 H25.6.21
横浜 地裁 H25.6.27
福島 地裁 いわき H26.1.15
松山 地裁 H26.1.22
福岡 地裁 H26.5.12
神戸 地裁 尼崎 H26.7.29
神戸 地裁 尼崎 H26.7.30
横浜 地裁 H26.9.1
津 地裁 H26.10.14
名古屋 地裁 H27.2.3
岡山 地裁 H27.2.16
長野 地裁 飯田 H27.6.19
横浜 地裁 H27.7.15
広島 地裁 福山 H27.10.14
千葉 地裁 松戸 H28.1.13
高松 地裁 H28.6.2
横浜 地裁 H28.7.20
名古屋 地裁 岡崎 H28.12.20
東京 地裁 H29.7.14
名古屋 地裁 一宮 H29.12.5
東京 高裁 H30.1.30
高松 高裁 H30.6.7
広島 地裁 H30.7.19
広島 地裁 H30.8.10

公衆に著しく迷惑をかける暴力的不良行為等の防止に関する条例(千葉県)3条2項の定める卑わい行為の対象となった者(以下「A」という。)は,本件犯行により直接の被害を被ったとされる者で刑訴法290条の2所定の被害者に当たる(東京高裁H26.10.30)

 青少年条例違反罪ではどうかというので調べました。

公衆に著しく迷惑をかける暴力的不良行為等の防止に関する条例(千葉県)3条2項の定める卑わい行為の対象となった者(以下「A」という。)は,本件犯行により直接の被害を被ったとされる者で刑訴法290条の2所定の被害者に当たる(東京高裁H26.10.30)
高等裁判所刑事裁判速報集平成26年111頁

       理   由

 弁護人の控訴趣意の論旨は,「原審は,被害者特定事項について公開の法廷で明らかにしない決定をしているが,本件行為の対象とされるAはそもそも被害者に該当しないから同決定は違法である。」というものである。
 しかし,着衣の上から左胸をなでて触られたAは本件犯行により直接の被害を被ったとされる者で刑訴法290条の2所定の被害者に当たることは明らかであり,Aの法定代理人である母からの被害者特定事項の秘匿の申出につき,秘匿することが相当との意見を付した検察官の通知を受け,原審弁護人の「しかるべく」との意見を踏まえてした被害者特定事項について公開の法廷で明らかにしないとの原審の決定に何ら違法な点は見当たらない。
備考
卑わい行為の対象者については,実務上,刑訴法290条の􀀀2に基づきその特定事項を法廷で明らかにしないとの決定がなされ,弁護人も異議を述べないことが多いと思われる。しかしながら,卑わい行為禁止規定の保護法益については,社会的法益であるとの説(例えば,合田悦三「いわゆる迷惑防止条例について」《小林充•佐藤文哉先生古稀祝賀刑事裁判論集上巻》)もあり,卑わい行為の対象者が刑訴法290条の 2所定の被害者に該当しないとの考えも理論上はあり得るところ,本裁判例は,同条の適用を認めた高裁判決として紹介するものである。

児童相談所職員による淫行事件につき、青少年条例違反で逮捕されて、児童淫行罪で起訴されて青少年条例違反で有罪となった事例(福岡地裁r2.6.22)

 師弟関係の児童淫行罪について実刑率が高いので、慎重に対応しましょう。
 この判決が言及している最高裁判所平成28年6月21日決定は児童淫行罪の成否について要件を挙げていますが、それらの要件は量刑要素でもあるので、削って行けば軽くなって、児童淫行罪が青少年条例違反に落ちる可能性が出てきます。
 なお、同一青少年に対する数回の青少年条例違反については、包括一罪になりますので(金沢支部福岡高裁、高松高裁)、罪数処理を誤っています。

福岡地裁令和 2年 6月22日
児童福祉法違反被告事件
主文
 被告人を懲役2年に処する。
 この裁判が確定した日から4年間その刑の執行を猶予する。
理由
 (罪となるべき事実)―被害者の氏名等は,別紙犯罪事実一覧表,呼称一覧表のとおり
 被告人は,児童相談所において,Aが18歳に満たない青少年であることを知りながら,別紙犯罪事実一覧表のとおり,3回にわたり,専ら自己の性的欲望を満たす目的で,Aに口淫等をさせ,もって,いずれも,青少年に対し,いん行をした。
 (証拠の標目)―括弧内は証拠等関係カードにおける検察官請求証拠甲乙の番号
 判示事実全部について
 ・ 被告人の公判供述
 ・ 被告人の検察官調書(乙10),警察官調書(乙4(抄本),6ないし8)
 ・ Aの検察官調書抄本(甲1(不同意部分を除く))
 ・ 被害児童の年齢に関する報告書(甲2),一覧表作成報告書(甲8),写真撮影報告書(甲11),犯行場所の名称特定に関する報告書(甲13)
 別紙犯罪事実一覧表番号1,2の事実について
 ・ 被告人の検察官調書(乙15)
 別紙犯罪事実一覧表番号1の事実について
 ・ 被告人の警察官調書(乙13)
 ・ 検証調書(甲14),写真撮影報告書(甲19),実況見分調書(甲20),資料入手報告書(甲21,22)
 別紙犯罪事実一覧表番号2の事実について
 ・ 被告人の警察官調書(乙14)
 ・ 写真撮影報告書(甲24),実況見分調書(甲25)
 別紙犯罪事実一覧表番号3の事実について
 ・ 被告人の検察官調書(乙11),警察官調書(乙9)
 ・ 写真撮影報告書(甲16),実況見分調書(甲18)
 (法令の適用)
 罰条 別紙犯罪事実一覧表の番号ごとに福岡県青少年健全育成条例38条1項1号,31条1項
 刑種の選択 いずれも懲役刑を選択
 併合罪の処理 刑法45条前段,47条本文,10条(犯情の最も重い番号3の罪の刑に法定の加重)
 宣告刑 懲役2年
 刑執行猶予 刑法25条1項(4年間猶予)
 (争点に対する判断)
第1 本件公訴事実と争点
 本件公訴事実の要旨は,「被告人は,児童相談所児童福祉司として勤務し,当時,同相談所で一時保護中の児童であったAの社会診断,援助方針の策定等を担当していたものであるが,Aが18歳に満たない児童であることを知りながら,前記担当者としての自己の立場を利用し,同相談所内において,別紙犯罪事実一覧表のとおり,3回にわたり,Aに自己を相手に口淫等の性交類似行為をさせ,もって,児童に淫行をさせる行為をした」というものである。
 被告人が,別紙犯罪事実一覧表記載の各日時頃,児童相談所内で,Aに口淫等をさせた事実については当事者間に争いがなく,証拠上も認めることができる。また,それが児童福祉法上の「淫行」又は福岡県青少年健全育成条例上の「いん行」に該当することについても当事者間に争いがなく,当裁判所としてもそのように評価できると考える。しかし,検察官は,被告人が「淫行を『させる』行為」(児童福祉法34条1項6号)をしたと主張するのに対し,弁護人は,そのように評価することはできないから,児童福祉法違反の罪(以下「児童淫行罪」ともいう)は成立せず,福岡県青少年健全育成条例違反(いん行)の罪(以下「条例違反のいん行罪」ともいう)が成立するにとどまると主張している。
 すなわち,本件の争点は,被告人が,児童福祉法上の「淫行を『させる』行為」をしたと評価できるか否かであるが,当裁判所は,そのように評価することはできないと判断した。以下,説明する。
第2 事実関係等
 関係証拠によると,本件各犯行に至るまでの経緯,被告人とAとの関係等については,以下のような事実関係等が認められる。
 1 Aは,平成30年11月29日,警察からの通告により,児童相談所の一時保護所に入所し●●●,当初は●●●の児童福祉司がAらを担当していたが,その後,●●●被告人が,Aらを担当することになった●●●。
 他方,被告人は,社会福祉士の資格を有し,いくつかの福祉関係の職●●●を経て,平成27年4月から,児童相談所児童福祉司として勤務し,子どもに関する家庭その他からの相談に応じていた。本件当時,妻と●●●子ども●●●がいて,本件以前には,家庭生活や社会生活に問題は見当たらない。
 2 Aは,愛着の形成に関する問題を抱えており,他人と適切な距離を保つことが困難であった(人は,幼児期に,情緒的な関わり(必要に応じて,安心させる,見守る,褒めるなど,愛情深く世話をすること)をしてくれる特定の養育者がいれば,愛着を形成でき,安心感や自己肯定感等を獲得できる。それにより,その養育者と物理的に距離をとっても,安心感や自己肯定感を持続でき,その養育者のもとを離れて一人で行動できるようになる。他方,このような愛着の形成が上手くいかないと,その養育者との関係のみならず,その後の対人関係の築き方,発達,行動等に支障をきたすことがある。Aの場合,●●●幼児期において,●●●安定した愛着が形成できなかったことがうかがえ,●●●信頼できると思った人物とは,近い距離にいなければ(あるいは身体接触を伴わなければ)安心できず,物理的,心理的な距離感を直ぐに縮めたり,身体接触を過剰に求めたりする行動がしばしばみられる)。そのため,Aは,一時保護所においても,職員に対し,男女構わず抱きつく,膝の上に乗るなどして甘える行動や,抱き締めてほしい,頭を撫でてほしいなどと身体接触を求める行動が頻繁に観察された。Aは,このような行動を職員から再三にわたり注意されていたが一向に改まらなかった。このAの問題行動は,定期的に行われる会議により,一時保護所を含む児童相談所職員の間で共有されていた。
 3 Aは,担当児童福祉司である被告人を頼りに感じており,心情が不安定なときに抱え上げてくれたことなどから,比較的早い段階から好意を持つようになった。Aは,被告人に対し,甘える態度を示し,短期間のうちにその傾向を強め,面接後にハグを求めるなどするようになった。被告人は,当初はそれを断っていたが,重ねて求められて遂にハグをしてしまった。その後,被告人は,Aの誘いに応じる形で,キスをしたり,着衣の上から胸を触ったりするなど,Aに対する身体接触エスカレートさせ,遂には被告人の陰茎を,Aに咥えさせたり,Aの陰部に押し当てたりするようになって,本件各犯行に及んだ(関係証拠を総合すると,被告人とAとが性的な接触を始めた時期は,Aが一時保護所に入所してから1か月も経過しない頃のことと認められ,平成30年12月下旬頃であった旨をいう被告人の供述は,疑問もある。しかし,その余については,他の証拠との矛盾など,信用性を疑わせる証拠は見当たらないから,被告人とAとが性的な接触を繰り返していた経緯等に関する被告人の供述は排斥できない)。
 4 Aは,被告人との間の性的行為につき,Aと同じく一時保護されている児童や,一時保護所の職員に話したが,被告人の妻が可哀想だし,大事にしたくないという気持ちもあって,他の大人には話さなかった。なお,Aは,平成31年3月4日,担当児童福祉司を被告人以外の者に替えてほしい旨を申し出た後も,被告人との間の淫行について,面会に来た母親にも話していない。
第3 当裁判所の判断
 児童福祉法34条1項6号の「淫行を『させる』行為」とは,直接たると間接たるとを問わず,児童に対して事実上の影響力を及ぼして児童が淫行をすることを助長し促進する行為をいうと解される(最高裁判所平成28年6月21日決定)。そのような行為に当たるか否かは,行為者と被害児童の関係,助長・促進行為の内容及び被害児童の意思決定に対する影響の程度,淫行の内容及び淫行に至る動機・経緯,被害児童の年齢,その他当該児童の置かれていた具体的状況を総合考慮して判断すべきであるが,児童淫行罪と保護法益を同じくしながら,法定刑が大きく異なる児童買春の罪や条例違反のいん行罪との峻別という観点からの検討も必要である。
 1 被告人とAとの関係について
 検察官は,被告人とAとの間に「保護責任者的地位のような関係性」があった旨を主張する。
 確かに,被告人は,Aの担当児童福祉司であり,担当児童福祉司による原案どおりに援助指針(援助方針)が決まることも少なくないから,Aの援助指針(援助方針)の策定についても重要な役割を担っている上,一時保護中のAが外部の者と接触するには,窓口である被告人を介する必要があった。
 しかし,一般に,児童相談所(呼称一覧表記載の特定機関に限らない。以下「児相」ともいう)は,児童福祉司による社会診断,児童心理司による心理診断,医師による医学診断,一時保護部門の児童指導員による行動診断などにより,子どもとその環境を総合的に理解した上,それらを基にして担当者による協議(会議)を重ね,判定(総合診断)し,できるだけ迅速に,子どもの最善の利益を追求するための援助指針(援助方針)を策定する機関である(子どもや保護者に対する援助は,この指針に基づいて行われ,援助は定期的に検証され,必要に応じて見直される)。関係機関との連絡調整役を担い,社会診断(問題の所在とその背景等についての調査を進め,相談者による主訴とその背後にある基本的な問題並びに問題と社会的環境との関連等を解明することにより,社会学社会福祉学的視点から援助のあり方を明確にすることをいう)を行うことから,援助指針(援助方針)の原案を作成する児童福祉司の果たす役割は小さくないとはいえ,児童福祉司は,援助指針(援助方針)を策定する児相の専門家チームの一員である。また,本件でAが一時保護されていた一時保護所は,児童相談所と同じ建物内にあるが,一時保護されている子どもの安全等を確保するため,子どもは自由に出入りできず,児童相談所の職員でさえカードキーで解錠しない限り出入りできない仕組みになっていたように,一時保護の期間中,児童指導員等の一時保護部門の職員は,夜間を含めて一時保護されている子どもと生活をともにし,全ての生活場面について子どもの行動を観察し,行動診断を行うのであるが,一時保護されている子どもと担当児童福祉司が会う機会は,面接時に限られている。加えて,一時保護されている子どもの援助指針(援助方針)は,できるだけ迅速に策定しなければならず,一時保護の期間は原則として2か月以内とされているから,一時保護されている子どもと担当児童福祉司の関係も,原則として2か月以内の期間にとどまる。
 このような担当児童福祉司をはじめとする児童相談所や一時保護所の職員の役割等について,Aが正しく理解していたとは認められないが,Aとしては,被告人は,援助指針(援助方針)を策定する立場にある者と認識していたのであるから,一時保護されている期間中の被告人からの働き掛けについては,Aの将来を左右し得る立場の者からの働き掛けであると考えて,Aの自律的な意思決定が歪められる危険性があることは否定できないから,そのような意味において,Aに対して相当の事実上の影響力を有していたとはいえようが,上記のとおり,一時保護中の子どもとその担当児童福祉司との関係は,子どもとその親など保護者との関係や,学校における児童・生徒と教師との関係とは異なる部分が多い上,援助指針(援助方針)の策定に際しては,児童相談所の方針を子どもや保護者らに伝え,その意向を聴取し,できる限り子どもや保護者らとの協議が行われることなども踏まえると,検察官が主張するように,被告人とAとの間に「保護責任者的地位のような関係性」があったとみるのは適切ではないと考える。
 2 助長・促進行為の内容及び児童の意思決定に対する影響の程度について
 検察官は,被告人とAとの間に「保護責任者的地位のような関係性」があったことを前提に,Aに対し,そのような被告人からの事実上の影響力が強く及んでいたのであるから,被告人が,担当児童福祉司としてAと面接する機会に,その立場を利用して,児童相談所の相談室等において,Aと二人きりの状況を作出するとともに,相談室内の灯りを消し,自らのズボンとパンツを脱いで陰茎を露出させ,Aの着衣をまくりあげるなどの行為は,被告人からの事実上の影響力の強さを考慮すると,「助長・促進行為」に当たり得る旨を主張している。
 この点,被告人とAとの間に「保護責任者的地位のような関係性」があったとみるのは適切ではないのは,既に説明したとおりであるが,担当児童福祉司である被告人からの働き掛けがあったとすれば,それはAに対して相当の事実上の影響力があったと認められる。
 しかし,被告人がAと性的接触を繰り返すようになったのは,面談の機会に,被告人に対して好意を持っていたAから繰り返し身体接触を求められ,当初はそれを断っていた被告人が,これに応じてしまったことが契機であると認められるのであって,被告人が,Aに対して,性的な身体接触等を求めて何らかの働き掛けを行い,その働き掛けが持つ事実上の影響力により,Aとしては,それに応じるか否かの意思決定を自律的に行うことができず,被告人からの働き掛けに応じることを余儀なくされてしまった,というような経緯ではない(このことは,Aが被告人との間の性的行為を身近に感じていた者たちだけに打ち明けた後も,できれば大事にしたくないという気持ちから,しばらくの間,母親を含めて他の者には隠していたことなどからも,うかがうことができる)。被告人とAとの関係や影響力の強さを踏まえても,検察官が指摘するような行為まで本罪に当たり得るとすると,児童淫行罪と条例違反のいん行罪とを峻別することができなくなってしまうおそれがあり,妥当ではない。
 そうすると,被告人がAの愛着の形成に問題があることを認識していたことや,被告人のAに対する事実上の影響力の強さ等を踏まえて検討しても,弁護人が主張するとおり,本件においては「淫行を『させる』行為」と評価し得る「助長・促進行為」が存在したとは認められない。
 なお,被告人は,同じ時期に担当していた他の被保護児童と比べて,Aとの面接回数が相当多いことは認められる。しかし,Aとそのきょうだいの一時保護されていた期間,一時保護後の措置の内容等に照らすと,Aやその家族の抱える問題点を把握して援助指針(援助方針)の原案を作ること,Aらに対して,その原案を説明し,その意向を聴取し,協議した上,成案を得ることは容易ではなかったことがうかがえる。Aと他の被保護児童との面接回数の差は,その処遇選択の困難さの違いを反映している可能性は十分に考えられる。更に,一時保護されているAは,他の被保護児童とは違って,比較的軽い感じで,児童相談所にいる被告人を呼び出すことがあったようである。
 したがって,被告人が担当していた児童らが一時保護された経緯や,一時保護期間中やその後の状況,面接の必要性等が証拠により明らかにされていない以上,被告人とAとの面接回数が多いからといって,被告人が,必要性もないのに,担当児童福祉司という立場を利用して,Aとの面接を多数回重ねていたとか,事実上の影響力を行使していたとみることも難しい。
 3 そうすると,淫行の内容,淫行に至る動機・経緯,被害児童の年齢,その他被害児童の置かれていた状況等を検討するまでもなく,児童福祉法上の「淫行を『させる』行為」があったとは認められないから,児童淫行罪は成立せず,条例違反のいん行罪が成立するにとどまると判断した。
 (量刑に当たり特に考慮した事情)
 児童相談所児童福祉司である被告人は,妻子もあるのに,事もあろうに,担当していた一時保護中の被害児童に対して,児童相談所内でいん行を繰り返した。被害児童の口に自己の陰茎を咥えさせるなどの態様もかなり悪く,被害児童の心身に及ぼす害悪の程度は相当高く,被害児童の心身の健全な発達に対する悪影響が懸念される。被害児童は,愛着の形成に問題を抱えており,児童福祉司であり,児童相談所の職員であった被告人は,それを十分に理解していたのであるから,他の誰よりも適切に対応すべきであったといえ,被告人が,被害児童に対する性的接触エスカレートさせていった期間の長さを踏まえても,本件各犯行は,同種の事案の中で,相当重い部類といえる。
 他方,被告人が本件に至った経緯からすると,殊更に犯情を重く捉えるべきではないとの弁護人の主張には理由があり,被告人に相手を選ばずこの種の行為を繰り返す傾向があるとも認められないから,被告人に対する非難は,一定程度減じられるべきである。また,被告人は,被害児童に対する慰謝の措置を講じる努力をし,被害弁償金の一部(50万円)を被害児童側に受け取ってもらっている。母親の監督も期待できる。被告人自身も反省を深めており,専門家の力も借りて再犯を防止しようとしている。
 そうすると,被告人の刑事責任を軽視することはできないが,前科・前歴もない被告人に対しては,今回に限り,社会内で自力更生を目指す機会を与えることも許されると考える。
 よって,主文のとおり判決する。
 (求刑・懲役4年)
 福岡地方裁判所第2刑事部
 (裁判官 溝國禎久)

平成28年 6月21日
最高裁第一小法廷
児童福祉法違反被告事件
 弁護人竹永光太郎の上告趣意のうち,憲法31条違反をいう点は,児童福祉法34条1項6号の構成要件が所論のように不明確であるということはできないから,前提を欠き,その余は,単なる法令違反,事実誤認の主張であって,刑訴法405条の上告理由に当たらない。
 所論に鑑み,職権で判断する。
 児童福祉法34条1項6号にいう「淫行」とは,同法の趣旨(同法1条1項)に照らし,児童の心身の健全な育成を阻害するおそれがあると認められる性交又はこれに準ずる性交類似行為をいうと解するのが相当であり,児童を単に自己の性的欲望を満足させるための対象として扱っているとしか認められないような者を相手とする性交又はこれに準ずる性交類似行為は,同号にいう「淫行」に含まれる。
 そして,同号にいう「させる行為」とは,直接たると間接たるとを問わず児童に対して事実上の影響力を及ぼして児童が淫行をなすことを助長し促進する行為をいうが(最高裁昭和39年(あ)第2816号同40年4月30日第二小法廷決定・裁判集刑事155号595頁参照),そのような行為に当たるか否かは,行為者と児童の関係,助長・促進行為の内容及び児童の意思決定に対する影響の程度,淫行の内容及び淫行に至る動機・経緯,児童の年齢,その他当該児童の置かれていた具体的状況を総合考慮して判断するのが相当である。
 これを本件についてみると,原判決が是認する第1審判決が認定した事実によれば,同判示第1及び第2の各性交は,被害児童(当時16歳)を単に自己の性的欲望を満足させるための対象として扱っているとしか認められないような者を相手とする性交であり,同児童が通う高等学校の常勤講師である被告人は,校内の場所を利用するなどして同児童との性的接触を開始し,ほどなく同児童と共にホテルに入室して性交に及んでいることが認められる。このような事実関係の下では,被告人は,単に同児童の淫行の相手方となったにとどまらず,同児童に対して事実上の影響力を及ぼして同児童が淫行をなすことを助長し促進する行為をしたと認められる。したがって,被告人の行為は,同号にいう「児童に淫行をさせる行為」に当たり,同号違反の罪の成立を認めた原判断は,結論において正当である。
 よって,刑訴法414条,386条1項3号により,裁判官全員一致の意見で,主文のとおり決定する。
 (裁判長裁判官 小池裕 裁判官 櫻井龍子 裁判官 山浦善樹 裁判官 池上政幸 裁判官 大谷直人) 

東京都内で深夜青少年と同伴したことについて、青少年が謝罪した話

 東京都青少年の健全な育成に関する条例28条によれば、同伴する相手方についての年齢確認義務があって、16歳未満だと過失でも処罰されるし、16歳以上でも条例15条の4第2項違反(罰則がない)となります。
年齢確認の程度としては「年齢確認をした際、当該青少年が他人の身分証明書や年齢を詐称した定期券を提示した場合等で、誰が見ても見誤る可能性が十分あり、見誤ったことに過失がないと認められるような状況にあった場合は、あえて責任を負わせないとしたものである。」くらいまでが求められています。

東京都青少年の健全な育成に関する条例の解説 令和元年8月
(深夜外出の制限)
第15条の4
1保護者は、通勤又は通学その他正当な理由がある場合を除き、深夜(午後11時から翌日午前4時までの時間をいう。以下同じ。)に青少年を外出させないように努めなければならない。
2何人も、保護者の委託を受け、又は同意を得た場合その他正当な理由がある場合を除き、深夜に青少年を連れ出し、同伴し、又はとどめてはならない。
3何人も、深夜に外出している青少年に対しては、その保護及び善導に努めなければならない。
ただし、青少年が保護者から深夜外出の承諾を得ていることが明らかである場合は、この限りでない。
4深夜に営業を営む事業者及びその代理人、使用人、その他の従業者は、当該時間帯に、当該営業に係る施設内及び敷地内にいる青少年に対し、帰宅を促すように努めなければならない。

第26条次の各号の一に該当する者は、30万円以下の罰金に処する。
五第15条の4第2項の規定に違反して、深夜に16歳未満の青少年を連れ出し、同伴し、又はとどめた者

・・
【要旨】
本条は、第1項において保護者に対し、深夜に青少年を外出させない努力義務を課し、第2項においてすべての者に対し、保護者の委託又は同意を得た場合その他正当な理由がある場合を除いて、深夜に青少年を連れ出すこと等を禁止した規定である。さらに、第3項においてすべての者に対し、深夜に外出している青少年の保護及び善導を、第4項において深夜に営業を営む事業者等に、その施設内及び敷地内にいる青少年に対し、帰宅を促すことをそれぞ努力義務として定めている。
【解説】
本条でいう「保護者」とは、第4条の2第1項の「保護者」と同義である。
近年、生活時間帯が深夜に及ぶとともに、深夜に営業する施設も増加したことなどから、青少年が深夜に繁華街を俳個し、コンビニエンスストア内や駐車場の敷地内、店の前の路上でたむろするなどの行動が目立つようになり、また、事件や犯罪に巻き込まれる事例も増えている。これらを背景に、平成16年の条例改正により新設された。
第1項は、本来第一義的に保護者が自覚を持つべき事項であるが、子供が深夜に俳個していたり、無断外泊をしていても、無関心であったり、携帯電話で連絡が取れるから問題がないとしてすぐに迎えに来ない保護者もいるなど、保護者の責任感が希薄化していることから、通勤又は通学その他正当な理由がある場合を除き、深夜に青少年を外出させない努力義務を保護者に課したものである。
これにより、保護者の責任を明確にし、自覚を促すことを目的としている。ここでいう「正当な理由」とは、勉強又は就労(労働基準法で認められている範囲内に限る。)のように定例的なもの、本人又は保護者・親戚等の病気や事故、旅行先からの帰宅等の突発的又は一時的なものの両方が想定される。
第2項は、保護者の委託を受け、又は同意を得た場合その他正当な理由がある場合を除いて、深夜に青少年を連れ出し、同伴し、又はとどめることを禁止する規定である。保護者の同意等を受けず、また、その他正当な理由がないのに、青少年を深夜に連れ回すことは、まさに犯罪に巻き込まれる危険性があることから、設けられたものである。
保護者の委託又は同意の有無は、例えば、塾等に迎えに行くなど保護者の委託を受けて定例的に行っている場合、毎回必ず確認することまでは要さない。
また、ここでいう「正当な理由」とは、本人又は保護者の急な病気や事故等により、保護者に確認することが不可能な場合、事件や事故等に遭遇した青少年を助ける等、偶発的な理由により、結果として同伴することになった場合等を指す。
「連れ出し」とは、深夜に、青少年を東京都内の住居、居所等から離れさせることであり、その手段等は問わず、携帯電話やメール等での呼び出しであっても該当する。
「同伴」とは、現に同行し、又は同席する等、青少年と同一の行動を取っていることをいい、青少年が単独であると複数であるとは問わない。また、既に深夜に外出している青少年と同伴する場合も含む。
「とどめ」とは、深夜に連れ出している、あるいは深夜に既に外出している青少年が、帰宅の意思を表しているにもかかわらず、それを翻意させ、又は制止するこをいい、その手段は問わない。
本条において、本項のみが罰則の対象となるが、罰則を適用されるのは、16歳未満の青少年を連れ出し、同伴し、又はとどめた者に限る。これは、中学生以下と高校生以上とでは、生活実態が異なることを考盧したものである。
第3項は子供に対する大人の本来の責任を明確にするためのものである。
第1項及び第2項を受けて、すべての者が、深夜に青少年が外出することは望ましくないとの認識を持ち、そのような青少年と会った場合は、保護するとともに、今後は深夜に外出しないように促すことを求めた規定である。
「保護」とは、深夜外出している青少年が被害に遭わないための未然防止策であり、例えば、飲酒、喫煙、けんか等自身を損ない、又は周囲に迷惑をかける行為をしている場合に、警察や消防などへ通報することが挙げられる。
「善導」とは、深夜外出している青少年に帰宅を促すとともに、犯罪に巻き込まれないため等の注意喚起を促すことである。
なお、保護者から深夜外出の承諾を得ている場合には、やむを得ない場合と考えられることや、保護者が責任をもって行わせていることであるため、必ずしも保護及び善導に努める必要はない。

・・・
第28条
第9条第1項、第10条第1項、第1 1条、第13条第1項、第13条の2第1項、第15条第1項若しくは第2項、第15条の2第1項若しくは第2項、第15条の3,第15条の4第2項又は第16条第1項の規定に違反した者は、当該青少年の年齢を知らないことを理由として、第24条の4,第25条又は第26条第1号、第2号若しくは第4号から第6号までの規定による処罰を免れることができない。ただし、過失のないときは、この限りでない。
【解説】
本条は、第9条第1項の指定図書類の販売等の制限、第10条第1項の指定映画の観覧の制限、第11条の指定演劇等の観覧の制限、第13条第1項の指定がん具類の販売等の制限、第13条の2第1項の指定刃物の販売等の制限、第15条第1項又は第2項の質受け又は古物買受けの制限、第15条の2第1項又は第2項の着用済み下着等の買受け等の禁止、第15条の3の青少年への勧誘行為の禁止、第15条の4第2項の深夜の青少年の連れ出し等の禁止、第16条第1項の深夜における興行場等への立入りの制限等の規定に違反した場合に、違反者は、その相手方の年齢が18歳に満たない者であることを知らなかったとしても、それを理由として処罰を免れることができないことを規定したものである。
本条でいう「過失」とは、注意すれば相手が青少年であるという事実を認識することができたのに不注意で認識しなかったことをいい、「この限りでない。」とは、過失がないと認められる場合は、消極的に本条の罰則適用を打ち消すとの意味である。
すなわち、年齢確認をした際、当該青少年が他人の身分証明書や年齢を詐称した定期券を提示した場合等で、誰が見ても見誤る可能性が十分あり、見誤ったことに過失がないと認められるような状況にあった場合は、あえて責任を負わせないとしたものである。

https://www.nikkansports.com/entertainment/news/202010120000641.html
山下智久と同席の未成年女性が謝罪 虚偽認める書面
[2020年10月13日4時0分]
未成年の女性らと深夜4時過ぎまで同席したと報じられ、山下智久(35)が一定期間の活動自粛処分となっていた件で、同席した未成年の女性が、山下に書面で謝罪していたことが12日、分かった。
複数の関係者によると、先月までに、女性の親族名義で、弁護士を通じて山下に書面が送られていたという。事前に山下から年齢を確認されても20歳以上だと偽っていたことや、結果的に山下が活動自粛に至ったことへの謝罪などがつづられていたという。女性は深く反省している様子といい、山下も謝罪の意思を受けとったという。

山下は今年8月7日、「文春オンライン」で、7月末に酒席で未成年の女性らと深夜4時過ぎまで同席したと報じられた。山下は酒席の後、女性と同じホテルに滞在したとされた。酒席に同席していたKAT-TUN亀梨和也(34)も、厳重注意処分となった。

被告人方における児童ポルノ画像複製行為を、姿態をとらせて製造罪として有罪とした事例(A地裁H28.9.27)

 「姿態をとらせて」は構成要件ですので、それを欠く罪となるべき事実は、理由不備になります。
 A地裁H支部h27.2.6でも、当初起訴がそんな記載で、裁判所が気付いて訴因変更させられて有罪になっています。その経緯は控訴審(s高裁a支部H270630)で問題になり、「姿態をとらせて身分犯説」「複製行為が姿態とらせて製造罪だ」などと変な理屈で正当化されています。
 地検のなかで、同種事案の記録を貸し借りして、処理しているので、ケアレスミスが伝染するようです。法文見ないで起訴状起案するからですよ。
 静岡地裁浜松支部h17.7.15が「姿態をとらせ」を欠いた姿態をとらせて製造罪の有罪判決を書いたことがあって、東京高裁h17.12.26が理由不備で破棄しています。

A地裁H28.9.27
第1 ホテルにおけるd子との淫行(青少年条例違反罪)
第2 d子(11)が児童であることを知りながら 某日、被告人方において、デジカメでで撮影保存していた同児童を相手方とする性交に係る姿態、同児童に口淫させる姿態 被告人が児童の陰部を触る姿態の静止画像データ10点を、パーソナルコンビュータに接続された電磁的記録媒体である外付けHDDに記録して保存して、もって、1号 2号 3号に該当する姿態を、視覚により認識することができる方法により、電磁的記録にかかる記録媒体に描写した児童ポルノを製造した。
法令適用
第2の所為 包括して児童ポルノ法7条4項(2項)

A地裁H支部h27.2.6
平成26年11月25日起訴
A地検H支部検察官事務取扱検事 y
公訴事実
被告人は,c子(当時11歳)が18歳に満たない児童であることを知りながら某日,被告人方において,撮影機能付携帯電話機で撮影,保存していた同児童を相手方とする性交に係る姿態,同児童に被告人の陰茎を口淫させる姿態及び同児童にその陰部等を露出させた姿態の動画データ16点を,パーソナルコンビュータに接続された電磁的記録媒体である外付けハードディスクに記録して保存し,もって児童を相手方とする性交又は性交類似行為に係る児童の姿態及び衣服の全部又は一部を着けない児童の姿態であって性欲を興奮させ又は刺激するものを視覚により認識することができる方法により描写した児童ポルノを製造したものである。
罪名及び罰条
児童買春,児童ポルノに係る行為等の処罰及び児童の保護等に関する法律違反
平成26年法律第79号による改正前の同法律7条3項,2条3項1号,3号

s高裁a支部H270630
第2 訴訟手続の法令違反の主張(控訴理由第2ないし第6)について
 1 論旨は,平成26年11月25日付け起訴状記載の公訴事実(以下「当初訴因」という。)には3項製造罪の構成要件である「姿態をとらせ」た事実の記載がなく,訴因が特定されていないから,これによる公訴提起は刑事訴訟法256条3項に違反し,また,当初訴因として記載された事実が真実であっても,何らの罪となるべき事実を包含していないから,公訴を棄却すべきであるのに,これをしなかった原判決には訴訟手続の法令違反がある,というのである。
 そこで検討すると,3項製造罪においては児童ポルノ法2条3項各号のいずれかに掲げる姿態を児童にとらせ,これを電磁的記録に係る記録媒体に記録する行為のみならず,このような行為をした者が,当該電磁的記録を別の記録媒体に記憶させて児童ポルノを複製する行為も同罪に当たると解される(最高裁平成18年2月20日第三小法廷決定・刑集60巻2号216頁参照)。後者の行為類型の場合,3項製造罪は身分犯的な犯罪と解されるから,実行行為(製造行為)は,自ら記録媒体に記録した電磁的記録を別の記録媒体に複製して児童ポルノを作成する行為,すなわち,複製行為であり,先行する「姿態をとらせる行為」は,製造行為とは別の行為であって,3項製造罪の実行行為には該当しない。しかし,「姿態をとらせる行為」は後者の行為類型の主体であることを基礎付けるものであることからすれば,これをできる限り特定して記載する必要があるというべきである。これを前提に弁護人の主張を検討すると,記録によれば,確かに当初訴因には「姿態をとらせ」た事実は明記されていないが,被告人が被害児童を相手方とする性交に係る姿態等を撮影,保存していた旨の記載があり,その罰条に児童ポルノ法7条3項,2条3項1号,3号と記載されていることからすれば,当初訴因が特定を欠くものとはいえない。また,当初訴因は,その記載内容に照らすと,3項製造罪における後者の行為類型である複製行為を起訴したものと解されるから,それが3項製造罪を構成する犯罪事実を包含していない(刑事訴訟法339条1項2号)ものともいえない。論旨は理由がない。
2 論旨は,当初訴因は,3項製造罪について,平成26年4月30日から同年5月11日までの6回の撮影行為は被告人の犯意に照らすと3罪であり,これらは併合罪と評価され,同月24日の製造行為(複製行為)とは併合罪の関係に立つのに,これらを1個の訴因として記載しており,しかも平成27年2月4日付け訴因変更請求書に基づき変更が許可された訴因(以下「変更後訴因」という。)においても,撮影行為については「秋田県内」で「6回」とされるのみで,それぞれの撮影行為の日時,場所が特定されておらず,訴因が特定されているとはいえないから,本件公訴提起は刑事訴訟法256条3項に違反し,公訴を棄却するべきであるのに,これをしなかった原判決には訴訟手続の法令違反がある,というのである。
 しかしながら,本件3項製造罪は,同一の被害児童に対して平成26年4月30日から同年5月11日までの12日間,前後6回にわたり被告人を相手方とする性交その他の姿態をとらせ,これらを撮影,保存していた動画データ6点を,同月24日に本件ハードディスクに複製して児童ポルノを製造したというものであるところ,前述のとおり,当初訴因及び変更後訴因とも,上記のように撮影,保存していた動画データ6点を本件ハードディスクに複製した行為のみを3項製造罪の実行行為として起訴したものであり,それは一罪となると解される(原判決は,これを包括一罪と評価しているが,実行行為である複製行為は,被告人が複製の対象である動画データ6点を短時間に連続して複製しており,社会通念上一個の行為とみられるから,原判決の評価は相当ではない。)。そして,変更後訴因において,その複製行為は日時,場所,方法をもって特定されており,行為類型の主体であることを基礎付ける事実である動画データ6点の撮影,保存行為についても,当初訴因よりも,期間,場所,回数,姿態の内容等がより具体的なものになっているから,全体として訴因の明示に欠けるところはない。よって,本件3項製造罪の起訴は刑事訴訟法256条3項に違反するものとはいえない。論旨は理由がない。
3 論旨は,変更後訴因について,製造された6点の動画データにつき,それぞれの動画データが児童ポルノ法2条3項1号又は3号のいずれに該当するのかを明示しておらず,刑事訴訟法256条3項に違反するから,公訴を棄却するべきであるのに,これをしなかった原判決には訴訟手続の法令違反がある,というのである。
 しかしながら,変更後訴因において,3項製造罪の実行行為である複製行為の対象である6点の動画データそれぞれについて,児童ポルノ法2条3項各号所定のどの姿態に該当するのかを明示してはいないが,それらがどのような姿態に関する動画データであるのかを概括的に特定しており,その適用すべき罰条として児童ポルノ法7条3項のほか,2条3項1号,3号を掲げていることからすれば,訴因が特定されていないとはいえない。そうすると,本件3項製造罪の起訴が刑事訴訟法256条3項に違反するものとはいえない。論旨は理由がない。
4 論旨は,変更後訴因には日時が幅のある記載がなされ,児童ポルノの内容が主張されていないのに,その点について訴因変更手続を経ないまま,原判決は,その別表において6回の撮影行為についてそれぞれの日時と児童ポルノの内容を判示しており,公訴事実に記載のない犯行日時及び内容を認定した原判決は審判の請求を受けない事件について判決をしたものであって,原判決には訴訟手続の法令違反がある,というのである。
 しかしながら,前述のとおり,原判決が認定した6回の撮影行為は,被告人が製造行為(複製行為)の主体であることを基礎づける事実ではあるものの,3項製造罪の実行行為とはいえない上,原判決は,検察官が変更後訴因において包括的に記載した6回の撮影行為それぞれについて,関係証拠から各撮影行為の日時及び内容を特定して認定したものであるから,検察官が変更後訴因に記載していない別の犯罪事実を認定したものではなく,審判の請求を受けない事件について判決をした(刑事訴訟法378条3号参照)ものとはいえない。論旨は理由がない。
5 論旨は,複製行為単独では罪とならないから,これを本件3項製造罪の実行行為と評価できず,撮影行為ごとに犯罪が成立し,複数の3項製造罪の罪数は原則として併合罪であると解するべきであり,本件3項製造罪に係る当初訴因と変更後訴因は公訴事実の同一性を欠くから,訴因変更を許可した原判決には訴訟手続の法令違反がある,というのである。
 しかしながら,前述のとおり,本件3項製造罪の実行行為は複製行為であるというべきであり,当初訴因と変更後訴因との間で基本的事実関係は同一である上,上記2のとおり本件3項製造罪は一罪であると解され,罪数評価においても両訴因に異なるところはないから,当初訴因と変更後訴因とが公訴事実の同一性を欠くものとは認められない。したがって,その訴因変更を許可した原審の措置に訴訟手続の法令違反はない。論旨は理由がない。

「条例の各規定に該当する場合においても刑法その他法律に正条があるときは,これらの法律による。」の法的性格について、「刑法の罰条と条例の罰条が補充関係にあることを明らかにするものであって,訴因外の刑法の罰条の構成要件該当事実が条例違反罪の訴因との関係で処罰阻却事由となるものではない」高松地裁R2.9.29


 刑法優先という規定は、香川県条例と北海道条例にあります。
 青少年条例のわいせつ行為には「性的意図」が必要とされています。

香川県青少年保護育成条例の解説
(淫行又は隈せつ行為等の禁止)
第16条
1何人も、青少年に対し、淫行又は狼せつの行為をしてはならない。
【要旨】
本条は、青少年に淫行(みだらな行為)やわいせつの行為を行ったり、教えたり、見せたりする行為を禁止する規定である。
【解説】
(4) 「隈せつの行為」とは、いたずらに性欲を刺激したり、露骨な表現によって健全な常識ある一般社会人に性的差恥心や嫌悪の情を起こさせたりする行為をいう。

第29条
第22条から前条までの規定に該当する場合においても、刑法(明治40年法律第45号)、児童福祉法(昭和22年法律第164号)その他法律に正条があるときは、これらの法律による。
【解説】
本条は、第22条から第28条の規定を適用するに当たって、刑法、児菫福祉法条があるときは、これら法律が優先して適用されることを規定したものである

北海道青少年健全育成条例の解説2020
(淫行等の禁止)
第38条
1何人も、青少年に対し、淫行又はわいせつな行為をしてはならない。
(3) 「わいせつな行為」とは、いたずらに性欲を刺激し、興奮させたり、その露骨な表現によって、健全な常識ある一般社会人に対し、性的な羞恥、嫌悪の情をおこさせる行為をいう。
(4) 「してはならない」とは、青少年を相手方として、淫行又はわいせつな行為を行うことを禁止しているのであり、相手方の同意、承諾の有無及び対価の授受の有無を問わない。
・・・
第67条
第57条から前条までの規定に該当する場合においても、刑法(明治40年法律第45号)又は児童福祉法その他の法令に正条があるときは、これらの法律による。
【趣旨】
本条は、本条例の違反事項について他の法令に正条があるときは、これらの法律によることを定めた規定である。
【解説】
本条例の違反事項について他の法令に正条があるときは、例えば、次のような場合をいう。
(1) 第15条第1項の規定による有害興行の上映、上演等、第16条第2項の規定による有害図書類販売等又は第22条第1項の規定による有害広告物の表示等が刑法第175条(わいせつ物頒布等)に該当するときは、同法による。
(2) 第35条第3項による深夜同伴が刑法第224条(未成年者略取及び誘拐)に該当するときは、同法による。
(3) 第38条の規定による淫行、わいせつな行為が刑法第176条(強制わいせつ)、第177条(強制性交等)、第178条(準強制わいせつ及び準強制性交等)、第179条(監護者わいせつ及び監護者性交等)に該当するときは、同法による。
(4) 第40条の規定による場所の提供が売春防止法第11条(場所の提供)、児童福祉法第34条第1項(禁止行為)の該当するときは、同法による。
(5) 第53条の規定による立入調査について刑法第95条(公務執行妨害及び職務強要)に該当する場合は、同法による。

高松地裁R2.9.29
(弁護人の主張に対する判断)
弁護人は,判示の事実関係については争わない旨陳述しつつ,
①県青少年保護育成条例(以下,単に「条例」という。)29条には「第22条から前条までの規定に該当する場合においても刑法その他法律に正条があるときは,これらの法律による。」と定められているから,刑法の準強制わいせつ罪の構成要件の充足が条例違反罪の訴因との関係で処罰阻却事由となるところ,本件は被害者の心神喪失等に乗じて行われた可能性があり,被告人の行為は,行為の客観面において準強制わいせつ罪の構成要件を満たすから,同条により条例違反罪は適用されない,
②条例16条1項の「狼せつ」は定義ができないから,刑罰法規としての明確性を欠き無効である,
~~~などと主張する。
しかしながら,①については,条例29条は,刑法の罰条と条例の罰条が補充関係にあることを明らかにするものであって,訴因外の刑法の罰条の構成要件該当事実が条例違反罪の訴因との関係で処罰阻却事由となるものではなく,弁護人の主張は独自の見解として採用の限りではない。
また,②については,行為そのものが持つ性的性質から条例16条1項の「猥せつ」の該当性を判断することができ,判示行為がこれに当たることも明らかであって,弁護人の主張は採用できない(なお,判示事実のうち「単に自己の性的欲望を満たす目的で」との部分は,判示行為が青少年を単に自己の性的欲望を満足させるための対象として扱っているとしか認められないようなものとして,条例16条の「猥せつの行為」に該当することを示すものである。)。

「わいせつな行為とは、被害者の立場に立った一般人の性的差恥心の対象となる行為をいう。」刑法Ⅱ各論亀井源太郎、小池信太郎、佐藤拓磨・薮中悠、和田俊憲

 「被害者の立場に立った一般人」というのがよくわかりません。
 沐浴中の乳児の写真を撮るのは、乳児の立場に立つと、性的羞恥心を覚えるでしょうか。
 しっくりくる定義はいつできるのでしょうか

p30
強制わいせつ罪は、①相手方の年齢によらず暴行・脅迫を用いてわいせつな行為をする場合と、②13歳未満の者に対して暴行・脅迫を用いずに単にわいせつな行為のみをする場合とが処罰対象である。
13歳という基準は、一般に性的行為に対する同意能力をそなえる年齢と解されているが、被害者の意思いかんにかかわらず性的行為が人格形成に悪影響を及ぼす年齢と位置づける見解もある。いずれにせよ、自己決定の意思を有しない乳児も被害者に含まれる以上、13歳未満に対する本罪は、被害者の健全な性的発達をも保護法益に含むと解するのが妥当であろう。
l わいせつな行為
実行行為であるわいせつな行為とは、被害者の立場に立った一般人の性的差恥心の対象となる行為をいう。公然わいせつ罪(→220頁)では行為を観察する者の蓋恥心が問題なのに対して、本罪では行為の客体となる者の差恥心が問われることから、意思に反する接吻のように公然わいせつ罪を構成しない行為でも、本罪のわいせつ行為にはあたりうる。
身体的接触を伴うものが中心であり、性器への直接的接触をもたらす行為(相手方の陰部を触る行為や自らの陰部を触らせる行為など)や、性器に準ずるものとして女性の乳房を弄ぶ行為や肛門への異物の挿入、さらに接吻などがこれにあたる。接触は着衣の上からでもよいが、一定の執勧さが要求されると解されているため、それに達しない行為は本罪にあたらず、公共の乗り物などにおける場合に各都道府県の迷惑防止条例違反となるにとどまる。
身体的接触がない場合でも、裸にして写真を撮る行為や手淫・射精を見せる行為は、わいせつな行為にあたるとされる。

提供目的で姿態をとらせて児童ポルノを製造したことが証拠上明らかであっても、姿態をとらせて製造罪で有罪にできる(大阪高裁r2.10.2)

 検事の論稿によると、7条4項(h26改正前の7条3項)は「前項に規定するもののほか、」とされているので、提供目的がある場合を含まないと解釈されていますが、大阪高裁r2.10.2は「児童ポルノ法7条4項の「前項に規定するもののほか」との規定ぶりからして同項は同条3項の補充規定であり,両規定に係る罪はいわゆる法条競合の関係に立つと解されるが,これは,ある事実が同条3項に該当する場合に実体法上およそ同条4項の罪が成立し得ないということまでをも意味するものではない」と判示しています。

 奥村は、姿態とらせて盗撮した場合について「ひそかに製造罪」の成立を主張したことがありますが、「4項の罪が成立する場合には同条5項の罪は成立しない」と判示されました。(大阪高裁H28.10.26)
 7条の各製造罪の関係について、高裁がぶれています。

H26改正前
第七条(児童ポルノ所持、提供等)
1児童ポルノを提供した者は、三年以下の懲役又は三百万円以下の罰金に処する。電気通信回線を通じて第二条第三項各号のいずれかに掲げる児童の姿態を視覚により認識することができる方法により描写した情報を記録した電磁的記録その他の記録を提供した者も、同様とする。
2前項に掲げる行為の目的で、児童ポルノを製造し、所持し、運搬し、本邦に輸入し、又は本邦から輸出した者も、同項と同様とする。同項に掲げる行為の目的で、同項の電磁的記録を保管した者も、同様とする。
3前項に規定するもののほか、児童に第二条第三項各号のいずれかに掲げる姿態をとらせ、これを写真、電磁的記録に係る記録媒体その他の物に描写することにより、当該児童に係る児童ポルノを製造した者も、第二項と同様とする。
・・・
現行法(h26改正後)
第七条(児童ポルノ所持、提供等)
2児童ポルノを提供した者は、三年以下の懲役又は三百万円以下の罰金に処する。電気通信回線を通じて第二条第三項各号のいずれかに掲げる児童の姿態を視覚により認識することができる方法により描写した情報を記録した電磁的記録その他の記録を提供した者も、同様とする。
3前項に掲げる行為の目的で、児童ポルノを製造し、所持し、運搬し、本邦に輸入し、又は本邦から輸出した者も、同項と同様とする。同項に掲げる行為の目的で、同項の電磁的記録を保管した者も、同様とする。
4前項に規定するもののほか、児童に第二条第三項各号のいずれかに掲げる姿態をとらせ、これを写真、電磁的記録に係る記録媒体その他の物に描写することにより、当該児童に係る児童ポルノを製造した者も、第二項と同様とする。

島戸純「児童買春,児童ポルノに係る行為等の処罰及び児童の保護等に関する法律の一部を改正する法律について」警察学論集57-08(2004.8.10)
p97
ウ構成要件
第2項に規定するもののほか、児童に第2条第3項各号のいずれかに掲げる姿態をとらせ、これを写真、電磁的記録に係る記録媒体その他の物に描写することにより、当該児童に係る児童ポルノを製造する行為である。
(ア) 姿態をとらせ」
「姿態をとらせ」とは、行為者の言動等により、当該児童が当該姿態をとるに至ったことをいい、強制によることは要しない。いわゆる盗撮については、本項の罪に当たらないm。一般的にそれ自体が軽犯罪法に触れるほか、盗撮した写真、ビデオ等を配布すれば名誉致損の罪も成立し得るし、他人に提供する目的で児童ポルノを製造すれば、第7条第2項、第5項により処罰されることとなる。
(イ) 第1項の目的で児童ポルノを製造した場合は本項の罪からは除かれる。これは単に重複を避けるための技術的なものにすぎない。
・・
p98
オ他罪との関係
他人に提供する目的又は公然陳列目的をもって第7条第3項に規定する児童ポルノの製造行為を行った場合、第7条第3項は、第2項に規定するものを除いているので、他人に提供する目的等があった場合には、その第3項の犯罪は成立しない。
なお、第2項は、第5項に該当する場合を含むものであり、第3項においては、第2項に規定する場合のみを除けば、当然に第5項に該当する場合も除くこととなるものであるから、第3項において、第5項に該当する場合を除くこととはしなかったものである。
・・・・・・


阿部健一検事「児童買春・ポルノ禁止法及び人身売買罪等の人身の自由を侵害する行為についての犯罪事実等のポイント」捜査研究No.662p3(2006.8.5)
改正前の法7 条1 項の「頒布」販売」「業として貸与」は,法7 条1 項の提供に含まれると解される。

h26改正で新説されたひそかに製造罪でも、「いずれにも該当しない場合のみ,本条項の盗撮による児童ポルノ製造罪が成立する。」とされています。

坪井麻友美「児童買春・児童ポルノに係る行為等の処罰及び児童の保護等に関する法律の一部を改正する法律について」法曹時報 第66巻11号
ウ他の製造罪との適用関係
本条項は「前2項に規定するもののほか」と規定しており,第7条第3項の提供目的製造罪と同条第4項の「姿態をとらせ」製造罪のいずれにも該当しない場合のみ,本条項の盗撮による児童ポルノ製造罪が成立する。
なお,不特定若しくは多数の者に提供し,又は公然と陳列する目的がある場合には, より法定刑の重い同条第7項の罪が成立する。

阪高裁r02.10.2
判決
主文
原判決を破棄する。
理由
本件控訴の趣意は,弁護人奥村徹作成の控訴趣意書及び控訴趣意補充書に各記載のとおりであるから,これらを引用するが,理由不備,理由齪鵬訴訟手続の法令違反,法令適用の誤り,量刑不当の各主張である。
3原判示第4の事実に関する理由不備,理由齟齬,法令適用の誤りの各主張について
(1)論旨は,児童ポルノの製造に係る行為について児童ポルノ法7条3項の罪が成立する場合には,同行為が同条4項の罪に該当する場合であっても,法条競合により同項の罪は成立せず,同条3項の罪が成立しないことが同条4項の罪の構成要件になるという解釈を前提に,原判決が原判示第4の事実について,①(罪となるべき事実)の項において,同条3項の罪が成立しないことを摘示しなかったことは理由不備の違法に当たり,②提供目的により本件の児童ポルノの製造に及んだ旨の被告人の供述を含む供述調書を(証拠の標目)の項に掲げ,(量刑の理由)の項でも提供目的を認定しながら,(罪となるべき事実)の項で同条4項に係る事実を認定したことは理由齪鋸の違法に当たり,③同条3項の罪が成立する本件の事実関係において同条4項の罪の成立を認めたことは,判決に影響を及ぼすことが明らかな法令適用の誤りに当たる,というのである。
(2)そこで原審記録を調査して検討するに,児童ポルノ法7条4項の「前項に規定するもののほか」との規定ぶりからして同項は同条3項の補充規定であり,両規定に係る罪はいわゆる法条競合の関係に立つと解されるが,これは,ある事実が同条3項に該当する場合に実体法上およそ同条4項の罪が成立し得ないということまでをも意味するものではなく,当該事実に同条3項を適用する場合には,同事実について同条4項の適用が排除されることを意味し,同条3項の罪が成立しないことが同条4項の罪の構成要件になるとは解されない。
したがって,原判決の理由不備の違法をいう論旨は,そのよって立つ解釈自体が採用し得ないから,失当である。
(3)そして,訴因の構成.設定は検察官の合理的な裁量に委ねられており,検察官は,実体的には児童ポルノ法7条3項を構成すると評価し得る行為についても,立証の難易等諸般の事情を考慮して同条4項の訴因により公訴提起することは許容され,裁判所も,当該公訴事実に掲げられた行為について,同条4項の成立に証拠上欠けるところがないのであれば,原則として,その公訴事実に沿ってこれを認定すれば足りるというべきである。

阪高裁H28.10.26
第10,第12及び第13の各2の事実における法令適用の誤りの主張について。
論旨は,第10,第12及び第13の各2の製造行為は,いずれも盗撮によるものであるから,法7条4項の製造罪ではなく,同条5項の製造罪が成立するのに,同条4項を適用した原判決には,法令適用の誤りがある,というものである。
しかしながら,法7条5項は「前2項に規定するもののほか」と規定されているから,同条4項の罪が成立する場合には同条5項の罪は成立しないことが,法文上明らかである。
所論は,法7条5項に「前2項に規定するもののほか」と規定されたのは立法のミスであってこの文言に特段の意味はないとした上で,法7条5項の罪と他の児童ポルノ製造の罪との関係は前者が後者の特別法の関係だと主張する。
しかし,法7条5項の罪が追加された法改正の趣旨を考慮しても所論のように「前2項に規定するもののほか」に意味がないと解する必要はなく,法7条5項の罪が特別法の関係にあるとの所論は,独自の見解であって,採用できない。いずれも法7条4項の罪が成立しているとした原判決の法令適用に誤りはない。

強制わいせつ罪(176条後段)と児童ポルノ製造罪について「検察官及び弁護人は,いずれも刑法54条1項前段の観念的競合として科刑上一罪の関係にあると主張する。」のに併合罪とされた事例(高崎支部r2.2.26)

 東京高裁h30.1.30は、ダビングしてないときは観念的競合としています。
 撮影行為を強制わいせつ罪(176条後段)にも挙げていると、訴因上、重ならないのは、媒体に記録する行為になりますが、撮影=媒体に記録する行為で、記録せずして撮影することはできませんので、なに言ってるのかわかんないですね。

令和 2年 2月26日 
前橋地裁高崎支部
事件名 強制わいせつ、準強制わいせつ、児童買春,児童ポルノに係る行為等の規制及び処罰並びに児童の保護等に関する法律違反被告事件
理由
 (罪となるべき事実)
 第1 被告人は,a小学校●●●の教諭として勤務していたものであるが,平成27年10月下旬頃,群馬県〈以下省略〉同小学校●●●において,生徒であったA(当時○歳。以下「A」という。)が13歳未満であることを知りながら,その着衣を脱がせて乳房を露出させ,その身体に直接楽器(マーチング用キーボード)を装着させた上,その姿態をデジタルカメラを用いて撮影し,もって13歳未満の女子に対し,わいせつな行為をした。(令和元年10月16日付け起訴状記載公訴事実)
 第2 被告人は,b中学校(以下「本件中学校」という。)●●●の教諭として勤務していたものである(第3以下も同様である。)が,平成30年9月13日,●●●本件中学校●●●において,●●●生徒でB(当時○歳。以下「B」という。)が●●●教諭である被告人の指示,指導に抵抗することが著しく困難であったことに乗じ,Bに対し,その水着を脱がせ,乳房及び臀部を露出させ,その臀部を手指で触り,さらに,同人の胸部に直接メジャーを巻き付けさせた上,その姿態をデジタルカメラを用いて撮影し,もって人の抗拒不能に乗じてわいせつな行為をした。(令和元年11月15日付け起訴状記載公訴事実のうち準強制わいせつに係る部分)
 第3 被告人は,前記第2の日時場所において,Bが18歳に満たない児童であることを知りながら,前記第2のとおり,Bに対し,その水着を脱がせ,乳房及び臀部を露出させ,さらに,同人の胸部に直接メジャーを巻き付けさせた姿態をとらせ,これをデジタルカメラを用いて撮影し,その電磁的記録をSDカードに記録させ,もって衣服の全部又は一部を着けない児童の姿態であって,殊更に児童の性的な部位が露出されているものであり,かつ,性欲を興奮させ又は刺激するものを視覚により認識することができる方法により電磁的記録に係る記録媒体に描写することにより,児童ポルノを製造した。(令和元年11月15日付け起訴状記載公訴事実のうち児童ポルノ製造に係る部分)
 第4 被告人は,平成30年11月26日,本件中学校●●●において,前記第2と同様に,Bが●●●教諭である被告人の指示,指導に抵抗することが著しく困難であったことに乗じ,Bに対し,その衣服を脱がせ,乳房,臀部及び陰部を露出させ,その姿態をデジタルカメラを用いて撮影し,もって人の抗拒不能に乗じてわいせつな行為をした。(令和元年8月26日付け起訴状記載公訴事実のうち準強制わいせつに係る部分)
 第5 被告人は,前記第4の日時場所において,Bが18歳に満たない児童であることを知りながら,前記第4のとおり,Bに対し,その衣服を脱がせ,乳房,臀部及び陰部を露出させた姿態をとらせ,これをデジタルカメラを用いて撮影し,その電磁的記録をSDカードに記録させ,もって衣服の全部又は一部を着けない児童の姿態であって,殊更に児童の性的な部位が露出されているものであり,かつ,性欲を興奮させ又は刺激するものを視覚により認識することができる方法により電磁的記録に係る記録媒体に描写することにより,児童ポルノを製造した。(令和元年8月26日付け起訴状記載公訴事実のうち児童ポルノ製造に係る部分)
 第6 被告人は,平成31年2月22日,本件中学校●●●において,前記第2と同様に,Bが●●●教諭である被告人の指示,指導に抵抗することが著しく困難であったことに乗じ,Bに対し,その衣服を脱がせ,乳房等を露出させ,同人の胸部に直接メジャーを巻き付けさせるなどした上,その姿態をデジタルカメラを用いて撮影し,もって人の抗拒不能に乗じてわいせつな行為をした。(令和元年11月20日付け起訴状記載公訴事実のうち準強制わいせつに係る部分)
 第7 被告人は,前記第6の日時場所において,Bが18歳に満たない児童であることを知りながら,前記第6のとおり,Bに対し,その衣服を脱がせ,乳房等を露出させ,同人の胸部に直接メジャーを巻き付けさせるなどした姿態をとらせ,これをデジタルカメラを用いて撮影し,その電磁的記録をSDカードに記録させ,もって衣服の全部又は一部を着けない児童の姿態であって,殊更に児童の性的な部位が露出されているものであり,かつ,性欲を興奮させ又は刺激するものを視覚により認識することができる方法により電磁的記録に係る記録媒体に描写することにより,児童ポルノを製造した。(令和元年11月20日付け起訴状記載公訴事実のうち児童ポルノ製造に係る部分)
 第8 被告人は,平成31年3月20日午前9時50分頃から同日午前10時40分頃までの間に,本件中学校●●●において,前記第2と同様に,Bが●●●教諭である被告人の指示,指導に抵抗することが著しく困難であったことに乗じ,Bに対し,その衣服を脱がせ,乳房,臀部及び陰部を露出させ,同人の身体に直接マスキングテープを巻き付けるなどした上,その姿態をデジタルカメラを用いて撮影し,もって人の抗拒不能に乗じてわいせつな行為をした。(令和元年8月7日付け起訴状記載公訴事実のうち準強制わいせつに係る部分)
 第9 被告人は,前記第8の日時場所において,Bが18歳に満たない児童であることを知りながら,前記第8のとおり,Bに対し,その衣服を脱がせ,乳房,臀部及び陰部を露出させ,同人の身体に直接マスキングテープを巻き付けるなどした姿態をとらせ,これをデジタルカメラを用いて撮影し,その電磁的記録をSDカードに記録させ,もって衣服の全部又は一部を着けない児童の姿態であって,殊更に児童の性的な部位が露出されているものであり,かつ,性欲を興奮させ又は刺激するものを視覚により認識することができる方法により電磁的記録に係る記録媒体に描写することにより,児童ポルノを製造した。(令和元年8月7日付け起訴状記載公訴事実のうち児童ポルノ製造に係る部分)
 第10 被告人は,平成31年3月22日,本件中学校●●●において,前記第2と同様に,Bが●●●教諭である被告人の指示,指導に抵抗することが著しく困難であったことに乗じ,Bに対し,その衣服を脱がせ,乳房,陰部及び臀部を露出させ,その陰部付近を手指で触り,その姿態をデジタルカメラを用いて撮影し,もって人の抗拒不能に乗じてわいせつな行為をした。(令和元年12月9日付け起訴状記載公訴事実のうち準強制わいせつに係る部分)
 第11 被告人は,前記第10の日時場所において,Bが18歳に満たない児童であることを知りながら,前記第10のとおり,Bに対し,その衣服を脱がせ,乳房,陰部及び臀部を露出させる姿態をとらせ,これをデジタルカメラを用いて撮影し,その電磁的記録をSDカードに記録させ,もって衣服の全部又は一部を着けない児童の姿態であって,殊更に児童の性的な部位が露出されているものであり,かつ,性欲を興奮させ又は刺激するものを視覚により認識することができる方法により電磁的記録に係る記録媒体に描写することにより,児童ポルノを製造した。(令和元年12月9日付け起訴状記載公訴事実のうち児童ポルノ製造に係る部分)
 第12 被告人は,平成31年3月25日午後2時43分頃から同日午後2時50分頃までの間,本件中学校●●●において,前記第2と同様に,Bが●●●教諭である被告人の指示,指導に抵抗することが著しく困難であったことに乗じ,Bに対し,そのズボン及びパンツを脱がせ,両足を開かせて陰部を露出させ,その陰部を手指で触るなどした上,その姿態をデジタルカメラを用いて撮影し,もって人の抗拒不能に乗じてわいせつな行為をした。(令和2年2月13日付け訴因等変更請求書による訴因変更後の令和元年7月18日付け起訴状記載公訴事実のうち準強制わいせつに係る部分)
 第13 被告人は,前記第12の日時場所において,Bが18歳に満たない児童であることを知りながら,前記第12のとおり,Bに対し,そのズボン及びパンツを脱がせ,両足を開かせて陰部を露出させる姿態及びその陰部を被告人が手指で触る行為に係る姿態をとらせ,これをデジタルカメラを用いて撮影し,その電磁的記録をSDカードに記録させ,もって衣服の全部又は一部を着けない児童の姿態であって,殊更に児童の性的な部位が露出されているものであり,かつ,性欲を興奮させ又は刺激するもの及び他人が児童の性器等に触る行為に係る児童の姿態であって性欲を興奮させ又は刺激するものを視覚により認識することができる方法により電磁的記録に係る記録媒体に描写することにより,児童ポルノを製造した。(令和2年2月13日付け訴因等変更請求書による訴因変更後の令和元年7月18日付け起訴状記載公訴事実のうち児童ポルノ製造に係る部分)
 第14 被告人は,令和元年5月7日午後2時45分頃から同日午後3時35分頃までの間に,本件中学校●●●において,Bに対し,その背後から抱きついた上,そのブラジャーの中に両手を差し入れてその両乳房を直接もむなどし,もって強いてわいせつな行為をした。(令和元年6月26日付け起訴状記載公訴事実)
 (法令の適用)
 罰条
 第1の行為 平成29年法律第72号附則2条1項により同法による改正前の刑法176条後段
 第2,第4,第6,第8,第10,第12の各行為
 いずれも刑法178条1項,176条前段
 第3,第5,第7,第9,第11の各行為
 いずれも児童買春,児童ポルノに係る行為等の規制及び処罰並びに児童の保護等に関する法律7条4項,2項,2条3項3号
 第13の行為 児童買春,児童ポルノに係る行為等の規制及び処罰並びに児童の保護等に関する法律7条4項,2項,2条3項2号,3号
 第14の行為 刑法176条前段
 刑種の選択
 第3,第5,第7,第9,第11,第13の各罪
 いずれも懲役刑
 併合罪の処理 刑法45条前段,47条本文,10条(刑及び犯情の最も重い第12の罪の刑に加重)
 未決勾留日数の算入 刑法21条
 (罪数に関する補足説明)
 第2と第3,第4と第5,第6と第7,第8と第9,第10と第11,第12と第13の各罪数関係について,検察官及び弁護人は,いずれも刑法54条1項前段の観念的競合として科刑上一罪の関係にあると主張する。しかし,本件のように,被害児童に対し,抗拒不能に乗じて撮影を伴うわいせつ行為をし,児童ポルノを製造した場合,被告人の準強制わいせつ行為と児童買春,児童ポルノに係る行為等の規制及び処罰並びに児童の保護等に関する法律7条4項に触れる行為とは,一部重なり合う点はあるものの,両行為が通常伴う関係にあるとはいえないことや,両行為の性質等に鑑みると,それぞれにおける行為者の動態は社会的見解上別個のものといえるから,両罪は観念的競合の関係にはなく,刑法45条前段の併合罪の関係にあるというべきである。
 (量刑の理由)
 本件は,教諭であった被告人が,勤務先の学校で,生徒2名に対し,わいせつ行為をするなどした事案である。被告人は,教諭という立場を利用し,被害者らの信頼や幼さにつけ込んで犯行に及んだ点で悪質であり,通学先の学校内で被害に遭った被害者ら,特に繰り返し被害に遭ったBに与えた影響を考えると,生じた結果は大きい。被告人は同種行為を繰り返しており,この種の行為について規範意識が欠けていたといえる。犯情は悪く,被害者らの保護者が厳しい感情を有していることも理解できる。
 他方,被告人は事実を認め,被害者らとその家族に対する謝罪の弁を述べており,現在の雇主及び姉は被告人の更生に協力すると述べている。また,被告人は,第14の事実につき,賠償金100万円を支払っていること(ただし,当該時点では,被告人がBに対する他の行為を明らかにしていなかったことに照らすと,評価するにも限度がある。),弁護人に,賠償金として,Bとの関係で200万円を,Aとの関係で122万円を預託していることが認められる。
 そこで,以上の諸事情を考慮して,主文のとおりの量刑をした。
 (求刑 懲役8年)
 前橋地方裁判所高崎支部
 (裁判官 地引広)

被害者に対し,それぞれ脅迫文言を記載したメッセージを送信するなどして脅迫し,これによって被害者らを畏怖させ,被害者らに裸の姿態をとらせて自らこれを撮影させた上,その画像ないし動画データを被告人の携帯電話機に送信させる行為は~その性質上当然に強制わいせつ罪に当たる行為とみることはできず,その該当性を判断するに当たっては,当該事案における具体的状況等に則して強制わいせつ罪に係る構成要件を充足するに足る事実があるか否かを総合的に考慮する必要がある(大阪高裁R02.10.02)

被害者に対し,それぞれ脅迫文言を記載したメッセージを送信するなどして脅迫し,これによって被害者らを畏怖させ,被害者らに裸の姿態をとらせて自らこれを撮影させた上,その画像ないし動画データを被告人の携帯電話機に送信させる行為は~その性質上当然に強制わいせつ罪に当たる行為とみることはできず,その該当性を判断するに当たっては,当該事案における具体的状況等に則して強制わいせつ罪に係る構成要件を充足するに足る事実があるか否かを総合的に考慮する必要があることに加え,原判決が被害者をして画像ないし動画データを送信させるという,それ自体は性的な意味合いがなく強制わいせつには当たらない事実を含まれる。(大阪高裁R02.10.02)
 不利益主張って言われるので、軽く主張したんですが、長々と判示いただきました。
「その性質上当然に強制わいせつ罪に当たる行為とみることはできず,その該当性を判断するに当たっては,当該事案における具体的状況等に則して強制わいせつ罪に係る構成要件を充足するに足る事実があるか否かを総合的に考慮する必要がある」そうですから、強制わいせつ罪で起訴されている事件では、そういう事実を認定してください。


阪高裁令和2年10月2日
1 原判示第1及び第3の各事実に関する法令適用の誤りの主張について
論旨は,原判決が認定した原判示第1及び第3の各事実について,いずれも強制わいせつ罪又は同未遂罪が成立し,このような場合には法条競合により強要罪または同未遂罪が成立しないのに,それらの成立を認めた原判決には,判決に影響を及ぼすことが明らかな法令適用の誤りがある,というのである。
そこで,原審記録を調査して検討するに,強制わいせつ罪にも強要罪にも該当する事実について,強制わいせつ罪が適用された場合,法条競合により強要罪の規定は適用を排除されるが,そのような場合においても実体法上およそ強要罪が成立し得ないことを意味するものではないと解されるところ,以下のとおり,原判決は,原判示第1及び第3の各事実につき,強制わいせつ罪ないし同未遂罪の該当性を認定しながら強要罪ないし同未遂罪の規定を適用したものとみることはできず,その法令適用に何ら誤りは認められない。
すなわち,原判決が認定した原判示第1及び第3の各事実の要旨は,被告人が各被害者に対し,それぞれ脅迫文言を記載したメッセージを送信するなどして脅迫し,これによって被害者らを畏怖させ,被害者らに裸の姿態をとらせて自らこれを撮影させた上,その画像ないし動画データを被告人の携帯電話機に送信させ,又は送信させようとしたが未遂にとどまったというものであるところ,なるほどこれらの事実中には,各被害者を脅迫し畏怖させた上,同人らに裸の姿態をとらせて自ら撮影させ,又はさせようとしたという点では,性的な意味合いを持つ行為が含まれている。
しかし,このような行為がその性質上当然に強制わいせつ罪に当たる行為とみることはできず,その該当性を判断するに当たっては,当該事案における具体的状況等に則して強制わいせつ罪に係る構成要件を充足するに足る事実があるか否かを総合的に考慮する必要があることに加え,原判決が被害者をして画像ないし動画データを送信させるという,それ自体は性的な意味合いがなく強制わいせつには当たらない事実を含めて,これら一連の行為が被害者に義務なき行為を行わせたものとして強要罪ないし同未遂罪に当たる旨認定し,法令の適用欄においてもこれらの罪を適用していることにも照らすと,原判決が強制わいせつ罪ないし同未遂罪に当たる事実を認定しながら,強要罪ないし同未遂罪の規定を適用したものではないことは,原判決の記載自体から明白というべきである。
したがって,原判決が原判示第1及び第3の各事実について,強要罪ないし同未遂罪の規定を適用したことが誤りであるとは認められない。
論旨は理由がない。

名城大学法学部准教授 滝谷英幸「児童の姿態を電磁的記録に係る記録媒体に記録した者が当該電磁的記録を別の記録媒体に記録させて児童ポルノを製造する行為と児童ポルノ規制法7条5項の児童ポルノ製造罪の成否」刑事法ジャーナル64号

名城大学法学部准教授 滝谷英幸「児童の姿態を電磁的記録に係る記録媒体に記録した者が当該電磁的記録を別の記録媒体に記録させて児童ポルノを製造する行為と児童ポルノ規制法7条5項の児童ポルノ製造罪の成否」刑事法ジャーナル64号
 姿態をとらせて製造罪について、複製行為に処罰範囲を広げたのは、押収された複製物を没収するためです。理論的根拠はありません。ひそかに製造罪についても結論は決まっていて、理由は説明できないようです。

第2 複製行為と製造罪,
問題の所在
本件同様、児童ポルノの作成は、対象児童をビデオカメラ等で撮影→ビデオカメラ等に(3)データを記録(以下、このような行為を「1次製造行為」という)→保存・視聴等を容易にするためデータをパソコンのハードディスク等にコピー(以下、このような行為を「複製行為」という)、といった経過をたどることが多い。
ある記録媒体に蔵されたデータを別の記録媒体にコピーすれば新たな児童ポルノが生み出され、それに伴う種々の問題(4)が生じ得るから、複製行為をも製造罪として罰すべきではないか、ということになる。
しかし、特に4項製造罪や5項製造罪においては(5)、複製行為の時点では「姿態をとらせ」るとか「ひそかに」撮影するとかいった行為は存在しない(6)ため、「プラスアルフア」と複製行為の結びつきが認められず、これらの罪は成立しないのではないか、との疑問が生ずるのである。
(5) 3項製造罪・7項製造罪については、一貫して提供目的のもとに1次製造行為と複製行為がなされることが多いためこの問題は比較的生じにくいと思われる。
(6) 5項製造罪については、複製行為を「ひそかに」行った-たとえば、撮影したデータを自宅で「ひそかに」パソコンにコピーしたとして同罪の成立を認める解釈が文理上不可能とまではいえないかもしれない。
しかし、その実質は単純製造の処罰であろう。

・・・・・・・
(2) 製造罪における「プラスアルファ」の意義
処罰の必要性という側面から(1)でみた主張がなされることは理解できる。
しかし、問題は、前述のように、「プラスアルファ」との結びつきが説明できなければ複製行為の処罰が実質的には単純製造の処罰になってしまう、ということである(10)。
この点を検討するには、製造罪において「プラスアルファ」がもつ意味を考える必要があろう(11)。
まず、3項製造罪及び7項製造罪については、提供目的の存在により製造された児童ポルノの流通可能性が高まるという意味で、提供目的は-たとえば私文書偽造罪(刑法159条1項)における行使の目的とパラレルに製造行為の危険性を増大させる主観的違法要素として理解できる(13。
これに対し、4項製造罪と5項製造罪における「プラスアルファ」の意味については、次の2つの方向性が考えられる。
第1は、「姿態をとらせ」たり「ひそかに」撮影したりすることは、それ自体が対象児童の権利を侵害するものであり、それが製造行為自体の-単独では可罰的ではない二侵害性に合算されることで、4項製造罪・5項製造罪として処罰される、という理論構成である(以下、「理論構成A」という)('3X」4o第2は、「姿態をとらせ」て、あるいは、「ひそかに」なされた児童ポルノの作成であることが、何らかの意味で製造行為の評価に影響を及ぼす、という理論構成である(以下、「理論構成B」という)。
「製造罪」の解釈としてはこちらの方が素直といえるかもしれない(前述のような3項製造罪の理解はこれに分類される)。
まず、4項製造罪について、「姿態をとらせ」ることは、行為者が-状況・態様次第で程度の差はあろうが-能動的に児童ポルノの内容を決めることを意味する。
多くの場合、その内容は、より過激な-それゆえ、対象児童への侵害性の大きい(15)ものとなろう。
そうした観点から、「姿態をとらせ」ることが製造行為の侵害性を高めるという理解があり得よう(以下、「理論構成B/4項」という)(16。
また、5項製造罪については、「ひそかに」撮影等をする場合はそうでない場合に比べ児童ポルノの作成が成功する可能性が高まるという意味で、「ひそかに」という要素が製造行為の危険性を高めるという理解が可能であろう(以下、「理論構成B/5項」という)(17。
(3) 複製行為の処罰の可能性さしあたり1次製造行為(のみ)の処罰を念頭に置くならば理論構成A・Bはいずれも成り立ち得ると思われるが、複製行為の処罰との関係ではどうか。
まず、理論構成B/4項では、複製行為の侵害性の大きさは説明できても、条文上、1次製造行為者=複製行為者であることが要求されている点の説明に窮する。
仮に「姿態をとらせ」ることが児童ポルノの内容に影響を及ぼすとすれば、「姿態をとらせ」た上で作成された児童ポルノを複製する行為は1次製造行為と同等の侵害性を有することになるはずであるが、この理は1次製造行為者と複製行為者が一致しない場合にも当てはまってしまうからである。
次に、理論構成B/5項においては、複製行為の時点ではすでに1次製造物が存在しているところ、それが「ひそかに」作成されたものであるか否かは複製行為の評価に影響を及ぼすことはないはずであるから、「ひそかに」という要素と複製行為の結びつきが認められなくなる。
もっとも、このように1次製造行為と複製行為とを各別の2個の行為として把握するのではなく、両行為を「1個の行為」として一体的に把握できるのであれば、「ひそかに」という要素がその「1個の行為」全体と結びつくものと解する1次製造行為が「ひそかに」なされることで、(同行為を含む) 「1個の行為」全体が成功する可能性が高まると考える-ことができるため、複製行為まで含めて5項製造罪により処罰することが可能になろう(なお、1次製造行為者≠複製行為者の場合、〔少なくとも共犯関係が存在しない限り〕両行為を「1個の行為」として一体的に把握することはできないと思われる。
それゆえ、このように「両行為の一体的把握が可能であること」という条件を課すことで、同時に、両行為を同一人物が行ったことも要求されることになる)。
また、理論構成Aにおいては、「プラスアルファ」と製造の両方を行っていなければならないのであるから、1次製造行為者=複製行為者であることが当然に要請される。
もっとも、1次製造行為と複製行為をまったく別個の行為と評価せざるを得ないような状況では「プラスアルファ」と複製行為との結びつきを認めることが難しくなるため、やはり、1次製造行為と複製行為の一体的把握が必要になろう。
以上より、5項製造罪については、理論構成Aによるにせよ理論構成B/5項によるにせよ、1次製造行為と複製行為を「1個の行為」として一体的に把握できる限度において、複製行為をも処罰対象に含めることが可能になる。
その上で、さらに、いかなる根拠で、また、どの範囲で「1個の行為」という評価をなし得るかが問われるのである。
この点については、児童ポルノ法が児童ポルノの代表例として「写真」を挙げている(2条3項柱耆) ことが注目される(18
 すなわち、写真が完成するまでの途中過程(未現像フィルムの作成→現像によるネガの作成→印画紙への焼付け)においても対象児童の姿態を視認できる有体物は介在しており、それも児童ポルノに当たるが、同法は写真ないしそれと同等以上の鮮明さ.容易さで視認できるレベルのものを児童ポルノのいわば「単位」として想定しており、それに対応する形で、そこに至るまでの数次の作業過程を包括して「1個の行為」と理解している、とするのである。
本件に即していうと、ビデオカメラからパソコンのハードディスクに動画データを取り込むことは、写真でいえば印画紙への焼付けに相当する(19)と考えられるため、少なくともこの段階までは「1個の行為」として「ひそかに」という要素との結びつきを肯定できるであろう。
(4) 本決定の評価本件のようなケースを児童ポルノ法が処罰対象としておよそ想定していないとは考えにくいため、一切の複製行為を処罰対象外とすることは妥当ではあるまい。
前述のような説明が可能な範囲で複製行為にも5項製造罪を適用すべきである。
したがって、本決定の思考過程は明らかではないものの鋤、その結論には賛成できる。
ただし、仮に、本決定が、どの範囲であれば「1個の行為」と評価できるか、という視点に基づく限定を一切設けず、(1次製造行為者=複製行為者である限り) 1次製造行為とは完全に別個の行為と評価すべき複製行為についてまで5項製造罪が成立するという立場であるなら、疑問がある(20)。
(たきや.ひでゆき)

監護者わいせつ罪の実刑事案(佐賀地裁R2.6.11)

 監護者わいせつ罪の科刑状況をみると、1回だけなら執行猶予になるんですが、「自らの性的欲求を優先し,被害者に対して同様の行為を繰り返す中で本件犯行に及んでおり,」ということで、起訴されてない余罪があると考慮されて実刑になります。
 ということは、弁護人は、訴因では1回のわいせつ行為とされていても、余罪の回数・期間を争うことになります。児童淫行罪の実務と同様です。

監護者わいせつ被告事件
佐賀地方裁判所令和2年6月11日

       主   文

 被告人を懲役1年8月に処する。

       理   由

 【罪となるべき事実】
 被告人は,別紙の2記載の者(以下「A」という。)の実母と婚姻してその娘であるAと養子縁組をし,同人と同居してその寝食の世話をし,その指導・監督をするなどして,同人を現に監護する者であるが,同人が18歳未満の者であることを知りながら,同人にわいせつな行為をしようと考え,令和元年11月中旬頃,別紙の3記載の当時の被告人方において,就寝するために横たわっているAの着衣の中に手を差し入れて直接その胸をもみ,もって,同人を監護する者であることによる影響力があることに乗じてわいせつな行為をした。
 【法令の適用】
罰条       刑法179条1項,176条
訴訟費用の不負担 刑事訴訟法181条1項ただし書
 【量刑の理由】
 被告人は,被害者が就寝しているときを狙い,本件犯行が発覚しても薬を塗布していただけであるとの弁解ができるようにクリーム等を準備して,被害者の背中等にクリームを塗布しながら本件犯行に及んでおり,わいせつ行為の態様も直接的であり,本件犯行は巧妙で悪質なものである。被害者は本件被害を受けた際,被告人に怒られることを恐れて,寝たふりをして耐え,その後もなかなか周囲に被害を打ち明けられずに悩んでいたのであり,被害者が感じた屈辱,恥ずかしさ,恐怖は大きい。被告人は,被害者が小学校低学年のころから養父としてその監護をしてきたものであり,本来であれば,被害者の心身の健全な発達のために同人を守るべき立場であるにもかかわらず,自らの性的欲求を優先し,被害者に対して同様の行為を繰り返す中で本件犯行に及んでおり,被告人のことを父親として信頼してきた被害者の心を深く傷付け,今後の心身の健全な発達にも深刻な影響を及ぼしかねない点は,強い非難に値する。
 このような本件犯行の重さを考慮すれば,被告人の刑事責任もこれに応じて重いというべきであり,執行猶予を付するのが相当な事案とはいえず,実刑が相当である。
 なお,弁護人は,被告人は本件犯行時,被害者が就寝していると思っており,監護者としての影響力を利用しようとの積極的な意図までは有していなかったから,この点は被告人にとって有利な情状として考慮すべきであると主張する。
 しかしながら,本罪においては,監護者として有する一般的かつ継続的な影響力がある状態でわいせつ行為に及ぶことが非難されるべきであるから,前記影響力を基礎付ける事情を認識していれば,ことさらに前記影響力を利用しようとの積極的・具体的な意図を有していなかったことをもって,刑を軽くすべき事情であると評価することは相当でない。被告人は,被害者が自己の養女であり同居して指導監督している等の,前記影響力を基礎付ける事情を認識していることはもちろん,本件犯行時においても,被害者が目を覚ますかもしれないとの認識も有しながら犯行に及んでいたことが認められ,被告人の主観面について刑を軽くすべき事情があるとはいえないから,この点についての弁護人の主張は採用することができない。
 他方,被告人が前科を有しないこと,被害者の母親との離婚及び被害者との離縁が成立し,被告人の母親宅に転居して生活環境を変え,被害者に対して総額360万円を今後10年間かけて支払う旨の示談をするなど,再犯防止と被害弁償に向けた意欲を示していることを,被告人にとって酌むべき事情として考慮し,主文の期間の刑とする。
(求刑 懲役2年6月)
  令和2年6月11日
    佐賀地方裁判所刑事部
           裁判官  西村彩子

検察官が「証拠に基づかない弁論だ」と文句付けた「大法廷h29.11.29を受けて青少年条例の「わいせつ」の定義も再定義が必要だという主張」

 判例を立証しろ言われましてもね。

 青少年の健全育成という保護法益からみても、行為者の性的意図は不要だと思うので、従前の定義(刑法176からの借用)では通用しないと思うんですよ。

 


 本件条例は
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としており、「淫行」については、判例最判S60.10.23)により「青少年を誘惑し、威迫し、欺罔しまたは困惑させる等その心身の未成熟に乗じた不当な手段により行う性交または性交類似行為のほか、青少年を単に自己の性的欲望を満足させるための対象として扱つているとしか認められないような性交または性交類似行為をいうものと解すべきである。」と合憲限定解釈がなされているのであるから、「わいせつな行為」についても同様の限定解釈が必要である
 条例の「わいせつ行為」の定義に関する判例を見ると、判例も刑法176条と同義と考えているようである。
 しかし、いずれも最判S60.10.23以前のものであって、限定解釈を加えていない点で相当でない。
 また、最判S60.10.23のように条例の「淫行」に性交類似行為を含めるとすれば、条例の「わいせつな行為」からは性交類似行為を除外する必要があるから、刑法とは別に定義する必要がある。

①東京高裁s39.4.22
昭和39年 4月22日 東京高裁 昭38(う)2587号
裁判区分 判決  文献番号 1964WLJPCA04220007
◆埼玉県青少年愛護条例一〇条一項の合憲性(合憲)◆同条例にいう「みだらな性行為又はわいせつな行為」の意義.
出典  高検速報 1182号

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②大阪高裁s48.12.20

 

 

 

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高松地裁S43.5.6

 

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最高裁判例解説
 高橋判事は最判S60.10.23の判例解説で、「わいせつな行為」についても判決の影響があるとされているが、最判の事例は性行為の事案であるから、「わいせつ行為」についての解釈は変更されていない。再定義が必要である。
最高裁判所判例解説
刑事篇昭和60年度201頁
最高裁判所大法廷判決昭和57年(あ)第621号
福岡県青少年保護育成条例違反被告事件
昭和60年10月23日高橋省吾

 

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中尾佳久 前最高裁判所調査官「ひそかに児童買春,児童ポルノに係る行為等の規制及び処罰並びに児童の保護等に関する法律2条3項各号のいずれかに掲げる児童の姿態を電磁的記録に係る記録媒体に記録した者が当該電磁的記録を別の記録媒体に記録させて児童ポルノを製造する行為と同法7条5項の児童ポルノ製造罪の成否」ジュリスト1549号

 ひそかに製造というのは、法文上は撮影者以外の者による単純複製行為も含みうるところ、最決R1.11.12で、盗撮者・撮影者が複製する場合だけが処罰されると判示した点に意味があると考えています。

Ⅱ、審理の経過
1審において, 弁護人は、事実関係を争わず, 被告人は懲役2年, 4年間執行猶予,付保護観察に処せられた。

被告人は控訴し・理由不備訴訟手続の法令違反,法令適用の誤り,事実誤認,量刑不当と
多岐にわたる主張をしたところ, 原判決は,職権判断として, 1審判決は審判の請求を受けない事件について判決をしたから破棄を免れないとした上で,①事実について児童ポルノ製造罪は成立しないとの所論に対しては, 「ひそかに同法2条3項3号の姿態を電磁的記録に係る記録媒体に描写した(温泉施設の盗撮がこれに当たること明らか)者が当該電磁的記録を別の記録媒体に保存させて(被告人方での外付けハードディスクへの保存がこれに当たること明らか)児童ポルノを製造する行為は同法7条5項に当たる」との判断を示し,被告人を懲役2年,4年間執行猶予,付保護観察に処した。
これに対し,被告人は,①事実について児童ポルノ製造罪は成立しないなどと主張して上告した。


Ⅲ5項製造罪の立法趣旨等
5項製造罪は,盗撮により児童ポルノを製造する行為が,通常の生活の中で誰もが被害児童になり得ることや,発覚しにくい方法で行っている点で巧妙であることなど, その行為態様の点において違法性が高く, 当該児童の尊厳を害する行為であるとともに, 児童を性的行為の対象とする風潮が助長され,抽象的一般的児童の人格権を害する行為であり,流通の危険性を創出する点でも非難に値することから,新設されたものである。
5項製造罪においても, 4項製造罪と|司様,複製の問題が生じることが予想されたところ,立法関与者の解説を見ると, 5項製造罪は,手段の限定がされているため, 盗撮により製造された児童ポルノを後に複製する行為は,基本的に同項の処罰対象ではないと考えられるが,少なくとも,撮影者本人による「製造」として予定される一連の行為までもが5項製造罪の対象から除外されるものではないと考えられるとの見解が示され, 平成18年判例が紹介されている(坪井麻友美「児童買春児童ポルノに係る行為等の処罰及び児童の保護等に関する法律の一部を改正する法律について」曹時66巻11号3045頁)。

Ⅳ本決定について
本決定は, 「ひそかに児童ポルノ法2条3項各号のいずれかに掲げる児童の姿態を電磁的記録に係る記録媒体に記録した者が, 当該電磁的記録を別の記録媒体に記録させて児童ポルノを製造する行為は, 同法7条5項の児童ポルノ製造罪に当たる」と判示し, 原判決の判断を是認しているが, 平成18年判例と同じような表現を用いていることから, 同判例と同様盗撮をして製造を行った者が, その電磁的記録を別の記録媒体に複写するなどして二次的製造行為に及んだ場合には, 「ひそかに児童の姿態を描写することにより児童ポルノを製造した」と法的に評価できるとして, 5項製造罪の成立を認めたものと思われる。
本決定は, その理由を示していないが, 盗撮行為をする者については,撮影後盗撮データを保存管理して自己利用するため. 当該盗撮に係る電磁的記録を他の記録媒体にコピーするなどして管理することが当然想定されることなどを考盧したのではないかと考えられる。
5項製造罪は, 平成18年判例後の法改正で新設されたものであるが, 4項製造罪と同様の論点が残る形の立法がされていた。
このことを踏まえると,本決定は, 5項製造罪に関する法令解釈を示したものとして実務上重要なものと考えられる。