児童ポルノ・児童買春・児童福祉法・監護者性交・強制わいせつ・青少年条例・不正アクセス禁止法・わいせつ電磁的記録記録被告事件弁護人 奥村徹弁護士の見解(弁護士直通050-5861-8888 hp3@okumura-tanaka-law.com)

性犯罪・福祉犯(監護者性交罪・強制わいせつ罪・児童ポルノ・児童買春・青少年条例・児童福祉法)の被疑者(犯人側)の弁護を担当しています。専門家向けの情報を発信しています。

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実父である被告から,被告宅で暴行を用いてわいせつな行為をされたり,姦淫されたりしたと主張して,被告に対し,不法行為(709条)を理由とする損害賠償請求権に基づき,慰謝料500万円等の合計605万円のうち385万円及びこれに対する不法行為のあった日である平成28年5月14日から支払済みまで民法所定の年5分の割合による遅延損害金の支払を求める事案につき、慰謝料350万円が認容された事例(東京地裁r2.3.27)

実父である被告から,平成28年5月14日に被告宅で暴行を用いてわいせつな行為をされたり,姦淫されたりしたと主張して,被告に対し,不法行為(709条)を理由とする損害賠償請求権に基づき,慰謝料500万円,文書費5000円,治療費10万1050円,交通費1万3230円,将来の治療費交通費等38万0720円,弁護士費用55万円の合計605万円のうち385万円及びこれに対する不法行為のあった日である平成28年5月14日から支払済みまで民法所定の年5分の割合による遅延損害金の支払を求める事案につき、慰謝料350万円が認容された事例(東京地裁r02.03.27)


原告 
X 
同訴訟代理人弁護士 
中根洋一ほか 
東京都荒川区〈以下省略〉 
  
被告 
Y 

主文

 1 被告は,原告に対し,385万円及びこれに対する平成28年5月14日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。
 2 訴訟費用は被告の負担とする。
 3 この判決は,第1項に限り,仮に執行することができる。
 
 
事実及び理由

第1 請求
 1 主文第1項と同旨
 2 仮執行宣言
第2 事案の概要
 1 本件は,原告が,実父である被告から,平成28年5月14日に被告宅で暴行を用いてわいせつな行為をされたり,姦淫されたりしたと主張して,被告に対し,不法行為(709条)を理由とする損害賠償請求権に基づき,慰謝料500万円,文書費5000円,治療費10万1050円,交通費1万3230円,将来の治療費交通費等38万0720円,弁護士費用55万円の合計605万円のうち385万円及びこれに対する不法行為のあった日である平成28年5月14日から支払済みまで民法所定の年5分の割合による遅延損害金の支払を求める事案である。
 2 前提事実
  (1) 原告(平成2年○月○日生の女性)は,平成26年2月24日,A(A)と婚姻した。原告とAとの間には長男,長女及び二女(平成26年○月○日生)の3人の子がいる(甲9)。
  (2) 被告(昭和37年○月○日生の男性)は,その妻(B)との間に原告を含む3人の子をもうけたが,平成27年1月8日,Bと離婚した(甲9,原告本人)。
  (3) 原告は,長男,長女を祖母宅に預けた上,平成28年5月13日夜,二女を連れて被告宅に遊びに来たが,同月14日午前3時前後,二女を連れて被告宅を出た(甲26ないし甲28)。
  (4) 原告は,平成28年10月25日,尾久警察署長に対し,被告から,同年5月14日午前0時頃から午前1時56分頃までの間,被告宅で,暴行を用いてわいせつな行為をされたり,姦淫されたりしたことを告訴事実として被告を強制わいせつ,強姦の罪で告訴したが(甲1),被告は,平成29年5月16日,不起訴処分を受けた(弁論の全趣旨)。

準強制わいせつ2件で執行猶予(神戸地裁r2.7.15)

準強制わいせつ被告事件(神戸地裁r2.7.15)

裁判年月日  裁判所名 神戸地裁 裁判区分 判決
事件番号 令2(わ)232号 ・ 令2(わ)265号
事件名 準強制わいせつ被告事件
文献番号 2020WLJPCA07156003

神戸地裁令和 2年 7月15日
準強制わいせつ被告事件
主文
 被告人を懲役3年に処する。
 この裁判確定の日から4年間その刑の執行を猶予する。
理由
 各被害者の氏名等及びその呼称は別紙のとおり。(別紙省略)
 (犯罪事実)
 被告人は,神戸市〈以下省略〉医療法人財団a・b病院に看護師として勤務
していたものであるが,同じく同病院に看護助手として勤務していた分離前の
相被告人C及び看護師として勤務していた分離前の相被告人Dと共謀の上,入
院中の被害者A(当時62歳)及び被害者B(当時59歳)が,いずれもその
精神障害のため心神喪失の状態にあることに乗じて,両名にわいせつな行為を
しようと考え,以下の各行為を行った。
 第1 平成30年10月31日午前0時16分頃から同日午前0時20分頃
までの間に,同病院B棟4階病室において,~~もって人の心神喪失に乗じて
わいせつな行為をした。
 第2 同日午前5時48分頃,同病院B棟4階病室において,~~もって人
心神喪失に乗じてわいせつな行為をした。
 (証拠)

 (適用法令)
 罰条 いずれも刑法60条,178条1項,176条前段
 併合罪の処理 刑法45条前段,47条本文,10条(犯情の重い第2の罪
の刑に加重)
 執行猶予 刑法25条1項
 (量刑事情)
 被告人は,病院で看護師として勤務していたところ,共に夜勤をしていた看
護師や看護助手である共犯者らによる入院患者らへの虐待を見聞きし,更に被
害者らに接吻をさせようとしたのに対し,面白そうだと思いこれに加わること
とし,自らは被害者Bの顔面を押さえるなどして判示第1の犯行に及び,その
後,共犯者らが今度は陰茎にジャムを塗ってなめさせるということを話してい
るのを聞いて興味を持ち,再びこれに加わることとして,自らは被害者Aの足
を両手で押さえるなどして判示第2の犯行に及んだものである。いずれも,被
害者らの人間としての尊厳を踏みにじる非道な犯行であって,看護師としての
職務中に重度の精神障害を有する入院患者らに対してこのような卑劣な犯行を
行ったということ自体をみれば,実刑に処することを念頭に置きつつ評価すべ
き事案であるといえる。
 一方で,被告人が共犯者らの行為に加担したこと自体は安易としかいいよう
がないものの,主導的に犯行を行ったのは共犯者らであって,被告人には従属
的な面があったことは否定できないこと,被告人自身は本件まで患者に対する
虐待を行っていたものではなく,各犯行も共犯者らと夜勤を共にした一夜の間
のみに行われ,その後は自己の行為の問題を自覚して患者らの虐待に加担しな
いようにしていること,被告人が,被害者らの関係者に謝罪の手紙を送ったり
被害弁済を申し入れたりするなどした上で(なお,各関係者とも弁済を受け入
れなかったことから,全国精神保健福祉会連合会に50万円を寄付してい
る),公判廷でも,今後は一生看護師としての仕事はしないと述べるなどして
反省の態度を示していること,被告人の父親が当公判廷に出廷して今後の監督
を誓っていること,これまで前科がないことなどの事情もあるので,これらを
考慮の上,今回はその刑の執行を猶予することとし,主文のとおり量刑した。
 (求刑―懲役3年)
 神戸地方裁判所第2刑事部
 (裁判官 小倉哲浩)

AVマーケットの管理者3名はわいせつ頒布罪で執行猶予(名古屋地裁R02.11.10、R02.10.22)

AVマーケットの管理者3名はわいせつ頒布罪で執行猶予(名古屋地裁R02.11.10、R02.10.22)

 知らなかったということで児童ポルノ罪は逃れて、わいせつ電磁的記録だけで起訴されて、数件あっても包括一罪なので、「懲役2年罰金250万円」を上限として量刑されたようです。

第一七五条(わいせつ物頒布等)
 わいせつな文書、図画、電磁的記録に係る記録媒体その他の物を頒布し、又は公然と陳列した者は、二年以下の懲役若しくは二百五十万円以下の罰金若しくは科料に処し、又は懲役及び罰金を併科する。電気通信の送信によりわいせつな電磁的記録その他の記録を頒布した者も、同様とする。
2有償で頒布する目的で、前項の物を所持し、又は同項の電磁的記録を保管した者も、同項と同様とする。

わいせつサイト、2人有罪 画像販売・システム開発 名古屋地裁 【名古屋】
2020.11.11 朝日新聞
 児童ポルノを含むアダルト動画販売サイトの運営者らが摘発された事件で、わいせつ電磁的記録等送信頒布罪に問われた会社役員ら2人の判決が10日、名古屋地裁であった。辛島明裁判官は「サイトを立ち上げ、重要な地位にあった」と述べ、A被告に懲役2年執行猶予5年、罰金200万円(求刑懲役2年、罰金200万円)を言い渡した。

 判決によると、A被告は昨年6月、海外を拠点とするサイト「AV Market(エーブイマーケット)」でわいせつな画像データを販売した。

 サイトのシステム開発を担当したB被告は、懲役1年6カ月執行猶予3年、罰金150万円(求刑懲役1年6カ月、罰金150万円)とした。
・・・
サイト運営者、猶予付き判決 わいせつ画像販売 名古屋地裁 【名古屋】
2020.10.23 朝日新聞
 海外を拠点としたアダルト動画販売サイト「AV Market(エーブイマーケット)」の運営者らが摘発された事件で、わいせつ電磁的記録等送信頒布罪に問われたアルバイトC被告の判決公判が22日、名古屋地裁であった。板津正道裁判官は懲役1年執行猶予3年、罰金100万円(求刑懲役1年、罰金100万円)を言い渡した。
 同サイトをめぐっては、愛知県警が出品者や広告会社役員を検挙し、購入者も捜査している。一連の事件で判決が出るのは初めて。
 判決によると、本間被告は昨年6月21日、他の運営者らと共謀し、女性のわいせつな画像データを同サイト上で販売した。板津裁判官は「海外に拠点を置くなど巧妙かつ組織的な犯行」と指摘。一方で「起訴された共犯者の中で最も地位は低く、分け前も少ない」として執行猶予とした。C被告ら男3人は6月、同サイトを運営したとして児童買春・児童ポルノ禁止法違反などの疑いで逮捕された。3人は同罪で不起訴となり、わいせつ電磁的記録等送信頒布罪で起訴された。他の運営者2人の判決は11月10日の予定。(高絢実)

児童ポルノ要求行為(兵庫県青少年愛護条例違反)で罰金60万円(伊丹簡裁r2.11.2)という報道

 要求罪の法定刑は30万円ですから、他の青少年条例違反があったと思われます。
 検察協議において、「困惑」という要件は意味が無いという検事正のコメントがあります。

兵庫県少年愛護条例
児童ポルノ等の提供の求めの禁止)
第21条の3
何人も、青少年に対し、当該青少年に係る児童ポルノ等(児童買春、児童ポルノに係る行為等の規制及び処罰並びに児童の保護等に関する法律第2条第3項に規定する児童ポルノ及び同項各号のいずれかに掲げる姿態を視覚により認識することができる方法により描写した情報を記録した電磁的記録(電子的方式、磁気的方式その他人の知覚によっては認識することができない方式で作られる記録であって、電子計算機による情報処理の用に供されるものをいう。以下同じ。)その他の記録をいう。以下同じ。)の提供を求めてはならない。


【要旨】
この条は、いわゆる児童ポルノの自画撮り勧誘行為を禁止したものである。
【解説】
l この条は、スマートフォン等の普及に伴い、SNSに代表されるコミュニティサイト等を通じて知り合った相手に、青少年が自身の裸や下着姿を撮影させられた上、メール等で送らされる事案が後を絶たないことを受け、平成29年の改正により新設されたものである。
2 「何人も」とは、前条の解説のとおりである。
3 勧誘行為は、インターネットを通じて行われることがほとんどであるが、インターネットを通じて犯行が行われた場合、行為者が勧誘行為を行った場所のみならず、被害者となる青少年が勧誘行為を受けた場所である結果発生地も犯罪地となる。
よって、コミュニティサイトやメールなどを利用して県外から県内の青少年に提供を求める行為、県内から県外の青少年に提供を求める行為についても規制の対象となる。
4 「当該青少年に係る児童ポルノ等」とは、いわゆる「自画撮り画像」をいう。
児童ポルノ等」には、写真や電磁的記録に係る記録媒体のほか、メール等に添付する画像データも含まれる。
5 本条の規定に違反して、当該青少年に対し、不当な手段(「欺き、威迫し又は困惑させる方法」及び「財産上の利益を供与し、又はその供与の申込み若しくは約束をする方法」)により、当該青少年に係る 児童ポルノ等の提供を求めた場合は、 30 万円以下の罰金又は科料に処せられる。
(第 30 条第 5 項第 12 号)
6 本条は、不当な手段を用いた要求行為のみを禁止しているものではなく、恋愛関係にある場合や冗談等であっても、児童ポルノ等のやり取りにより、インターネット上への画像の流出やリベンジポルノに繋がり、青少年を将来に渡って苦しめる要因となる危険性が否定できないことから、青少年に対して児童ポルノの自画撮り画像を要求する行為は、いかなる態様であっても禁止するものである。ただし、罰則については前述の不当な手段によるもの以外は適用しない。


(罰則)
第30条
5 次の各号のいずれかに該当する者は、30万円以下の罰金又は科料に処する。
(12)第21条の3の規定に違反して、次に掲げる方法により、青少年に対し、当該青少年に係る児童ポルノ等の提供を求めた者
ア青少年を欺き、威迫し又は困惑させる方法
イ青少年に対し、財産上の利益を供与し、又はその供与の申込み若しくは約束をする方法
6 第17条第1項(同項第4号又は第9号に係る部分を除く。) 、第20条第1項若しくは第2項、第21条第1項若しくは第2項、第21条の2、第21条の3又は第24条第2項の規定に違反した者は、当該青少年の年齢を知らないことを理由として、第1項又は前3項の規定による処罰を免れることができない。ただし、過失のないときは、この限りでない。

解説
(16)青少年を欺き、威迫し又は困惑させる方法により当該青少年に係る児童ポルノ等を求めた者
「欺く」とは、事実および評価についての人の判断に誤りを生じさせる行為をいう。
「威迫」とは、脅迫に至らない程度の人に不安を生ぜしめるような行為をいう。
「困惑させる」とは、相手方を困らせて戸惑わせる(不安にさせる) ことをいう。
(17)青少年に対し、財産上の利益を供与し、又はその供与の申込み若しくは約束をする方法により当該青少年に係る児童ポルノ等を求めた者
「財産上の利益」とは、金品だけでなく、金員貸与、債務免除などを含む。
「過失のないとき」とは、単に青少年に年齢、生年月日等を確認しただけ、又は身体の外観的発育状況等から判断しただけでは足りず、学生証運転免許証等の公信力のある書面、又は当該青少年の父兄に直接問い合わせるなど、その状況に応じて通常可能とされるあらゆる方法を用いて青少年の年齢を確認している場合をいう。

伊丹 わいせつの教諭 罰金60万円命令=兵庫
2020.11.03 読売新聞
 元教え子の少女(当時17歳)にわいせつな行為の動画をSNSで送るよう要求したなどとして、県青少年愛護条例違反容疑で宝塚署に逮捕された容疑者について、伊丹区検は2日、同条例違反で伊丹簡裁に略式起訴した。簡裁は同日、罰金60万円の略式命令を出した。

淫行(京都府青少年の健全な育成に関する条例)容疑について、「性行為はしたが、性欲を満たす目的ではない」と弁解しているという報道。

 京都府の青少年条例違反というのも珍しいです。
「青少年に対し、~~~、精神的、知的未熟若しくは情緒的不安定に乗じて、淫行又はわいせつ行為をしてはならない。」という法文なのに、

「淫行」とは、広く青少年に対する性行為一般をいうものと解すべきでなく、①青少年を誘惑し、威迫し、欺罔し又は困惑させる等その心身の未成熟に乗じた不当な手段により行う性交又は性交類似行為のほか、②青少年を単に自己の性的欲望を満足させるための対象として扱つているとしか認められないような性交又は性交類似行為をいうものと解するのが相当である。(最大判S60.10.23)

という判例があるので、被疑事実に「単に自己の性的欲望を満足させるため」が挙げられています。
 真剣交際でも婚姻関係でもナンパでも、性交時に「単に自己の性的欲望を満足させるため」というのは変わらないので、なんの縛りになるのかわかりませんし、刑法では、強制わいせつ罪の関係では性的意図不要で(大法廷H29.11.29)、強制性交の関係でも不要なので、青少年条例との整合性はどうかなと見ています。




16歳であれば、性的同意年齢で婚姻可能年齢なので、メール等の連絡状況を援用して、「精神的、知的未熟若しくは情緒的不安定に乗じて、」を否認するのも有効でしょう。

京都府青少年の健全な育成に関する条例解説R01
(淫行及びわいせつ行為の禁止)
第21条
1何人も、青少年に対し、金品その他財産上の利益若しくは職務を供与し、若しくはそれらの供与を約束することにより、又は精神的、知的未熟若しくは情緒的不安定に乗じて、淫行又はわいせつ行為をしてはならない。
2 何人も、青少年に対し、淫行又はわいせつ行為を教え、又は見せてはならない。
【解説】
1 本条は、青少年に対し、淫行又はわいせつ行為をすること及び当該行為を教え、又は見せることを禁止し、刑法その他関係法令では規制し得ない反社会的行為から青少年を保護しようとするものである。
なお、淫行罪及びわいせつ行為罪は、相手方たる青少年の(形式的な意味での) 同意又は承諾がある場合にも成立する。
この点で刑法第177条の強姦罪及び第176条の強制わいせつ罪が、13歳以上の者については暴行又は脅迫による等自由な意思決定ができない状態の下での行為だけを規制対象にしているのとは異なる。
注) 『脅迫」とは、人に恐怖心を生じさせるに足る害悪を加える旨を通告することであり、相手方の反抗を著しく困難ならしめる程度のものをいう。
2 「淫行」とは、青少年を誘惑し、威迫し、欺罔し又は困惑させる等その心身の未成熟に乗じた不当な手段により行う性交又は性交類似行為のほか、青少年を単に自己の性的欲望を満足させるための対象として扱っているとしか認められないような性交又は性交類似行為をいう。
3 「わいせつ行為」とは、いたずらに性欲を刺激興奮せしめたり、その露骨な表現によって健全な常識ある一般社会人に対し、性的に差恥嫌悪の情をおこさせる行為をいう。
4 「金品その他財産上の利益若しくは職務を供与し、若しくはそれらの供与を約束することにより」とは、青少年に対し、金銭や物品を与え、又は職務(仕事) を世話し、あるいはそうしたことを約束することにより、淫行又はわいせつ行為を行うことをいう。
5 「その他財産上の利益」の供与とは、債務の免除(借金の棒引き)や債権の譲渡等をいう。
また、「約束する」とは、行為者の申し出に対する青少年の黙示の認容で足り、かつ、その約束が結果的に履行されたかどうかを問わない。
6 「精神的、知的未熟若しくは情緒不安定に乗じて」とは、性的な道徳観が十分確立していない青少年の未熟さや一時の感情におぼれやすい青少年の情緒的不安定を利用して、誘惑、威迫、立場利用、欺岡といった手段を用いて、あるいは、青少年自身の困惑、自棄等につけこんで、淫行又はわいせつ行為を行うことをいう。
注l) 『威迫』とは、人をおどして従わせることであるが、その程度が脅迫までに至らないものをいう。
2) 『欺岡』とは、人をだますことをいう。
『自棄』とは、自暴自棄、やけくそになることをいう。
7 第2項は、第1項が青少年の身体に向けてなされる淫行又はわいせつ行為の禁止を規定しているのに対し、青少年の意識面に向けて淫行又はわいせつ行為による悪影響を与えることを禁止するものである。
なお、第2項の罪は、公然性(不特定又は多数の人が知り得る状態にあること) の有無を問わず成立し、この点で刑法第174条の公然わいせつ罪とは構成要件を異にする。
8 第2項の「教え」とは、淫行又はわいせつ行為の方法等を教示することであり、単なるわい談等の漠然としたものではなく、具体的、直接的に教えることである。
また、「見せ」とは、自己又は他人の淫行又はわいせつ行為を直接的に見せることをいう。
【関係法令】○刑法第174条(公然わいせつ) 、第175条(わいせつ物頒布等) 、第176条(強制わいせつ) 、第177条(強制性交等) 、第178条(準強制わいせつ及び強制性交等) 、第182条(淫行勧誘)○売春防止法第1条~第13条(第1章総則~第2章刑事処分)○軽犯罪法第1条(罪)○児童福祉法第34条(児童保護のための禁止行為)○児童買春、児童ポルノに係る行為等の規制及び処罰並びに児童の保護等に関する法律第2条(定義) 、第4条(児童買春) 、第5条(児童買春周旋) 、第6条(児童買春勧誘) 、第8条(児童買春等目的人身売買等) 、第9条(児童の年齢の知情)【参考】
○昭和60年10月23日最高裁判決(福岡県青少年保護育成条例違反)条例10条1項にいう「淫行」とは、青少年を誘惑し、威迫し、欺岡し又は困惑させる等その心身の未成熟に乗じた不当な手段により行う性交又は性交類似行為のほか、青少年を単に自己の性的欲望を満足させるための対象として扱っているとしか認められないような性交又は性交類似行為をいうものと解すべきである。
昭和39年4月22日東京高裁判決(埼玉県青少年愛護条例違反)「わいせつ行為」とは、いたずらに性欲を刺激興奮せしめたり、その露骨な表現によって健全な常識のある一般社会人に対し、性的に差恥嫌悪の情をおこさせる行為をいうものと解する。

https://www3.nhk.or.jp/lnews/kyoto/20201029/2010008366.html
警察によりますと、医師はことし4月、当時住んでいた京都市内のマンションで、16歳の女子高生を18歳未満と知りながらみだらな行為をしたとして、京都府青少年健全育成条例違反の疑いが持たれています。
医師は去年の秋ごろに、飲食店で女子高生に声をかけて知り合ったということです。
警察の調べに対して「性行為はしたが、性欲を満たす目的ではない」と供述しているということで、警察がいきさつをさらに調べています。
今回の逮捕について、京都府立医科大学の竹中洋学長は「医師としてあるまじき行為で関係者に深くおわびします。早急に事実を確認し、厳正に対処してまいります」とコメントしています

 みだらな性行為又はわいせつな行為(富山県青少年健全育成条例)は、刑法の強制性交・強制わいせつ罪とは、観念的競合になる。

 国法の先占とかで、普通は、補充関係になるとかいいませんかね。

富山県青少年健全育成条例の解説 令和元年6月
(みだらな性行為及びわいせつな行為の禁止)
第15条
1何人も、青少年に対し、みだらな性行為又はわいせつな行為をしてはならない。
2何人も、青少年に対し、前項の行為を教え、又は見せてはならない。

4他法令との関係
(1) 刑法との関係
次の場合は、刑法第54条の規定(一個の行為が二個以上の罪名に触れ、又は犯罪の手段若しくは結果である行為が他の罪名に触れるときは、その最も重い刑により処断する。)により、刑法第176条(強制わいせつ) 、第177条(強制性交等)又は第179条(監護者わいせつ及び監護者性交等)の刑により処断されることとなる。
① 13歳以上の者に対し、暴行又は脅迫を用いてわいせつな行為をし、若しくは性交、肛門性交又は口腔性交(以下「性交等」という。)をした場合
② 13歳未満の者に対し、わいせつな行為をし、又は性交等をした場合
③18歳未満の者に対し、その者を現に監護する者であることによる影響力があることに乗じてわいせつな行為をし、又は性交等をした場合

強制わいせつ罪(176条後段)と同じ機会の児童ポルノ製造罪とで逮捕され、児童ポルノ製造罪で略式命令が確定した後に、強制わいせつ罪について不起訴不当の議決がされた事例

 東京高裁h30.1.30に従えば、強制わいせつ罪(176条後段)とその際の製造罪とは観念的競合ですから、略式命令の一事不再理効で、強制わいせつ罪(176条後段)では起訴できない可能性があります。
 児童ポルノ製造罪とされた行為のうち、所定の姿態を取らせる行為・撮影する行為について、わいせつ行為と評価される行為で、この部分について強制わいせつ罪(176条後段)で起訴されると、一事不再理効が生じ、免訴になります(刑訴法337条1号)
 児童淫行罪と製造罪について公訴事実の同一性を広く解釈する高裁判例福岡高裁h23.1.13)もあります。
一事不再理効は前訴と公訴事実を同一にする本件訴因に及ぶが、公訴事実の同一性がなくても、前訴が有罪判決であった場合余罪として認定されて実質上これも処罰する趣旨で量刑資料として考慮され重く処罰される可能性があった場合には、その事実にも一事不再理効が及ぶ(しかし、前訴である同一被害児童との性交と、本件訴因である、その一一月前にした性交による児童ポルノ製造について審理の経過に照らしかかる関係がない)。(福岡高判平23・1・13高検速報一四八五)」

裁判年月日 平成30年 1月30日 裁判所名 東京高裁 裁判区分 判決
事件名 保護責任者遺棄致傷、強制わいせつ、児童買春、児童ポルノに係る行為等の処罰及び児童の保護等に関する法律違反、強制わいせつ(変更後の訴因わいせつ誘拐、強制わいせつ)、殺人、強制わいせつ致傷被告事件
 3 強制わいせつ罪と児童ポルノ製造罪の罪数関係について
  (1) 論旨は,原判決は,同一機会の犯行に係る強制わいせつ罪と児童ポルノ製造罪を併合罪としたり観念的競合としたりしており,罪数処理に関する理由齟齬がある,また,上記の両罪は,撮影による強制わいせつと児童ポルノ製造の行為に係るものであり,もともと1個の行為に2個の罪名を付けているだけであるから,いずれも観念的競合とすべきであるのに,併合罪とした原判決には,判決に影響を及ぼすことが明らかな法令適用の誤りがある,というのである。
  (2) 原判決は,同一機会の犯行に係る強制わいせつ(致傷)罪と児童ポルノ製造罪の罪数関係について,以下のように判断している。
   ア 観念的競合としたもの
 ・原判示第7の強制わいせつ致傷の行為と児童ポルノ製造(撮影,保存)の行為
 ・原判示第9から第11までの各強制わいせつの行為と各児童ポルノ製造(撮影,保存)の行為
   イ 併合罪としたもの
 ・原判示第2の1の強制わいせつの行為と同第1(別表1番号2)の児童ポルノ製造(撮影,保存)の行為
 ・原判示第2の2,4の各強制わいせつの行為と同第2の3,5の各児童ポルノ製造(撮影,保存)の行為
 ・原判示第3の強制わいせつの行為と同第1(別表1番号3)の児童ポルノ製造(撮影,保存)の行為
 ・原判示第4の強制わいせつの行為と同第1(別表1番号4)の児童ポルノ製造(撮影,保存)の行為
 ・原判示第5の1,3,5の各強制わいせつの行為と同第5の2,4,6の各児童ポルノ製造(撮影,保存)の行為
 ・原判示第6の強制わいせつの行為と同第1(別表1番号7)の児童ポルノ製造(撮影,保存)の行為
  (3) 原判決は,上記罪数判断の理由を明示していないものの,基本的には,被害児童に姿態をとらせてデジタルカメラ又はスマートフォン(付属のカメラを含む。)等で撮影した行為が強制わいせつ(致傷)罪に該当する場合に,撮影すると同時に又は撮影した頃に当該撮影機器内蔵の又は同機器に装着した電磁的記録媒体に保存した行為(この保存行為を「一次保存」という。)を児童ポルノ製造罪とする場合には,これらを観念的競合とし(原判示第7,第9から第11まで),一次保存をした画像を更に電磁的記録媒体であるノートパソコンのハードディスク内に保存した行為(この保存行為を「二次保存」という。)を児童ポルノ製造罪とする場合には,併合罪としているものと解される(なお,原判決が併合罪としたもののうち,原判示第2の1,第5の3,5,第6の各強制わいせつ行為では,被害児童に対し緊縛する暴行を加えており,これらについては,このことも根拠として併合罪とし,観念的競合としたもののうち,原判示第7の強制わいせつ行為では,被害児童に対し暴行を加えているが,その暴行態様は,緊縛を含まず,おむつを引き下げて陰茎を露出させた上,その包皮をむくなどしたというものであって,姿態をとらせる行為と重なり合う程度が高いとみたとも考えられ,原判決は,罪数判断に当たり,強制わいせつの態様(暴行の有無,内容)をも併せ考慮していると考えられる。)。いずれにせよ,わいせつな姿態をとらせて撮影することによる強制わいせつ行為と当該撮影及びその画像データの撮影機器に内蔵又は付属された記録媒体への保存行為を内容とする児童ポルノ製造行為は,ほぼ同時に行われ,行為も重なり合うから,自然的観察の下で社会的見解上一個のものと評価し得るが,撮影画像データを撮影機器とは異なる記録媒体であるパソコンに複製して保存する二次保存が日時を異にして行われた場合には,両行為が同時に行われたとはいえず,重なり合わない部分も含まれること,そもそも強制わいせつ行為と児童ポルノ製造行為とは,前者が被害者の性的自由を害することを内容とするのに対し,後者が被害者のわいせつな姿態を記録することによりその心身の成長を害することを主たる内容とするものであって,基本的に併合罪の関係にあることに照らすと,画像の複製行為を含む児童ポルノ製造行為を強制わいせつとは別罪になるとすることは合理性を有する。原判決の罪数判断は,合理性のある基準を適用した一貫したものとみることができ,理由齟齬はなく,具体的な行為に応じて観念的競合又は併合罪とした判断自体も不合理なものとはいえない。

1審判決
裁判年月日 平成28年 7月20日 裁判所名 横浜地裁 裁判区分 判決
第7 被告人は,F(以下「F」という。)が13歳未満の男子であることを知りながら,平成25年3月10日頃,東京都中野区●●●において,F(当時生後8か月)に対し,おむつを引き下げて陰茎を露出させた上,その包皮をむくなどの暴行を加え,亀頭部を殊更露出させるなどの姿態をとらせ,その姿態をスマートフォン付属のカメラで撮影し,その静止画データ12点を電磁的記録媒体であるスマートフォン(平成28年押第40号符号1)内蔵の記録装置に記録して保存し,もって13歳未満の男子に強いてわいせつな行為をするとともに,衣服の一部を着けない児童の姿態であって性欲を興奮させ又は刺激するものを視覚により認識することができる方法により電磁的記録に係る記録媒体に描写した児童ポルノを製造し,その際,Fに全治約5日間を要する外傷による亀頭包皮炎の傷害を負わせた。【平成27年2月26日付け追起訴の関係】
 第8 被告人は,別表2の番号1ないし3各記載のとおり,平成25年4月6日頃から同年8月9日頃までの間,埼玉県内,神奈川県内又はその周辺において,番号1ないし3の氏名不詳の各男児がいずれも18歳に満たない児童であることを知りながら,同児童らに対し,全裸又は下半身裸の状態で陰茎を露出させるなどの姿態をとらせ,その姿態をデジタルカメラ等の機器で撮影し,同年4月11日頃から同年8月9日頃までの間,埼玉県内,神奈川県内又はその周辺において,その静止画データ合計26点を電磁的記録媒体である前記ノートパソコンのハードディスク内等にそれぞれ記録して保存し,もって衣服の全部又は一部を着けない児童の姿態であって性欲を興奮させ又は刺激するものを視覚により認識することができる方法により電磁的記録に係る記録媒体に描写した児童ポルノをそれぞれ製造した。【平成27年3月31日付け追起訴別表番号10ないし12の関係】
 第9 被告人は,G(以下「G」という。)が13歳未満の女子であることを知りながら,平成25年8月25日頃,東京都内又はその周辺において,G(当時1歳)に対し,全裸の状態で両脚を開かせて陰部を露出させるなどの姿態をとらせ,その姿態をデジタルカメラで撮影し,その静止画データ10点を同デジタルカメラに装着した電磁的記録媒体であるSDカード(平成28年押第40号符号4)に記録して保存し,もって13歳未満の女子にわいせつな行為をするとともに,衣服の全部を着けない児童の姿態であって性欲を興奮させ又は刺激するものを視覚により認識することができる方法により電磁的記録に係る記録媒体に描写し
法令の適用
科刑上一罪の処理 判示第1,第7及び第9ないし第11について,いずれも同法54条1項前段,10条(判示第1について1罪として犯情の最も重い別表1の番号2の児童ポルノ製造罪の刑で,判示第7について1罪として重い強制わいせつ致傷罪の刑で,判示第9ないし第11についていずれも1罪として重い強制わいせつ罪の刑でそれぞれ処断する。)

強制わいせつ:強制わいせつの不起訴に「不当」 神戸第2検察審査会 /兵庫
2020.10.23 毎日新聞社
 交際相手の娘への強制わいせつ容疑で神戸地検尼崎支部が捜査し、不起訴処分とした尼崎市の飲食業の男性(70)に対し、神戸第2検察審査会が不起訴不当の議決を出した。14日付。
 議決文や県警によると、男性は2020年1~2月に自宅で交際相手の娘の少女にわいせつな行為をし、裸をスマートフォンで撮影したなどとし、強制わいせつと児童ポルノ禁止法違反(製造)容疑で県警に逮捕された。男性は逮捕時、強制わいせつ容疑について「そういうことをした記憶はある」と供述していたという。
 尼崎区検は男性を児童ポルノ禁止法違反罪で略式起訴。強制わいせつ罪については地検尼崎支部が不起訴処分としたため、少女の母親が検審に申し立てていた。
 議決では「わいせつ行為は母親の交際相手で、被害者が逆らえず声を上げにくいことを利用した悪質な犯罪」と指摘。「被害者は精神的ダメージを負い、成長過程に重大な影響を及ぼすことは必至で、被害は重大」とし、不起訴不当とした。
 神戸地検は再捜査し、改めて起訴か不起訴かを検討する。
 性暴力の司法手続きを巡っては、ジャーナリストの伊藤詩織さんが元TBS記者に乱暴されたと訴えた事件で、検察は不起訴処分にしたが、民事訴訟では1審判決が被害事実を認定した。【山本真也、春増翔太】
・・・

交際相手の娘被害 わいせつ疑い男性 不起訴不当の議決 神戸検察審査会
2020.10.22 神戸新聞 
 交際相手の娘に対する強制わいせつ容疑で神戸地検尼崎支部が捜査し、不起訴処分にした尼崎市の自営業の男性(70)について、神戸第2検察審査会が不起訴不当とする議決を出した。14日付。
 議決や同支部などによると、男性は1、2月に自宅で交際相手の娘=当時(15)=にわいせつな行為をしたなどとして、兵庫県警に強制わいせつ容疑や児童買春・ポルノ禁止法違反(製造)容疑で逮捕された。4月8日、尼崎区検は同法違反罪で男性を略式起訴したが、地検尼崎支部は強制わいせつ罪について不起訴処分とした。同支部は理由を明かしていない。
 議決では「母親の交際相手であり、経済的に優位な立場を利用した極めて悪質な犯罪」と指摘。「被害者の成長過程に重大な影響を及ぼすことは必至」とした。神戸地検は再捜査し、改めて起訴か不起訴かの処分を検討する。


製造罪と強制わいせつ罪を観念的競合にした裁判例は68個ある。高裁判例も8個。尼崎支部も観念的競合にしてる。
名古屋 地裁 一宮 H17.10.13
東京 地裁 H18.3.24
東京 地裁 H19.2.1
東京 地裁 H19.6.21
横浜 地裁 H19.8.3
長野 地裁 H19.10.30
札幌 地裁 H19.11.7
東京 地裁 H19.12.3
高松 地裁 H19.12.10
山口 地裁 H20.1.22
福島 地裁 白河 H20.10.15
那覇 地裁 H20.10.27
金沢 地裁 H20.12.12
金沢 地裁 H21.1.20
那覇 地裁 H21.1.28
山口 地裁 H21.2.4
佐賀 地裁 唐津 H21.2.12
仙台 高裁 H21.3.3
那覇 地裁 沖縄 H21.5.20
千葉 地裁 H21.9.9
札幌 地裁 H21.9.18
名古屋 高裁 H22.3.4
松山 地裁 H22.3.30
那覇 地裁 沖縄 H22.5.13
さいたま 地裁 川越 H22.5.31
横浜 地裁 H22.7.30
福岡 地裁 飯塚 H22.8.5
高松 高裁 H22.9.7
高知 地裁 H22.9.14
水戸 地裁 H22.10.6
さいたま 地裁 越谷 H22.11.24
松山 地裁 大洲 H22.11.26
名古屋 地裁 H23.1.7
広島 地裁 H23.1.19
広島 高裁 H23.5.26
高松 地裁 H23.7.11
広島 高裁 H23.12.21
秋田 地裁 H23.12.26
横浜 地裁 川崎 H24.1.19
福岡 地裁 H24.3.2
横浜 地裁 H24.7.23
福岡 地裁 H24.11.9
松山 地裁 H25.3.6
横浜 地裁 H25.4.30
大阪 高裁 H25.6.21
横浜 地裁 H25.6.27
福島 地裁 いわき H26.1.15
松山 地裁 H26.1.22
福岡 地裁 H26.5.12
神戸 地裁 尼崎 H26.7.29
神戸 地裁 尼崎 H26.7.30
横浜 地裁 H26.9.1
津 地裁 H26.10.14
名古屋 地裁 H27.2.3
岡山 地裁 H27.2.16
長野 地裁 飯田 H27.6.19
横浜 地裁 H27.7.15
広島 地裁 福山 H27.10.14
千葉 地裁 松戸 H28.1.13
高松 地裁 H28.6.2
横浜 地裁 H28.7.20
名古屋 地裁 岡崎 H28.12.20
東京 地裁 H29.7.14
名古屋 地裁 一宮 H29.12.5
東京 高裁 H30.1.30
高松 高裁 H30.6.7
広島 地裁 H30.7.19
広島 地裁 H30.8.10

公衆に著しく迷惑をかける暴力的不良行為等の防止に関する条例(千葉県)3条2項の定める卑わい行為の対象となった者(以下「A」という。)は,本件犯行により直接の被害を被ったとされる者で刑訴法290条の2所定の被害者に当たる(東京高裁H26.10.30)

 青少年条例違反罪ではどうかというので調べました。

公衆に著しく迷惑をかける暴力的不良行為等の防止に関する条例(千葉県)3条2項の定める卑わい行為の対象となった者(以下「A」という。)は,本件犯行により直接の被害を被ったとされる者で刑訴法290条の2所定の被害者に当たる(東京高裁H26.10.30)
高等裁判所刑事裁判速報集平成26年111頁

       理   由

 弁護人の控訴趣意の論旨は,「原審は,被害者特定事項について公開の法廷で明らかにしない決定をしているが,本件行為の対象とされるAはそもそも被害者に該当しないから同決定は違法である。」というものである。
 しかし,着衣の上から左胸をなでて触られたAは本件犯行により直接の被害を被ったとされる者で刑訴法290条の2所定の被害者に当たることは明らかであり,Aの法定代理人である母からの被害者特定事項の秘匿の申出につき,秘匿することが相当との意見を付した検察官の通知を受け,原審弁護人の「しかるべく」との意見を踏まえてした被害者特定事項について公開の法廷で明らかにしないとの原審の決定に何ら違法な点は見当たらない。
備考
卑わい行為の対象者については,実務上,刑訴法290条の􀀀2に基づきその特定事項を法廷で明らかにしないとの決定がなされ,弁護人も異議を述べないことが多いと思われる。しかしながら,卑わい行為禁止規定の保護法益については,社会的法益であるとの説(例えば,合田悦三「いわゆる迷惑防止条例について」《小林充•佐藤文哉先生古稀祝賀刑事裁判論集上巻》)もあり,卑わい行為の対象者が刑訴法290条の 2所定の被害者に該当しないとの考えも理論上はあり得るところ,本裁判例は,同条の適用を認めた高裁判決として紹介するものである。

児童相談所職員による淫行事件につき、青少年条例違反で逮捕されて、児童淫行罪で起訴されて青少年条例違反で有罪となった事例(福岡地裁r2.6.22)

 師弟関係の児童淫行罪について実刑率が高いので、慎重に対応しましょう。
 この判決が言及している最高裁判所平成28年6月21日決定は児童淫行罪の成否について要件を挙げていますが、それらの要件は量刑要素でもあるので、削って行けば軽くなって、児童淫行罪が青少年条例違反に落ちる可能性が出てきます。
 なお、同一青少年に対する数回の青少年条例違反については、包括一罪になりますので(金沢支部福岡高裁、高松高裁)、罪数処理を誤っています。

福岡地裁令和 2年 6月22日
児童福祉法違反被告事件
主文
 被告人を懲役2年に処する。
 この裁判が確定した日から4年間その刑の執行を猶予する。
理由
 (罪となるべき事実)―被害者の氏名等は,別紙犯罪事実一覧表,呼称一覧表のとおり
 被告人は,児童相談所において,Aが18歳に満たない青少年であることを知りながら,別紙犯罪事実一覧表のとおり,3回にわたり,専ら自己の性的欲望を満たす目的で,Aに口淫等をさせ,もって,いずれも,青少年に対し,いん行をした。
 (証拠の標目)―括弧内は証拠等関係カードにおける検察官請求証拠甲乙の番号
 判示事実全部について
 ・ 被告人の公判供述
 ・ 被告人の検察官調書(乙10),警察官調書(乙4(抄本),6ないし8)
 ・ Aの検察官調書抄本(甲1(不同意部分を除く))
 ・ 被害児童の年齢に関する報告書(甲2),一覧表作成報告書(甲8),写真撮影報告書(甲11),犯行場所の名称特定に関する報告書(甲13)
 別紙犯罪事実一覧表番号1,2の事実について
 ・ 被告人の検察官調書(乙15)
 別紙犯罪事実一覧表番号1の事実について
 ・ 被告人の警察官調書(乙13)
 ・ 検証調書(甲14),写真撮影報告書(甲19),実況見分調書(甲20),資料入手報告書(甲21,22)
 別紙犯罪事実一覧表番号2の事実について
 ・ 被告人の警察官調書(乙14)
 ・ 写真撮影報告書(甲24),実況見分調書(甲25)
 別紙犯罪事実一覧表番号3の事実について
 ・ 被告人の検察官調書(乙11),警察官調書(乙9)
 ・ 写真撮影報告書(甲16),実況見分調書(甲18)
 (法令の適用)
 罰条 別紙犯罪事実一覧表の番号ごとに福岡県青少年健全育成条例38条1項1号,31条1項
 刑種の選択 いずれも懲役刑を選択
 併合罪の処理 刑法45条前段,47条本文,10条(犯情の最も重い番号3の罪の刑に法定の加重)
 宣告刑 懲役2年
 刑執行猶予 刑法25条1項(4年間猶予)
 (争点に対する判断)
第1 本件公訴事実と争点
 本件公訴事実の要旨は,「被告人は,児童相談所児童福祉司として勤務し,当時,同相談所で一時保護中の児童であったAの社会診断,援助方針の策定等を担当していたものであるが,Aが18歳に満たない児童であることを知りながら,前記担当者としての自己の立場を利用し,同相談所内において,別紙犯罪事実一覧表のとおり,3回にわたり,Aに自己を相手に口淫等の性交類似行為をさせ,もって,児童に淫行をさせる行為をした」というものである。
 被告人が,別紙犯罪事実一覧表記載の各日時頃,児童相談所内で,Aに口淫等をさせた事実については当事者間に争いがなく,証拠上も認めることができる。また,それが児童福祉法上の「淫行」又は福岡県青少年健全育成条例上の「いん行」に該当することについても当事者間に争いがなく,当裁判所としてもそのように評価できると考える。しかし,検察官は,被告人が「淫行を『させる』行為」(児童福祉法34条1項6号)をしたと主張するのに対し,弁護人は,そのように評価することはできないから,児童福祉法違反の罪(以下「児童淫行罪」ともいう)は成立せず,福岡県青少年健全育成条例違反(いん行)の罪(以下「条例違反のいん行罪」ともいう)が成立するにとどまると主張している。
 すなわち,本件の争点は,被告人が,児童福祉法上の「淫行を『させる』行為」をしたと評価できるか否かであるが,当裁判所は,そのように評価することはできないと判断した。以下,説明する。
第2 事実関係等
 関係証拠によると,本件各犯行に至るまでの経緯,被告人とAとの関係等については,以下のような事実関係等が認められる。
 1 Aは,平成30年11月29日,警察からの通告により,児童相談所の一時保護所に入所し●●●,当初は●●●の児童福祉司がAらを担当していたが,その後,●●●被告人が,Aらを担当することになった●●●。
 他方,被告人は,社会福祉士の資格を有し,いくつかの福祉関係の職●●●を経て,平成27年4月から,児童相談所児童福祉司として勤務し,子どもに関する家庭その他からの相談に応じていた。本件当時,妻と●●●子ども●●●がいて,本件以前には,家庭生活や社会生活に問題は見当たらない。
 2 Aは,愛着の形成に関する問題を抱えており,他人と適切な距離を保つことが困難であった(人は,幼児期に,情緒的な関わり(必要に応じて,安心させる,見守る,褒めるなど,愛情深く世話をすること)をしてくれる特定の養育者がいれば,愛着を形成でき,安心感や自己肯定感等を獲得できる。それにより,その養育者と物理的に距離をとっても,安心感や自己肯定感を持続でき,その養育者のもとを離れて一人で行動できるようになる。他方,このような愛着の形成が上手くいかないと,その養育者との関係のみならず,その後の対人関係の築き方,発達,行動等に支障をきたすことがある。Aの場合,●●●幼児期において,●●●安定した愛着が形成できなかったことがうかがえ,●●●信頼できると思った人物とは,近い距離にいなければ(あるいは身体接触を伴わなければ)安心できず,物理的,心理的な距離感を直ぐに縮めたり,身体接触を過剰に求めたりする行動がしばしばみられる)。そのため,Aは,一時保護所においても,職員に対し,男女構わず抱きつく,膝の上に乗るなどして甘える行動や,抱き締めてほしい,頭を撫でてほしいなどと身体接触を求める行動が頻繁に観察された。Aは,このような行動を職員から再三にわたり注意されていたが一向に改まらなかった。このAの問題行動は,定期的に行われる会議により,一時保護所を含む児童相談所職員の間で共有されていた。
 3 Aは,担当児童福祉司である被告人を頼りに感じており,心情が不安定なときに抱え上げてくれたことなどから,比較的早い段階から好意を持つようになった。Aは,被告人に対し,甘える態度を示し,短期間のうちにその傾向を強め,面接後にハグを求めるなどするようになった。被告人は,当初はそれを断っていたが,重ねて求められて遂にハグをしてしまった。その後,被告人は,Aの誘いに応じる形で,キスをしたり,着衣の上から胸を触ったりするなど,Aに対する身体接触エスカレートさせ,遂には被告人の陰茎を,Aに咥えさせたり,Aの陰部に押し当てたりするようになって,本件各犯行に及んだ(関係証拠を総合すると,被告人とAとが性的な接触を始めた時期は,Aが一時保護所に入所してから1か月も経過しない頃のことと認められ,平成30年12月下旬頃であった旨をいう被告人の供述は,疑問もある。しかし,その余については,他の証拠との矛盾など,信用性を疑わせる証拠は見当たらないから,被告人とAとが性的な接触を繰り返していた経緯等に関する被告人の供述は排斥できない)。
 4 Aは,被告人との間の性的行為につき,Aと同じく一時保護されている児童や,一時保護所の職員に話したが,被告人の妻が可哀想だし,大事にしたくないという気持ちもあって,他の大人には話さなかった。なお,Aは,平成31年3月4日,担当児童福祉司を被告人以外の者に替えてほしい旨を申し出た後も,被告人との間の淫行について,面会に来た母親にも話していない。
第3 当裁判所の判断
 児童福祉法34条1項6号の「淫行を『させる』行為」とは,直接たると間接たるとを問わず,児童に対して事実上の影響力を及ぼして児童が淫行をすることを助長し促進する行為をいうと解される(最高裁判所平成28年6月21日決定)。そのような行為に当たるか否かは,行為者と被害児童の関係,助長・促進行為の内容及び被害児童の意思決定に対する影響の程度,淫行の内容及び淫行に至る動機・経緯,被害児童の年齢,その他当該児童の置かれていた具体的状況を総合考慮して判断すべきであるが,児童淫行罪と保護法益を同じくしながら,法定刑が大きく異なる児童買春の罪や条例違反のいん行罪との峻別という観点からの検討も必要である。
 1 被告人とAとの関係について
 検察官は,被告人とAとの間に「保護責任者的地位のような関係性」があった旨を主張する。
 確かに,被告人は,Aの担当児童福祉司であり,担当児童福祉司による原案どおりに援助指針(援助方針)が決まることも少なくないから,Aの援助指針(援助方針)の策定についても重要な役割を担っている上,一時保護中のAが外部の者と接触するには,窓口である被告人を介する必要があった。
 しかし,一般に,児童相談所(呼称一覧表記載の特定機関に限らない。以下「児相」ともいう)は,児童福祉司による社会診断,児童心理司による心理診断,医師による医学診断,一時保護部門の児童指導員による行動診断などにより,子どもとその環境を総合的に理解した上,それらを基にして担当者による協議(会議)を重ね,判定(総合診断)し,できるだけ迅速に,子どもの最善の利益を追求するための援助指針(援助方針)を策定する機関である(子どもや保護者に対する援助は,この指針に基づいて行われ,援助は定期的に検証され,必要に応じて見直される)。関係機関との連絡調整役を担い,社会診断(問題の所在とその背景等についての調査を進め,相談者による主訴とその背後にある基本的な問題並びに問題と社会的環境との関連等を解明することにより,社会学社会福祉学的視点から援助のあり方を明確にすることをいう)を行うことから,援助指針(援助方針)の原案を作成する児童福祉司の果たす役割は小さくないとはいえ,児童福祉司は,援助指針(援助方針)を策定する児相の専門家チームの一員である。また,本件でAが一時保護されていた一時保護所は,児童相談所と同じ建物内にあるが,一時保護されている子どもの安全等を確保するため,子どもは自由に出入りできず,児童相談所の職員でさえカードキーで解錠しない限り出入りできない仕組みになっていたように,一時保護の期間中,児童指導員等の一時保護部門の職員は,夜間を含めて一時保護されている子どもと生活をともにし,全ての生活場面について子どもの行動を観察し,行動診断を行うのであるが,一時保護されている子どもと担当児童福祉司が会う機会は,面接時に限られている。加えて,一時保護されている子どもの援助指針(援助方針)は,できるだけ迅速に策定しなければならず,一時保護の期間は原則として2か月以内とされているから,一時保護されている子どもと担当児童福祉司の関係も,原則として2か月以内の期間にとどまる。
 このような担当児童福祉司をはじめとする児童相談所や一時保護所の職員の役割等について,Aが正しく理解していたとは認められないが,Aとしては,被告人は,援助指針(援助方針)を策定する立場にある者と認識していたのであるから,一時保護されている期間中の被告人からの働き掛けについては,Aの将来を左右し得る立場の者からの働き掛けであると考えて,Aの自律的な意思決定が歪められる危険性があることは否定できないから,そのような意味において,Aに対して相当の事実上の影響力を有していたとはいえようが,上記のとおり,一時保護中の子どもとその担当児童福祉司との関係は,子どもとその親など保護者との関係や,学校における児童・生徒と教師との関係とは異なる部分が多い上,援助指針(援助方針)の策定に際しては,児童相談所の方針を子どもや保護者らに伝え,その意向を聴取し,できる限り子どもや保護者らとの協議が行われることなども踏まえると,検察官が主張するように,被告人とAとの間に「保護責任者的地位のような関係性」があったとみるのは適切ではないと考える。
 2 助長・促進行為の内容及び児童の意思決定に対する影響の程度について
 検察官は,被告人とAとの間に「保護責任者的地位のような関係性」があったことを前提に,Aに対し,そのような被告人からの事実上の影響力が強く及んでいたのであるから,被告人が,担当児童福祉司としてAと面接する機会に,その立場を利用して,児童相談所の相談室等において,Aと二人きりの状況を作出するとともに,相談室内の灯りを消し,自らのズボンとパンツを脱いで陰茎を露出させ,Aの着衣をまくりあげるなどの行為は,被告人からの事実上の影響力の強さを考慮すると,「助長・促進行為」に当たり得る旨を主張している。
 この点,被告人とAとの間に「保護責任者的地位のような関係性」があったとみるのは適切ではないのは,既に説明したとおりであるが,担当児童福祉司である被告人からの働き掛けがあったとすれば,それはAに対して相当の事実上の影響力があったと認められる。
 しかし,被告人がAと性的接触を繰り返すようになったのは,面談の機会に,被告人に対して好意を持っていたAから繰り返し身体接触を求められ,当初はそれを断っていた被告人が,これに応じてしまったことが契機であると認められるのであって,被告人が,Aに対して,性的な身体接触等を求めて何らかの働き掛けを行い,その働き掛けが持つ事実上の影響力により,Aとしては,それに応じるか否かの意思決定を自律的に行うことができず,被告人からの働き掛けに応じることを余儀なくされてしまった,というような経緯ではない(このことは,Aが被告人との間の性的行為を身近に感じていた者たちだけに打ち明けた後も,できれば大事にしたくないという気持ちから,しばらくの間,母親を含めて他の者には隠していたことなどからも,うかがうことができる)。被告人とAとの関係や影響力の強さを踏まえても,検察官が指摘するような行為まで本罪に当たり得るとすると,児童淫行罪と条例違反のいん行罪とを峻別することができなくなってしまうおそれがあり,妥当ではない。
 そうすると,被告人がAの愛着の形成に問題があることを認識していたことや,被告人のAに対する事実上の影響力の強さ等を踏まえて検討しても,弁護人が主張するとおり,本件においては「淫行を『させる』行為」と評価し得る「助長・促進行為」が存在したとは認められない。
 なお,被告人は,同じ時期に担当していた他の被保護児童と比べて,Aとの面接回数が相当多いことは認められる。しかし,Aとそのきょうだいの一時保護されていた期間,一時保護後の措置の内容等に照らすと,Aやその家族の抱える問題点を把握して援助指針(援助方針)の原案を作ること,Aらに対して,その原案を説明し,その意向を聴取し,協議した上,成案を得ることは容易ではなかったことがうかがえる。Aと他の被保護児童との面接回数の差は,その処遇選択の困難さの違いを反映している可能性は十分に考えられる。更に,一時保護されているAは,他の被保護児童とは違って,比較的軽い感じで,児童相談所にいる被告人を呼び出すことがあったようである。
 したがって,被告人が担当していた児童らが一時保護された経緯や,一時保護期間中やその後の状況,面接の必要性等が証拠により明らかにされていない以上,被告人とAとの面接回数が多いからといって,被告人が,必要性もないのに,担当児童福祉司という立場を利用して,Aとの面接を多数回重ねていたとか,事実上の影響力を行使していたとみることも難しい。
 3 そうすると,淫行の内容,淫行に至る動機・経緯,被害児童の年齢,その他被害児童の置かれていた状況等を検討するまでもなく,児童福祉法上の「淫行を『させる』行為」があったとは認められないから,児童淫行罪は成立せず,条例違反のいん行罪が成立するにとどまると判断した。
 (量刑に当たり特に考慮した事情)
 児童相談所児童福祉司である被告人は,妻子もあるのに,事もあろうに,担当していた一時保護中の被害児童に対して,児童相談所内でいん行を繰り返した。被害児童の口に自己の陰茎を咥えさせるなどの態様もかなり悪く,被害児童の心身に及ぼす害悪の程度は相当高く,被害児童の心身の健全な発達に対する悪影響が懸念される。被害児童は,愛着の形成に問題を抱えており,児童福祉司であり,児童相談所の職員であった被告人は,それを十分に理解していたのであるから,他の誰よりも適切に対応すべきであったといえ,被告人が,被害児童に対する性的接触エスカレートさせていった期間の長さを踏まえても,本件各犯行は,同種の事案の中で,相当重い部類といえる。
 他方,被告人が本件に至った経緯からすると,殊更に犯情を重く捉えるべきではないとの弁護人の主張には理由があり,被告人に相手を選ばずこの種の行為を繰り返す傾向があるとも認められないから,被告人に対する非難は,一定程度減じられるべきである。また,被告人は,被害児童に対する慰謝の措置を講じる努力をし,被害弁償金の一部(50万円)を被害児童側に受け取ってもらっている。母親の監督も期待できる。被告人自身も反省を深めており,専門家の力も借りて再犯を防止しようとしている。
 そうすると,被告人の刑事責任を軽視することはできないが,前科・前歴もない被告人に対しては,今回に限り,社会内で自力更生を目指す機会を与えることも許されると考える。
 よって,主文のとおり判決する。
 (求刑・懲役4年)
 福岡地方裁判所第2刑事部
 (裁判官 溝國禎久)

平成28年 6月21日
最高裁第一小法廷
児童福祉法違反被告事件
 弁護人竹永光太郎の上告趣意のうち,憲法31条違反をいう点は,児童福祉法34条1項6号の構成要件が所論のように不明確であるということはできないから,前提を欠き,その余は,単なる法令違反,事実誤認の主張であって,刑訴法405条の上告理由に当たらない。
 所論に鑑み,職権で判断する。
 児童福祉法34条1項6号にいう「淫行」とは,同法の趣旨(同法1条1項)に照らし,児童の心身の健全な育成を阻害するおそれがあると認められる性交又はこれに準ずる性交類似行為をいうと解するのが相当であり,児童を単に自己の性的欲望を満足させるための対象として扱っているとしか認められないような者を相手とする性交又はこれに準ずる性交類似行為は,同号にいう「淫行」に含まれる。
 そして,同号にいう「させる行為」とは,直接たると間接たるとを問わず児童に対して事実上の影響力を及ぼして児童が淫行をなすことを助長し促進する行為をいうが(最高裁昭和39年(あ)第2816号同40年4月30日第二小法廷決定・裁判集刑事155号595頁参照),そのような行為に当たるか否かは,行為者と児童の関係,助長・促進行為の内容及び児童の意思決定に対する影響の程度,淫行の内容及び淫行に至る動機・経緯,児童の年齢,その他当該児童の置かれていた具体的状況を総合考慮して判断するのが相当である。
 これを本件についてみると,原判決が是認する第1審判決が認定した事実によれば,同判示第1及び第2の各性交は,被害児童(当時16歳)を単に自己の性的欲望を満足させるための対象として扱っているとしか認められないような者を相手とする性交であり,同児童が通う高等学校の常勤講師である被告人は,校内の場所を利用するなどして同児童との性的接触を開始し,ほどなく同児童と共にホテルに入室して性交に及んでいることが認められる。このような事実関係の下では,被告人は,単に同児童の淫行の相手方となったにとどまらず,同児童に対して事実上の影響力を及ぼして同児童が淫行をなすことを助長し促進する行為をしたと認められる。したがって,被告人の行為は,同号にいう「児童に淫行をさせる行為」に当たり,同号違反の罪の成立を認めた原判断は,結論において正当である。
 よって,刑訴法414条,386条1項3号により,裁判官全員一致の意見で,主文のとおり決定する。
 (裁判長裁判官 小池裕 裁判官 櫻井龍子 裁判官 山浦善樹 裁判官 池上政幸 裁判官 大谷直人) 

東京都内で深夜青少年と同伴したことについて、青少年が謝罪した話

 東京都青少年の健全な育成に関する条例28条によれば、同伴する相手方についての年齢確認義務があって、16歳未満だと過失でも処罰されるし、16歳以上でも条例15条の4第2項違反(罰則がない)となります。
年齢確認の程度としては「年齢確認をした際、当該青少年が他人の身分証明書や年齢を詐称した定期券を提示した場合等で、誰が見ても見誤る可能性が十分あり、見誤ったことに過失がないと認められるような状況にあった場合は、あえて責任を負わせないとしたものである。」くらいまでが求められています。

東京都青少年の健全な育成に関する条例の解説 令和元年8月
(深夜外出の制限)
第15条の4
1保護者は、通勤又は通学その他正当な理由がある場合を除き、深夜(午後11時から翌日午前4時までの時間をいう。以下同じ。)に青少年を外出させないように努めなければならない。
2何人も、保護者の委託を受け、又は同意を得た場合その他正当な理由がある場合を除き、深夜に青少年を連れ出し、同伴し、又はとどめてはならない。
3何人も、深夜に外出している青少年に対しては、その保護及び善導に努めなければならない。
ただし、青少年が保護者から深夜外出の承諾を得ていることが明らかである場合は、この限りでない。
4深夜に営業を営む事業者及びその代理人、使用人、その他の従業者は、当該時間帯に、当該営業に係る施設内及び敷地内にいる青少年に対し、帰宅を促すように努めなければならない。

第26条次の各号の一に該当する者は、30万円以下の罰金に処する。
五第15条の4第2項の規定に違反して、深夜に16歳未満の青少年を連れ出し、同伴し、又はとどめた者

・・
【要旨】
本条は、第1項において保護者に対し、深夜に青少年を外出させない努力義務を課し、第2項においてすべての者に対し、保護者の委託又は同意を得た場合その他正当な理由がある場合を除いて、深夜に青少年を連れ出すこと等を禁止した規定である。さらに、第3項においてすべての者に対し、深夜に外出している青少年の保護及び善導を、第4項において深夜に営業を営む事業者等に、その施設内及び敷地内にいる青少年に対し、帰宅を促すことをそれぞ努力義務として定めている。
【解説】
本条でいう「保護者」とは、第4条の2第1項の「保護者」と同義である。
近年、生活時間帯が深夜に及ぶとともに、深夜に営業する施設も増加したことなどから、青少年が深夜に繁華街を俳個し、コンビニエンスストア内や駐車場の敷地内、店の前の路上でたむろするなどの行動が目立つようになり、また、事件や犯罪に巻き込まれる事例も増えている。これらを背景に、平成16年の条例改正により新設された。
第1項は、本来第一義的に保護者が自覚を持つべき事項であるが、子供が深夜に俳個していたり、無断外泊をしていても、無関心であったり、携帯電話で連絡が取れるから問題がないとしてすぐに迎えに来ない保護者もいるなど、保護者の責任感が希薄化していることから、通勤又は通学その他正当な理由がある場合を除き、深夜に青少年を外出させない努力義務を保護者に課したものである。
これにより、保護者の責任を明確にし、自覚を促すことを目的としている。ここでいう「正当な理由」とは、勉強又は就労(労働基準法で認められている範囲内に限る。)のように定例的なもの、本人又は保護者・親戚等の病気や事故、旅行先からの帰宅等の突発的又は一時的なものの両方が想定される。
第2項は、保護者の委託を受け、又は同意を得た場合その他正当な理由がある場合を除いて、深夜に青少年を連れ出し、同伴し、又はとどめることを禁止する規定である。保護者の同意等を受けず、また、その他正当な理由がないのに、青少年を深夜に連れ回すことは、まさに犯罪に巻き込まれる危険性があることから、設けられたものである。
保護者の委託又は同意の有無は、例えば、塾等に迎えに行くなど保護者の委託を受けて定例的に行っている場合、毎回必ず確認することまでは要さない。
また、ここでいう「正当な理由」とは、本人又は保護者の急な病気や事故等により、保護者に確認することが不可能な場合、事件や事故等に遭遇した青少年を助ける等、偶発的な理由により、結果として同伴することになった場合等を指す。
「連れ出し」とは、深夜に、青少年を東京都内の住居、居所等から離れさせることであり、その手段等は問わず、携帯電話やメール等での呼び出しであっても該当する。
「同伴」とは、現に同行し、又は同席する等、青少年と同一の行動を取っていることをいい、青少年が単独であると複数であるとは問わない。また、既に深夜に外出している青少年と同伴する場合も含む。
「とどめ」とは、深夜に連れ出している、あるいは深夜に既に外出している青少年が、帰宅の意思を表しているにもかかわらず、それを翻意させ、又は制止するこをいい、その手段は問わない。
本条において、本項のみが罰則の対象となるが、罰則を適用されるのは、16歳未満の青少年を連れ出し、同伴し、又はとどめた者に限る。これは、中学生以下と高校生以上とでは、生活実態が異なることを考盧したものである。
第3項は子供に対する大人の本来の責任を明確にするためのものである。
第1項及び第2項を受けて、すべての者が、深夜に青少年が外出することは望ましくないとの認識を持ち、そのような青少年と会った場合は、保護するとともに、今後は深夜に外出しないように促すことを求めた規定である。
「保護」とは、深夜外出している青少年が被害に遭わないための未然防止策であり、例えば、飲酒、喫煙、けんか等自身を損ない、又は周囲に迷惑をかける行為をしている場合に、警察や消防などへ通報することが挙げられる。
「善導」とは、深夜外出している青少年に帰宅を促すとともに、犯罪に巻き込まれないため等の注意喚起を促すことである。
なお、保護者から深夜外出の承諾を得ている場合には、やむを得ない場合と考えられることや、保護者が責任をもって行わせていることであるため、必ずしも保護及び善導に努める必要はない。

・・・
第28条
第9条第1項、第10条第1項、第1 1条、第13条第1項、第13条の2第1項、第15条第1項若しくは第2項、第15条の2第1項若しくは第2項、第15条の3,第15条の4第2項又は第16条第1項の規定に違反した者は、当該青少年の年齢を知らないことを理由として、第24条の4,第25条又は第26条第1号、第2号若しくは第4号から第6号までの規定による処罰を免れることができない。ただし、過失のないときは、この限りでない。
【解説】
本条は、第9条第1項の指定図書類の販売等の制限、第10条第1項の指定映画の観覧の制限、第11条の指定演劇等の観覧の制限、第13条第1項の指定がん具類の販売等の制限、第13条の2第1項の指定刃物の販売等の制限、第15条第1項又は第2項の質受け又は古物買受けの制限、第15条の2第1項又は第2項の着用済み下着等の買受け等の禁止、第15条の3の青少年への勧誘行為の禁止、第15条の4第2項の深夜の青少年の連れ出し等の禁止、第16条第1項の深夜における興行場等への立入りの制限等の規定に違反した場合に、違反者は、その相手方の年齢が18歳に満たない者であることを知らなかったとしても、それを理由として処罰を免れることができないことを規定したものである。
本条でいう「過失」とは、注意すれば相手が青少年であるという事実を認識することができたのに不注意で認識しなかったことをいい、「この限りでない。」とは、過失がないと認められる場合は、消極的に本条の罰則適用を打ち消すとの意味である。
すなわち、年齢確認をした際、当該青少年が他人の身分証明書や年齢を詐称した定期券を提示した場合等で、誰が見ても見誤る可能性が十分あり、見誤ったことに過失がないと認められるような状況にあった場合は、あえて責任を負わせないとしたものである。

https://www.nikkansports.com/entertainment/news/202010120000641.html
山下智久と同席の未成年女性が謝罪 虚偽認める書面
[2020年10月13日4時0分]
未成年の女性らと深夜4時過ぎまで同席したと報じられ、山下智久(35)が一定期間の活動自粛処分となっていた件で、同席した未成年の女性が、山下に書面で謝罪していたことが12日、分かった。
複数の関係者によると、先月までに、女性の親族名義で、弁護士を通じて山下に書面が送られていたという。事前に山下から年齢を確認されても20歳以上だと偽っていたことや、結果的に山下が活動自粛に至ったことへの謝罪などがつづられていたという。女性は深く反省している様子といい、山下も謝罪の意思を受けとったという。

山下は今年8月7日、「文春オンライン」で、7月末に酒席で未成年の女性らと深夜4時過ぎまで同席したと報じられた。山下は酒席の後、女性と同じホテルに滞在したとされた。酒席に同席していたKAT-TUN亀梨和也(34)も、厳重注意処分となった。

被告人方における児童ポルノ画像複製行為を、姿態をとらせて製造罪として有罪とした事例(A地裁H28.9.27)

 「姿態をとらせて」は構成要件ですので、それを欠く罪となるべき事実は、理由不備になります。
 A地裁H支部h27.2.6でも、当初起訴がそんな記載で、裁判所が気付いて訴因変更させられて有罪になっています。その経緯は控訴審(s高裁a支部H270630)で問題になり、「姿態をとらせて身分犯説」「複製行為が姿態とらせて製造罪だ」などと変な理屈で正当化されています。
 地検のなかで、同種事案の記録を貸し借りして、処理しているので、ケアレスミスが伝染するようです。法文見ないで起訴状起案するからですよ。
 静岡地裁浜松支部h17.7.15が「姿態をとらせ」を欠いた姿態をとらせて製造罪の有罪判決を書いたことがあって、東京高裁h17.12.26が理由不備で破棄しています。

A地裁H28.9.27
第1 ホテルにおけるd子との淫行(青少年条例違反罪)
第2 d子(11)が児童であることを知りながら 某日、被告人方において、デジカメでで撮影保存していた同児童を相手方とする性交に係る姿態、同児童に口淫させる姿態 被告人が児童の陰部を触る姿態の静止画像データ10点を、パーソナルコンビュータに接続された電磁的記録媒体である外付けHDDに記録して保存して、もって、1号 2号 3号に該当する姿態を、視覚により認識することができる方法により、電磁的記録にかかる記録媒体に描写した児童ポルノを製造した。
法令適用
第2の所為 包括して児童ポルノ法7条4項(2項)

A地裁H支部h27.2.6
平成26年11月25日起訴
A地検H支部検察官事務取扱検事 y
公訴事実
被告人は,c子(当時11歳)が18歳に満たない児童であることを知りながら某日,被告人方において,撮影機能付携帯電話機で撮影,保存していた同児童を相手方とする性交に係る姿態,同児童に被告人の陰茎を口淫させる姿態及び同児童にその陰部等を露出させた姿態の動画データ16点を,パーソナルコンビュータに接続された電磁的記録媒体である外付けハードディスクに記録して保存し,もって児童を相手方とする性交又は性交類似行為に係る児童の姿態及び衣服の全部又は一部を着けない児童の姿態であって性欲を興奮させ又は刺激するものを視覚により認識することができる方法により描写した児童ポルノを製造したものである。
罪名及び罰条
児童買春,児童ポルノに係る行為等の処罰及び児童の保護等に関する法律違反
平成26年法律第79号による改正前の同法律7条3項,2条3項1号,3号

s高裁a支部H270630
第2 訴訟手続の法令違反の主張(控訴理由第2ないし第6)について
 1 論旨は,平成26年11月25日付け起訴状記載の公訴事実(以下「当初訴因」という。)には3項製造罪の構成要件である「姿態をとらせ」た事実の記載がなく,訴因が特定されていないから,これによる公訴提起は刑事訴訟法256条3項に違反し,また,当初訴因として記載された事実が真実であっても,何らの罪となるべき事実を包含していないから,公訴を棄却すべきであるのに,これをしなかった原判決には訴訟手続の法令違反がある,というのである。
 そこで検討すると,3項製造罪においては児童ポルノ法2条3項各号のいずれかに掲げる姿態を児童にとらせ,これを電磁的記録に係る記録媒体に記録する行為のみならず,このような行為をした者が,当該電磁的記録を別の記録媒体に記憶させて児童ポルノを複製する行為も同罪に当たると解される(最高裁平成18年2月20日第三小法廷決定・刑集60巻2号216頁参照)。後者の行為類型の場合,3項製造罪は身分犯的な犯罪と解されるから,実行行為(製造行為)は,自ら記録媒体に記録した電磁的記録を別の記録媒体に複製して児童ポルノを作成する行為,すなわち,複製行為であり,先行する「姿態をとらせる行為」は,製造行為とは別の行為であって,3項製造罪の実行行為には該当しない。しかし,「姿態をとらせる行為」は後者の行為類型の主体であることを基礎付けるものであることからすれば,これをできる限り特定して記載する必要があるというべきである。これを前提に弁護人の主張を検討すると,記録によれば,確かに当初訴因には「姿態をとらせ」た事実は明記されていないが,被告人が被害児童を相手方とする性交に係る姿態等を撮影,保存していた旨の記載があり,その罰条に児童ポルノ法7条3項,2条3項1号,3号と記載されていることからすれば,当初訴因が特定を欠くものとはいえない。また,当初訴因は,その記載内容に照らすと,3項製造罪における後者の行為類型である複製行為を起訴したものと解されるから,それが3項製造罪を構成する犯罪事実を包含していない(刑事訴訟法339条1項2号)ものともいえない。論旨は理由がない。
2 論旨は,当初訴因は,3項製造罪について,平成26年4月30日から同年5月11日までの6回の撮影行為は被告人の犯意に照らすと3罪であり,これらは併合罪と評価され,同月24日の製造行為(複製行為)とは併合罪の関係に立つのに,これらを1個の訴因として記載しており,しかも平成27年2月4日付け訴因変更請求書に基づき変更が許可された訴因(以下「変更後訴因」という。)においても,撮影行為については「秋田県内」で「6回」とされるのみで,それぞれの撮影行為の日時,場所が特定されておらず,訴因が特定されているとはいえないから,本件公訴提起は刑事訴訟法256条3項に違反し,公訴を棄却するべきであるのに,これをしなかった原判決には訴訟手続の法令違反がある,というのである。
 しかしながら,本件3項製造罪は,同一の被害児童に対して平成26年4月30日から同年5月11日までの12日間,前後6回にわたり被告人を相手方とする性交その他の姿態をとらせ,これらを撮影,保存していた動画データ6点を,同月24日に本件ハードディスクに複製して児童ポルノを製造したというものであるところ,前述のとおり,当初訴因及び変更後訴因とも,上記のように撮影,保存していた動画データ6点を本件ハードディスクに複製した行為のみを3項製造罪の実行行為として起訴したものであり,それは一罪となると解される(原判決は,これを包括一罪と評価しているが,実行行為である複製行為は,被告人が複製の対象である動画データ6点を短時間に連続して複製しており,社会通念上一個の行為とみられるから,原判決の評価は相当ではない。)。そして,変更後訴因において,その複製行為は日時,場所,方法をもって特定されており,行為類型の主体であることを基礎付ける事実である動画データ6点の撮影,保存行為についても,当初訴因よりも,期間,場所,回数,姿態の内容等がより具体的なものになっているから,全体として訴因の明示に欠けるところはない。よって,本件3項製造罪の起訴は刑事訴訟法256条3項に違反するものとはいえない。論旨は理由がない。
3 論旨は,変更後訴因について,製造された6点の動画データにつき,それぞれの動画データが児童ポルノ法2条3項1号又は3号のいずれに該当するのかを明示しておらず,刑事訴訟法256条3項に違反するから,公訴を棄却するべきであるのに,これをしなかった原判決には訴訟手続の法令違反がある,というのである。
 しかしながら,変更後訴因において,3項製造罪の実行行為である複製行為の対象である6点の動画データそれぞれについて,児童ポルノ法2条3項各号所定のどの姿態に該当するのかを明示してはいないが,それらがどのような姿態に関する動画データであるのかを概括的に特定しており,その適用すべき罰条として児童ポルノ法7条3項のほか,2条3項1号,3号を掲げていることからすれば,訴因が特定されていないとはいえない。そうすると,本件3項製造罪の起訴が刑事訴訟法256条3項に違反するものとはいえない。論旨は理由がない。
4 論旨は,変更後訴因には日時が幅のある記載がなされ,児童ポルノの内容が主張されていないのに,その点について訴因変更手続を経ないまま,原判決は,その別表において6回の撮影行為についてそれぞれの日時と児童ポルノの内容を判示しており,公訴事実に記載のない犯行日時及び内容を認定した原判決は審判の請求を受けない事件について判決をしたものであって,原判決には訴訟手続の法令違反がある,というのである。
 しかしながら,前述のとおり,原判決が認定した6回の撮影行為は,被告人が製造行為(複製行為)の主体であることを基礎づける事実ではあるものの,3項製造罪の実行行為とはいえない上,原判決は,検察官が変更後訴因において包括的に記載した6回の撮影行為それぞれについて,関係証拠から各撮影行為の日時及び内容を特定して認定したものであるから,検察官が変更後訴因に記載していない別の犯罪事実を認定したものではなく,審判の請求を受けない事件について判決をした(刑事訴訟法378条3号参照)ものとはいえない。論旨は理由がない。
5 論旨は,複製行為単独では罪とならないから,これを本件3項製造罪の実行行為と評価できず,撮影行為ごとに犯罪が成立し,複数の3項製造罪の罪数は原則として併合罪であると解するべきであり,本件3項製造罪に係る当初訴因と変更後訴因は公訴事実の同一性を欠くから,訴因変更を許可した原判決には訴訟手続の法令違反がある,というのである。
 しかしながら,前述のとおり,本件3項製造罪の実行行為は複製行為であるというべきであり,当初訴因と変更後訴因との間で基本的事実関係は同一である上,上記2のとおり本件3項製造罪は一罪であると解され,罪数評価においても両訴因に異なるところはないから,当初訴因と変更後訴因とが公訴事実の同一性を欠くものとは認められない。したがって,その訴因変更を許可した原審の措置に訴訟手続の法令違反はない。論旨は理由がない。

「条例の各規定に該当する場合においても刑法その他法律に正条があるときは,これらの法律による。」の法的性格について、「刑法の罰条と条例の罰条が補充関係にあることを明らかにするものであって,訴因外の刑法の罰条の構成要件該当事実が条例違反罪の訴因との関係で処罰阻却事由となるものではない」高松地裁R2.9.29


 刑法優先という規定は、香川県条例と北海道条例にあります。
 青少年条例のわいせつ行為には「性的意図」が必要とされています。

香川県青少年保護育成条例の解説
(淫行又は隈せつ行為等の禁止)
第16条
1何人も、青少年に対し、淫行又は狼せつの行為をしてはならない。
【要旨】
本条は、青少年に淫行(みだらな行為)やわいせつの行為を行ったり、教えたり、見せたりする行為を禁止する規定である。
【解説】
(4) 「隈せつの行為」とは、いたずらに性欲を刺激したり、露骨な表現によって健全な常識ある一般社会人に性的差恥心や嫌悪の情を起こさせたりする行為をいう。

第29条
第22条から前条までの規定に該当する場合においても、刑法(明治40年法律第45号)、児童福祉法(昭和22年法律第164号)その他法律に正条があるときは、これらの法律による。
【解説】
本条は、第22条から第28条の規定を適用するに当たって、刑法、児菫福祉法条があるときは、これら法律が優先して適用されることを規定したものである

北海道青少年健全育成条例の解説2020
(淫行等の禁止)
第38条
1何人も、青少年に対し、淫行又はわいせつな行為をしてはならない。
(3) 「わいせつな行為」とは、いたずらに性欲を刺激し、興奮させたり、その露骨な表現によって、健全な常識ある一般社会人に対し、性的な羞恥、嫌悪の情をおこさせる行為をいう。
(4) 「してはならない」とは、青少年を相手方として、淫行又はわいせつな行為を行うことを禁止しているのであり、相手方の同意、承諾の有無及び対価の授受の有無を問わない。
・・・
第67条
第57条から前条までの規定に該当する場合においても、刑法(明治40年法律第45号)又は児童福祉法その他の法令に正条があるときは、これらの法律による。
【趣旨】
本条は、本条例の違反事項について他の法令に正条があるときは、これらの法律によることを定めた規定である。
【解説】
本条例の違反事項について他の法令に正条があるときは、例えば、次のような場合をいう。
(1) 第15条第1項の規定による有害興行の上映、上演等、第16条第2項の規定による有害図書類販売等又は第22条第1項の規定による有害広告物の表示等が刑法第175条(わいせつ物頒布等)に該当するときは、同法による。
(2) 第35条第3項による深夜同伴が刑法第224条(未成年者略取及び誘拐)に該当するときは、同法による。
(3) 第38条の規定による淫行、わいせつな行為が刑法第176条(強制わいせつ)、第177条(強制性交等)、第178条(準強制わいせつ及び準強制性交等)、第179条(監護者わいせつ及び監護者性交等)に該当するときは、同法による。
(4) 第40条の規定による場所の提供が売春防止法第11条(場所の提供)、児童福祉法第34条第1項(禁止行為)の該当するときは、同法による。
(5) 第53条の規定による立入調査について刑法第95条(公務執行妨害及び職務強要)に該当する場合は、同法による。

高松地裁R2.9.29
(弁護人の主張に対する判断)
弁護人は,判示の事実関係については争わない旨陳述しつつ,
①県青少年保護育成条例(以下,単に「条例」という。)29条には「第22条から前条までの規定に該当する場合においても刑法その他法律に正条があるときは,これらの法律による。」と定められているから,刑法の準強制わいせつ罪の構成要件の充足が条例違反罪の訴因との関係で処罰阻却事由となるところ,本件は被害者の心神喪失等に乗じて行われた可能性があり,被告人の行為は,行為の客観面において準強制わいせつ罪の構成要件を満たすから,同条により条例違反罪は適用されない,
②条例16条1項の「狼せつ」は定義ができないから,刑罰法規としての明確性を欠き無効である,
~~~などと主張する。
しかしながら,①については,条例29条は,刑法の罰条と条例の罰条が補充関係にあることを明らかにするものであって,訴因外の刑法の罰条の構成要件該当事実が条例違反罪の訴因との関係で処罰阻却事由となるものではなく,弁護人の主張は独自の見解として採用の限りではない。
また,②については,行為そのものが持つ性的性質から条例16条1項の「猥せつ」の該当性を判断することができ,判示行為がこれに当たることも明らかであって,弁護人の主張は採用できない(なお,判示事実のうち「単に自己の性的欲望を満たす目的で」との部分は,判示行為が青少年を単に自己の性的欲望を満足させるための対象として扱っているとしか認められないようなものとして,条例16条の「猥せつの行為」に該当することを示すものである。)。

「わいせつな行為とは、被害者の立場に立った一般人の性的差恥心の対象となる行為をいう。」刑法Ⅱ各論亀井源太郎、小池信太郎、佐藤拓磨・薮中悠、和田俊憲

 「被害者の立場に立った一般人」というのがよくわかりません。
 沐浴中の乳児の写真を撮るのは、乳児の立場に立つと、性的羞恥心を覚えるでしょうか。
 しっくりくる定義はいつできるのでしょうか

p30
強制わいせつ罪は、①相手方の年齢によらず暴行・脅迫を用いてわいせつな行為をする場合と、②13歳未満の者に対して暴行・脅迫を用いずに単にわいせつな行為のみをする場合とが処罰対象である。
13歳という基準は、一般に性的行為に対する同意能力をそなえる年齢と解されているが、被害者の意思いかんにかかわらず性的行為が人格形成に悪影響を及ぼす年齢と位置づける見解もある。いずれにせよ、自己決定の意思を有しない乳児も被害者に含まれる以上、13歳未満に対する本罪は、被害者の健全な性的発達をも保護法益に含むと解するのが妥当であろう。
l わいせつな行為
実行行為であるわいせつな行為とは、被害者の立場に立った一般人の性的差恥心の対象となる行為をいう。公然わいせつ罪(→220頁)では行為を観察する者の蓋恥心が問題なのに対して、本罪では行為の客体となる者の差恥心が問われることから、意思に反する接吻のように公然わいせつ罪を構成しない行為でも、本罪のわいせつ行為にはあたりうる。
身体的接触を伴うものが中心であり、性器への直接的接触をもたらす行為(相手方の陰部を触る行為や自らの陰部を触らせる行為など)や、性器に準ずるものとして女性の乳房を弄ぶ行為や肛門への異物の挿入、さらに接吻などがこれにあたる。接触は着衣の上からでもよいが、一定の執勧さが要求されると解されているため、それに達しない行為は本罪にあたらず、公共の乗り物などにおける場合に各都道府県の迷惑防止条例違反となるにとどまる。
身体的接触がない場合でも、裸にして写真を撮る行為や手淫・射精を見せる行為は、わいせつな行為にあたるとされる。

提供目的で姿態をとらせて児童ポルノを製造したことが証拠上明らかであっても、姿態をとらせて製造罪で有罪にできる(大阪高裁r2.10.2)

 検事の論稿によると、7条4項(h26改正前の7条3項)は「前項に規定するもののほか、」とされているので、提供目的がある場合を含まないと解釈されていますが、大阪高裁r2.10.2は「児童ポルノ法7条4項の「前項に規定するもののほか」との規定ぶりからして同項は同条3項の補充規定であり,両規定に係る罪はいわゆる法条競合の関係に立つと解されるが,これは,ある事実が同条3項に該当する場合に実体法上およそ同条4項の罪が成立し得ないということまでをも意味するものではない」と判示しています。

 奥村は、姿態とらせて盗撮した場合について「ひそかに製造罪」の成立を主張したことがありますが、「4項の罪が成立する場合には同条5項の罪は成立しない」と判示されました。(大阪高裁H28.10.26)
 7条の各製造罪の関係について、高裁がぶれています。

H26改正前
第七条(児童ポルノ所持、提供等)
1児童ポルノを提供した者は、三年以下の懲役又は三百万円以下の罰金に処する。電気通信回線を通じて第二条第三項各号のいずれかに掲げる児童の姿態を視覚により認識することができる方法により描写した情報を記録した電磁的記録その他の記録を提供した者も、同様とする。
2前項に掲げる行為の目的で、児童ポルノを製造し、所持し、運搬し、本邦に輸入し、又は本邦から輸出した者も、同項と同様とする。同項に掲げる行為の目的で、同項の電磁的記録を保管した者も、同様とする。
3前項に規定するもののほか、児童に第二条第三項各号のいずれかに掲げる姿態をとらせ、これを写真、電磁的記録に係る記録媒体その他の物に描写することにより、当該児童に係る児童ポルノを製造した者も、第二項と同様とする。
・・・
現行法(h26改正後)
第七条(児童ポルノ所持、提供等)
2児童ポルノを提供した者は、三年以下の懲役又は三百万円以下の罰金に処する。電気通信回線を通じて第二条第三項各号のいずれかに掲げる児童の姿態を視覚により認識することができる方法により描写した情報を記録した電磁的記録その他の記録を提供した者も、同様とする。
3前項に掲げる行為の目的で、児童ポルノを製造し、所持し、運搬し、本邦に輸入し、又は本邦から輸出した者も、同項と同様とする。同項に掲げる行為の目的で、同項の電磁的記録を保管した者も、同様とする。
4前項に規定するもののほか、児童に第二条第三項各号のいずれかに掲げる姿態をとらせ、これを写真、電磁的記録に係る記録媒体その他の物に描写することにより、当該児童に係る児童ポルノを製造した者も、第二項と同様とする。

島戸純「児童買春,児童ポルノに係る行為等の処罰及び児童の保護等に関する法律の一部を改正する法律について」警察学論集57-08(2004.8.10)
p97
ウ構成要件
第2項に規定するもののほか、児童に第2条第3項各号のいずれかに掲げる姿態をとらせ、これを写真、電磁的記録に係る記録媒体その他の物に描写することにより、当該児童に係る児童ポルノを製造する行為である。
(ア) 姿態をとらせ」
「姿態をとらせ」とは、行為者の言動等により、当該児童が当該姿態をとるに至ったことをいい、強制によることは要しない。いわゆる盗撮については、本項の罪に当たらないm。一般的にそれ自体が軽犯罪法に触れるほか、盗撮した写真、ビデオ等を配布すれば名誉致損の罪も成立し得るし、他人に提供する目的で児童ポルノを製造すれば、第7条第2項、第5項により処罰されることとなる。
(イ) 第1項の目的で児童ポルノを製造した場合は本項の罪からは除かれる。これは単に重複を避けるための技術的なものにすぎない。
・・
p98
オ他罪との関係
他人に提供する目的又は公然陳列目的をもって第7条第3項に規定する児童ポルノの製造行為を行った場合、第7条第3項は、第2項に規定するものを除いているので、他人に提供する目的等があった場合には、その第3項の犯罪は成立しない。
なお、第2項は、第5項に該当する場合を含むものであり、第3項においては、第2項に規定する場合のみを除けば、当然に第5項に該当する場合も除くこととなるものであるから、第3項において、第5項に該当する場合を除くこととはしなかったものである。
・・・・・・


阿部健一検事「児童買春・ポルノ禁止法及び人身売買罪等の人身の自由を侵害する行為についての犯罪事実等のポイント」捜査研究No.662p3(2006.8.5)
改正前の法7 条1 項の「頒布」販売」「業として貸与」は,法7 条1 項の提供に含まれると解される。

h26改正で新説されたひそかに製造罪でも、「いずれにも該当しない場合のみ,本条項の盗撮による児童ポルノ製造罪が成立する。」とされています。

坪井麻友美「児童買春・児童ポルノに係る行為等の処罰及び児童の保護等に関する法律の一部を改正する法律について」法曹時報 第66巻11号
ウ他の製造罪との適用関係
本条項は「前2項に規定するもののほか」と規定しており,第7条第3項の提供目的製造罪と同条第4項の「姿態をとらせ」製造罪のいずれにも該当しない場合のみ,本条項の盗撮による児童ポルノ製造罪が成立する。
なお,不特定若しくは多数の者に提供し,又は公然と陳列する目的がある場合には, より法定刑の重い同条第7項の罪が成立する。

阪高裁r02.10.2
判決
主文
原判決を破棄する。
理由
本件控訴の趣意は,弁護人奥村徹作成の控訴趣意書及び控訴趣意補充書に各記載のとおりであるから,これらを引用するが,理由不備,理由齪鵬訴訟手続の法令違反,法令適用の誤り,量刑不当の各主張である。
3原判示第4の事実に関する理由不備,理由齟齬,法令適用の誤りの各主張について
(1)論旨は,児童ポルノの製造に係る行為について児童ポルノ法7条3項の罪が成立する場合には,同行為が同条4項の罪に該当する場合であっても,法条競合により同項の罪は成立せず,同条3項の罪が成立しないことが同条4項の罪の構成要件になるという解釈を前提に,原判決が原判示第4の事実について,①(罪となるべき事実)の項において,同条3項の罪が成立しないことを摘示しなかったことは理由不備の違法に当たり,②提供目的により本件の児童ポルノの製造に及んだ旨の被告人の供述を含む供述調書を(証拠の標目)の項に掲げ,(量刑の理由)の項でも提供目的を認定しながら,(罪となるべき事実)の項で同条4項に係る事実を認定したことは理由齪鋸の違法に当たり,③同条3項の罪が成立する本件の事実関係において同条4項の罪の成立を認めたことは,判決に影響を及ぼすことが明らかな法令適用の誤りに当たる,というのである。
(2)そこで原審記録を調査して検討するに,児童ポルノ法7条4項の「前項に規定するもののほか」との規定ぶりからして同項は同条3項の補充規定であり,両規定に係る罪はいわゆる法条競合の関係に立つと解されるが,これは,ある事実が同条3項に該当する場合に実体法上およそ同条4項の罪が成立し得ないということまでをも意味するものではなく,当該事実に同条3項を適用する場合には,同事実について同条4項の適用が排除されることを意味し,同条3項の罪が成立しないことが同条4項の罪の構成要件になるとは解されない。
したがって,原判決の理由不備の違法をいう論旨は,そのよって立つ解釈自体が採用し得ないから,失当である。
(3)そして,訴因の構成.設定は検察官の合理的な裁量に委ねられており,検察官は,実体的には児童ポルノ法7条3項を構成すると評価し得る行為についても,立証の難易等諸般の事情を考慮して同条4項の訴因により公訴提起することは許容され,裁判所も,当該公訴事実に掲げられた行為について,同条4項の成立に証拠上欠けるところがないのであれば,原則として,その公訴事実に沿ってこれを認定すれば足りるというべきである。

阪高裁H28.10.26
第10,第12及び第13の各2の事実における法令適用の誤りの主張について。
論旨は,第10,第12及び第13の各2の製造行為は,いずれも盗撮によるものであるから,法7条4項の製造罪ではなく,同条5項の製造罪が成立するのに,同条4項を適用した原判決には,法令適用の誤りがある,というものである。
しかしながら,法7条5項は「前2項に規定するもののほか」と規定されているから,同条4項の罪が成立する場合には同条5項の罪は成立しないことが,法文上明らかである。
所論は,法7条5項に「前2項に規定するもののほか」と規定されたのは立法のミスであってこの文言に特段の意味はないとした上で,法7条5項の罪と他の児童ポルノ製造の罪との関係は前者が後者の特別法の関係だと主張する。
しかし,法7条5項の罪が追加された法改正の趣旨を考慮しても所論のように「前2項に規定するもののほか」に意味がないと解する必要はなく,法7条5項の罪が特別法の関係にあるとの所論は,独自の見解であって,採用できない。いずれも法7条4項の罪が成立しているとした原判決の法令適用に誤りはない。