児童ポルノ・児童買春・児童福祉法・監護者わいせつ・不同意わいせつ・強制わいせつ・青少年条例・不正アクセス禁止法・わいせつ電磁的記録弁護人 奥村徹弁護士の見解(弁護士直通050-5861-8888 sodanokumurabengoshi@gmail.com)

性犯罪・福祉犯(監護者わいせつ罪・強制わいせつ罪・児童ポルノ・児童買春・青少年条例・児童福祉法)の被疑者(犯人側)の弁護を担当しています。専門家向けの情報を発信しています。

前田雅英「サイバー犯罪と刑事法」罪と罰48巻04号11頁

 サーバーで陳列するとか、ファイル共有ソフトで流すのは、「頒布」ですよね。

前田雅英「サイバー犯罪と刑事法」
(2) 175条の改正
インターネット上のわいせつ表現等が問題となることが増加し青少年にも強い影響を与え得る媒体だけに,法益侵害性は高く,判例の中にはわいせつ画像情報を「わいせつ物」として規制するものが登場してきていた(岡山地判平9・12・15判タ972・280.さらに大阪地判平11・3・19判タ1034-283)。ただ.「物」に情報を含めることに異論も存在したので,平成23年6月の刑法改正で,わいせつ物とは区別された電磁的記録に係る記録媒体の頒布・公然陳列の処罰と電気通信の送信によるわいせつな電磁的記録の頒布を処罰することとした。
もともと. 175条のわいせつ「物」は有体物と考えられ,わいせつピデオに関しでもディスプレイに映し出された「映像」ではなくビデオテープそのものがわいせつ物とされ,わいせつな音声ではなく再生機が「わいせつ物」と認定された(大阪地判平3・12・2)。そして,インターネットにおけるわいせつ事犯の場合も,わいせつ画像データが記録されているサーバー・コンビュータが「わいせつ物」だということで,判例は確定していたといえよう(最決平13・7・16刑集55-5-317)。しかし,今次の改正で,わいせつな電磁的データを記録した媒体は.「わいせつ物」ではなく,その下位概念である電磁的記録に係る記録楳体になり,その範囲で判例の考え方は修正されざるを得なくなった。ただ,処罰範囲に変更はない。そして,電磁的記録そのものの頒布が処罰されることが明確になった。

吉田雅之「いわゆるサイバー刑法の概要について」罪と罰48巻04号13頁
(2) 第175条(わいせつ物頒布等)
改正前の本条前段においては,その対象が「物」とされていたため,例えば,電子メールでわいせつな画像を不特定又は多数の者に送信して取得させるなどの行為については,その適用の可否について裁判例が分かれていたが,有体物たるわいせつ物の頒布と実質的に同等の違法性を有するといえるそれらの行為が処罰対象に含まれることを明確にするため.「電気通信の送信によりわいせつな電磁的記録その他の記録を頒布」する行為が処罰対象として掲げられた(第1項後段)。
また,改正前の本条後段では.「販売の目的」とされていたところ,「販売」とは,所有権の移転を伴うものと解されてきたが,現在では,わいせつな電磁的記録自体を頒布する場合や,有体物たるわいせつ物を有償でレンタルする場合のように,所有権の移転を伴わずに拡散させる行為が容易に行われるようになっていることから,これらの行為を目的とする場合も処罰対象に含まれることを明確にするため.「有償で頒布する目的」と規定することとされた(第2項)。これに伴い,改正後は.「頒布」は,従来の「販売」を含む概念として用いられることとなったため,改正前の本条前段にあった「販売し」との文言は削ることとされた(第1項前段)。