児童ポルノ・児童買春・児童福祉法・監護者わいせつ・不同意わいせつ・強制わいせつ・青少年条例・不正アクセス禁止法・わいせつ電磁的記録弁護人 奥村徹弁護士の見解(弁護士直通050-5861-8888 sodanokumurabengoshi@gmail.com)

性犯罪・福祉犯(監護者わいせつ罪・強制わいせつ罪・児童ポルノ・児童買春・青少年条例・児童福祉法)の被疑者(犯人側)の弁護を担当しています。専門家向けの情報を発信しています。

「児童ポルノ禁止法の改正ができなかったのは残念」

 御著書のアップデートをお願いします。
 御著書と判例・実務がずれて「よくわからない」状況ですので。

http://www.yomiuri.co.jp/e-japan/tochigi/news/20090818-OYT8T00033.htm
森山氏は議員生活を振り返り、「県民のみなさんのおかげで、色々な仕事ができた。感謝している」と語った。海部内閣の1989年に女性初の官房長官を務めたことが「一番印象的だった」という一方で、成立に向けて努力した「児童ポルノ禁止法の改正ができなかったのは残念」と述べた。

よくわかる改正児童買春・児童ポルノ禁止法

よくわかる改正児童買春・児童ポルノ禁止法




 奥村もわからないので、こういうことを森山先生と野田先生に質問しています。8/14 FAX

 1点目は児童ポルノの被害児童の処罰についてです。
 最近、

裸の画像を高1に送らせる 容疑の被告、東灘署が逮捕=兵庫
 女子高生に裸の携帯画像を送らせたとして東灘署が被告(22)(強姦(ごうかん)未遂罪で起訴)を児童買春・児童ポルノ禁止法違反容疑で逮捕していたことがわかった。
 捜査関係者によると、被告は1月16〜21日、出会い系サイトで知り合った三重県内の高校1年の女子生徒(16)が18歳未満と知りながら、裸の画像を撮影させ、自分の携帯電話に送信させた疑い。
 調べに対し、被告は容疑を認めているといい、生徒は「いい人だと思ってメールを交換した。裸の画像を送らないと、メールが来なくなってさみしいと思った」と話しているという。
 被告は3月、帰宅中の女性会社員(22)を乱暴しようとしたとして強姦未遂容疑で逮捕された。
[読売新聞社 2009年6月10日(水)]

と報道されるように、犯人が児童に頼んで(強要せず)裸の画像を送らせる事件が見受けられます。
 この点について、御著書では

「よくわかる改正児童買春ポルノ法」P190
Q42 18歳未満の児童が、交際相手に対し、自分の裸体の写真や、その交際相手との性交等の写真を渡した場合にも第7条第1項の罪は成立するのですか。

他人に児童ポルノを提供する行為については、第7条第1項の罪が成立し、これは児童による場合であっても、自己を描写したものであっても、また交際相手に対するものであっても、変わるところがありません。
もっとも、第7条第1項の罪が保護しようとする対象は、主として描写される児童の尊厳にあると考えられますから、当該児童ポルノにおいて描写される児童がその交際相手に対して提供したり、交際相手が当該被描写児童に対して提供する場合のように、提供者、被提供者と描写される児童との関係や被描写児童の承諾の経緯、理由等を考察し、当該提供行為について真摯に承諾し、かつその承諾が社会的に見て相当と認められる場合には、違法性が認められない場合もありうると考えられます。

Q48
被写体となる児童が児童ポルノの製造に同意していたとしても、第7条第3項の罪は成立するのですか。目的を問わず児童ポルノの製造(いわゆる単純製造)を処罰することにすると、交際中の高校生どうしが相手の裸体の写真を撮影する行為まで処罰されることになってしまいませんか。

第7条第3項の罪は、児童に第2条第3項各号に規定する姿態をとらせ、これを写真、電磁的記録に係る記録媒体その他の物に描写してその児童についての児童ポルノを製造する行為について、その児童の心身に有害な影響を与える性的搾取行為にほかならず、かつ、流通の危険性を創出する点でも非難に値するので、新たに処罰の対象とするものです。
この場合において、たとえ描写される児童がその製造について同意していたとしても、その児童の尊厳が害されているといえますし、そもそも、この児童の同意は、この児童の判断能力が未成熟なことに基づくものであると考えられますので、当罰性が認められ、第7条第3項の罪が成立すると解されます。
お示しの事例のように、児童が、真摯な交際をする相手による写真撮影を承諾する場合のように、製造者と描写される児童との関係、描写される児童の承諾の有撫及びその経緯(社会的相当性)等から、刑法上の違法性が認められない等の理由により、犯罪が成立しない場合もあると考えられます。

とされていますので、「被害児童自身が7条2項の製造罪+7条1項の提供罪の正犯、頼んだ大人は共犯ないし共同正犯」という結論になると思われますが、そうなるとお考えでしょうか?

 2点目は撮影を伴う強制わいせつ罪と7条3項の製造罪との関係についてです。
 ご案内の通り、被害者の裸を撮影する行為は、判例では強制わいせつ罪における「わいせつ行為」とされています。

静岡地方裁判所浜松支部判決平成11年12月1日
判例タイムズ1041号293頁
 (罪となるべき事実)
 被告人は、平成一一年四月二五日ころ、静岡県浜松市〈番地等略〉五階駐車場に駐車中の普通乗用自動車内において、甘言を用いて誘い出した甲野春子(当一一年。昭和五三年五月一八日生)および乙山夏子(当八年。平成三年七月一日生)に対し、同女らが満一三歳未満であることを知りながら、「ゲームボーイを買うお金をあげるから、裸の写真を撮らせて。」などと申し向け、同女らをしてその着衣を脱がせて全裸にさせたうえ、同女らの陰部等の写真を撮影し、もって一三歳未満の婦女に対しわいせつな行為をしたものである。

 他方、上記事例を借りれば「同女らをしてその着衣を脱がせて全裸にさせたうえ、同女らの陰部等の写真を撮影し」という行為は、現行法に当てはめると「児童に第二条第三項各号のいずれかに掲げる姿態をとらせ、これを写真、電磁的記録に係る記録媒体その他の物に描写することにより、当該児童に係る児童ポルノを製造した」にほかならないので、3項製造罪を構成するように思われます。

第7条(児童ポルノ提供等)
3 前項に規定するもののほか、児童に第二条第三項各号のいずれかに掲げる姿態をとらせ、これを写真、電磁的記録に係る記録媒体その他の物に描写することにより、当該児童に係る児童ポルノを製造した者も、第一項と同様とする。

 児童ポルノ罪の保護法益からみて、製造罪が強制わいせつ罪に吸収されるという結論はないと思います。
 そうしますと、児童への強制わいせつ罪の機会に撮影を行った場合には 刑法54条1項の「一個の行為が二個以上の罪名に触れ」ということになって、科刑上一罪(観念的競合)となるという理解でよろしいでしょうか?

刑法
第54条(一個の行為が二個以上の罪名に触れる場合等の処理)
一個の行為が二個以上の罪名に触れ、又は犯罪の手段若しくは結果である行為が他の罪名に触れるときは、その最も重い刑により処断する。
2 第四十九条第二項の規定は、前項の場合にも、適用する

 もし併合罪になるというお考えであれば、理由を御教授いただけると幸いです。