児童ポルノ・児童買春・児童福祉法・監護者わいせつ・不同意わいせつ・強制わいせつ・青少年条例・不正アクセス禁止法・わいせつ電磁的記録弁護人 奥村徹弁護士の見解(弁護士直通050-5861-8888 sodanokumurabengoshi@gmail.com)

性犯罪・福祉犯(監護者わいせつ罪・強制わいせつ罪・児童ポルノ・児童買春・青少年条例・児童福祉法)の被疑者(犯人側)の弁護を担当しています。専門家向けの情報を発信しています。

後半の撮影行為がわいせつ行為なのか、3項製造罪なのかが不明確な事案(高松高裁H22.9.7)

 こういう罪となるべき事実。

原判決
罪となるべき事実
平成22年10月1日午後3時30分ころ,大阪市北区扇町公園公衆トイレの女子トイレ内において,
b(当時4歳)に対し,
同女が13歳未満の児童であることを知りながら,
同女に対し,
そのズボンと下着を脱がせて下半身を裸にして,同女の陰部を露出させる姿態をとらせ,これを携帯電話機付属のカメラで撮影し,
さらに,「わいせつ」行為をした上,これを同カメラで撮影し,その電磁的記録を同携帯電話機に内蔵する記録媒体に記録して,
もって,13歳未満の女子に対し,わいせつな行為をするとともに,衣服の一部を着けない児童の姿態であって性欲を興奮させ又は刺激するものを視覚により認識することができる方法により電磁的記録に係る記録媒体に描写した児童ポルノを製造した

 素直に読むと

  • そのズボンと下着を脱がせて下半身を裸にして,同女の陰部を露出させる姿態をとらせ,これを携帯電話機付属のカメラで撮影し(画像1),
  • さらに,「わいせつ」行為をした上,これを同カメラで撮影し(画像2),その電磁的記録を同携帯電話機に内蔵する記録媒体に記録して,

の2個の3項製造罪が認定されているように見える。

 ところで画像2はわいせつ行為をされている現場写真には間違いないが、画面には主に顔のアップであって陰部等が写っていない。
 となると、後半の製造罪は成立しませんよね。
 これで破棄させれば、法定通算もらえる。
 そこでそういう主張をする。
 とすると、

高松高裁H22.9.7
第3 法令適用の誤りの主張について
 論旨は,①原判決は,原判示第2の事実において,「さらに,「わいせつ行為」をした上,これを同カメラで撮影し,その電磁的記録を同携帯電話機に内蔵する記録媒体に記録して,もって(中略),衣服の一部を着けない児童の姿態であって性欲を興奮させ又は刺激するものを視覚により認識することができ
る方法により電磁的記録に係る記録媒体に描写した児童ポルノを製造した」と認定し,児童ポルノ等処罰法7条3項,2条3項3号に該当するとしているが,同画像は,判文によっても,実際の画像をみても,児童ポルノを定義した同法2条3項3号に該当しないから,原判決には,判決に影響を及ぼすことが明らかな法令適用の誤りがあり,理由不備,事実誤認もある,というのである。
 しかし,①の被害者にわいせつ行為した画像が児童ポルノに該当しないとの点は,たしかに,同画像は,児童ポルノ等処罰法2条3項1号の「児童を相手方とする性交類似行為に係る児童の姿態」の画像に該当する可能性はあるが,被害者の衣服を着けない状態が,画像上は必ずしも判然としないから,同項3号には該当しない。
しかし,原判決は,強制わいせつ罪と児童ポルノ製造罪を観念的競合として,一個の事実の中で両罪に該当する事実を記載しており,「わいせつ行為」した上,これを同カメラで撮影した行為は,強制わいせつ罪に該当する事実でもあるから,原判決が,当該画像を記録したことをもって,児童ポルノ製造罪に該当すると認定,判断したとまでは断定できない。
仮に,原判決が,これをも児童ポルノ製造罪に該当するとしているとしても,これにより処断刑に差異を生じるものではなく,本件の犯情に照らしても,その誤りが判決に影響を及ぼすことが明らかとはいえない。

「原判決は,強制わいせつ罪と児童ポルノ製造罪を観念的競合として,一個の事実の中で両罪に該当する事実を記載しており,わいせつ行為した上,これを同カメラで撮影した行為は,強制わいせつ罪に該当する事実でもあるから,原判決が,当該画像を記録したことをもって,児童ポルノ製造罪に該当すると認定,判断したとまでは断定できない。」ということで、そもそも後半の撮影行為(画像2)の製造罪は起訴されてないし認定されてないんだとさ。
 それは訴因不特定ですよ。

 ところが、控訴趣意にはそういって排斥しておきながら、事実認定をちょっと修正しています。

第5 当審の判決
 よって,刑訴法397条2項により原判決を破棄し,同法400条ただし書を適用して当裁判所において更に判決することとし,原判決が認定した事実(ただし,原判決第2の事実中,「わいせつな行為をするとともに,」の後に,「同女の陰部を露出させる姿態をとらせ,これを携帯電話機付属のカメラで撮影し,その電磁的記録を同携帯電話機に内蔵する記録媒体に記録したことにより,」を挿入する。)に原判決挙示の法条(科刑上一罪の処理,刑種の選択,併合罪の処理,未決勾留日数の算入及び換刑処分を含む。)を適用して,主文のとおり判決する。

 ようするに、画像2の撮影行為は製造罪から外しているんですよ。

控訴審で修正後の
罪となるべき事実
平成22年10月1日午後3時30分ころ,大阪市北区扇町公園公衆トイレの女子トイレ内において,
b(当時4歳)に対し,
同女が13歳未満の児童であることを知りながら,
同女に対し,
そのズボンと下着を脱がせて下半身を裸にして,同女の陰部を露出させる姿態をとらせ,これを携帯電話機付属のカメラで撮影し,
さらに,「わいせつ」行為をした上,これを同カメラで撮影し,その電磁的記録を同携帯電話機に内蔵する記録媒体に記録して,
もって,13歳未満の女子に対し,わいせつな行為をするとともに,
同女の陰部を露出させる姿態をとらせ,これを携帯電話機付属のカメラで撮影し,その電磁的記録を同携帯電話機に内蔵する記録媒体に記録したことにより,
衣服の一部を着けない児童の姿態であって性欲を興奮させ又は刺激するものを視覚により認識することができる方法により電磁的記録に係る記録媒体に描写した児童ポルノを製造した

 ずるいぞ高松高裁。