こんなの児童ポルノ規制派に言わせれば、児童虐待の極致なんですが、児童ポルノ罪は立てにくい。
一見すると、「衣服を脱がして胸や下腹部などを触ったうえ、デジタルカメラで撮影した」というのは、強制わいせつ罪にも該当するし、3項製造罪(姿態とらせて製造)にも該当します。
で、観念的競合で立件しようと「衣服を脱がして胸や下腹部などを触ったうえ、デジタルカメラで撮影し、もって強制わいせつするとともに、児童ポルノを製造した」なんて訴因で起訴すると、同種余罪がかすがいで一罪になる危険があるし、東京高裁h19.11.6は強制わいせつ罪-製造罪併合罪説なので、訴因不特定になる。
じゃあ、併合罪で立件しようと、
「1 衣服を脱がして胸や下腹部などを触るなど強制わいせつした
2 同日時同場所においてデジタルカメラで撮影し3項製造した」
なんて書くと、今度は弁護人から観念的競合だと主張されて、これも裁判例があるから説得力ある。
無理して併合罪にしても、併合罪加重された上限付近で処断されることはないわけで、実益ない。だとすれば、検察官は児童ポルノ罪はあきらめて、「衣服を脱がして胸や下腹部などを触ったうえ、デジタルカメラで撮影し、もって強制わいせつした」と起訴するでしょ。
ところが東京高裁h19.11.6によれば、児童ポルノ罪を立てないとしても、「衣服を脱がして胸や下腹部などを触る」と「同日時同場所においてデジタルカメラで撮影し」は2個の行為なんでしょ。とすれば、「衣服を脱がして胸や下腹部などを触ったうえ、デジタルカメラで撮影し、もって強制わいせつした」は一個の訴因のように見えて併合罪の二個の訴因になりますよね。
これまで、撮影行為は強制わいせつ罪だったのに、これは困りましたね。
東京高裁h19.11.6が間違っているんでしょうね。
そんで製造罪で強制わいせつ数罪がかすがいになるというのは、立法ミスということでいいんじゃないですか。
http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20080315-00000914-san-soci
容疑者は今年1月12日午後3時35分ごろ、埼玉県志木市本町の市道で、塾へ行く途中の同県朝霞市の小4女児=当時(10)=を、近くに駐めてあった乗用車の後部座席に連れ込み、衣服を脱がして胸や下腹部などを触ったうえ、デジタルカメラで撮影した疑い。
http://www.yomiuri.co.jp/national/news/20080315-OYT1T00393.htm?from=navr
容疑者は1月12日午後3時35分ごろ、埼玉県志木市内の路上で、1人で歩いていた小学4年の女児(当時10歳)を乗用車に連れ込み、衣服を脱がして体を触り、デジタルカメラで撮影するなどした疑い。
法令適用は混迷していますが、量刑だけは厳しくて、早めに示談しないと、実刑になっちゃいますよ。
改正法が審議されるのなら、こう質問して欲しいですね
Q「3項製造罪(姿態とらせて製造)に該当する行為というのは、13歳未満だとか、強制がある場合には、強制わいせつ罪として処罰されますよね。」
A「そのとおり」
Q「その場合は、両罪は観念的競合ですか?」
A「そのとおり」
Q「被害者複数の場合は、1名ごとに1罪で併合罪ですよね。」
A「そのとおり」
Q「ところで、製造犯人がダビング繰り返してPCのHDDに記録した場合は製造罪の包括一罪ですね?」
A「そのとおり」
Q「被害者複数の場合は、多数被害者の画像を、製造犯人がダビング繰り返して1個のHDDにまとめて記録し、さらにダビングした場合は科刑上一罪ですね?」
A「・・・・・」
Q「被害者複数の強制わいせつ罪は、写真をとってまとめてダビングしておけば一罪になりますね?」
A「・・・・・」
Q「児童を狙った連続強制わいせつ犯人に、写真をとってまとめてダビングしておけば一罪になるって言って、撮影を奨励してるんですか?」
A「・・・・・」
Q「児童を狙った連続強制わいせつ(撮影)犯人がいたとして、その一部の行為が起訴されて有罪が確定(撮影罪で罰金とか)したら、一事不再理で、他の強制わいせつ事件は訴追できなくなりますね?」
A「・・・・・」(この辺で切れると思います。)
実務家はこんなことばっかり考えてるんですが、こういう質問に耐える答弁者はいないですよね。