東京高裁h30.1.30は、ダビングしてないときは観念的競合としています。
撮影行為を強制わいせつ罪(176条後段)にも挙げていると、訴因上、重ならないのは、媒体に記録する行為になりますが、撮影=媒体に記録する行為で、記録せずして撮影することはできませんので、なに言ってるのかわかんないですね。
令和 2年 2月26日
前橋地裁高崎支部
事件名 強制わいせつ、準強制わいせつ、児童買春,児童ポルノに係る行為等の規制及び処罰並びに児童の保護等に関する法律違反被告事件
理由
(罪となるべき事実)
第1 被告人は,a小学校●●●の教諭として勤務していたものであるが,平成27年10月下旬頃,群馬県〈以下省略〉同小学校●●●において,生徒であったA(当時○歳。以下「A」という。)が13歳未満であることを知りながら,その着衣を脱がせて乳房を露出させ,その身体に直接楽器(マーチング用キーボード)を装着させた上,その姿態をデジタルカメラを用いて撮影し,もって13歳未満の女子に対し,わいせつな行為をした。(令和元年10月16日付け起訴状記載公訴事実)
第2 被告人は,b中学校(以下「本件中学校」という。)●●●の教諭として勤務していたものである(第3以下も同様である。)が,平成30年9月13日,●●●本件中学校●●●において,●●●生徒でB(当時○歳。以下「B」という。)が●●●教諭である被告人の指示,指導に抵抗することが著しく困難であったことに乗じ,Bに対し,その水着を脱がせ,乳房及び臀部を露出させ,その臀部を手指で触り,さらに,同人の胸部に直接メジャーを巻き付けさせた上,その姿態をデジタルカメラを用いて撮影し,もって人の抗拒不能に乗じてわいせつな行為をした。(令和元年11月15日付け起訴状記載公訴事実のうち準強制わいせつに係る部分)
第3 被告人は,前記第2の日時場所において,Bが18歳に満たない児童であることを知りながら,前記第2のとおり,Bに対し,その水着を脱がせ,乳房及び臀部を露出させ,さらに,同人の胸部に直接メジャーを巻き付けさせた姿態をとらせ,これをデジタルカメラを用いて撮影し,その電磁的記録をSDカードに記録させ,もって衣服の全部又は一部を着けない児童の姿態であって,殊更に児童の性的な部位が露出されているものであり,かつ,性欲を興奮させ又は刺激するものを視覚により認識することができる方法により電磁的記録に係る記録媒体に描写することにより,児童ポルノを製造した。(令和元年11月15日付け起訴状記載公訴事実のうち児童ポルノ製造に係る部分)
第4 被告人は,平成30年11月26日,本件中学校●●●において,前記第2と同様に,Bが●●●教諭である被告人の指示,指導に抵抗することが著しく困難であったことに乗じ,Bに対し,その衣服を脱がせ,乳房,臀部及び陰部を露出させ,その姿態をデジタルカメラを用いて撮影し,もって人の抗拒不能に乗じてわいせつな行為をした。(令和元年8月26日付け起訴状記載公訴事実のうち準強制わいせつに係る部分)
第5 被告人は,前記第4の日時場所において,Bが18歳に満たない児童であることを知りながら,前記第4のとおり,Bに対し,その衣服を脱がせ,乳房,臀部及び陰部を露出させた姿態をとらせ,これをデジタルカメラを用いて撮影し,その電磁的記録をSDカードに記録させ,もって衣服の全部又は一部を着けない児童の姿態であって,殊更に児童の性的な部位が露出されているものであり,かつ,性欲を興奮させ又は刺激するものを視覚により認識することができる方法により電磁的記録に係る記録媒体に描写することにより,児童ポルノを製造した。(令和元年8月26日付け起訴状記載公訴事実のうち児童ポルノ製造に係る部分)
第6 被告人は,平成31年2月22日,本件中学校●●●において,前記第2と同様に,Bが●●●教諭である被告人の指示,指導に抵抗することが著しく困難であったことに乗じ,Bに対し,その衣服を脱がせ,乳房等を露出させ,同人の胸部に直接メジャーを巻き付けさせるなどした上,その姿態をデジタルカメラを用いて撮影し,もって人の抗拒不能に乗じてわいせつな行為をした。(令和元年11月20日付け起訴状記載公訴事実のうち準強制わいせつに係る部分)
第7 被告人は,前記第6の日時場所において,Bが18歳に満たない児童であることを知りながら,前記第6のとおり,Bに対し,その衣服を脱がせ,乳房等を露出させ,同人の胸部に直接メジャーを巻き付けさせるなどした姿態をとらせ,これをデジタルカメラを用いて撮影し,その電磁的記録をSDカードに記録させ,もって衣服の全部又は一部を着けない児童の姿態であって,殊更に児童の性的な部位が露出されているものであり,かつ,性欲を興奮させ又は刺激するものを視覚により認識することができる方法により電磁的記録に係る記録媒体に描写することにより,児童ポルノを製造した。(令和元年11月20日付け起訴状記載公訴事実のうち児童ポルノ製造に係る部分)
第8 被告人は,平成31年3月20日午前9時50分頃から同日午前10時40分頃までの間に,本件中学校●●●において,前記第2と同様に,Bが●●●教諭である被告人の指示,指導に抵抗することが著しく困難であったことに乗じ,Bに対し,その衣服を脱がせ,乳房,臀部及び陰部を露出させ,同人の身体に直接マスキングテープを巻き付けるなどした上,その姿態をデジタルカメラを用いて撮影し,もって人の抗拒不能に乗じてわいせつな行為をした。(令和元年8月7日付け起訴状記載公訴事実のうち準強制わいせつに係る部分)
第9 被告人は,前記第8の日時場所において,Bが18歳に満たない児童であることを知りながら,前記第8のとおり,Bに対し,その衣服を脱がせ,乳房,臀部及び陰部を露出させ,同人の身体に直接マスキングテープを巻き付けるなどした姿態をとらせ,これをデジタルカメラを用いて撮影し,その電磁的記録をSDカードに記録させ,もって衣服の全部又は一部を着けない児童の姿態であって,殊更に児童の性的な部位が露出されているものであり,かつ,性欲を興奮させ又は刺激するものを視覚により認識することができる方法により電磁的記録に係る記録媒体に描写することにより,児童ポルノを製造した。(令和元年8月7日付け起訴状記載公訴事実のうち児童ポルノ製造に係る部分)
第10 被告人は,平成31年3月22日,本件中学校●●●において,前記第2と同様に,Bが●●●教諭である被告人の指示,指導に抵抗することが著しく困難であったことに乗じ,Bに対し,その衣服を脱がせ,乳房,陰部及び臀部を露出させ,その陰部付近を手指で触り,その姿態をデジタルカメラを用いて撮影し,もって人の抗拒不能に乗じてわいせつな行為をした。(令和元年12月9日付け起訴状記載公訴事実のうち準強制わいせつに係る部分)
第11 被告人は,前記第10の日時場所において,Bが18歳に満たない児童であることを知りながら,前記第10のとおり,Bに対し,その衣服を脱がせ,乳房,陰部及び臀部を露出させる姿態をとらせ,これをデジタルカメラを用いて撮影し,その電磁的記録をSDカードに記録させ,もって衣服の全部又は一部を着けない児童の姿態であって,殊更に児童の性的な部位が露出されているものであり,かつ,性欲を興奮させ又は刺激するものを視覚により認識することができる方法により電磁的記録に係る記録媒体に描写することにより,児童ポルノを製造した。(令和元年12月9日付け起訴状記載公訴事実のうち児童ポルノ製造に係る部分)
第12 被告人は,平成31年3月25日午後2時43分頃から同日午後2時50分頃までの間,本件中学校●●●において,前記第2と同様に,Bが●●●教諭である被告人の指示,指導に抵抗することが著しく困難であったことに乗じ,Bに対し,そのズボン及びパンツを脱がせ,両足を開かせて陰部を露出させ,その陰部を手指で触るなどした上,その姿態をデジタルカメラを用いて撮影し,もって人の抗拒不能に乗じてわいせつな行為をした。(令和2年2月13日付け訴因等変更請求書による訴因変更後の令和元年7月18日付け起訴状記載公訴事実のうち準強制わいせつに係る部分)
第13 被告人は,前記第12の日時場所において,Bが18歳に満たない児童であることを知りながら,前記第12のとおり,Bに対し,そのズボン及びパンツを脱がせ,両足を開かせて陰部を露出させる姿態及びその陰部を被告人が手指で触る行為に係る姿態をとらせ,これをデジタルカメラを用いて撮影し,その電磁的記録をSDカードに記録させ,もって衣服の全部又は一部を着けない児童の姿態であって,殊更に児童の性的な部位が露出されているものであり,かつ,性欲を興奮させ又は刺激するもの及び他人が児童の性器等に触る行為に係る児童の姿態であって性欲を興奮させ又は刺激するものを視覚により認識することができる方法により電磁的記録に係る記録媒体に描写することにより,児童ポルノを製造した。(令和2年2月13日付け訴因等変更請求書による訴因変更後の令和元年7月18日付け起訴状記載公訴事実のうち児童ポルノ製造に係る部分)
第14 被告人は,令和元年5月7日午後2時45分頃から同日午後3時35分頃までの間に,本件中学校●●●において,Bに対し,その背後から抱きついた上,そのブラジャーの中に両手を差し入れてその両乳房を直接もむなどし,もって強いてわいせつな行為をした。(令和元年6月26日付け起訴状記載公訴事実)
(法令の適用)
罰条
第1の行為 平成29年法律第72号附則2条1項により同法による改正前の刑法176条後段
第2,第4,第6,第8,第10,第12の各行為
いずれも刑法178条1項,176条前段
第3,第5,第7,第9,第11の各行為
いずれも児童買春,児童ポルノに係る行為等の規制及び処罰並びに児童の保護等に関する法律7条4項,2項,2条3項3号
第13の行為 児童買春,児童ポルノに係る行為等の規制及び処罰並びに児童の保護等に関する法律7条4項,2項,2条3項2号,3号
第14の行為 刑法176条前段
刑種の選択
第3,第5,第7,第9,第11,第13の各罪
いずれも懲役刑
併合罪の処理 刑法45条前段,47条本文,10条(刑及び犯情の最も重い第12の罪の刑に加重)
未決勾留日数の算入 刑法21条
(罪数に関する補足説明)
第2と第3,第4と第5,第6と第7,第8と第9,第10と第11,第12と第13の各罪数関係について,検察官及び弁護人は,いずれも刑法54条1項前段の観念的競合として科刑上一罪の関係にあると主張する。しかし,本件のように,被害児童に対し,抗拒不能に乗じて撮影を伴うわいせつ行為をし,児童ポルノを製造した場合,被告人の準強制わいせつ行為と児童買春,児童ポルノに係る行為等の規制及び処罰並びに児童の保護等に関する法律7条4項に触れる行為とは,一部重なり合う点はあるものの,両行為が通常伴う関係にあるとはいえないことや,両行為の性質等に鑑みると,それぞれにおける行為者の動態は社会的見解上別個のものといえるから,両罪は観念的競合の関係にはなく,刑法45条前段の併合罪の関係にあるというべきである。
(量刑の理由)
本件は,教諭であった被告人が,勤務先の学校で,生徒2名に対し,わいせつ行為をするなどした事案である。被告人は,教諭という立場を利用し,被害者らの信頼や幼さにつけ込んで犯行に及んだ点で悪質であり,通学先の学校内で被害に遭った被害者ら,特に繰り返し被害に遭ったBに与えた影響を考えると,生じた結果は大きい。被告人は同種行為を繰り返しており,この種の行為について規範意識が欠けていたといえる。犯情は悪く,被害者らの保護者が厳しい感情を有していることも理解できる。
他方,被告人は事実を認め,被害者らとその家族に対する謝罪の弁を述べており,現在の雇主及び姉は被告人の更生に協力すると述べている。また,被告人は,第14の事実につき,賠償金100万円を支払っていること(ただし,当該時点では,被告人がBに対する他の行為を明らかにしていなかったことに照らすと,評価するにも限度がある。),弁護人に,賠償金として,Bとの関係で200万円を,Aとの関係で122万円を預託していることが認められる。
そこで,以上の諸事情を考慮して,主文のとおりの量刑をした。
(求刑 懲役8年)
前橋地方裁判所高崎支部
(裁判官 地引広)