児童ポルノ・児童買春・児童福祉法・監護者わいせつ・不同意わいせつ・強制わいせつ・青少年条例・不正アクセス禁止法・わいせつ電磁的記録弁護人 奥村徹弁護士の見解(弁護士直通050-5861-8888 sodanokumurabengoshi@gmail.com)

性犯罪・福祉犯(監護者わいせつ罪・強制わいせつ罪・児童ポルノ・児童買春・青少年条例・児童福祉法)の被疑者(犯人側)の弁護を担当しています。専門家向けの情報を発信しています。

前法務省刑事局付(長野地方裁判所判事補) 菅原暁「児童福祉法第34条第1項第6号違反の児童に淫行をさせる罪と,児童買春,児童ポルノに係る行為等の処罰及び児童の保護等に関する法律第7条第3項の児童ポルノ製造罪とが併合罪の関係にあるとされた事例 最高裁判所第一小法廷決定平21.10.21」捜査研究720号p78

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法務省刑事局付(長野地方裁判所判事補) 菅原暁「児童福祉法第34条第1項第6号違反の児童に淫行をさせる罪と,児童買春,児童ポルノに係る行為等の処罰及び児童の保護等に関する法律第7条第3項の児童ポルノ製造罪とが併合罪の関係にあるとされた事例 最高裁判所第一小法廷決定平21.10.21」捜査研究720号p78
第5 おわりに
以上のほか,児童に淫行させる罪と児童ポルノ製造罪にそれぞれ該当する各行為について,両行為が通常伴う関係にあるかや,両行為の性質等を考慮して,これらが刑法第54条第1項前段の「1個の行為」に当たらないとした本決定の判断は,他の犯罪の罪数関係の判断にも影響を及ぼすものと思われる。
例えば,児童買春,児童ポルノに係る行為等の処罰及び児童の保護等に関する法律第4条の児童買春罪や,児童に対する強姦や強制わいせつ罪は,自己を相手方として児童に淫行させる罪と同様,その行為態様に児童との性交等を含むものであり,そうした性交等を行いながら,その行為をカメラで撮影するなどして,児童ポルノ製造罪に当たる行為をも行った場合,時間的・場所的に重なり合っているとしても,二つの行為が「通常伴う関係にある」とはいえず,両行為の性質等も異なるものと考えられるから,本決定の考え方によれば,観念的競合ではなく,併合罪と評価されるのではないかと思われる(注7)。
また,本決定は,前記のとおり,昭和49年判決において示された観念的競合に関する判断基準をあてはめる際の考慮要素を示したものとして,意義を有すると考えられるが,本決定を踏まえても,その判断基準は,個別の事案における罪数関係を一義的に明らかにできるというものとは言い難い。したがって,実務上は,裁判例の集積のない罪数関係の判断は,行為の時間的・場所的な重なり合いのみにとらわれず,行為が通常伴う関係にあるかという点や行為の性質等をも考慮に入れた慎重な検討が必要となるであろう。
(すがわらあきら)

 性交・性交類似行為と撮影行為とは違う行為だというのは当たり前なので、こんなのは最初から併合罪で起訴すべきでした。検察官が間違って、観念的競合として全部家裁に起訴したので、(実刑事案ですから)弁護人から訴訟手続にクレームが付いている。それを家裁も保護観察執行猶予にして丸く納めようとした。
 後にも先にもこのクラスの事件が執行猶予になったことはないのに、結果として、理論面でも弁護人の主張が通って、量刑の主張も容れられて執行猶予になってるわけで、検察官も裁判所も恥ずかしいなあ。
 菅原説だと、児童買春罪とも強姦罪とも強制わいせつ罪とも併合罪になるとのことだが、児童買春罪とも強姦罪併合罪でいいが、強制わいせつ罪は別だ。なぜなら、3項製造罪施行前の撮影行為は、わいせつ行為と評価されてきたからである。3項製造罪ができたからといって、通常伴わないことになることもないし、行為が2個とカウントされることもないのである。

追記
強制わいせつ罪と3項製造罪の罪数関係についての最新の判例状況
http://d.hatena.ne.jp/okumuraosaka/20110611#1307700613
高裁レベルで、正面から併合罪とした判例はまだない。
地裁レベルではっきりと併合罪だと判示した事例も乏しい。
(1)3項製造罪と強制わいせつ罪を観念的競合とするもの 112
長野地裁H19.10.30*59 112
②札幌地裁H19.11.7*60(控訴棄却札幌高裁H20.3.13*61) 112
東京地裁H18.3.24*62 113
福島地裁白川支部H20.10.15*63 113
⑤仙台高裁H21.3.3*64 113
金沢地裁H21.1.20*65 114
横浜地裁H19.8.3*66 114
名古屋高裁h22.3.4*67 114
松山地裁H22.3.30*69 115
⑩高松高裁h22.9.7*70 115
高松地裁H19.12.10*71 115
那覇地裁H20.10.27*72 115
⑬山口地裁H21.2.4*73*74 115
那覇地裁沖縄支部H21.5.20*75 115
千葉地裁H21.9.9*76 115
⑮札幌地裁H21.9.18*77(強制わいせつ致傷) 116
広島地裁H23.1.19*78(訴因変更) 116
⑰広島高裁h23.5.26*79(訴因変更) 116
松山地裁大洲支部H22.11.26*80(訴因変更) 116
こういう判例状況において菅原判事補は、児童淫行罪の最決H21をてこにして、「みんな間違っている。併合罪だ!」というのですね。長野地裁の前例は観念的競合説ですけど、長野から変えてくれるんですね。期待しています。


追記
今後は一線の検察官に、こんな訴因変更請求をさせないでください。
訴因変更請求例1

変更前の訴因
平成23年6月13日,大阪市北区西天満の・・において,A子(当時11歳)に対し、13歳未満の者と知りながら、同女の着衣をずらして乳房を露出させた上,これを所携の携帯電話のカメラ機能を用いて撮影し、もって,13歳未満の女子に対しわいせつな行為をした

変更後の訴因
公訴事実中,「撮影し,もってわいせつな行為をし」を「撮影して,その電磁的記録を同携帯電話機内蔵のマイクロSDカードに記録しもって13歳未満の女子に対しわいせつな行為をするとともに,衣服の全部又は一部を着けない児童の姿態であって性欲を興奮させ又は刺激するものを視覚により認識することができる方法により電磁的記録に係る記録媒体に描写した児童ポルノを製造し」に改める。

訴因変更請求例2

変更前の訴因
平成23年6月13日,大阪市北区西天満の・・において,A子(当時11歳)に対し、13歳未満の者と知りながら,同女の着衣をずらして乳房を露出させた上,これを所携の携帯電話のカメラ機能を用いて撮影して,その電磁的記録を同携帯電話機内蔵の上記マイクロSDカードに記録し,
もって,13歳未満の女子に対しわいせつな行為をするとともに,衣服の全部又は一部を着けない児童の姿態であって性欲を興奮させ又は刺激するものを視覚により認識することができる方法により電磁的記録に係る記録媒体に描写した児童ポルノを製造した

変更後の訴因
平成23年6月13日,大阪市北区西天満の・・において,A子(当時11歳)に対し、13歳未満の者と知りながら,同女の着衣をずらして乳房を露出させた上,これを所携の携帯電話のカメラ機能を用いて撮影して,その電磁的記録を同携帯電話機内蔵の上記マイクロSDカードに記録し,
さらに,同日午後19時26分ころ,被告人方において,上記マイクロSDカードに記録された電磁的記録を,被告人のパーソナルコンピュータの内蔵HDDに記録し、
もって,13歳未満の女子に対しわいせつな行為をするとともに,衣服の全部又は一部を着けない児童の姿態であって性欲を興奮させ又は刺激するものを視覚により認識することができる方法により電磁的記録に係る記録媒体に描写した児童ポルノを製造した