児童ポルノ・児童買春・児童福祉法・監護者わいせつ・不同意わいせつ・強制わいせつ・青少年条例・不正アクセス禁止法・わいせつ電磁的記録弁護人 奥村徹弁護士の見解(弁護士直通050-5861-8888 sodanokumurabengoshi@gmail.com)

性犯罪・福祉犯(監護者わいせつ罪・強制わいせつ罪・児童ポルノ・児童買春・青少年条例・児童福祉法)の被疑者(犯人側)の弁護を担当しています。専門家向けの情報を発信しています。

ひそかに製造罪の特定方法(千葉地裁r3.11.4)

 記事のように「じゃあ着換えて」などの指示があると、5項ではなく4項の製造罪になります。法令適用の誤り。
 児童数名が写っている場合には、1人1罪として観念的競合で処理しています。

元教諭に懲役3年6月求刑 地裁結審 教え子の着替え盗撮=千葉
2021.10.06 読売新聞
 県内の中学校で教え子の着替えを盗撮したとして、準強制わいせつ罪と児童買春・児童ポルノ禁止法違反などに問われた公立中学校元教諭の男(懲戒免職)の公判が5日、千葉地裁(片岡理知裁判官)であった。検察側は懲役3年6月を求刑し、弁護側は執行猶予付き判決を求めて結審した。判決は11月4日。
 起訴状によると、男は昨年12月、勤務先の中学校で、女子生徒に対し「内申点の加点がもらえるため協力しないか」などとうそを言って水着に着替えさせ、その様子をカメラで盗撮するなどしたとされる。
 男は昨年7~12月、計6回にわたって女子生徒計10人を水着やユニホームなどに着替えさせ、盗撮を繰り返していた。公判は被害者の特定を避けるためとして、匿名で審理された。

千葉地方裁判所令和03年11月04日
理由
(罪となるべき事実)●●●は被害者特定事項を示す。
 被告人は、千葉県●●●所在の●●●(以下「本件中学校」という。)で教諭として勤務していた者であるが、被告人が同校で●●●接点を持つ女子生徒の着替え中の姿態を秘匿撮影しようと考え、
第1 別表番号1、3~7「撮影日」欄各記載の年月日に、本件中学校内において、当該番号「被害児童」欄各記載の者が18歳未満の児童であることを知りながら、着替えのために当該番号「露出部位」欄各記載の部位が露出した当該児童の姿態を、ひそかに、モバイルバッテリーに擬装して同所にあらかじめ設置した動画撮影用カメラ(以下「本件カメラ」という。)で動画撮影し、本件カメラに挿入したマイクロSDカード(以下「本件マイクロSDカード」という。)に当該番号「動画データ」欄各記載の個数の動画データとして記録して保存し、もって、衣服の一部を着けない児童の姿態であって、殊更に児童の性的な部位が露出されたものであり、かつ、性欲を興奮させ又は刺激するものを視覚により認識することができる方法により描写した電磁的記録に係る記録媒体である児童ポルノを製造した。
第2 別表番号2「撮影日」欄記載の年月日に、本件中学校内において、当該番号「被害児童」欄記載の者が着替えのために露出させた下着等を本件カメラで動画撮影し、もって、学校において、人の通常衣服で隠されている下着等を写真機等を用いて撮影し、みだりに、人を著しく羞恥させ、かつ、人に不安を覚えさせるような行為をした。

(法令の適用)
1 罰条
 (1) 判示第1の別表番号1の所為 被害児童ごとに、それぞれ児童買春、児童ポルノに係る行為等の規制及び処罰並びに児童の保護等に関する法律(以下「児童ポルノ法」という。)7条5項、2項
 (2) 判示第1の別表番号3の所為 被害児童ごとに、児童ポルノ法7条5項、2項
 (3) 判示第1の別表番号4の所為 児童ポルノ法7条5項、2項(懲役刑選択)
 (4) 判示第1の別表番号5の所為 児童ポルノ法7条5項、2項(懲役刑選択)
 (5) 判示第1の別表番号6の所為 児童ポルノ法7条5項、2項(懲役刑選択)
 (6) 判示第1の別表番号7の所為 児童ポルノ法7条5項、2項(懲役刑選択)
 (7) 判示第2(別表番号2)の所為 公衆に著しく迷惑をかける暴力的不良行為等の防止に関する条例(昭和39年千葉県条例第31号)13条1項、3条の2第1号
 (8) 判示第3(別表番号8)の所為のうち
  ・準強制わいせつの点 刑法178条1項、176条
  ・児童ポルノ製造の点 児童ポルノ法7条5項、2項
2 科刑上一罪の処理
 (1) 判示第1の別表番号1の罪 刑法54条1項前段、10条
  (1個の行為が4個の罪名に触れる場合であるが、犯情が被害児童ごとに異ならないので、そのうちの1つを選ぶことをせず、1罪として処断)
 (2) 判示第1の別表番号3の罪 刑法54条1項前段、10条
  (1個の行為が2個の罪名に触れる場合であるが、犯情が被害児童ごとに異ならないので、そのうちの1つを選ぶことをせず、1罪として処断)
 (3) 判示第3(別表番号8)の罪 刑法54条1項前段、10条
  (本件では児童ポルノを盗撮製造すること自体がわいせつ行為であるから、1個の行為が2個の罪名に触れる場合であると認められ、1罪として重い準強制わいせつ罪について定めた懲役刑で処断)
3 刑種の選択 判示第1及び第2の各罪につきいずれも懲役刑
4 併合罪の処理 刑法45条前段、47条本文、10条
  (最も重い判示第3の罪の刑に法定の加重)
5 未決勾留日数の算入 刑法21条
6 刑の全部の執行猶予 刑法25条1項
(量刑の理由)
(検察官大澤厳斗及び私選弁護人石川雅巳各出席。求刑:懲役3年6月)
刑事第1部
 (裁判官 片岡理知)
(別表)

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別表