児童ポルノ・児童買春・児童福祉法・監護者わいせつ・不同意わいせつ・強制わいせつ・青少年条例・不正アクセス禁止法・わいせつ電磁的記録弁護人 奥村徹弁護士の見解(弁護士直通050-5861-8888 sodanokumurabengoshi@gmail.com)

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「性交等する姿態」という事実で、2号3号ポルノを認定した事案(金沢地裁R3.3.30)→理由不備で破棄 名古屋高裁金沢支部R03.09.14

「性交等する姿態」という事実で、1号2号3号ポルノを認定した事案(理由不備) 金沢地裁R3.3.30
 こんなのは理由不備だとして破棄された判決があります。(名古屋高裁、仙台高裁)。性交してても、性器接触があるとか、裸だとか言えないからです。
 重い強制性交に集中してしまい、軽い児童ポルノ罪の訴因を検討してないことがよくあります。

金沢地方裁判所令和03年03月30日
 上記の者に対する強制性交等、児童買春、児童ポルノに係る行為等の規制及び処罰並びに児童の保護等に関する法律(以下「児童買春法」という。)違反被告事件について、当裁判所は、検察官伊藤純基及び同江藤涼並びに私選弁護人太田圭一各出席の上審理し、次のとおり判決する。
理由
(罪となるべき事実)
第1 令和2年11月4日付け起訴状記載の公訴事実のとおりであるから、これを引用する。
第2 令和2年12月10日付け起訴状記載の公訴事実のとおりであるから、これを引用する。
第3 令和3年1月13日付け起訴状記載の公訴事実第1(冒頭の事実を含む。)のとおりであるから、これを引用する。
第4 令和3年1月13日付け起訴状記載の公訴事実第2(冒頭の事実を含む。なお、同事実別表2番号5に「同日午後3時頃までの間」とあるのを「同日午後1時頃までの間」と改める。)のとおりであるから、これを引用する。
 なお、被告人は、令和2年10月14日、石川県A警察署に出頭し、同署司法警察員Bに判示第1及び第3の犯罪事実について自首した。
・・・
判示第4
r3.1.13起訴
 被告人は、●●●が13歳未満の者であることを知りながら
第1 同人と性交等をしようと考え、別表1記載のとおり、令和2年9月20日から同年10月4日までの間に、5回にわたり、石川県●●●ほか4か所において、同人と性交及び口腔性交をし
第2 別表2記載のとおり、同年9月20日から同年10月4日までの間に、5回にわたり、●●●ほか4か所において、同児童に、被告人と性交等をする姿態をとらせ、これを被告人が使用するカメラ機能付きスマートフォンで動画撮影し、その動画データ合計22点を同スマートフォンに内蔵された記録装置に記録して保存し、もって児童を相手方とする性交又は性交類似行為に係る児童の姿態、他人が児童の性器等を触る行為又は児童が他人の性器等を触る行為に係る姿態であって性欲を興奮させ又は刺激するもの及び衣服の全部又は一部を着けない児童の姿態であって、殊更に児童の性的な部位が露出され又は強調されているものであり、かつ、性欲を興奮させ又は刺激するものを視覚により認識することができる方法により電磁的記録に係る記録媒体に描写した児童ポルノを製造し
たものである。
  罪名及び罰条
 第1 強制性交等 刑法第177条後段
 第2 児童買春、児童ポルノに係る行為等の規制及び
  処罰並びに児童の保護等に関する法律違反
  同法律第7条第4項、第2条第3項第1号
  第2号、第3号

判例番号】 L07650512

       強制性交等,児童買春、児童ポルノに係る行為等の規制及び処罰並びに児童の保護等に関する法律違反被告事件

【事件番号】 金沢地方裁判所判決/令和2年(わ)第325号、令和2年(わ)第372号、令和3年(わ)第2号
【判決日付】 令和3年3月30日
【掲載誌】  LLI/DB 判例秘書登載

       主   文

 被告人を懲役4年に処する。
 未決勾留日数中10日をその刑に算入する。

       理   由

(罪となるべき事実)
第1 令和2年11月4日付け起訴状記載の公訴事実のとおりであるから,これを引用する。
第2 令和2年12月10日付け起訴状記載の公訴事実のとおりであるから,これを引用する。
第3 令和3年1月13日付け起訴状記載の公訴事実第1(冒頭の事実を含む。)のとおりであるから,これを引用する。
第4 令和3年1月13日付け起訴状記載の公訴事実第2(冒頭の事実を含む。なお,同事実別表2番号5に「同日午後3時頃までの間」とあるのを「同日午後1時頃までの間」と改める。)のとおりであるから,これを引用する。
 なお,被告人は,令和2年10月14日,石川県大聖寺警察署に出頭し,同署司法警察員Aに判示第1及び第3の犯罪事実について自首した。
(証拠の標目)
括弧内の甲乙の番号は証拠等関係カード記載の検察官請求番号を示す。
判示事実全部について
・被告人の公判供述
・被告人の警察官調書(乙4,11)
・捜査報告書(甲10)
判示第1及び第2の各事実について
・被告人の検察官調書(乙6)及び警察官調書(乙5)
・捜査報告書(甲1,2,6(謄本)),写真撮影報告書(甲3)
判示第3別表1番号1及び第4別表2番号1の各事実について
・捜査報告書(甲13,22),写真撮影報告書(甲17)
判示第3別表1番号2ないし4及び第4別表2番号2ないし4の各事実について
・捜査報告書(甲14,16)
判示第3別表1番号2及び第4別表2番号2の各事実について
・写真撮影報告書(甲18),捜査報告書(甲23)
判示第3別表1番号3及び第4別表2番号3の各事実について
・写真撮影報告書(甲19),捜査報告書(甲24)
判示第3別表1番号4及び第4別表2番号4の各事実について
・写真撮影報告書(甲20),捜査報告書(甲25)
判示第3別表1番号5及び第4別表2番号5の各事実について
・捜査報告書(甲15,26),写真撮影報告書(甲21)
自首の事実について
・自首調書(乙7)
(法令の適用)
罰条
 判示第1,判示第3別表1番号1ないし5の各所為
      いずれも刑法177条後段
 判示第2の所為
      児童買春法7条4項,2項,2条3項1号
 判示第4別表2番号1ないし5の各所為
      いずれも児童買春法7条4項,2項,2条3項1号,2号,3号
刑種の選択
 判示第2,第4別表2番号1ないし5の各罪
      いずれも懲役刑を選択
法律上の減軽
 判示第1,第3別表1番号1ないし5の各罪
      いずれも刑法42条1項,68条3号
併合罪の処理
      刑法45条前段,47条本文,10条(刑及び犯情の最も重い判示第1の罪の刑に法定の加重)
未決勾留日数の算入
      刑法21条
(量刑の理由)
 本件は,被告人が当時■■歳の被害者に対して6回にわたり強制性交等をし,その際にそれらの様子を撮影して児童ポルノを製造した事案である。
 被告人は,(秘匿部分につき略)被害者の思慮浅薄に乗じて,自らの性欲の赴くままに凌辱を繰り返したもので,その意思決定は強い非難を免れない。強制性交等の様子を撮影して児童ポルノを製造した点も看過できない。本件犯行の結果被害者の被った社会的不利益は大きく,今後の成長に与える悪影響が懸念される。被害者の保護者らの処罰感情が厳しいのも当然である。そうすると,本件が被害者の意に反するような態様のものではなかったことを踏まえても,被告人の刑事責任は誠に重大であり,実刑は免れない。
 他方,被害者に対し被害弁償として500万円を支払ったこと,自首し,公判廷で反省の言葉をのべ更生を誓っていること,本件により懲戒免職処分を受けるなどの社会的制裁を受けたこと,前科前歴がないこと,被告人の母親が被告人と同居して監督する旨誓約をしていること等の被告人に有利に斟酌すべき事情もある。
 以上の事情を考慮し,自首減軽の上,主文の刑に処するのが相当であると判断した。
(求刑 懲役6年)
  令和3年3月30日
    金沢地方裁判所刑事部
        裁判長裁判官  大村陽一
           裁判官  白井知志
           裁判官  塩島なつ美

追記2021/09/14
理由不備で破棄されました。名古屋高裁金沢支部R03.09.14

https://news.yahoo.co.jp/articles/089d11d10ad2d22e0827d728acb24180991ba785
14日開かれた控訴審判決で、名古屋高裁金沢支部の森浩史裁判長は、児童ポルノを製造した罪について一審の判決では事実の記載に理由の不備があるとして判決を破棄しました。

追記2021/11/12
判例DBで公開されました。
名古屋高等裁判所金沢支部令和3年9月14日強制性交等,児童買春,児童ポルノに係る行為等の規制及び処罰並びに児童の保護等に関する法律(以下「児童買春法」という。)違反被告事件
lex/db【文献番号】25590952
名古屋高等裁判所金沢支部
令和3年9月14日第2部判決