3項製造罪(姿態とらせて製造)の「姿態をとらせ」について、実行行為説と、複製の時点では不要説(最高裁)があるのですが、撮影から最終媒体までの一連の行為を1個の製造行為とすれば、整合できます。
それを言い出してどうするのかは内緒です。
大阪高裁H19.12.4で採用されました!
2 製造行為の一個性
大阪高裁H14.9.10によれば、撮影行為とダビング行為は、別個の製造罪であって、別々に製造罪の要件が検討される。ただ犯意が同一・機会同一なら包括一罪となりうるという。大阪高裁 平成14年9月10日
③については,児童ポルノとは,「写真,ビデオテープその他の物」であって「視覚により認識することができる方法により描写したもの」であることを要するが,有体物を記録媒体とする物であれば,必ずしもその物から直接児童の姿態を視覚により認識できる必要はなく,一定の操作等を経ることで視覚により認識できれば足りるから,写真の場合は現像ないし焼付け等の工程を経てこれが可能になる未現像フイルムや現像済みネガフィルム(以下,撮影済み及び現像済みネガフィルムを「ネガ」という。)は,これに当たると解するべきであるから,本件の場合,児童ポルノ製造罪は撮影により既遂になると解するのが相当である。また,上記第1記載の児童ポルノの頒布,販売目的等による製造等を処罰することにした趣旨からみて,新たに児童ポルノを作り出すものと評価できる行為はいずれも製造に当たると解するのが相当であるところ,これを写真についてみてみると,上記のとおり児童ポルノ製造罪は撮影によって既遂となるが,現像,焼付けもまたそれぞれ製造に当たるものと解され,各段階で頒布,販売等の目的でこれを行った者には児童ポルノ製造罪の適用があり,ただ,先の行為を行った者が犯意を継続して彼の行為を行った場合には包括一罪となるものと解される。従って,本件では現像行為は不可罰的事後行為とはならないから,現像行為を製造とした原判決には法令適用の誤りはない(もっとも,原判決は撮影,現像を単純一罪とするものか包括一罪とするものか定かではないが,単純一罪とするものであるとしても判決に影響しない。)。しかし、これは、銀塩カメラの場合であって、デジタルカメラの場合、SDカードなど、カメラ内蔵の記録媒体に大量に溜め込んでいうことは希で、適宜、パソコンのHDDなど大容量の媒体に移して保存するのが通常である。SDカードの画像というのは短命なのである。
銀塩カメラのネガは必ず永久に残るが、デジカメのSDカードの画像は残らないのである。
だとすると、デジカメ利用の場合は、SDカードなどの中間媒体の存否にかかわらず、犯人の意図する最終媒体の生成に至る一連の所為が一個の製造行為であり、製造罪の単純一罪となるのである。(包括一罪説には反対する)
このように理解して初めて、3項製造罪の「姿態とらせて」を実行行為と理解する判例(東京高裁H17.12.26、札幌高裁H19.3.8、札幌高裁H19.9.4)と、複製時には「姿態をとらせて」は不要であるとする判例(名古屋高裁金沢支部H17.6.9、最高裁h18.2.20)とを整合することができるのである。
つまり、これが現在の判例である。また、保護法益からも説明できる。
3項製造罪(姿態とらせて製造)の趣旨が、画像の流出による法益侵害であるとすれば、製造犯人の意図は、児童ポルノであるHDDを製造することである場合に、短時間で
撮影→SDカード→HDD
という複製過程があったとしても、SDカードが流出する危険がないから、SDカードについて独立した製造罪として評価する必要はないのである。