こういう観念的競合の公訴事実とか犯罪事実があります。
これを併合罪にして、訴因不特定に持ち込みたいところです。
被告人は,平成年月日,・・・において,a子(11歳)に対し,同人が13歳未満の児童であることを知りながら,同人の衣服を脱がせて,その胸部及び陰部等を手指でもてあそぶとともに,なめ回した上,同人に陰部を露出させる姿態をとらせて,その陰部をデジタルカメラで撮影し,その電磁的記録を同カメラ内蔵のSDカードに記録し,もって13歳未満の女子に対しわいせつな行為をするとともに,衣服の全部又は一部を着けず,性欲を興奮させ又は刺激する児童の姿態を視覚により認識することができる方法により霞磁的記録に係る記録媒体に描写し,前記児童に係る児童ポルノを製造した
撮影行為自体がわいせつ行為だという反論があると思うのですが、それは重ならないというのが東京高裁h19.11.6。科刑上一罪の範囲が広がり過ぎるというのが安弘裁判長の本音。
東京高裁h19.11.6
その理由につき若干補足して説明する。まず,児童買春行為それ自体(児童との性交ないし性交類似行為)は,2項製造罪の実行行為の一部であるとは解されず,児童買春罪と2項製造罪は,その実行行為が部分的にも重なり合う関係にはないのである(このことは,児童に対する強姦や強制わいせつの状況を撮影した場合に,強姦行為や強制わいせつ行為が2項製造罪の実行行為の一部とはいえないのと同様である。)。
・・・
さらに,本件の2項製造罪においては,児童の姿態等の撮影とこれに伴う第1次媒体への記録により第1次媒体(児童ポルノ)を製造したものとされているにとどまるが,2項製造罪においては,第1次媒体の製造に引き続き,電磁的記録の編集・複写,ネガフィルムの現像・焼き付け等の工程を経て,第2次媒体や第3次媒体の児童ポルノを製造する行為も実行行為に包含されるのであり,事案によっては,相当広範囲にわたる行為に(包括)一罪性を認めざるを得ないであろうが,児童買春罪との観念的競合関係を肯定するとすれば,いわゆるかすがい作用により,科刑上一罪とされる範囲が不当に広がる恐れも否定できないように思われる(強姦罪等との観念的競合を肯定するとすれば,その不都合はより大きいものとなろう。)。
3項製造罪(姿態とらせて製造)と強制わいせつ罪が併合罪だという裁判例も多数あります。
とすると冒頭の事例は
第1 被告人は,平成年月日,・・・において,a子(11歳)に対し,同人が13歳未満の児童であることを知りながら,同人の衣服を脱がせて,その胸部及び陰部等を手指でもてあそぶとともに,なめ回した上,もって13歳未満の女子に対しわいせつな行為をした
第2 前同日、同人に陰部を露出させる姿態をとらせて,その陰部をデジタルカメラで撮影し,その電磁的記録を同カメラ内蔵のSDカードに記録し,衣服の全部又は一部を着けず,性欲を興奮させ又は刺激する児童の姿態を視覚により認識することができる方法により霞磁的記録に係る記録媒体に描写し,前記児童に係る児童ポルノを製造した
なんて切り分けて併合罪にしたいところです。実際こういう併合罪の判決が多数ありますが、前半の
同人の衣服を脱がせて,その胸部及び陰部等を手指でもてあそぶとともに,なめ回した上,もって13歳未満の女子に対しわいせつな行為をした
というのは、こうやって姿態をとらせたわけだから3項製造罪の「姿態をとらせて」に他ならないわけで、強制わいせつのみに当たる事実を抽出できませんよね。
でも判例は併合罪なんですよね。
やっぱり併合罪説は無理かも知れませんね。
裁判所が右往左往してるのを弁護人が迷ってもしょうがない。これも他罪との関係を調べなかったための立法の不備だと思います。最高裁に決めてもらうしかないですね。