法律はこうなっている。
組織的な犯罪の処罰及び犯罪収益の規制等に関する法律
第2条(定義)
2 この法律において「犯罪収益」とは、次に掲げる財産をいう。
一 財産上の不正な利益を得る目的で犯した別表に掲げる罪の犯罪行為(日本国外でした行為であって、当該行為が日本国内において行われたとしたならばこれらの罪に当たり、かつ、当該行為地の法令により罪に当たるものを含む。)により生じ、若しくは当該犯罪行為により得た財産又は当該犯罪行為の報酬として得た財産
4 この法律において「犯罪収益等」とは、犯罪収益、犯罪収益に由来する財産又はこれらの財産とこれらの財産以外の財産とが混和した財産をいう。第10条(犯罪収益等隠匿)
犯罪収益等(公衆等脅迫目的の犯罪行為のための資金の提供等の処罰に関する法律第二条第二項に規定する罪に係る資金を除く。以下この項及び次条において同じ。)の取得若しくは処分につき事実を仮装し、又は犯罪収益等を隠匿した者は、五年以下の懲役若しくは三百万円以下の罰金に処し、又はこれを併科する。犯罪収益(同法第二条第二項に規定する罪に係る資金を除く。)の発生の原因につき事実を仮装した者も、同様とする。
2 前項の罪の未遂は、罰する。
3 第一項の罪を犯す目的で、その予備をした者は、二年以下の懲役又は五十万円以下の罰金に処する。
前払いで借名口座に振り込ませたという事実関係。
事実関係
被告人は,児童ポルノであるDVDを不特定多数の者に有償で提供していたものであるが,別紙犯罪事実一覧表記載のとおり,犯罪収益である前記DVDの提供代金合計105万円を,A銀行に開設され被告人が管理する借名口座であるB名義の普通預金口座に振込入金させて同口座に預け入れ,もって犯罪収益等の取得につき事実を仮装したものである。
こういうのは普通、前金ですわな。じゃないと不払いとかコピーして返品とかされるから。
こういう事実関係があったとして、児童ポルノ提供罪の実行行為は有体物であるDVDが動き始めてから受取人の利用しうる状態になるまでだから、実行行為としては、お金の授受や有償性の要素はない。販売罪じゃなくて提供罪ですから。
そうすると、時系列的には、
1 利益の取得
2 児童ポルノ発送
3 提供罪既遂
となって、振り込ませた段階では、提供罪は着手されていないので、犯罪行為により生じたもの・犯罪行為により得た財産でないから、犯罪収益に当たらないと言えそうですね。
参考文献を紹介しますが、秋山検事も研修員もお悩みだ。
秋山実「組織的な犯罪の処罰及び犯罪収益の規制等に関する法律10条1項の犯罪収益等隠匿罪を積極的に適用した一事例」研修 第662号
何とかして収益だと言わないと困りますね。
前提犯罪が事後的に成立することが成立要件になるなんていう名古屋地裁半田支部H15.5.8が紹介されていますが、これだと、児童ポルノが未着になると仮装罪も成立しないことになりますよね。借名口座に代金入っているのに。
さらに、前金で宅配の場合、送料が入ってますよね。買い主も納得済み。現実の送料は犯罪収益に当たりません。返信用切手を同封して申し込んだときの切手は収益じゃないから。
福岡高裁H13.6.29
福岡高裁H18.12.20
SASE(elf-addressed stamped envelope 返信用切手と封筒同封)ということばを思い出しました。送料は切手になって、受取人の利益に帰するわけです。