児童ポルノ・児童買春・児童福祉法・監護者わいせつ・不同意わいせつ・強制わいせつ・青少年条例・不正アクセス禁止法・わいせつ電磁的記録弁護人 奥村徹弁護士の見解(弁護士直通050-5861-8888 sodanokumurabengoshi@gmail.com)

性犯罪・福祉犯(監護者わいせつ罪・強制わいせつ罪・児童ポルノ・児童買春・青少年条例・児童福祉法)の被疑者(犯人側)の弁護を担当しています。専門家向けの情報を発信しています。

過失がないといえるためには、雇主が、本件について右に認定したような外観的事情に依拠して、その者が一八才以上であると信じたのみでは足りず、さらに進んで本人の戸籍抄本、住民票などの信頼しうる客観的資料を提出させたうえ、これについて正確な調査をするなど、社会通念上、風俗営業を営む者として、その年令調査の確実を期するために可能な限りの注意を尽したといえることが必要である(大阪高裁s63.2.24)

 またまた18歳と17歳を見分けることができるかということを考えさせられています。
 現行法でいう50条2項の規定の解釈です。
 児童買春、児童ポルノに係る行為等の処罰及び児童の保護等に関する法律や児童福祉法の同様の規定についても、同様の解釈となると思います。要するに、真実児童であれば、過失でアウトということです。

風俗営業等の規制及び業務の適正化等に関する法律
(昭和二十三年七月十日法律第百二十二号)
第五十条
2 第二十二条第三号若しくは第四号(第三十二条第三項において準用する場合を含む。)、第
二十八条第十二項第三号、第三十一条の三第三項第一号、第三十一条の十三第二項第三号
若しくは第四号又は第三十一条の十八第二項第一号に掲げる行為をした者は、当該十八歳未
満の者の年齢を知らないことを理由として、前項の規定による処罰を免れることができない。た
だし、過失のないときは、この限りでない。

風俗営業等の規制及び業務の適正化等に関する法律違反被告事件
大阪高等裁判所昭和63年2月24日
 そこで、所論にかんがみ記録を調査して検討するのに、原判決挙示の各証拠によれば、被告人会社はその経営にかかるパチンコ店の従業員をかねてから新聞広告などにより募集していたところ、A子がその内縁の夫Bとともに昭和六一年七月三日これに応募してきたので、同会社の営業課長兼人事課長である被告人Xが同日右両名に面接したこと、A子は当時一六才で、右従業員として採用可能な年令に達していなかったため、予めBにおいてA子の年令を一八才と偽った同人名義の履歴書を作成し、これを右面接の際被告人Xに提出したが、同被告人は右記載の正確性をA子らに問い質すこともせず、同人の体格、服装のほか、成人のBと既に同棲していることなどから、A子が一八才に達していると認めて、それ以上の調査をすることなく、即座に同人を右パチンコ店の従業員として雇い入れたこと、その後、被告人Xにおいて、約束の時間に出勤しなかったA子の所在を確かめるため同人方に電話をしたことがあったが、その際応接に出た家人にA子の年令を確認することもせず、また同人に住民票の持参を求めたが提出されないまま今日に及んでいることが認められる。
 右事実によると、被告人Xは、Bが作成したA子名義の履歴書の記載のほか、右両名の供述、A子の体格、服装及び既に同棲生活をしていることなど、主として面接時における外観的事情に基づいて、A子の年令を一八才以上と認定したものと認められるところ、風営法四九条四項が、年少者の健全な育成を図る趣旨から、同条項所定の一定の罪につき、雇主において一八才未満の者の年令を知らなかったとしても、そのことについて過失のないときを除いて、処罰を免れないとした法意にかんがみると、右の過失がないといえるためには、雇主が、本件について右に認定したような外観的事情に依拠して、その者が一八才以上であると信じたのみでは足りず、さらに進んで本人の戸籍抄本、住民票などの信頼しうる客観的資料を提出させたうえ、これについて正確な調査をするなど、社会通念上、風俗営業を営む者として、その年令調査の確実を期するために可能な限りの注意を尽したといえることが必要であるとされる。
 そうすると、右と同旨の見解に立って、被告人Xの本件における年令調査が不十分であったとして、A子の年令を知らなかったことにつき、同被告人に過失がなかったとはいえないとした原判決の判断は相当であって、原判決に所論のような法令の適用の誤りは存しない。論旨は理由がない。