姿態をとらせて製造罪(7条4項)と性的姿態撮影罪は観念的競合(名古屋高裁R7.7.2)

 姿態をとらせて製造罪(7条4項)と性的姿態撮影罪は観念的競合(名古屋高裁R7.7.2)
 撮影した点だけが重なります。

性的姿態撮影罪と姿態をとらせて製造罪の重なり合い

不同意性交等、性的姿態等撮影、児童買春、児童ポルノに係る行為等の規制及び処罰並びに児童の保護等に関する法律違反被告事件
名古屋高判令和7年7月2日D1-Law.com判例体系〔28333601〕
 上記の者に対する不同意性交等、性的姿態等撮影、児童買春、児童ポルノに係る行為等の規制及び処罰並びに児童の保護等に関する法律違反被告事件について、令和7年3月13日岐阜地方裁判所が言い渡した判決に対し、被告人から控訴の申立てがあったので、当裁判所は、検察官玉田康治及び弁護人市橋優一各出席の上審理し、次のとおり判決する。
主文
原判決を破棄する。
被告人を懲役4年に処する。
原審における未決勾留日数中70日をその刑に算入する。

理由
理由
 本件控訴の趣意は、弁護人(原審弁護人と同じ)作成の控訴趣意書及び控訴趣意補充書に記載のとおりである。論旨は、量刑不当の主張であり、要するに、被告人を懲役5年に処した原判決の量刑は重過ぎて不当であるから、酌量減軽の上、その刑の執行を全部猶予するのが相当である、というのである。
 そこで、原審記録を調査し、当審における事実取調べの結果を併せて検討する。
 本件は、被告人が、16歳未満であり、かつ、自身と5歳以上の年齢差があることを知りながら、4回にわたり、当時14歳の被害者と性交し、それぞれの性交の際に、性交する姿態等をとらせて撮影するとともにデータを保存して児童ポルノを製造し(原判示第1)、18歳に満たない児童であることを知りながら、6回にわたり、当時17歳の被害者に性交する姿態等をとらせて撮影したデータを保存して児童ポルノを製造した(原判示第2)、という事案である。
 原判決は、量刑の中心となる不同意性交等について、被害者が中学生であることを認識したにもかかわらず、思いとどまることなく性交に及び、その後も性交を複数回重ねたもので、被害者の好意や未熟さに乗じて性欲のはけ口として扱うような犯行であり、繰り返している点の悪質さも看過できないとし、児童ポルノ製造等について、常習性が認められ、流通させる意図がないことや被害者らが撮影されていることを認識していることなどを考慮しても、被害者らの未熟さに乗じて性交等の姿態を撮影すること自体が児童を性的に搾取する行為に当たり、製造された児童ポルノのわいせつ性も高いとし、さらに、警察官の職にあったにもかかわらず、被害者らの心身や将来に与える悪影響を顧みることなく自身の欲求を優先して犯行に及んだものといえ、強い非難は免れないから、本件は、同種事案の中で軽いものではなく、酌量減軽すべき事案ではないが、他方で、性交に当たり暴行脅迫は用いていないこと、前科前歴が見当たらず、懲戒免職となるなど社会的制裁を受けていること、父親が出廷して監督を誓っていることなどの酌むことができる事情や同種事案の量刑傾向等も考慮して、被告人を懲役5年に処した。
 原判決の量刑事情の認定及び評価に誤りはなく、酌量減軽すべき事案ではないとした点を含め、その量刑判断は相当として是認することができる。
 所論は、原判決について、不同意性交等は本来的に好意や未熟さに乗じて被害者を性欲のはけ口として扱う犯罪類型であり、児童ポルノ製造も本来的に未熟さに乗じて児童を性的に搾取する犯罪類型であるから、これらの点を不利な犯情として考慮するのは相当でなく、いずれも勤務時間外に純粋な私人として行った犯罪であり、警察官の職にあった点を不利な情状として考慮するのは職業差別の一種というべきであって許されない、という。しかしながら、原判決の不同意性交等や児童ポルノ製造等に関する説示は、本件各犯行がまさにそれぞれの犯罪が想定している類型に当たるという当然のことを指摘したまでで何ら不当なものではない。また、原判決の被告人が警察官の職にあったことに関する説示についても、被告人の規範意識の低さを指摘しようとしたものと解されるところ、本件各犯行が職務とは無関係に行われたものであったとしても、職業柄法の遵守が強く求められる警察官があえて犯罪行為に及べば、社会的に強い非難を受けることは免れないというべきであって、原判決は上記のような趣旨で上記説示をしたものと解されるから、相当性を欠くとはいえない。
 所論は、原判決について、被告人が深く反省していることや被害弁償に至らなかった原因が専ら被害者側の事情にあることを考慮した様子がない、という。確かに、原判決は、明示的にはこの点について説示していないものの、量刑した刑期が処断刑の下限にとどまっていることからすると、一般情状ともいうべき被告人の反省状況や被害弁償に至らなかった経緯についても適切に考慮したものと解される。
 以上検討したとおり、所論を踏まえて改めて検討しても、被告人を懲役5年に処した原判決の量刑は、その宣告時点では重過ぎて不当なものとはいえない。
 論旨は理由がない。
 もっとも、当審における事実取調べの結果によると、原判決後、被告人と原判示第1の被害者との間で解決金400万円の支払を約する合意が成立し、同被害者からは被告人に対する刑の執行が全部猶予されても異論はないという意向が示されていること、解決金の支払は未了であるが、確実な支払を担保する手段が講じられていることが認められる。これらの原判決後に生じた事情を原判決時点の事情に併せて考慮すれば、本件犯情の悪質さからして、なお実刑は免れないものの、原判決の量刑は刑期の点でいささか重きに失することになったというべきである。
 そこで、刑訴法397条2項により原判決を破棄し、同法400条ただし書を適用して更に次のとおり判決する。
 原判決が適法に認定した罪となるべき事実に法令を適用すると、被告人の原判示第1の1、3、5及び7の各所為はいずれも刑法177条3項、1項、令和5年法律第66号附則3条に該当し、原判示第1の2、4、6及び8の各所為のうち、性的姿態等撮影の点はいずれも性的な姿態を撮影する行為等の処罰及び押収物に記録された性的な姿態の影像に係る電磁的記録の消去等に関する法律2条1項4号(1号イ、ロ)、附則2条に該当し、児童ポルノ製造の点はいずれも令和4年法律第68号(以下「整理法」という。)441条1項により同法による改正前の児童買春、児童ポルノに係る行為等の規制及び処罰並びに児童の保護等に関する法律7条4項、2項、2条3項1号、2号、3号に該当し、原判示第2別表番号1、3ないし6の各所為はいずれも同法7条4項、2項、2条3項1号、3号に該当し、原判示第2別表番号2の所為は同法7条4項、2項、2条3項3号に該当するところ、原判示第1の2、4、6及び8は1個の行為が2個の罪名に触れる場合であるから、刑法54条1項前段、10条(ただし、同条1項は整理法441条1項により令和4年法律第67号2条による改正前の刑法(以下「旧刑法」という。))によりいずれも1罪として犯情の重い児童ポルノ製造の罪の刑で処断し、
原判示第1の2、4、6及び8並びに原判示第2の各罪についていずれも懲役刑を選択し、以上は旧刑法45条前段の併合罪であるから、同法47条本文、刑法10条(ただし、同条1項は旧刑法)により最も重い原判示第1の1の罪の刑に法定の加重をし、
なお犯情を考慮し刑法66条、71条、旧刑法68条3号を適用して酌量減軽した刑期の範囲内で被告人を懲役4年に処し、刑法21条を適用して原審における未決勾留日数中70日をその刑に算入することとして、主文のとおり判決する。
(原審検察官の求刑:懲役7年)

刑事第1部

 (裁判長裁判官 山田耕司 裁判官 大村泰平 裁判官 松田克之)