児童ポルノ・児童買春・児童福祉法・監護者わいせつ・不同意わいせつ・強制わいせつ・青少年条例・不正アクセス禁止法・わいせつ電磁的記録弁護人 奥村徹弁護士の見解(弁護士直通050-5861-8888 sodanokumurabengoshi@gmail.com)

性犯罪・福祉犯(監護者わいせつ罪・強制わいせつ罪・児童ポルノ・児童買春・青少年条例・児童福祉法)の被疑者(犯人側)の弁護を担当しています。専門家向けの情報を発信しています。

「18歳未満とは知らなかった」と容疑を否認している場合と青少年条例の知情規定

 まあ、難しい弁解ですが、児童買春罪には年齢知情の特則がないので、理論的にはあり得る弁解です。

110番・119番:中学生を買春した男を容疑で逮捕 /香川
 高松南署は14日、容疑者(34)を児童買春・児童ポルノ法違反の疑いで逮捕した。調べでは、「18歳未満とは知らなかった」と容疑を否認しているという。

 ところで、児童買春、児童ポルノに係る行為等の処罰及び児童の保護等に関する法律施行以前、青少年条例違反については、条例27条でこのような弁解は封じされていました。

香川県青少年保護育成条例
http://www.pref.kagawa.jp/homubunsho/hoki/d1w_reiki/32790101002200000000/41790101001300000000/41790101001300000000.html
第十六条 何人も、青少年に対し、淫行または猥せつの行為をしてはならない。
2 何人も、青少年に対し、前項の行為を教え、またはこれを見せてはならない。
第二十二条 第十六条の規定に違反した者は、二年以下の懲役又は百万円以下の罰金に処する。
第二十七条 第七条第五項、第八条第四項、第八条の二第四項、第十条の二第二項、第十条の三、第十二条、第十三条、第十五条第二項若しくは第三項、第十六条、第十七条又は第十七条の二の規定に違反した者は、当該青少年の年齢を知らないことを理由として、第二十二条から前条までの規定による処罰を免れることができない。ただし、当該青少年の年齢を知らないことに過失がないときは、この限りでない。

「当該青少年の年齢を知らないことを理由として、・・・の規定による処罰を免れることができない」という条項についての判例

徳島県青少年保護育成条例違反被告事件
高松高等裁判所平成10年3月3日
二 控訴趣意中、事実誤認の主張について 論旨は、原判決は、被告人が一八歳に満たないA子に対してわいせつな行為をした旨認定して、被告人を有罪としたが、被告人は、A子が一八歳未満であることを知らず、また、そのことに過失もなかったから、原判決には、この点において、判決に影響を及ぼすことが明らかな事実の誤認があるというのである。 
よって、記録を調査し、当審における事実取調べの結果をも併せて検討するに、原判決挙示の関係各証拠によれば、被告人は、少なくともA子が一八歳未満であるかも知れないことを認識しながら、あえて同人にわいせつな行為をしたものと認められるから、被告人を有罪とした原判決に所論のいうような事実の誤認はない。 
すなわち、原判決挙示の関係各証拠によれば、被告人が、犯行当日、いわゆるテレホンクラブに電話したところ、当時A子に売春をさせていたB子がこれに出て、「お小遣いが欲しい。年は一八歳。甲野高校の前で待ってる。」などと売春の相手方となるよう誘いかけ、被告人がこれを承諾して自動車で約束の甲野高校前まで行くとA子が待っており、被告人はA子の風貌等を見て浚巡したものの、結局同人を乗せて近くのホテルまで行き、原判示のようなわいせつな行為をしたが、その途中にA子がB子にポケットベルを鳴らされ、A子がB子に電話すると、B子から次の売春客が来たので早くして帰れて言われたため、A子が被告人に対し、「用事ができたけん早うして。」などと言うと、被告人は怒って帰ってしまったという経過が認められる。
ところで、被告人は一八歳未満の青少年にわいせつな行為をするなどすれば、条例による処罰の対象となることはよく知っており、
被告人の当審供述によれば、数年前に教師が本条例違反で逮捕されて職を失ったという事件があったことも知っていたというのであるから、被告人にとって相手方の年齢は相当の関心事であったと考えられるが、
前記のとおり、被告人とB子の当初の電話内容でも、相手方は条例違反とならない最低の年齢である一八歳というのであって、売春の相手方となることを断られないように年齢を詐称しているのではないかとの疑いを抱いてもしかるべき状況であり、
その後実際に見たA子の風貌や同人との会話等からしても、同人は黒っぽい服を着て化粧等もしていたとはいうものの、誰が見ても同人が一八歳以上であると考えるような事情は認められず、
現に被告人はA子の売春の相手方となることを相当浚巡し、最終的にも前記のようなやりとりをきっかけとして性交にまで至らずに帰っている経過などをも考え併せると、
被告人が最初にA子を見たとき、顔はほほがぽっちゃりとして幼さの残る顔立ちで一七歳前後に見えた、どう見ても未成年で、一八歳を超えているようには見えない、
条例違反になるので帰ろうと思ったが、結局同人を乗せてホテルに行った、その途中も、もし一八歳未満でなければ違反にならないから一八歳以上であることを期待してセックスしようかなどと思い悩んだ
という被告人の司法巡査(原審検察官請求証拠番号11、12)及び検察官(同13)に対する各供述調書の記載は、被告人にはA子が一八歳未満であることの未必的な認識があったという趣旨のものとして、信用することができるというべきである。
右認定に反する被告人の原審及び当審供述は信用することができない。その他、所論にかんがみ記録を調査し、当審における事実取調べの結果を併せて検討しても、原判決に所論のいうような事実の誤認はない。所論は採用できない。

 香川県民は、淫行・猥せつ行為の相手について年齢確認義務を負っていたわけです。県民の総意として。
 児童買春罪で逮捕された場合、従前の年齢確認義務はどうなるんですかね?一転して重過失でも故意がないから不成立ということでいいんですか?