画像送信要求罪(182条3項)というのができて
刑法 第一八二条(十六歳未満の者に対する面会要求等)
3十六歳未満の者に対し、次の各号に掲げるいずれかの行為(第二号に掲げる行為については、当該行為をさせることがわいせつなものであるものに限る。)を要求した者(当該十六歳未満の者が十三歳以上である場合については、その者が生まれた日より五年以上前の日に生まれた者に限る。)は、一年以下の拘禁刑又は五十万円以下の罰金に処する。
一 性交、肛門性交又は口腔性交をする姿態をとってその映像を送信すること。
二 前号に掲げるもののほか、膣又は肛門に身体の一部(陰茎を除く。)又は物を挿入し又は挿入される姿態、性的な部位(性器若しくは肛門若しくはこれらの周辺部、臀でん部又は胸部をいう。以下この号において同じ。)を触り又は触られる姿態、性的な部位を露出した姿態その他の姿態をとってその映像を送信すること。
要求した結果、画像が撮影・送信されると不同意わいせつとか製造罪とか性的姿態撮影罪になって、牽連犯になるというのです。
記載例
被告人は、A(当時13歳)が16歳未満の者であり、かつ、自らがA の生まれた日より5年以上前の日に生まれた者であることを知りながら、正当な理由がないのに、令和5年7月6日ころ室被告人方において、アプリケーションソフト「」のメッセージ機能を利用して、A に対し、「女性器を見せろ」と記載したメッセージを送信して、その頃、同人にこれを閲読させ、もって性的な部位を露出した姿態をとってその映像を送信するよう要求し、
同日大阪府内の同人方居室において、同人に陰部を露出した姿態をとらせ、これを同人が使用する携帯電話機で撮影させた上、その静止画データ10点を同携帯電話機から前記「」を利用して被告人が使用する携帯電話機に宛てて送信させ、
その頃、当時の株式会社が日本国内に設置して管理している電磁的記録媒体であるサーバコンピュータ内に記録させて保存し、もってわいせつな行為をするとともに、
性的姿態等を撮影し、
衣服の一部を着けない児童の姿態であって、殊更に児童の性的な部位が露出され又は強調されているものであり、かつ、性欲を興奮させ又は刺激するものを視覚により認識することができる方法により描写した電磁的記録に係る記録媒体である児童ポルノを製造したものである。
罪名
16歳未満の者に対する映像送信要求、
不同意わいせつ、
性的姿態等撮影、
児童買春、児童ポルノに係る行為等の規制及び処罰並びに児童の保護等に関する法律違反
10-2訂版刑法特別法犯罪事実記載例集士本武司著岡本貴幸改訂増補p123
面会要求の結果として面会した場合、面会要求罪は面会罪の前提であることから、面会要求罪(1項)は面会罪(2項)に吸収される。
面会をしてわいせつ行為(性交等)に及んだ場合、面会罪は性的保護状態を保護するものである一方、不同意わいせつ罪や不同意性交等罪は性的自由・性的自己決定権を保護するものであり、両者は異なる罪質であることから、面会罪と不同意わいせつ罪・不同意性交等罪が成立し、両者は牽連犯となることが多いと思われる。
性的行為をさせてその姿態をとらせてその映像を送信させた場合、本罪は性的保護状態を保護するものである一方、不同意わいせつ罪や不同意性交等罪は性的自由・性的自己決定権を保護するものであり、両者は異なる罪質であることから、本罪と不同意わいせつ罪・不同意性交等罪が成立し、両者は牽連犯となることが多いと思われる。
法務省の説明では、観念的競合か牽連犯だとされています。
脅迫して要求すると、不同意わいせつの着手時期が脅迫行為になって、画像要求罪とかぶるので、観念的競合もあり得るということでしょう。
法務省逐条説明
本条第3項の罪に当たる行為が行われた後に、強制わいせつ罪に当たる行為が行われた場合、
〇本条第3項の罪は、性的自由・性的自己決定権を保護法益とする強制わいせつ罪の予備罪としてではなく、16歳未満の者が性被害に遭う危険性のない状態、すなわち、性被害に遭わない環境にある状態という性的保護状態を保護法益とする趣旨で設けるものであることから、本条第3項の罪と強制わいせつ罪の両罪が成立するものと考えられる。
その上で、社会的見解上の行為が一個と評価される場合には、観念的競合となる一方、一個の行為と評価されない場合には、本条第3項の罪と強制わいせつ罪は、罪質上通例その一方が他方の手段又は結果となるという関係があることから、具体的に行為者がそのような関係において両罪を実行したのであれば、牽連犯になると考えられる。
ところが、脅迫して撮影送信させた場合、高裁岡山支部h22.12.15と東京高裁h28.2.19は、送信させる行為をわいせつ行為ではない、脅して撮影送信させる強要罪と製造罪は別個の行為だとしています。
速報番号平成23年1号
児童買春,児童ポルノに係る行為等の処罰及び児童の保護等に関する法律違反,強要被告事件
広島高等裁判所岡山支部平成22年12月15日判決控訴棄却
平成22年12月22日上告
〔控訴申立人〕弁護人
〔検察官〕見越正秋
〔第一審〕岡山地方裁判所
判示事項
児重ポルノ製造罪と強要罪は併合罪の関係にあるとして,両罪を観念的競合であるとした原判決に法令適用の誤りがあるとした事例
判例タイムズ1432号
強要罪と平成26年法律第79号による改正前の児童買春,児童ポルノに係る行為等の処罰及び児童の保護等に関する法律7条3項の児童ポルノ製造罪とが併合罪の関係にあるとされた事例
対象事件|
平成28年2月19日判決
東京高等裁判所第5刑事部
平成27年(う)第1766号
強要,児童買春,児童ポルノに係る行為等の処罰及び児童の保護等に関する法律違反被告事件
裁判結果|
控訴棄却,上告
原審|
新潟地方裁判所高田支部平成27年(わ)第35号平成27年8月25日判決
判 決
被告人に対する強要,児童買春,児童ポルノに係る行為等の処罰及び児童の保護等に関する法律違反被告事件について,当裁判所は,検察官濱本康直,弁護人(私選)奥村徹各出席の上審理し,次のとおり判決する。
理 由
(罪となるべき事実)
被告人は,インターネットアプリケーション「」において「氏」という名前を使用している甲(当時13歳。以下「被害者」という。)が18歳に満たない児童であることを知りながら,年月20日頃から同月28日までの間,多数回にわたり,県内又はその周辺において,被告人使用の携帯電話機から,市内にいた同児童に対し,前記「」を使用し,同児童が使用するタブレット端末に,「写メ送れ 殺すぞ」などの文言を送信し,いずれもその頃,同児童に閲読させ,同児童に対し,その乳房,性器等を撮影してその画像データを前記「」を使用して送信するよう要求し,もし,その要求に応じなければ同児童の名誉等にいかなる危害を加えるかもしれない旨脅迫して同児童を畏怖させ,よって,同月22日から同月28日までの間,同児童に,その乳房,性器等を前記タブレット端末で撮影させた上,前記「」を使用して,その画像データ110点を前記被告人使用の携帯電話機に送信させて受信・記録し,もって同児童に義務のないことを行わせるとともに,衣服の全部又は一部を着けない児童の姿態であって性欲を興奮させ又は刺激するものを視覚により認識することができる方法により描写した同児童の児童ポルノを製造したものである。
高裁判例によれば、脅迫による送信要求と撮影・送信させる行為とは、2個の行為とされています。とすると、画像要求罪と、不同意わいせつ・製造・性的姿態撮影罪も併合罪になるのではないか