児童ポルノ製造罪(7条4項)の訴因に、訴因変更で、準強制わいせつ罪が追加された事例(大津地裁R5.10.26)
軽い児童ポルノ罪だと思って、製造罪で捜査を受けて、自白して、検察官請求証拠に同意したら、準強制わいせつ罪に訴因変更されてしまったということですよね
大分地裁h23.5.11は、強要罪で逮捕されて強制わいせつ罪で起訴された事例ですが、併合罪とされていました。
大分地判平成23年5月11日
強制わいせつ,児童買春,児童ポルノに係る行為等の処罰及び児童の保護等に関する法律違反被告事件
判 決
主 文
省略
理 由
(罪となるべき事実)
被告人は,
第3 A子(当時14歳)に強いてわいせつな行為をしようと企て,平成○年×月12日午後3時53分頃から同月14日午前6時40分頃までの間,55回にわたり,前記被告人方において,被告人の携帯電話機ないしゲームサイト「G」のメール機能を利用して,同女の携帯電話機及び「G」上の同女が閲覧できるメール受信箱に「送らんとマジでB中にいけんように画像ばらまくよ」「B中学生の全員に画像送るから」「マンコを指でひろげたやつを撮れ」「乳首つまんだやつ撮れ」「まだ終わりやないよ」「胸なめよんやつ撮れ」「メールせんならゲームオーバー」「今日中に送らなかったら明日から家の外でれないね」「マンコの中がみえるように指でつまんでひろげろ」などと記載した電子メールを送信し,その頃,同女方において,同女をして,その電子メールを閲覧させて脅迫し,別表3記載のとおり,同月12日午後9時2分頃から同月14日午前6時50分頃までの間,21回にわたり,同女方において,同女をして乳房を露出させたり,陰部に指を挿入させるなどした姿態をとらせた上,その姿態を同女の携帯電話機で撮影させてその画像データを被告人の携帯電話機に電子メール添付ファイルとして送信させ,もって強いてわいせつな行為をした
第4 別表3記載のとおり,同年×月12日午後9時2分頃から同月14日午前6時50分頃までの間,21回にわたり,上記A子(当時14歳)が18歳に満たない児童であることを知りながら,同女をして,その乳房及び陰部を露出した姿態をとらせ,これを同女の携帯電話機付属のカメラ機能により静止画として撮影させて,その画像データを被告人の携帯電話機に電子メール添付ファイルとして送信させ,いずれもその頃,前記被告人方において,同画像データを被告人の携帯電話機のメモリー記録媒体内に記憶させて蔵置し,もって,衣類の全部又は一部を付けていない児童の姿態であって性欲を興奮させ又は刺激するものを視覚により認識することができる方法により描写した児童ポルノである電磁的記録に係る記録媒体を製造した
ものである。(判示第3,第4の事実に関する弁護人の主張に対する判断)
1 弁護人は,判示第3の強制わいせつ罪については,強要罪が成立するにすぎず,また,その強要罪と判示第4の児童ポルノ製造罪とは観念的競合として科刑上一罪の関係にある旨主張する。
確かに,弁護人が指摘するように,携帯電話機を用いた児童ポルノ製造罪について,強要罪と併せて起訴され,これを観念的競合として科刑上一罪の関係にあるとしたと思われる下級審裁判例が複数存在している。
2 まず,本件で強制わいせつ罪が成立するかどうか検討する。
本件の事案は,被告人がメールにより送信した脅迫,指示の回数が55回と多く,被害者からこれに応えてメールに添付してわいせつな映像を送付した回数も21回と多い点で,弁護人が指摘する下級審裁判例の事案と異なっているようにも思われる。
すなわち,本件において,被害者が終わりにしようという趣旨のメールを被告人に送ってメールアドレスを変更した後,被告人は,ゲームサイトのメール機能を使って被害者を脅迫し,さらに,携帯電話機のメール機能を使って,「上脱いで撮れ」「パンツも脱いで撮れ」「下から撮れ」「マンコ指で開いてみせろ」「指で開けって」「開いて中がみえるやつな」「ちゃんと入れちょんのがわかるようにうつせ」「マンコを指でひろげたやつを撮れ」「指2本」「胸寄せて撮れ」「乳首つまんだやつ撮れ」「胸なめよんやつとれ」などと順次わいせつな内容の指示をしつつ,わいせつな内容の添付ファイルが届くと,これを確認しつつ,次の指示を出す形で,被告人の具体的な指示に従って被害者をしてわいせつな行為を次々とさせている。
そうすると,本件では,被告人のわいせつな内容の具体的指示に基づいて,被害者が継続的にわいせつな行為を強いられており,わいせつ性や被害者の性的自由が侵害された程度が大きいと認められる。よって,本件を強制わいせつ罪として起訴した点が不当とまではいえず,本件では,強要罪にとどまらず,強制わいせつ罪が成立するといえる。
3 次に,罪数の点について検討する。
本件においては,強要罪にとどまらず,強制わいせつ罪が成立するところ,強制わいせつ罪の核心部分は,被告人が被害者をメールで脅迫して,強いてわいせつな行為をさせた点である。これに対し,児童ポルノ製造罪の核心部分は,被告人の携帯電話機の記録媒体に児童ポルノを製造したことである。
本件において,強制わいせつ行為と,児童ポルノ製造行為は,経緯としてはかなり重なる点があるけれども,両行為が通常伴う関係にあるとはいえないことや,両行為の性質,保護法益等にかんがみると,それぞれにおける行為者の動態は社会的見解上別個のものといえるから,両罪は観念的競合の関係にはなく,併合罪の関係にあると考えられる。
4 前記弁護人の主張は採用できない。
(法令の適用)
罰 条
第1,第2,第4 児童買春,児童ポルノに係る行為等の処罰及び児童の保護等に関する法律7条3項,1項,2条3項3号(それぞれ包括一罪)
第3 刑法176条前段(包括一罪)
刑種の選択
第1,第2,第4 いずれも懲役刑を選択
併合罪加重 刑法45条前段,47条本文,10条
(最も重い第3の罪の刑に法定の加重)
観念的競合説は最近の傾向で
大阪 高裁 R3.7.14
大阪 高裁 R4.1.20
札幌 高裁 R5.1.19
札幌 高裁 R6.3.5
高松高裁r7.2.13でも製造罪と不同意わいせつ罪(176条3項)は観念的競合になっています。
令和7年2月13日
第3 法令適用の誤りの主張について
1 原判示第1の事実について
論旨は、原判示第1の所為のうち、16歳未満の者に対する映像送信要求罪は、その他の不同意わいせつ罪、性的姿態等撮影罪及び児童ポルノ製造罪と併合罪の関係にあるにもかかわらず、観念的競合の関係にあるとした原判決には判決に影響を及ぼすことが明らかな法令適用の誤りがあり、仮に併合罪関係にはないとしても、16歳未満の者に対する映像送信要求罪は、不同意わいせつを目的にその手段として行われたものであり、不同意わいせつ罪と牽連犯の関係にあるから、観念的競合の関係にあるとした原判決には判決に影響を及ぼすことが明らかな法令適用の誤りがあるというのである。
そこで検討すると、原判示第1の不同意わいせつ罪は、当時30歳の被告人が、SNS上に性交相手を募集する内容の投稿をしていた当時14歳のAに対し、ダイレクトメッセージを送って自らがその相手となることを持ち掛けて待合せ場所を決めるなどした後、Aの陰茎を露出して写真を撮影してその画像を被告人に送ることを要求するメッセージを送信し、Aにこれを了承させ、その約3時間後に、Aに陰茎を露出させてそれを撮影させ、画像データを被告人に送信させたことにより行われたものである。このように原判示第1は、刑法176条3項のわいせつな行為としてAの行為を利用したものであるが、被告人は、前記のような状況にあったAに対し、自らの勃起した陰茎の写真を送るなどしながらAにも勃起した陰茎の写真を撮影して送信するよう求めるなどの性的意味合いの強い具体的な要求をし、すぐさまAに了承させ、Aに要求どおりの行為をさせており、このような事実関係の下において、本件の被告人のAに対する要求行為は、Aの性的自由の侵害を生じさせる客観的な危険性が認められるものであり、不同意わいせつ罪の実行行為に当たるとみることができる。
そうすると、原判示第1の不同意わいせつ罪における実行行為に当たる、Aに対し陰茎を露出した姿態をとってその写真を撮影して送信することを要求した被告人の行為と、16歳未満の者に対する映像送信要求罪の実行行為に当たる要求行為は、同時に行われ、重なり合うものであり、それぞれにおける被告人の動態は社会的見解上1個のものといえるから(最高裁昭和47年(あ)第1896号同49年5月29日大法廷判決・刑集28巻4号114頁、最高裁平成19年(あ)第619号同21年10月21日第一小法廷決定・刑集63巻8号1070頁参照)、原判示第1の16歳未満の者に対する映像送信要求罪と、不同意わいせつ罪及びこれと観念的競合の関係にある他の2罪は、刑法54条1項前段の観念的競合の関係にあるというべきである。原判決第1の事実について法令適用の誤りをいう論旨は理由がない。
【判例ID】28313641
【裁判年月日等】令和5年10月26日/大津地方裁判所
【事件名】児童買春、児童ポルノに係る行為等の規制及び処罰並びに児童の保護等に関する法律違反(変更後の訴因:準強制わいせつ、児童買春、児童ポルノに係る行為等の規制及び処罰並びに児童の保護等に関する法律違反)、準強制性交等被告事件
【裁判官】谷口真紀 西脇真由子 山口美和
【出典】 D1-Law.com判例体系
第1〔訴因変更後の令和5年6月5日付け起訴状記載の公訴事実関係〕
A(氏名は別紙記載のとおり。以下「A」という。当時13歳)が18歳に満たない児童であることを知りながら、令和4年7月22日頃から同年8月12日頃までの間、東京都内又はその周辺において、複数の架空人を装い、Aに対し、SNSアプリケーションを用いて多数のメッセージを送信して、Aの写真が人身売買の情報を掲載するインターネット上のサイトに掲載されており、Aが人身売買を逃れるには、架空人の要求に従う必要がある旨申し向け、Aにその旨誤信及び畏怖させ、その要求を拒絶することができない抗拒不能の状態にあることに乗じてAにわいせつな行為をしようと考え、同日、東京都内又はその周辺において、Aに対し、乳房及び性器を露出した姿態を撮影し、被告人が使用する携帯電話機に同静止画を送信するよう要求し、同日、滋賀県内のA方において、Aに乳房及び性器を露出させる姿態をとらせ、これをA使用の撮影機能付き携帯電話機で撮影させた上、同画像データ2点を、アプリケーションソフト「B」を使用して同携帯電話機から被告人が使用する携帯電話機に送信させ、その頃、同データ2点をそれぞれB株式会社が管理する日本国内設置の電磁的記録媒体であるサーバコンピューター内に記録して保存し、もって人の抗拒不能に乗じてわいせつな行為をするとともに、衣服の全部を着けない児童の姿態であって、殊更に児童の性的な部位が露出され又は強調されているものであり、かつ、性欲を興奮させ又は刺激するものを視覚により認識することができる方法により描写した電磁的記録に係る記録媒体である児童ポルノを製造し、
(法令の適用)
罰条
判示第1の所為のうち
準強制わいせつの点 令和5年法律第66号附則2条1項により同法による改正前の刑法178条1項、176条前段
児童ポルノ製造の点 児童買春、児童ポルノに係る行為等の規制及び処罰並びに児童の保護等に関する法律7条4項、2項、2条3項3号
・・・
科刑上一罪の処理
判示第1の罪 刑法54条1項前段、10条(1個の行為が2個の罪名に触れる場合であるから、重い準強制わいせつ罪の刑で処断)
訴因変更前のr6.6.5起訴状
起訴状
下記被告事件につき公訴を提起する
A(氏名は別紙記載のとおり。以下「A」という。当時13歳)が18歳に満たない児童であることを知りながら、令和4年同年8月12日 2回にわたり、
滋賀県内の児童において、Aに乳房及び性器を露出させる姿態をとらせ、
これをA使用の撮影機能付き携帯電話機で撮影させた上、
同画像データ2点を、アプリケーションソフト「line」を使用して同携帯電話機から被告人が使用する携帯電話機に送信させ、
その頃、同データ2点をそれぞれline株式会社が管理する日本国内設置の電磁的記録媒体であるサーバコンピューター内に記録して保存し、もって衣服の全部を着けない児童の姿態であって、殊更に児童の性的な部位が露出され又は強調されているものであり、かつ、性欲を興奮させ又は刺激するものを視覚により認識することができる方法により描写した電磁的記録に係る記録媒体である児童ポルノを製造したものである
罪名罰条
児童ポルノ・児童買春法違反
同法7条4項 2条3項3号
↓
訴因変更後の公訴事実
A(氏名は別紙記載のとおり。以下「A」という。当時13歳)が18歳に満たない児童であることを知りながら、令和4年7月22日頃から同年8月12日頃までの間、東京都内又はその周辺において、複数の架空人を装い、Aに対し、SNSアプリケーションを用いて多数のメッセージを送信して、Aの写真が人身売買の情報を掲載するインターネット上のサイトに掲載されており、Aが人身売買を逃れるには、架空人の要求に従う必要がある旨申し向け、Aにその旨誤信及び畏怖させ、その要求を拒絶することができない抗拒不能の状態にあることに乗じてAにわいせつな行為をしようと考え、同日、東京都内又はその周辺において、Aに対し、乳房及び性器を露出した姿態を撮影し、被告人が使用する携帯電話機に同静止画を送信するよう要求し、同日、滋賀県内のA方において、Aに乳房及び性器を露出させる姿態をとらせ、これをA使用の撮影機能付き携帯電話機で撮影させた上、同画像データ2点を、アプリケーションソフト「B」を使用して同携帯電話機から被告人が使用する携帯電話機に送信させ、その頃、同データ2点をそれぞれB株式会社が管理する日本国内設置の電磁的記録媒体であるサーバコンピューター内に記録して保存し、もって人の抗拒不能に乗じてわいせつな行為をするとともに、衣服の全部を着けない児童の姿態であって、殊更に児童の性的な部位が露出され又は強調されているものであり、かつ、性欲を興奮させ又は刺激するものを視覚により認識することができる方法により描写した電磁的記録に係る記録媒体である児童ポルノを製造したものである