迷惑条例の盗撮罪と児童ポルノひそかに製造罪は併合罪(第1と第2、第5と第6)、強制わいせつ罪(176条後段)と児童ポルノ姿態をとらせて製造罪は観念的競合(第4)、性的姿態撮影罪とひそかに製造罪は併合罪(第5と第6)、不同意わいせつ(176条3項)と性的姿態撮影罪と姿態をとらせて製造罪は併合罪(第7と第8と第9)(佐渡支部R6.3.21)
罪数処理の基準を決めていないので罪数処理がマチマチです。分からないのなら全部併合罪にしておけばいいと思います。
これを観念的競合にすると、「その動画データ2点を同携帯電話機の内臓記録装置に記録させて保存し、」みたいな対人的行為ではないものをわいせつ行為と評価してしまうことになります。
第4(令和6年2月2日付け追起訴状記載の公訴事実第3)
C(当時10歳)が13歳未満の者であることを知りながら、令和5年7月4日午後2時7分頃から同日午後2時9分頃までの間、前記公共施設において、Cに対し、その上衣をめくり上げて胸部を露出させた姿態をとらせ、これを自己の携帯電話機で動画撮影し、その動画データ2点を同携帯電話機の内臓記録装置に記録させて保存し、もって13歳未満の者に対し、わいせつな行為をするとともに、衣服の全部又は一部を着けない児童の姿態であって、殊更に児童の性的な部位が露出され又は強調されているものであり、かつ、性欲を興奮させ又は刺激するものを視覚により認識することができる方法により描写した電磁的記録に係る記録媒体である児童ポルノを製造した。
新潟地裁佐渡支部令和 6年 3月21日
新潟県迷惑行為等防止条例違反、不同意わいせつ、性的姿態等撮影、児童買春、児童ポルノに係る行為等の規制及び処罰並びに児童の保護等に関する法律違反、強制わいせつ被告事件
文献番号 2024WLJPCA03216004
出典Westlaw Japan
(罪となるべき事実)
被告人は、
第1(令和6年2月2日付け追起訴状記載の公訴事実第1)
正当な理由がないのに、令和5年6月5日午後1時1分頃から同日午後1時30分頃までの間に、新潟県佐渡市所在の公共施設の女子トイレ個室内において、同所に設置した携帯電話機を使用して、A(当時9歳)の下着及び身体を動画撮影し、もって便所にいる人に対して、不安を覚えさせ、かつ、羞恥させるような行為であって、人が通常衣服等で隠している下着又は身体を無断で撮影した。
第2(令和6年2月2日付け追起訴状記載の公訴事実第2)
Aが18歳に満たない児童であることを知りながら、前記第1記載の日時場所において、ひそかに、Aの性器付近が露出された姿態を自己の携帯電話機で動画撮影した上、その頃から同日午後2時46分頃までの間に、前記公共施設において、その動画データを編集して作成した動画データ1点を同携帯電話機の内臓記録装置に記録させて保存し、もってひそかに衣服の全部又は一部を着けない児童の姿態であって、殊更に児童の性的な部位が露出され又は強調されているものであり、かつ、性欲を興奮させ又は刺激するものを視覚により認識することができる方法により描写した電磁的記録に係る記録媒体である児童ポルノを製造した。
第3(令和5年12月6日付け起訴状記載の公訴事実第1)
正当な理由がないのに、令和5年6月21日午前9時14分頃、前記公共施設の女子トイレにおいて、同トイレ個室内にいたB(当時17歳)に対し、同個室仕切り板の下部から携帯電話機を差し入れて設置し、Bの下着及び身体を動画撮影し、もって便所にいる人に対して、不安を覚えさせ、かつ、羞恥させるような行為であって、人が通常衣服等で隠している下着又は身体を無断で撮影した。
第4(令和6年2月2日付け追起訴状記載の公訴事実第3)
C(当時10歳)が13歳未満の者であることを知りながら、令和5年7月4日午後2時7分頃から同日午後2時9分頃までの間、前記公共施設において、Cに対し、その上衣をめくり上げて胸部を露出させた姿態をとらせ、これを自己の携帯電話機で動画撮影し、その動画データ2点を同携帯電話機の内臓記録装置に記録させて保存し、もって13歳未満の者に対し、わいせつな行為をするとともに、衣服の全部又は一部を着けない児童の姿態であって、殊更に児童の性的な部位が露出され又は強調されているものであり、かつ、性欲を興奮させ又は刺激するものを視覚により認識することができる方法により描写した電磁的記録に係る記録媒体である児童ポルノを製造した。
第5(令和6年2月2日付け追起訴状記載の公訴事実第4)
正当な理由がないのに、令和5年9月29日午前9時44分頃から同日午前9時49分頃までの間に、前記公共施設の女子トイレ個室内において、ひそかに、同所に設置した携帯電話機を使用して、D(当時16歳)の性器付近を撮影した。
第6(令和6年2月2日付け追起訴状記載の公訴事実第5)
Dが18歳に満たない児童であることを知りながら、前記第5記載の日時場所において、ひそかに、Dの性器付近が露出された姿態を自己の携帯電話機で動画撮影した上、その頃から同日午後3時14分頃までの間に、前記公共施設において、その動画データを編集して作成した動画データ1点を同携帯電話機の内臓記録装置に記録させて保存し、もってひそかに衣服の全部又は一部を着けない児童の姿態であって、殊更に児童の性的な部位が露出され又は強調されているものであり、かつ、性欲を興奮させ又は刺激するものを視覚により認識することができる方法により描写した電磁的記録に係る記録媒体である児童ポルノを製造した。
第7(令和5年12月6日付け起訴状記載の公訴事実第2)
E(当時9歳)が13歳未満の者であることを知りながら、令和5年10月20日午前10時47分頃から同日午前10時48分頃までの間、前記公共施設のトイレ内において、Eに対し、Eが重度の知的障害を有していることにより同意しない意思を形成することが困難な状態にあることに乗じ、そのズボン及びショーツを引き下ろし、臀部を直接左手で触るなどし、もってわいせつな行為をした。
第8(令和5年12月6日付け起訴状記載の公訴事実第3)
正当な理由がないのに、Eが13歳未満の者であることを知りながら、前記第7記載の日時場所において、Eが前記第7記載の状態にあることに乗じ、右手に持った携帯電話機を使用して、被告人がEの臀部を直接左手で触るなどのわいせつな行為がされている間におけるEの姿態を撮影した。
第9(令和6年1月12日付け訴因変更請求書による訴因変更後の令和5年12月6日付け起訴状記載の公訴事実第4)
Eが18歳に満たない児童であることを知りながら、前記第7記載の日時場所において、Eに対し、その陰部、臀部及び胸部を露出させた姿態並びに被告人がその臀部を直接左手で触る姿態をとらせ、これらを自己の携帯電話機で動画撮影した上、その頃から同日午前10時52分頃までの間に、同所において、その動画データを編集して作成した動画データ1点を同携帯電話機の内臓記録装置に記録させて保存し、もって衣服の全部又は一部を着けない児童の姿態であって、殊更に児童の性的な部位が露出され又は強調されているものであり、かつ、性欲を興奮させ又は刺激するものを視覚により認識することができる方法により描写した電磁的記録に係る記録媒体である児童ポルノを製造した。
第10(令和6年1月12日付け訴因変更請求書による訴因変更後の令和5年12月6日付け起訴状記載の公訴事実第5)
正当な理由がないのに、令和5年10月24日午前8時26分頃から同日午前8時39分頃までの間に、前記公共施設の更衣室において、ひそかに、同所出入口上部に設置した携帯電話機を使用して、F(当時17歳)が身に着けているショーツの性器付近を覆っている部分を撮影した。
(法令の適用)
罰条
判示第1、第3の各行為 いずれも、新潟県迷惑行為等防止条例14条1項、2条3項、1項2号
判示第2、第6の各行為 いずれも、児童買春、児童ポルノに係る行為等の規制及び処罰並びに児童の保護等に関する法律(以下「児童ポルノ法」という。)7条5項(2条3項3号)、7条2項
判示第4の行為
わいせつ行為の点 令和5年法律第66号による改正前の刑法176条後段
児童ポルノ製造の点 児童ポルノ法7条4項(2条3項3号)、7条2項
判示第5、第10の各行為 いずれも、性的な姿態を撮影する行為等の処罰及び押収物に記録された性的な姿態の影像に係る電磁的記録の消去等に関する法律(以下「性的姿態撮影等処罰法」という。)2条1項1号イ、附則2条
判示第7の行為 刑法176条3項、1項2号、令和5年法律第66号附則3条
判示第8の行為 性的姿態撮影等処罰法2条1項4号、2号(刑法176条1項2号)、附則2条
判示第9の行為 児童ポルノ法7条4項(2条3項3号)、7条2項
科刑上一罪の処理
判示第4 刑法54条1項前段、10条(重い強制わいせつ罪の刑で処断)
刑種の選択
判示第1~第3、第5、第6、第8~第10の各罪いずれも懲役刑
併合罪の処理 刑法45条前段、47条本文、10条(刑及び犯情の最も重い判示第7の罪の刑に加重)
宣告刑の決定 懲役3年
刑の全部の執行猶予 刑法25条1項(5年間)
訴訟費用 刑事訴訟法181条1項ただし書(不負担)
(量刑の理由)
本件は、公共施設の職員であった被告人が、女性の身体への性的な興味関心から、約5か月の間に、同施設の中で、2名の女児に対して、性的な部位を露出させるなどのわいせつ行為をしてその様子を動画撮影し、4名の女児に対して、トイレ内や着替え中の様子をひそかに動画撮影したほか、うち4名の動画に関して児童ポルノの製造が認められるという事案である。