公開されているDBでもみうけられます。
被告人が児童と性交して、性交する姿態を取らせていることが明らかです。
裁判年月日 令和 2年 3月 2日 裁判所名 東京地裁 裁判区分 判決
事件番号 令元(特わ)2383号 ・ 令元(特わ)2501号 ・ 令元(特わ)2825号 ・ 令元(特わ)3104号
事件名 児童買春,児童ポルノに係る行為等の規制及び処罰並びに児童の保護等に関する法律違反,児童福祉法違反被告事件
裁判結果 有罪 文献番号 2020WLJPCA03026004
(罪となるべき事実)
被告人は,●●●が運営する女子サッカーチーム●●●のコーチとして同チームに在籍する児童らに対してサッカーの指導等をしていたものであるが,
第1(令和元年10月4日付け追起訴状記載の公訴事実第1関係)
B(当時14歳ないし15歳)が18歳に満たない児童であることを知りながら,同児童が同チームに在籍していた当時はサッカーの指導等をし,同児童が同チームを退団した後も引き続き同児童の進路,学習等について助言をするなどしていた立場を利用して,
1 平成30年4月7日午前10時頃から同日午後0時頃までの間に,東京都●●●事務所(以下「本件事務所」という。)内において,同児童に被告人を相手に性交させ,
2 同年5月5日午後1時頃から同日午後4時頃までの間に,本件事務所内において,同児童に被告人を相手に性交させ,
もって児童に淫行をさせる行為をし,
第2(令和元年10月4日付け追起訴状記載の公訴事実第2関係)
前記第1の1及び2の日時場所において,2回にわたり,ひそかに,前記児童が被告人と性交する姿態,被告人が同児童の性器等を触る行為に係る同児童の姿態及び同児童が陰部等を露出した姿態を同所に設置した小型カメラで動画撮影し,撮影した動画データを自己が使用するパーソナルコンピュータに接続したUSBメモリ1個(令和元年東地領第4006号符号1)に記録して編集した上で保存し,もってひそかに児童を相手方とする性交に係る児童の姿態,他人が児童の性器等を触る行為に係る児童の姿態であって性欲を興奮させ又は刺激するもの及び衣服の全部又は一部を着けない児童の姿態であって,殊更に児童の性的な部位が露出され又は強調されているものであり,かつ,性欲を興奮させ又は刺激するものを視覚により認識することができる方法により電磁的記録に係る記録媒体に描写することにより児童ポルノを製造し,
某地裁判決
第1 A(3)が13歳に満たない児童であることを知りながら、同人にわいせつな行為をしようと考え、令和4年7月16日午前3時36分頃、■■■■■■■■■■■■■■■■において、就寝中の同人に対し、下着をずらした上、直接その陰茎を手指で触り、もって13歳未満の児童に対し、わいせつな行為をし
第2 前記第1記載の日時場所において、同人が18歳に満たない児童であることを知りながら、同人に対し、ひそかに、被告人が前記Aの陰茎を露出させる姿態、被告人が前記Aの陰茎を手指で触る姿態を被告人の動画撮影機能付き携帯電話機で動画として撮影し、その動画データ3点を同機の内蔵記録装置に記録させて保存し、もって他人が児童の性器等を触る行為であって性欲を興奮させ又は刺激するもの及び衣服の全部又は一部を着けない児童の姿態であって、殊更に児童の性的な部位が露出され又は強調されているものであり、かつ、性欲を興奮させ又は刺激するものを、それぞれ視覚により認識することができる方法により描写した電磁的記録に係る記録媒体である児童ポルノを製造した
何回も言いますけど、5項製造罪の法文は「5前二項に規定するもののほか、ひそかに~」となっているので、姿態とらせていると、5項ではなく4項の製造罪になります。
「前記児童が被告人と性交する姿態,被告人が同児童の性器等を触る行為に係る同児童の姿態」という点で、判示第2の公訴事実・罪となるべき事実自体から(判示第1の事実でも姿態とらせていることが明らかです)、被告人が1号・2号の姿態を取らせていることがわかりますので、5項製造罪は成立しません。理由齟齬・法令適用の誤りで破棄されます。控訴後の未決勾留日数(数ヶ月)が刑期に算入されると思われます。
ひそかに・姿態とらせて製造した場合、ひそかに製造罪で起訴する検察官の訴追裁量があるのかというと、証拠上、姿態とらせてが弱い場合はひそかに製造罪を選択する裁量もあるでしょうが、公訴事実に堂々と「前記児童が被告人と性交する姿態,被告人が同児童の性器等を触る行為に係る同児童の姿態」と姿態とらせた事実を記載して、姿態を取らせたことを立証してしまうと、「5前二項に規定するもの」という構成要件に該当してしまうので、5項製造罪は適用できません。
5項は盗撮行為についての特別規定だという主張も考えられますが、「法7条5項は「前2項に規定するもののほか」と規定されているから,同条4項の罪が成立する場合には同条5項の罪は成立しないことが,法文上明らかである。」として大阪高裁ではねられました。
大阪高裁平成28年10月26日
第10,第12及び第13の各2の事実における法令適用の誤りの主張について。
論旨は,第10,第12及び第13の各2の製造行為は,いずれも盗撮によるものであるから,法7条4項の製造罪ではなく,同条5項の製造罪が成立するのに,同条4項を適用した原判決には,法令適用の誤りがある,というものである。
しかしながら,法7条5項は「前2項に規定するもののほか」と規定されているから,同条4項の罪が成立する場合には同条5項の罪は成立しないことが,法文上明らかである。
所論は,法7条5項に「前2項に規定するもののほか」と規定されたのは立法のミスであってこの文言に特段の意味はないとした上で,法7条5項の罪と他の児童ポルノ製造の罪との関係は前者が後者の特別法の関係だと主張する。
しかし,法7条5項の罪が追加された法改正の趣旨を考慮しても所論のように「前2項に規定するもののほか」に意味がないと解する必要はなく,法7条5項の罪が特別法の関係にあるとの所論は,独自の見解であって,採用できない。
いずれも法7条4項の罪が成立しているとした原判決の法令適用に誤りはない。
平成28年10月31日
大阪高等裁判所第2刑事部
裁判長裁判官後藤眞理子
裁判官 杉田友宏
大阪高裁h28の原審では、裁判官が罪名間違いに気付いて訴因変更が行われています。裁判所が気付かなければならない。
当初訴因
第2 前記日時場所において,前記児童が18歳に満たない児童であることを知りながら,ひそかに,被告人が同児童の性器等を露出させた上,それを触る行為をビデオカメラで動画撮影し,その電磁的記録を同カメラ内蔵のハードディスクに記録して保存し,もってひそかに他人が児童の性器等を触る行為に係る児童の姿態であって性欲を興奮させ又は刺激するもの及び衣服の一部を着けない児童の姿態であって,殊更に児童の性的な部位が露出され又は強調されているものであり,かつ,性欲を興奮させ又は刺激するものを視覚により認識することができる方法により電磁的記録に係る記録媒体に描写することにより,児童ポルノを製造し
↓
訴因変更請求
公訴事実第2中,「ひそかに,被告人が同児童の性器等を露出させた上,それを触る行為を」とあるのを,いずれも「同児童の性器等を露出させる姿態及び被告人が同性器等を触る行為に係る姿態をとらせ,これらを」に改め,「ひそかに他人が児童の性器等を触る行為に係る児童の姿態であって性欲を興奮させ又は刺激するもの及び」とあるのを,いずれも削除し,「性欲を興奮させ又は刺激するもの」の後に, いずれも「及び他人が児童の性器等を触る行為に係る児童の姿態であっで性欲を興奮させ又は刺激するもの」を加える。
神戸地裁r01.6.28は、判例dbに姿態をとらせて製造罪の裁判例として紹介されていますが、当初訴因は性交・性交類似行為のひそかに製造罪で、論告求刑の後の弁論で「姿態をとらせているから、ひそかに製造罪は成立しない。無罪」と弁護人に指摘されるまで裁判所も気付きませんでした。後日訴因変更がありました。
被告人は
A(当時15歳)が18歳に満たない児童であることを知りながら
第1 令和4年7月16日午後5時28分頃から同日午後6時34分頃までの間大阪市北区西天満ホテル201号室において,同児童に対し,現金1万円の対償を供与する約束をして,同児童に自己の陰茎を口淫させるなどの性交類似行為をし,もって児童買春をし
第2 前記日時,場所において,ひそかに,前記児童が被告人と性交する姿態及び被告人の陰茎を口淫する姿態等をスマートフォンで撮影し,その動画データを同スマートフォン内の電磁的記録媒体に記録して保存し,もって児童を相手方とする性交又は性交類似行為に係る児童の姿態を視覚により認識することができる方法により電磁的記録に係る記録媒体に描写した児童ポルノを製造した
わいせつ行為はしているが、撮影目的で姿態を取らせたわけではないという屁理屈も封じられています。カメラの前で性交等すれば、性交等の姿態を取らせたという評価になります。
札幌高裁H19.3.8(最決H21.10.21の控訴審判決)
児童ポルノ法7条3項の「姿態をとらせ」とは,行為者の言動等により,当該児童が当該姿態をとるに至ったことをいい,強制を要しないと解されるところ,関係証拠によれば,被告人は,児童と性交等を行っているが,これらの行為は通常当事者双方の言動により行為に至るものであって,本件においても,被告人が警察官に対し,「(ビデオに撮影した)これらの場面はセックスの一連の行為の一場面であります」と述べているように,被告人は,自ら積極的に児童に性交等の行為を行い,あるいは,児童の性交等の行為に応じる言動をしているのであって,この被告人の言動等により児童は性交等の姿態をとるに至ったと認められる。被告人が児童に「姿態をとらせ」たことは明らかである。
なお,所論は,姿態をとらせる行為は,児童ポルノ製造に向けられた行為であるから,その時点において児童ポルノ製造の目的を要するが,被告人には,その時点において児童ポルノ製造の目的がない,という。しかし,被告人は,児童に性交等の姿態をとらせ,それを録画しているのであるから,正に,児童ポルノ製造行為に向けて姿態をとらせたというべきである。所論は採用できない。
七条(児童ポルノ所持、提供等)
2児童ポルノを提供した者は、三年以下の懲役又は三百万円以下の罰金に処する。電気通信回線を通じて第二条第三項各号のいずれかに掲げる児童の姿態を視覚により認識することができる方法により描写した情報を記録した電磁的記録その他の記録を提供した者も、同様とする。
3前項に掲げる行為の目的で、児童ポルノを製造し、所持し、運搬し、本邦に輸入し、又は本邦から輸出した者も、同項と同様とする。同項に掲げる行為の目的で、同項の電磁的記録を保管した者も、同様とする。
4前項に規定するもののほか、児童に第二条第三項各号のいずれかに掲げる姿態をとらせ、これを写真、電磁的記録に係る記録媒体その他の物に描写することにより、当該児童に係る児童ポルノを製造した者も、第二項と同様とする。
5前二項に規定するもののほか、ひそかに第二条第三項各号のいずれかに掲げる児童の姿態を写真、電磁的記録に係る記録媒体その他の物に描写することにより、当該児童に係る児童ポルノを製造した者も、第二項と同様とする。
検察官の訴追裁量・訴因選択権を理由に許容しようとしても、
「ひそかに、被告人がA(3)の陰茎を露出させる姿態、被告人が前記Aの陰茎を手指で触る姿態を」というのは、「陰茎を露出させる姿態、被告人が前記Aの陰茎を手指で触る姿態をとらせた」という事実も記載されていて、立証もされているので、4項製造罪が成立することも明らかです。裁判所は、「5前二項に規定するもののほか、」という法文がある以上、5項は適用できず、5項製造罪は不成立として、訴因変更させて4項製造罪を認めるしかないでしょう。検察官の訴追裁量を重視するなら、5項製造罪で無罪にするしかないと思われます。
大阪高裁平成28年10月26日
法7条5項は「前2項に規定するもののほか」と規定されているから,同条4項の罪が成立する場合には同条5項の罪は成立しないことが,法文上明らかである。