児童ポルノ・児童買春・児童福祉法・監護者性交・不同意性交・不同意わいせつ・青少年条例・不正アクセス禁止法・わいせつ電磁的記録・性的姿態撮影罪弁護人 奥村徹弁護士の見解(弁護士直通050-5861-8888 sodanokumurabengoshi@gmail.com)

性犯罪・福祉犯(監護者わいせつ罪・強制わいせつ罪・児童ポルノ・児童買春・青少年条例・児童福祉法)の被疑者(犯人側)の弁護を担当しています。専門家向けの情報を発信しています。

ハメ撮り(姿態をとらせて製造行為)を、ひそかに製造罪で起訴した事案

 性犯罪・福祉犯罪の機会の盗撮行為について、ひそかに製造罪(7条5項)で起訴される例があります。

誤ったまま判決となったもの
 札幌地裁H29.2.23実刑
 新潟地裁H28.11.4実刑
 神戸地裁尼崎支部H28.9.7
 奈良地裁葛城支部H29.3.16
 大分簡裁H28.4.8略式命令(罰金)
 東京地裁r2.3.2実刑
 名古屋地裁R1.8.21

起訴後に修正されたもの
 神戸地裁姫路支部H28.5.20
 神戸地裁R01.6.28

誤った事例の公訴事実
公 訴 事 実
 被告人は、A子(当時15歳)が18歳に満たない児童であることを知りながら
第1 令和元年6月27日午後3時44分頃から同日午後5時22分頃までの間、HOTEL天満201号室において、同児童に対し、対償として現金1万3000円を供与し、同児童に自己の陰茎を口淫させるなどの性交類似行為をし、もって児童買春をし
第2 前記日時頃、前記記載の場所において、ひそかに同児童が被告人の陰茎を口淫する姿態を、被告人が使用する携帯電話機で撮影し、その画像データを同携帯電話機の内蔵記録装置に記録させて保存し、もってひそかに児童を相手方とする性交類似行為に係る児童の姿態を視覚により認識することができる方法により描写した児童ポルノを製造し
たものである。
罪名及び罰条
児童買春、児童ポルノに係る行為等の規制及び処罰並びに児童の保護等に関する法律違反
第1 同法律第4条、第2条第2項第1号
第2    同法律第7条第5項、第2条第3項第1号

 法文上も「前二項に規定するもののほか、」となっていて4項製造罪が成立する場合には5項は適用できない規定になっています。

第七条(児童ポルノ所持、提供等)
3前項に掲げる行為の目的で、児童ポルノを製造し、所持し、運搬し、本邦に輸入し、又は本邦から輸出した者も、同項と同様とする。同項に掲げる行為の目的で、同項の電磁的記録を保管した者も、同様とする。
4前項に規定するもののほか、児童に第二条第三項各号のいずれかに掲げる姿態をとらせ、これを写真、電磁的記録に係る記録媒体その他の物に描写することにより、当該児童に係る児童ポルノを製造した者も、第二項と同様とする。
5前二項に規定するもののほか、ひそかに第二条第三項各号のいずれかに掲げる児童の姿態を写真、電磁的記録に係る記録媒体その他の物に描写することにより、当該児童に係る児童ポルノを製造した者も、第二項と同様とする。

 判例もあって、姿態をとらせていることになるので、姿態とらせて製造罪(7条4項)だけが成立して、ひそかに製造罪(7条5項)は成立しません。いずれも弁護人は奥村です。

札幌高裁H19.3.8(最決H21.10.21の控訴審判決)
児童ポルノ法7条3項の「姿態をとらせ」とは,行為者の言動等により,当該児童が当該姿態をとるに至ったことをいい,強制を要しないと解されるところ,関係証拠によれば,被告人は,児童と性交等を行っているが,これらの行為は通常当事者双方の言動により行為に至るものであって,本件においても,被告人が警察官に対し,「(ビデオに撮影した)これらの場面はセックスの一連の行為の一場面であります」と述べているように,被告人は,自ら積極的に児童に性交等の行為を行い,あるいは,児童の性交等の行為に応じる言動をしているのであって,この被告人の言動等により児童は性交等の姿態をとるに至ったと認められる。被告人が児童に「姿態をとらせ」たことは明らかである。
なお,所論は,姿態をとらせる行為は,児童ポルノ製造に向けられた行為であるから,その時点において児童ポルノ製造の目的を要するが,被告人には,その時点において児童ポルノ製造の目的がない,という。しかし,被告人は,児童に性交等の姿態をとらせ,それを録画しているのであるから,正に,児童ポルノ製造行為に向けて姿態をとらせたというべきである。所論は採用できない。

阪高裁H28.10.26
強制わいせつ,児童買春,児童ポルノに係る行為等の規制及び処罰並びに児童の保護等に関する法律違反被告事件
判決
原判決神戸地方裁判所姫路支部平成28年5月20日宣告
第10,第12及び第13の各2の事実における法令適用の誤りの主張について。
論旨は,第10,第12及び第13の各2の製造行為は,いずれも盗撮によるものであるから,法7条4項の製造罪ではなく,同条5項の製造罪が成立するのに,同条4項を適用した原判決には,法令適用の誤りがある,というものである。
しかしながら,法7条5項は「前2項に規定するもののほか」と規定されているから,同条4項の罪が成立する場合には同条5項の罪は成立しないことが,法文上明らかである。
所論は,法7条5項に「前2項に規定するもののほか」と規定されたのは立法のミスであってこの文言に特段の意味はないとした上で,法7条5項の罪と他の児童ポルノ製造の罪との関係は前者が後者の特別法の関係だと主張する。
しかし,法7条5項の罪が追加された法改正の趣旨を考慮しても所論のように「前2項に規定するもののほか」に意味がないと解する必要はなく,法7条5項の罪が特別法の関係にあるとの所論は,独自の見解であって,採用できない。
いずれも法7条4項の罪が成立しているとした原判決の法令適用に誤りはない。

 見つけたら奥村に連絡して下さい。