こういう規定なので、数回の監護者性交罪の処断刑期の上限は30年になります。
刑法第一七九条(監護者性交等)
2十八歳未満の者に対し、その者を現に監護する者であることによる影響力があることに乗じて性交等をした者は、第百七十七条の例による。
第一七七条(強制性交等)
十三歳以上の者に対し、暴行又は脅迫を用いて性交、肛こう門性交又は口腔くう性交(以下「性交等」という。)をした者は、強制性交等の罪とし、五年以上の有期懲役に処する。十三歳未満の者に対し、性交等をした者も、同様とする。
第一四条(有期の懲役及び禁錮の加減の限度)
1 死刑又は無期の懲役若しくは禁錮を減軽して有期の懲役又は禁錮とする場合においては、その長期を三十年とする
監護者性交2件でも上限は30年、100件でも上限は30年
実際の科刑状況は件数が多くなると、重くなって、
裁判例
監護者性交等1 強姦2 強制わいせつ1 児童ポルノ製造5件 懲役13年
監護者性交4 監護者わいせつ1 児童ポルノ製造 懲役11年
というレベル。
強姦罪(177条後段 暴行脅迫なし)46件で懲役30年の裁判例があるから
昔の最高裁web
事件名 強制わいせつ,強姦未遂,強姦,児童福祉法違反
裁判年月日 平成21年09月14日
裁判所名・部 広島地方裁判所刑事第2部小学校教師であった被告人が,約4年8か月の間に,その勤務先の女子児童であった計10名の13歳未満の少女に対し,多数回にわたりわいせつ行為等を行ったという,強姦46件,強姦未遂11件,強制わいせつ25件,児童福祉法違反(児童に淫行させる行為)13件からなる事案において,併合罪加重後の最高刑である懲役30年を言い渡した事例
監護者性交罪59年で18年(求刑20年)というのは、そんなに重くない。
新聞記事の「量刑相場」は、宣告刑のグラフだけを見ていて、件数を考慮していない点で、失当。5~6年の実刑事案は監護者性交罪既遂1件が多い。
「日本初」「世論が影響した」とか言って耳目を集めたいところだが、判決にはそういう点は見受けられない。
https://www.huffingtonpost.jp/entry/story_jp_61ef6bc0e4b07c5f39bbc14e?d_id=3095832&fbclid=IwAR3hWOhxcRSaovZDkPuT4ZDW0ZtURL1x6mt10uZDGWFh1sxv6loyFwQsaMY
15歳の養子に性虐待、懲役20年を求刑。検察はフラワーデモに言及「刑事司法に厳しい目」
論告や起訴状によると、養父である被告は2020年12月〜21年5月の5カ月間、監護者としての影響力があることに乗じて、当時15歳だった養子と計59回にわたって性交または口腔性交をしたなどとしている。さらに、養子の姿態を動画で撮影して94点の児童ポルノを製造したとしている。
「懲役7年以下」が最多
加害者が親などの監護者の場合、被害者は精神的にも経済的にも監護者に依存しているため、性交を求められた場合に暴行や脅迫がなくても意思に反して応じざるを得なくなる。こうした監護者の影響力を踏まえ、2017年の刑法改正で「監護者性交等罪」が新設された。「18歳未満の者に対し、その者を現に監護する者であることによる影響力があることに乗じて性交等をした者」は、強制性交等罪と同じく「5年以上20年以下の懲役に処する」と定められている。
現在の刑法では、被害者が13歳以上の場合に強制性交等罪が成立するには「暴行・脅迫」の要件を満たさなければいけない。一方、加害者が監護者の場合、暴行や脅迫の有無は問われない。
監護者による性暴力事件で、過去にはどのような量刑が宣告されてきたのか。
「性犯罪の量刑に関する資料」(法務省)によると、刑法改正後の2017年から2019年までで、全国の地裁において監護者性交等罪で91人に対し判決が言い渡された。このうち「懲役7年以下」が最も多く56人。次いで「5年以下」(23人)、「10年以下」(9人)の順で多かった
https://www.huffingtonpost.jp/entry/story_jp_61f22b77e4b02de5f5145c86
15歳に性虐待、養父に懲役18年。「際立った悪質性」津地裁で判決
検察側は「(犯行の)常習性が顕著」などとして、懲役20年を求刑していた。
量刑相場より重く
監護者性交等罪(5年以上20年以下の懲役)は2017年の刑法改正で新設された。現在の刑法では、被害者が13歳以上の場合に強制性交等罪が成立するには「暴行・脅迫」の要件を満たさなければならない。一方、加害者が親などの監護者の場合、暴行や脅迫の有無は問われない。被害者は精神的にも経済的にも監護者に依存しているため、性交を求められたときに暴行や脅迫がなくても意思に反して応じざるを得ないことが背景にある。最高裁によると、刑法改正以降に全国の裁判所の判決において監護者性交等罪で処断された事案のうち、宣告された懲役刑で最も長いものは懲役18年(2021年11月末時点、速報値)。
刑法改正後の2017年から2019年までで、全国の地裁において監護者性交等罪で91人に対し判決が言い渡された。このうち「懲役7年以下」が最も多く56人。次いで「5年以下」(23人)、「10年以下」(9人)の順で多かった(法務省『性犯罪の量刑に関する資料』より)。
今回の事件で注目されていたのは、多数回に及ぶ性交や口腔性交、児童ポルノの製造といった犯行が起訴された点だ。
懲役18年を言い渡した津地裁の判決は、監護者性交等罪事件をめぐる従来の量刑の相場と比べても重く、他の罪との併合でも過去最長と並ぶものとなった。
「刑事司法に厳しい目」
性犯罪事件の刑事裁判をめぐっては、2019年3月に無罪判決が4件相次いだことをきっかけに、性暴力に抗議する「フラワーデモ」が全国に広がった。検察側は論告で、性被害者や支援者らによるデモについて言及。「近時、性犯罪の被害に遭われた方や支援団体等が声を上げ、熱心に活動に取り組み、性犯罪・性暴力の根絶を求める社会的機運が高まってきている」「刑事司法に対し、一般社会から厳しい目が向けられていることを刑事司法に携わる法曹一人ひとりがしっかりと心にとどめなければならない」などと強調し、懲役20年を求刑していた。
津地方裁判所令和4年1月28日
監護者性交等,児童買春、児童ポルノに係る行為等の規制及び処罰並びに児童の保護等に関する法律違反被告事件
主 文
被告人を懲役18年に処する。
未決勾留日数中140日をその刑に算入する。
理 由(罪となるべき事実)
被告人は,
第1 養女である別紙の2記載の被害者(当時15歳。以下,単に「被害者」という。)と同居してその寝食の世話をし,その指導・監督をするなどして,被害者を現に監護していた者であるが,被害者が18歳未満の者であることを知りながら,被害者と性交等をしようと考え,
1 別表1記載のとおり,令和2年12月29日から令和3年2月13日までの間,10回にわたり,別紙の3記載の被告人方において,被害者を現に監護する者であることによる影響力があることに乗じて被害者と口腔性交をし(令和3年8月11日付け起訴状記載の公訴事実第1),
2 別表2記載のとおり,令和3年2月14日から同月28日までの間,10回にわたり,前記被告人方において,被害者を現に監護する者であることによる影響力があることに乗じて被害者と口腔性交をし(令和3年8月25日付け起訴状記載の公訴事実第1),
3 別表3記載のとおり,令和3年3月3日から同月24日までの間,10回にわたり,前記被告人方において,被害者を現に監護する者であることによる影響力があることに乗じて被害者と口腔性交をし(令和3年9月29日付け起訴状記載の公訴事実第1),
4 別表4記載のとおり,令和3年4月3日から同月13日までの間,10回にわたり,前記被告人方において,被害者を現に監護する者であることによる影響力があることに乗じて被害者と口腔性交をし(令和3年10月15日付け起訴状記載の公訴事実第1),
5 別表5記載のとおり,令和3年4月14日から同年5月24日までの間,17回にわたり,前記被告人方において,被害者を現に監護する者であることによる影響力があることに乗じて被害者と口腔性交若しくは性交又はその両方をし(令和3年10月29日付け起訴状記載の公訴事実第1),
6 令和3年5月9日,前記被告人方において,被害者を現に監護する者であることによる影響力があることに乗じて被害者と口腔性交及び性交をし(令和3年7月8日付け起訴状記載の公訴事実),
7 令和3年5月26日,前記被告人方において,被害者を現に監護する者であることによる影響力があることに乗じて被害者と口腔性交及び性交をし(令和3年6月28日付け起訴状記載の公訴事実),
第2 被害者が18歳に満たない者であることを知りながら,別表6~10各記載のとおり,令和2年12月29日から令和3年5月26日までの間,94回にわたり,前記被告人方において,被害者に,同各表「児童にとらせた姿態」欄記載の姿態をそれぞれとらせ,これらを被告人が使用する動画撮影機能付きタブレット又はスマートフォンで撮影し,その動画データ合計94点を同タブレット又は同スマートフォン内蔵の記録装置に記録させて保存し,もって児童を相手方とする性交又は性交類似行為に係る児童の姿態,他人が児童の性器等を触る行為に係る児童の姿態であって性欲を興奮させ又は刺激するもの及び衣服の全部又は一部を着けない児童の姿態であって,殊更に児童の性的な部位が露出され又は強調されているものであり,かつ,性欲を興奮させ又は刺激するものを視覚により認識することができる方法により電磁的記録に係る記録媒体に描写した児童ポルノを製造した(別表6につき令和3年8月11日付け起訴状記載の公訴事実第2,別表7につき同月25日付け起訴状記載の公訴事実第2,別表8につき同年9月29日付け起訴状記載の公訴事実第2,別表9につき同年10月15日付け起訴状記載の公訴事実第2,別表10につき同月29日付け起訴状記載の公訴事実第2)。
(証拠の標目)
(法令の適用)
罰条
判示第1の1~7の各行為 いずれも刑法179条2項,177条
(判示第1の1~5については各別表の番号ごとに)
判示第2の行為 包括して児童買春,児童ポルノに係る行為等の規制及び処罰並びに児童の保護等に関する法律7条4項(2条3項1号~3号),2項
刑種の選択 判示第2の罪につき懲役刑を選択
併合罪の処理 刑法45条前段,47条本文,10条(刑及び犯情の最も重い判示第1の7の罪に法定の加重)
未決勾留日数の算入 刑法21条
訴訟費用の不負担 刑事訴訟法181条1項ただし書
(量刑の理由)
1 本件は,見るべき前科のない被告人が,養女であり当時15歳の被害者と59回にわたり性交や口腔性交をする(判示第1)とともに,その口腔性交などの場面を動画撮影して合計94点の児童ポルノを製造した(判示第2)という事案である。
2 まず,本件各犯行の犯罪行為そのものに関する事情(犯情)に着目して,前科のない被告人による監護者性交等の単独犯(性交等の点は既遂。処断罪名と異なる主要な罪はなし。)の事件類型(以下「本件類型」という。)の量刑傾向を踏まえて検討する。
(1)本件の最大の特徴は,令和2年12月から令和3年5月までのわずか5か月ほどの間に合計59件もの性交等を繰り返しており,同種事案の中で件数が比類ない程に多く,常習性が顕著であることである。
〔1〕この種の家庭内の性的虐待事案の場合,被害者が家族を含む他者に被害を訴えることが困難で,被害が長期化し,エスカレートしがちであることを踏まえて,一定の常習性があることを織り込んで量刑判断がされることが多いこと(なお,本件の被告人も,被害者が小学5年生(平成28年)の頃から家族の目を盗んで被害者の胸を揉むようになり,遅くとも中学1年生(平成30年)の頃から口腔性交を繰り返すようになり,遅くとも高校1年生(令和3年春)の頃から膣性交を繰り返す中で,本件各犯行に及んだものと認められる。)や,〔2〕本件が複数の被害者がいる事案ではないことを考慮しても,本件については,本件類型の通常の量刑分布の枠に収まりきらない際立った悪質性があると指摘せざるを得ない。
(2)
(3)以上のとおり,本件は,本件類型の中で,その件数が比類ない程に多く,常習性が顕著である点において,通常の量刑分布の枠に収まりきらない際立った悪質性が認められるところ(上記(1)),被害者が複数いる事案ではないから監護者性交等罪の法定刑の上限(懲役20年)を超えるのは相当でないが,犯行態様において,被害者に殊更な精神的苦痛を与える手段を選択している点で若干の加重事由が存在することは否定できないから(上記(2)),上記法定刑の上限付近に位置付けられるべき極めて重い事案であるといわなければならない。ただし,暴力で被害者を支配していた事案に見られるような凶悪性はなく,妊娠・中絶という最悪の結果が生じた事案と同列に扱うわけにはいかないから,上記法定刑の上限で処断するべき最も重い事案とまではいえない。
3 以上を前提に,犯罪行為以外の事情(一般情状)を含めて更に検討すると,〔1〕被告人が罪を認め,反省の弁を述べていること,〔2〕被告人の妻が今後の監督を約束していること,〔3〕被告人と被害者との間で被告人が社会復帰後合計240万円を支払う内容の合意書が交わされていることなどが認められるが,これらは純粋な一般情状であり,具体的に刑を左右するほどの事情とは評価しなかった。
4 以上の次第で,当裁判所は,主文の刑が相当であると判断した。
(求刑 懲役20年)
令和4年2月1日
津地方裁判所刑事部
裁判長裁判官 柴田誠 裁判官 檀上信介 裁判官 山本健太別表1
番号 犯行年月日
1 令和2年12月29日
2 令和2年12月31日
3 令和3年1月3日
4 令和3年1月4日
5 令和3年1月15日
6 令和3年1月30日
7 令和3年2月1日
8 令和3年2月2日
9 令和3年2月3日
10 令和3年2月13日
別表2
番号 犯行年月日
1 令和3年2月14日
2 令和3年2月15日
3 令和3年2月16日
4 令和3年2月18日
5 令和3年2月19日
6 令和3年2月20日
7 令和3年2月21日
8 令和3年2月23日
9 令和3年2月25日
10 令和3年2月28日
別表3
番号 犯行年月日
1 令和3年3月3日
2 令和3年3月5日
3 令和3年3月8日
4 令和3年3月9日
5 令和3年3月10日
6 令和3年3月11日
7 令和3年3月18日
8 令和3年3月19日
9 令和3年3月22日
10 令和3年3月24日
別表4
番号 犯行年月日
1 令和3年4月3日
2 令和3年4月4日
3 令和3年4月5日
4 令和3年4月6日
5 令和3年4月8日
6 令和3年4月9日
7 令和3年4月10日
8 令和3年4月11日
9 令和3年4月12日
10 令和3年4月13日
別表5
番号 犯行年月日 口腔性交・性交の別
1 令和3年4月14日 口腔性交
2 令和3年4月18日 口腔性交
3 令和3年4月20日 口腔性交
4 令和3年4月21日 口腔性交
5 令和3年4月22日 口腔性交
6 令和3年4月25日 口腔性交
7 令和3年4月26日 口腔性交
8 令和3年4月28日 口腔性交
9 令和3年4月29日 口腔性交
10 令和3年4月30日 口腔性交
11 令和3年5月2日 口腔性交
12 令和3年5月13日 両方
13 令和3年5月19日 両方
14 令和3年5月20日 両方
15 令和3年5月21日 両方
16 令和3年5月22日 口腔性交
17 令和3年5月24日 性交
別表6
別表7
別表8
別表9
別表10