児童ポルノ・児童買春・児童福祉法・監護者わいせつ・不同意わいせつ・強制わいせつ・青少年条例・不正アクセス禁止法・わいせつ電磁的記録弁護人 奥村徹弁護士の見解(弁護士直通050-5861-8888 sodanokumurabengoshi@gmail.com)

性犯罪・福祉犯(監護者わいせつ罪・強制わいせつ罪・児童ポルノ・児童買春・青少年条例・児童福祉法)の被疑者(犯人側)の弁護を担当しています。専門家向けの情報を発信しています。

単純所持罪容疑で捜索差押を受けて、単純所持罪+準強制わいせつ罪・準強制性交で起訴された事例

単純所持罪容疑で捜索差押を受けて、単純所持罪+準強制わいせつ罪・準強制性交で起訴された事例
というより、R2.9ころのわいせつ事件が疑われたので、r4.6.1に単純所持罪容疑で捜索したんだろうなあ。画像がないと立証難しい。

準強制わいせつ、準強制性交等、児童買春、児童ポルノに係る行為等の規制及び処罰並びに児童の保護等に関する法律違反被告事件
津地方裁判所
令和4年12月15日刑事部判決
       理   由
【罪となるべき事実】
 被告人は、
第1 障害者福祉施設に勤務していたものであるが、同施設の利用者であるA及びB(各氏名は別紙記載のとおり。以下同じ。)が知的障害のため心神喪失の状態であることに乗じて
1 Aにわいせつな行為をしようと考え、令和2年9月10日頃、京都府内又はその周辺において、A(当時29歳)に対し、その下半身の着衣を脱がせた上、Aの陰部を手で触るなどし、もってAの心神喪失状態に乗じて、わいせつな行為をし
2 Bと口腔性交をしようと考え、別表記載のとおり、同年9月19日頃から令和3年6月5日頃までの間、5回にわたり、同府内のグループホーム(名称及び場所は別紙記載のとおり。以下同じ。)ほか2か所において、B(当時17歳ないし18歳)に自己の陰茎を口淫させ、もってBの心神喪失状態に乗じて口腔性交をし
第2 自己の性的好奇心を満たす目的で、令和4年6月1日、京都府京田辺市α××番地の×被告人方において、衣服の全部又は一部を着けない児童の姿態であって、殊更に児童の性的な部位が露出され又は強調されているものであり、かつ、性欲を興奮させ又は刺激するものを視覚により認識することができる方法により描写した電磁的記録である動画データ1点を記録した児童ポルノである携帯電話機1台及びハードディスク2台を所持した。
【法令の適用】
罰条
判示第1の1の行為 刑法178条1項、176条前段
判示第1の2の別表1ないし5の各行為
いずれも刑法178条2項、177条前段
判示第2の行為 児童買春、児童ポルノに係る行為等の規制及び処罰並びに児童の保護等に関する法律7条1項前段、2条3項3号
刑種の選択 判示第2の罪につき、懲役刑を選択
併合罪の処理 刑法45条前段、47条本文、10条(最も重い判示第1の2の準強制性交等罪の刑(判示第1の2の別表記載の各犯行に犯情の軽重の差は認められないので特定しない)に法定の加重)
未決勾留日数算入 刑法21条
訴訟費用の処理 刑事訴訟法181条1項ただし書(負担させない)
 なお、弁護人は、準強制わいせつ及び準強制性交等の各犯行について、被告人に自首が成立すると主張している。
 しかしながら、被告人の取調べを担当した捜査官は、「児童ポルノ所持の嫌疑で被告人方の捜索差押えを行った際、被告人の携帯電話機から女性の裸の写真を発見し、被告人に確認したところ、被告人はその女性はAであると述べた。任意同行の上、児童ポルノ所持の嫌疑で取調べ中、別の捜査官が同携帯電話機に口腔性交の画像等があることを発見したため、被告人に確認したところ、被告人は、Bに口腔性交をさせたことは認めたが、Bの同意があると思っていたと弁解した。Bに対する準強制性交等の嫌疑で被告人を逮捕した後、携帯電話機のデータからAに対する判示第1の1のわいせつ行為の画像を発見し、被告人に確認したところ、被告人は覚えていないなどと述べた。」旨証言しているところ、同証言内容は、本件発覚の経緯として自然で、その内容に不合理な点は見当たらないし、被告人の捜査段階における供述経過とも整合しており、十分信用することができる。 
 他方、被告人は、警察署に任意同行された後、児童ポルノ所持の嫌疑で取調べを受けている途中で、Aの裸の画像を撮ったり、Bに口腔性交させてそれを撮影したりしたことを警察官に申告したなどと供述している。しかし、被告人の供述する申告経緯はいささか唐突の感を免れない上、逮捕当初、Bに対する準強制性交等の罪責を否認する趣旨の供述をしていたこと(乙16)も踏まえると、Bに対する口腔性交を自ら申告したという被告人供述は信用できない。
 そして、信用できる上記捜査官供述によれば、上記いずれの犯行についても、捜査機関に発覚する前に犯罪事実を自ら申告したとは認められず、弁護人の上記主張は採用できない。
【量刑の理由】
 本件は、障害者福祉施設に勤務していた被告人が、同施設の女性利用者2名に対し、同利用者らが知的障害のため心神喪失状態であることに乗じて、利用者1名に対しては合計5回にわたり口腔性交をし、もう1名の利用者に対しては、わいせつな行為をしたという準強制性交等及び準強制わいせつと、児童ポルノ所持からなる事案である。
令和4年12月15日
津地方裁判所刑事部
裁判長裁判官 畑山靖 裁判官 大嶋真理子 裁判官 中野彩華