児童ポルノ単純所持罪の罪となるべき事実における児童ポルノの特定方法(大阪高裁r040120)
「衣服の全部又は一部を着けない児童の姿態であって,ことさらに児童の性的な部位が露出され又は強調されているものであり,かつ,性欲を興奮させ又は刺激するものを視覚により認識することができる方法により描写した児童ポルノである画像データ1点」では、法文そのままですよね。法文がいくら明確化されても、それは一般的抽象的法規範なわけで、具体的事実ではない。
この法文に該当するような、乳房露出とか陰部露出とかの具体的事実の記載が必要です。
児童ポルノの特定については
名古屋高裁 理由不備
仙台高裁 理由不備
高松高裁 量刑不当で破棄して訂正
名古屋高裁金沢支部 理由不備
大阪高裁 理由不備じゃない
という判例状況です。
児童ポルノ法2条
3この法律において「児童ポルノ」とは、写真、電磁的記録(電子的方式、磁気的方式その他人の知覚によっては認識することができない方式で作られる記録であって、電子計算機による情報処理の用に供されるものをいう。以下同じ。)に係る記録媒体その他の物であって、次の各号のいずれかに掲げる児童の姿態を視覚により認識することができる方法により描写したものをいう。
三 衣服の全部又は一部を着けない児童の姿態であって、殊更に児童の性的な部位(性器等若しくはその周辺部、臀でん部又は胸部をいう。)が露出され又は強調されているものであり、かつ、性欲を興奮させ又は刺激するもの
(2) 所論は,原判決が罪となるべき事実第3として,概要,「被告人は,自己の性的好奇心を満たす目的で,令和年1月15日,市内の被告人方において,衣服の全部又は一部を着けない児童の姿態であって,ことさらに児童の性的な部位が露出され又は強調されているものであり,かつ,性欲を興奮させ又は刺激するものを視覚により認識することができる方法により描写した児童ポルノである画像データ1点を記録した携帯電話機1台を所持した」と認定,説示したのに対し,
①所持の客体である児童ポルノについて,法文(児童ポルノ法2条3項3号)をそのまま引用しており,法文にいう「児童の姿態」に該当する具体的事実の記載がなく,同法2条3項3号の児童ポルノ(以下「3号ポルノ」という。
)の所持罪の構成要件に該当するか否かを判定することができないし,証拠により児童の氏名や年齢が分かるのに,その記載もないから,理由不備である,
と主張する。
しかし,①については,児童ポルノ法の平成26年改正により,法文上,画像の客観的な内容から3号ポルノの該当性判断を行うとの趣旨がより明確化されていることも考慮すると,自己の性的好奇心を満たす目的で,児童ポルノ(本件では3号ポルノ)を所持した罪(同法7条1項前段。以下「単純所持罪」という。)の構成要件を満たす事実の記載として,原判決が認定,説示した程度であっても,同罪の構成要件に該当するものと判定することができるし,原判決全体を通じてみれば,原判示第3の「児童」が原判決別紙記載のBを指すことは明らかであって,実質的に児童に関する事実が記載されているといえるから,理由不備であるとの指摘は当たらない。
原判決に理由不備ないし理由齟齬の違法はなく,論旨は理由がない。