児童ポルノ・児童買春・児童福祉法・監護者性交・強制わいせつ・青少年条例・不正アクセス禁止法・わいせつ電磁的記録記録被告事件弁護人 奥村徹弁護士の見解(弁護士直通050-5861-8888 hp3@okumura-tanaka-law.com)

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提供目的で姿態をとらせて児童ポルノを製造したことが証拠上明らかであっても、姿態をとらせて製造罪で有罪にできる(大阪高裁r2.10.2)

 検事の論稿によると、7条4項(h26改正前の7条3項)は「前項に規定するもののほか、」とされているので、提供目的がある場合を含まないと解釈されていますが、大阪高裁r2.10.2は「児童ポルノ法7条4項の「前項に規定するもののほか」との規定ぶりからして同項は同条3項の補充規定であり,両規定に係る罪はいわゆる法条競合の関係に立つと解されるが,これは,ある事実が同条3項に該当する場合に実体法上およそ同条4項の罪が成立し得ないということまでをも意味するものではない」と判示しています。

 奥村は、姿態とらせて盗撮した場合について「ひそかに製造罪」の成立を主張したことがありますが、「4項の罪が成立する場合には同条5項の罪は成立しない」と判示されました。(大阪高裁H28.10.26)
 7条の各製造罪の関係について、高裁がぶれています。

H26改正前
第七条(児童ポルノ所持、提供等)
1児童ポルノを提供した者は、三年以下の懲役又は三百万円以下の罰金に処する。電気通信回線を通じて第二条第三項各号のいずれかに掲げる児童の姿態を視覚により認識することができる方法により描写した情報を記録した電磁的記録その他の記録を提供した者も、同様とする。
2前項に掲げる行為の目的で、児童ポルノを製造し、所持し、運搬し、本邦に輸入し、又は本邦から輸出した者も、同項と同様とする。同項に掲げる行為の目的で、同項の電磁的記録を保管した者も、同様とする。
3前項に規定するもののほか、児童に第二条第三項各号のいずれかに掲げる姿態をとらせ、これを写真、電磁的記録に係る記録媒体その他の物に描写することにより、当該児童に係る児童ポルノを製造した者も、第二項と同様とする。
・・・
現行法(h26改正後)
第七条(児童ポルノ所持、提供等)
2児童ポルノを提供した者は、三年以下の懲役又は三百万円以下の罰金に処する。電気通信回線を通じて第二条第三項各号のいずれかに掲げる児童の姿態を視覚により認識することができる方法により描写した情報を記録した電磁的記録その他の記録を提供した者も、同様とする。
3前項に掲げる行為の目的で、児童ポルノを製造し、所持し、運搬し、本邦に輸入し、又は本邦から輸出した者も、同項と同様とする。同項に掲げる行為の目的で、同項の電磁的記録を保管した者も、同様とする。
4前項に規定するもののほか、児童に第二条第三項各号のいずれかに掲げる姿態をとらせ、これを写真、電磁的記録に係る記録媒体その他の物に描写することにより、当該児童に係る児童ポルノを製造した者も、第二項と同様とする。

島戸純「児童買春,児童ポルノに係る行為等の処罰及び児童の保護等に関する法律の一部を改正する法律について」警察学論集57-08(2004.8.10)
p97
ウ構成要件
第2項に規定するもののほか、児童に第2条第3項各号のいずれかに掲げる姿態をとらせ、これを写真、電磁的記録に係る記録媒体その他の物に描写することにより、当該児童に係る児童ポルノを製造する行為である。
(ア) 姿態をとらせ」
「姿態をとらせ」とは、行為者の言動等により、当該児童が当該姿態をとるに至ったことをいい、強制によることは要しない。いわゆる盗撮については、本項の罪に当たらないm。一般的にそれ自体が軽犯罪法に触れるほか、盗撮した写真、ビデオ等を配布すれば名誉致損の罪も成立し得るし、他人に提供する目的で児童ポルノを製造すれば、第7条第2項、第5項により処罰されることとなる。
(イ) 第1項の目的で児童ポルノを製造した場合は本項の罪からは除かれる。これは単に重複を避けるための技術的なものにすぎない。
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p98
オ他罪との関係
他人に提供する目的又は公然陳列目的をもって第7条第3項に規定する児童ポルノの製造行為を行った場合、第7条第3項は、第2項に規定するものを除いているので、他人に提供する目的等があった場合には、その第3項の犯罪は成立しない。
なお、第2項は、第5項に該当する場合を含むものであり、第3項においては、第2項に規定する場合のみを除けば、当然に第5項に該当する場合も除くこととなるものであるから、第3項において、第5項に該当する場合を除くこととはしなかったものである。
・・・・・・


阿部健一検事「児童買春・ポルノ禁止法及び人身売買罪等の人身の自由を侵害する行為についての犯罪事実等のポイント」捜査研究No.662p3(2006.8.5)
改正前の法7 条1 項の「頒布」販売」「業として貸与」は,法7 条1 項の提供に含まれると解される。

h26改正で新説されたひそかに製造罪でも、「いずれにも該当しない場合のみ,本条項の盗撮による児童ポルノ製造罪が成立する。」とされています。

坪井麻友美「児童買春・児童ポルノに係る行為等の処罰及び児童の保護等に関する法律の一部を改正する法律について」法曹時報 第66巻11号
ウ他の製造罪との適用関係
本条項は「前2項に規定するもののほか」と規定しており,第7条第3項の提供目的製造罪と同条第4項の「姿態をとらせ」製造罪のいずれにも該当しない場合のみ,本条項の盗撮による児童ポルノ製造罪が成立する。
なお,不特定若しくは多数の者に提供し,又は公然と陳列する目的がある場合には, より法定刑の重い同条第7項の罪が成立する。

阪高裁r02.10.2
判決
主文
原判決を破棄する。
理由
本件控訴の趣意は,弁護人奥村徹作成の控訴趣意書及び控訴趣意補充書に各記載のとおりであるから,これらを引用するが,理由不備,理由齪鵬訴訟手続の法令違反,法令適用の誤り,量刑不当の各主張である。
3原判示第4の事実に関する理由不備,理由齟齬,法令適用の誤りの各主張について
(1)論旨は,児童ポルノの製造に係る行為について児童ポルノ法7条3項の罪が成立する場合には,同行為が同条4項の罪に該当する場合であっても,法条競合により同項の罪は成立せず,同条3項の罪が成立しないことが同条4項の罪の構成要件になるという解釈を前提に,原判決が原判示第4の事実について,①(罪となるべき事実)の項において,同条3項の罪が成立しないことを摘示しなかったことは理由不備の違法に当たり,②提供目的により本件の児童ポルノの製造に及んだ旨の被告人の供述を含む供述調書を(証拠の標目)の項に掲げ,(量刑の理由)の項でも提供目的を認定しながら,(罪となるべき事実)の項で同条4項に係る事実を認定したことは理由齪鋸の違法に当たり,③同条3項の罪が成立する本件の事実関係において同条4項の罪の成立を認めたことは,判決に影響を及ぼすことが明らかな法令適用の誤りに当たる,というのである。
(2)そこで原審記録を調査して検討するに,児童ポルノ法7条4項の「前項に規定するもののほか」との規定ぶりからして同項は同条3項の補充規定であり,両規定に係る罪はいわゆる法条競合の関係に立つと解されるが,これは,ある事実が同条3項に該当する場合に実体法上およそ同条4項の罪が成立し得ないということまでをも意味するものではなく,当該事実に同条3項を適用する場合には,同事実について同条4項の適用が排除されることを意味し,同条3項の罪が成立しないことが同条4項の罪の構成要件になるとは解されない。
したがって,原判決の理由不備の違法をいう論旨は,そのよって立つ解釈自体が採用し得ないから,失当である。
(3)そして,訴因の構成.設定は検察官の合理的な裁量に委ねられており,検察官は,実体的には児童ポルノ法7条3項を構成すると評価し得る行為についても,立証の難易等諸般の事情を考慮して同条4項の訴因により公訴提起することは許容され,裁判所も,当該公訴事実に掲げられた行為について,同条4項の成立に証拠上欠けるところがないのであれば,原則として,その公訴事実に沿ってこれを認定すれば足りるというべきである。

阪高裁H28.10.26
第10,第12及び第13の各2の事実における法令適用の誤りの主張について。
論旨は,第10,第12及び第13の各2の製造行為は,いずれも盗撮によるものであるから,法7条4項の製造罪ではなく,同条5項の製造罪が成立するのに,同条4項を適用した原判決には,法令適用の誤りがある,というものである。
しかしながら,法7条5項は「前2項に規定するもののほか」と規定されているから,同条4項の罪が成立する場合には同条5項の罪は成立しないことが,法文上明らかである。
所論は,法7条5項に「前2項に規定するもののほか」と規定されたのは立法のミスであってこの文言に特段の意味はないとした上で,法7条5項の罪と他の児童ポルノ製造の罪との関係は前者が後者の特別法の関係だと主張する。
しかし,法7条5項の罪が追加された法改正の趣旨を考慮しても所論のように「前2項に規定するもののほか」に意味がないと解する必要はなく,法7条5項の罪が特別法の関係にあるとの所論は,独自の見解であって,採用できない。いずれも法7条4項の罪が成立しているとした原判決の法令適用に誤りはない。