児童ポルノ・児童買春・児童福祉法・監護者性交・不同意性交・不同意わいせつ・青少年条例・不正アクセス禁止法・わいせつ電磁的記録・性的姿態撮影罪弁護人 奥村徹弁護士の見解(弁護士直通050-5861-8888 sodanokumurabengoshi@gmail.com)

性犯罪・福祉犯(監護者わいせつ罪・強制わいせつ罪・児童ポルノ・児童買春・青少年条例・児童福祉法)の被疑者(犯人側)の弁護を担当しています。専門家向けの情報を発信しています。

被写体児童自身には自身に対する性的搾取の契機を欠くため、児童ポルノ関連犯罪の主体ではない~仲道祐樹「児童ポルノ法の判例と理論的課題:自画撮りの問題をめぐって」警察学論集76巻12号

被写体児童自身には自身に対する性的搾取の契機を欠くため、児童ポルノ関連犯罪の主体ではない~仲道祐樹「児童ポルノ法の判例と理論的課題:自画撮りの問題をめぐって」警察学論集76巻12号

 法文上は児童も主体に含まれるのですが、Instagramなどで、児童が自発的に撮影済み画像を売っている場合でも児童には製造罪・提供罪は成立しないそうです。自撮りによるい供給は止まりそうにありません。

仲道祐樹「児童ポルノ法の判例と理論的課題:自画撮りの問題をめぐって」警察学論集76巻12号
以上をまとめると次の通りである。まず、自画撮り送信による姿態をとらせ製造罪は、描写および製造の点について、間接正犯としての構造を有する。刑法総論における間接正犯の一般理論からでは、背後者の正犯性を肯定することは困難であるが、姿態をとらせ製造罪の構成要件の特徴から、「姿態をとらせ」という要件を充足するような働きかけが存在する場合には、それが、児童ポルノ該当影像を送信しろという指示の性質、自画撮り行為自体の特性および児童の性的判断能力の未熟さとが相まって、被写体児童の行為が存在したとしても、これを背後者の行為と同視できるため、このような解釈から間接正犯としての姿態をとらせ製造罪を認めることが可能である。もっとも、このような解釈による場合、「姿態をとらせ」に該当する事実として、行為者からの働きかけの存在を示すことが必要となる。
次に、被写体児童自身による提供目的製造罪や公然陳列(目的製造)罪、提供罪については、児童ポルノ法の趣旨である、児童の性的搾取・性的虐待からの保護という観点から、被写体児童自身には自身に対する性的搾取の契機を欠くため、児童ポルノ関連犯罪の主体ではないという帰結が導かれる。

この見解が裁判所で通用するかは未知です。
未公開判例として児童を共犯にするものがあります。

広島高裁平成26年5月1日
1 控訴趣意中,事実誤認の主張について
エ 以上の次第であるから,原判示第1及び第3の各犯罪事実を認定した原判決には,被告人に,児童■■■が18歳に満たない児童であることに関する認識があったと認めた点を含め,事実の誤認があるとは認められない。論旨は理由がない(なお,被告人の当審公判供述の趣旨等にも鑑み,職権で判断を加えると,原判決が認定,摘示した原判示第3の事実の内容は,前記(1)で摘示したとおりである。要するに,原判決は,児童■■■の原判示の姿態を撮影して,その画像データを被告人の携帯電話機に送信し,その携帯電話機の記録媒体に蔵置させるに至らせるという,児童ポルノ製造の犯罪の主要な実行行為に当たるものを行ったのは児童■■■自身であるという事実を摘示しているが,児童■■■が共同正犯に当たるとは明示しておらず,被告人に関する法令の適用を示すに当たっても,刑法60条を特に摘示していない。他方,原判決は,本件について間接正犯の関係が成立するという事実を示しているものでもなく,本件の関係証拠に照らしても,間接正犯の成立をうかがわせる事実関係があるとは認め難い。しかし,原判決は,罪となるべき事実として,児童■■■が上記の実行行為を自ら行ったという事実は摘示し,これらの行為は,被告人が,自らの意思を実現するため,児童■■■との意思の連絡の下,児童■■■に行わせたものであるという趣旨と解される事実関係を摘示しているものと理解することが可能であるし,かつ,そうした事実関係を前提に犯情評価等を行っていると見ることができることなどに照らすと,原判決が,被告人と■■■との共謀の存在を明示せず,法令の適用に刑法60条を挙示していないことが,判決に影響を及ぼすことが明らかな事実誤認ないし法令適用の誤りに当たるとは,いまだいい難いと考えられる。)。