児童ポルノ・児童買春・児童福祉法・監護者わいせつ・不同意わいせつ・強制わいせつ・青少年条例・不正アクセス禁止法・わいせつ電磁的記録弁護人 奥村徹弁護士の見解(弁護士直通050-5861-8888 sodanokumurabengoshi@gmail.com)

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タナー2度以下だと、現行犯逮捕されることがあります。「児童ポルノ事犯予備年齢鑑定員運用要綱」

タナー2度以下だと、現行犯逮捕されることがあります。「児童ポルノ事犯予備年齢鑑定員運用要綱」
 予備年齢鑑定員というのは時々聞こえてきましたが、警視庁に要綱があるようです。
 タナー2度以下だと、現行犯逮捕されることがあります。
 CG事件の1審・控訴審判決で、タナー2度は児童としていいという判示があるので、その影響だと思われます。

裁判年月日  平成28年 3月15日  裁判所名  東京地裁  裁判区分  判決
事件名  児童買春,児童ポルノに係る行為等の処罰及び児童の保護等に関する法律違反被告事件
 そうすると,D医師がタナー法で乳房を3度と判定した(なお,D医師が,本件CG集に関連する写真で,乳房につき,4度あるいは3度ないし4度であると判定したものはない。),甲第25号証画像番号2ないし5(児童1ないし4),8(児童6),9(児童7),11ないし17(児童8ないし14),22(児童15),23(児童16),27(左側)(児童17。画像番号22と共通。),28(児童18)及び甲第26号証画像番号3(児童2),5(児童4),6(児童5),8(児童6),10(児童7),13(児童8),17(児童11),21(児童12),23(児童13),25(児童14),26(児童15)の各写真については,各被写体が18歳未満である旨のD医師の認定は採用することができず,18歳以上である可能性に合理的な疑いが残る(別紙1で黄緑色で塗りつぶしたもの。ただし,既に検察官レイヤーと児童認定写真とが一致しないあるいは実在性がないとして黄色等で塗られていたものがあり,その場合には画像番号のみを黄緑色で塗りつぶしている。)。
 これに対し,別紙1の画像番号が黄緑色で塗られていないもの,すなわち,D医師がその被写体の乳房についてタナー1度又は2度と評価した各写真については,前記のとおり,D医師が,乳房についてタナー2度が18歳未満か否かという判断のポイントとなる旨述べているとおり,乳房についてタナー2度以下と判定されて18歳以上である女性が一定数存在することは否定できないとしても,それ自体がまれであるといえる上,これらの写真の被写体は,いずれも一見して顔立ちが幼く,乳房や肩幅,腰付近の骨格等の身体全体の発達も未成熟であること等からすれば,これらの被写体は撮影当時18歳未満であったことが強く推認される。
 3  児童認定写真と同一の写真が収録された写真集に被写体の年齢に関する記載があること
 なお,検察官は,児童認定写真と同一の写真が収録された写真集自体に「『F』13歳」,「K 1972年生まれ。」などと,被写体の年齢に関する記載が存在することからも,被写体が撮影当時18歳未満であったことが推認される旨主張するが,そもそも写真集に記載された年齢や生年月日が正確なものであるとする根拠がない上,児童認定写真に係る写真が収録された写真集には,その表紙や本文に「少女」などの記載があり,幼い女児の写真であることを強調する内容となっていることからすれば,そのような写真集に記載された被写体の年齢や生年月日が正確なものであるかは疑問であり,検察官の主張は採用できない。
 4  小括
 以上によれば,別紙1の黄緑色に塗られていない○○及び○○2の各画像に係る児童認定写真の被写体については,18歳未満であると認めるのが相当であるが,その余については,18歳未満であることについて合理的疑いが残り,18歳未満とは認められない。

東京高等裁判所
平成29年01月24日
イ 児童性の認定について
  (ア) 所論は、原判決が児童性に関する唯一の証拠としたA医師の鑑定及びその原審証言は、同医師が依拠する理論自体、刑事事件で児童性の認定に利用できるほど理論的、合理的なものとはいえず、タナー法については、提唱者であるC氏自身が、同法で年齢を推定することはできないとして、これを年齢の推定に利用することを批判していることなどに照らすと、A医師の原審証言は信用できず、また、判断対象は本件CGの児童ポルノ性であるのに、本件CGを見て判断しておらず、その基となった素材画像の写真のみを見て判断している点でも信用できないと主張する。また、原判決が、タナー法で乳房2度以下であれば18歳であるといえると判断した点についても、18歳以上の女性の中に、実際に乳房についてタナー2度の女性がどの程度存在するかに関するデータはない上、実際、A医師は、原審公判において、明らかに18歳以上であるAV女優の乳房の写真を弁護人から示されて、タナー2度であると誤った証言をしていることなどに照らすと、同医師の証言は信用できない、結局、原判決の判断は、裁判所が写真を見て幼く感じたから18歳未満であるというにすぎず、このような原判決の判断には事実の誤認がある、などと主張する。
  (イ) そこで検討すると、胸部及び陰毛のみを判断資料とするタナー法に基づいて年齢を判定することには限界ないし危うさがあること、タナー法に依拠して、本件において素材画像の写真の児童性を判定したA医師の原審証言を全面的に信用して年齢を判断することが相当でないことは、原判決が適切に説示するとおりである。もっとも、原判決が乳房についてタナー法で2度以下と判定された事例について、児童性を認定した点については、確かに、18歳以上の女性の中に乳房がタナー2度以下の者がどの程度の確率で存在するかを実際に調査したデータはないものの、A医師は、原審において、タナー2度以下で18歳以上である可能性として、体質性思春期遅発症による可能性と、性腺機能低下症による可能性が考えられるところ、前者については、性発達の年齢の分布が正規分布となることが分かっていることから、乳房についてタナー2度に達する日本人女性の平均年齢と標準偏差を元に計算すると、100万人に3人(1万人に0.03人)未満の確率となり、後者の可能性についても、1万人に1人未満であるから、前者と後者の可能性を併せても、18歳以上の者の中で乳房タナー2度以下が存在する可能性は、理論上、1万人に1人未満という極めて低い確率である、18歳未満か否かの判断については、乳房タナー2度を基準とすればまず間違いがない旨証言している。
  加えて、A医師が引用するD氏らの研究(A原審証言調書別紙6。当審弁3。)によれば、1983年ないし1986年生まれの日本人女児226人について、乳房タナー度数別の累積頻度を実態調査したところ、12歳になるまでに、全ての者がタナー2度に達し、95%の者がタナー3度に達したことが認められ、更に18歳になるまでにはタナー3度に達する者の割合が高くなることが推認される。
  A医師の上記の原審証言は、小児科学、小児内分泌学等を専門とする同医師の専門的知見に基づき、上記の実態調査等のこれまでの医学的、科学的な研究等の成果に基づくものであって、その内容には合理性があり、十分信用することができるというべきである。そうすると、少なくとも、A医師が述べるように、18歳以上の者の中に乳房についてタナー2度以下の者が存在する可能性が極めて低いことについては、十分科学的な裏付けがあるといえるから、原判決が採ったように、少なくとも、乳房がタナー2度以下と判断された者については、18歳未満であると推認することができ、さらに、顔立ち、乳房や肩幅、腰付近の骨格等の身体全体の発達の程度をも加味して検討すれば、18歳以上の女性で乳房がタナー2度以下と判定される例外的な事例は、排除できるというべきである。したがって、A医師が乳房についてタナー2度と判定した被写体について、上記の諸点も考慮した上、児童性を認めた原判決の判断に、事実の誤認はなく、単に裁判所が写真を見て幼く感じたから児童性を認定したとする所論の論難は当たらない。その他、所論が指摘する点を踏まえても、上記の判断は揺るがない。

top MPD 2020年1月号付録2020巡査部長昇任試験直前対策p43
所属長は、予備年齢鑑定員の派遣を受け、捜索・差押えを実施する場合は、次の事項に留意する。
①予備年齢鑑定は、指定された予備年齢鑑定員が行うこと。
児童ポルノと思料される画像について予備年齢鑑定を実施した結果、児童ポルノと認定し現行犯逮捕を行う場合は、当該現行犯逮捕に係る画像はタナー法により2度以下と判断される画像であること。この場合において、現行犯逮捕に係る画像に不鮮明な処理が行われている等児童ポルノであるかどうかの判断に疑義があるときは、現行犯逮捕は行わないこと。
③予備年齢鑑定に係る画像が不鮮明な画像処理が行われた女性の画像である場合は、乳房又は陰毛が描写されているときに限り予備年齢鑑定を行うこと。
④予備年齢鑑定は、捜索差押えの現場において、当該捜索差押えの目的たる児童ポルノを発見できなかった場合にのみ行うこと。
児童ポルノ事犯の捜索差押えを実施する場合には、事前に小児科医等の専門家に鑑定を打診しておく等予備年齢鑑定を行った画像について迅速な鑑定が行われるように配意すること(児童ポルノ事犯予備年齢鑑定員運用要綱第5.2参照)。

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児童ポルノ事犯の捜索・差押えの現場において、あらかじめ鑑定済みの児童ポルノを発見できないものの、児童ポルノと思料される別の画像を発見した場合であって、一定の要件がある場合には、当該現場における警察官の見分に基づく予備年齢鑑定により児童性を認定し、現行犯逮捕することができる。

A妥当。予備年齢鑑定の要件として、
「①指定鑑定員による予備鑑定であること、
①予備鑑定の結果、タナー法の2度以下と判定されること」及び
それ以外の要件として、
「①提供目的等を認めるに足りる状況であること、
②逮捕の必要性があること」の要件がある場合は、
当該現場における警察官の見分に基づく予備年齢鑑定により児童性を認定し、現行犯逮捕することができる