児童ポルノ・児童買春・児童福祉法・監護者性交・強制わいせつ・青少年条例・不正アクセス禁止法・わいせつ電磁的記録記録被告事件弁護人 奥村徹弁護士の見解(弁護士直通050-5861-8888 hp3@okumura-tanaka-law.com)

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児童ポルノ単純所持罪の無罪判決(佐賀地裁R02.2.12)

 国選弁護人がタナー法に切り込みましたね。

■28281007
佐賀地方裁判所
令和02年02月12日
被告人
弁護人(国選) 東島沙弥子
検察官 高岡春美 山下忠佑
主文
本件公訴事実中、児童買春、児童ポルノに係る行為等の規制及び処罰並びに児童の保護等に関する法律違反(令和元年8月19日付け起訴状の公訴事実第3)の点について、被告人は無罪。

(一部無罪の理由)
 1 公訴事実
 被告人は、自己の性的好奇心を満たす目的で、令和元年6月26日、F警察署の駐車場にとめた自動車内で、他人が児童の性器等を触る行為に係る児童の姿態であって性欲を興奮させ又は刺激するもの及び衣服の全部又は一部を着けない児童の姿態であって、殊更に児童の性的な部位が露出され又は強調されているものであり、かつ、性欲を興奮させ又は刺激するものを視覚により認識することができる方法により描写した動画データを記録した児童ポルノである記録媒体が内臓されたノート型パソコン1台を所持した。
 2 争点
 公訴事実の動画データに記録された本件女性が児童(18歳に満たない者)であると立証できているか。

 3 裁判所の判断
 (1) 本件女性の児童性について、合理的な疑いのない程度に立証できているとはいえない。したがって、犯罪の証明がないから、刑訴法336条により被告人に無罪の言渡しをする。
 (2) その理由は、以下のとおりである。
 ア 再生した動画データ(甲17)を見る限り、本件女性は、あどけない顔立ちや動作などからいって、小学生のようであり、上にみてもせいぜい中学生にしかみえない。この点は検察官の指摘に異論はない。しかし、弁護人が指摘するように、18歳以上の女性の中にも、ときには小学校高学年くらいにみえる女性がいることは否定できない(弁4)。動作なども児童に見せかけて演出することも可能である。したがって、その付近の年齢までは、顔立ちや動作などの印象だけから児童性の立証ができているとみるのは難しく、また、危険でもある。
 イ 検察官は、G医師の所見(甲16、18)をあわせると、児童性が立証できていると主張する。そこで、その所見の信用性について検討する。まず同医師の知識や経験に問題は見あたらない。タナー法自体についても、弁護人がいうような問題点が指摘されているものの、統計学的な数字による年齢判定の手法として十分に信用できる。特にタナー2期と判定できる場合には、検察官が指摘するように、18歳未満と推認することも可能と考えられる。
 しかし、タナー法は、もともと胸部及び陰毛のみに限定して判定する手法であるから、それらを正確に直接計測するのを前提としている。もちろん画像等からの判定も可能であるが、判定資料の品質によっては、判定自体の信用性に疑いが生じることは避けられない。本件の動画データは、画質がかなり荒く、重要な胸部及び陰毛について、鮮明とはいえない。G医師も、「乳房は画像処理が行われており判定が困難」とし、「画像上陰毛発生が見られるが、未だ明瞭には写っていない」としている(甲16)。陰毛については、画像からはほとんどないようにみえるが、あるとしてもその程度や、あるものを人為的に剃っているか否かの判定も難しい。そうすると、G医師は本件女性をタナー2期と判定しているが、その判定は上記のような不鮮明な画像をもとにしており、判定資料としての品質がよくない。このような画像をもとにタナーの度数判定が正確にできるかについて、常識的にみて疑いが残るといわざるを得ない。
 したがって、本件では、G医師の所見をあわせても、児童性が立証されているとはいえない。
(法令の適用)
(量刑理由)
刑事部
 (裁判官 杉原崇夫)