わいせつの定義ないので困ります。
馬渡裁判官の解説によれば、「具体的事例については,大塚ほか編・前掲67頁以下等参照」とされますが、耳なめは挙がっていません。
児童買春罪の構成要件は、わいせつ概念の曖昧さを回避するために行為を細かく特定していますが、乳首なめは性器接触行為として処罰されますが、耳なめは含まれていません。
第二条(定義)
2この法律において「児童買春」とは、次の各号に掲げる者に対し、対償を供与し、又はその供与の約束をして、当該児童に対し、性交等(性交若しくは性交類似行為をし、又は自己の性的好奇心を満たす目的で、児童の性器等(性器、肛門又は乳首をいう。以下同じ。)を触り、若しくは児童に自己の性器等を触らせることをいう。以下同じ。)をすることをいう。
(大塚仁ほか編・大コンメンタール刑法〔第3版〕(9)[亀山継夫=河村博]65頁等)。
(b) 具体的行為
【陰部への接触】事例としては,陰部に指を挿入する(前掲大16判大7・8・20,前掲大判大14・12・10),指で陰部を弄ぶ(東京高判昭27・5・8特報34号5頁),陰部に自己の陰部を押し当てる(前掲東京高判昭27・5・8l,陰部に手を触れる〔大判大13・10・22集3巻749頁)等がある.
着衣の上から陰部を押し撫でる(名古岸高金沢支判昭36・5・2下集3巻5= 6号399頁)のもわいせつ行為といえるが,単に陰部の上の厚手の着衣に触れるとし、う程度では足りず,着衣の上から陰部を弄んだといえる程度の行為であることを要しよう(条解刑法466頁).
【乳房への接触】女子の乳房を弄ぶ〔大阪地堺支干IJII{j36・4・lZ-f集3巻3=4号319頁〕のも,もちろんわいせつ行為で、ある.着衣の上からでもよいことは陰部の場合と同様であろう.乳房が未発育というだけではわいせつ行為にならないとはし、えない(間藤・注釈(4) [所〕293頁参照ー前掲大阪地裁堺支部判決は小学校6年の児童についてわいせつを認めた事例て、あり, 7歳の女児につき肯定した事例として新潟地判昭63・8・26判時1299'}152頁がある).そのような場合でも,性的意識が全く発達していないとはいえず,社会通念上も性的感情の侵害があると見られるからである.
男子の乳房については,社会通念からいって,それだけではわいせつ行為とはしがたい場合が多いであろう.
【接吻】接吻については,前掲諸判例のほか,大阪高裁昭和41年9月7日判決(判タ199号187頁),仙台高裁昭和49年12月10日判決(高検速報(昭49) 9号)及びこの判決に対する上告審決定(最決昭50・6・19裁判集〔刑事J196号653頁),東京地裁昭和56年4月30日判決〔判時1028号145頁) (頬に接吻しようとした事例入男性聞の接吻につき大阪地裁昭和43年2月6日判決(判タ221号237瓦) (35歳の男が11歳の男の子に強いて接吻したのを強制わいせつと認めた事例)参照.
21 【性交等】性交は,もちろんわいせつ行為の一種である.姦淫が強姦罪等になる場合に特別法一般法の関係によって本罪が成立しないことになるというにとどまる.したがって,女子の男子に対して行う姦淫は,本条前段あるいは後段に当たり得る(団藤・注釈(4)
〔所J294頁).
22 男女に強いて性交をさせる行為も同様である(岡藤・注釈(4)C所J294頁ー留1路地北見支判昭53・10・6半11 タ374号162頁参照).いわゆる鶏姦等の同性愛行為もわし、せつ行為である(小野
ら・註釈416頁).
23 少年の紅門に異物を挿入する行為もわいせつ行為となる(東京高判昭59・6・13判時1143号155頁).
24 直接体に触れなくても,裸にして写真をとる行為は本条に当たり得る(東京高判昭29・5・29特報40号138頁,東京地判昭62・9・16判|侍1294号143頁,静岡地浜松支判平11・12・1判タ1041号293頁).単に裸にするだけでも同じであり,公然を要しない(間藤・注釈(4)C所J294頁).
25 【その他】単に抱きすくめる行為(名古屋地判昭48・9・28判時736号110頁.抱きしめる行為が「わいせつ行為」になり得ることについて,東京高半11平20・7・9高検速報(平20) 121頁),男が女の上に馬乗りになる行為(大阪高判昭29・11・30裁特l巻12号584頁),着衣の上から臀部を撫でる行為(福島簡判附33・1・18→審JflI集I巻1号21貞〕等は,それだけで、はわいせつ行為とはいえない場合もあろうが,例えば,名古屋高判平15・6・2判時1834号161頁は着衣の上から臀部を撫でる行為について,東京高判平13・9・18東時52巻1~ 12号54頁はパンツの上から臀部・大腿部を撫で、る行為について,それぞれ本罪の成立を認めている.
強制わいせつ罪の成立と行為者の性的意図の要否
最高裁平成29年11月29日大法廷判決最高裁調査官馬渡香津子 ジュリスト1517 p78
V・「わいせつな行為」の定義,判断方法
1. 「わいせつな行為」概念の重要性性的意図が強制わいせつ罪の成立要件でないとすれば, 「わいせつな行為」に該当するか否かが強制わいせつ罪の成否を決する上で更に重要となり, 「わいせつな行為」該当性の判断に際して,行為者の主観を一切考慮してはならないのかどうかを含め, これをどのように判断し,その処罰範囲を明確化するのかが問題となる。
また,強制わいせつ致傷罪は,裁判員裁判対象事件であることも考えれば, 「わいせつな行為」の判断基準が明確であることが望ましい。
2 定義
(1) 判例,学説の状況
強制わいせつ罪にいう「わいせつな行為」の定義を明らかにした最高裁判例はない。
他方, 「わいせつ」という用語は,刑法174条(公然わいせつ), 175条(わいせつ物頒布罪等) にも使用されており, 最一小判昭和26.5. 10刑集5巻6号1026頁は, 刑法175条所定のわいせつ文書に該当するかという点に関し, 「徒に性慾を興奮又は刺激せしめ且つ普通人の正常な性的差恥心を害し善良な性的道義観念に反するものと認められる」との理由でわいせつ文書該当性を認めているところ(最大判昭和32.3・13刑集ll巻3号997頁〔チャタレー事件〕も,同条の解釈を示すに際して,その定義を採用している),名古屋高金沢支判昭和36.5.2下刑集3巻5=6号399頁が,強制わいせつ罪の「わいせつ」についても, これらの判例と同内容を判示したことから,多くの学説において, これが刑法176条のわいせつの定義を示したものとして引用されるようになった(大塚ほか編・前掲67頁等)。
これに対し,学説の中には,刑法174条, 175条にいう「わいせつ」と刑法176条の「わいせつ」とでは,保護法益を異にする以上, 同一に解すべきではないとして,別の定義を試みているものも多くある(例えば, 「姦淫以外の性的な行為」平野龍一.刑法概説〔第4版) 180頁, 「性的な意味を有する行為,すなわち,本人の性的差恥心の対象となるような行為」山口厚・刑法各論〔第2版] 106頁, 「被害者の性的自由を侵害するに足りる行為」高橋則夫・刑法各論〔第2版〕124頁, 「性的性質を有する一定の重大な侵襲」佐藤・前掲62頁等)。
(2) 検討
そもそも, 「わいせつな行為」という言葉は,一般常識的な言葉として通用していて,一般的な社会通念に照らせば, ある程度のイメージを具体的に持てる言葉といえる。
そして, 「わいせつな行為」を過不足なく別の言葉でわかりやすく表現することには困難を伴うだけでなく,別の言葉で定義づけた場合に,かえって誤解を生じさせるなどして解釈上の混乱を招きかねないおそれもある。
また, 「わいせつな行為」を定義したからといって, それによって, 「わいせつな行為」に該当するか否かを直ちに判断できるものでもなく,結局,個々の事例の積み重ねを通じて判断されていくべき事柄といえ, これまでも実務上,多くの事例判断が積み重ねられ,それらの集積から,ある程度の外延がうかがわれるところでもある(具体的事例については,大塚ほか編・前掲67頁以下等参照)。
https://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20200109-00000044-mai-soci
逮捕容疑は2019年11月5日午後11時5分ごろ、同市南区大橋1の歩道で同区のアルバイトの少女(当時18歳)に突然後ろから抱きつき、耳をなめるなどのわいせつな行為をしたなどとしている。「間違いない」と容疑を認めている。