児童ポルノ・児童買春・児童福祉法・監護者わいせつ・不同意わいせつ・強制わいせつ・青少年条例・不正アクセス禁止法・わいせつ電磁的記録弁護人 奥村徹弁護士の見解(弁護士直通050-5861-8888 sodanokumurabengoshi@gmail.com)

性犯罪・福祉犯(監護者わいせつ罪・強制わいせつ罪・児童ポルノ・児童買春・青少年条例・児童福祉法)の被疑者(犯人側)の弁護を担当しています。専門家向けの情報を発信しています。

顔舐め・足舐め行為のわいせつ性・・わいせつ行為(刑法176条)の限界事例

顔舐め・足舐め行為のわいせつ性・・わいせつ行為(刑法176条)の限界事例

 時々、こういう事案がありますが、捜査段階でわいせつ性を争うと一部起訴されないこともあります。

https://news.yahoo.co.jp/articles/d3a1f8db1dc1744e1344fe59157acfb5d98923c8
逮捕容疑は5月7日夕~夜、東京都豊島区の居酒屋で学生のひざや胸を触ったほか、近くの路上で抱きついたり顔をなめたりしたというもの。

 大法廷h29.11.29以降、わいせつの定義はありませんが、性的意味会い・その程度・社会通念の三要素で決められています。

タイミング的に大法廷h29.11.29は反映されていませんので、理由が変わる可能性があります。

嘉門優「強制猥褻と痴漢行為との区別について」季刊刑事弁護93号(出版年月日2018/01/20)
 そして、直接、性的部位に触れる行為(C類型)についても、被害者への性的な侵襲性が比較的高いために、強制わいせつ罪が認められる傾向にある一方24、被害者の性的部位を「着衣の上から」触る場合(D類型)、通常は痴漢行為と分類される。
ただし、態様が「執よう」な場合、つまり、着衣の上からでも「弄んだ」といえるような態様である場合、強制わいせつ罪とされてきた25。
 また、被害者の「非性的部位」に触れる場合(E類型)にも本罪が成立することがあり、その典型例は唇への接吻である26。
 ただし、接吻だけでは「性欲を刺激、興奮又は満足させる行為」とはいえず、相手方の意思に反して「無理やり」行われたといいうる場合にのみ強制わいせつ罪とされてきた27.
 他方、唇以外の非性的な部位(頬やあご等)にキスする場合には、その行為が、通常は性欲刺激・興奮・満足に結びつくとは評価しえないため28、無理やり行ったとしても、強制わいせつ罪を肯定すべきではないとされる29.
 同様の理由から、他の非性的部位(被害者の指や大腿部など)をなめたり触ったりする行為についても、無理やり行ったとしても強制わいせつ罪は認められない30.
 以上のように、強制わいせつ罪のわいせつ行為は、接触部位、接触行為の性的意味合い、態様の執よう性といった観点から、「性欲を刺激、興奮又は満足させる行為」と評価しうるかどうかが判断されている

26広島高松江支判昭27.9.24高刑判特20号187頁、東京高判昭32.1 .22高刑判特4巻l~3号l6頁。なお、「唇」を性的な領域と理解する見解もあるが(山中敬一「強制わいせつの罪の保護法益について」研修817号(2016年]10頁)、陰部・乳房・臂部とは異なり、唇に触れること自体をもって直ちに「性欲を刺激する行為」を有すると評価することはできない。そこで本稿では、唇への接触を「非性的部位への接触」として扱うこととする。
27福田平『全訂刑法各論〔第3版増補〕』(有斐閣、2004年)183頁、佐伯仁志「強制狼藝罪における狼褒概念」判タ708号(1989年)65頁。東京高判昭32. 1 .22高刑裁特4巻l~3号16頁。東京地判昭56・4・30判時1028号145頁。
28大阪高判昭41 .9.7判タl99号187頁。松原芳博『刑法各論』(日本評論社、2016年)87頁は、頬にキスする行為は「現在の性意識に照らせば、性的意味は認めがたい」とする。
29東京地判昭56.4.30判時1028号l45頁は、「頬にキスしようとした行為」について強制わいせつ未遂罪を肯定したが疑問である。また、東京地判平21.l0.8 LEX/DB25463736は、
「首筋に接吻する行為」についてわいせつ性を認めている。ただし、この事案では、被害者の乳房を直接もみ、下着の上から陰部に手指を押し当て、さらに、首筋に接吻したという一連の行為について、わいせつ性を肯定しており、首筋への接吻行為だけで強制わいせつ罪が成立すると判断されたものではない(ただし、結論として、被害者の供述の信用性が認められないとして無罪とされている)。
30裁判例において、足の指を舐める行為(神戸地判平15.4.1O LEX/DB28085644)や、太もも、膝頭付近を触る行為(東京高判平13.9.18LEX/DB28085248)について強制わいせつ罪が肯定されているものの、いずれも、より性的侵襲性の高い行為(陰部を弄ぶ、瞥部を直接触る)とともに行われており、一連の行為全体でわいせつ性が肯定されているにすぎない。