児童ポルノ・児童買春・児童福祉法・監護者わいせつ・不同意わいせつ・強制わいせつ・青少年条例・不正アクセス禁止法・わいせつ電磁的記録弁護人 奥村徹弁護士の見解(弁護士直通050-5861-8888 sodanokumurabengoshi@gmail.com)

性犯罪・福祉犯(監護者わいせつ罪・強制わいせつ罪・児童ポルノ・児童買春・青少年条例・児童福祉法)の被疑者(犯人側)の弁護を担当しています。専門家向けの情報を発信しています。

売春業者から受け取った広告料を「犯罪収益等」とした事例

「犯罪収益等を収受した者」という構成要件なので、混和(法2条4項)した財産を、情を知って受け取ると、収受罪になります。
 お金や預金に「犯罪収益等」と書いてあるわけではないので、後から知っていたんじゃないかと疑われるとやっかいです。
 

http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20141127-00000066-jij-soci
容疑を否認し、「店が売春しているとは知らなかった」などと話しているという。
 警視庁によると、違法風俗店が支払う広告料金を犯罪収益の一部と判断し、同法違反容疑を適用したのは全国初。
 逮捕容疑は5〜8月、派遣型売春クラブ(台東区)経営の男(44)=売春防止法違反罪で公判中=から、同店が売春のあっせんなどで得た犯罪収益と知りながら、約55万円を広告掲載料名目で受け取った疑い。 

組織的な犯罪の処罰及び犯罪収益の規制等に関する法律
第2条(定義)
この法律において「団体」とは、共同の目的を有する多数人の継続的結合体であって、その目的又は意思を実現する行為の全部又は一部が組織(指揮命令に基づき、あらかじめ定められた任務の分担に従って構成員が一体として行動する人の結合体をいう。以下同じ。)により反復して行われるものをいう。
2 この法律において「犯罪収益」とは、次に掲げる財産をいう。
一 財産上の不正な利益を得る目的で犯した別表に掲げる罪の犯罪行為(日本国外でした行為であって、当該行為が日本国内において行われたとしたならばこれらの罪に当たり、かつ、当該行為地の法令により罪に当たるものを含む。)により生じ、若しくは当該犯罪行為により得た財産又は当該犯罪行為の報酬として得た財産
二 次に掲げる罪の犯罪行為(日本国外でした行為であって、当該行為が日本国内において行われたとしたならばイ、ロ又はニに掲げる罪に当たり、かつ、当該行為地の法令により罪に当たるものを含む。)により提供された資金
イ 覚せい剤取締法(昭和二十六年法律第二百五十二号)第四十一条の十(覚せい剤原料の輸入等に係る資金等の提供等)の罪
ロ 売春防止法(昭和三十一年法律第百十八号)第十三条(資金等の提供)の罪
ハ 銃砲刀剣類所持等取締法(昭和三十三年法律第六号)第三十一条の十三(資金等の提供)の罪
ニ サリン等による人身被害の防止に関する法律(平成七年法律第七十八号)第七条(資金等の提供)の罪
三 不正競争防止法(平成五年法律第四十七号)第十八条第一項の違反行為に係る同法第二十一条第二項第七号(外国公務員等に対する不正の利益の供与等)の罪の犯罪行為(日本国外でした行為であって、当該行為が日本国内において行われたとしたならば当該罪に当たり、かつ、当該行為地の法令により罪に当たるものを含む。)により供与された財産
四 公衆等脅迫目的の犯罪行為のための資金の提供等の処罰に関する法律(平成十四年法律第六十七号)第二条(資金提供)に規定する罪に係る資金
3 この法律において「犯罪収益に由来する財産」とは、犯罪収益の果実として得た財産、犯罪収益の対価として得た財産、これらの財産の対価として得た財産その他犯罪収益の保有又は処分に基づき得た財産をいう。
4 この法律において「犯罪収益等」とは、犯罪収益、犯罪収益に由来する財産又はこれらの財産とこれらの財産以外の財産とが混和した財産をいう。

別表(第二条、第十三条、第二十二条、第四十二条、第五十九条関係)
四十二 売春防止法第六条第一項(周旋)、第七条(困惑等による売春)、第八条第一項(対償の収受等)、第十条(売春をさせる契約)、第十一条第二項(業として行う場所の提供)、第十二条(売春をさせる業)又は第十三条(資金等の提供)の罪

第11条(犯罪収益等収受)
情を知って、犯罪収益等を収受した者は、三年以下の懲役若しくは百万円以下の罰金に処し、又はこれを併科する。ただし、法令上の義務の履行として提供されたものを収受した者又は契約(債権者において相当の財産上の利益を提供すべきものに限る。)の時に当該契約に係る債務の履行が犯罪収益等によって行われることの情を知らないでした当該契約に係る債務の履行として提供されたものを収受した者は、この限りでない。

組織的犯罪対策関連三法の解説P75
4犯罪収益等(第四項)
「犯罪収益等」とは、犯罪収益、犯罪収益に由来する財産又はこれらの財産とこれらの財産以外の財産とが混和した財産をいう。
混和した財産(以下「混和財産」という。)の中に犯罪収益又は犯罪収益に由来する財産が含まれる限り、犯罪活動に再投資されたり、事業活動に投資されて合法的な経済活動に悲彬響を与えるおそれがある点などは、犯罪収誌と変わりがないと認められることから、犯罪収益規制の対象とされている。
「混和」とは、側々の特定性の希薄な固形物が混合すること、流動物が融和するなど、要するに、物等が混ざり合って例々の財産を特定して識別することができなくなることをいい、金銭が混ざり合ったり、金銭を預貯金することにより一個の預貯金債権となる場合などもこれに当たる。混和財産は、数量又は金額によって分割することが可能であり、かつ、それによってその財産的価値に変化のないものに限られる。したがって、犯罪収益又は犯罪収益に由来する財産に当たる金銭とこれらの財産以外の金銭を資金として、一個の不動産を購入した場合に、当該不動産は、もはや混和財産ではない。
混和財産には、
?犯罪収益と犯罪収益に由来する財産とが混和した財産、
?犯罪収益又は犯罪収益に由来する財産とこれらの財産以外の財産が混和した財産、
?犯罪収益及ぴ犯罪収益に由来する財産とこれら以外の財産が混和した財産
が含まれる。


組織的犯罪対策関連三法の解説P125
1趣旨
本条は、情を知って、犯罪収益等を収受する行為に対する罰別である。
本条は、犯罪収益等の収受の罪を定めるものである。
本罪は、例えば、犯罪収益の換金の相手方となり、あるいは犯罪収益を預貯金契約によって収受してその利息を支払うなどの行為が将来の犯罪活動に再投資等されるおそれがある犯罪収益の保持・運用を助ける結果となることから、これを処罰するものである。
2 主体
本条の罪の主体は、犯罪収益の前提犯罪の本犯者以外の者である。
3 客体 
本条の罪の客体は、犯罪収益等である。
4 行為
 本条の罪は犯罪収益等を収受することによって成立する。
「収受」とは、有俄であると無償であるとを問わず、犯罪収益を取得し、あるいはその引波しを受けてこれを支配することができる地位ないし立場に立つことをいう。例えば、贈与、売買、消費貸借等によって犯罪収益を取得することのほか、取得しない場合でも、事実上引波しを受けて、実質的に自己のものであると同様の支配関係を持つに至った場合などをいう。
「情を知って」とは、収受に係る財産が犯罪収益等であることを知って、つまり犯罪収益等であることを認誠してという意味であり、収受した財産が客観的に犯罪収益等に当たり、かっ、当該財産が犯罪収益等であることを知りながら、あえてその収受を行った場合に、本条の罪が成立する。
この場合において、犯罪収益等であることを知りながらあえてその収受を行ったといえるには、その具体的な財産が現実の犯罪行為による犯罪収益等であることを認識し、かっこれを認容することが必要であるが、必ずしも碓定的認識を要せず、未必的認識でも足りる。
しかし、単に、犯罪収益等であるかもしれないという一般的、抽象的な危倶、懸念、不安、想像といった心理状態では足りず、当該財産が犯罪収益等であるとの蓋然性が存する具体的な状況の下で犯罪収益等と認識したといえる必要がある。例えば、暴力団員であることを知っている相手方から財産を受領したから、犯罪収益等かも知れないというだけでは、暴力団員の財産がすべて犯罪収益等であるはずはないのであるから、犯罪収益等であることの認識があるとはいえず、更に具体的な状況の下で当該財産が現実の犯罪行為によって得られたものであることを認識したといえる必要があろう。
5 本条ただし書
本条ただし書では、法令上の義務の履行として提供された犯罪収益等を収受する行為、及び償権者において相当の財産上の利益を提供する契約のとき、当該契約に係る債務の履行が犯罪収益等によって行われることの情を知らない(以下「善意」ということもある。)でした当該契約に係る債務の履行として提供されたものを収受する行為については、たとえ、義務又は債務の履行時にその旨を知ったとしても、処罰しないこととされている。
法令上の義務の履行として提供された犯罪収益等を収受する行為を処罰しないこととしたのは、その収受行為が、犯罪収益の前提犯罪を助長したり、犯罪収益の保持・運用を助ける結果となる要素が希薄であるとともに、収受者にとっては法令上の権利としてそれを受領するのであるから、収受者を処罰するのは酷に失すると考えられるからである。
法令上の義務の履行とは、その履行が法令上義務付けられているものをいう。例えば、公租公課の支払、罰料金の支払等のほか、民法上の扶養義務の履行も法令上の義務である。また、債権者において相当の財産上の利益を提供する契約の時に償務の履行が犯罪収益等によって行われることの情を知らなかった場合にその償務の履行として犯罪収益等を収受しても処罰しないこととしているが、例えば、金員を貸し渡すとき、その返済金が犯罪収益で返済されることを知らなかったところ、返済の段階に至って相手方が犯罪収益等で返済しようとする場合に、これを知ってそのまま返済を受けた貸主に犯罪収益等収受罪が成立するとすると、貸主は、事実上貸金の返済を受けることができなくなり、また、売買契約でも、売主は、その代金が犯罪収益で支払われることを知らないで、目的物を引き渡したところ、買主が犯罪収益で代金を支払う場合にも、同様に買主はその代金を受け取ることができなくなる場面が生じ、取引の安全を害することになるため、取引の安全保護の見地から、これを処罰しないこととしたものである。収受者が契約の時に善意であれば、その収受行為が犯罪収益等の保持・運用を助ける結果となる要素が希薄であるとともに、収受者にとっては、自らは相当の財産上の利益を提供しなければならないのに対し、正当な契約上の債権に基づいて債務の履行を受ける立場にあるのに、契約の相手方からの債務の履行が犯罪収益等によってなされることをその債務の履行時に知ればそれを受領すると本罪が成立するというのでは、収受者にとってあまりにも酷であると考えられるからである。
「債権者において相当の財産上の利益を提供すべきもの」にいう「債権者」とは、犯罪収益等を収受する者である。「相当の財産上の利益」とは、犯罪収益等と対側関係に立つもののほか、対価関係にはないものの、収受する犯罪収益等と引き換えに提供される、社会通念上これと同等の価値を有すると認められる財産上の利益を含む。その具体例としては、収受する財産と提供する財産上の利益とが対価関係に立つ売買契約、交換契約、賃貸借契約、雇用契約、請負契約、有償委任契約等の双務契約のほか、貸金の引渡しのように収受する財産と対価関係には立たないものの、契約の成立に相当の財産上の利益を提供することが要件となっている消費貸借契約がある。弁護人を依頼する契約も、有償委任契約であるから、これに当たる。
これに対し、贈与契約、使用貸借契約のように、財産は収受するもののそれに対する対価の提供を伴わず、また、当該契約の成立にも財産の提供を伴わない契約は「債権者において相当の財産上の利益を提供する契約」に当たらない。
なお、預貯金の受入れは消費寄託契約であり、預貯金を受け入れた金融機関は、当該契約に基づいて受け入れた預貯金の払戻義務があり、「債権者において相当の財産上の利益を提供する契約」には当たるものの、預貯金の受入れによって始めて契約が成立する要物契約であり、預貯金の受入れ自体は「償務の履行」として提供を受けたものではないのでただし書の契約には該当しない