児童ポルノ・児童買春・児童福祉法・監護者性交・強制わいせつ・青少年条例・不正アクセス禁止法・わいせつ電磁的記録記録被告事件弁護人 奥村徹弁護士の見解(弁護士直通050-5861-8888 hp3@okumura-tanaka-law.com)

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兵庫県青少年愛護条例違反無罪判決(神戸地裁H25.2.27)

 報道を見る限り
  捜査段階 否認
  公判段階 1回目 自白
       2回目以降否認
という経過でしょうか。自白したり否認に転じた理由を説明できたので、否認の供述が信用されたようです。
 2回目の公判については報道がありました。

「弁護士説得でうその自白」 性犯罪被告が無罪主張 神戸地裁
2010.10.29 産経新聞
 自宅に下宿させた少女=当時(14)=にわいせつな行為をしたとして、兵庫県少年愛護条例違反に問われた被告(52)が29日、神戸地裁(三宅康弘裁判官)で開かれた公判の被告人質問で「前任の弁護士に説得されて初公判で、うその自白をした」と述べ、無罪を主張した。被告は今年7月に兵庫県警に逮捕され、同月に県弁護士会所属の男性弁護士2人を選任。一貫して否認していたが、2人から「認めないと実刑で、認めたら執行猶予の判決が出る。大きな犬にかまれたと思ってどっちが得か損得勘定で決めろ」と言われ、9月の初公判で起訴内容を認めた。
 同月中に2人を解任したという。
 解任された男性弁護士は取材に対し「損得勘定で決めろなどとは一切言っていないし、説得もしていない。本人の意思だと思う」と答えた。

 性交・性交類似行為がないと児童淫行罪とも言えないし、強制がないと強制わいせつ罪にもならないしということで、青少年条例違反で起訴されたのだと思います。
 法定刑は2年で、同一児童への数回の青少年条例違反罪は包括一罪(名古屋高裁金沢支部h19)ですし、求刑1年程度の事件ですから、否認して有罪になっても、実刑にはなりません。
 捜査段階なら「認めれば罰金、認めなければ執行猶予付き懲役」という見通しが正確であって、『認めれば執行猶予。否認すれば実刑になる』といったとすれば根拠が無い誤りです。

http://web.pref.hyogo.lg.jp/ac12/documents/zyoureikisoku.pdf
(みだらな性行為等の禁止)
第21条 何人も、青少年に対し、みだらな性行為又はわいせつな行為をしてはならない。
2 何人も、青少年に対し、前項の行為を教え、又は見せてはならない。
第7章 罰則
(罰則)
第30条 次の各号のいずれかに該当する者は、2年以下の懲役又は100万円以下の罰金に処する。
(1) 第20条第1項又は第2項の規定に違反した者

青少年条例違反1罪・否認→懲役6月執行猶予3年(名古屋地裁H25.2.18)
http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20130220-00000012-maiall-soci

青少年条例の無罪判決は能代支部H21がある程度で珍しいです。

http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20130227-00001401-yom-soci
柔道指導のため自宅に下宿させていた当時中学2年の女子生徒にわいせつ行為をしたとして、兵庫県少年愛護条例違反に問われた神戸市北区の介護施設職員の男性(54)に対し、神戸地裁は27日、無罪(求刑・懲役1年)の判決を言い渡した。
 三宅康弘裁判官は「生徒の証言の信用性には合理的な疑いがある」と述べた。
 判決などによると、男性は地域の柔道クラブで指導。2009年7〜9月、生徒に繰り返しわいせつ行為をしたとして、10年7月に同条例違反容疑で逮捕された。
 捜査段階で否認していた男性は、初公判では起訴事実を認めた。しかし、その後の公判で、「初公判時の弁護人2人に『認めれば執行猶予。否認すれば実刑になる』と言われ、起訴事実を認めさせられた」と述べて再び否認に転じた。
 公判では生徒の証言の信用性が争点になった。判決で三宅裁判官は、わいせつ行為があったとされるマットレスが被告宅から見つからなかったことなど、証言について複数の疑問点を指摘。生徒が柔道の練習を嫌がっていたことを挙げ、「柔道をやめるため、わいせつ被害を受けたとの虚偽の供述をしたとしても不自然ではない」と述べた。

http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20130227-00000159-jij-soci
三宅裁判官は「捜査段階で否認しており、男性の弁解の信用性を否定することはできない」と指摘。「柔道の練習を嫌っていた被害者の供述は信用性に疑いがある」と述べた。
 判決によると、男性は2010年9月の初公判で起訴内容を認めたが、弁護人が代わった後の公判途中で「当時の弁護士に自白を強要された」と否認に転じた。
 男性は09年7〜9月ごろまでの間、下宿させていた少女の胸をもんだなどとして、10年8月に起訴された。

http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20130227-00000597-san-soci
判決理由で、三宅裁判官は「女子生徒が柔道を辞めるために虚偽の被害申告を両親にした可能性がある」と述べた。

 男性介護士は平成21年7月〜9月、少女の胸を繰り返し触るなどしたとして22年8月に起訴され、同年9月の初公判では起訴内容を認めた。だが、翌月の被告人質問の際、「(初公判時の)弁護人2人から『認めないと実刑。認めたら執行猶予』といわれた」と明かし、無罪主張に転じていた。

無罪判決:中2わいせつに 「生徒の供述に疑い」−−神戸地裁
 柔道の指導のため自宅に下宿させた中学2年の女子生徒にわいせつ行為をしたとして、兵庫県少年愛護条例違反罪に問われた介護士の男性(54)=神戸市=に対し、神戸地裁は27日、無罪(求刑・懲役1年)を言い渡した。三宅康弘裁判官は「生徒の供述には疑いが残る」と判断した。
 男性は10年9月の初公判で起訴内容を認めた後、「弁護人から『認めなければ実刑になる』と言われたので認めた」と主張、否認に転じていた。男性は09年7〜9月、生徒が18歳未満と知りながら、胸を触るなどしたとして逮捕、起訴された。捜査段階でも容疑を否認していたという。
 三宅裁判官は生徒の供述に関し「被害について最初の2日間は詳細に説明しながら、以降は記憶がないとするなど具体性がない」と指摘。「柔道の練習をやめるため虚偽の供述をしたとしても不自然ではない」と述べた。
 男性は最初の弁護人を初公判後に解任した。判決後、「(初公判の時は)何が良いのか分からない状況だった」と話した。現在の弁護人は「捜査機関は無実の訴えの裏付けを一切しない」と批判した。最初の弁護人を兵庫県弁護士会に懲戒請求したが棄却され、日弁連に異議を申し立てているという。
 最初の弁護人の事務所は取材に「体調不良で弁護士とは連絡が取れない」としている。
[毎日新聞社 2013年2月28日(木)]

神戸地裁H25.2.27
(争点及び当裁判所の判断)
1 弁護人らは,被告人が本件第1回公判期日に本件公訴事実を認める旨の陳述をしたのは,当時の弁護人ら(私選弁護人2名)に強要されたからであって,このことは憲法34条,37条3項が被告人に保障する弁護人の援助を受ける権利を侵害するものであるし,また,同公判期日において,当時の弁護人らが検察官請求証拠のすべてを証拠とすることに同意する意見を述べたことは, 憲法37条2項が被告人に保障する反対尋問権を侵害するものであるから,同公判期日における被告人の本件公訴事実を認める旨の陳述以降の本件訴訟の手続は無効であり,刑事訴訟法338条4号の準用によって,本件公訴を棄却すべきであると主張している。
 しかしながら,憲法34条及び37条3項は,被疑者及び被告人に対し,資格を有する弁護人を依頼する権利を保障しているところ,被告人が捜査段階から資格を有する弁護人を選任していたことは一件記録上明らかであるから,被告人について,憲法上保障されている弁護人を依頼する権利が侵害されたとは認められない。
また,一方当事者が請求する証拠の同意には,当該証拠に関する反対尋問権の放棄という効果が含まれると解されるが,反対尋問権を行使するか,又はこれを行使しないで放棄するかは,反対尋問権を有する者が決定できる事柄であり,このことと本件第1回公判期日に被告人が本件公訴事実を認める旨の陳述をしたことを併せ考慮すると,当時の弁護人らが述べた上記証拠意見は,当時の被告人の意思に反していたと認めることはできず,したがって,上記証拠意見に基づいて証拠を取り調べたことに反対尋問権の侵害があったということはできない。
なお,記録上明らかであるが,その後の審理において,被害者を含む主要な関係者らの証人尋問が実施できたのであるから,実質的に見ても被告人の反対尋問権は侵害されていない。
 そうすると,被告人が,当時の弁護人らから本件公訴事実を認めるように強要されたかどうかについて検討するまでもなく,上記各手続が違憲又は違法であるということはできない。
 また,刑事訴訟法338条各号は,訴訟条件を欠く場合に公訴を棄却して訴訟手続を打ち切ることを定めた規定であるところ,弁護人らが主張している上記事情は,訴訟条件であるとはいえないから,刑事訴訟法338条4号の規定によって本件公訴を棄却する前提を欠くというべきである。
 したがって,弁護人らの上記主張を採用することはできない。