実質的な被害者への慰謝の措置は必要ですね。
P25
2 被害者への謝罪
A及びB事例を見る限り,被害者への謝罪は行われていなかった。A事例では,被害者の意向により警察から被害者の名前を教えてもらえなかったために謝罪を行っていなかった。一方, B事例では,警察からは注意で終わると言われていたし,謝罪に関して何も言われなかったので特に何もしなかったと母は述べており,保護者の被害者に対する共感性の低さがうかがわれた。
また,被害者に対して, A及びB事例の少年ともに怖い思いをさせたと反省の弁を述べた。ただし自分自身の問題点への振り返りは浅かったり,どこか他人事のように語ったりと,被害者の立場に立って考えて実感を伴った反省をしているというよりは,表面的な反省にとどまっているように感じられた。
3 処分結果
不処分が2人(A及びB事例),保護観察が1人(C事例)だった。被害者への実害が比較的少なく,家庭裁判所への係属が初回であっても審判不開始で終局している事例はなかった。この理由としては,家庭裁判所に係属する前に同様の行為を反復していることが多いことから,初回係属でも裁判官が直接訓戒等を行って,少年に対し自分がした行為の社会的責任を実感させることが適当だと考えたものと思われる。
P27
第4節事例検討のまとめ
以下,事例検討の結果を基に背景要因にも触れながら少年の性器露出のメカニズムを示し,公然わいせつ事件における調査ヒの留意点について考察する。
1 性器露出少年の非行メカニズム
事例検討の結果,まず,非行の背景となる少年の問題点として.r(被 害女性は)ちゃらちゃらしてそうだから」など,女性を蔑視する傾向や女性に対する認知が歪んで、おり,性器を見せられた被害女性がどのような気持ちになるのかについて共感的に理解できないことが挙げられる。また,家庭の問題としても,少年と同様に被害者に対する共感性が欠加していることが挙げられ,共感性を養うという意味での少年への養育は不足していると思われた。P29
第2節保護者に対する教育的働き掛け
1 共感性をかん養する
少年と保護者が同席している場で,警察が作成した供述調書に書かれている被害者の心情を踏まえて,被害者感情を説明し保護者にも感じたことや考えたことを話してもらう。そのことを通じて,被害者に対する謝罪の必要性を感じてもらうきっかけを与えたい。