児童ポルノ・児童買春・児童福祉法・監護者わいせつ・不同意わいせつ・強制わいせつ・青少年条例・不正アクセス禁止法・わいせつ電磁的記録弁護人 奥村徹弁護士の見解(弁護士直通050-5861-8888 sodanokumurabengoshi@gmail.com)

性犯罪・福祉犯(監護者わいせつ罪・強制わいせつ罪・児童ポルノ・児童買春・青少年条例・児童福祉法)の被疑者(犯人側)の弁護を担当しています。専門家向けの情報を発信しています。

性行為・わいせつ行為を盗撮した行為を、誤ってひそかに製造罪(7条5項)とした事例

最後の奈良地裁東京地裁は控訴中なので、ここで食い止めたい。

 

        並行性犯罪
神戸 地裁 尼崎 H28.9.7 同児童を上半身裸にして乳房を露出させ ひそかに
東京 地裁   H28.10.19 準強制わいせつ罪
新潟 地裁   H28.11.4 青少年淫行罪
奈良 地裁 葛城 H29.3.16 児童買春罪
東京 高裁   H29.3.16 準強制わいせつ罪
熊本 地裁   H29.10.20 児童買春罪
青森 地裁 八戸 H30.1.25 青少年淫行罪
福島 地裁 会津若松 H30.12.21 無し(就寝中)
名古屋 地裁   R1.8.21 強制わいせつ罪(176条後段)
東京 地裁   R2.3.2 児童淫行罪
福岡 地裁   R2.3.3 準強制わいせつ罪
福岡 地裁   R3.5.19 準強制わいせつ罪
熊本 地裁 八代 R3.6.4 強制わいせつ罪(176条後段)
福岡 地裁   R3.6.9 無し(就寝中)
宇都宮 地裁   R3.6.16 青少年淫行罪
横浜 地裁   R3.6.22 児童買春罪
京都 地裁   R3.11.26 強制わいせつ罪(176条後段)
静岡 地裁 浜松 R3.12.17 強制わいせつ罪(176条後段)
奈良 地裁   R4.7.14 強制わいせつ罪(176条後段)
東京 地裁   R4.8.30 強制口腔性交・強制わいせつ

 

 

追記
奈良地裁r4.7.14は、控訴審で姿態をとらせて製造罪に修正されました(大阪高裁R5.1.24)。法令適用の誤りに釈明義務違反の訴訟手続の法令違反も加わって破棄されています。
>>
大阪高等裁判所令和5年1月24日宣告
判決
上記の者に対する強制性交等、児童買春、児童ポルノに係る行為等の規制及び
処罰並びに児童の保護等に関する法律(以下「児童買春・児童ポルノ処罰法」
という。)違反、強制わいせつ、準強制わいせつ被告事件について、令和4年7
月I4日奈良地方裁判所が言い渡した判決に対し、被告人から控訴の申立てがあ
ったので、当裁判所は、検察官和久本圭介出席の上審理し、次のとおり判決す
る。
主文
原判決を破棄する。
被告人を懲役年に処する。
原審における未決勾留日数中 日をその刑に算入する。
理由
本件控訴の趣意は、弁護人奥村徹作成の控訴趣意書に記載のとおりであるか
ら、これを引用するが、論旨は、理由麒顧、法令適用の誤り及び量刑不当であ
る。
そこで、記録を調査し、当審における事実の取調べの結果も併せて検討する。
第1事案の概要
第2理由齟齬・法令適用の誤りの控訴趣意について(控訴理由第2)
所論は、原判示第8、第10、第12、第16、第18、第20、第23の各児童ポルノ
造について、各公訴事実の記載自体から被告人が各児童にそれぞれの姿態をと
らせたことが明らかで、原判決も公訴事実どおりの事実を認定しているから、
これらに対しては、姿態をとらせ製造罪を規定する児童買春・児童ポルノ処罰
法7条4項のみが適用されるのに、ひそかに製造罪Iを規定する同法7条5項を適
用した原判決には法令適用の誤りがあり、また、姿態をとらせ製造罪の事実を
認定しながら同法7条5項を適用した点で理由麒顧があるというものである。
原審記録によれば、起訴状記載の公訴事実のうち、ひそかに製造罪として起訴
された各公訴事実(令和3年12月2日付け起訴状の公訴事実第2、令和4年2月16
日付け起訴状の公訴事実第2、第4、第6、第8、第10、第12)は、同一機会に行
われた各罪と合わせ考慮すると、就寝中のCの陰茎を露出させる姿態等(原判
示第8、第16)、睡眠中のDの陰茎を露出させる姿態等(同第10、第18)、就寝中
のEの陰茎を露出させる姿態等(同第12、第20)、就寝中のAの陰茎を露出させ
る姿態等(同第23)を、それぞれひそかに撮影して保存し児童ポルノを製造し
たとして公訴提起され、いずれも罰条として、児童買春・児童ポルノ処罰法7
条5項、2項が摘示されていること(なお、令和4年2月16日付け起訴状の公訴事
実第2、第4、第6、第8、第i0、第12については同法2条3項2号、3号を、令和3
年12月2日付け起訴状の公訴事実第2については同法2条3項1号、2号、J'3号
を、さらに摘示)、原審裁判所は、検察官に対しこの点について釈明を求める
などはしなかったこと、原判決は、これらの事実について公訴事実どおりに認
定し、起訴状の罰条と同じ法令を適用したことが認められる。
しかし、同法7条5項の規定する児童ポルノのひそかに製造行為とは、隠しカメ
ラの設置など描写の対象となる児童に知られることがないような態様による盗
撮の手段で児童ポルノを製造する行為を指すと解されるが、同項が「前2項に
規定するもののほか」と規定していることや同条項の改正経緯に照らせば、児
童が就寝中等の事情により撮影の事実を認識していなくても、行為者が姿態を
とらせた場合には、姿態をとらせ製造罪(同条4項)が成立し、ひそかに製造
罪(同条5項)は適用されないと解される。
したがって、検察官は、本来、上記各事実をいずれも姿態をとらせ製造罪とし
て起訴すべきところを、誤ってひそかに製造罪が成立すると解し、同一機会の
各事実と合わせると姿態をとらせたこととなる事実を記載しながら、「ひそか
に」との文言を付して公訴事実を構成し、罰条には児童買春・児童ポルノ処罰
法7条5項を上げた起訴状を提出し、原判決もその誤りを看過して、同様の事実
認定をした上で、上記のとおりの適条をしたことが明らかである。
このような原判決の判断は>判文自体から明らかな理由麒甑とまではL,いえな
いにせよ、法令の適用に誤りがある旨の所論の指摘は正しい。
さらに、検察官のみならず、被告人や原審弁護人も、上記各事実に関してひそ
かに製造罪としての責任を問われているとの誤信の下で原審公判に臨んでいた
ものとうかがえるから、第1審裁判所としては、関係証拠に照らして'認定でき
る事実に正しい適条をするだけではなく、検察官に釈明を求め、その回答如何
によっては訴因変更請求を促すなどして、被告人及び原審弁護人の防御に遺漏
がないよう手続を尽くすべきであったのに、原審はこうした手続を何ら行って
いない。
姿態をとらせ製造罪とひそかに製造罪とでは、法定刑は同じとはいえ、児童ポ
ルノ製造罪における「姿態をとらせ」あるいは「ひそかに」という要件は、処
罰根拠をなす重要部分に当たるから、この点について被告人や原審弁護人が誤
解をしたままでは十分な防御の機会が与えられたと評価できず、原審の釈明義
務違反は、判決に影響を及ぼすとみるべきである。
9以上から、原判決には、所論指摘の法令適用の誤り、さらには、訴訟手続の
法令違反があり、これが判決に影響を及ぼすことは明らかであるから、論旨は
理由がある。
第3自判原判決は、原判示第8、第10、第12、第l6、第18、第20、第2IJ);3の各
罪につき、その余の各罪と併合罪加重をし、1個の主文により判決を言い渡し
ているから、結局、原判決は全部破棄を免れない。
そこで、その余の論旨に対する判断を省略し、刑訴法397条1項、379条、380条
により原判決を破棄することとし、同法400条ただし書により、当審において
追加された予備的訴因により、当裁判所において更に判決する。
(罪となるべき事実)
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