「情報処理の高度化等に対処するための刑法等の一部を改正する法律」について警察學論集64巻10号1頁

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 わいせつのファイル共有は、頒布罪か、公然陳列罪かという論点も出てきました。

イ第175条(わいせつ物頒布等)
(ア) 第I項関係
a 改正前の本条前段においては、「わいせつな文書、図画その他の物」と規定され、その対象が「物」とされていたことから、例えば、電子メールでわいせつな画像を不特定又は多数の者に送信して取得させるなどの行為については、同条前段の適用の可否について裁判例が分かれていたが、このような行為は、実質的に見て、有体物としてのわいせつ物を頒布する行為と違法性の点で何ら変わらないといえる。
そこで、それらの行為が処罰対象に含まれることを明確にするため、本項後段において、「電気通信の送信によりわいせつな電磁的記録その他の記録を頒布」する行為を処罰対象として掲げることとされた。
電磁的記録の「頒布」とは、不特定又は多数の者の記録媒体上に電磁的記録を存在するに至らしめることをいう。したがって、相手方の記録媒体上に「電磁的記録その他の記録」として存在するに至っていない場合には、ここにいう「頒布」には当たらない。
また、「電磁的記録」とは、電子的方式、磁気的方式その他人の知覚によっては認識することができない方式で作られる記録であって、電子計算機による情報処理の用に供されるものをいうところ(第7条の2)、わいせつな画像等をファクシミリで送信した場合には、頒布先において電磁的記録以外の形態による記録として存在するに至ることもあり得ることから、「その他の記録」も掲げることとされた。
b 前記aの改正により、電気通信の送信によるわいせつな電磁的記録の頒布行為が処罰対象に含まれることが明確となったが、これに伴い、解釈上の疑義が生じないよう、本項前段において、わいせつ物の中に、例えば、わいせつな画像データを記憶・蔵置させたハードディスク等の「(わいせつな)電磁的記録に係る記録媒体」が含まれることを明示することとされた。
これは、改正前においても「電磁的記録に係る記録媒体」は「その他の物」に含まれると解されていたところ、この点を確認的に規定する趣旨である。
c 本法律においては、改正前の本条前段から「販売し」との文言を削ることとされたが、これは、後記(イ)aのとおり、改正後においては、「頒布」の中に「販売」が含まれることとなるためである。すなわち、これまで「販売」に当たるとして処罰してきた行為を処罰しないこととする趣旨ではなく、改正前において「販売」に当たる行為は、改正後においては「頒布」に当たることとなる。
(イ) 第2項関係
a 本項は、改正前の本条後段に所要の修正を加えつつ、これを第2項として規定するものである。
すなわち、改正前の同条後段においては、「販売の目的」と規定されており、ここにいう「販売」とは、不特定又は多数の者に対して有償で所有権を移転させる行為を意味するものと解されてきたが、現在では、わいせつな電磁的記録自体を頒布する場合や、有体物としてのわいせつ物を有償でレンタルする場合のように、必ずしも所有権の移転を伴わない形で拡散させる行為が容易に行われるようになっている。
そこで、これらの行為を目的とする場合も処罰対象に含まれることを明確にするため、本項においては、「有償で頒布する目的」に改めることとされた。
これに伴い、改正後は、「頒布」は、従来の「販売」を含む概念として用いられることとなる。
b 本法律により、わいせつな電磁的記録を保管する行為も処罰対象として掲げることとされた。
電磁的記録の保管とは、電磁的記録を自己の実力支配内に置くことをいう。
( ウ) 法定刑
改正後においても、懲役刑及び罰金刑の上限は従来と変わらないが、本条の罪は利得目的で行われるのが通常であることに鑑み、懲役刑と罰金刑の任意的併科ができることとされた。

追記
 わいせつ画像をメール送信する行為については、刑法改正前後をとわず、頒布罪で検挙されるというのが、法務省の見解です。