児童ポルノ・児童買春・児童福祉法・監護者わいせつ・不同意わいせつ・強制わいせつ・青少年条例・不正アクセス禁止法・わいせつ電磁的記録弁護人 奥村徹弁護士の見解(弁護士直通050-5861-8888 sodanokumurabengoshi@gmail.com)

性犯罪・福祉犯(監護者わいせつ罪・強制わいせつ罪・児童ポルノ・児童買春・青少年条例・児童福祉法)の被疑者(犯人側)の弁護を担当しています。専門家向けの情報を発信しています。

小学生に対する青少年条例違反罪

 実体法上のお話として、強姦罪・強制わいせつ罪のみが成立すると考えています。

小学生にみだらな行為をした疑い=熊本
2010.08.31 読売新聞社
 八代署は30日、無職(32)、飲食店従業員(26)の両容疑者を県少年保護育成条例違反の疑いで逮捕した。発表によると、3月31日未明、八代市内のホテルで、当時小学6年生だった県内の少女(12)に、18歳未満であることを知りながら、みだらな行為をした疑い。7月に少女が同署に相談して発覚した。容疑者は「ホテルには行ったが、みだらな行為はしていない」と容疑を否認しているという。

http://reiki.pref.kumamoto.jp/reiki/Li05_Hon_Dsp.exe?PAGE=1&UTDIR=D:\EFServ2\ss00003CF4\H00000001&SYSID=397&FNM=q4010555042204011.html
熊本県少年保護育成条例
(みだらな性行為及びわいせつ行為の禁止)
第13条 何人も、少年に対し、みだらな性行為又はわいせつ行為をしてはならない。
2 何人も、少年に対し、前項の行為を教え、又は見せてはならない。

http://d.hatena.ne.jp/okumuraosaka/20090929#1254120472
福岡高裁H21
法令適用の誤りの主張について
(1)弁護人は、
ア 13歳未満の者に対するわいせつな行為を刑法176条後段の強制わいせつ罪よりも軽く処罰する本件条例違反の罪は、憲法94条、地方自治法4条1項に違反し無効である、
イ 本件条例違反の罪は、刑法176条後段の強制わいせつ罪を補完する規定であると解され、被告人の原判示第1の行為は同罪に当たるから、本件条例違反の罪を適用した1審判決には、判決に影響を及ぼすことが明らかな法令適用の誤りがある
と主張する。

(2)まず、アの主張については、刑法176条後段の強制わいせつ罪は、13歳未満の者の性的自由を保護するとともに、性的な情操を保護することによって、青少年の健全育成を図る趣旨であると解され、青少年の健全な育成を目的とする本件条例違反の罪とその趣旨を共通にする面を有しているが、他方で、たとえ13歳未満の者に対してわいせつな行為に及んだ場合であっても、行為者において、相手の年齢を13歳以上18歳未満であると誤信していたときは、刑法176条後段の強制わいせつ罪の故意を欠くため同罪は成立せず、本件条例違反の罪のみが成立することになる。
そして、このような場合について、13歳未満の者の保護を図っている刑法が、行為者を同法176条後段の強制わいせつ罪よりも軽い法定刑を定めた本件条例違反の罪で処罰することを禁止しているとは解されないから、本件条例違反の罪が憲法94条、地方自治法14条1項に違反し無効であるはいえない。

(3)次に、イの主張については、本件条例違反の罪が刑法176条後段の強制わいせつ罪を補完する規定であるとしても、刑事訴訟法が採用する当事者主義的訴訟構造下では、審判の対象である訴因をどのように構成するかは、検察官の合理的裁量に委ねられているから、検察官は、13歳未満の者に対するわいせっな行為をした行為者について、事案の内容や立証の難易、その他諸般の事情を考慮して、刑法176条後段の強制わいせつ罪ではなく、本件条例違反の罪として訴因を構成して起訴することは当然許されると解される(なお、本件条例違反の罪は、強制わいせつ罪と異なり、親告罪ではないが、13歳未満の者に対するわいせつな行為の事案において、被害者やその法定代理人である親権者等が、被害者の名誉等への配慮から事件が公になることを望まず、告訴しなかったり、あるいは告訴を取り下げた場合に、検察官が行為者を本件条例違反の罪で起訴することは現実的には想定しがたいから、13歳未満の者に対するわいせつな行為を本件条例違反の罪として起訴することを許容しても、強制わいせつ罪が親告罪とされている趣旨が没却されるとはいえない)。