児童ポルノ・児童買春・児童福祉法・監護者性交・不同意性交・不同意わいせつ・青少年条例・不正アクセス禁止法・わいせつ電磁的記録・性的姿態撮影罪弁護人 奥村徹弁護士の見解(弁護士直通050-5861-8888 sodanokumurabengoshi@gmail.com)

性犯罪・福祉犯(監護者わいせつ罪・強制わいせつ罪・児童ポルノ・児童買春・青少年条例・児童福祉法)の被疑者(犯人側)の弁護を担当しています。専門家向けの情報を発信しています。

強制わいせつ罪(176条後段)の告訴が得られない場合に、青少年条例違反として起訴した事案(某地裁)

 青少年条例違反について保護者の告訴が得られないので青少年条例違反で立件したという説明があります。
 これは、13歳未満の認識もありますので、親告罪である強制わいせつ罪(176条後段)が成立する場合に、親告罪性をせんだつするものなので違法です。実刑事案なので、この点で控訴すれば良かったのにと思います。

仙台高裁支部H27.6.30

福岡高裁H21.9.16
第3 法令適用の誤りの主張について
1原判示第1についての法令適用の誤りの主張(控訴理由第1及び第6)について
(1)弁護人は,?本件条例違反の罪は,刑法176条後段の強制わいせつ罪を補完する規定であると解され,被告人の原判示第1の行為は同罪に当たるから,本件条例違反の罪を適用した1審判決には,判決に影響を及ぼすことが明らかな法令適用の誤りがあると主張する。
?の主張については,本件条例違反の罪が刑法176条後段の強制わいせつ罪を補完する規定であるとしても,刑事訴訟法が採用する当事者主義的訴訟構造下では,審判の対象である訴因をどのように構成するかは,検察官の合理的裁量に委ねられているから,検察官は,13歳未満の者に対するわいせつな行為をした行為者について,事案の内容や立証の難易,その他諸般の事情を考慮して,刑法176条後段の強制わいせつ罪ではなく,本件条例違反の罪として訴因を構成して起訴することは当然許されると解される(なお,本件条例違反の罪は,強制わいせつ罪と異なり,親告罪ではないが,13歳未満の者に対するわいせつな行為の事案において,被害者やその法定代理人である親権者等が,被害者の名誉等への配慮から事件が公になることを望まず,告訴しなかったり,あるいは告訴を取り下げた場合に,検察官が行為者を本件条例違反の罪で起訴することは現実的には想定しがたいから,13歳未満の者に対するわいせつな行為を本件条例違反の罪として起訴することを許容しても,強制わいせつ罪が親告罪とされている趣旨が没却されるとはいえない)。

罪となるべき事実
第1 平成28年1月20日 午後9時51分ころ、某県の被告人方において、A子(11歳)が、13歳未満の者と知りながら、着衣の上から乳房を数回もみ、もって13歳未満の女児にわいせつな行為をした (強制わいせつ罪(176条後段))

第2 同月22日 午後10時20分ころ、同被告人方において、前記Aが18歳に満たない青少年であることを知りながら、専ら自己の性欲を満たす目的で、着衣の上から陰部弄び、もって、青少年にわいせつな行為をした。(某県青少年条例違反罪)