児童ポルノ・児童買春・児童福祉法・監護者わいせつ・不同意わいせつ・強制わいせつ・青少年条例・不正アクセス禁止法・わいせつ電磁的記録弁護人 奥村徹弁護士の見解(弁護士直通050-5861-8888 sodanokumurabengoshi@gmail.com)

性犯罪・福祉犯(監護者わいせつ罪・強制わいせつ罪・児童ポルノ・児童買春・青少年条例・児童福祉法)の被疑者(犯人側)の弁護を担当しています。専門家向けの情報を発信しています。

懲戒免職処分は,当該職員としての身分を失わせ,職場から永久に放逐するというものであり,停職以下の処分とは質的に異なり,公務員にとっていわば「死刑宣告」にも等しい究極の処分である(佐賀地裁h20.12.12)

 裁判官も公務員ですから、懲戒処分の過酷さというのは、特に立証しなくても理解してくれるようです。
 教育公務員も職業の一種であって、飲酒運転者はそれに適さないだけだ(他に転職すればいいじゃん)ととらえてしまえば、懲戒免職のハードルを特段に高くする必要もないといえそうですが、公務員対公務員の紛争で、裁判官も公務員なので、そうは言わないわけです。

http://www.courts.go.jp/search/jhsp0030?action_id=dspDetail&hanreiSrchKbn=04&hanreiNo=37214&hanreiKbn=03
事件番号 平成19(行ウ)5
事件名 懲戒処分取消請求事件
裁判年月日 平成20年12月12日
裁判所名・部 佐賀地方裁判所
結果 その他
判示事項の要旨 飲酒運転等を理由とする地方公務員法29条1項1号及び3号に基づく懲戒免職処分は、飲酒の上での運転であるとはいえ、「酒気帯び運転」以上のアルコール分(呼気1リットル中、0.15?以上)を身体に保有した状態の運転であると認めるに足りる的確な証拠のない本件においては、あまりに過酷であり、重きに失し、社会通念上著しく妥当性を欠き、裁量権を逸脱・濫用した違法なものであるとして、処分を取り消した事例

平成20年12月12日判決言渡同日原本交付裁判所書記官
平成19年(行ウ)第5号懲戒処分取消請求事件
口頭弁論終結日平成20年9月12日
判決
主文
佐賀県教育委員会が平成18年7月20日付けで原告に対してした地
法公務員法29条1項1号及び3号に基づく懲戒免職処分を取り消す。
2 訴訟費用は被告の負担とする。
(中略)
しかしながら,他方,懲戒免職処分は,当該職員としての身分を失わせ,職場から永久に放逐するというものであり,停職以下の処分とは質的に異なり,公務員にとっていわば「死刑宣告」にも等しい究極の処分であるから,その選択が慎重にされるべきこともまた当然である。
さらに,懲戒処分の対象となる非違行為自体も,同じ違法行為とはいえ,刑罰法規に触れる犯罪行為とそれ以外の違法行為との間には質的な差違が存在することも明らかである。
そうすると,本件指針における「飲酒運転」に関する条項は,職務外の刑罰法規には触れない違法行為についても,標準例とはいえ,懲戒免職処分みを科すという指針になるが,この基準は,今日における飲酒運転に対する社会的非難の度合いの高まりという社会情勢や教員が一般の公務員に比してもより高いモラルを求められていることを考慮しても,あまりに苛酷というべきであって,重きに失し,社会通念上妥当性を欠くものというべきであり,本件指針の「飲酒運転」の意義については,少なくとも刑罰法規に触れる「酒気帯び運転」以上のアルコール分(呼気1リットル中,0.15?以上)を身体に保有した状態で自動車を運転することと限定的に解釈しない以上,本件指針における上記条項自体,裁量権を逸脱・濫用したものといわざるを得ない。この点は,前記のとおり,酒気帯び運転に至らない程度のアルコールを身体に保有した状態による運転で,公務員が懲戒免職処分を受けた例は見当たらないことからも根拠づけられ,この結論は,本件指針の上記条項が周知徹底されていたとしても異なるものではないものと解される。
本件においては,教育委員会は,本件指針の上記条項について,上記のような限定的な解釈をすることなく,文言どおりに解釈して,酒気帯び運転に至らない程度のアルコールを身体に保有した状態による運転をしたにすぎない原告に適用し,本件運転行為の報告遅滞以外には,他に特段勤務態度等に問題の見当たらない原告(かえって,被告自身,原告が有能な教諭であったことを認めている(被告の準備書面3(最終書面)14頁))を懲戒免職処分にしたのである。
そして,報告遅滞については,なるほど,前記認定事実からすれば,遅くとも,原告が日の出交番から出頭要請を受けた時点で,すみやかに上司に本件の一連の事件を報告すべきであったといえるが,早朝ではあるし,原告自身,警察から出頭要請を受けて気が動転していたことも考慮すると,これをもって原告を懲戒免職処分とすることも,余りに苛酷である。