児童ポルノ・児童買春・児童福祉法・監護者わいせつ・不同意わいせつ・強制わいせつ・青少年条例・不正アクセス禁止法・わいせつ電磁的記録弁護人 奥村徹弁護士の見解(弁護士直通050-5861-8888 sodanokumurabengoshi@gmail.com)

性犯罪・福祉犯(監護者わいせつ罪・強制わいせつ罪・児童ポルノ・児童買春・青少年条例・児童福祉法)の被疑者(犯人側)の弁護を担当しています。専門家向けの情報を発信しています。

勾留状被疑事実が構成要件を満たさない場合

 児童買春罪の成立には、「性交等の対償として財産が供与される約束」が必要であるが、その対償性が記載されていない逮捕状¥勾留状を見たことがある。
 これじゃ、罪にならない。
 窃盗罪の客体が「他人の」財物でないといけないのと同じで裁判官の初歩的ミスであるが、だが、大阪高裁は「まあいいではないか」と令状裁判官を弁護する。


大阪地裁令状部
被疑者は,
第1
平成年月15日午後10時41分ころから同年月16日午前3時24分ころまでの間に,大阪府丁目番号所在のホテル「」311号室において,A(昭和年月日生,当15歳)が18歳に満たない児童であることを知りながら,同児童に対し,現金供与の約束をして,同児童と性交等をし,
第2
前記日時場所において,B(昭和年月日生,当16歳)が18歳に満たない児童であることを知りながら,同児童に対し,現金供与の約束をして,同児童と性交等をし,
もって,児童買春したものである。



阪高裁H16.1.15
 所論は,児童買春,児童ポルノに係る行為等の処罰及び児童の保護等に関する法律4条の児童買春罪の構成要件は,児童に対して対償を供与し,又はその供与の約束をして,当該児童に対し性交等をすることであるのに,①原判決の罪となるべき事実(犯罪事実)には,児童に対して約束された現金供与が児童に対する性交の対償であることがいずれも摘示されておらず,また,性交の対償に値する利益であることを示す現金の額,大小も摘示されていないから,原判決には理由不備の違法があり(控訴理由第2,第5),②本件の逮捕状及び勾留状の被疑事実,本件起訴状に記載された公訴事実には,それぞれ,被告人が児童に対して供与を約束した現金が児童に対する性交の対償であるとの摘示がなく,いずれもその構成要件を充足していないもので,このような罪とならない事実を被疑事実とする逮捕状及び勾留状に基づく本件の逮捕,勾留には重大な違法があり,違法な逮捕,勾留に引き続いてなされた本件起訴もまた違法であって,本件公訴は棄却すべきであったのにこれを看過して有罪とし,また,違法な逮捕,勾留中の供述を録取した被告人の検察官及び警察官に対する各供述調書には証拠能力がないのに,これを証拠として採用し,事実認定の用に供して原判示の各事実を認定し有罪とした原判決には,判決に影響を及ぼすことが明らかな訴訟手続の法令違反がある(控訴理由第4,第6),というものである。
 確かに,本件の逮捕状及び勾留状の各被疑事実,さらに,起訴状記載の公訴事実のいずれについても,当該児童に供与を約束した現金が児童に対する性交等の対償であるとの明示がされていないこと,原判示第1及び同第2のいずれの犯罪事実についても,同様にその旨の明示及びその供与を約束した現金の額が摘示されていないが,いずれの摘示についてみても,供与を約束した現金が児童に対する性交の対償であることはその事実の記載ないしは判文から明らかに読みとれるし,現金供与の約束の記載がある以上その金額の摘示までは必ずしも必要としないから,いずれの点においても対慣性の摘示に欠けるところはないというべきであって,所論はいずれも前提を欠き採用できない。論旨はいずれも理由がない。