交際中の中学生(12歳・13歳)の性行為について、避妊しなかった点、撮影保存の点を不法行為とした事例(東京地裁r7.2.28) (訴額605万円、認容額11万円)

交際中の中学生(12歳・13歳)の性行為について、避妊しなかった点、撮影保存の点を不法行為とした事例(東京地裁r7.2.28) (訴額605万円、認容額11万円)
 600万円って、レイプされた場合の認容額ですよね。12歳だからか

裁判年月日 令和 7年 2月28日 裁判所名 東京地裁 裁判区分 判決
事件番号 令6(ワ)15872号
事件名 損害賠償請求事件
文献番号 2025WLJPCA02286007
主文

 1 被告未成年者は、原告に対し、11万1500円及びこれに対する令和6年6月27日から支払済みまで年3分の割合による金員を支払え。
 2 原告のその余の請求をいずれも棄却する。
 3 原告と被告未成年者との訴訟費用は、これを60分し、その1を被告未成年者の負担とし、その余を原告の負担とし、原告と被告父及び被告母との訴訟費用は全部原告の負担とする。
 4 この判決は、第1項に限り、仮に執行することができる。
 
 
事実及び理由
第1 請求
 被告らは、原告に対し、連帯して、605万1650円およびこれに対する令和6年6月27日から支払済みまで年3分の割合による金員を支払え。
第2 事案の概要
 本件は、被告未成年者が、未成年者である原告に対し、避妊具を用いることなく性交渉に及び、原告の膣内に射精し、また、原告の陰部の画像等を撮影していわゆる児童ポルノを製造し、これを所持したことで、原告が精神的苦痛を受けたなどとして、さらに、被告父及び被告母(以下、併せて「被告父母」という。)が、被告未成年者の上記各行為について、監督義務を怠ったとして、原告が、被告らに対し、民法709条に基づき、連帯して、慰謝料等合計605万1650円及びこれに対する不法行為の日の後であり、訴状送達の日の翌日である令和6年6月27日から支払済みまで民法所定の年3分の割合による遅延損害金の支払を求める事案である。
・・・・・
第3 争点に対する判断
 1 争点1(本件各行為の不法行為該当性)について
  (1) 本件行為①について
   ア まず、原告は、本件行為①に関し、被告未成年者が、いずれの性交渉に際しても、原告の膣内に射精をしていた旨主張する。
 しかしながら、前記第2の1(2)記載の令和6年2月19日頃に行われた性交渉の際を除き、被告未成年者が、原告と性交渉をした際に、その膣内に射精をしたと認めるに足りる的確な証拠はない。
   イ 次に、本件当時、原告と被告未成年者とが交際関係にあったこと、両者はいずれも同じ中学校に通い、同じ部活動に所属する同級生であったこと、両者の間で複数回性交渉が行われていたことは、前記第2の1(1)のとおりである。また、本件行為①について、一方的に被告未成年者が、原告に対し、これを強要し、原告がこれに応じざるを得なかったと認めるに足りる的確な証拠もない。それゆえ、本件行為①に関し、原告と被告未成年者との間に、主従関係や優劣関係は認められないというべきである。
 以上に加え、被告未成年者が避妊具を用いずに本件行為①に及んでいたことにつき、原告がこれを拒絶していたと認めるに足りる的確な証拠はないし、本件行為①が行われていた間に、原告が、上記学校や上記部活動を欠席したり、被告未成年者を遠ざけたりしたと認めるに足りる的確な証拠もない。かえって、前記第2の1(4)のとおり、原告は、自らウェブサイト上で経口避妊薬を購入し、服用しながら、なお被告未成年者との上記関係を継続していたものと認められる。これらの事情を併せ鑑みれば、原告も同意の上で、上記関係を継続していたものと認めるのが相当である。
 なお、前記第2の1(1)のとおり、原告は、本件当時13歳又は14歳であって、いわゆる性交同意年齢(16歳)に満たないが、そのことは被告未成年者も同様であって、交際関係にあり、主従関係や優劣関係も認められない性交同意年齢に達しない者同士の性交渉において、単純に一方を加害者、他方を被害者と断ずることもできないというべきである。
 それゆえ、本件行為①につき、被告未成年者が、原告と、避妊具を用いずに複数回にわたり性交渉に及んでいたこと自体をもって、直ちに不法行為に当たるとまでは認め難い。
   ウ 他方で、前記第2の1(2)のとおり、被告未成年者は、令和6年2月19日頃、原告と性交渉をした際、原告の同意なく、原告の膣内に射精をしたものと認められる。
 社会通念に照らしても、性交渉に際し、女性の膣内に射精すれば、受胎の可能性が格段に高まることや、未だ成熟していない13歳の女性が受胎した場合に、その心身や社会的地位等に悪影響が及びかねないことは、容易に認定し得るものである。
 それゆえ、被告未成年者の本件行為①のうち、原告の同意なく、その膣内に射精をしたとの点は、その性的自由及び性的自己決定権を侵害するものといわざるを得ず、不法行為に当たるというべきである。
  (2) 本件行為②について
 本件各データは、児童買春、児童ポルノに係る行為等の規制及び処罰並びに児童の保護等に関する法律2条3項1号及び同項3号の児童ポルノに当たるものというべきである。
 そして、このような児童ポルノの製造及び所持が、被写体となった児童の性的権利を侵害する違法な行為であることは、同法1条等に明記されているとおりである。
 よって、被告未成年者の本件行為②は不法行為に当たるというべきである。
 2 争点2(損害の発生の有無及びその数額)について
  (1) 本件行為①に関して
   ア 前記1(1)ウのとおり、被告未成年者の本件行為①のうち、同所記載の行為については不法行為に当たるところ、証拠(甲13)によれば、これにより、原告は、受胎したのではないかという一定の不安感を覚えたものと認められ、その結果、相応の精神的苦痛を被ったものと認められる。
 もっとも、同イのとおり、原告は、上記行為後も被告未成年者と複数回性交渉を重ねており、その間、上記行為に起因して、通っていた中学校や部活動を欠席した等の事情も認められない。また、前記第2の1(4)のとおり、結果として、原告が受胎した等の事実も認められない。
 以上の事情も併せ鑑みれば、上記行為により原告が被った上記精神的苦痛を慰謝するための慰謝料は、5万円を超えないものというべきである。
   イ また、原告が、本件検査を受けたことも、上記行為と相当因果関係があるというべきであるから、本件検査に係る費用1500円も、上記行為により原告が被った損害として認めるのが相当である。
  (2) 本件行為②に関して
 前記1(2)のとおり、被告未成年者の本件行為②は不法行為に当たるところ、証拠(甲13)によれば、これにより、原告は、本件各データが流出するのではないかという一定の不安感を覚えたものと認められ、その結果、相応の精神的苦痛を被ったものと認められる。
 もっとも、前記第2の1(3)のとおり、令和6年4月16日に画像及び動画が撮影された際には、原告は、自らの携帯電話端末を被告未成年者に貸与し、同端末が使用されて上記撮影が行われており、その後も複数回、同様の撮影が行われている。また、前記(1)アのとおり、その間、原告が、上記行為に起因して通っていた中学校や部活動を欠席した等の事情も認められない。さらに、本件各データの一部が、被告未成年者の携帯電話端末から同人のノートパソコンに送信された事実は被告らも自認するところであるが、それ以外に、本件各データが外部に流出した等の事情を認めるに足りる的確な証拠はない。
 以上の事情を総合的に考慮すれば、被告未成年者の本件行為②により原告が被った上記精神的苦痛を慰謝するための慰謝料は、5万円を超えないものというべきである。
  (3) 弁護士費用について
 本件の事案の性質及び訴訟活動の困難さに鑑みれば、原告が本件訴えを提起し、その訴訟活動をするに当たり、弁護士に委任することはやむを得ないところであり、その弁護士費用も前記1記載の各不法行為と相当因果関係のある損害と認められる。
 そして、その弁護士費用は、前記(1)及び(2)の合計額の約1割に相当する1万円と認めるのが相当である。
 3 争点3(被告父母の責任の有無)について
 前記第2の1(1)のとおり、本件当時、被告未成年者は責任能力を有していたものと認められるところ、仮に未成年者が責任能力を有する場合であっても、監督義務者の義務違反と当該未成年者の不法行為によって生じた結果との間に相当因果関係を認め得るときは、監督義務者につき、民法709条に基づく不法行為が成立するものと解するのが相当である(最高裁判所昭和49年3月22日第二小法廷判決・民集28巻2号347頁)。
 しかしながら、本件各証拠に照らしても、被告父母において、被告未成年者が、前記1の各不法行為に及ぶことを具体的に予見し得たといえるような事実関係は何ら認められない。それゆえ、そもそも、被告父母において、被告未成年者が上記各不法行為に及ぶことを予見し、これによる結果を回避するために何らかの措置を講ずべき義務があったとは認め難いから、被告父母に被告未成年者の上記各不法行為に結び付く監督義務違反があったとは認められないというべきである。
 なお、この点に関し、原告はるる主張するものの、いずれも上記判断を覆すに足りるものではなく、採用できない。
 よって、原告の被告父母に対する請求はいずれも認められない。
 4 小括
 以上の次第で、被告未成年者の本件各行為は、前記1の範囲で不法行為に該当し、これにより、原告は、前記2のとおり、合計11万1500円の損害を被ったものと認められるから、原告は、被告未成年者に対し、上記損害額及びこれに対する不法行為の日の後である令和6年6月27日から支払済みまで民法所定の年3分の割合による遅延損害金の支払を求めることができるというべきである。
 他方、原告のその余の請求はいずれも理由がないというべきである。
 5 結語
 よって、原告の請求は、前記4の限度で理由があるから、その限度でこれを認容し、その余はいずれも理由がないからこれを棄却することとして、主文のとおり判決する。
 東京地方裁判所民事第18部
 (裁判官 古賀大督)
 
 
 (別紙)
 当事者目録
 原告 X
 同法定代理人親権者父
 同訴訟代理人弁護士 三上拓馬
 被告 Y1(以下「被告未成年者」という。)
 同法定代理人親権者父
 同法定代理人親権者母
 同
 被告 Y2(以下「被告父」という。)
 同
 被告 Y3(以下「被告母」という。)
 被告ら訴訟代理人弁護士 内藤潤
 以上