監禁と不同意わいせつ致死を併合罪とした事例(旭川地裁r7.3.7)

 判示第1と第2は行為がかなり重なっているから観念的競合だよね。

第一七六条(不同意わいせつ)
1 次に掲げる行為又は事由その他これらに類する行為又は事由により、同意しない意思を形成し、表明し若しくは全うすることが困難な状態にさせ又はその状態にあることに乗じて、わいせつな行為をした者は、婚姻関係の有無にかかわらず、六月以上十年以下の拘禁刑に処する。
一 暴行若しくは脅迫を用いること又はそれらを受けたこと。
七 虐待に起因する心理的反応を生じさせること又はそれがあること。

裁判年月日 平成24年11月 1日 裁判所名 東京高裁 裁判区分 判決
事件番号 平24(う)1344号
事件名 監禁,強制わいせつ,児童買春,児童ポルノに係る行為等の処罰及び児童の保護等に関する法律違反被告事件
裁判結果 控訴棄却 上訴等 確定 文献番号 2012WLJPCA11019004
 (2) 罪数関係について
   ア 監禁罪と強制わいせつ罪の罪数関係について
 所論は,原判示の各監禁罪と各強制わいせつ罪について,いずれも,①性的意図をもって被害児童を監禁する行為は,被害児童の性的自由を害して被告人の性的欲求を満足させる行為であるから,監禁行為とわいせつ行為は一体の行為として評価され,観念的競合の関係にある,②仮に,観念的競合の関係にはないとしても,監禁罪と強制わいせつ罪は手段と結果の関係にあるから牽連犯の関係にある旨主張する。
 そこで検討すると,被告人は,各被害児童に対し,いずれも,わいせつ行為をする目的で公衆トイレ内に誘い込んだ後,内鍵を施錠したり(原判示第4),ドアの前に立ちふさがるなどして(同第1),陰部を触る等のわいせつ行為をしたものであるが,わいせつ行為に及んでいること自体がドア前に立ちはだかることとなって監禁行為は継続しているし,わいせつ行為が終了した直後にその場から逃走して被害児童を解放している。そうすると,刑法176条後段に触れる行為と同法220条に触れる行為とはほとんど重なり合っているといえる上,社会的評価において,トイレのドアの前に立ちふさがるなどして脱出不能にする動態と,このような姿勢をとりながらわいせつな行為をする動態は,被害児童をトイレに閉じこめてわいせつな行為をするという単一の意思に基づく一体的な動態というべきであるから,原判示の各監禁罪と各強制わいせつ罪は,いずれも観念的競合の関係にあるものと解される。

■28331135

旭川地方裁判所
令和07年03月07日

 上記の者に対する監禁、殺人、不同意わいせつ致死被告事件について、当裁判所は、検察官平野賢及び同緒方陽子、国選弁護人多々納玲子(主任)及び同小室光子各出席の上審理し、次のとおり判決する。

主文
主文
被告人を懲役23年に処する。
未決勾留日数中200日をその刑に算入する。

理由
理由
(罪となるべき事実)
 被告人は、
第1 B(以下「B」という。)が写った画像データを無断で使用した別紙記載の者(当時17歳。以下「A」という。)を監禁しようと考え、B、●●●(以下「X」という。)及び●●●(以下「Y」という。)と共謀の上、令和6年4月18日午後9時頃から同日午後11時37分頃までの間に、Aに対し、電話で、「どう落とし前つけんの、誰にけんか売ってんの。」などと語気鋭く言うなどした上、北海道C市(以下略)道の駅Cにおいて、Aを同所に停車中の軽四輪乗用自動車に乗り込ませ、同自動車を発進させて、同日午後11時37分頃から同月19日午前3時29分頃までの間、走行中の同自動車内でAの動静を監視するなどして同所からD市(以下略)E橋に至るまで同自動車を走行させるなどし、Aが同自動車内等から脱出することを著しく困難にし、もってAを不法に監禁し
第2 前記第1のとおりAを前記自動車に乗車させて北海道C市内から前記E橋に至るまで同自動車を走行させ、その間に、D市内のF店等において、Aに馬乗りになってその顔面を殴打するなどの暴行を加えるなどしてAを監禁したものであるが、Bと共謀の上、令和6年4月19日午前3時29分頃から同日午前3時48分頃までの間に、前記E橋付近において、Aに対し、Aが前記暴行を伴う一連の虐待に起因する心理的反応により同意しない意思を全うすることが困難な状態にあることに乗じ、その着衣を脱ぐよう命じてAを全裸にさせ、Aに土下座して謝罪させている状況を携帯電話機で動画撮影した上、前記E橋において、Aの腰部を蹴るなどの暴行を加え、Aを前記E橋の欄干に座らせて謝罪させている状況を携帯電話機で動画撮影するなどのわいせつな行為をし、その頃、同所において、殺意をもって、前記一連の暴行等により被告人及びBを極度に畏怖するなどしているAを前記欄干に再度座らせ、Aに対し、「落ちろ。」「死ねや。」などと言うなどしてAを前記E橋からその直下を流れるG川に落下させ、よって、同日頃、Aを溺水による窒息により死亡させて殺害した
ものである。

(法令の適用)
1 構成要件及び法定刑を示す規定
  被告人の判示第1の所為は刑法60条、220条に、判示第2の所為のうち、殺人の点は同法60条、199条に、不同意わいせつ致死の点は同法60条、181条1項、176条1項1号、7号にそれぞれ該当する。
2 科刑上一罪の処理
  判示第2の殺人と不同意わいせつ致死は1個の行為が2個の罪名に触れる場合であるから、刑法54条1項前段、10条により1罪として重い殺人罪の刑で処断する。
3 刑種の選択
  判示第2の罪について有期懲役刑を選択する。
4 併合罪の処理
  刑法45条前段の併合罪であるから、同法47条本文、10条により重い判示第2の罪の刑に同法47条ただし書の制限内で法定の加重をする。
5 宣告刑の決定
  以上の刑期の範囲内で被告人を懲役23年に処する。
6 未決勾留日数の算入
  刑法21条を適用して未決勾留日数中200日をその刑に算入する。
7 訴訟費用の不負担
  訴訟費用は、刑事訴訟法181条1項ただし書を適用して被告人に負担させない。
(量刑の理由)
 本件は、被告人が、Bや少年X、少女Yと共謀して、女子高校生の被害者を呼び出して自動車に乗り込ませ、深夜から未明にかけて、被害者の居住する北海道C市内の道の駅からD市内の渓谷Hまで連行して監禁した後、Bと共謀して、Hの吊り橋E橋付近において、全裸にさせた被害者を動画撮影するなどのわいせつな行為をし、さらに、殺意をもって、吊り橋の欄干に座らせた被害者に対し、「落ちろ。」「死ねや。」と言うなどして、吊り橋の直下を流れるG川に落下させて溺死させた、監禁、殺人、不同意わいせつ致死の事案である。