刑法182条3項2号の「その他の姿態」とは、「要求した映像送信行為が実現した場合に、膣又は肛門に物を挿入する姿態等の列挙された姿態に係る映像送信と同程度に重大な性的自由・性的自己決定権の侵害が生じるような姿態をいうものと解される」(東京高裁r7.7.4)
刑法
(十六歳未満の者に対する面会要求等)
第百八十二条
3十六歳未満の者に対し、次の各号に掲げるいずれかの行為(第二号に掲げる行為については、当該行為をさせることがわいせつなものであるものに限る。)を要求した者(当該十六歳未満の者が十三歳以上である場合については、その者が生まれた日より五年以上前の日に生まれた者に限る。)は、一年以下の拘禁刑又は五十万円以下の罰金に処する。
一性交、肛門性交又は口腔性交をする姿態をとってその映像を送信すること。
二前号に掲げるもののほか、
膣又は肛門に身体の一部(陰茎を除く。)又は物を挿入し又は挿入される姿態、
性的な部位(性器若しくは肛門若しくはこれらの周辺部、臀でん部又は胸部をいう。以下この号において同じ。)を触り又は触られる姿態、
性的な部位を露出した姿態
その他の姿態
をとってその映像を送信すること。
(4)論旨(弁護人)は、さらに、原判決が原判示第2の映像送信要求罪の成立を認めたことに関し、刑法1.82条3項柱書及び2号(以下「本条項」という。)は、3項柱書中の「わいせつ」並びに2号中の「性器」及び「その他の姿態」の各用語が不明確で、刑罰法規としての明確性を欠いていて憲法31条に違反し、表現行為である画像送信要求行為への過度に広汎な規制として憲法21条にも違反するから、無効であるとして、本条項を適用して映像送信要求罪の成立を認めた原判決には、法令適用の誤りがある、という。
しかし、まず、本条項(3項柱書)中の「わいせつなもの」は、刑法176条の不同意わいせつ罪における「わいせつな行為」と同じ意味と解されるところ、同条の「わいせつな行為」の概念は、刑罰法規として必要な明確性を欠くものでなく(最高裁平成28年(あ)第1731号同29年11月29日大法廷判決。刑集71巻9号467頁、最高裁平成30年(あ)第1757号令和2年3月10日第三小法廷判決・刑集74巻3号303頁参照)、そのことは、本条項中の「わいせつなもの」についても同じである。
次に、「性器」について、本条項は、性的姿態撮影処罰法2条1項1号イと同様に、その語を「性的な部位」を定義する中で用いているものであり、明確性が問題となるのは、「性器」それ自体ではなく「性的な部位」であるところ、(1)におけると同様、これが所論のように明確性を欠くとはいえない。
そして、「その他の姿態」については、本条項は、複数の「姿態」の列挙に続けて「その他の姿態」と記し、16歳未満の者に対し、それらの姿態をとってその映像を送信することを要求した者を処罰する旨規定するものである。
そうした法文の記載からすると、「その他の姿態」とは、要求した映像送信行為が実現した場合に、膣又は肛門に物を挿入する姿態等の列挙された姿態に係る映像送信と同程度に重大な性的自由・性的自己決定権の侵害が生じるような姿態をいうものと解され、これが所論のように明確性を欠くとはいえない。
よって、本条項は憲法31条に違反するものではない。
また、本条項に該当する映像送信行為を処罰することが、表現行為に対する過度に広汎な規制であるというべき根拠はなく、憲法21条に違反するものでもない。