児童ポルノ・児童買春・児童福祉法・監護者わいせつ・不同意わいせつ・強制わいせつ・青少年条例・不正アクセス禁止法・わいせつ電磁的記録弁護人 奥村徹弁護士の見解(弁護士直通050-5861-8888 sodanokumurabengoshi@gmail.com)

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17歳への強姦慰謝料として400万円が認容された事例(東京地裁H28.6.7)

 欠席判決

東京地裁平成28年 6月 7日 
事件名 損害賠償請求事件
法定代理人親権者父 
同訴訟代理人弁護士 
安田隆彦 
主文
 1 被告は、原告に対し、400万円及びこれに対する平成25年3月20日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。
 2 原告のその余の請求を棄却する。
 3 訴訟費用は被告の負担とする。
 4 この判決は、第1項に限り、仮に執行することができる。
事実及び理由

第1 請求
 被告は、原告に対し、500万円及びこれに対する平成25年3月20日から支払済みまで、年5分の割合による金員を支払え。
第2 事案の概要
 本件は、未成年者である原告が、被告から性交を強要され、姦淫されたとして、被告に対して不法行為に基づく慰謝料500万円及び不法行為日である平成25年3月20日から支払済みまで年5分の遅延損害金の支払を求めた事案である。
第3 原告の主張及び被告の対応
 1 原告は、父A及び母Bの間に、平成10年○月○日に三女として生まれ(現在は満17歳)、現在は前記原告住所地において居住している。原告は、平成25年3月当時、満15歳であり、埼玉県立a中学校に通学していた。原告の父と母は、住民票の住所地は異なるが、原告共々、前記原告住所地で同居している。
 2 被告は、昭和54年○月○日生まれで、平成25年3月当時は、満33歳であった。被告は独身で、前記被告住所地の自宅で一人暮らしをしている。ただし、原告側では被告の詳細は不明であるが、被告は、映像関係の会社(株式会社b:東京都新宿区〈以下省略〉)に勤務していると、原告の父は聞いている。
 3 原告は、平成25年3月頃、いわゆるラインの出会い系で被告と知り合い、連絡を取るようになった。そこで、原告は、同月20日、鍋料理に行こうと、交通費も払うなどと誘われ、被告と会うために自由が丘方面に出かけて行った。もちろん、原告と被告は初対面であった。
 2人は会ったが、被告の知っていた鍋料理店は休みであったらしく、被告は、原告に食事を供与するために被告の自宅に招いた。ところが、被告宅には食材がなく、原告ももう帰宅したいと言うようになったが、原告は、突然そこで、被告に性交を強要され、姦淫された。
 4 原告は、その被害の日に、なんとか被告宅を出たが、所持金がなく、深夜になって、駅員を介して警察に保護され、なんとか帰宅した。
 原告が帰宅して、原告の両親は、原告の様子がおかしいことに気づき、問いただした結果、前記被告による強姦行為のあったことが判明した。原告は、翌日には同人の母に同伴されて、草加市の菅原レディースクリニックに行き、診断治療を受けたが、幸い重篤な傷害などは受けていなかった。
 その後、平成25年3月末近くには、原告の父が原告から聞き出して調査し、なんとか被告の自宅住所を突き止めた。そこで、被告と面会し、本件のことを追求したところ、被告も事実は認めた。
 同月末には、所轄の警視庁碑文谷警察署に被害届出をし、原告及び被告自身や、原告の父も事情聴取を受けた。その後、被告は、東京都青少年健全育成条例違反で逮捕され、送検されたところまでは判明したが、その詳細は不明である。
 原告は、本件が原因で何回か自殺を図ったことがあったが、幸い命は取り留めた。しかるに、その精神的ショックは未だ癒えず、現在もその影響があって、立ち直っていない。原告は、なんとか中学校は卒業したが、高校進学は断念した。最近になって、ようやくアルバイトなどが可能となってきている。
 5 よって、原告は、被告に対し、不法行為に基づく慰謝料である損害賠償金500万円及びこれに対する不法行為日である平成25年3月20日から支払済みまで民法所定の年5分の割合による遅延損害金の支払を求める。
 6 被告は、適式な呼出を受けながら、本件口頭弁論期日に出頭せず、答弁書その他の準備書面を提出しない。
第4 当裁判所の判断
 1 上記第3の6によれば、同第3の1ないし4の各事実につき、被告は自白したものとみなされる。そして、上記各事実に鑑みれば、被告の行為が原告に対する不法行為に該当することは明らかである。
 2 その上で、本件における慰謝料の額について検討するに、被告は、未成年者である原告に対して性交を強要し、実際に性交するに至っており、その後、少なくとも、東京都青少年健全育成条例違反で逮捕・送検されたというのであって、さらに、その後の原告の状況も踏まえると、被告の行為は決して許されるものではなく、その責任は重い。これに、原告と被告が性交に至った経緯、原告において幸い重篤な障害は受けていなかったこと等、本件に顕れた一切の事情を併せ鑑みれば、慰謝料の額としては、400万円をもって相当というべきである。
第5 結論
 よって、原告の請求は、主文掲記の範囲で理由があると認められ、主文のとおり判決する。
 (裁判官 奥田大助)