児童ポルノ・児童買春・児童福祉法・監護者性交・強制わいせつ・青少年条例・不正アクセス禁止法・わいせつ電磁的記録記録被告事件弁護人 奥村徹弁護士の見解(弁護士直通050-5861-8888 hp3@okumura-tanaka-law.com)

性犯罪・福祉犯(監護者性交罪・強制わいせつ罪・児童ポルノ・児童買春・青少年条例・児童福祉法)の被疑者(犯人側)の弁護を担当しています。専門家向けの情報を発信しています。

児童の性交場面が流布された場合の慰謝料(訴額150万円、認容額合計55000円等)

 流通過程で中継した少年とその保護者に対する慰謝料請求のようです。
 示談した関与者については「訴外A,訴外C,訴外E及び訴外G並びにこれらの者の各保護者との間で示談契約を締結し,計320万円を受領している」と認定されています。

損害賠償請求事件
名古屋地方裁判所令和2年3月25日民事第10部判決
口頭弁論終結日 令和2年2月12日
       主   文

1 被告B1は,原告甲に対し,5万円及びこれに対する平成30年2月8日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。
2 被告B1は,原告に対し,5000円及びこれに対する平成30年2月8日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。
3 被告D1は,原告甲に対し,15万円及びこれに対する平成30年2月4日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。
4 被告D1は,原告乙に対し,1万5000円及びこれに対する平成30年2月4日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。
5 被告F1,F2及びF3は,原告甲に対し,連帯して5万円及びこれに対する平成30年2月5日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。
6 被告F1,F2及びF3は,原告乙に対し,連帯して5000円及びこれに対する平成30年2月5日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。
7 原告らの被告B1,被告D1,被告F1,被告F2及び被告F3に対するその余の請求並びに被告B2,被告D2及び被告D3に対する請求をいずれも棄却する。
8 訴訟費用は,〔1〕原告らに生じた費用の100分の1と被告B1に生じた費用の100分の3を被告B1の負担とし,〔2〕原告らに生じた費用の100分の3と被告D1に生じた費用の100分の5を被告D1の負担とし,〔3〕原告らに生じた費用の100分の1と被告F1,被告F2及び被告F3に生じた費用の100分の4を被告F1,被告F2及び被告F3の負担とし,その余の費用は原告らの負担とする。
9 この判決は,第1項から第6項までに限り,仮に執行することができる。


       事実及び理由

第1 請求
1 被告B1及び被告B2は,原告甲に対し,連帯して150万円及びこれに対する平成30年2月8日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。
2 被告B1及び被告B2は,原告乙に対し,連帯して15万円及びこれに対する平成30年2月8日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。
3 被告D1,被告D2及び被告D3は,原告甲に対し,連帯して300万円及びこれに対する平成30年2月4日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。
4 被告D1,被告D2及び被告D3は,原告乙に対し,連帯して30万円及びこれに対する平成30年2月4日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。
5 被告F1,被告F2及び被告F3は,原告甲に対し,連帯して120万円及びこれに対する平成30年2月5日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。
6 被告F1,被告F2及び被告F3は,原告乙に対し,連帯して12万円及びこれに対する平成30年2月5日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。
第2 事案の概要
 本件は,平成28年3月ないし5月に当時15歳であった原告甲の性交場面等を撮影した動画データがLINE等を使用して拡散されるという事件(以下「本件拡散事件」という。)が発生したところ,原告甲及びその親権者である原告乙が,本件拡散事件に関与した者及びその親権者に対し,以下のとおり共同不法行為に基づく損害賠償を求めた事案である。
 原告らは,本件拡散事件の過程において,〔1〕上記動画データを当時の交際相手に送信した被告B1に対し,原告甲の人格権侵害を,被告B1の親権者である被告B2に対し,被告B1の送信行為に関する監督義務の懈怠を主張して,共同不法行為に基づき,原告甲に対する慰謝料150万円及び原告乙に対する弁護士費用15万円並びにこれらに対する訴状送達の日の翌日である平成30年2月8日から支払済みまで年5分の割合による遅延損害金の各連帯支払を(上記第1の1及び2),〔2〕上記動画データを友人3名に送信した被告D1並びにその親権者である被告D2及び被告D3に対し,同様の主張をして,原告甲に対する慰謝料300万円及び原告乙に対する弁護士費用30万円並びにこれらに対する訴状送達の日の翌日である同月4日から支払済みまで年5分の割合による遅延損害金の連帯支払を(上記第1の3及び4),〔3〕上記動画データを当時の交際相手に送信した被告F1並びにその親権者である被告F2及び被告F3に対し同様の主張をして,原告甲に対する慰謝料120万円及び原告乙に対する弁護士費用12万円並びにこれらに対する訴状送達の日の翌日である同月5日から支払済みまで年5分の割合による遅延損害金の連帯支払(上記第1の5及び6)を,それぞれ求めた。
1 前提事実(争いのない事実並びに掲記証拠(枝番のあるものは枝番を含む。弁論併合前に提出された甲号証を「第5615号甲1」などといい,弁論併合後に提出された甲号証を「併合後甲12」などという。以下同じ。)及び弁論の全趣旨により容易に認められる事実)
(1)当事者
ア 原告甲は,平成12年生まれの女性である。原告乙は,原告甲の母親であり,親権者である。(第5615号甲1,第5616号甲1,第5617号甲1)
イ 被告B1は,平成12年生まれの女性である。被告B2は,被告B1の母親であり,親権者である。(第5615号甲2,同甲3)
ウ 被告D1は,平成12年生まれの女性である。被告D2は,被告D1の父親,被告D3は,被告D1の母親であり,いずれも被告D1の親権者である。(第5616号甲2)
エ 被告F1は,平成12年生まれの女性である。被告F2は,被告F1の父親,被告F3は,被告F1の母親であり,いずれも被告F1の親権者である。(第5617号甲2)
(2)被告らの本件拡散事件への関与状況等
ア 被告B1は,平成28年3月中旬頃,友人である訴外Aから,訴外Aとその元交際相手である原告甲との性交場面等を撮影した動画データ(以下「本件動画データ」という。)の提供を受けた。そして,同月下旬頃,当時交際していた訴外Cからの依頼に応じ,訴外Cに対し,LINEを用いて本件動画データを送信した。(第5615号甲8,乙1から乙3まで,乙5)
イ 被告D1は,同年4月28日,当時交際していた訴外Cから,本件動画データの提供を受けた。そして,同日,訴外E,被告F1及び訴外Hに対し,同人らのアカウントで構成されるLINEグループを用いて本件動画データを送信した。(第5616号甲6,同甲7)
ウ 上記イにより本件動画データの提供を受けた被告F1は,同年5月2日,当時交際していた訴外Iからの依頼に応じ,訴外Iに対し,LINEを用いて本件動画データを送信した。(第5617号甲6,同甲7)
エ 本件動画データは,同年4月末頃より当時原告甲が通学していた高校に在籍する生徒らの間で拡散された。
(3)本件拡散事件後の状況
ア 原告甲は,平成28年7月頃,転校した。(併合後甲17)
イ 訴外A,被告B1,訴外C,被告D1,訴外E,被告F1及び訴外Eから本件動画データの提供を受け7名の知人に対して送信した訴外Gは,いずれも,児童買春,児童ポルノに係る行為等の規制及び処罰並びに児童の保護等に関する法律違反の非行事実により名古屋家庭裁判所に送致されたが,同裁判所はいずれも不処分の決定をした。(第5615号甲5,第5616号甲4,第5617号甲4)
(4)本訴訟における経過
ア 被告B1,被告B2,被告D1,被告D2及び被告D3は,原告らを相手方とし,原告らが,本件拡散事件に関し,訴外A,訴外C,訴外E,訴外G,訴外H及び訴外I並びにこれらの者の保護者らとの間で締結した示談契約の成立及び内容を証する文書の一切につき,文書提出命令を申し立てた。当裁判所は,平成30年12月13日,原告らに対し,訴外A,訴外C,訴外E及び訴外G並びにこれらの者の各保護者との間で締結した示談契約の成立及び内容を証する文書の一切の限度で,その提出を命じる決定をし(平成30年(モ)第195号,同第198号),その後同決定は確定した。
イ しかしながら,原告らは,本訴訟の口頭弁論終結時まで,上記文書を一切提出しなかった。
2 争点及びこれに対する当事者の主張
(1)被告B2,被告D2,被告D3,被告F2及び被告F3の不法行為の成否(争点1)
(原告らの主張)
 親権者である被告B2,被告D2,被告D3,被告F2及び被告F3には,それぞれの子に対し,他人の名誉棄損・プライバシー侵害等の行為をしないという基本的な人間関係のルールを守るよう指導監督する義務があったのであり,近時「ネットいじめ」等の問題が顕在化していることを踏まえれば,携帯電話を利用させるに当たっては,これにより他人の権利を侵害することのないよう監督する義務があった。
 特に,被告F2及び被告F3は,被告F1が本件動画データを受け取ったことを被告F2に話しているのであるから,動画を削除させる等の対応をすべきであった。
 それにもかかわらず,被告B2,被告D2,被告D3,被告F2及び被告F3は,いずれもその義務を怠ったから,不法行為責任を負う。
(被告B2の主張)
 被告B1は,素行の悪くないごく普通の15歳の学生であった。したがって,被告B2に具体的な監督義務が発生していたとはいえないから,被告B2に監督義務違反があったとはいえず,不法行為は成立しない。
(被告D2及び被告D3の主張)
 被告D1は,生活態度に何ら問題のない15歳の学生であった。したがって,被告D2及び被告D3には,被告D1の他害行為を予見することは不可能であったから,被告D2及び被告D3に監督義務違反があったとはいえず,不法行為は成立しない。
(被告F2及び被告F3の主張)
 争う。
(2)原告甲及び原告乙の損害額(争点2)
(原告らの主張)
ア 被告B1及び被告B2の不法行為により原告甲が受けた精神的苦痛を慰謝するに足りる金額は,150万円を下らない。また,原告乙が負担した弁護士費用のうち,少なくとも15万円は上記不法行為と相当因果関係のある損害である。
イ 被告D1,被告D2及び被告D3の不法行為により原告甲が受けた精神的苦痛を慰謝するに足りる金額は,300万円を下らない。また,原告乙が負担した弁護士費用のうち,少なくとも30万円は上記不法行為と相当因果関係のある損害である。
ウ 被告F1,被告F2及び被告F3の不法行為により原告甲が受けた精神的苦痛を慰謝するに足りる金額は,120万円を下らない。また,原告乙が負担した弁護士費用のうち,少なくとも12万円は上記不法行為と相当因果関係のある損害である。
(被告らの主張)
 争う。
第3 当裁判所の判断
1 被告B1,被告D1及び被告F1の責任
 被告B1,被告D1及び被告F1による本件動画データの送信行為は,それぞれ原告甲のプライバシー権を侵害するものであって,被告B1,被告D1及び被告F1は,それぞれ不法行為責任を負う。
2 争点1(親権者らの不法行為の成否)について
(1)親権者らの不法行為責任
 未成年者が責任能力を有する場合であっても,監督義務者の義務違反と未成年者の不法行為によって生じた結果との間に相当因果関係が認められるときは,監督義務者につき民法709条に基づく不法行為が成立するものと解される(最高裁昭和49年3月22日第二小法廷判決・民集28巻2号347頁参照)。
(2)被告B2,被告D2及び被告D3の責任
 原告らは,被告B2,被告D2及び被告D3には,子に携帯電話を利用させるに当たり,他人の権利を侵害することのないよう監督する義務があったのにこれを怠った旨を主張する。
 しかしながら,原告らは,監督義務の具体的内容やその義務の発生根拠となる具体的事実を主張していない。そして,本件以前に被告B1及び被告D1が一般的な非行等に及んだ事実だけでなく,携帯電話やSNS等を使用した友人との問題行動や本件類似のプライバシー侵害行為に及んだ事実を認めるに足りる証拠はない。また,被告B1が本件動画データの送信を受けたことを被告B2が被告B1の送信行為前に,被告D1が本件動画データの送信を受けたことを被告D2及び被告D3が被告D1の送信行為前に,それぞれ知ったと認めるに足りる証拠もない。そうすると,本件動画データの送信行為当時,保護者に求められる一般的な指導を超えて,被告B2は被告B1に対し,被告D2及び被告D3は被告D1に対し,それぞれ本件動画データ等の性的な動画を送信しないように具体的に注意するなどの監督をすべき法的義務が発生していたとはいえない。
 上記諸点を踏まえると,被告B2,被告D2及び被告D3に原告らの主張するような不法行為が成立するなどとはいえない。
(3)被告F2及び被告F3の責任
ア 前提事実に加え,証拠(丁3,被告F3本人(第1回))及び弁論の全趣旨によれば,被告F2及び被告F3の本件拡散事件への関与状況等について,次の事実が認められる。
(ア)被告F1は,本件動画データを入手した平成28年4月28日頃,被告F2に対し,被告D1から本件動画データが送られてきたことを相談し,被告F2は,その翌日頃,被告F3に対し,その事実を伝えた。被告F3が,被告F1に確認したところ,被告F1は,そのような動画データが出回っているという噂があり,友人が本件動画データを実際に入手した旨を述べた。
(イ)被告F2及び被告F3は,当時原告甲及び被告F1が通学していた高校に対して報告することを検討したが,本件動画データの存在が発覚すれば原告甲が退学になるのではないかなどと考え,報告をしないこととする一方,被告F1に本件動画データを消去させることもなかった。
(ウ)被告F1は,その後の同年5月2日,訴外Iに対し,LINEを用いて本件動画データを送信した。
イ 被告F3の陳述書(丁4)及び本人尋問の結果(第2回)には,上記認定に反する部分がある。しかしながら,上記陳述書の作成前に実施された被告F3本人尋問の結果(第1回)には,被告F1の訴外Iに対する本件動画データ送信前に被告F2及び被告F3が被告F1の本件動画データ入手を知っていたことを明確に認める部分がある。そして,本訴訟において極めて重要というべき上記部分につき,被告F3は,本人尋問(第2回)に際して思い違いであったなどと,にわかに受入れ難い説明をするのみである。また,被告F3の陳述書(丁4)及び本人尋問の結果(第2回)のうち上記認定に反する部分を裏付ける適格な証拠もない。そうすると,これらの部分は採用できない。
ウ 上記認定事実によれば,被告F2及び被告F3は,被告F1が訴外Iに対して本件動画データを送信する約3日前には,本件動画データの内容及びそうした動画データが出回っているという噂があることや被告F1が友人から本件動画データを実際に入手したことを知っていたというのである。そうすると,被告F2及び被告F3は,その時点で,原告甲のプライバシーを著しく侵害するおそれのある動画を被告F1が入手し,かつ,実際に被告F1の友人らが他者に対して送信していることを具体的に認識した以上,被告F1が同様の行為に及ぶことを予見し得たといえる。したがって,被告F2及び被告F3には,判断能力のなお未熟な高校1年生である被告F1の親権者として,被告F1が原告甲の被害を更に拡大させることのないよう,被告F1に対し本件動画データを直ちに消去させるなどの措置を講じて被告F1を監督する義務があったというべきである。
 それにもかかわらず,被告F2及び被告F3は,被告F1に対し,被告F1が訴外Iに対して本件動画データを送信する前には本件動画データを消去させなかったのであるから,上記義務に違反したといえる。そして,被告F2及び被告F3のこのような監督義務違反と未成年者である被告F1の不法行為によって生じた原告甲のプライバシー侵害との間には相当因果関係が認められるから,被告F2及び被告F3には不法行為が成立する。
エ 被告F2及び被告F3の監督義務違反と被告F1の送信行為は,客観的に関連し,共同し合って原告甲のプライバシー侵害を生じさせたものといえるから,被告F2及び被告F3は,被告F1との関係で共同不法行為責任を負う。
3 争点2(原告甲及び原告乙の損害額)について
(1)原告甲の損害額
ア 文書提出命令違反の効果について
 前提事実(4)のとおり,当裁判所が,原告らに対し,訴外A,訴外C,訴外E及び訴外G並びにこれらの者の各保護者との間で締結した示談契約の成立及び内容を証する文書の一切につき,その提出を命じる決定が確定したにもかかわらず,原告らはこれに従わない。
 この点に関し,被告B1,被告B2,被告D1,被告D2及び被告D3は,文書提出命令の申立てをするに当たり,上記示談書には少年1名につき60万円の示談金を受領した旨の記載があると主張している。また,被告D1,被告D2及び被告D3は,原告らが文書を提出しなかったことから,上記示談書には少年1名につき100万円の示談金を受領した旨の記載があると主張を変更している。他方,原告らは,示談契約をしたことは認める(訴状補正上申書)一方,示談金の金額を争っている。そして,証拠(丁3)によれば,被告F3は原告ら代理人から本訴訟提起前に30万円の示談の申入れをされるとともに,訴訟では120万円の請求をする旨告げられたことが認められる。上記諸点に加え,訴外Gは拡散した相手が多数であること(前提事実(3)),訴外Aは本件拡散行為の発端であること(前提事実(2))などを併せ考慮すると,訴外A及び訴外Gに関する示談書には各100万円の示談金を受領した旨の記載があるが,訴外C及び訴外Eに関する示談書には各60万円の記載があると認めるにとどめるのが相当である(民訴法224条1項)。
 そして,このような記載のある示談書からすれば,原告らは,本件拡散事件に関し,訴外A,訴外C,訴外E及び訴外G並びにこれらの者の各保護者との間で示談契約を締結し,訴外A及び訴外Gとの間では100万円ずつの合計200万円を,訴外C及び訴外Eとの間では60万円ずつの合計120万円を,それぞれ受領したものと認められる。
イ 慰謝料額
 本件動画データは,性交場面等という通常他人に特に見られたくない場面を撮影したものであり,これが更に送信されたことによる原告甲のプライバシー侵害の程度は極めて大きいといえる。そして,前提事実に加え,証拠(併合後甲16,原告乙本人)及び弁論の全趣旨によれば,原告甲は平成28年3月ないし5月の本件拡散事件当時15歳にすぎなかった上,本件拡散事件の結果入学したばかりの高校に通学することに困難を来し,その後間もない同年7月頃に転校を余儀なくされたことが認められる。また,本件拡散事件には原告の元交際相手や日頃行動を共にしていた友人が関与していた。これらの事情からすると、原告甲の受けた精神的苦痛が極めて大きかったことは想像に難くない。他方で,上記アのとおり,原告らは,本件拡散事件に関し,訴外A,訴外C,訴外E及び訴外G並びにこれらの者の各保護者との間で示談契約を締結し,計320万円を受領している(なお,本件拡散事件に関して多額の示談金を受領した事実は,本件拡散事件を構成する各送信行為に関する慰謝料の額を検討するに当たって考慮すべきものであるのは当然である。)。これらに加え,本件全証拠及び弁論の全趣旨によって認められる本件拡散事件に関する一切の事情を考慮すれば,被告B1,D1,F1,F2及びF3から原告甲に対して支払われるべき慰謝料額は,1名に対する送信行為につき5万円として算定するのが相当である。
 なお,被告らは,原告甲が訴外Aによる本件動画データの撮影行為を黙認したことなどに本件拡散事件の原因の一端があったことは否定できないから,損害賠償額を定めるに当たり過失相殺をすべきと主張する。しかしながら,撮影経緯等がどのようなものであれ,被告B1,被告D1及び被告F1はその時点の自己の判断に基づき本件動画データを更に送信して原告甲のプライバシーを侵害したものであって,このような不法行為の実質を踏まえると,被告らの主張する事実に基づき過失相殺を考慮するのは相当ではないというべきである。 
ウ 小括
 以上によれば,原告甲に支払うべき慰謝料の額は,被告B1が5万円,被告D1が15万円,被告F1,被告F2及び被告F3が連帯して5万円となる。
(2)原告乙の損害額
 本件全証拠及び弁論の全趣旨によって認められる本訴訟の類型,難易度,請求額及び認容額その他本訴訟に関する一切の事情を考慮して,被告B1の不法行為と相当因果関係のある原告乙の弁護士費用は5000円,被告D1の不法行為と相当因果関係のある原告乙の弁護士費用は1万5000円,被告F1,被告F2及び被告F3の不法行為と相当因果関係のある原告乙の弁護士費用は5000円と認めるのが相当である。
4 結論
 以上によれば,原告らの請求は,主文第1項から第6項までに掲記の限度で理由があるからこの限度で認容し,その余は理由がないから棄却することとし,主文のとおり判決する。
名古屋地方裁判所民事第10部
裁判長裁判官 鈴木尚久 裁判官 杉田時基 裁判官 崎川静香

(別紙)当事者目録
全事件原告 ■■■■(以下「原告甲」という。)
法定代理人親権者兼全事件原告 ■■■■(以下「原告乙」という。)
上記両名訴訟代理人弁護士 多田元
第5615号被告 B1(以下「被告B1」という。)
法定代理人親権者兼第5615号被告 B2(以下「被告B2」という。)
上記両名訴訟代理人弁護士 片岡憲明
第5616号被告 D1(以下「被告D1」という。)
法定代理人親権者兼第5616号被告 D2(以下「被告D2」という。)
同 D3(以下「被告D3」という。)
上記3名訴訟代理人弁護士 岡厚希
第5617号被告 ■■■■(以下「被告F1」という。)
法定代理人親権者兼第5617号被告 ■■■■(以下「被告F2」という。)
同 ■■■■(以下「被告F3」という。)