児童ポルノ・児童買春・児童福祉法・監護者わいせつ・不同意わいせつ・強制わいせつ・青少年条例・不正アクセス禁止法・わいせつ電磁的記録弁護人 奥村徹弁護士の見解(弁護士直通050-5861-8888 sodanokumurabengoshi@gmail.com)

性犯罪・福祉犯(監護者わいせつ罪・強制わいせつ罪・児童ポルノ・児童買春・青少年条例・児童福祉法)の被疑者(犯人側)の弁護を担当しています。専門家向けの情報を発信しています。

被害児童が眠っていて抵抗できないことにつけ込み,その陰茎を執拗に時間をかけてもてあそぶなどし,更にはその様子を動画で撮影したという行為につき、強制わいせつ罪(176条後段)と、ひそかに製造罪ではなく、姿態をとらせて製造罪を適用した事例(高松地裁r04.3.18)

被害児童が眠っていて抵抗できないことにつけ込み,その陰茎を執拗に時間をかけてもてあそぶなどし,更にはその様子を動画で撮影したという行為につき、強制わいせつ罪(176条後段)と、ひそかに製造罪ではなく、姿態をとらせて製造罪を適用した事例(高松地裁r04.3.18)
 「5前二項に規定するもののほか」という法文から、姿態をとらせているときは、ひそかに製造罪ではなく、姿態をとらせて製造罪。
 あからさまにスマホをかざしているので、「ひそかに」と言えないのではないか 

7条
4前項に規定するもののほか、児童に第二条第三項各号のいずれかに掲げる姿態をとらせ、これを写真、電磁的記録に係る記録媒体その他の物に描写することにより、当該児童に係る児童ポルノを製造した者も、第二項と同様とする。
5前二項に規定するもののほか、ひそかに第二条第三項各号のいずれかに掲げる児童の姿態を写真、電磁的記録に係る記録媒体その他の物に描写することにより、当該児童に係る児童ポルノを製造した者も、第二項と同様とする。

 なお「判示第2の行為 児童買春,児童ポルノに係る行為等の規制及び処罰並びに児童の保護等に関する法律7条4項,2条3項2号」では、処断刑期が出てこないので、2項も挙げる必要があるという高裁判決がある。

刑事判決起案の手引
294
(8)他の規定をも掲げなければ法定刑が判明しない場合 (310 ないし312参照)
「……判示所為は刑法 158 条 1項, 1 5 5 条 1 項に該当する…」
「……判示所為は刑法 238 条, 2 3 6 条 1項に該当する……」

310
(6) 他の規定をも掲げなければ法定刑が判明しない場合には,当該他の規定をも記載しなければならない(もっとも,いわゆる 2項強盗 2項詐欺 2 項恐喝については,それぞれ刑法236 条 2 項, 246 条 2 項,249 条 2 項と記載するだけで,各条の 1 項を示さないのが普通である)。

高松地裁r04.3.18
(罪となるべき事実)
 第1 被告人は,A(当時12歳。氏名は別紙のとおり。)が13歳未満であることを知りながら,Aにわいせつな行為をしようと考え,令和3年●月●日午前8時16分頃から同日午前8時25分頃までの間,a県b市〈以下省略〉の被告人方において,Aのズボンの中に手を入れ,その陰茎を手指でもてあそぶなどし,もって13歳未満の者に対し,わいせつな行為をした。
 第2 被告人は,A(当時12歳)が18歳に満たない児童であることを知りながら,同日午前8時25分頃,前記被告人方において,Aに,被告人がAの陰茎を手指でもてあそぶ姿態をとらせ,これを動画撮影機能付き携帯電話機で撮影し,その動画記録1点を同携帯電話機の内蔵記録装置に記録させて保存し,もって他人が児童の性器等を触る行為に係る児童の姿態であって性欲を興奮させ又は刺激するものを視覚により認識することができる方法により描写した児童ポルノを製造した。
 第3 
 (証拠の標目)
 (法令の適用)
 罰条
 判示第1の行為 刑法176条後段
 判示第2の行為 児童買春,児童ポルノに係る行為等の規制及び処罰並びに児童の保護等に関する法律7条4項,2条3項2号
 判示第3の行為 
 刑種の選択 判示第2及び第3の各罪について、いずれも懲役刑を選択
 併合罪の処理 刑法45条前段,47条本文,10条(最も重い判示第1の罪の刑に同法47条ただし書の制限内で法定の加重)
 未決勾留日数の算入 刑法21条
 刑の全部執行猶予 刑法25条1項
 保護観察 刑法25条の2第1項前段
 (量刑の理由)
 本件は,小学校の教師である被告人が元教え子である13歳未満の被害児童に対し,わいせつな行為をするとともに,その様子を動画で撮影して児童ポルノを製造し,更には,拒否している被害児童に対し,連続して電話をかけ,また,メッセージを送信して電話に出ることを要求するなどして,ストーカー行為をした事案である。強制わいせつ及び児童ポルノの製造につき,被害児童は,教師である被告人を信頼して,被告人の自宅に宿泊していたのに,被告人は,その信頼を裏切り,犯行に及んだ。その態様は,被害児童が眠っていて抵抗できないことにつけ込み,その陰茎を執拗に時間をかけてもてあそぶなどし,更にはその様子を動画で撮影したものであり,被害児童の人格を一切無視した卑劣で悪質なものである。
 高松地方裁判所丸亀支部
 (裁判官)