判例DBに罰条を書き忘れた判決を提供した事例(山形地裁r6.9.17)
「被告人は、正当な理由がないのに、令和6年5月6日午前11時30分頃から同日午後零時30分頃までの間、前記女性用露天風呂において、ひそかに、同所の岩陰等に小型カメラ2台を設置し、そのうち1台の小型カメラでA(Aの氏名は別紙2のとおり。当時40歳)の胸部や陰部等を動画撮影した。」って事実認定されても、何法の何罪かわかんないから、理由不備だよな。迷惑条例違反でも行けそうじゃん。
山形地判令和6年9月17日D1-Law.com判例体系〔28323624〕
山形地方裁判所
令和6年(わ)第58号/令和6年(わ)第94号
山形地方裁判所
本籍 ●●●
住居 ●●●
無職
Y
平成5年(以下略)生上記の者に対する性的姿態等撮影、児童買春、児童ポルノに係る行為等の規制及び処罰並びに児童の保護等に関する法律違反被告事件について、当裁判所は、検察官倉地えりか及び私選弁護人峯田典明各出席の上審理し、次のとおり判決する。
主文
主文
被告人を懲役2年に処する。
この裁判確定の日から5年間その刑の執行を猶予する。理由
理由
(罪となるべき事実)
第1 被告人は、正当な理由がないのに
1 別紙1記載のとおり、令和6年5月5日午前9時36分頃から同日午後5時25分頃までの間、(住所略)所在のB株式会社C温泉大露天風呂の女性用露天風呂南側山中において、ひそかに、同露天風呂で入浴ないし着替え中の氏名不詳の女性44名に対し、望遠レンズ付きデジタルカメラを向けて、同人らの胸部等を撮影し
2 同日午後3時9分頃、前記女性用露天風呂南側山中において、ひそかに、同露天風呂で入浴中の18歳未満である氏名不詳の全裸の女児に対し、前記望遠レンズ付きデジタルカメラを向けて、同児童の胸部等を撮影して、その動画データを同カメラに挿入したSDカードに記録させて保存し、もってひそかに、人の性的な部位を撮影するとともに、衣服の全部又は一部を着けない児童の姿態であって、殊更に児童の性的な部位が露出され又は強調されているものであり、かつ、性欲を興奮させ又は刺激するものを視覚により認識することができる方法により電磁的記録に係る記録媒体に描写した児童ポルノを製造した。
第2 被告人は、正当な理由がないのに、令和6年5月6日午前11時30分頃から同日午後零時30分頃までの間、前記女性用露天風呂において、ひそかに、同所の岩陰等に小型カメラ2台を設置し、そのうち1台の小型カメラでA(Aの氏名は別紙2のとおり。当時40歳)の胸部や陰部等を動画撮影した。
●●●
(量刑の理由)
被告人は、山中から望遠レンズを装着したデジタルカメラを構え、女性用露天風呂を利用する女性客40名以上の性的姿態を撮影し(判示第1)、また、女性用露天風呂に小型カメラを設置し、録画状態にして、女性利用客の性的姿態を撮影した(判示第2)もので、撮影機材に周囲の景色に馴染むような装備ないし細工を施していることや、険しい山道であるにもかかわらず、これを厭わず撮影場所を探し当てるなどしていることにも照らすと、被告人の温泉を利用する女性客の性的姿態を撮影することへの強い執着心が表れている。被告人が述べるところによれば、令和4年11月から本件の女性用露天風呂で盗撮を繰り返してきたというのであり、常習性は明らかである。盗撮の対象となった女性客らの性的羞恥心を害することに思いを致すことなく、自己の性的欲求を満たすためという身勝手な動機から本件犯行に及んだ被告人に対しては厳しい非難が妥当する。盗撮されたことを知った判示第2の被害女性が厳しい処罰感情を有しているのも当然のこととして理解できる。
被告人には平成28年に罰金に処せられた同種前科があることも併せると、本件の犯情は良くなく、被告人の行為責任は重いといわなければならない。
もっとも、他方、被告人は、判示第2の犯行が発覚したと察するや、自ら警察に出頭して逮捕され、以後一貫して事実を認め、公判廷においても反省の言葉を述べている。判示第2の被害女性に対し、謝罪し、30万円を支払うことなどを内容とする示談を成立させるなど、慰謝の措置に努めており、この点も被告人の反省の態度を表すものとして、量刑に当たっては考慮されるべき事情である。また、被告人は、性依存症であることを自覚して、精神科を受診したり、自助グループに参加したりするようになっており、自らの問題点と向き合い、これを改善しようという意欲を行動で示している。被告人の父親による被告人の指導監督も期待できる。
そこで、本件の犯情評価を基礎として、被告人の更生につながる事情を併せ考慮すると、被告人に対しては、主文の刑を科して刑事責任の重さを今一度銘記させた上で、今回に限り、その刑の執行を猶予して、社会内で自力更生を図る機会を与えることとするが、性依存症の性質に鑑みると、被告人の再犯を防止する見地からは、刑の執行を猶予する期間を法律上許される最長の5年間とするのが相当である。なお、検察官は、被告人の再犯可能性の高さを考慮すると被告人を保護観察に付するのが相当である旨の意見を述べるが、被告人が既に精神科の受診や自助グループへの参加を開始していることや被告人の実父が監督の意思を強く表明していることなどからすれば、公的機関による支援を必要とするとまではいえないことから、執行猶予期間を5年間と定めるにとどめ、保護観察を付することはしない。
(求刑 懲役2年)(裁判官 佐々木公)
(別紙1)
更正決定
判決書に明白な誤りがあるので、職権により次の通り決定する
記
判決書中「罰条」の
「児童ポルノ製造の点
児童ポルノ法7条5項 2項 2条3項3号」
のあとに
「判示第2の所為 性的姿態撮影罪2条1項1号イ」を加える
r6.10.2 裁判官 某