児童ポルノ・児童買春・児童福祉法・監護者わいせつ・不同意わいせつ・強制わいせつ・青少年条例・不正アクセス禁止法・わいせつ電磁的記録弁護人 奥村徹弁護士の見解(弁護士直通050-5861-8888 sodanokumurabengoshi@gmail.com)

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強制性交罪(177後段)につき、没入が争われた事例(宮崎地裁延岡R03.1.20)

 判示第2で動画の1号ポルノ製造が認定されていますが、そっちは争われてないようです。
 仙台高裁の凹凸判例が参考になるでしょう。
強姦罪の既遂時期につき,陰茎の先端部が数ミリメートル程度陰部に食い込むような状態となっただけでは,未だ姦淫の既遂には至っていないとされた事例(仙台高裁h28.5.24) - 児童ポルノ・児童買春・児童福祉法・監護者性交・強制わいせつ・青少年条例・不正アクセス禁止法・わいせつ電磁的記録記録被告事件弁護人 奥村徹弁護士の見解(弁護士直通050-5861-8888 hp3@okumura-tanaka-law.com)

■28291818
宮崎地方裁判所延岡支部
令和03年01月20日
(罪となるべき事実)
 被告人は、
第1 (令和2年6月18日付け起訴状記載の公訴事実)
 ●●●(当時9歳。以下「A」という。)が13歳未満であることを知りながら、Aと性交しようと考え、令和元年12月27日午後0時14分過ぎ頃、●●●において、Aと性交した、
第2 (令和2年7月31日付け起訴状記載の公訴事実第1)
  Aが18歳に満たない児童であることを知りながら、令和元年12月27日午後0時14分頃から同日午後0時26分頃までの間、前記第1の場所において、Aをして被告人と性交する姿態、被告人がAの陰部を舌で舐め、手の指で触る姿態等をとらせ、これを動画撮影機能付き携帯電話機で動画撮影し、その動画データ合計2点を同携帯電話機本体の内蔵記録装置に記録させて保存し、もって児童を相手方とする性交又は性交類似行為に係る児童の姿態及び他人が児童の性器等を触る行為に係る児童の姿態であって性欲を興奮させ又は刺激するものを視覚により認識することができる方法により電磁的記録に係る記録媒体に描写した児童ポルノを製造した、
(証拠の標目)(括弧内の番号は証拠等関係カードにおける検察官請求証拠の番号を示す。)
判示全部の事実について
 ・ 被告人の公判供述
判示第1及び第2の事実について
 ・ 被告人の検察官調書(乙9、10)及び警察官調書(乙3、7、8)
 ・ Aの警察官調書(甲10)
 ・ 実況見分調書(甲1)
 ・ 捜査報告書(甲2~6、9)
 ・ 画像処理依頼書謄本(甲7)及び画像処理結果回答書(甲8)
判示第2の事実について
 ・ 被告人の検察官調書(乙19)
 ・ 捜索差押調書(甲28)
 ・ 宮崎地方検察庁延岡支部で保管中の携帯電話機(スマートフォンiPhone6)(同支部令和2年領第139号符号2、甲29)


(事実認定の補足説明)
1 被告人及び弁護人の主張
  被告人は、判示第1につき、Aと性交しておらず、性交の目的もなかったと主張し、弁護人も、強制性交等の罪は成立せず、強制わいせつ罪が問われるべきであると主張する。
2 性交の有無について
  前掲証拠によれば、被告人の陰茎の亀頭部分は、Aの陰部に約8mmから約19mmにわたって没入している(甲8)。そして、9歳女児の小陰唇から膣口までの奥行きは、成人男性の陰茎の亀頭よりも短く、男性の陰茎の亀頭が収まる空間は膣口以外にない(甲6)。そうすると、被告人の陰茎はAの膣口を越えて膣内に挿入されたものというべきであり、性交の事実が優に認められる。
  被告人は、陰茎の先端の感覚からすると、Aの膣内に陰茎が全く入っていない旨供述するが、これを採用することができないことは、前記認定説示のとおりである。また、被告人は、Aの膣口が広がることはないので膣内に入るとは考えられないとも弁解するが、9歳女児であっても、その膣口は軟部組織で十分な伸縮性があり、実際にも、被告人が指で膣口を容易に広げていることからすると(甲4~6)、採用することはできない。
3 強制性交等の故意について
  被告人は、約2分もの間、勃起した陰茎の亀頭部分をAの膣口に押し当て、その膣内に没入させるように繰り返し上下に動かし、Aに対して「痛い?」とか「気持ちいい?」などと申し向けて、陰部の感度を確認している(甲4)。そして、この間、被告人の陰茎の亀頭部分が膣内に挿入されたことは前記認定のとおりである。このような行為態様からすれば、性交の事実についての認識に欠けるところはないのであり、強制性交等の罪の故意を否定すべき事情はない。
  被告人は、Aの陰部の弾力を確かめたいとの思いから陰茎をAの陰部に押し当てたにすぎず、性交の意図はなかったなどと縷々主張するが、故意を否定すべき事情には該当しない。
  以上によれば、被告人にはAに対する強制性交等の故意があったと認められる。
4 結論
  よって、被告人に、判示第1のとおりAに対する強制性交等の罪が成立する。