児童ポルノ・児童買春・児童福祉法・監護者性交・強制わいせつ・青少年条例・不正アクセス禁止法・わいせつ電磁的記録記録被告事件弁護人 奥村徹弁護士の見解(弁護士直通050-5861-8888 hp3@okumura-tanaka-law.com)

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強姦罪の既遂時期につき,陰茎の先端部が数ミリメートル程度陰部に食い込むような状態となっただけでは,未だ姦淫の既遂には至っていないとされた事例(仙台高裁h28.5.24)

 仙台地検で強姦の量刑を調べていて、この事件に当たりました。閲覧内容は他言できませんが、医師の供述などで被害児童の「陰部約3.5センチメートル程度の深さまで陰茎を挿入された。」という供述の信用性を否定しています。

高等裁判所刑事裁判速報集 平成28年
法務省大臣官房司法法制部
速報番号28年2号
【事件名】
強姦被告事件
【事件番号等】
平成28年(う)36号,平成28年5月24日
仙台高等裁判所第1刑事部判決,
原判決破棄・自判(確定)
【控訴申立人】被告人
【第一審】仙台地方裁判所
○判示事項
強姦罪の既遂時期につき,陰茎の先端部が数ミリメートル程度陰部に食い込むような状態となっただけでは,未だ姦淫の既遂には至っていないとされた事例
○判決要旨
強姦罪における姦淫は,交接作用すなわち陰茎の没入によって既遂に達するとされている(大審院大正2年11月19日判決参照)ところ,その字義に照らせば,単に陰茎の先端部を女性の陰部の入口に押し付けたというだけでは既遂に達したとはいえず,これを超えて陰茎の少なくとも一部が女性の陰部に没する必要があることは明らかである。
そして,陰茎の先端部が凸型の曲面状で女性の陰部が凹型であるという形状や,いずれも弾力を有するという性質からすれば,陰茎を女性の陰部の入ロに押し付けるだけでも先端部が数ミリメートル程度陰部に食い込むような状態とはなり得るが,これは陰茎を押し付ける行為に必然的に伴うものであって,かかる状態をもって陰茎が没入したとは評価し難いから,このような状態では未だ姦淫の既遂には至っていないものと解すべきである。
○参照条文
刑法第177条
○ 備考
本判決は,原判決が,被害女児(当時9歳)の「陰部約3.5センチメートル程度の深さまで陰茎を挿入された。」旨の証言の信用性を否定した上で,被告人の「陰茎の先が数ミリメートル程度Vの陰部に入ったが,それ以上は先に進まなかった。」,「陰茎をVの陰部に押しつけ,先が膣の入口を塞ぐようになった。大人の女性と性交するときのようには入らなかったが,陰茎の先が1~2ミリメートルは入っていたと思う。少し食い込むぐらいでそれ以上進まなかったから没入はしていない。」旨の公判供述に基づき,姦淫の既遂を認めたのに対し,同一の事実関係を前提としつつ,上記判決要旨記載の理由により,姦淫の既遂には至っていないと判断したものである。
なお,弁護人は,「被告人にはそもそも強姦の故意がないから強姦未遂罪も成立しない。」と主張したが,本判決は,「被害女児の陰部に陰茎を押し付けるという行為態様に照らして,陰茎を没入させるつもりが全くなかったとは考え難い上,被告人は,原審公判で,陰茎を没入させるつもりはなかったと述べる一方で,検察官に,より深く陰茎が入っても構わないと考えていたのか,その前にとどめる意識があったのかと尋ねられた際には,押し当てるという行為をしたら入ってしまうことになると考えていたと述べており,少なくとも,陰茎が陰部に没入する可能性を認識した上で,それでも構わないと考えて陰茎を押し付けたと認められ,姦淫に至る可能性を認識しつつそれでも構わないという意思,すなわち姦淫の未必の故意があったと認定できる。」と判示して同主張を排斥しており,原審検察官の適切な被告人質問により故意の認定が得られたという点でも,参考になる事例であると思われる。